(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下方向に貫通する開口部と、印刷対象となる基板に対向する側の基板対向面とを有し、当該基板対向面を当該基板に接触させ、当該開口部から当該基板上にはんだペーストを塗布可能とする印刷用マスクにおいて、
前記基板対向面の全面にわたり形成される粗面と、
前記開口部の内側面及び前記基板対向面に、コーティングされる撥水層とを備え、
前記基板対向面とは反対側の面であるスキージ面が、シボ面であり、
前記スキージ面には前記撥水層がコーティングされていないことを特徴とする印刷用マスク。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品の小型化及び精密化が進展し、従来よりも小型かつ高精細な配線が搭載された基板が要求されている。基板上の配線には、導電部材として、通常、はんだペーストが用いられる。はんだペーストは、粉末状のはんだとペースト状のフラックスとが混練されて形成されるペースト状のはんだである。
【0003】
はんだペーストを基板上に塗布するための部材として、配線の所望のパターン形状を開口部で型取った印刷用マスクが用いられる。基板上に載置した印刷用マスクに対して、スキージを用いてはんだペーストを塗布した後、当該印刷用マスクを離すことにより、基板上に所望のパターン形状を有する配線が、はんだペーストによって形成される。
【0004】
さらに現在では、より高精細なパターン形状(ファインピッチパターン)の配線形状を基板に形成できる印刷用マスクが求められており、印刷用マスクの材質や形状について、様々な改善や工夫が提案されている。このような従来の印刷用マスクとしては、種々のメタルマスクが提案されており、例えば、メタルマスクが基板と対向する側の表面に、撥水処理を施すものや、凹部を形成してスキージング時における基板との接触面積を低減させるもの等が提案されている。
【0005】
例えば、従来の印刷用マスクとしては、メタルマスクの基板接触面側全面に撥水性及び滑り性を備えたフッ素樹脂、シリコーン樹脂又はその双方を存在させた物、あるいはシラン化合物等のコーティングを施すと共に、基板に接触する領域内で基板接触部以外の部分に、スキージング時における基板との接触を避けるための枠状の凹部を形成するものがある(特許文献1参照)。
【0006】
さらに、当該凹部について、当該凹部の外周縁の大きさを、基板の外周縁領域よりも小さく構成するとともに、スキージング時に基板の外周領域に接触するメタルマスクの周縁平坦部内周縁に、基板との接触面積を小さくするための多数の微小凹部を形成するものがある(特許文献2参照)。
【0007】
また、メタルマスクの基板接触面側における基板との接触領域に、斜め平行に延長する多数の凹溝部及び斜め平行に延長する多数の凸条部とが交互に設けられ、当該凹溝部の存在により、スキージング時における基板との接触面積を少なくするものがある(特許文献3参照)。
【0008】
また、金属製の上板と、プラスチック製の下板とを備える二層構造のメタルマスクもあり、プラスチック製の下板に対してエキシマレーザ加工を施すことによって、下板の下面側に、上板と下板を接合するための貫通孔を取り囲むようにして環状の凹溝部が形成されるものがある(特許文献4参照)。
【0009】
この他、基板との版離れ性の向上を図るものとして、基板接触面側の表面が鏡面仕上げにされるものや(特許文献5参照)、基板接触面側の非印刷部(はんだペーストを基板に塗布しない部分)に、外部より空気が流入し外部に流出する梨地状の空気流通凹部を形成してなるメタルマスクもある(特許文献6参照)。
【0010】
さらに、メタルマスクの開口部にも撥水処理を施し、はんだペーストとの離れ性の向上を図るものもある。例えば、シリコーン変性フッ素系樹脂を金属層開口部内壁及び金属層基板側に塗布、硬化させ開口部内壁面被覆層及び基板面被覆層として硬化樹脂層を形成させた印刷用メタルマスクがある(特許文献7参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の印刷用マスクは、基板から離れた際に、メタルマスクの上面から塗布されたはんだペーストが、メタルマスクの開口部の内側面に付着したまま残存し、基板に対して十分な量が塗布されない虞がある。また、当該メタルマスクの開口部の内側面に付着したはんだペーストによって、基板から離れた際にはんだペーストがメタルマスクと共に持ち上がり、基板上で形成されたはんだペーストのパターン形状が崩れてしまう虞もある。
【0013】
さらに、上述の特許文献7で示した構造を採用した場合でも、はんだペーストがメタルマスクの開口部の内壁を通過する際に、開口部内壁面被覆層及び基板面被覆層の開口部近傍に滞留し、はんだペーストの滲みが過剰に生じたり、基板との離れ易さ(版離れ性)が低下したりする虞がある。
【0014】
このように、従来の印刷用マスクは、基板に十分な量のはんだペーストが塗布されないことや、基板上ではんだペーストが過剰の滲みを生じることによって、基板上で所望とするはんだペーストのパターン形状が崩れ、その結果、基板の配線パターンの精度が低下し、配線の品質が低くなるという課題があった。
【0015】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、接触状態を改善してはんだペーストの配置精度の特性に優れる印刷用マスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願に開示する印刷用マスクは、上下方向に貫通する開口部と、印刷対象となる基板に対向する側の基板対向面とを有し、当該基板対向面が当該基板に載置された状態で、当該開口部から当該基板上にはんだペーストを塗布可能とする印刷用マスクにおいて、前記開口部の内側面及び前記基板対向面に、コーティングされる撥水層と、前記基板対向面の少なくとも前記開口部周辺に形成される粗面とを備えるものである。
【0017】
このように、本願に開示する印刷用マスクは、前記開口部の内側面及び前記基板対向面に撥水層(低表面張力層)がコーティングされ、前記基板対向面の少なくとも前記開口部周辺に粗面が形成されていることから、前記はんだペーストが開口部から流し込まれた際に、この粗面において極めて小さい滲みが発生することによって、はんだペーストを前記開口部へと誘引する力が生じることとなり、適切な量のはんだペーストを開口部の内部へと円滑に引き込むことができる。
【0018】
前記開口部の内側面では、前記撥水層(低表面張力層)がコーティングされた表面における表面張力が低下して、撥水性を呈することとなり、当該表面上の液体(はんだペースト)を弾き易くなり、はんだペーストの抜け易さ(はんだ抜け性)が向上する。
さらに、前記基板対向面では、粗面によって、基板との離れ易さ(版離れ性)が向上することとなり、印刷用マスクへのはんだペーストの付着が抑制され、基板上ではんだペーストにより構成されるパターン部が、正確かつ高精細なものとなる。
【0019】
また、本願に開示する印刷用マスクは、前記粗面が、前記基板対向面の少なくとも前記開口部周辺に形成されていることから、前記基板対向面のうち特に前記開口部周辺の境界部分に残存し易いはんだペーストの残存が抑制されることとなり、基板上のパターン部が、より正確で高精細なものとなる。
【0020】
また、本願に開示する印刷用マスクは、必要に応じて、前記粗面が、前記基板対向面の全面にわたり形成されているものである。このように、本願に開示する印刷用マスクは、前記粗面が、前記基板対向面の全面にわたり形成されていることから、前記基板対向面と前記基板との接触面積が大幅に小さくなることとなり、特に基板との離れ易さ(版離れ性)が向上され、基板上に構成されるはんだペーストによるパターン部が、より正確で高精細なものとなる。
【0021】
また、本願に開示する印刷用マスクは、必要に応じて、前記基板対向面が、凹部を有するものである。このように、本願に開示する印刷用マスクは、前記基板対向面が、凹部を有することから、基板対向面(基板側接触面)が小さく絞り込まれ、プリント基板(PCB)のように、前記基板のうねりが多く、印刷用マスクが基板に接触しきれないことによる滲みが生じ易い形状であっても、印刷用マスクと基板対向面との接触が確実に行えることとなり、過度の滲みの発生を抑えることができ、基板上ではんだペーストにより構成される配線が、正確かつ高精細なものとなる。さらに前記基板との接触面積を減少させることとなり、基板との離れ易さ(版離れ性)が向上する。
【0022】
また、本願に開示する印刷用マスクの製造方法は、上下方向に貫通する開口部と、印刷対象となる基板に対向する側の基板対向面とを有する印刷用マスクを製造する印刷用マスク製造方法において、母型基板上のレジストに覆われていない部分に金属めっき層を堆積させ、少なくとも前記レジストの周辺に対して、堆積させた金属めっき層をエッチングして粗面を形成する粗面形成工程と、前記レジスト及び前記母型基板を除去後、少なくとも前記開口部の内側面及び前記基板対向面に、撥水層をコーティングするコーティング工程とを含むものである。このように、前記基板対向面の少なくとも前記開口部周辺に粗面が形成され、少なくとも前記開口部の内側面及び前記基板対向面に撥水層がコーティングされることから、撥水層(低表面張力層)のコーティングによりはんだペーストとの抜け性が高まると共に、前記基板対向面に形成された粗面により基板との離れ易さ(版離れ性)が向上することとなり、印刷用マスクへのはんだペーストの付着が抑制され、基板上ではんだペーストにより構成されるパターン部が、正確かつ高精細なものとなる。
【0023】
また、本願に開示する印刷用マスクの製造方法は、上下方向に貫通する開口部と、印刷対象となる基板に対向する側の基板対向面とを有する印刷用マスクを製造する印刷用マスク製造方法において、母型基板上のレジストに覆われていない部分に金属めっき層を堆積させ、当該堆積された金属めっき層の表面の一部に対して、さらに追加のレジストを覆い、当該追加のレジストで覆われていない部分の金属めっき層をエッチングして凹部を形成する凹部形成工程と、前記レジスト及び前記母型基板を除去後、少なくとも前記開口部の内側面及び前記基板対向面に、撥水層をコーティングするコーティング工程とを含むものである。このように、撥水層(低表面張力層)のコーティングによりはんだペーストとの抜け性が高まると共に、前記基板対向面に形成された凹部により基板との離れ易さ(版離れ性)が向上することとなり、印刷用マスクへのはんだペーストの付着が抑制され、基板上ではんだペーストにより構成されるパターン部が、正確かつ高精細なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態を上記
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態に係る印刷用マスクとしてのメタルマスク1は、
図1に示すように、上下方向に貫通する開口部2と、印刷対象となる基板100と対向する基板対向面3を有し、この基板対向面3が基板100に載置された状態で、この開口部2から基板100上にはんだペーストを塗布可能とするメタルマスク1において、この開口部2の内側面(以下、開口内側面21という)及びこの基板対向面3にコーティングされる撥水層(低表面張力層)としてのフッ素樹脂11と、この基板対向面3に形成される粗面31とを備えるものである。
【0027】
この粗面31は、微細な凹凸形状からなり、
図1に示すように、この基板対向面3の全面にわたり形成される。この粗面31は、基板対向面3の全面にわたって形成されることから、基板対向面3と基板100との接触面積が大幅に低減されることとなり、基板100との離れ易さ(版離れ性)が向上され、はんだペースト200により基板100上に構成されるパターン部について、さらなるファインピッチ化が図れる。
【0028】
この粗面31は、表面粗さについて、特に限定されないが、0.1μm〜1μm間隔で形成される微細な凹凸形状から成ることが好ましい。この表面粗さは、基板100との離れ易さ(版離れ性)の点から、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm〜0.5μmであることがより好ましく、例えば、算術平均粗さ(Ra)が0.35μmとなる粗面とすることができる。
【0029】
本発明で用いられるフッ素樹脂11としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)を用いる。四フッ化エチレン樹脂(PTFE)は、耐熱性及び撥水性に優れるため、特に好ましい。この他のフッ素樹脂11としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、パーフルオロ−アルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂(ETFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)を挙げることができる。
【0030】
なお、メタルマスク1において、スキージが走査する側(スキージ面4)の表面には、上述したフッ素樹脂11がコーティングされる必要は無く、物理的な平滑面(光沢面)又は凹凸形状から成るシワ模様(シボ面)を形成する。
【0031】
メタルマスク1のスキージ面4が、このような光沢面である場合には、スキージが低摩擦で円滑に走査されることとなり、メタルマスク1のスキージ面側及びスキージ自体の磨耗及び劣化を抑制することが可能となる。一方、このスキージ面4がシボ面である場合には、スキージがメタルマスク1から摩擦力を確実に受けた状態でスキージ面4を走査することとなり、はんだペースト200の基板100への塗布をより確実に行うことができる。
【0032】
以下、本実施形態に係るメタルマスク1の製造方法を、上記
図2〜
図4を用いて説明する。
先ず、
図3(a)に示すように、メタルマスクを載置するための母型300(母型基板)を用意する(S1)。この母型300を構成する材料としては、ステンレス鋼(SUS)を用いる。
図3(b)に示すように、この母型300の上面をめっきし、凹凸面又は光沢面を有する下地めっき310を形成する(S2)。
【0033】
この下地めっき310上に、レジストを全面に塗布した後、マスキングして露光することによって、
図3(c)に示すように、所望のパターン形状を有するレジスト400を形成(レジストパターニング)する(S3)。レジストパターン400が形成された母型300をめっきして、
図3(d)に示すように、メタルマスク原型1aを形成する(S4)。このめっきに使用する金属には、Ni−Co合金を用いる。その後、このめっきを行った表面を研磨加工し、研磨面500を得るようにしても良い。
【0034】
図4(a)に示すように、この研磨面500に対してエッチングを行って、めっき層表面(研磨面500)に粗面31を形成する(S5)。
図4(b)に示すように、レジスト400を除去し、母型300及び下地めっき310を剥離する(S6)。凹凸面又は光沢面を有する下地めっき310の剥離によって、メタルマスク1は、下地めっき310と接していた箇所(スキージが移動するスキージ面4)に、凹凸面又は光沢面が形成されることとなり、スキージ面4がシワ模様(シボ面)又は平滑面(光沢面)として形成される。
【0035】
メタルマスク1におけるスキージ面4の表面を、このような光沢面とすることにより、スキージの走査がより滑らかになり、メタルマスク1のスキージ面4側の磨耗や劣化を抑制することが可能となる。一方、このスキージ面4の表面を、シボ面とした場合には、滑りを抑えてスキージが走査されることとなり、はんだペースト200をムラ無く均一に塗布することが可能となる。
【0036】
図4(c)に示すように、得られたメタルマスク1を上下反転させて、フッ素樹脂11をコーティング(フッ素加工)する(S7)。このフッ素加工は、メタルマスク1のスキージ面4以外の表面に対して行う。なお、このフッ素加工は、メタルマスク1の全表面に対して行うこともでき、この場合には、フッ素加工が一律に行われることから、製造の手間を抑制することができる。
この他にも、このフッ素加工は、レジスト400を除去した後、母型300及び下地めっき310を剥離する前に実施しても良い。
【0037】
さらに、このメタルマスク1の開口内側面21を鏡面加工する。メタルマスク1は、開口内側面21の鏡面加工によって、開口内側面21を通過するはんだペースト200の滑り性がさらに向上することとなり、はんだペースト200の抜け易さ(はんだ抜け性)が向上され、はんだペースト200により基板100上に構成されるパターン部は、滲みが抑制されて正確で高精細なものとなる。
【0038】
図5及び
図6は、スキージ600をメタルマスク1上に走査させて、はんだペースト200が開口部2を経由して、基板100に塗布される状態を示している。先ず、
図5(a)に示すように、メタルマスク1は、基板100から隔離されているが、後述のスキージ600の動作によって基板100に押し付けられる。
【0039】
図5(b)に示すように、スキージ600は、メタルマスク1上のスキージ面400を方向Aに沿って移動する。この移動に伴って、はんだペースト200が開口部2に向かって流し込まれると共に、メタルマスク1に対しては鉛直方向下向き(方向B)に押圧される力が生じる。
【0040】
メタルマスク1は、鉛直方向下向き(方向B)に押圧されることによって撓み、基板対向面3と基板200との間で接触が生じる。なお、
図5(b)では、説明の便宜上、メタルマスク1と基板100との間に隙間があるように描いているが、実際には、粗面31の一部が基板100と接触している。基板200と接触する基板対向面3においては、上述した微細な表面粗さ(例えば、Raが0.35μmの凹凸形状)を有する粗面31が形成されていることから、開口内側面21から離れる方向(図中の方向C)に向かって、はんだペースト200の端部に粗面の凹凸のレベルに相当する、極めて小さい滲み200aが一時的に生じる。
【0041】
この極めて小さい滲み200aが発生することによって、
図5(b)に示すように、はんだペースト200をスキージ面4から開口部2へと誘引する力がこの極めて小さい滲み200aに向かう流れに沿って生じることとなり、適切な量のはんだペースト200を開口部2の内部へと円滑に引き込むことができる。
図5(c)に示すように、スキージ600がこの開口部2を通過した後には、この開口部2の内部へ引き込まれたはんだペースト200が開口部2に十分に充填された状態となる。
【0042】
この後、
図6(a)に示すように、メタルマスク1が基板100から離れた(方向D)際には、上述した極めて小さい滲み200aは、はんだペースト200の本体中心部分に向かって引き戻される。
【0043】
このようにして得られた基板は、
図6(b)に示すように、開口部2の形状に沿って、はんだペースト200から構成されるパターン部100aと、はんだペースト200を含まない絶縁部分100bとに確実に分離されて構成される。
【0044】
このように、本実施形態に係るメタルマスク1は、開口内側面21及び基板対向面3にフッ素樹脂11がコーティングされ、基板対向面3に粗面31が形成されていることから、この粗面31において上述した極めて小さい滲み200aが発生し、はんだペースト200をスキージ面4から開口部2へと誘引する力が生じることとなり、適切な量のはんだペースト200を開口部2の内部へと円滑に引き込むことができる。
【0045】
また、開口内側面21では、コーティングされたフッ素樹脂11によって、はんだペースト200の抜け易さ(はんだ抜け性)が向上すると共に、基板対向面3では、粗面31により基板100に対する離れ易さ(版離れ性)が向上することとなり、メタルマスク1に対するはんだペースト200の付着が抑制され、基板100上ではんだペースト200により構成されるパターン部が正確かつ高精細なものとなる。
【0046】
本実施形態に係るメタルマスク1の用途は、特に限定されず、基板100がウェハであることが好ましいが、この他、プリント基板(PCB)に対しても適用することができる。
【0047】
なお、前記粗面31の位置は、前記基板対向面3上に形成されるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、基板対向面3のうち、開口内側面21の近傍(開口部2の近傍)のみに形成することも可能である。この開口部2近傍に形成される粗面31の範囲は、基板100との離れ易さ(版離れ性)の点から、開口端から250μm以上を有していることが好ましい。
【0048】
このように、粗面31が、少なくとも開口部2周辺に形成されることから、基板対向面3のうち開口部2近傍において、上述した極めて小さい滲み200aが発生する。この極めて小さい滲み200aが発生することによって、はんだペースト200をスキージ面4から開口部2へと誘引する力が生じることとなり、適切な量のはんだペースト200を開口部2の内部へと円滑に引き込むことができる。
【0049】
また、粗面31が開口部2近傍にあれば、基板対向面3のその他の箇所の形状は問わない。例えば、このような前記基板対向面3のその他の箇所の形状として、凹部を有するものでもよい。この場合には、基板対向面3が、凹部を有することから、基板対向面3(基板側接触面)が小さく絞り込まれ、プリント基板(PCB)のように、基板100のうねりが多く、メタルマスク1が基板100に接触しきれないことによる滲みが生じ易い形状であっても、メタルマスク1と基板対向面3との接触が確実に行えることとなり、過度の滲みの発生を抑えることができ、基板100上ではんだペースト200により構成されるパターン部が、正確かつ高精細なものとなる。さらに前記基板との接触面積を減少させることとなり、基板100との離れ易さ(版離れ性)が向上する。
また、上記実施形態では、前記開口内側面21をコーティングする撥水層として、フッ素樹脂を用いたが、これに限定されず、この他にも撥水性(低表面張力性)を有する素材であれば、上記の撥水層を形成することが可能である。
【0050】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態を上記
図8〜
図12に基づいて説明する。
【0051】
本実施形態に係る印刷用マスクとしてのメタルマスク1は、
図8に示すように、前記第1の実施形態と同様に、前記フッ素樹脂11と、前記開口部2と、前記開口内側面21と、前記基板対向面3と、前記粗面31とを備える構成であり、さらに、前記基板対向面3が、基板対向凹部32を有し、前記粗面31がこの基板対向凹部32に形成される構成である。この基板対向凹部32は、
図8に示すように、前記基板対向面3のうち、前記開口内側面21を含まない側の領域に配設される。
【0052】
また、前記基板対向面3は、この基板対向凹部32に含まれない領域から成り、前記基板対向面3のうち、前記開口内側面21を含む側の領域に配設される基板対向凸部33を有する。この基板対向凸部33の前記基板対向面3上における範囲は、限定されるものでないが、はんだペースト200の版離れ性の点から、250μm〜500μmとする。また、この基板対向凹部32の窪みの深さについては、限定されるものでないが、メタルマスク1の良好なクリーニング性を考慮して5μmとする。
【0053】
以下、本実施形態に係るメタルマスク1の製造方法を、
図9〜
図11を用いて説明する。
【0054】
上記S1と同様に、
図10(a)に示すように、メタルマスク1を製造するための母型300を用意する(S11)。上記S2と同様に、この母型300の上面をめっきし、凹凸面又は光沢面を有する下地めっき310を形成する。
【0055】
上記S3と同様に、この下地めっき310上に、レジストを全面に塗布した後、マスキングして露光することによって、
図10(b)に示すように、この母型300上に、所望のパターン形状を有するレジスト400を形成(レジストパターニング)する(S12)。上記S4と同様に、
図10(c)に示すように、このレジストパターン400が形成された母型300に対してめっきを行い、メタルマスク原型1aを形成する(S13)。
【0056】
さらに、上記S12と同様に、メタルマスク1及びレジスト400上に対して、積層状態でレジストを全面に塗布した後、マスキングして露光することによって、
図10(d)に示すように、所望のパターン形状を有するレジスト401を形成(レジストパターニング)する(S14)。
【0057】
メタルマスク1の上面に形成された凹部410(後述の基板対向凹部32の対応位置)に対して、ハーフエッチングを行うことによって、
図11(a)に示すように、粗面31を有する凹みからなる基板対向凹部32が形成される(S15)。
【0058】
上記S6と同様に、
図11(b)に示すように、レジスト401を除去し、母型300を剥離する(S16)。この剥離によって、メタルマスク原型1aの上面であるスキージ面4に対して、凹凸面又は光沢面が形成されることとなり、スキージ面4がシワ模様(シボ面)又は平滑面(光沢面)として形成される。上記S7と同様に、
図11(c)に示すように、メタルマスク1のスキージ面4以外の表面に対して、フッ素樹脂11をコーティング(フッ素加工)する(S17)。
【0059】
このようにして得られる本実施形態に係るメタルマスク1は、前記基板対向面3が、基板対向凹部32を有することから、基板100との接触面積について、この基板対向凹部32が配設されておらず前記基板対向面3が全面にわたり平坦な場合よりもさらに減少させることとなり、基板100との離れ易さ(版離れ性)が向上され、基板100上に構成されるはんだペースト200によるパターン部が、より正確で高精細なものとなる。
【0060】
図12(a)に示すように、メタルマスク1は、基板100から隔離されているが、後述のスキージ600の動作によって基板100に押し付けられる。
図12(b)に示すように、スキージ600は、図中の点線部から一点鎖線に向かって進行方向(方向A)に沿って、スキージ端部を下向き(方向B)に押し付けてメタルマスク1を撓ませながらスキージ面4上を移動し、はんだペースト200をスキージ面4上で押し動かす。
【0061】
スキージ600が、開口部2近傍まで到達すると、メタルマスク1のうちの基板対向凸部33において、スキージ600からの押圧を局所的に受ける(図中の領域E)と共に、開口部2からはんだペースト200が基板100に流し込まれる。
【0062】
メタルマスク1と基板100とが接触する極めて狭い領域Eの形成によって、基板100にうねりがあっても、メタルマスク1と基板100とが確実に接触されることから、はんだペースト200の開口部2の外部への漏出が堰き止められることとなり、はんだペースト200が開口部2の形状に沿って正確に塗布される。すなわち、メタルマスク1の基板対向面3側に基板対向凹部32を有することによって、基板100のうねりの影響を最小限に抑えることができる。
【0063】
さらに、開口内側面21が鏡面加工されていることから、はんだペースト200が基板100へと円滑に滑り落ちることにより、はんだ抜け性が向上されることとなり、はんだペースト200が開口部2の形状に沿って確実に塗布される。
【0064】
このことから、プリント基板(PCB)のように、基板100のうねりが多く、メタルマスク1が基板100に接触しきれないことによる滲みが生じ易い形状であっても、基板対向面3(基板側接触面)を小さく絞り込むことによって、メタルマスク1と基板対向面3との接触が確実に行えることとなり、過度の滲みの発生を抑えることができ、基板100上ではんだペースト200により構成されるパターン部が、正確かつ高精細なものとなる。
【0065】
スキージ600がこの開口部2を過ぎた後、メタルマスク1における基板対向凸部33は、基板100と接触する表面積が極めて狭いこと及びフッ素樹脂11による撥水性が寄与することにより、
図12(c)に示すように、メタルマスク1に対して、浮き上がる向き(図中の方向F)の力が生じる。この力によって、メタルマスク1は、基板100から確実に離れることとなる。
【0066】
そして、メタルマスク1の開口内側面21近傍において、基板100との間にはんだペースト200の残留や滲みが生じることはなく、精度の高いパターン部が基板100上に形成される。
【0067】
メタルマスク1は、その表面をコーティングされたフッ素樹脂11の作用によって、撥水性が高められ、さらに、基板対向凹部32によって、基板100と接触しにくく、基板100からの離反性(版離れ性)が、一層高められることとなり、メタルマスク1によるはんだペースト200の配置精度(パターン精度)が向上し、はんだペースト200がメタルマスク1に残留することが抑制されると共に、基板100上においてはんだペースト200の形状を崩すような滲みの発生が抑制され、はんだペースト200が基板100上で構成するパターン部が、所望の形状に沿った正確な形状として形成することができる。
【0068】
以上に述べた本実施形態に係るメタルマスク1の用途としては、基板100をプリント基板(PCB)としているが、それに限定されず、基板100をプリント基板(PCB)よりうねりが小さいもの(例えば、ウェハ)でも構わない。
【0069】
なお、上記の各実施形態では、メタルマスク1の開口内側面21を鏡面加工としたが、この形態に限定されるものではない。例えば、メタルマスク1の開口内側面21を加工処理しないこともできる。この場合には、より製造コストを抑えてメタルマスク1を製造することが可能となる。
【0070】
1 メタルマスク
1a メタルマスク原型
11 フッ素樹脂
2 開口部
21 開口内側面
3 基板対向面
31 粗面
32 基板対向凹部
33 基板対向凸部
4 スキージ面
100 基板
100a パターン部
100b 絶縁部分
200 はんだペースト
200a 滲み
300 母型
310 下地めっき
400 レジスト
401 レジスト
410 凹部
500 研磨面
600 スキージ