【0020】
この金属−セラミックス接合基板の製造に使用する鋳型の下側鋳型部材の例を
図1A〜
図1Cに示す。
図1Aおよび
図1Bに示すように、下側鋳型部材100は、平面形状が略矩形の底面部100aと、この底面部100aの周縁部から垂直方向上方に向かって延びる側壁部100bとからなる。この下側鋳型部材100の底面部100aの上面には、階段状の側壁を有する1つまたは複数(
図1Aおよび
図1Bでは2つを示す)凹部100cが形成されている。これらの凹部100cの各々は、金属回路板の回路パターンに類似した平面形状で且つ金属回路板の厚さと略等しい深さの1つまたは複数(
図1Aおよび
図1Bでは1つを示す)の回路用金属板形成部100dと、この回路用金属板形成部100dの上部に隣接して形成され、セラミックス基板と略等しい形状および大きさの1つまたは複数(
図1Aおよび
図1Bでは1つを示す)のセラミックス基板収容部100eとからなる。回路用金属板形成部100dは、
図1Cに示すように、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の深さが金属回路板の回路パターンに略対応する部分の深さよりdだけ浅くなっている。この下側鋳型部材100の上部に平面形状が略矩形の(図示しない)上側鋳型を被せることによって内部に画定される空間のうち、下側鋳型部材100の凹部100cを除いた部分は、金属ベース板形成部100fである。なお、上側鋳型には、金属溶湯を鋳型内に注湯するための(図示しない)注湯口が形成されている。また、下側鋳型部材100には、金属ベース板形成部100fと回路用金属板形成部100dとの間に延びる(図示しない)溶湯流路が形成され、セラミックス基板収容部100e内にセラミックス基板を収容したときにも金属ベース板形成部100fと回路用金属板形成部100dとの間が連通するようになっている。
【0028】
この金属−セラミックス回路基板の金属回路板12の厚さをT、抉れ部12aの高さをh
1、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さをh
2、回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)をD
B、隣接する回路パターンのトップ間の距離をD
T、抉れ部12aの深さをd
1とすると、回路パターンの厚さTは、好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上、最も好ましくは1mm以上であり、抉れ部12aの高さh
1は、好ましくは0.25mm以上、抉れ部12aの上端から回路パターンの上面までの高さh
2は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上、最も好ましくは0.3mm以上であり、抉れ部12aの深さd
1は、好ましくは0.05mm以上、隣接する回路パターンのトップ間の距離D
Tとそのボトム間の距離D
Bとの差|D
T−D
B|は、好ましくは0.5mm未満、さらに好ましくは0.3mm未満であり、隣接する回路パターンのボトム間の距離D
Bに対する回路パターンの厚さTの比T/D
Bは、好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上、最も好ましくは2以上である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明による金属−セラミックス回路基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0031】
[実施例1]
下側鋳型部材の底面に、回路パターンに略対応する部分の厚さが0.8mmであり、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の厚さが0.3mmであり且つそれらの間隔(隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅)が2mmである回路用金属板と略等しい形状および大きさの凹部である回路用金属板形成部が形成され、この回路用金属板形成部の上部に隣接して、71mm×70mm×0.6mmの大きさのセラミックス基板と略等しい形状および大きさの凹部であるセラミックス基板収容部が形成され、このセラミックス基板収容部の上部に隣接して、金属ベース板形成部が形成され、金属ベース板形成部と回路用金属板形成部との間に延びる溶湯流路が形成された(
図1A〜
図1Cに示す鋳型100と同様の形状の)カーボン製の鋳型を用意した。
【0032】
この鋳型の下側鋳型部材のセラミックス基板収容部内に71mm×70mm×0.6mmの大きさの窒化アルミニウム基板を収容し、上側鋳型を被せて密閉した後、溶湯口から金属ベース板形成部内にアルミニウム溶湯を注湯し、溶湯流路を介して回路用金属板形成部まで金属溶湯を充填し、その後、冷却して金属溶湯を固化させることにより、
図2および
図3Aに示すように、セラミックス基板10の一方の面に金属ベース板14が直接接合するとともに、他方の面に回路パターンに類似した形状の回路用金属板12が直接接合した一体の金属−セラミックス接合基板を得た。
【0033】
次に、
図3Bに示すように、回路用金属板12の全面(回路用金属板12の回路パターンに略対応する部分の上面および側面と隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の全面)を覆うようにスプレーコートによりエッチングレジスト16を塗布した。
【0034】
次に、
図4Aに示すように、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅(2mm)より少し狭い部分(底面の中央の幅1.6mmの部分)を覆うエッチングレジスト16の部分のみをレーザー加工により除去した後に、
図4Bに示すように、塩化第二鉄溶液によってオーバーエッチングになるようにエッチング処理を行って回路用金属板12の不要部分を除去することにより、所望の回路パターンの金属回路板12を形成するとともに、隣接する回路パターンの互いに対向する側面の下側部分に、回路パターンの側面の長手方向に沿って延び且つ回路パターンの側面の内側に湾曲するように抉れた凹部(抉れ部)12aを形成した。
【0035】
次に、エッチングレジスト16を剥離して、
図4Cに示すように、所望の回路パターンの金属回路板12を有する金属−セラミックス回路基板を得た。
【0036】
このようにして得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが0.8mm、抉れ部12aの高さh
1が0.4mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が0.4mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが2.2mm、そのトップ間の距離D
Tが2.2mm、抉れ部12aの深さd
1が0.08mmであり、|D
T−D
B|=0、T/D
B=0.36であった。
【0037】
[実施例2]
オーバーエッチングにならないように適度にエッチング処理を行った以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を得た。
【0038】
本実施例で得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが0.8mm、抉れ部12aの高さh
1が0.3mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が0.5mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが2mm、そのトップ間の距離D
Tが2.2mm、抉れ部12aの深さd
1が0.06mmであり、|D
T−D
B|=0.2、T/D
B=0.40であった。
【0039】
[実施例3]
回路パターンに略対応する部分の厚さが0.4mmであり、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の厚さが0.2mmであり且つそれらの間隔(隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅)が0.3mmである回路用金属板と略等しい形状および大きさの凹部である回路用金属板形成部が底面に形成された下側鋳型部材を使用し、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅(0.3mm)より狭い部分(底面の中央の幅0.1mmの部分)を覆うエッチングレジスト16の部分のみをレーザー加工により除去した以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を得た。
【0040】
本実施例で得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが0.4mm、抉れ部12aの高さh
1が0.3mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が0.1mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが0.5mm、そのトップ間の距離D
Tが0.5mm、抉れ部12aの深さd
1が0.07mmであり、|D
T−D
B|=0、T/D
B=0.80であった。
【0041】
[実施例4]
回路パターンに略対応する部分の厚さが0.4mmであり、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の厚さが0.3mmであり且つそれらの間隔(隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅)が0.3mmである回路用金属板と略等しい形状および大きさの凹部である回路用金属板形成部が底面に形成された下側鋳型部材を使用し、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅(0.3mm)より狭い部分(底面の中央の幅0.1mmの部分)を覆うエッチングレジスト16の部分のみをレーザー加工により除去した以外は、実施例2と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を得た。
【0042】
本実施例で得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが0.4mm、抉れ部12aの高さh
1が0.3mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が0.1mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが0.3mm、そのトップ間の距離D
Tが0.3mm、抉れ部12aの深さd
1が0.06mmであり、|D
T−D
B|=0、T/D
B=1.33であった。
【0043】
[実施例5]
回路パターンに略対応する部分の厚さが1.1mmであり、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の厚さが0.8mmであり且つそれらの間隔(隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅)が0.4mmである回路用金属板と略等しい形状および大きさの凹部である回路用金属板形成部が底面に形成された下側鋳型部材を使用し、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅(0.4mm)より狭い部分(底面の中央の幅0.1mmの部分)を覆うエッチングレジスト16の部分のみをレーザー加工により除去した以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を得た。
【0044】
本実施例で得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが1.1mm、抉れ部12aの高さh
1が1mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が0.1mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが0.6mm、そのトップ間の距離D
Tが0.6mm、抉れ部12aの深さd
1が0.34mmであり、|D
T−D
B|=0、T/D
B=1.83であった。
【0045】
[実施例6]
回路パターンに略対応する部分の厚さが2.1mmであり、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の厚さが0.4mmであり且つそれらの間隔(隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅)が2mmである回路用金属板と略等しい形状および大きさの凹部である回路用金属板形成部が底面に形成された下側鋳型部材を使用し、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅(2mm)より狭い部分(底面の中央の幅1.5mmの部分)を覆うエッチングレジスト16の部分のみをレーザー加工により除去した以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を得た。
【0046】
本実施例で得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが2.1mm、抉れ部12aの高さh
1が0.95mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が1.15mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが2.1mm、そのトップ間の距離D
Tが3mm、抉れ部12aの深さd
1が0.3mmであり、|D
T−D
B|=0.9、T/D
B=1.00であった。
【0047】
[実施例7]
回路パターンに略対応する部分の厚さが2.1mmであり、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分の厚さが0.4mmであり且つそれらの間隔(隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅)が2mmである回路用金属板と略等しい形状および大きさの凹部である回路用金属板形成部が底面に形成された下側鋳型部材を使用し、隣接する回路パターンの互いに対向する側面間の部分(溝部)の底面の幅(2mm)より狭い部分(底面の中央の幅1.5mmの部分)を覆うエッチングレジスト16の部分のみをレーザー加工により除去した以外は、実施例2と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を得た。
【0048】
本実施例で得られた金属−セラミックス回路基板の金属回路板12は、金属回路板12の厚さTが2.1mm、抉れ部12aの高さh
1が0.65mm、抉れ部12aの上端から金属回路板12の上面までの高さh
2が1.45mm、隣接する回路パターンのボトム間の距離(絶縁距離)D
Bが2.1mm、そのトップ間の距離D
Tが2.8mm、抉れ部12aの深さd
1が0.16mmであり、|D
T−D
B|=0.7、T/D
B=1.00であった。