(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上層繊維層と下層繊維層を有する積層不織布であって、該積層不織布を平面視した側の第1面側に突出し前記第1面側とは反対の第2面側に内部空間を有する凸部と、前記第2面側に凹んだ凹部とを有し、
前記凸部と前記凹部は、該積層不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに、壁部を介して交互に連続して複数が配され、
前記第1面側が上層繊維層側、前記第2面側が下層繊維層側であり、少なくとも前記下層繊維層に吸水性繊維が配されており、該吸水性繊維が熱融着性繊維である積層不織布。
吸液前の荷重0.05kPa下の前記積層不織布全体の厚みをTとし、高粘度液体を吸液後の荷重5kPa下の前記積層不織布全体の厚みをTaとしたとき、(Ta/T)×100が60%以上である請求項1に記載の積層不織布。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る積層不織布(単に不織布ともいう)の好ましい一実施形態について、
図1を参照しながら、以下に説明する。
本発明の積層不織布20は、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面シートに適用することが好ましい。その際、第1面側Z1を着用者の肌面側に向けて用い、第1面側Z1とは反対の第2面側Z2を物品内部の吸収体(図示せず)側に配置して用いることが好ましい。以下、図面に示した積層不織布20の第1面側Z1を着用者の肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明する。本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0011】
図1に示すように、シート状の積層不織布20は、上層繊維層20Aと、吸液性を有する吸液性繊維26が含まれている下層繊維層20Bの2層構造を成す。吸水性繊維26は、下層繊維層20Bに配されていれば、上層繊維層20Aに配されていても良い。吸水性繊維26としては、ポリアクリル酸繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアセテート繊維、等が挙げられる。以下、代表して、下層繊維層20Bに吸水性繊維26としてポリアクリル酸繊維26が配されている構成について説明する。
【0012】
積層不織布20は、平面視した側の第1面側Z1に突出し、かつ第2面側Z2に内部空間23を有する凸部21を備える。凸部21は上層繊維層20Aの上層凸部21Aと下層繊維層20Bの下層凸部21Bの積層構造である。したがって、内部空間23は下層凸部21Bの内部空間となっている。また積層不織布20は、第1面側Z1とは反対の第2面側Z2に凹んだ凹部22を有する。凹部22は、上層繊維層20Aの上層凹部22Aと下層繊維層20Bの下層凹部22Bの積層構造である。
【0013】
さらに凸部21と凹部22は、該積層不織布20の平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に連続して配されている。具体的には、平面視交差するX方向およびY方向のそれぞれに交互に連続して配されている。なお、Z方向が積層不織布の厚み方向となる。
隣接する凹部22(22A)、凹部22(22B)間の第2面側Z2には、内部空間23(23a)と隣接する内部空間23(23b)とが連通する連通空間24が配されている。
【0014】
積層不織布20における凸部21の凸部頂部21Tと凹部22の凹部底部22Sとの間に壁部25が配れている。壁部25は、上層繊維層20Aの上層壁部25Aと下層繊維層20Bの下層壁部25Bとで構成されている。壁部25(上層壁部25Aおよび下層壁部25B)のいずれの位置においても厚み方向に繊維配向性を有する。
上記積層不織布20における凸部21、壁部25、凹部22は以下のように定義される。積層不織布厚みTを3等分した、上部P1の不織布領域を凸部21、下部P2の不織布領域を凹部22、中間部P3の不織布領域を壁部25とする。
【0015】
下層繊維層20Bには、下層繊維層20Bの構成繊維と絡み合って、また繊維同士の交点で接合するように、ポリアクリル酸繊維26が配されている。ポリアクリル酸繊維26は、下層不織布20Bの縦方向、横方向、厚み方向の全体にわたって混綿されている。本明細書では、ポリアクリル酸繊維26には、ポリアクリル酸ナトリウムのようなポリアクリル酸塩の繊維も含み得る。
【0016】
積層不織布20は、高粘度液体が第1面側Z1から供給されると、順に、上層繊維層20A、下層繊維層20Bを通って内部空間23に流れ込む。ここでいう高粘度液体とは、経血や軟便等の粘度が40cp程度、またはそれ以上の液状の物質をいう。以下、上記「高粘度液体」は単に「液」ともいう。内部空間23に液が供給されても、ポリアクリル酸繊維26が吸液し、膨潤するまでに、液が繊維間距離を通じて透過する十分な時間がある。そのため、通液により、液が吸収体中に透過するまでの間、内部空間23に液を溜めることができる。この観点から、ポリアクリル酸繊維26の吸収速度は、ゲルブロッキン
グ効果発現による液吸収阻害の観点から、1秒以上が好ましく、2秒以上がより好ましく、3秒以上がさらに好ましい。そしてゲルブロッキング効果発現による液戻り防止の観点から、10秒以下が好ましく、9秒以下がより好ましく、8秒以下がさらに好ましい
。そして内部空間23に液が溜まってくると、内部空間23側の下層繊維層20Bに配されたポリアクリル酸繊維26が吸液して膨潤する。すなわち、ポリアクリル酸繊維26が液吸収してゲルブロッキングを起こし始める。このため、液の拡散面積が広がりすぎず、液の拡散は狭い範囲にとどまる。このゲルブロッキングが発生して、吸収体側から肌面側へ液が逆戻りする通路が減少するため、液戻り量が低減される。また壁部25の厚み方向に沿う繊維配向性とあいまって、ゲルブロッキングによる内部空間23の縮小によって、積層不織布20が加圧されても凸部21が潰れ難くなり、積層不織布20の第2面側Z2に配される(図示はしていない)吸収体からの液戻り量が低減される。
また、複数の内部空間23を有していることから、それぞれの内部空間23で分担するように、ポリアクリル酸繊維26による液吸収が行われる。
さらに、上記の下層繊維層20B側にのみポリアクリル酸繊維26を配した場合には、上層繊維層20Aにゲルブロッキングを起こすポリアクリル酸繊維26が配されないため、上層繊維層20Aでゲルブロッキングが起こらない。したがって、上層繊維層20Aの通液がゲルブロッキングによって阻害されないため、液残りが低減でき好ましい。また、内部空間23に溜まった液が下層繊維層20Bのポリアクリル酸繊維26に吸液されやすくなり、液の拡散面積が広がり難く好ましい。
吸収速度は下記の手段(ボルテックス法)で測定する。
まず、東海ケミー株式会社より購入した馬血を、高粘度成分を抽出し、低濃度成分を添加して撹拌しながら、粘度8cpに調製する。粘度計は東機産業株式会社のVISCOMETER TVB―10を用いる。そして、200mLのガラスビーカーに、調整した馬血50mLとマグネチックスターラーチップを入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン株式会社製HPS−100)に載せる。マグネチックスターラーチップは、中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mm、表面がフッ素樹脂コーティングされているものである。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、馬血を攪拌させる。測定試料である吸水繊維2.0gを、攪拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K 7224(1996)に準拠して該吸水繊維の吸収速度(秒)を測定する。具体的には、吸水繊維のビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点でストップウォッチを止め、その時間(秒)をボルテックス法による吸水速度として記録する。スターラーチップが試験液に覆われた時点とは、渦が消え、液表面が平らになった時点である。測定はn=5(回)測定し、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とする。尚、これらの測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。なお、市販のおむつやナプキン等から測定対象の吸水繊維を取り出す場合は、コールドスプレーを用いて各部材を剥がし、吸水繊維を取り出す。
【0017】
なお、内部空間23に溜まった液の一部やポリアクリル酸繊維26が吸収しきれない液は、連通空間24を伝って隣接する内部空間23に拡散される。そのため、肌面側の表面に液が溢れて拡散することが抑えられる。その場合であっても、隣接する内部空間23において、ポリアクリル酸繊維26による液吸収が起こるので、液の拡散は大幅に低減される。また積層不織布20は、構成繊維としてポリアクリル酸繊維26が用いられているため、積層不織布20中にポリアクリル酸繊維26として高吸収性材料を混綿することが容易である。さらに厚みが薄い積層不織布20であってもポリアクリル酸繊維26を混綿しやすい。これに対し、厚みが薄い積層不織布に、高吸収性ポリマー(SAP)粒子として高吸収性材料を含ませようとすると、こぼれ落ちてしまい、高吸収性ポリマー粒子を含ませることが難しい。すなわち、高吸収性ポリマーを不織布中に散布したのでは、積層不織布20の下層繊維層20Bに対して選択的に吸収性能を持たせることが難しい。これに対し、ポリアクリル酸繊維26を用いることで、混綿し易くなるので、下層繊維層20Bに選択的に吸収性能を持たせることができるようになる。
ポリアクリル酸繊維26の繊維径は、ゲルブロッキングによる液吸収量の観点から、1dtex以上が好ましく、2dtex以上がより好ましく、3dtex以上がさらに好ましい。そして風合いの観点から、10dtex以下が好ましく、8dtex以下がより好ましく、6dtex以下がさらに好ましい。
ポリアクリル酸繊維26の繊維長は、ゲルブロッキングによる液吸収量の観点から、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、30mm以上がさらに好ましい。そして風合いの観点から、100mm以下が好ましく、80mm以下がより好ましく、60mm以下がさらに好ましい。
ポリアクリル酸繊維26の液吸収率は、1g/g以上が好ましく、2g/g以上がより好ましく、3g/g以上がさらに好ましい。そして7g/g以下が好ましく、6g/g以下がより好ましく、5g/g以下がさらに好ましい。
また、ポリアクリル酸繊維26の混綿率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。そして80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。ポリアクリル酸繊維26の混綿率が10%以下では、ゲルブロッキングが働かず、拡散面積、液戻り量は増大することになる。
ポリアクリル酸繊維26の混綿率が高くなると拡散面積、液戻り量ともに増えるのは、内部空間への液の通液性がポリアクリル酸繊維によって阻害されるからである。ポリアクリル酸繊維26の混綿率がある一定の低さまでは拡散面積、液戻り量ともに低下する。つまり、ポリアクリル酸繊維26の混綿率が低下するとポリアクリル酸繊維による液吸収に阻害されることなく、供給された液が素早く内部空間に通液されて内部空間は液が十分に溜まった状態になる。その状態で内部空間の液がポリアクリル酸繊維に吸収されるからである。
【0018】
次に、上記積層不織布20に荷重がかかり、液が供給される状態を具体的に説明する。
図2(a)に示すように、低荷重WL(例えば、荷重0.05kPa)がかかっている状態の積層不織布20に、第1面側Z1から液(図示せず)が供給される。液は矢印A方向に、上層繊維層20Aから下層繊維層20Bを通ってそれぞれの繊維層に吸液されながら、凸部21の内部空間23に溜まる。内部空間23に溜まった液の一部は矢印B方向に向かい下層繊維層20Bに配されたポリアクリル酸繊維26(
図1参照)によって吸液される。そのため内部空間23が連続する連通空間24(
図1参照)を通って横方向に拡散する液量が減り、液の拡散面積が低減される。上記低荷重とは、吸収性物品を着用したとき、立位状態のときに掛かる荷重を想定している。
【0019】
この状態で
図2(b)に示すように、高荷重WH(例えば、荷重5.0kPa)がかかった場合であっても、内部空間23に溜まった液を吸収したポリアクリル酸繊維26の膨潤によって、下層繊維層20Bが膨潤する。このポリアクリル酸繊維26(
図1参照)による液吸収作用によって液の拡散面積が広がらず、液は狭い範囲にとどまる。また、ポリアクリル酸繊維26の吸液によるゲルブロッキングにより、内部空間23が縮小するため、凸部21が潰れ難くなり、第2面側Z2に配される吸収体(図示せず)からの液戻り量が低減される。しかも、上層壁部25Aおよび下層壁部25Bのいずれの位置においても厚み方向に繊維配向性を有していることから、凸部21の潰れ難さをより一層高めているので、この点からも液戻り量が低減される。なお、内部空間23の液をポリアクリル酸繊維26が吸収しきれない場合には、連通空間24(
図1参照)を伝って液が隣接する内部空間23に拡散される。その場合であっても、隣接する内部空間23においてもポリアクリル酸繊維26による液吸収が起こるので、液の拡散は大幅に低減される。
この結果、積層不織布20を表面シートとして吸収性物品に組み込むと、表面シートの厚みが保持される。このため、下層繊維層20B側に通常配される吸収体(図示せず)から上層繊維層20A側に配される肌面(図示せず)に向かって液が戻りにくくなる。よって、液戻り量が少なくなり、液戻りが防止される。またポリアクリル酸が繊維の形態でポリアクリル酸繊維26として下層繊維層20Bに含まれるため、積層不織布20が加圧された場合に、ポリアクリル酸繊維26が上層繊維層20Aに移行することがないので、上記の作用効果が得られやすくなる。
また厚みが薄い積層不織布20であっても、下層繊維層20B中に規定量のポリアクリル酸繊維26を混綿することにより配されやすくなる。よって、積層不織布20の厚みを薄くできる。
【0020】
積層不織布20は、吸液前の荷重0.05kPa下(以下、低荷重下ともいう。)の積層不織布20全体の厚みをTとし、高粘度液体を吸液後の荷重5.0kPa下(以下、高荷重下ともいう。)の積層不織布20全体の厚みをTaとする。(Ta/T)×100は、ゲルブロッキングによる不織布の潰れ難さの観点から、好ましくは60%以上であり、より好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。そしてクッション性の観点から、好ましくは90%以下であり、より好ましくは85%以下であり、さらに好ましくは80%以下である。本明細書では、高粘度液体とは粘度が40cp以上の液体をいう。このような液体として、経血、軟便等が挙げられる。厚みの測定方法については後述する。上記5.0kPaの高荷重とは、大人が椅子に着座した時にかかる荷重と定義する。
【0021】
次に、上記積層不織布20の材料、特性、形状等について詳述する。
本実施形態において
図1に示した各凸部(凸部21、上層凸部21A、下層凸部21B)は頂部に丸みをもった円錐台形状もしくは半球状にされている。なお、各凸部は、上記形状に限定されものではなく、どのような突出形態でもよい。例えば、各凸部は、様々な錐体形状であることが実際的である。本明細書において錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を広く含む意味である。また内部空間23は、その天井部が丸みのある円錐台形状もしくは半球状の空間となっている。
【0022】
図1に示した壁部(壁部25、上層壁部25A、下層壁部25B)は、それぞれの壁部に対応する凸部(凸部21、上層凸部21A、下層凸部21B)において環状構造を成している。それぞれの壁部に対応する各凹部(凹部22、上層凹部22A、下層凹部22B)においても環状構造を成している。「環状」とは、平面視において無端の一連の形状をなしていれば特に限定されない。したがって、平面視において円、楕円、矩形、多角形など、どのような形状であってもよい。シートの連続状態を好適に維持する上では円または楕円が好ましい。「環状」を立体形状としていえば、円柱状、斜円柱状、楕円柱状、切頭円錐状、切頭斜円錐状、切頭楕円錐状、切頭四角錐状、切頭斜四角錐状など任意の環構造が挙げられ、連続したシート状態を実現する上では、円柱状、楕円柱状、切頭円錐状、切頭楕円錐状が好ましい。さらに上記の各凸部および各凹部に対応する各壁部は連続している。
【0023】
したがって、積層不織布20は、ともに屈曲部を有さず、全体が連続した曲面で構成されている。これにより、表面に段差のないシート形状になり、積層不織布20の表面の肌触りが良くなる。このように上記積層不織布20は、面方向に連続した構造を有していることが好ましい。「連続」とは、断続した部分や小孔がないことを意味する。ただし、繊維間の隙間のような微細孔は小孔に含めない。ここでいう小孔とは直径1mm以上の円形の孔をいう。
【0024】
積層不織布20に用いることができるポリアクリル酸以外の繊維材料は特に限定されない。具体的には、下記の繊維材料などが挙げられる。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維が挙げられる。また、芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維が挙げられる。芯鞘型の繊維の代表例としては、PET(芯)とPE(鞘)、PP(芯)とPE(鞘)、PP(芯)と低融点PP(鞘)等の芯鞘型繊維が挙げられる。また、これらの繊維は、単独で用いて不織布を構成してもよく、または2種以上を組み合わせた混繊として用いることもできる。
また、積層不織布20に混綿されるポリアクリル酸繊維26については上述した通りである。なお、ポリアクリル酸繊維26に置き換えて、上記に挙げたポリビニルアルコール繊維、ポリ乳酸繊維またはポリアセテート繊維を同様に用いることができる。また、複数種の上記の吸水性繊維26を用いることもできる。
【0025】
壁部25(上層壁部25A、下層壁部25B)を構成する繊維は、具体的には、凸部21の凸部頂部21Tと凹部22の凹部底部22Sとを結ぶ方向に繊維配向性を有する。いずれの場合も平面視すると、凸部頂部21Tから凹部底部22Sに向かうような放射状の繊維配向性を有している。
上述のように厚み方向に繊維配向性を有するとは、厚み方向に、繊維が並びそろった状態を有していることをいう。具体的には、配向角50°以上130°以下、且つ配向強度1.05以上である。
【0026】
繊維が厚み方向に向いていると、高荷重時には、凸部21の圧縮変形を受け止め、潰れを防ぎ、厚みを維持する効果が大きい。繊維配向が水平方向になると、高荷重時の潰れを防ぐ効果が減り、厚みが小さくなる。高荷重時の潰れを防ぎ、液戻り量を少なくし、低荷重時には内部空間23を確保し、内部空間23に溜まった液をポリアクリル酸繊維26に吸収しやすくする。
【0027】
このような観点から、上層壁部25AのCD方向の繊維配向角は、50°以上であり、好ましくは60°以上であり、さらに好ましくは70°以上である。そして130°以下であり、好ましくは120°以下であり、さらに好ましくは110°以下である。また、50°以上130°以下であり、好ましくは60°以上120°以下であり、さらに好ましくは70°以上110°以下である。上層壁部25AのCD方向の繊維配向強度は、1.05以上であり、好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。
下層壁部25BのCD方向の繊維配向角は、上記上層壁部25Aと同様である。また下層壁部25BのCD方向の繊維配向強度も上記上層壁部25Aと同様である。上記のような繊維配向角、繊維配向強度に設定することで、厚み方向の荷重をしっかりと受け止め、高荷重下であっても、凸部21が潰されることがなくなる。これによって液戻り量を少なくできる。
繊維配向角および繊維配向強度の測定方法については、例えば、特開2012−136791号公報に記載された測定方法を採用する。
【0028】
積層不織布20では、繊維密度が、凹部22より凸部21のほうが低くなっている。
繊維密度は、1mm
2当たりの繊維本数を計測することで評価した。つまり、1mm
2当たりの繊維本数が多いほど繊維密度は高いことになる。
凸部21の繊維密度は、通液性をよくする観点から、30本/mm
2以上であり、好ましくは40本/mm
2以上であり、さらに好ましくは50本/mm
2以上である。そして120本/mm
2以下であり、好ましくは100本/mm
2以下であり、さらに好ましくは80本/mm
2以下である。また30本/mm
2以上120本/mm
2以下であり、好ましくは40本/mm
2以上100本/mm
2以下であり、さらに好ましくは50本/mm
2以上80本/mm
2以下である。
凹部22の繊維密度は、高荷重下で潰れにくくし、液戻り量を低減させる観点から、250本/mm
2以上であり、好ましくは300本/mm
2以上であり、さらに好ましくは350本/mm
2以上である。そして500本/mm
2以下であり、好ましくは450本/mm
2以下であり、さらに好ましくは400本/mm
2以下である。また250本/mm
2以上500本/mm
2以下であり、好ましくは300本/mm
2以上450本/mm
2以下であり、さらに好ましくは350本/mm
2以上400本/mm
2以下である。
したがって、凸部21から液が透過しやすくなっており、凸部21を通って内部空間23に液が移行する。内部空間23に溜められた液はその周囲のポリアクリル酸繊維26に吸収されるため、液の拡散が狭い範囲にとどまる。すなわち、連通空間24と通じて拡がり難くなっている。
【0029】
さらに、上層繊維層20Aより下層繊維層20Bのほうが繊維密度高い場合には、積層不織布20は、排泄物が高粘性の液体で少量排泄物(経血、軟便)の場合に使用するとより好適になる。これは、上層繊維層20Aの上層凸部21Aと下層繊維層20Bの下層凸部21Bの間で粗密勾配が生じるため、下層繊維層20Bへの液の引き込み性が高まり、肌と接触する上層繊維層20Aの液残り量を低減させることができるためである。その時の上層繊維層20Aの上層凸部21Aにおける繊維密度は、30本/mm
2以上であり、好ましくは40本/mm
2以上であり、さらに好ましくは50本/mm
2以上である。そして120本/mm
2以下であり、好ましくは100本/mm
2以下であり、さらに好ましくは80本/mm
2以下である。また30本/mm
2以上120本/mm
2以下であり、好ましくは40本/mm
2以上100本/mm
2以下であり、さらに好ましくは50本/mm
2以上80本/mm
2以下である。また、下層繊維層20Bの下層凸部21Bにおける繊維密度は、40本/mm
2以上であり、好ましくは60本/mm
2以上であり、より好ましくは80本/mm
2以上である。そして140本/mm
2以下であり、好ましくは120本/mm
2以下であり、さらに好ましくは100本/mm
2以下である。また40本/mm
2以上140本/mm
2以下であり、好ましくは60本/mm
2以上120本/mm
2以下であり、さらに好ましくは80本/mm
2以上100本/mm
2以下である。
したがって、積層不織布20は、低荷重(0.05kPa)がかけられた状態で液が供給された場合、凸部21が凹部22よりも繊維密度が低いので、通液性が良くなり、内部空間23に液が引き込まれやすくなる。
【0030】
繊維密度は以下のように測定される。
積層不織布20をそれぞれCD方向断面に切断し、走査電子顕微鏡を使用して切断面を拡大観察し、一定面積あたりの切断面において切断されている繊維の断面を数える。拡大観察は、繊維断面が30本から60本程度計測できる倍率(150倍から500倍)に調節する。本実施形態では倍率を100倍とした。観察部位は、凸部21の頂部、凹部22のそれぞれの厚みの中心付近とした。次に1mm
2あたりの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm
2)とした。測定は、それぞれ3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とした。上記走査電子顕微鏡には、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いた。
【0031】
積層不織布20においては、吸液前の全体厚みTは、用途によって適宜調節すればよい。例えば、生理用品やおむつ等の表面シートとして用いる場合、吸液前の全体厚みTは、好ましくは1mm以上であり、さらに好ましくは1.5mm以上である。そして好ましくは7mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下である。また、好ましくは1mm以上7mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以上5mm以下である。この範囲とすることにより、使用時における液の拡散を狭い範囲にとどめ、吸収体からの液戻りを抑えることができる。
上記凸部21同士の間隔は、用途によって適宜調節すればよい。また上記積層不織布20の坪量は特に限定されない。例えば、積層不織布全体の平均値で20g/m
2以上であり、好ましくは25g/m
2以上であり、さらに好ましくは30g/m
2以上である。そして50g/m
2以下であり、好ましくは45g/m
2以下であり、さらに好ましくは40g/m
2以下である。また、20g/m
2以上50g/m
2以下であり、好ましくは25g/m
2以上45g/m
2以下であり、さらに好ましくは30g/m
2以上40g/m
2以下である。
【0032】
次に、積層構造の積層不織布20の製造方法の具体的一例を、
図3を参照して説明する。
融着する前の吸水性繊維を含有した2層構造のウエブ50(上層ウエブ50A、下層ウエブ50B)を、所定の厚みとなるように、カード機(図示せず)からウエブ賦形する装置の支持体110上に搬送して定着させる。吸水性繊維26としては、ポリアクリル酸繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアセテート繊維、等が挙げられる。以下、吸水性繊維26としてポリアクリル酸繊維を用いた場合について説明する。なお、上記に挙げた吸水性繊維26はポリアクリル酸繊維と同様に用いることができる。
【0033】
上記ウエブ50には、ポリアクリル酸繊維26を配した上層ウエブ50Aと下層ウエブ50Bとを積層した構造のもの、または上層ウエブ50Aにも下層ウエブ50Bにもポリアクリル酸繊維を配した積層構造のもの、等を適宜用いる。以下の説明では、ウエブ50には、上層ウエブ50Aのみにポリアクリル酸繊維26を配したものを用いた。
【0034】
支持体110は、凹部22が賦形される位置に対応して多数の突起111を有し、凸部21が賦形される位置に対応して孔112が配されている。すなわち、支持体110は凹凸形状を有しており、突起111と孔112とが異なる方向に交互に配されている。
【0035】
次いで、支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1を吹きつけ、ウエブ50を支持体110の形状に沿うように賦形する(
図3(a)参照)。このときの第1の熱風W1の温度は、ウエブ50を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃から70℃低いことが好ましく、5℃から50℃低いことがさらに好ましい。第1の熱風W1の風速は、賦形性と風合いの観点から、20m/s以上に設定され、好ましくは25m/s以上、さらに好ましくは30m/s以上である。そして100m/s以下に設定され、好ましくは80m/s以下、さらに好ましくは60m/s以下である。このように風速がこの下限値以上であれば賦形形状の立体感が十分となる。一方、風速がこの上限値以下であればシートが開孔せず、液拡散面積と液戻り性の低減効果が十分に発揮でき好ましい。風速が下限値より遅くなると、十分に賦形されなくなり、液拡散面積の低減効果が十分に発揮されない。風速が上限値を超えると、凸部21の頂部に開孔が生じることになり、また潰れやすくなるので、液戻り性の低減効果が十分に発揮されない。さらに、排泄物がその開孔部を通って逆戻りしやすくなる。また第1の熱風W1の吹き付け時間は、0.01秒以上、好ましくは0.02秒以上、さらに好ましくは0.03秒以上である。そして0.1秒以下、好ましくは0.07秒以下、さらに好ましくは0.05秒以下である。
このようにして、ウエブ50を凹凸形状に賦形する。
【0036】
次に、
図3(b)に示すように、ウエブ50が支持体110の突出部111に支持された賦形された状態で、ウエブ50の各繊維が適度に融着可能な温度の第2の熱風W2を吹き付ける。第2の熱風W2の吹き付けによって、ウエブ50の繊維同士を融着させ、前述の2層構造の積層不織布20を得る。すなわち、上層繊維層20Aが下層ウエブ50Bから作製され、ポリアクリル酸繊維が配されている下層繊維層20Bが上層ウエブ50Aから作製される。第2の熱風W2の温度は、積層不織布20に用いられる繊維材料を考慮して、ウエブ50を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃から70℃高いことが好ましく、5℃から50℃高くすることがより好ましい。第2の熱風W2の風速は、1m/s以上に設定され、好ましくは2m/s以上、さらに好ましくは3m/s以上に設定される。そして10m/s以下に設定され、好ましくは9m/s以下、さらに好ましくは8m/s以下に設定される。この第2の熱風W2の風速は、遅すぎると繊維への熱伝達ができず、繊維同士が融着せず凹凸形状の固定が不十分になる。一方、風速が速すぎると、繊維へ熱が当たりすぎるため、風合いが劣るようになる。また第2の熱風W2の吹き付け時間は、0.01秒以上、好ましくは0.02秒以上、さらに好ましくは0.03秒以上である。そして0.1秒以下、好ましくは0.07秒以下、さらに好ましくは0.05秒以下である。
【0037】
上記製造方法を実施する賦形装置(図示せず)は、連続生産を考慮すると、上記支持体110を搬送可能なコンベア式またはドラム式のものとし、搬送されてくる型付けされた積層不織布20を、ロールで巻き取っていく態様が挙げられる。このようにして、本発明の積層不織布20を得る。なお、本実施形態の積層不織布20についてMDおよびCDをどちらに向けてもよい。
上記MDとは、機械方向ともいい、製造時における繊維ウエブの送給方向であり、「Machine Direction」の略語である。上記CDとはMDに対して直交する方向であり、「Cross Direction」の略語である。
【0038】
熱可塑性繊維としては、前述した繊維が用いられる。例えば熱可塑性繊維として低融点成分および高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、ウエブ50に吹き付ける第2の熱風W2の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。
【0039】
上記ウエブ50は、上述したような繊度の異なる繊維を含み、その含有形態は上述した積層不織布20の実施形態の通りである。また熱可塑性繊維を、30質量%以上含んでいることが好ましく、さらに好ましくは40質量%以上含んでいることである。
【0040】
上記製造方法においては、積層不織布20の厚みは、風速によって、適宜決定される。例えば、風速を速くするとシートの厚みが厚くなり、遅くするとシートの厚みが薄くなる。また、風速を速くすると凸部21の頂部と凹部22の底部との繊維密度差が大きくなり、風速を遅くすると凸部21の頂部と凹部22の底部との繊維密度差が小さくなる。
【0041】
上記説明した積層不織布20は、各種用途に用いることができる。例えば、生理用ナプキン、使い捨ておむつ、パンティライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に使用することができる。さらに積層不織布20の両面が凹凸構造であることに起因する通気性や液拡散性、押圧力時の変形特性、などに優れていることから、おむつや生理用品等の表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤーとして用いることもできる。
【0042】
次に、上記積層不織布20を表面シートに用いた薄型の生理用ナプキン100の基本構成について、
図4を参照して以下に説明する。
図4では、生理用ナプキン100の幅方向をX、長手方向をYで示した。
【0043】
図4に示すように、生理用ナプキン100は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1と、非肌当接面側に配置される液不透過性の裏面シート2と、表面シート1と裏面シート2との間に介在される液保持性を有する吸収体3と、を有する縦長の本体4と、この本体4の両側部に外方に延出するウイング5(5a,5b)とを備えている。なお、図面では、ウイング5を折り畳んだ状態を示している。
【0044】
上記本体4の形状は、装着時に着用者の股下部分を介して下腹部側から臀部側へと配される長手方向(Y方向)とこれと直交する幅方向(X方向)とを有する縦長の形状である。本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌当接面側または表面側といい、下着に接する側を非肌当接面側または裏面側という。さらに生理用ナプキン100の平面視において相対的に長さのある方向を長手方向といい、この長手方向と直交する方向を幅方向という。上記長手方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0045】
表面シート1には、上記積層不織布20を用いる。その際、凸部21が肌当接面側になるように配する。
【0046】
上記裏面シート2は、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されない。例えば特開2013−128628号公報に記載されているようなフィルムが用いられる。
吸収体3には、例えば、繊維集合体またはこれと吸収性ポリマーとを併用させたもの等を用いることができる。例えば特開2013−128628号公報に記載されているような繊維集合体が用いられる。また吸収体3を被覆する被覆シート(図示せず)を用いてもよい。
上記ウイング5は、撥水性の嵩高で繊維密度の疎な柔らかい不織布からなり、その基部が上記表面シート1と裏面シート2とに挟持され固定されている。ウイング5は、例えば特開2013−128628号公報に記載されているような不織布が用いられる。
【0047】
上記生理用ナプキン100は、表面シートに積層不織布20を用いたことから、液拡散面積の低減と、液戻り量の低減の両立が図れる。
【0048】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の積層不織布、表面シートおよび吸収性物品を開示する。
<1>
上層繊維層と下層繊維層を有する積層構造の積層不織布であって、該積層不織布を平面視した側の第1面側に突出し前記第1面側とは反対の第2面側に内部空間を有する凸部と、前記第2面側に凹んだ凹部とを有し、
前記凸部と前記凹部は、該積層不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに、壁部を介して交互に連続して複数が配され、
前記第1面側が上層繊維層側、前記第2面側が下層繊維層側であり、少なくとも前記下層繊維層に吸水性繊維を配した積層不織布。
<2>
吸液前の荷重0.05kPa下の前記積層不織布全体の厚みをTとし、高粘度液体を吸液後の荷重5kPa下の前記積層不織布全体の厚みをTaとしたとき、(Ta/T)×100が60%以上である<1>に記載の積層不織布。
<3>
前記積層不織布全体の厚みをTとし、高粘度液体を吸液後の荷重5.0kPa下の前記積層不織布全体の厚みをTaとして、(Ta/T)×100が好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である<1>または<2>に記載の積層不織布。
<4>
前記下層繊維層のみに前記吸水性繊維を配した<1>から<3>のいずれか1に記載の積層不織布。
<5>
前記壁部のいずれの位置においても厚み方向に繊維配向性を有する<1>から<4>のいずれか1に記載の積層不織布。
<6>
前記下層繊維層には、該下層繊維層の構成繊維と絡み合って、繊維同士の交点で接合するように、前記吸水性繊維が配されている<1>から<5>のいずれか1に記載の積層不織布。
<7>
前記吸水性繊維がポリビニルアルコール繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアセテート繊維、ポリアクリル酸繊維から選ばれる<1>から<6>のいずれか1に記載の積層不織布。
<8>
前記吸水性繊維がポリアクリル酸繊維である<1>から<7>のいずれか1に記載の積層不織布。
<9>
前記ポリアクリル酸繊維の吸収速度は、10秒以下が好ましく、9秒以下がより好ましく、8秒以下がさらに好ましく、そして1秒以上が好ましく、2秒以上がより好ましく、3秒以上がさらに好ましい<8>に記載の積層不織布。
<10>
前記ポリアクリル酸繊維の繊維径は、1dtex以上が好ましく、2dtex以上がより好ましく、3dtex以上がさらに好ましく、そして、10dtex以下が好ましく、8dtex以下がより好ましく、6dtex以下がさらに好ましい<8>または<9>に記載の積層不織布。
<11>
前記ポリアクリル酸繊維の繊維長は、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、30mm以上がさらに好ましく、そして、100mm以下が好ましく、80mm以下がより好ましく、60mm以下がさらに好ましい<8>から<10>のいずれか1に記載の積層不織布。
<12>
前記ポリアクリル酸繊維の液吸収率は、1g/g以上が好ましく、2g/g以上がより好ましく、3g/g以上がさらに好ましく、そして7g/g以下が好ましく、6g/g以下がより好ましく、5g/g以下がさらに好ましい<8>から<11>のいずれか1に記載の積層不織布。
<13>
前記ポリアクリル酸繊維の混綿率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、そして80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい<8>から<12>のいずれか1に記載の積層不織布。
<14>
前記積層不織布全体の厚みをTとし、高粘度液体を吸液後の荷重5.0kPa下の前記積層不織布全体の厚みをTaとして、(Ta/T)×100は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、そして好ましくは90%以下であり、より好ましくは85%以下であり、さらに好ましくは80%以下である<1>から<13>のいずれか1に記載の積層不織布。
<15>
前記壁部は上層繊維層の壁部と前記下層繊維層の壁部を有し、それぞれの壁部に対応する前記凸部において環状構造を成している<1>から<14>のいずれか1に記載の積層不織布。
<16>
前記積層不織布に用いることができる前記吸水性繊維以外の繊維材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維である<1>から<15>のいずれか1に記載の積層不織布。
<17>
前記壁部を構成する繊維は、前記凸部の頂部から前記凹部の底部に向かう放射状の繊維配向性を有している<1>から<16>のいずれか1に記載の積層不織布。
<18>
前記壁部の上層繊維層および下層繊維層のそれぞれの壁部は、CD方向の繊維配向角が、50°以上であり、好ましくは60°以上であり、さらに好ましくは70°以上であり、そして130°以下であり、好ましくは120°以下であり、さらに好ましくは110°以下である<1>から<17>のいずれか1に記載の積層不織布。
<19>
前記壁部の上層繊維層および下層繊維層のそれぞれの壁部は、CD方向の繊維配向強度が、1.05以上であり、好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.4以上である<1>から<18>のいずれか1に記載の積層不織布。
<20>
前記積層不織布の繊維密度は、前記凹部より前記凸部のほうが低い<1>から<19>のいずれか1に記載の積層不織布。
<21>
前記凸部の繊維密度は、30本/mm
2以上であり、好ましくは40本/mm
2以上であり、さらに好ましくは50本/mm
2以上であり、そして120本/mm
2以下であり、好ましくは100本/mm
2以下であり、さらに好ましくは80本/mm
2以下である<1>から<19>のいずれか1に記載の積層不織布。
<22>
前記凹部の繊維密度は、250本/mm
2以上であり、好ましくは300本/mm
2以上であり、さらに好ましくは350本/mm
2以上であり、そして500本/mm
2以下であり、好ましくは450本/mm
2以下であり、さらに好ましくは400本/mm
2以下である<1>から<21>のいずれか1に記載の積層不織布。
<23>
前記上層繊維層より前記下層繊維層のほうが繊維密度高い<1>から<22>のいずれか1に記載の積層不織布。
<24>
前記上層繊維層の上層凸部における繊維密度は、30本/mm
2以上であり、好ましくは40本/mm
2以上であり、さらに好ましくは50本/mm
2以上であり、そして120本/mm
2以下であり、好ましくは100本/mm
2以下であり、さらに好ましくは80本/mm
2以下である<1>から<23>のいずれか1に記載の積層不織布。
<25>
前記下層繊維層の下層凸部における繊維密度は、40本/mm
2以上であり、好ましくは60本/mm
2以上であり、より好ましくは80本/mm
2以上であり、そして140本/mm
2以下であり、好ましくは120本/mm
2以下であり、さらに好ましくは100本/mm
2以下である<1>から<24>のいずれか1に記載の積層不織布。
<26>
前記積層不織布の吸液前の全体厚みTは、好ましくは1mm以上であり、さらに好ましくは1.5mm以上であり、そして好ましくは7mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下である<1>から<25>のいずれか1に記載の積層不織布。
<27>
<1>から<26>のいずれか1に記載の積層不織布からなり、前記上層繊維層側を肌当接面側に配した吸収性物品の表面シート。
<28>
<1>から<26>のいずれか1に記載の積層不織布を含み、前記上層繊維層側を肌当接面側に配した吸収性物品。
<29>
前記積層不織布は、第1面側を着用者の肌面側に向けて用い、第1面側とは反対の第2面側を物品内部の吸収体側に配置して用いる<28>に記載の積層不織布を含む吸収性物品。
【0049】
以下に、上述の
図3によって説明した積層不織布の製造方法により積層不織布を製造した実施例、および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1−4]
実施例1としての積層不織布20は、
図1に示した積層不織布であり、上層繊維層20Aと下層繊維層20Bの両方にポリアクリル酸繊維26が配されているものである。
上層繊維層20Aとなるポリアクリル酸繊維を含む上層繊維ウエブにカードウエブを用い、下層繊維層20Bとなるポリアクリル酸繊維を含む下層繊維ウエブにもカードウエブを用いる。そして二つのウエブを重ねてウエブ50として、前述の
図3によって説明した製造方法により以下の条件で製造した。すなわち、上層繊維ウエブの繊維に、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点が258℃)で、鞘部がポリエチレン(融点が130℃)の芯鞘構造の複合繊維を用いた。混
綿率は
50%、繊度は2.4dtex、坪量15g/m
2とした。下層繊維ウエブの繊維に、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点が258℃)で、鞘部がポリエチレン(融点が130℃)の芯鞘構造の複合繊維とポリアクリル酸繊維との混綿を用いた。ポリアクリル酸繊維の混綿率は50%、坪量15g/m
2とした。複合繊維の繊度は2.4dtex、ポリアクリル酸繊維の繊度は1.2dtexとした。このウエブ50を支持体110により搬送し、支持体110の表面で第1の熱風W1を吹き付けることで凹凸形状に賦形させた。第1の熱風W1の吹き付け条件は、吹き付け気体に空気を用い、その空気の温度を130℃、風速を50m/s、吹き付け時間は0.01秒に設定した。
【0051】
次に、ウエブ50を支持体110に賦形した状態で搬送し、第2の熱風W2を吹き付けて、繊維同志を融着させた。第2の熱風W2の吹き付け条件は、吹き付け気体に空気を用い、その空気の温度を160℃、風速を30m/s、吹き付け時間は0.01秒に設定した。同時に、上層繊維ウエブと下層繊維ウエブとを融着させた。このようにして、上層繊維層と下層繊維層とからなる上層繊維層20Aと下層繊維層20Bが積層された積層不織布20を作製した。
【0052】
実施例2の積層不織布20は、ポリアクリル酸繊維の混綿率を30質量%にした以外、前記実施例1と同様の方法により作製した。
実施例3の積層不織布20は、ポリアクリル酸繊維の混綿率を10質量%にした以外、前記実施例1と同様の方法により作製した。
【0053】
実施例4の積層不織布20は、ポリアクリル酸繊維の混綿率を30質量%にし、ポリアクリル酸繊維を下層繊維層20Bのみに配した以外、前記実施例1と同様の方法により作製した。
【0054】
[比較例1−2]
比較例1は、ポリアクリル酸繊維を混綿しない以外、前記実施例1と同様の方法により作製した。
比較例2は、ポリアクリル酸繊維の混綿率を30質量%にし、ポリアクリル酸繊維を上層繊維層20Aのみに配した以外、前記実施例1と同様の方法により作製した。
次に測定方法について説明する。
【0055】
[厚みの測定方法]
吸液前の0.05kPaの荷重下における上記積層不織布20の厚みTは、以下のように測定する。例えば、不織布試験体を0.05kPaで加圧した状態で、CD方向の切断面を株式会社キーエンス製レーザ変位計(センサヘッド:LK−085、アンプユニット:LK−2110)を用いて測定する。
また吸液後の5.0kPaの荷重下における上記積層不織布20の厚みTaは、以下のように測定する。高粘度液体(馬血)に浸漬した不織布試験体を5.0kPaで加圧した後、83℃の熱風回復条件で2mmの厚さに回復させ、CD方向の切断面を上記の株式会社キーエンス製レーザ変位計を用いて測定する。
【0056】
[拡散面積の測定]
拡散面積の測定は、吸収性物品の一例として花王株式会社製:ロリエ肌キレイガード(登録商標)20.5cm、2013年製)から表面シートを取り除き、その代わりに積層
不織布20の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の生理用ナプキンを用いた。
上記不織布試験体上に0.05kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積75mm
2の筒を当て、そこから馬血(粘度40cp)を9g注入した。注入は3gずつ3回に分けた。東海ケミー株式会社の馬血を用い、東機産業株式会社の粘度計VISCOMETER TVB−10Mを用いて、同一の馬血の高粘度成分と低粘度成分を混ぜ合わせて40cPに調整した。
注入完了から10秒静置した後に、馬血が拡散された面積をOHPに下面を転写し、画像解析ソフトを用いてその転写像の面積を測定した。画像解析ソフトには、キャノン株式会社のCanoScan 8800Fを用いた。
【0057】
[液戻り量の測定]
液戻り量の測定は、吸収性物品の一例として花王株式会社製:ロリエ肌キレイガード(登録商標)20.5cm、2013年製)から表面シートを取り除き、その代わりに不織布20の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の生理用ナプキンを用いた。
上記不織布試験体上に0.05kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積75mm
2の筒を当て、そこから馬血(粘度40cp)を9g注入した。注入は3gずつ3回に分けて、計9gの馬血を注入した。
注入完了から10秒静置した後に、上述の円筒および圧力を取り除いた。そして、ティッシュ(日本製紙クレシア株式会社製のフェイシャルティシュー クリネックスHIGH QUALITY FACIAL TISSUES(238mm×310mm)を4つ折りにした吸収シート(液吸収前の質量(M1))に0.5kPaの圧力がかかるように調節した金属板を、注入点を中心として不織布試験体上に置いた。
金属板を置いた5秒後に金属板を取り除き、液を吸収した吸収シートの質量(M2)を測定し、次式にて、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後の吸収シートの質量(M2)−加圧前の吸収シートの質量(M1)
なお、液戻り量の測定は、拡散面積の測定において、不織布試験体に馬血を吸収させた後、連続して行うことも可能である。
【0058】
2層構造の積層不織布20について、ポリアクリル酸繊維の配置位置を変えた場合およびポリアクリル酸繊維の混綿率(質量%)を変えた場合の、(Ta/T)×100および性能(拡散面積(cm
2)、液戻り量(g))について、その評価結果を表1に示す。
【0060】
表1に示した結果から明らかなように、
ポリアクリル酸繊維を含まない比較例1は、内部空間内での吸液性が劣るため、(Ta/T)×100が46と多くなり、拡散面積が8.4cm
2と広がった。また液戻り量は0.44gと多くなった。また、ポリアクリル酸繊維を上層繊維層しか含まない比較例2は、(Ta/T)×100が52とさらに多くなり、拡散面積が9.4cm
2とさらに広がり、液戻り量は0.47gとさらに多くなった。このように、ポリアクリル酸繊維が上層繊維層のみにあると、上層繊維層で液を吸収してしまい、上層繊維層でゲルブロッキングが起こる。そのため、下層繊維層に吸収体からの液戻りが起こりやすくなり、拡散面積は下層繊維層側に拡がる。このような現象を防ぐため、上記実施例1から4のように、少なくとも下層繊維層にポリアクリル酸繊維を配しているのである。
実施例1から実施例4は、いずれの評価項目においても良好な結果を得た。(Ta/T)×100が62から72となり、潰れ難くなっていた。また拡散面積が4.7cm
2から6.8cm
2と狭い範囲にとどまった。さらに吸収体からの液戻り量が0.14gから0.29gと少ない量であった。このように、実施例1から4では、液の拡散面積の低減と液戻り量の低減の両立が図れた。上記実施例1から4の液戻り量が少ないのは、下層繊維層に含まれているポリアクリル酸繊維の吸液により中空空間側にゲルブロッキングを生じさせ、下層繊維層に対して吸収体からの液戻りを起こり難くしているためである。また吸液後は下層繊維層がゲルブロッキングされた状態で凹凸賦形を維持する。