(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566670
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】グロー時間制御装置の消費電流を制限する方法およびグロー時間制御装置
(51)【国際特許分類】
F02P 19/02 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
F02P19/02 321Z
F02P19/02 301S
F02P19/02 302M
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-53591(P2015-53591)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-175373(P2015-175373A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】10 2014 204 901.6
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ディアク シュトックマン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス メンスター
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−032944(JP,A)
【文献】
特開2007−315322(JP,A)
【文献】
特開2013−038908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた個数n個のグロープラグ(9,10,11,12)を、動作電圧(UBatt)から導出されパルス幅変調された制御信号によって制御する、
グロー時間制御装置の消費電流を制限する方法において、
前記グロー時間制御装置(1)のスイッチオン後、バッテリ電圧(UBatt)を測定し、前記バッテリ電圧(UBatt)が第1の電圧閾値(UBattn)を上回った場合、同時に動作させるグロープラグ(9,10,11,12)の個数を低減することを特徴とする、
グロー時間制御装置の消費電流を制限する方法。
【請求項2】
前記グロー時間制御装置(1)のスイッチオン後、バッテリ電圧(UBatt)を測定し、前記バッテリ電圧(UBatt)が第1の電圧閾値(UBattn)を上回った場合、n−1個のグロープラグ(9,10,11,12)よりも多くの個数のグロープラグが同時に給電されないよう、前記グロープラグ(9,10,11,12)をパルス幅変調により制御する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリ電圧(UBatt)が、前記第1の電圧閾値(UBattn)よりも高いm番目の電圧閾値(UBattn-m)を上回った場合、n−m個のグロープラグ(9,10,11,12)よりも多くの個数のグロープラグが同時に給電されないよう、前記グロープラグ(9,10,11,12)をパルス幅変調により制御する、ただしn>mである、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記グロー時間制御装置(1)のスイッチオン後、バッテリ電圧(UBatt)を測定し、かつ、n個のグロープラグ(9,10,11,12)のプラグ温度を表す測定値(M)を測定し、前記バッテリ電圧(UBatt)が第1の電圧閾値(UBattn)を上回り、かつ、n個のグロープラグ(9,10,11,12)のプラグ温度を表す前記測定値(M)が第1の温度閾値(Tn)を下回った場合、n−1個のグロープラグ(9,10,11,12)よりも多くの個数のグロープラグが同時に給電されないよう、前記グロープラグ(9,10,11,12)をパルス幅変調により制御する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリ電圧(UBatt)が、前記第1の電圧閾値(UBattn)よりも高いm番目の電圧閾値(UBattn-m)を上回り、かつ、n個のグロープラグ(9,10,11,12)のプラグ温度を表す前記測定値(M)が、前記第1の温度閾値(Tn)よりも低いm番目の温度閾値(Tn-m)を下回った場合、n−m個のグロープラグ(9,10,11,12)よりも多くの個数のグロープラグが同時に給電されないよう、前記グロープラグ(9,10,11,12)をパルス幅変調により制御する、ただしn>mである、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
同時に動作させる前記グロープラグ(9,10,11,12)の個数の低減を、該グロープラグ(9,10,11,12)の予熱フェーズ中に行う、
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記グロープラグ(9,10,11,12)の予熱フェーズ中、すべてのグロープラグ(9,10,11,12)を同時に動作させるのか、または同時に動作させるグロープラグ(9,10,11,12)の個数を低減するのか、を判定する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
同時に動作させるグロープラグ(9,10,11,12)の個数を低減するために、該グロープラグ(9,10,11,12)のためのパルス幅変調された制御信号を同期合わせする、
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記グロープラグ(9,10,11,12)として、セラミックス製の低電圧用プラグを使用する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
予熱フェーズの予め定められた期間が経過したときは、同時に動作させるグロープラグ(9,10,11,12)の個数の低減を終了する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記グロープラグ(9,10,11,12)のプラグ温度を表す測定値(M)が、予め定められたプラグ温度値を上回った場合、および/または、目下のプラグ電流が所定のプラグ電流値を下回った場合、同時に動作させるグロープラグ(9,10,11,12)の個数の低減を終了する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記グロー時間制御装置(1)の消費電流を制限する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
予め定められた個数n個のグロープラグ(9,10,11,12)が、動作電圧(UBatt)から導出されパルス幅変調された制御信号によって制御される、
消費電流を制限するデバイスを備えたグロー時間制御装置(1)において、
当該グロー時間制御装置(1)のスイッチオン後、バッテリ電圧(UBatt)を測定し、前記バッテリ電圧(UBatt)が第1の電圧閾値(UBattn)を上回った場合、同時に動作させられるグロープラグ(9,10,11,12)の個数を低減する手段が設けられていることを特徴とする、
グロー時間制御装置(1)。
【請求項14】
バッテリ電圧入力端子と、前記グロープラグ(9,10,11,12)を制御する電力トランジスタ(5,6,7,8)との間に、前記グロー時間制御装置(1)の電流容量を制限すると共に、前記バッテリ電圧(UBatt)に応じた極性反転保護を行う少なくとも1つの極性反転保護素子(2,3)が配置されている、
請求項13に記載のグロー時間制御装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められた個数のグロープラグを、動作電圧から導出されパルス幅変調された制御信号によって制御する、グロー時間制御装置の消費電流を制限する方法、ならびにグロー時間制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のグロー時間制御装置の場合、グロー時間制御装置に供給されるバッテリ電圧U
Battのパルス幅変調によって、グロープラグが制御される。この場合、スイッチングの機能を電力トランジスタが担っており、グロープラグの制御のために、各グロープラグごとにそれぞれ1つの電力トランジスタが設けられている。パルス幅変調制御のデューティサイクル(duty cycle: DC)を調整することによって、プラグ電圧実効値U_effもしくはプラグ電流実効値l_effをフレキシブルに設定することができる。
【0003】
【数1】
【0004】
バッテリ電圧補償機能が組み込まれたグロー時間制御装置が知られている。この装置によれば、グロープラグに供給される電圧実効値U_effが、デューティサイクルの調整によりできるかぎり一定に保持され、このようにすることでバッテリ電圧の偏差が補償される。
【0005】
グロー時間制御装置の起動後、プッシュフェーズとも呼ばれる予熱フェーズ中、グロープラグをできるかぎり急速に加熱するために、消費電流実効値が大きくなるように設定される。したがってこの予熱フェーズの期間中は、高いデューティサイクルが設定され(U_effは一般に約11V)、グロープラグが目標グロー温度に到達した後、定常的なグロー動作期間中は、デューティサイクルが低減される(U_effは一般に約7Vまたは4.4V)。
【0006】
使用されるグロープラグの種類(セラミックスであるのか金属であるのか)によって、特に温度が低く(−40℃)かつバッテリ電圧が比較的高い(16V)場合であると、予熱フェーズ中、著しく大きいオン電流が流れる可能性がある。このため、使用される電子部品の電流容量に対し高い要求が課されることになる。特に、電界効果トランジスタによって実現される極性反転保護(Inverse Polarity Protection: IPP)が必要とされる場合には、このような電流容量を保証するのは極めて難しい。その理由は、低電圧用セラミックスプラグの場合には殊に、予熱フェーズ中に著しく大きい電流が流れるからである。グロープラグの最大プラグ電流は、初回のスイッチオン時にはプラグの抵抗とバッテリ電圧だけによって決まってしまい、つまり最大プラグ電流を変えることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明が基礎とする課題は、グロー時間制御装置の損傷を回避することであり、特に極性反転保護を実現する電圧効果トランジスタの損傷を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によればこの課題は、同時に動作させるグロープラグの個数を低減することを特徴とする、グロー時間制御装置の消費電流を制限する方法、および消費電流を制限するデバイスを備えたグロー時間制御装置によって解決される。
【0009】
同時に動作させるグロープラグを少なくすることによって、グロー時間制御装置の消費電流が全体として低減し、これによって極性保護を実現する電界効果トランジスタが損傷されないようになる。目標値と実効電圧との偏差が、グロー時間制御装置またはエンジン制御装置によりグロー制御において考慮され、これによってグロー制御のストラテジーを偏差に応じて整合させることができる。
【0010】
有利には、同時に動作させるグロープラグの個数が、バッテリ電圧に依存して、および/または、グロープラグのプラグ温度を表す測定値に依存して、低減される。このようにして、同時に動作させるグロープラグ制御チャネルを制限することによって、グロー時間制御装置の総消費電流が低減される。
【0011】
1つの実施形態によれば、同時に動作させるグロープラグの個数の低減が、グロープラグの予熱フェーズ中に行われる。プッシュフェーズとも呼ばれるこの予熱フェーズ中、プラグの抵抗は、殊に温度が低いときには著しく小さく、したがってグロープラグを急速に加熱しようとするため、グロープラグを介して著しく大きい電流が流れる。したがって、同時に動作させるグロープラグの個数を低減することにより消費電流が制限され、グロー時間制御装置が損傷から保護される。
【0012】
1つの実施形態によれば、バッテリ電圧に依存して、および/または、グロープラグのプラグ温度を表す測定値に依存して、グロープラグの予熱フェーズ中、すべてのグロープラグを同時に動作させるのか、または同時に動作させるグロープラグの個数を低減するのか、が判定される。したがって、グロー時間制御装置の損傷を回避しながらも、常にできるかぎり急速な加熱が保証され、それによってグロープラグの動作が保証される。
【0013】
1つの実施形態によれば、同時に動作させるグロープラグの個数を低減するために、グロープラグのためのパルス幅変調された制御信号の同期合わせが行われる。このような同期合わせによって、グロー時間制御装置の総消費電流の時間経過に伴う変動が最小限に抑えられる。この場合、グロープラグ制御チャネルnをスイッチオフしたときに、それに同期して、次のグロープラグ制御チャネルn+1がスイッチオンされる。
【0014】
有利には、グロー時間制御装置のスイッチオン後、バッテリ電圧を測定し、および/または、n個のグロープラグのプラグ温度を表す測定値を測定し、バッテリ電圧が第1の電圧閾値を上回った場合、および/または、n個のグロープラグのプラグ温度を表す測定値が第1の温度閾値を下回った場合、n−1個のグロープラグよりも多くの個数のグロープラグが同時に給電されないよう、グロープラグをパルス幅変調により制御する。総消費電流を低減する目的で、n−1個のグロープラグだけを使用する場合には、パルス幅変調される制御信号のデューティサイクルが低減される。
【0015】
たとえば、バッテリ電圧が、第1の電圧閾値よりも高いm番目の電圧閾値を上回った場合、および/または、n個のグロープラグのプラグ温度を表す測定値が、第1の温度閾値よりも低いm番目の温度閾値を下回った場合、n−m個のグロープラグよりも多くの個数のグロープラグが同時に給電されないよう、グロープラグをパルス幅変調して制御する、ただしn>mである。このような手法によって、同時に動作させるグロープラグの個数をいっそう低減することができ、ただしその際、動作させるグロープラグのためのパルス幅変調される制御信号のデューティサイクルも、同時に低減される。
【0016】
1つの実施形態によれば、グロープラグとしてセラミックス製の低電圧用プラグが用いられる。特にこの種の低電圧用セラミックスプラグには、低温時もしくはバッテリ電圧が比較的高いとき、予熱フェーズ中に高いオン電流が加わる。給電されるグロープラグの個数を低減することによって、グロープラグのオン電流のレベルが低減し、このことによってグロー時間制御装置の損傷を確実に阻止することができる。
【0017】
1つの実施形態によれば、予熱フェーズの設定された期間が経過したならば、同時に動作させるグロープラグの個数の低減を終了する。
【0018】
別の選択肢として、グロープラグのプラグ温度を表す測定値が、予め定められたプラグ温
度値を上回った場合、および/または、目下のプラグ電流が所定のプラグ電
流値を下回った場合、同時に動作させるグロープラグの個数の低減を終了する。このようにすれば、消費電流が大きすぎる時点においてのみ、つまりはグロー時間制御装置の損傷を阻止すべき時点においてのみ、消費電流の制限が導入される。
【0019】
既述の方法は、グロー時間制御装置の消費電流が制限される場合に、常に有利に使用することができる。
【0020】
本発明は、消費電流を制限するデバイスを備えたグロー時間制御装置にも関する。この場合、予め定められた個数のグロープラグが、動作電圧から導出されパルス幅変調された制御信号によって制御される。このグロー時間制御装置には、グロープラグに印加される実効電圧を、同時に動作させるグロープラグの個数の低減により調整する手段が設けられている。このことの利点は、バッテリ電圧が高いときに、および/または、周囲温度が低いときに、過剰に大きい電流によって、グロー時間制御装置の損傷が回避されることであり、特に、グロー時間制御装置内に設けられており極性保護を実現する電界効果トランジスタの損傷が回避されることである。
【0021】
有利には、バッテリ電圧入力端子と、グロープラグを制御する電力トランジスタとの間に、グロー時間制御装置の電流容量を制限する少なくとも1つの極性保護素子が配置されている。
【0022】
本発明によれば、数多くの実施形態が可能である。次に、それらのうち2つの実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、図中、同じ要素ないしは部材には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】低温状態のセラミックスグロープラグへ供給されるオン電流の経過特性を例示する図
【
図3】本発明による方法の第1実施例について示す図
【
図4】本発明による方法の第2実施例について示す図
【
図5】グロー時間制御装置によるグロープラグ制御を同期合わせするための実施例について示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、グロー時間制御装置1の1つの実施例が示されており、この装置はバッテリ電圧U
Battに接続されている。グロー時間制御装置1内部においてバッテリ電圧U
Battは、並列接続された2つの電界効果トランジスタ2,3に加わっており、これらの電界効果トランジスタにより、バッテリレベルに応じた極性反転保護が実現される。これらの電界効果トランジスタ2,3は、この図には特に示されていないマイクロプロセッサまたはASICにより制御され、これらによりグロープラグの電力トランジスタも制御される。ここで考察対象としているグロー時間制御装置1によれば、4本のシリンダを備えた内燃機関が制御され、この場合、シリンダごとに1つのグロープラグ9,10,11,12が設けられている。これらのグロープラグ9,10,11,12各々は、それぞれ1つの電力トランジスタ5,6,7,8によりパルス幅変調方式で制御され、その際、パルス幅変調された制御信号は、マイクロプロセッサまたはASICによって形成される。上述のグロー時間制御装置1の電流容量は、電界効果トランジスタ2,3により一般に200Aまでに制限されている。
【0025】
グロープラグ9,10,11,12は、低電圧用セラミックスプラグとして形成されている。この種の低電圧用セラミックスプラグは、低温状態のグロープラグ9,10,11,12を大きいオン電流により所定の動作温度まで加熱する予熱フェーズ中、
図2に示されているような温度経過特性もしくは電流経過特性を有している。この場合、グロープラグ9,10,11,12の温度経過特性は、−30℃からの温度の事例が曲線Aとして、+25℃からの温度の事例が曲線Bとして描かれている。これらに代わるものとして、グロープラグ9,10,11,12の温度上昇が時間軸上に示されている。この場合、曲線Cは、印加される動作電圧U
Battを表す一方、曲線Dは−30℃のときのプラグ電流を、曲線Eは25℃のときのプラグ電流を表している。
【0026】
次に、
図3および
図4に示された2つの実施例に基づき、本発明による方法について詳しく説明する。グロー時間制御装置1の起動後、プラグ電流が送出される前に、まずはバッテリ電圧U
Battが測定され、および/または、プラグ温度と相関する測定値Mが測定され、この測定値をたとえば外気温またはグロー時間制御装置1の温度とすることができる。外気温は、グロー時間制御装置1の測定値として必ずしも直接、取得できるわけではない。したがって別の選択肢として、グロー時間制御装置1内部の温度を測定することができ、あるいは、同様に内燃機関の近くに配置されているエンジン制御装置によって外気温を測定することができ、たとえばLINまたはCANバスなどの通信データラインを介した転送により、エンジン制御装置からグロー時間制御装置1へ外気温を供給することができる。プラグ温度自体は、公称電流が給電されなければ測定できず、そのためグロー過程開始前は取得できない。ついで上述の測定値の評価に従い、4つのグロープラグ9,10,11,12をすべて同時に動作させて確実な予熱を行うのか、または、同時に動作させるグロープラグ9,10,11,12の個数を減らしてオン電流を制限するのか、という判定が下される。
【0027】
以下では、n個のシリンダおよびそれらのシリンダに対応してn個のグロープラグを備えたディーゼルエンジンであるとし、ここでは一例としてn=4が選択されている。測定されたバッテリ電圧U
Battが第1の電圧閾値U
Battnを上回ると、および/または、プラグ温度と相関する測定値Mが第1の温度閾値T
nを下回ると、n−1個のグロープラグ9,11,12よりも多くのグロープラグには同時に給電されないように、グロープラグ9,10,11,12が制御される。
図3には、バッテリ電圧U
Battに対するグロー時間制御装置1の最大総電流lが示されている。グロー時間制御装置1の総電流lとバッテリ電圧U
Battとの関係は、プラグの抵抗が約200mΩであり−40℃の低温状態にあるセラミックスグロープラグ9,10,11,12の事例について設定されている。
【0028】
ここでの目的は、電界効果トランジスタ2,3の動作性能が制約されてしまうことがないように、グロー時間制御装置1の総消費電流を200Aよりも小さい値に制限することである。4チャネル動作4Kは、実効電圧U_effの第1の電圧閾値U
1である11.5Vなるまで許容される。この動作においては、4つのグロープラグ9,10,11,12すべてに、100%のデューティサイクルでパルス幅変調された制御信号が同時に供給される。実効電圧U_effの第2の閾値U
2である15Vに至るまでは、グロー時間制御装置1が3チャネル動作3Kに切り替えられる。この動作においては、3つのグロープラグ9,11,12だけが同時に動作させられ、このときに許容されるデューティサイクルは制御信号の最大で75%である。実効電圧U_effの第2の閾値U
2である15Vからは、グロー時間制御装置1が2チャネル動作2Kに切り替えられる。この動作においては、2つのグロープラグ9,10が同時に動作させられ、パルス幅変調された制御信号のデューティサイクルは、最大で50%までに制限される。
【0029】
2つのグロープラグ9,10を動作させるのか、または3つのグロープラグ9,11,12を動作させるのかの判定にあたり、バッテリ電圧U
Battが、第1の閾値U
Battnよりも高い第2の閾値U
Battn-1を上回っているか、および/または、プラグ温度と相関する測定値Mが、第1の温度閾値T
nよりも低い第2の温度閾値T
n-1を下回っているか、をチェックする。この条件があてはまるならば、2つのプラグ9,11よりも多くのプラグに対し同時には給電されない。同様に、さらに次の電圧閾値U
Battn-mおよび温度閾値T
n-mについても、この方法を続けていくことができる。
【0030】
図4には、確実な予熱動作中のバッテリ電圧U
Battに対するグロープラグ9,10,11,12の実効電圧U_effの経過特性が示されている。この図には、本発明による方法の適用による目標実効電圧U_effの偏差ΔU_effが、はっきりと示されている。
【0031】
グロー時間制御装置1の総消費電流lが時間の経過に伴い変動するのを最小限に抑える目的で、グロープラグ9,10,11,12に対する制御の同期合わせが実行される。この場合、グロープラグ9,10,11,12の第1の制御チャネルが遮断されると、グロープラグ9,10,11,12の次の制御チャネルが、この遮断に同期してスイッチオンされる。
【0032】
図5Aには、グロープラグ9,10,11,12のパルス幅変調された制御信号の4チャネル動作4Kが示されている。4チャネル動作4Kの場合、デューティサイクルは100%〜75%にあり、4つのグロープラグ9,10,11,12すべてが同時に起動される。ここで特性曲線Fは、1つの周期期間にわたるグロー時間制御装置1の総電流lを表しており、領域F1中は、4つのグロープラグ9,10,11,12すべてに給電が行われるのに対し、領域F2中は、3つのグロープラグ9,11,12だけが動作させられる。
【0033】
図5Bには、最大で3つのグロープラグ9,11,12が同時に動作させられる3チャネル動作3Kが示されている。3チャネル動作3Kの場合、グロープラグ9,11,12のパルス幅変調された制御信号のデューティサイクルは、75%〜50%である。この図においても、特性曲線Fにより総電流lが表されており、領域F1により3つのプラグ9,11,12に流れる電流が、領域F2により2つのプラグ9,11に流れる電流が表されている。15Vの実効電圧U_effよりも高いときに実行される2チャネル動作2Kを実現するためには、
図5Cに示されているように、デューティサイクルは50%〜25%となる。この動作の場合、領域F1においては2つのグロープラグ9,11に電流が流れるのに対し、領域F2によって表されているのは、1つのグロープラグ9のみに給電されることである。
【0034】
識別された利用されているグロープラグタイプに応じて、グロー時間制御装置1の消費電流を制限する方法を遮断できるように構成してもよい。このように構成すれば、金属プラグが用いられている場合に、たとえば電流制限を行わないようにすることができる。その理由は、臨界的な即ちリスクの高い低温において、金属製のグロープラグの消費電流は、セラミックス製のグロープラグの消費電流よりも一般的に小さいからである。消費電流の制限を行う動作期間を、予め設定された予熱期間(たとえば100ms)を経過した後に終了させることができ、あるいは(温度に依存するプラグの抵抗値測定による)プラグ温度測定値が所定値を超えた後に、またはプラグ電流測定値が所定値を超えた後に、終了させることができる。既述の方法を適用することによって、実効電圧U_effを低減することができる。目標実効電圧U_effからの偏差を、グロー時間制御装置1のグロー制御部へ伝送することができ、それによってグロー制御のストラテジーを、偏差に応じて整合することができる。たとえば、予め定められたプッシュエネルギーに到達させるために、予熱フェーズ期間を延長することができる。