(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隔壁の各々に設けられた前記バイパス穴は、前記ドレイン穴に近づくにつれて前記ロータから離れるように勾配を有する流路が形成されるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心多段ポンプ。
主軸に沿って複数のインペラが設けられたロータを回転可能に支持すると共に、前記複数のインペラの各々をそれぞれ収納する複数のインペラ室に分解可能に構成されたケーシングを備える遠心多段ポンプのメンテナンス方法であって、
前記複数のインペラ室間に設けられた隔壁に前記ロータより前記ドレイン穴側に前記ロータの延在方向に沿って設けられたバイパス穴を介して前記複数のインペラ室から導かれた流体を、前記ケーシングに前記ロータに交差する方向に沿って外部に連通するように設けられたドレイン穴から排出する排出工程と、
前記流体が排出されたケーシングを前記複数のインペラ室に分解する分解工程と、
を備え、
前記バイパス穴は、前記複数のインペラの先端より前記ロータから離れた位置に設けられており、
前記バイパス穴の各々は、それぞれ前記ロータに沿って延在する共通のプラグが挿通可能に構成されており、
前記排出工程では、前記バイパス穴の各々から前記プラグを取り除くことにより前記ドレイン穴から前記流体を排出することを特徴とする遠心多段ポンプのメンテナンス方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠心ポンプのようなポンプ装置では、保守管理のため分解点検を実施する場合には、事前にケーシング内の流体を排出する必要がある。特に、原子力発電プラントで使用されるポンプは人体に有害な成分を含む流体を取り扱う場合があり、分解点検時に流体が飛散することを防止するために、流体の排出作業に多くの時間を要している。特に遠心多段ポンプは単段式のものに比べて構造が複雑であり、排出時に内部に流体が残存しやすいという問題がある。
【0006】
このようなポンプ装置における流体排出作業は、ケーシングに設けられた排出用のドレイン穴を開放することによって行われる。遠心多段ポンプでは、各インペラが収納されるインペラ室毎にドレイン穴を設けることで排出を促進することも有効ではある。しかしながら、このような手法では、ドレイン穴の増加に伴ってケーシングに接合部が増加し、ポンプ稼働時の振動影響や材料の経年劣化等による漏洩のリスクが大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明の少なくとも1実施形態は上述の問題点に鑑みなされたものであり、メンテナンス時にケーシング内の流体を効率的に排出し、分解点検時に流体が飛散することを抑制可能な遠心多段ポンプ、及び、該遠心多段ポンプのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプは上記課題を解決するために、主軸に沿って複数のインペラが設けられたロータと、前記ロータを回転可能に支持し、前記複数のインペラの各々をそれぞれ収納する複数のインペラ室に分解可能に構成されたケーシングと、を備え、前記ケーシングには、前記ロータに交差する方向に沿って外部に連通するドレイン穴が設けられており、前記複数のインペラ室間に設けられた隔壁の各々には、前記ロータの延在方向から見て前記ロータより前記ドレイン穴側において、前記ロータの延在方向に沿って貫通するように形成されたバイパス穴が設けられている。
【0009】
上記(1)の構成によれば、ケーシングに設けられたドレイン穴が開放されると、複数のインペラ室にある流体は、インペラ室間を仕切る隔壁に設けられたバイパス穴を介してドレイン穴から外部に排出される。ここで各隔壁に設けられたバイパス穴は、ロータの延在方向から見てロータよりドレイン穴側に設けられているので、各インペラ室の流体は、バイパス穴を介してドレイン穴に導かれる。このような構成によって、ケーシング内の流体を外部に効率的に排出できるので、分解検査時にケーシング内に流体が残存することで飛散するリスクを効果的に低減できる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記ロータは水平方向に沿って配置されており、前記ドレイン穴は前記ケーシングのうち重力方向下方側に設けられている。
【0011】
上記(2)の構成によれば、ロータが水平方向に沿うように遠心多段ポンプを横置き配置とした際に、ケーシング内の流体は、重力によって重力方向下方側に設けられたドレイン穴から外部に効率的に排出される。例えば原子力発電プラントで用いられる遠心多段ポンプでは、遠心多段ポンプを横置きに配置することで重心を低くし、耐震性を向上できる。本構成では、遠心多段ポンプがこのような用途に採用された場合において特に、上記効果を効果的に享受できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記隔壁の各々に設けられた前記バイパス穴は、それぞれ前記ロータから等しい距離に設けられている。
【0013】
上記(3)の構成によれば、各バイパス穴はそれぞれロータから等しい距離に設けられているので、各インペラ室の流体をバイパス穴を介してドレイン穴にスムーズに導くことができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれか1構成において、前記バイパス穴は、前記複数のインペラの先端より前記ロータから離れた位置に設けられており、前記バイパス穴の各々は、それぞれ前記ロータに沿って延在する共通のプラグが挿通可能に構成されている。
【0015】
上記(4)の構成によれば、各隔壁に設けられたバイパス穴の各々は、それぞれ互いに共通するプラグが挿通可能に構成されている。ここでインペラ室間の隔壁にバイパス穴が存在すると、当該バイパス穴を介して高圧側から低圧側に流体が逆流することにより、少なからずポンプ効率が低下するおそれがあるが、ポンプ稼働時に各バイパス穴に共通するプラグを挿通することでバイパス穴における逆流を抑制できる。本構成では特に、バイパス穴はインペラの先端よりロータから離れた位置に設けられているため、ポンプ稼働時にプラグを挿入した際にプラグがインペラに干渉することもない。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記隔壁の各々に設けられた前記バイパス穴は、前記ドレイン穴に近づくにつれて前記ロータから離れるように勾配を有する流路が形成されるように設けられている。
【0017】
上記(5)の構成によれば、それぞれのバイパス穴は、ドレイン穴に近づくにつれてロータから離れるように勾配を有する流路が形成されるように設けられる。これにより、ケーシング内における各バイパス穴の高さに勾配が生じるため、各インペラ室からドレイン穴に向かって流体が効率的に導かれる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)のいずれか1構成において、前記ケーシングは、該ケーシング内を減圧可能な減圧装置が取付可能な取付部を有する。
【0019】
上記(6)の構成によれば、ケーシングに減圧装置を取り付け可能に構成することで、仮に流体排出後にケーシング内に流体が残存している場合であっても、減圧装置を稼動することで真空乾燥により除去できる。これにより、ケーシングの分解検査時に流体が飛散するリスクをより一層低減することができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか1構成において、加圧水型原子炉を有する原子力プラント設備における格納容器スプレイポンプ、又は、一次冷却系への流体注入用ポンプである。
【0021】
上記(7)の構成によれば、このような用途に採用される遠心多段ポンプでは人体に対して有害な成分を含む流体が取り扱われるため、上述の各実施形態を採用することにより上記効果を特に効果的に享受できる。
【0022】
(8)本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプのメンテナンス方法は上記課題を解決するために、主軸に沿って複数のインペラが設けられたロータを回転可能に支持すると共に、前記複数のインペラの各々をそれぞれ収納する複数のインペラ室に分解可能に構成されたケーシングを備える遠心多段ポンプのメンテナンス方法であって、前記複数のインペラ室間に設けられた隔壁に前記ロータより前記ドレイン穴側に前記ロータの延在方向に沿って設けられたバイパス穴を介して前記複数のインペラ室から導かれた流体を、前記ケーシングに前記ロータに交差する方向に沿って外部に連通するように設けられたドレイン穴から排出する排出工程と、前記流体が排出されたケーシングを前記複数のインペラ室に分解する分解工程と、を備える。
【0023】
上記(8)の方法によれば、上記構成を有する遠心多段ポンプをメンテナンスする際には、排出工程において、ケーシング内の流体を効率的に排出することで、分解工程にケーシング内に残存する流体が飛散することを効果的に防止できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の方法において、前記分解工程の前に、前記流体が排出されたケーシングに減圧装置を取り付ける減圧装置設置工程と、前記減圧装置が取り付けられたケーシングを封止すると共に、前記減圧装置を稼働させる減圧工程と、を更に備える。
【0025】
上記(9)の方法によれば、ケーシング内の流体を排出した後に、減圧装置を取り付けると共にケーシングを封止し、減圧装置を稼動させることで、ケーシング内に残存する流体を真空乾燥により除去できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の少なくとも1実施形態によれば、メンテナンス時にケーシング内の流体を効率的に排出し、分解点検時に流体が飛散することを抑制可能な遠心多段ポンプ、及び、該遠心多段ポンプのメンテナンス方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0029】
まず本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプが用いられた原子力プラントの全体構成について説明する。
図1は本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプが用いられる原子力プラントの全体構成を示す模式図であり、
図2は
図1の原子力プラントの炉心及び格納容器スプレイの給水系統を示す模式図である。
【0030】
原子力プラントAPは、軽水を炉心冷却材及び中性子減速材として使用する軽水炉である。原子力プラントAPでは、原子炉1で原子核分裂反応によって生じた熱エネルギーで加熱された一次冷却水によって、蒸気発生器5で二次冷却水の高温高圧蒸気を生成し、当該蒸気によって発電が行われる。すなわち、原子力プラントAPは、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である原子炉1を備える原子力発電プラントである。原子力プラントAPは、一次冷却水が循環する一次冷却系を含む原子炉系CS1と、二次冷却水が循環する二次冷却系を含むタービン系CS2と、を備える。
【0031】
原子炉1は、原子核反応による熱エネルギーで一次冷却水を加熱する炉心2を収容する原子炉圧力容器7と、一次冷却水を加圧する加圧器4と、一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換することで二次冷却水の高温高圧蒸気を発生させる蒸気発生器5と、一次冷却水を圧送する一次冷却水ポンプ6とが原子炉格納容器3に収納されて構成されている。炉心2は、低濃縮ウランを含む複数の燃料ペレットが被覆管内に積層されてなる複数の燃料棒を有する燃料集合体を含み、支持構造物(不図示)によって原子炉格納容器3に支持されている。
【0032】
原子炉系CS1における一次冷却水は、炉心2で原子核反応により生じた熱エネルギーによって加熱されると共に加圧器4によって加圧された後、配管8を介して蒸気発生器5に供給される。蒸気発生器5では、一次冷却水によって二次冷却水が加熱され、高温高圧蒸気が生成される。蒸気発生器5で二次冷却水を過熱することにより熱量を奪われた一次冷却水は、一次冷却水ポンプ6によって配管9を介して炉心4に戻される。
【0033】
尚、原子炉系CS1では、一次冷却水は炉心2によって320℃程度に加熱されると共に、加圧器4によって150−160気圧程度に加圧されることにより、沸騰が抑制されている。また蒸気発生器5では、高温高圧の一次冷却水によって二次冷却水は270度及び60気圧程度の高温高圧蒸気(飽和蒸気)となる。
【0034】
タービン系CS2における二次冷却水は、蒸気発生器5で一次冷却水によって加熱されることで高温高圧蒸気となる。蒸気となった二次冷却水は、隔離弁10が設けられた配管11を介して蒸気タービン12に供給される。蒸気タービン12は高圧タービン12A及び低圧タービン12Bを含んでおり、それぞれ二次冷却水の蒸気によって駆動される。発電機13は、蒸気タービン12によって駆動され、発電が実施される。
【0035】
蒸気タービン12で仕事を終えた二次冷却水の蒸気は、復水器14によって液体に戻される。復水器14は冷却水として、循環ポンプ15Pが設けられた取入管15を介して取水された海水を使用しており、使用後の海水は排水管16を介して排出される。復水器14で液化された二次冷却水は配管17を通り、復水ポンプ18、グランドコンデンサ19、復水脱塩装置20、復水ブースタポンプ21、低圧給水加熱器22、及び、脱気器23に供給される。脱気器23の下流側には二次冷却水ポンプ24が設けられており、二次冷却水は、高圧給水加熱器25及び吸水制御弁26が設けられた配管27を介して蒸気発生器5に戻される。
【0036】
図2に示されるように、原子炉プラントAPには、異常発生時に原子炉格納容器7を冷却するための格納容器スプレイ30、及び、炉心2に冷却水を注入するための炉心注入ライン31A、31B及び31Cが設けられている。格納容器スプレイ30は原子炉圧力容器3の内側上方に支持されており、異常発生が検知された際に、下方にある原子炉格納容器7の内側に冷却水を散布する。散布された冷却水は、原子炉圧力容器3の下方に設けられたキャビティ32に貯留される。
【0037】
復水貯蔵タンク(CST)34及び燃料取替用水タンク(RWST)35は、格納容器スプレイ30、並びに、炉心注入ライン31A、31B及び31Cの給水源であり、それぞれ復水及び燃料取替用水を貯留するタンクである。復水貯蔵タンク34はライン37を介して炉心注入ライン31Cに接続されており、該炉心注入ライン31Cには充てん/高圧注入ポンプ36が設けられている。復水貯蔵タンク34に貯蔵された復水は、充てん/高圧注入ポンプ36によって注入先である一次冷却系より若干高い圧力になるように昇圧された後、炉心2に注入可能となっている。
【0038】
燃料取替用水タンク35は炉心注入ライン31A及び31Bに接続されており、該炉心注入ライン31A及び31Bには格納容器スプレイポンプ38A及び38Bが設けられている。燃料取替用水タンク35に貯留されている燃料取替用水は、格納容器スプレイポンプ38A及び38Bによって注水先である一次冷却系より若干高い圧力になるように昇圧された後、炉心2に注入可能となっている。また炉心注入ライン31A及び31Bは、分岐ライン39及び40を介して格納容器スプレイ30に接続されており、燃料取替用水タンク35に貯留された燃料取替用水を格納容器スプレイ30に供給可能に構成されている。
尚、分岐ライン39及び40は、格納容器スプレイ30に接続される一方で、更に分岐することによりキャビティ32にも燃料取替用水を供給可能に構成されている。
【0039】
ここで格納容器スプレイポンプ38A及び38Bは、不具合発生時のバックアップ用として、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bを備える。代替CVスプレイポンプ41A及び41Bは、ライン37と炉心注入ライン31A及び31Bとの間にそれぞれ設けられた並列ライン42A及び42B上に設けられている。このようなバックアップ構成を備えることにより、仮に格納容器スプレイポンプ38A及び38Bが何らかの原因で動作不能な状態に陥ったり、格納容器スプレイポンプ38A及び38Bの給水源である燃料取替用水タンク35に異常が発生した場合においても、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bを動作させることにより、復水貯蔵タンク34を給水源として格納容器スプレイ30への給水及び炉心注入を確保できる。
【0040】
このように原子力プラントAPでは各種ポンプが使用されているが、これらのポンプは使用用途に応じて仕様が選択される。本実施形態では特に、充てん/高圧注入ポンプ36、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bとして、遠心多段ポンプが採用されている(充てん/高圧注入ポンプ36、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bでは、その性質上、圧送の際における昇圧度が大きいためである)。このような充てん/高圧注入ポンプ36、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bでは、復水貯蔵タンク(CST)34に貯留された復水及び燃料取替用水タンク(RWST)35に貯留された燃料取替用水のように、人体に有害な成分を含む流体を取り扱う。そのため、メンテナンス時にケーシングを分解点検する際には、予めケーシング内から流体を排出することで、分解時に流体が作業員に飛散することを防止する必要がある。このような課題は、以下に説明する遠心多段ポンプの構成及びメンテナンス方法によって達成される。
【0041】
続いて、本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプ及びそのメンテナンス方法について説明する。以下の説明では、充てん/高圧注入ポンプ36、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bとして採用される遠心多段ポンプを符号50で示すこととする。また、以下の説明では、充てん/高圧注入ポンプ36、代替CVスプレイポンプ41A及び41Bについて個別に言及しない限りにおいて、これらのポンプは遠心多段ポンプ50として共通の構成を有するものとする。
【0042】
図3は本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプ50を駆動用モータ54と共に正面及び側方から示す外観図であり、
図4は
図3の遠心多段ポンプ50のA−A線断面図であり、
図5は
図4からケーシング52を抽出して概略的に示す模式図であり、
図6は
図4のケーシング52への減圧装置70及び蓋部材72の取り付け例を示す模式図であり、
図7は
図5のケーシング52の他の構成を概略的に示す模式図であり、
図8は
図5のケーシング52の更に他の構成を概略的に示す模式図である。
【0043】
図3に示されるように、遠心多段ポンプ50は、ロータ51と、該ロータ51を内部に回転可能に支持しながら収納するケーシング52と、を備える。ロータ51は、その一端に動力源である駆動用モータ54が連結されており、該駆動用モータ54は遠心多段ポンプ50と共通の台座53上に設置されている。駆動用モータ54は電源(不図示)から供給される電力で駆動され、遠心多段ポンプ50に動力を供給する。
尚、駆動用モータ54の電源は、通常の系統電源であってもよいし、該系統電源のバックアップ用の非常用電源であってもよいし、外部電源(例えば電源車のように移動体に搭載された移動電源)であってもよい。
【0044】
図4に示されるように、ロータ51は、ケーシング52に設けられた軸受55によって両側を回転可能に支持されながら、ケーシング52に収納されている。ロータ51は、主軸56に沿って設けられた複数のインペラ57を有する。本実施形態では特に、遠心多段ポンプ50は3段圧縮方式を採用しており、これに対応してロータ51は3つのインペラ57A、57B及び57Cを有する。
尚、本実施形態ではケーシング52としてシングルケーシングを例示しているが、ダブルケーシングであってもよい。
【0045】
ケーシング52は、流体が吸入される吸入室58と、該吸入された流体を多段圧縮する圧縮室59と、該圧縮された流体を排出する排出室60とを備える。ケーシング52を構成する吸入室58、圧縮室59及び排出室60は、それぞれ別部材として構成されており、ロータ51を中心に同軸上に組み立てられている。メンテナンス時には、これらをロータ51に沿ってそれぞれ移動させることにより、分解点検可能に構成されている。
【0046】
吸入室58及び排出室60には、ロータ51の延在方向に交差する方向(ロータ51の垂直方向)から流体が吸入及び排出されるように吸入口80及び排出口82が設けられている。
尚、吸入室58及び排出室60はボルト61によって互いに連結されることにより、ケーシング52の機械的強度が補強されている。
【0047】
圧縮室59は、複数のインペラ57の各々をそれぞれ収納する複数のインペラ室62に更に分解可能に構成されている。本実施形態では、3つのインペラ57A、57B及び57Cに対応するように、3つのインペラ室62A、62B及び62Cが設けられている。隣接するインペラ室62A、62B及び62C間には、仕切り用の隔壁63A、63B及び63Cがそれぞれ設けられており、各インペラ室間62A、62B及び62Cでインペラ57A、57B及び57Cが回転することによって流体が多段圧縮されるように構成されている。
尚、圧縮室(インペラ室62A、62B及び62Cの各々)には圧力変換部であるディフューザ67が設けられている。
【0048】
インペラ室62A、62B及び62Cもまた、上述の吸入室58及び排出室60と同様に、それぞれ別部材として構成されており、ロータ51を中心に同軸上に組み立てられている。メンテナンス時には、これらをロータ51に沿ってそれぞれ移動させることにより、分解点検可能に構成されている。
【0049】
ケーシング52には、メンテナンス時に開放することでケーシング52内の流体を外部に排出するためのドレイン穴64が設けられている。ドレイン穴64はロータ51の延在方向に交差する方向に沿って開口されている。本実施形態では特に、ロータ51が水平方向になるように遠心多段ポンプ50が台座53上に横置き設置された際に、ドレイン穴64がロータ51の延在方向から見て少なくともロータ51より重力方向下方になるように設けられている(好ましくは、ドレイン穴64はケーシング52の内部空間のうち重力方向最下部に設けられるとよい)。ドレイン穴64は通常時(非メンテナンス時)には封止されているが、メンテナンス時に開放されることによって、ケーシング52内の流体は重力によってドレイン穴64を介して外部に排出される。
【0050】
隔壁63A、63B及び63Cには、それぞれロータ51の延在方向に沿って開口されたバイパス穴66が設けられており、隣り合うインペラ室62同士が連通されている。ここで各隔壁に設けられたバイパス穴66はロータ51の延在方向から見てドレイン穴64側(すなわち遠心多段ポンプ50が台座53上に設置された際の重力方向下方側)に設けられている。そのため、各インペラ室62にある流体は、バイパス穴66を介してドレイン穴64に導かれた後、ドレイン穴64から外部に排出される。このようにケーシング52内の流体が外部にスムーズに排出されるため、ケーシング52を分解点検する際に、ケーシング52に残存している流体が飛散することを効果的に防止することができる。
【0051】
尚、バイパス穴66は隔壁63A、63B及び63Cと同様に、吸入室58及び排出室60との間の隔壁にも設けられている。これにより、インペラ室57に加え、吸入室58及び排出室60にある流体も同様にバイパス穴66を介してドレイン穴64に導いて外部に排出することができる。
【0052】
ここで
図4及び
図5に示されるように、隔壁63の各々に設けられたバイパス穴66は、ロータ51から等しい距離に設けられている。これにより、各インペラ室62にある流体が各バイパス穴66を通じてドレイン穴64に向かってスムーズに導かれる。
【0053】
またケーシング52は、該ケーシング52内を減圧可能な減圧装置70が取付可能な取付部71を有する。
図6は取付部71に減圧装置70が取り付けられた様子を示している。減圧装置70を使用する際には、
図6に示されるように吸入口80を蓋部材72で封止すると共に、ドレイン穴64に接続されたドレイン配管65を栓部材68で封止することで、ケーシング52の内部空間を外部から隔離し、気密性を確保する。蓋部材72は例えばOリングを介して吸入口80を封止するフランジ構造であってもよいし、吸入口80に嵌合可能なねじ込み式のキャップであってもよい。
尚、
図6では図示をわかりやすくするためにケーシング52に収納されたロータ51が破線で示されており、ケーシング52のうちロータ51を支持する軸受55近傍もまた気密性が確保されている。
【0054】
この実施形態では、メンテナンス時にケーシング52内から流体が排出された際に、減圧装置70を稼動させることで、ケーシング52内に少なからず残存した流体を真空乾燥により除去できる。これにより、ケーシング52を分解点検する際に、ケーシング52内に残存している流体が飛散することをより確実に防止できる。
【0055】
また他の実施例では、
図7に示されるように、バイパス穴66は各インペラ57の先端よりロータ51から離れた位置に設けられると共に、各バイパス穴66には、ロータ51に沿って延在する共通のプラグ90が挿通可能に構成されている。隔壁63にバイパス穴66が設けられると、複数のインペラ室62の流体は高圧側から低圧側に向かって少なからず逆流することにより、ポンプ効率が低下するおそれがある。本実施形態では、例えばポンプ稼働時(非メンテナンス時)にバイパス穴66にプラグ90を挿入して封止することで、このような流体の逆流を防止し、ポンプ効率の低下を防ぐことできる。またバイパス穴66はインペラ57の先端よりロータ51から離れた位置にあるため、プラグ90が挿入された状態でもインペラ57に干渉することがない。一方、メンテナンス時にはプラグ90をバイパス穴66から取り除くことにより、上述したようにバイパス穴66を介して各インペラ室62からの流体はドレイン穴64に導れ、外部に排出される。
尚、このようなプラグ90のバイパス穴66への脱着動作は自動的に行ってもよいし、手動によって行ってもよい。
【0056】
また他の実施例では、
図8に示されるように、各隔壁63のバイパス穴66は、ドレイン穴64に近づくにつれてロータ51からの距離が離れるように流路が形成されるように設けられている。これにより、ケーシング52内における各バイパス穴66が設けられた流路に勾配が生じるため、各インペラ室57からドレイン穴64に向かって流体が効率的に導かれる。
【0057】
続いて上記構成を有する遠心多段ポンプ50のメンテナンス方法について説明する。
図9は本発明の少なくとも1実施形態に係る遠心多段ポンプ50のメンテナンス方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0058】
まず稼働中の遠心多段ポンプ50を停止させ(ステップS1)、ケーシング52に設けられたドレイン穴64を開放することにより、ケーシング52から流体を外部に排出する(ステップS2:排出工程)。ドレイン穴64が開放されると、上述したように、各インペラ室62の流体は隔壁63に設けられたバイパス穴66を介してドレイン穴64に導かれた後、外部に排出される。遠心多段ポンプ50は単段の遠心ポンプに比べて複雑な構造を有しているが、上記構成によって簡易な作業でケーシング52内の流体を排出できる。
【0059】
続いて、流体が排出されたケーシング52に減圧装置70が取り付けられる(ステップS3:減圧装置設置工程)。具体的には、
図6を参照して上述したように、取付部71に減圧装置70を取り付け、吸入口80を蓋部材72で封止し、ドレイン穴64に接続されたドレイン配管65を栓部材68で封止することにより、ケーシング52の内部空間を外部に対して隔離して、気密性を確保した後に、減圧装置70を稼働される(ステップS4:減圧工程)。これにより、ケーシング52内に少なからず残存した流体が真空乾燥されることによって除去される。
このようにケーシング内の流体が除去された後、ケーシング52を各部材にに分解することにより分解点検が実施される(ステップS5:分解工程)。
【0060】
以上説明したように、本発明の少なくとも1実施形態によれば、ケーシング52内に存在する流体を外部に効率的に排出できるので、分解点検時にケーシング内に残存した流体が飛散することを効果的に防止できる。