(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の係数および前記第2の係数が、製品の型式ごとまたは顧客ごとに特定され、 前記需要予測部が、前記製品の型式または顧客に係る前記第1の係数および前記第2の係数を用いて前記製品の需要を予測する
請求項1または請求項2に記載の需要予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1の実施形態》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る需要予測装置の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態に係る需要予測装置100は、引き合いのあった製品の月ごとの総払出数を予測する装置である。つまり、本実施形態は、単位時間1カ月ごとに区切られた期間である「月」を予測対象期間とする。需要予測装置100は、需要情報記憶部101、需要予測部102、表示制御部103、実績情報記憶部104、係数特定部105および係数記憶部106を備える。
【0015】
需要情報記憶部101は、引き合いのあった製品の払出し予定日と予定数とを関連付けた需要情報を記憶する。
需要予測部102は、需要情報記憶部101が記憶する需要情報に基づいて、予測対象の月に予定通り払い出される製品の数であるオンスケジュール払出数と、予測対象の翌月に払い出される予定の製品が予測対象の月に払い出される製品の数である前倒し払出数と、予測対象の前月に払い出される予定の製品が予測対象の月に払い出される製品の数である後倒し払出数とを算出する。需要予測部102は、オンスケジュール払出数と前倒し払出数と後倒し払出数との総和を求めることで、予測対象の月の製品の需要を予測する。
表示制御部103は、需要予測部102が予測した各月の製品の需要予測結果をディスプレイ等の表示装置に表示させる。
【0016】
実績情報記憶部104は、過去の月ごとの製品の予定数と製品の実際の払い出し数を示す実績情報を記憶する。製品の予定数とは、製品の引き合い時に、当該月に納期が設定された製品の数を示す。製品の実際の払い出し数とは、当該月に実際に納品された製品の数を示す。
係数特定部105は、実績情報記憶部104が記憶する実績情報に基づいて、需要の予測に用いる係数を特定する。具体的には、係数特定部105は、予測対象の月の予定数に乗じることで需要数を算出するための需要係数と、予測対象の翌月の予定数に乗じることで前倒し払出数を算出するための前倒し係数と、予測対象の前月の予定数に乗じることで後倒し払出数を算出するための後倒し係数とを算出する。なお、オンスケジュール払出数は、予測対象の月の予定数に需要係数を乗じた値から、前倒し払出数および後倒し払出数を減算することで算出される。係数特定部105は、月ごとの係数を特定する。
係数記憶部106は、係数特定部105が特定した係数を記憶する。
【0017】
ここで、需要情報記憶部101が記憶する需要情報について説明する。
図2は、需要情報の例を示す図である。
本実施形態に係る実績情報は、製品番号、引き合い日、予定納期、および予定数を格納する情報である。製品番号は、製品を特定するための整理番号である。製品番号により、製品の種類および型式が特定される。引き合い日は、製品の引き合いがあった日付を示す。予定納期は、製品の引き合い時に設定された納期を示す。予定数は、製品の引き合い時に設定された納品すべき製品の数を示す。
このように、需要情報は、製品の引き合いに係る情報である。
【0018】
図3は、実績情報の例を示す図である。
本実施形態に係る実績情報は、製品番号、引き合い日、予定納期、予定数、払出日、および払出数を格納する情報である。払出日は、製品が実際に納品された日付を示す。払出数は、実際に納品された製品の数を示す。
このように、実績情報は、製品の引き合いと払い出しとの関係を示す情報である。
【0019】
本実施形態に係る需要予測装置100の動作について説明する。需要予測装置100は、需要の予測を開始する前に、需要の予測に用いる係数を特定する。
図4は、第1の実施形態に係る需要予測方法の手順を示すフローチャートである。
需要予測装置100の係数特定部105は、実績情報記憶部104から実績情報を読み出す(ステップS1)。係数特定部105は、実績情報を読み出すと、同じ製品番号を有する製品の実績情報について、以下のステップS3〜S5の処理を実行する(ステップS2)。
まず係数特定部105は、ステップS2で選択された製品番号の実績情報に基づいて、需要の予測対象となる各月(例えば、1月から12月までの各月)について、予定納期がm月に属する製品の予定数の総数y
mと、払出日がm月に属する製品の払出数の総数Y
mとを算出する(ステップS3)。次に、係数特定部105は、以下に示す式(1)によって表される予測誤差eが最小になる係数α
1〜α
t、β
1〜β
t+1、γ
0〜γ
tの組み合わせを特定する(ステップS4)。ただし、α
mはm月の需要係数を示し、β
mはm月の前倒し係数を示し、γ
mはm月の後倒し係数を示す。
【0021】
つまり、係数特定部105は、m月の予定数の総数y
mに需要係数α
mを乗算したものから、m月の予定数の総数y
mに前倒し係数β
mを乗算したものおよびm月の予定数の総数y
mに後倒し係数γ
mを乗算したものを減算し、翌月の予定数の総数y
m+1に前倒し係数β
m+1を乗算したものおよび前月の予定数の総数y
m−1に後倒し係数γ
m−1を乗算したものを加算することで、予測需要数を算出する。そして、各月について得られた予測需要数と実際の払出数Y
mの差の二乗和を、予測誤差eとして算出する。係数特定部105は、予測誤差が最小になる係数の組み合わせを、例えば、一般化簡約勾配法(GRG:Generalized Reduced Gradient)を用いて特定することができる。なお、前倒し係数および後倒し係数は、需要係数より小さい正数である。係数特定部105は、特定した各月の需要係数、前倒し係数および後倒し係数を係数記憶部106に記録する(ステップS5)。
【0022】
係数記憶部106に各整理番号の製品の各月の需要係数、前倒し係数および後倒し係数が記録されると、需要予測部102は、需要情報記憶部101から需要情報を読み出す(ステップS6)。次に、需要予測部102は、同じ製品番号を有する製品の需要情報について、以下のステップS8〜S9の処理を実行する(ステップS7)。
まず需要予測部102は、ステップS7で選択された製品番号の需要情報に基づいて、需要の予測対象となる各月について、製品の予定数の総数x
mを算出する(ステップS8)。次に、需要予測部102は、係数記憶部106が記憶する係数を用いて、以下に示す式(2)によって各月の製品の予測需要数X
mを算出する(ステップS9)。
【0024】
つまり、需要予測部102は、予定納期がm月に属する製品の予定数x
mに、需要係数α
mから前倒し係数β
mおよび後倒し係数γ
mを減じて得られる係数(第1の係数)を乗じることで、m月のオンスケジュール払出数を算出する。また、需要予測部102は、予定納期がm月の直後の月に属する製品の予定数x
m+1に前倒し係数β
m+1(第2の係数)を乗じることで、m+1月の前倒し払出数を算出する。また、需要予測部102は、予定納期がm月の直前の月に属する製品の予定数x
m−1に後倒し係数γ
m−1(第2の係数)を乗じることで、m−1月の後倒し払出数を算出する。そして、需要予測部102は、m月のオンスケジュール払出数と、m+1月の前倒し払出数と、m−1月の後倒し払出数とを積算することによって、m月の製品の需要を予測する。
需要予測部102が各製品の各月の需要を予測すると、表示制御部103は、需要予測部102が算出した各製品の各月の予測需要数を、ディスプレイに表示させる(ステップS10)。
【0025】
このように、本実施形態によれば、需要予測装置100は、ある月の直前および直後の月に属する製品の予定数に基づいて、ある月の製品の需要を予測する。これにより、需要予測装置100は、納期の前倒しおよび後倒しが生じる場合にも、各月における製品の需要を精度よく予測することができる。
【0026】
《第2の実施形態》
第2の実施形態に係る需要予測装置100は、納期の前倒しおよび後倒しに加え、引き合いの期待度も鑑みて製品の月ごとの総払出数を予測する。
本実施形態に係る需要予測装置100は、実績情報記憶部104、係数記憶部106および需要情報記憶部101が記憶する情報が第1の実施形態と異なる。また本実施形態に係る需要予測装置100は、係数特定部105および需要予測部102の計算が第1の実施形態と異なる。
【0027】
需要情報記憶部101が記憶する需要情報は、製品番号、引き合い日、予定納期、および予定数に加え、引き合いの期待度を格納する。期待度は、受注の可能性の高さを示す値である。本実施形態に係る期待度は、受注の可能性が低い順に、例えば1からrまでのr段階の値で表すことができる。期待度は、顧客との交渉をもった担当者の判断に基づいて決定される。
実績情報記憶部104が記憶する実績情報も、製品番号、引き合い日、予定納期、予定数、払出日、および払出数に加え、さらに引き合いの期待度を格納する。
係数記憶部106は、各製品番号の製品の、各月および各期待度について、係数を記憶する。
【0028】
図5は、第2の実施形態に係る需要予測方法の手順を示すフローチャートである。
需要予測装置100の係数特定部105は、実績情報記憶部104から実績情報を読み出す(ステップS101)。係数特定部105は、実績情報を読み出すと、同じ製品番号を有する製品の実績情報について、以下のステップS103〜S105の処理を実行する(ステップS102)。
まず係数特定部105は、ステップS102で選択された製品番号の実績情報に基づいて、需要の予測対象となる各月mについて、期待度nごとに、予定納期がm月に属する製品の予定数の総数y
m,nと、払出日がm月に属する製品の払出数の総数Y
m,nとを算出する(ステップS103)。次に、係数特定部105は、以下に示す式(3)によって表される予測誤差eが最小になる係数α
1,1〜α
t,r、β
1,1〜β
t+1,r、γ
0,1〜γ
t,rの組み合わせを特定する(ステップS104)。ただし、α
m,nはm月における期待度nの引き合いに係る需要係数を示し、β
m,nはm月における期待度nの引き合いに係る前倒し係数を示し、γ
m,nはm月における期待度nの引き合いに係る後倒し係数を示す。
【0030】
係数特定部105は、特定した各月かつ各期待度の需要係数、前倒し係数および後倒し係数を係数記憶部106に記録する(ステップS105)。
【0031】
係数記憶部106に各整理番号の製品の各月かつ各期待度の需要係数、前倒し係数および後倒し係数が記録されると、需要予測部102は、需要情報記憶部101から需要情報を読み出す(ステップS106)。次に、需要予測部102は、同じ製品番号を有する製品の需要情報について、以下のステップS108〜S109の処理を実行する(ステップS107)。
まず需要予測部102は、ステップS107で選択された製品番号の需要情報に基づいて、需要の予測対象となる各月について、期待度ごとの製品の予定数の総数x
m,nを算出する(ステップS108)。次に、需要予測部102は、係数記憶部106が記憶する係数を用いて、以下に示す式(4)によって各月の製品の予測需要数X
mを算出する(ステップS109)。
【0033】
需要予測部102が各製品の各月の需要を予測すると、表示制御部103は、需要予測部102が算出した各製品の各月の予測需要数を、ディスプレイに表示させる(ステップS110)。
【0034】
このように、本実施形態によれば、需要予測装置100は、ある月の直前および直後の月に属する製品の予定数と、引き合いの期待度とに基づいて、ある月の製品の需要を予測する。これにより、需要予測装置100は、各月における製品の需要を精度よく予測することができる。
【0035】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態に係る需要予測装置100は、オンスケジュール払出数と前倒し払出数と後倒し払出数とを積算することで、各月の需要を予測するが、これに限られない。他の実施形態に係る需要予測装置100は、例えば、オンスケジュール払出数と前倒し払出数または後倒し払出数を積算することで、各月の需要を予測しても良い。需要予測装置100は、オンスケジュール払出数と前倒し払出数とに基づいて需要を予測することで、製品の不足を防ぐことができる。また需要予測装置100は、オンスケジュール払出数と後倒し払出数とに基づいて需要を予測することで、過剰在庫の発生を防ぐことができる。
【0036】
また、上述した実施形態に係る需要予測装置100は、需要予測対象となる各月に関連付けた係数を計算するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る需要予測装置100は、各月で共通の需要係数、前倒し係数および後倒し係数を用いて需要を予測しても良い。具体的には、他の実施形態に係る需要予測装置100は、実績情報に基づいて需要係数、前倒し係数および後倒し係数をそれぞれ1つだけ算出しても良い。なお、上述した実施形態に係る需要予測装置100のように、各月に関連付けた係数を計算し、当該係数を用いて需要を予測することで、例えば決算期や繁忙期など、前倒しおよび後倒しが生じやすい時期についても、精度よく需要を予測することができる。
【0037】
また、上述した実施形態に係る需要予測装置100は、製品番号ごと、すなわち製品の型式ごとに係数および予測需要数を計算するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る需要予測装置100は、顧客ごとに係数および予測需要数を計算しても良い。
【0038】
また、上述した実施形態に係る需要予測装置100は、予測対象の月の前後1カ月の需要情報に基づいて前倒し払出数および後倒し払出数を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る需要予測装置100は、予測対象の月の前後2カ月の需要情報に基づいて前倒し払出数および後倒し払出数を算出しても良い。この場合、係数特定部105は、前倒し係数として前月に係る前倒し係数と前々月に係る前倒し係数を算出する必要がある。また、この場合、係数特定部105は、後倒し係数として翌月に係る後倒し係数と翌々月に係る後倒し係数を算出する必要がある。
【0039】
また、上述した実施形態は、単位時間1カ月ごとに区切られた期間である「月」を予測対象期間とするが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る需要予測装置100は、単位時間1週間ごとに区切られた期間である「週」、単位時間1年ごとに区切られた期間である「年」または「年度」など、他の単位時間ごとに区切られた予測対象期間について需要を予測しても良い。
【0040】
また、上述した実施形態に係る需要予測装置100は、実績情報記憶部104および係数特定部105を備え、自装置で特定した需要係数、前倒し係数および後倒し係数に基づいて需要を予測するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る需要予測装置100は、需要係数、前倒し係数および後倒し係数を特定せず、他の装置が特定した需要係数、前倒し係数および後倒し係数に基づいて需要を予測しても良い。
【0041】
また、上述した実施形態に係る需要予測装置100は、需要の予測の度に需要係数、前倒し係数および後倒し係数を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る需要予測装置100は、過去の需要の予測の際に特定された需要係数、前倒し係数および後倒し係数に基づいて需要を予測しても良い。
【0042】
図6は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
上述の需要予測装置100は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、需要予測プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該需要予測プログラムに従って上記処理を実行する。また、各記憶部に対応する記憶領域は、補助記憶装置903に確保される。
【0043】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、需要予測プログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該需要予測プログラムを主記憶装置に展開し、上記処理を実行しても良い。
【0044】
また、当該需要予測プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該需要予測プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。