(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不織布を平面視した側の第1面側に突出していて内部に繊維を有する第1突出部と、前記第1面側とは反対側の第2面側に凹んだ第1窪み部とを備え、前記第1突出部と前記第1窪み部とが該不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に配された第1層と、
前記第1層の前記第2面側に配されていて、前記第1面側の一方向に連続して突出する凸条部と、前記一方向に沿う方向で前記第2面側に連続して凹んだ凹条部とを備え、前記凸条部と前記凹条部が該不織布の平面視前記一方向と交差する方向に交互に配された第2層と、
前記第2層の前記第2面側に配されていて前記第2層の前記第2面側になす凹部に繊維が配された第3層と
を有する不織布。
前記第2層は、前記凸条部および前記凹条部が配された状態で、第1突出部に対応して第1面側に突出した第2突出部と、前記第1窪み部に対応して第2面側に凹んだ第2窪み部を有する請求項1に記載の不織布。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る不織布の好ましい一実施形態(第1実施形態)について、
図1および
図2を参照しながら、以下に説明する。
本発明の不織布10は、例えばおむつ(使い捨ておむつ)や生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面シートに適用することが好ましい。その際、第1面側Z1を着用者の肌面側に向けて用い、第2面側Z2を物品内部の吸収体(図示せず)側に配置して用いることが好ましい。以下、図面に示した不織布10の第1面側Z1を着用者の肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明する。本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0012】
図1および
図2に示すように、不織布10は、第1層11、第2層21及び第3層31の3層の不織布で構成されている。そして各層は、屈曲部を有さず、全体が連続した凹凸曲面をなすもので、継ぎ目のないシート面をなしている。
【0013】
第1層11は、平面視した側の第1面側Z1に突出していて、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2の内部に繊維を有してなる第1突出部12を備えている。さらに第1層11は、第2面側Z2に凹んでなる第1窪み部14を備えている。そして第1突出部12と第1窪み部14は、不織布10の平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に壁部13を介して複数が連続した状態で配されている。すなわち、第1突出部12の頂部(以下、第1突出部頂部ともいう)12Tと、第1窪み部14の底部(以下、第1窪み部底部ともいう)14Tとの間に連続した壁部13が配されている。そして、上記第1突出部12は、隣接する別の第1突出部12と壁部13の一部で構成される尾根部15を介して山脈のように連なっている。
また、上記異なる方向とは、一例として、x方向(x軸方向)と、このx方向とは異なるy方向(y軸方向)である。上記x軸とy軸の交差角度は、30°以上90°以下とすることが好ましく、本実施形態では90°とした。また第1面側Z1をz軸方向上方側とし、第2面側Z2をz軸方向下方側とした。
【0014】
上記第1突出部12の内部には繊維で満たされた中実部16が配されている。中実部16は以下のように定義される。
図2に示すように、まず、第1突出部12の第1面側Z1上部の所定厚d1を有する層部分を第1突出部頂部12Tとする。また第1突出部12の第1面側Z1側部の所定厚d2を有する層部分を上記壁部13とする。そして第1突出部頂部12Tと壁部13を除く第1突出部12の内部を中実部16と定義する。なお、上記各構成部材間は連続しているため、説明の便宜上、上述のように区分したものである。上記所定厚d1、d2は、不織布10の仕様によって変わるが、一例として第1窪み部底部14Tの厚みTbと同等とする。
上記中実部16は、第1突出部12の内部の少なくも頂部側もしくは全部が繊維によって実質的に中実な状態になっている部分である。ここでいう「繊維によって実質的に中実」とは、繊維が密に集合している状態をいい、断続した部分や小孔がないことを意味する。ただし繊維間の隙間のような微細孔は上記小孔に含めない。上記小孔とは、例えば孔径が円相当の直径で1mm以上のものと定義する。そして中実部16は、上記尾根部15内にも連なって配されていてもよい。
【0015】
次に、第1突出部頂部12T、壁部13、第1窪み部底部14Tの区分の一例について以下に説明する(前記
図2参照)。
第1突出部頂部12T、壁部13および第1窪み部底部14Tは、基本的には、第1層21の厚みtを3等分して規定される。すなわち、第1面側Z1を上方向として、上部P1を第1突出部頂部12T、中間部P3を壁部13、下部P2を第1窪み部底部14Tとする。そして第1突出部12は第1突出部頂部12Tと壁部13を含み、第1窪み部14は第1窪み部底部14Tと壁部13を含み、壁部13は共有される。
【0016】
上記のようにして面内の第1方向(x方向)及び第2方向(y方向)にそれぞれ延びて配列された第1突出部12と第1窪み部14とは、面状に矛盾無く連続して第1層11が構成されている。矛盾無く連続するとは、特定の形状部分が連なって面状になるとき、屈折したり不連続になったりせず、緩やかな曲面で全体が連続した状態になることをいう。この「連続」とは、断続した部分や小孔がないことを意味する。ただし、繊維間の隙間のような微細孔は上記小孔に含めない。上記小孔とは、例えば、その孔径が円相当の直径で1mm以上のものと定義する。このように、第1層11は面方向に連続した構造を有していることが好ましい。なお、上記第1突出部12と第1窪み部14との配列形態は上記に限定されず、矛盾無く連続しうる配列で配置しうる形態であればよく、例えば、第1突出部12を中心とする6角形の頂点のそれぞれに第1窪み部14が配置され、そのパターンが面内に広がる配列であってもよい。この場合、第1窪み部14の数が第1突出部12の数を上回るため、第1窪み部14同士が隣接する状態が生じる。しかし、全体において連続したシート状態が構成される限りにおいて、このような形態の配列も第1突出部12と第1窪み部14とが「交互」に配列したという意味に含まれる。
【0017】
次に、上記第2層21について説明する。
図1、
図2および
図3に示すように、第2層21は、第1層11の第2面側Z2に配されているものである。第2層21は、第1面側Z1の一方向に連続して突出している第2層の凸条部22を備えている。また、第2面側Z2の上記一方向に沿う方向に連続して凹んでなる第2層の凹条部23を備えている。すなわち、第1面側Z1から見た場合、第2層の凸条部22が畝状の凸部になっていて、第2層の凹条部23が上記畝状の凸部に隣接して並列に配された溝状の凹部になっている。したがって、第2層の凸条部22と第2層の凹条部23は、不織布10の平面視上記一方向と交差する方向、例えば一方向と直交する方向に交互に複数が連続した状態で配されている。上記一方向とは、例えば、x方向とy方向とが直交する場合はx方向またはy方向である。図示例では、上記一方向はy方向となる。
しかも、第1層11の第1突出部12の幅方向の長さ内に第2層の凸条部22および第2層の凹条部23が複数配されている。そして第2層21は、第2層の凸条部22および第2層の凹条部23が配された状態で、前述の第1層11の凹凸形状に対応した第1層11よりも高さが低い凹凸形状を有する。凹凸形状に対応したとは、第1層11の第1突出部12に対応して第1面側Z1方向に突出する第2突出部24が配されていることをいう。また、第1層11の第1窪み部14に対応して第2面側Z2方向に凹む第2窪み部25が配されていることをいう。したがって、第2突出部24と第2窪み部25は第2層の凸条部22と第2層の凹条部23が交互に配されて構成されている。言い換えれば、上記の第2層の凸条部22と第2層の凹条部23で構成された第2層21は、第1突出部12に対応した第2突出部24および第1窪み部14に対応した第2窪み部25が構成されていて、第2層21が第1層11の凹凸形状に対応した凹凸形状を成している。
【0018】
次に、上記第3層31について説明する。
図1および
図2に示すように、第3層31は、第2層21の第2面側Z2の全体に配されていて、第2層21の第2突出部24の第2面側Z2に配されている凹部26を埋め込んでいる。凹部26は、第2層21の第2突出部24の第2面側Z2に配されている内部空間24Kであり、第2層の凸条部22の第2面側Z2に配されている内部空間22Kも含む。この第3層31の第2面側Z2は平坦な面であることが好ましい。上記平坦な面になっているとは、第3層31を構成する繊維の集合体の第2面側Z2の一つ一つの繊維が、仮想の一つの平坦な面に接触した状態になっていることをいう。
【0019】
さらに不織布10の第1層11から第3層31の各層間には、各層の繊維どうしが熱融着されてなる熱融着繊維(図示せず)が存在している。この熱融着繊維により各層間が互いに接合されていることが好ましい。
【0020】
上記不織布10によれば、第1突出部12の内部は中実部16によって繊維が満たされた状態になっているため、クッション性が高められ、より潰れ難くなっている。
さらに、第1突出部12の弾力性が良くなり、圧縮からの回復性が高められている。
また、中実部16が配されていることによって、第1突出部12の内部が繊維を充填した状態になり、さらに第2層21の凹部26に第3層31の繊維が埋め込まれるように配されている。このため、第1層11から第3層31にかけて、液が留まるような空間が配されていないため、各層の繊維間に生じる毛管力によって液が繊維間に引き込まれてスムーズに流れるようになる。すなわち、液の吸収速度が高められる。
【0021】
また第2層21が第2層の凸条部22と第2層の凹条部23とを幅方向に交互に配されているため、第2層は凹凸のある波板状を有している。このため、第2層21において幅方向の液の拡がりが抑制され、長手方向の液の拡がりが促進されて、不織布10の全域に液を拡散させることができる。これによって、不織布10の第2面側Z2に配される図示していない吸収体全域に液を素早く拡散して吸収させ、肌の濡れを抑えることができる。
第3層31の第2面側Z2が平坦になっていることにより、不織布10の下層との間に大きな空間が生じず、図示していない吸収体等への液の移動がスムーズに行われる。
【0022】
また本実施形態において、第1突出部12は、中実部16の代わりに内部空間(図示せず)が配されていてもよい。その内部空間は、第1突出部12の外形と相似する形状を有している。例えば、ドーム状の内部空間を有している。内部空間を有する場合、第1突出部12に、4kPa程度の圧力がかかっても、第1突出部12がクッション性を有するため、第1層11は全体でクッション性を発現できる。
さらに、上記内部空間が配されている場合、内部空間が斜め方向に隣接する別の第1突出部12の内部空間に尾根部15の内部を通して繋がっていても好ましい。その場合、内部空間が斜め方向に連続して繋がるように配されることになる。これによって、一つの第1突出部12の内部空間が液体で満たされて一杯になった状態で不織布10に外部から圧力がかかると、隣接する内部空間に液体が流れ込む。そのため、液戻りすることが抑えられる。これによって、内部空間による液体の保持量が十分に確保できる。しかも、この内部空間によって、液が高繊維密度の第2層21、第3層31に到達しやすくなり、液の吸収速度が速くなる。
【0023】
さらに不織布10について、詳細に説明する。
まず、第1層11の形状について説明する。本実施形態において第1突出部12の頂部領域12Tを第1面側から見た場合、および第1窪み部14の頂部領域14Tを第2面側Z2から見た場合、それぞれ、丸みをもった円錐台形状もしくは半球状にされている。なお、本実施形態において、第1突出部12および第1窪み部14は上記形状に限定されず、どのような突出形態でもよい。例えば、様々な錐体形状であることが実際的である。なお、錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を広く含む意味である。
【0024】
上記第1突出部12の頂部領域(以下、第1突出部頂部ともいう。)12Tと、第1窪み部14の底部領域(以下、第1窪み部底部ともいう。)14Tとの間に上記壁部13(13a)を有する。開口部14Hは、第2面側Z2からみて第1突出部12の壁部13aの第2面側Z2の周縁をいう。この壁部13aは、第1突出部12において環状構造を成している部分である。同様に第2面側Z2からみた上記第1窪み部14の頂部領域(以下、第1窪み部頂部ともいう。)14Tと、第1窪み部14の第1面側Z1に開口した開口部14Hとの間に上記壁部13(13b)を有する。開口部14Hは、第1面側Z1からみて第1窪み部14の壁部13bの第1面側Z1の周縁をいう。この壁部13bは、第1窪み部14において環状構造を成している部分である。したがって、壁部13a、13bは第1突出部12における環状構造と第1窪み部14における環状構造とが一部共通になっている。
ここでいう「環状」とは、平面視において無端の一連の形状をなしていれば特に限定されず、平面視において円、長円、楕円、矩形、多角形など、どのような形状であってもよい。シートの連続状態を好適に維持する上では円、長円または楕円が好ましい。さらに、「環状」を立体形状としていえば、円柱状、斜円柱状、楕円柱状、切頭円錐状、切頭斜円錐状、切頭楕円錐状、切頭四角錐状、切頭斜四角錐状など任意の環構造が挙げられ、連続したシート状態を実現する上では、円柱状、長円柱状、楕円柱状、切頭円錐状、切頭長円錐状、切頭楕円錐状、等が好ましい。
【0025】
次に第1層11の繊維密度について説明する。
第1層11は、第1突出部12の繊維密度が最も低密度であり、第1窪み部14の繊維密度が最も高密度である。そして、第1突出部12から第1窪み部14に向けて繊維密度が高くなる密度勾配があることがより好ましい。この繊維密度の勾配は、第1突出部12から第1窪み部14に向かって繊維密度が高くなる様々な態様を広く含むものであり、漸次高くなる態様でもよく、段階的に高くなる態様でもよい。繊維密度は、不織布の単位面積当たりの繊維質量であり、後述する測定方法で測定される。繊維密度が高いとは、不織布の単位面積当たりに存在する繊維量が多いことを意味し、繊維間距離が短いことを意味する。繊維密度が低いとは、不織布の単位面積当たりに存在する繊維の量が少なく、繊維間距離が長いことを意味する。そのため、繊維密度が高い部分は繊維密度が低い部分よりも毛管力が高くなる。
【0026】
上記不織布10では、第1突出部頂部12Tの繊維密度は第1窪み部底部14Tの繊維密度よりも低くなっている。このため、第1面側Z1から供給された液体は、第1突出部頂部12Tを通液しやすくなり、一旦中実部16に保持される。このとき、供給される液体が多量であっても、中実部16によって液体を保持することができる。そして第2面側Z2に移行し、第2面側Z2に配されている第2層21、第3層31に吸収させることができる。したがって、不織布10は、表面液残りを大幅に低減して、液体の吸収、処理を速やかに行うことが可能になる。この液体は、尿であっても、軟便、経血等の高粘性液体であっても同様の効果を奏する。
【0027】
具体的には、上記不織布10は、上記中実部16の繊維密度が、第1突出部12(実質的に第1突出部頂部12T)の繊維密度より高く、上記第1窪み部14(実質的に第1窪み部底部14T)の繊維密度より低いことが好ましい。ここでいう繊維密度とは、各部の厚みの中心付近の繊維密度であり、1mm
2辺りの繊維本数を計測することで評価した。
例えば、第1突出部頂部12Tの繊維密度は、好ましくは15本/mm
2以上、より好ましくは20本/mm
2以上である。そして好ましくは120本/mm
2以下、より好ましくは80本/mm
2以下である。より具体的には、15本/mm
2以上120本/mm
2以下であることが好ましく、20本/mm
2以上80本/mm
2以下がより好ましい。中実部16の繊維密度は、好ましくは20本/mm
2以上、より好ましくは30本/mm
2以上である。そして好ましくは150本/mm
2以下、より好ましくは120本/mm
2以下である。より具体的には、20本/mm
2以上150本/mm
2以下であることが好ましく、30本/mm
2以上120本/mm
2以下がより好ましい。さらに第1窪み部底部14Tの繊維密度は、好ましくは30本/mm
2以上、より好ましくは50本/mm
2以上である。そして好ましくは500本/mm
2以下、より好ましくは200本/mm
2以下である。より具体的には、30本/mm
2以上500本/mm
2以下であることが好ましく、50本/mm
2以上200本/mm
2以下がより好ましい。
【0028】
2013−0062
このような不織布10では、第1突出部頂部12Tの繊維密度は第1窪み部底部14Tの繊維密度よりも低い。また第1突出部頂部12Tの繊維密度が中実部16の繊維密度よりも低い。このことから、第1面側Z1から供給された液体は、第1突出部頂部12Tをより通液しやすくなる。また、第1突出部頂部12Tから中実部16にかけての粗密勾配(粗から密に変化)によって、中実部16に導かれやすくなる。さらに、中実部16の繊維密度が第1窪み部底部14Tの繊維密度より低いことから、第1窪み部底部14Tから液戻りすることがない。そして、第1突出部頂部12Tを通液した液体は中実部16により一旦保持されやすくなり、第2面側Z2に移行しやすくなる。したがって、不織布10に供給された液体は、第1突出部頂部12Tから中実部16を通って第2面側Z2に排され、第2面側Z2に配されている第2層21、第3層31に速やかに吸収させることができる。よって、液(経血、軟便、等)の引き込み性が高くなるので、不織布10表面の液残り量が少なくなり、蒸れの発生や、痒みやかぶれを防止でき、快適な着用が継続できる。また、不織布10表面から液が見えにくくなるので、液の隠蔽性が高くなる。
【0029】
また、上記不織布10は、第1突出部12(実質的に第1突出部頂部12T)の繊維密度が、上記中実部16の繊維密度より高く、上記第1窪み部14(実質的に第1窪み部底部14T)の繊維密度より低くても好ましい。
例えば、第1突出部頂部12Tの繊維密度は、好ましくは15本/mm
2以上、より好ましくは20本/mm
2以上である。そして好ましくは120本/mm
2以下、より好ましくは80本/mm
2以下である。より具体的には、15本/mm
2以上120本/mm
2以下であることが好ましく、20本/mm
2以上80本/mm
2以下がより好ましい。中実部16の繊維密度は、好ましくは2本/mm
2以上、より好ましくは5本/mm
2以上、さらに好ましくは10/mm
2以上である。そして好ましくは100本/mm
2以下、より好ましくは90本/mm
2以下、さらに好ましくは80本/mm
2以下である。より具体的には、2本/mm
2以上100本/mm
2以下であることが好ましく、5本/mm
2以上90本/mm
2以下がより好ましく、10本/mm
2以上80本/mm
2以下がより好ましい。さらに第1窪み部底部14Tの繊維密度は、好ましくは30本/mm
2以上、より好ましくは50本/mm
2以上である。そして好ましくは500本/mm
2以下、より好ましくは200本/mm
2以下である。より具体的には、30本/mm
2以上500本/mm
2以下であることが好ましく、50本/mm
2以上200本/mm
2以下がより好ましい。
【0030】
上記不織布10では、第1突出部頂部12Tの繊維密度は第1窪み部底部14Tの繊維密度よりも低いことから、第1面側Z1から供給された液体は、第1突出部頂部12Tを通液しやすくなる。さらに、中実部16の繊維密度が第1突出部頂部12Tの繊維密度よりも低いことから、第1突出部頂部12Tを通液した液はさらに中実部16に移行しやすくなる。したがって、不織布10に供給された液体は、第1突出部頂部12Tから中実部16を通って第2面側Z2に排され、第2面側Z2に配されている第2層21、第3層31に速やかに吸収させることができる。この例では、第1突出部頂部12Tの繊維密度よりも中実部16の繊維密度のほうが高い場合よりも液の引き込み性がやや劣るが、十分な液(経血、軟便、等)の引き込み性が得られる。このため、不織布10表面に液が残りにくくなり、蒸れの発生や、痒みやかぶれを防止でき、快適な着用が継続できる。また、不織布10表面から液が見えにくくなるので、液の隠蔽性も得られる。
【0031】
このように、不織布10の第1面側Z1から排泄物等の液が供給された場合、第1突出部12において通液抵抗が低減されてその液が素早く中実部16に導かれる。同時に、繊維密度差による毛管力で液が壁部13を伝って中実部16へと移行する。このため、この不織布10を吸収性物品の表面シートに適用した場合、液を肌面側から素早く移行して第2層21、第3層31、吸収体(図示せず)へと素早く引き渡す。その結果、排泄物等の液は肌に付き難くなり、着用者に赤みやかゆみ等の肌荒れの発生、または湿疹、かぶれ等の皮膚炎の発生を防止することができる。
さらに、第1突出部12においては押圧に対して適度に潰れて肌に刺すような感じを与えず良好な肌当たりを実現することができる。一方、第1窪み部14は潰れにくく、排泄物を捕集した後の形状維持に優れ、型崩れせずに良好なクッション性と捕集物の拡散防止性に優れる。
【0032】
上記繊維密度とは、第1突出部12および第1窪み部14は最も突出した位置にある頂部領域12T、14Tの層厚みの中央付近の繊維密度である。また、壁部13はシート厚み方向の中心付近における層厚みの中央付近の繊維密度である。
上記各部位において、1mm
2当たりの繊維本数を計測することで評価する。例えば、第1突出部12の繊維密度は15本/mm
2以上であることが好ましく、20本/mm
2以上であることがより好ましい。そして、空隙の密度度差という観点から、120本/mm
2以下であることが好ましく、80/mm
2以下であることがより好ましい。より具体的には、15本/mm
2以上120本/mm
2以下、好ましくは20本/mm
2以上80本/mm
2以下である。
一方、第1窪み部14の繊維密度は、空隙の密度度差という観点から、30本/mm
2以上であることが好ましく、50本/mm
2以上であることがより好ましい。270本/mm
2以上であることがさらに好ましい。そして風合いの観点から、500本/mm
2以下であることが好ましく、200本/mm
2以下であることがより好ましい。より具体的には、30本/mm
2以上500本/mm
2以下が好ましく、50本/mm
2以上200本/mm
2以下であることがより好ましい。
第1突出部12の繊維密度と第1窪み部14の繊維密度との差は、10本/mm
2以上であることが好ましく、15本/mm
2以上であることがより好ましい。この差は、大きいほど好ましいが、上限としては、風合いの観点から、100本/mm
2程度である。さらに、空隙の密度度差という観点から、壁部13の繊維密度は、20本/mm
2以上であることが好ましく、30本/mm
2以上であることがより好ましい。そして、風合いの観点から、300本/mm
2以下であることが好ましく、200本/mm
2以下であることがより好ましい。より具体的には、20本/mm
2以上300本/mm
2以下が好ましく、30本/mm
2以上200本/mm
2以下がより好ましい。
【0033】
また、第1層11の平均繊維密度は第2層21、第3層31の平均繊維密度より低いほうが好ましい。
これによって、第1層11は第2層21よりも液透過性に優れ、液を第1突出部12の中実部16に引き込むため、液残りが低減される。引き込まれた液は液吸収性に優れる第2層21に移行する。この第2層21では、後述する繊維密度の疎密構造により、幅方向(x方向)の液拡散が抑制され、長手方向(y方向)に液拡散される。そして液は、第3層31に引き込まれ、吸収体(図示せず)に吸収される。このため、第1層11側から第3層31側に向かって液がスムーズに流れて、第1層11および第2層21での液戻りが低減される。
【0034】
次に上記不織布10の厚みについて以下に説明する。
上記不織布10は、シートの全面に渡って4kPaの圧力が均一にかかるように荷重がかけられたときの全体厚みTが、1.0mm以上、好ましくは1.3mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上である。そして3.0mm以下、好ましくは2.8mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下である。より具体的には、1.0mm以上3.0mm以下であり、1.3mm以上2.8mm以下であることが好ましく、1.5mm以上2.5mm以下であることがさらに好ましくい。厚みが厚すぎると感触が硬くなる。また、厚みが薄すぎると、クッション性が十分に得られなくなり、かつ、液の流れが悪くなる。なお、上述の全体厚みTは、z軸方向でみた第1突出部12の頂点12TPから第3層31の底部までの高さの平均値をいう。
【0035】
次に不織布10を構成する繊維の配向性について説明する。
不織布10の第1突出部12の壁部13(13a)を構成する繊維は、壁部13aの全周にわたって第1突出部頂部12Tと開口部12Hの縁部を結ぶ方向に繊維配向性を有する。言い換えれば、壁部13aを構成する繊維は、第1突出部頂部12Tに向かって収束する様に配向し、その起立する方向に繊維配向性を有する。また上記第1窪み部14の壁部13(13b)を構成する繊維は、壁部13bの全周にわたって第1窪み部頂部14Tと開口部14Hの縁部を結ぶ方向に繊維配向性を有する。したがって、第1突出部12と第1窪み部14の繊維配向性は壁部13で同様になる。
これにより、第1突出部12と第1窪み部14とを繋ぐ壁部13にしっかりとしたコシが生まれ、繊維が厚み方向に潰れてしまうことのない適度のクッション性を実現する。
【0036】
繊維配向性は、繊維の配向角と配向強度からなる概念である。
繊維の配向角は、色々な方向性を有する複数の繊維が全体としてどの方向に配向しているかを示す概念で、繊維の集合体の形状を数値化している。繊維の配向強度は、配向角を示す繊維の量を示す概念であり、配向強度は、1.05未満では、ほとんど配向しておらず、1.05以上で配向を有しているといえる。しかしながら、本実施形態においては、繊維配向がその部位によって変化している。すなわち、ある配向角の状態の部位から異なる配向角の部位へと変化する間に、配向強度が弱い状態や再配向することで高い状態へ至る等の様々な状態を有する。そのため、ある強い配向角を示す部位と別の方向に強い配向角を示す部位との間においては、繊維の配向強度が弱くとも繊維の配向角が変わっていることが好ましく、配向強度が高いことがより好ましい。
配向角、配向強度について本実施形態において一例を示すと、第1突出部12の壁部13aの曲面構造に対して配向角は、50°以上が好ましく、より好ましくは60°以上である。そして、130°以下が好ましく、120°以下がより好ましい。より具体的には、50°以上130°以下が好ましく、より好ましくは60°以上120°以下である。
配向強度は1.05以上が好ましく、より好ましくは1.10以上である。そして、第1窪み部14の壁部13bも同様になる。
上記のような配向強度、配向角に設定することで、厚み方向の荷重をしっかりと受け止め、高荷重下であっても、第1突出部12と第1窪み部14が潰され難くなる。これによっても液戻り量が低減できる。
【0037】
不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合、第1層11の各々の壁部13の繊維配向性により高加圧下においても十分な耐圧縮性を有し、第1突出部12、第1窪み部14の潰れを防ぐ。これにより十分な液の捕捉領域が確保でき、肌接触面積を小さくする効果、多量の液、固形分、高粘性液体等を十分に捕捉し、漏れを抑制する効果を十分に発揮する。
【0038】
次に第2層21について詳細に説明する。
第2層21は、後述する歯溝ロールを用いて延伸加工(歯溝加工ともいう)された不織布である。例えば、
図4に示すように、賦形前の第2層21は、波板状の繊維シート40である。すなわち、繊維シート40は、繊維シートの一直線状の凸条部41(前述の第2層の凸条部22に対応)と繊維シートの一直線状の凹条部42(前述の第2層の凹条部23に対応)とが交互に繰り返し配された不織布である。上記実施形態に用いた第2層21は、繊維シート40のy方向に延びる繊維シートの凸条部41と凹条部42がx方向に交互に配されている。
図5に示すように、断面視して、この繊維シート40は、Z方向を厚みとして、その厚みを3等分して区分する。すなわち、厚み方向(Z方向)の上方の部位を頂部域40a、厚み方向(Z方向)の中央の部位を側部域40c、厚み方向(Z方向)の下方の部位を底部域40bとする。
【0039】
上記繊維シート40は、後述するように、延伸加工によって、側部域40cだけではなく繊維シートの凸条部41の頂部域40aおよび繊維シートの凹条部42の底部域40bも延伸される。そのため、延伸前の原料不織布より不織布全体の繊維密度が低下している。それにより、繊維シート40全体の通液性と通気性が向上している。特に延伸されやすい側部域40cの繊維密度が最も低くなっており、通液性と通気性が特に向上している。一方、頂部域40a、底部域40bは繊維密度が高くなっている。
繊維密度が高いとは、繊維シート40の単位体積あたりに存在する繊維の量が多く、繊維間距離が短いことを意味する。繊維密度が低いとは、繊維シート40の単位体積あたりに存在する繊維の量が少なく、繊維間距離が長いことを意味する。そして、繊維密度が高い部位は毛管力が高く、繊維密度が低い部位は毛管力が低くなっている。
【0040】
上記第2層21は、後述する支持体に支持された上記の繊維シート40に高速の気流を吹き付けて賦形したものであるが、第2層21に繊維シート40の波板形状が残る。後述する賦形処理によって、第2層21は、第1面側Z1に突出していてy方向に連続して凸状の第2層の凸条部22と、第2面側Z2に凹んでいてy方向に連続して凹状の第2層の凹条部23とが、x方向に交互に配された、波板形状になされる。したがって、前述の
図5に示すように、x−z断面において、第2層21は、繊維シート40の疎密が繰り返し現れる。すなわち、繊維シート40の頂部域40aおよび底部域40bの繊維密度が密であり、側部域40cの繊維密度が疎であったことから、第2層21のx方向にその疎密が交互に現れるのである。具体的には、第2層の凸条部22の頂部側および第2層の凹条部23の底部側の繊維密度が密になり、第2層の凸条部22と第2層の凹条部23の中間部分の繊維密度が疎になる。特に、賦形時に圧せられた第2窪み部25の底部は繊維密度が高くなる。
【0041】
第2層21に用いられる繊維は、繊維径が異なる部位を有することが好ましい。例えば、
図6に示すように、第2層21の構成繊維群の中の1本の繊維44に着目する。繊維44が他の繊維と融着してなる融着部45、45同士の間で、本来の繊維径より細く延伸された2個の小径部46、46を有している。さらに小径部46、46間に大径部47を有している。図示例では、小径部46、46それぞれが融着部45、45に接続され、小径部46、46の間に、小径部46よりも繊維径の太い大径部47が略均一な太さで配されている。この大径部47は、繊維本来の繊維径を有する部分であり、延伸により細くされた小径部36よりも相対的に繊維径が太い部分である。融着部45、45間において、大径部47の数はこれに限定されず、複数の大径部47を有する形態であってもよい。この場合、各大径部47の両脇に小径部46が配されるため、大径部47の数に合わせて小径部46の数が決まる。
繊維44の構成では、剛性の高まる融着部45に隣接して、大径部47よりも低剛性の小径部46が配されている。これにより、繊維44を含む第2層21の柔軟性が向上し、第1層11の形態と相俟って、不織布10全体の肌触りが良好となる。
【0042】
大径部47は、不織布強度低下の防止の観点とから、融着部45、45同士の間において1個以上有することが好ましく、また、5個以下有することが好ましく、3個以下有することが好ましい。具体的には、1個以上5個以下が好ましく、1個以上3個以下有することが好ましい。
【0043】
大径部47の繊維径(直径L47)に対する小径部46の繊維径(直径L46)の比率(L46 /L47)は、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.55以上である。そして、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。より具体的には、好ましくは0.5以上0.8以下、さらに好ましくは0.55以上0.7以下である。
また、小径部46の繊維径(直径L46)は、肌触り向上の観点と不織布強度低下の観点から、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは6.5μm以上、特に好ましくは7.5μm以上である。そして、好ましくは28μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは16μm以下である。より具体的には、好ましくは5μm以上28μm以下、さらに好ましくは6.5μm以上20μm以下、特に好ましくは7.5μm以上16μm以下である。
大径部47の繊維径(直径L47)は、肌触り向上の観点から、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは13μm以上、特に好ましくは15μm以上である。そして、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下である。より具体的には、好ましくは10μm以上35μm以下、さらに好ましくは13μm以上25μm以下、特に好ましくは15μm以上20μm以下である。
【0044】
小径部46および大径部47の繊維径(直径L46,L47)は、次の方法により測定することができる。すなわち、繊維の繊維径として、繊維の直径(μm)を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM−5100)を用いて、繊維の断面を200倍から800倍に拡大観察して測定する。繊維の断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀株式会社製)を用い、繊維を切断して得る。抽出した繊維1本について円形に近似したときの繊維径を5箇所測定し、それぞれ測定した値5点の平均値を繊維の直径とする。
【0045】
このような繊維44は、第2層21の構成繊維全体の50質量%以上を占めることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0046】
次に第2層21の繊維構造について説明する。
また、第2層21において、同一繊維中に有する繊維径が互いに異なる部位の接触角が異なることが好ましい。具体的には、前述の
図6に示した小径部46と大径部47との間において、小径部46の接触角が大径部47の接触角よりも大きいことが好ましい。この「接触角」は、以下に述べる方法で測定された繊維の接触角である。この接触角の値により繊維の「親水度」の程度が判断される。具体的には、接触角が大きいことは親水度が低いことと同義であり、接触角が小さいことは親水度が低いことと同義である。したがって、小径部46の接触角が大径部47の接触角よりも大きいことで、小径部46の親水度が大径部47の親水度よりも低いことが好ましい。
【0047】
第2層21においては、同一繊維中に、小径部46と大径部47とが混在し上記接触角の差を有することで、該繊維に沿った液拡散の過度な発現が抑えられている。これは、不織布10に第1面側Z1から圧力が加わったときに特に効果的に作用する。すなわち、排泄後に第2層21を透過されて一度失速した液は、上記圧力で再び第1面側Z1へと向かっても、第1面側Z1の上記の繊維径および親水度の不連続性により液が繊維を伝わりづらくなる。これによって、液戻りし難くなる。一方、排泄時には、流速のある排泄液等は、その勢いで繊維44の構成がむしろ駆動力となり、第2層21の第2窪み部25側へ分散し捕集しやすくなる。加えて、流速のある液は、疎水部を乗り越えて撥水されることで、一箇所にとどまりにくくなり、第2層21に液残りし難くなる。これにより、不織布10の第1面側Z1を肌面側に向けて表面シートとして配置した場合に、液戻りの低減が実現できて好ましい。
【0048】
上記接触角は、次の方法により測定される。
まず、繊維シート40の構成繊維をランダムに複数抽出する。抽出した構成繊維の中から小径部46および大径部47を備えた構成繊維を選び出し、構成繊維における小径部46の位置および大径部47の位置での水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。
インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー株式会社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を15ピコリットルに設定する。そして、水滴を、小径部46の位置および大径部47の位置それぞれの中央の真上に滴下する。
滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msecごとに画像が録画される。
【0049】
録画された映像において、選出された構成繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトウエアFAMASにて画像解析を行う。ソフトウエアのバージョンは2.6.2である。解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする。画像解析に基づき、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出して接触角とする。選び出された構成繊維は、繊維長1mm程度に裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本の小径部46および大径部47につき、位置の異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の小径部46および大径部47の接触角を小数点以下1桁まで計測する。合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第1桁で四捨五入)を小径部46および大径部47の接触角と定義する。
【0050】
第2層21の表面の液残りが少なくドライ感が向上する観点から、小径部46の接触角と大径部47の接触角との差(前者−後者)が、1度以上が好ましく、5度以上がより好ましく、10度以上がさらに好ましい。また、25度以下が好ましく、20度以下がより好ましく、15度以下がさらに好ましい。具体的に接触角の差は、1度以上25度以下であることが好ましく、5度以上20度以下であることがさらに好ましく、10度以上15度以下であることが一層好ましい。
具体的に、小径部46の接触角は、60度以上が好ましく、70度以上がより好ましく、80度以上がさらに好ましい。また、100度以下が好ましく、95度以下がより好ましく、90度以下がさらに好ましい。例えば小径部46の接触角は、60度以上100度以下であることが好ましく、70度以上95度以下であることがさらに好ましく、80度以上90度以下であることがさらに好ましい。
また、大径部47の接触角は、55度以上が好ましく、60度以上がより好ましく、65度以上がさらに好ましい。また、90度以下が好ましく、85度以下がより好ましく、80度以下がさらに好ましい。そして大径部47の接触角は、55度以上90度以下が好ましく、60度以上85度以下がより好ましく、65度以上80度以下がさらに好ましい。
【0051】
次に不織布10の繊維素材等について説明する。
不織布10において、第1層11、第2層21および第3層31の構成繊維は、通常の不織布に用いられる繊維材料を特に制限なく用いることができる。例えば、特開2012−136791号公報の段落[0032]、特開2012‐149371号公報の段落[0034]等に記載の繊維素材などが挙げられる。
【0052】
さらに第2層21の構成繊維は、前述した小径部46および大径部47の構造を同一繊維内に有するものとするため、高伸度繊維を含むことが好ましい。この「高伸度繊維」とは、特定の伸度の性能を有する繊維であり、具体的には繊維の破断伸度が100%以上の性能を有する繊維を意味する。また、「高伸度繊維」は、原料の繊維の段階で高伸度である繊維のみならず、製造された不織布10の段階でも高伸度である繊維を意味する。
「高伸度繊維」としては、弾性(エラストマー)を有して伸縮する伸縮性繊維を除き、例えば特開2010−168715号公報の段落[0033]に記載のものが挙げられる。具体的には、低速で溶融紡糸して複合繊維を得た後に、延伸処理を行わずに加熱処理および捲縮処理のいずれか一方または両方を行ことによって得られる。このような高伸度繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して長さの延びる熱伸長性繊維が挙げられる。また、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂を用いて比較的紡糸速度を低い条件にして製造した繊維が挙げられる。また、結晶化度の低い、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、若しくはポリプロピレンに、ポリエチレンをドライブレンドし紡糸して製造した繊維等が挙げられる。それらの繊維のうちでも高伸度繊維は、熱融着性のある芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘型複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異形型でもよく、特に同心の芯鞘型が好ましい。繊維がどのような形態をとる場合であっても、柔軟で肌触り等のよい不織布等を製造する観点からは、高伸度繊維の繊度は、原料の段階で、1.0dtex以上であることが好ましく、2.0dtex以上であることがより好ましい。そして、10.0dtex以下であることが好ましく、8.0dtex以下であることがより好ましい。より具体的には、1.0dtex以上10.0dtex以下が好ましく、2.0dtex以上8.0dtex以下であることがより好ましい。
【0053】
第2層21においては、非弾性繊維のみから構成されていることが好ましく、高伸度繊維のみから構成されていることがさらに好ましい。なお、高伸度繊維に加えて、他の繊維を含んで構成されていてもよい。他の繊維としては、例えば融点の異なる2成分を含み且つ延伸処理されてなる非熱伸長性の芯鞘型熱融着性複合繊維、または、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)等が挙げられる。不織布が高伸度繊維に加えて他の繊維も含んで構成されている場合、不織布における高伸度繊維の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。そして、好ましくは100質量%以下である。より具体的には、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0054】
高伸度繊維の一例である熱伸長性繊維は、原料の段階で、未延伸処理または弱延伸処理の施された複合繊維である。例えば、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有している。第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する樹脂成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する樹脂成分である。第1樹脂成分および第2樹脂成分の融点は、融解ピーク温度で定義される。各樹脂の融解ピーク温度は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用いて測定される。具体的には、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定して求める。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
【0055】
鞘部を構成する第2樹脂成分としては、上述の通りポリエチレン樹脂を含んでいる。ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。特に、密度が0.935g/cm
3以上0.965g/cm
3以下である高密度ポリエチレンであることが好ましい。鞘部を構成する第2樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましく、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する第2樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下が、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、ポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上であることが好ましく、11.5nm以上であることがより好ましい。そして、20nm以下であることが好ましく、18nm以下であることがより好ましい。より具体的には、10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることがより好ましい。
【0056】
芯部を構成する第1樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。さらに、ポリアミド系重合体や樹脂成分が2種以上の共重合体等も使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもできる。その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。不織布の製造が容易となることから、芯部を構成する第1樹脂成分の融点と、鞘部を構成する第2樹脂成分の融点との差(前者−後者)が、20℃以上であることが好ましく、また150℃以下であることが好ましい。
【0057】
高伸度繊維の一例である熱伸長性繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なる。例えば第1樹脂成分がポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が好ましく60%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
一方、第2樹脂成分は、その配向指数が好ましくは5%以上であり、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。
【0058】
第1樹脂成分および第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
【0059】
また、高伸度繊維の伸度は、原料の段階で、好ましくは100%以上であり、より好ましくは200%以上であり、さらに好ましくは250%以上である。そして、好ましくは800%以下であり、より好ましくは500%以下であり、さらに好ましくは400%以下である。より具体的には、好ましくは100%以上800%以下であり、より好ましくは200%以上500%以下であり、さらに好ましくは250%以上400%以下である。この範囲の伸度を有する高伸度繊維を用いることで、繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、前述の小径部46から大径部47への変化点48が融着部45に隣接され、肌触りが良好となる。
【0060】
高伸度繊維の伸度は、JISL−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±2%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するとき、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mmまたは5mmに設定して測定する。
【0061】
高伸度繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比、前者:後者)は、原料の段階で、10:90〜90:10であり、特に20:80〜80:20であることが好ましく、とりわけ50:50〜70:30であることが好ましい。高伸度繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えばカード法で製造する場合には、繊維長を30mmから70mmの範囲とすることが好ましい。
【0062】
高伸度繊維の繊維径は、原料の段階で、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10μm以上のものを用いることが好ましく、特に15μm以上のものを用いることが好ましい。また、35μm以下のものを用いることが好ましく、特に30μm以下のものを用いることが好ましい。そして、10μm以上35μm以下、特に15μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。前記の繊維径は、前述した小径部46および大径部47の測定で用いた方法で測定される。
【0063】
原料の段階で、高伸度繊維の一例である熱伸長性繊維を用いる場合としては、上述の熱伸長性繊維の他に、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報および特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
【0064】
また、高伸度繊維を用いて小径部46および大径部47を形成して、さらに小径部46が大径部47よりも接触角を大きくするため、次のように繊維処理剤が付着していることが好ましい。
すなわち、原料の段階で、構成繊維内の高伸度繊維の表面に繊維処理剤が付着していることが好ましい。繊維処理剤は、延展性のある成分を含んでいることが好ましく、延展性のある成分と親水性の成分とが含まれていることがさらに好ましい。ここで、延展性のある成分とは、繊維の表面に付着させると、繊維の表面に低温で広がり易く、低温での流動性に優れた成分のことを言う。このような延展性のある成分としては、ガラス転移点が低く、分子鎖に柔軟性のあるシリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂として、Si−O−Si鎖を主鎖とするポリオルガノシロキサンが好ましく用いられる。繊維の表面に付着している繊維処理剤に延展性のある成分と親水性の成分とが含まれている場合、延展性のある成分は、繊維を延伸させる際に広がりやすく、親水性の成分は広がりにくいことで、繊維の延伸部位の親水度が変化すると考えられる。
【0065】
親水性の成分としては、両性イオン性の界面活性剤またはノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
【0066】
両性イオン性の界面活性剤としては、ベタイン型両性イオン性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、アミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。中でもベタイン型両性イオン性界面活性剤が好ましく、アルキル(炭素数1〜30)ベタインがより好ましく、炭素数16〜22(例えばステアリル)のアルキルベタインが特に好ましい。
【0067】
ノニオン性の界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8〜60)が挙げられる。またノニオン性の界面活性剤として、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜20)アルキル(炭素数8〜22)アミドが挙げられる。さらにポリオキシアルキレン(付加モル数2〜20)アルキル(炭素数8〜22)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0068】
前記繊維処理剤は、延展性のある成分、および親水性の成分以外に、疎水性の成分も含有していることが好ましい。疎水性の成分としては、アルキルリン酸エステル、下記の一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(以下、単に「アニオン界面活性剤」とも言う。)等が挙げられる。
【0069】
【化1】
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖または分岐鎖のアルキル鎖を表す。R
1およびR
2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。Xは−SO
3M、−OSO
3MまたはCOOMを表し、MはH、Na、K、Mg、Caまたはアンモニウムを表す。)
【0070】
次に不織布の製造方法について説明する。
不織布10は、エアースルー方式において、吹き付ける熱風の温度や風速を制御して賦形処理および熱融着処理を施して製造することができる。例えば、特開2012−136790号公報の段落[0031]に記載の方法、特開2012−149371号公報の段落[0033]〜[0061]に記載の方法、特開2014−12913号公報の段落[0043]〜[0050]に記載の方法等を用いることができる。また、賦形の際に用いる支持体としては、特開2012−149370号公報の
図1、2に示す支持体や特開2012−149371号公報の
図1から4に示す支持体などが挙げられる。
【0071】
上記の処理について、
図7を参照して詳述する。
図7に示すように、一例として支持体100を用いた製造方法を説明する。支持体100は、複数の棒状体101と、棒状体101間に離間して配置された複数の突起102と、複数の突起102に囲まれた複数の孔103とを有する。この支持体100としては、例えば特開2012−149371号公報の
図1に記載のものなどが挙げられる。
まず、延伸処理された第2層21となる繊維シート40を、後述する方法により予め準備する。また、繊維間が熱融着された不織布の第3層31を予め準備する。
【0072】
次いで、第1層11の原料となる繊維融着前の繊維ウエブ50をカード機で形成しながら、繊維シート40および第3層31とともに、支持体100に向けて搬送する。その際、支持体100の突起102に対して、繊維ウエブ50、繊維シート40および第3層31の順に積層する。ここでは、繊維シートの凸条部41の畝状に延出された方向および繊維シートの凹条部42の溝状に延出された方向と平行な方向を搬送方向としている。したがって、
図7では、各シートの搬送方向に対し直角方向断面を示しており、図面の左右方向がシートの幅方向(CD)である。そしてこれに直交する図面の奥から手前に向かう方向またはその逆方向がシートの搬送方向(MD)である。図面では、(a)図に示した賦形時に対して(b)図に示した賦形後の不織布10は反転した状態を示している。なお、MDとは、機械方向ともいい、不織布製造時における繊維ウエブの搬送方向であり、「Machine Direction」の略語である。上記CDとはMDに対して直交する方向であり、「Cross Direction」の略語である。
【0073】
この状態で、温度および風速を制御しながら熱風W(破線の矢印で示す)の吹き付けを、第3層31側から行う。すなわち、熱風Wは、不織布層の第3層31、繊維シート40から繊維ウエブ50を通過し、支持体100の孔103へと抜けて、賦形処理と熱融着処理とを行う。これにより、融着されていない繊維ウエブ50が支持体100の凹凸に沿って賦形され、繊維どうしが熱融着されて第1層11が得られる。
【0074】
第1層11の第1突出部12は、支持体100の孔103に入り込む部分で形成され、熱風の通過により繊維密度がウエブのときよりも疎になり柔らかく成形されている。一方、第1窪み部14は、支持体100の突起102で支持された部分に成形され、熱風Wの通過が無く、第1突出部12よりも繊維密度が高い。さらに言えば、熱風Wの通過の影響の強弱により、第1突出部12から第1窪み部14に向けて、繊維密度が高くなる密度勾配が成される。また、第1突出部12と第1窪み部14とを繋ぐ壁部13は、突起102の四方を囲む孔103での賦形により環状に形成される。しかも、繊維の配向は、融着前の賦形により熱風の吹き抜け方向へと変わるため、壁部13のMD、CDおよびこれらの各中間位置のいずれにおいても、壁部13の起立方向の繊維配向となる。
【0075】
一方、第2層21は、支持体100の形状に沿うように賦形されるが、第2層21となる繊維シート40は、予め延伸加工が施され、y方向(CD)に繊維シートの凸条部41および凹条部42が交互に配されている。
このように繊維シート40が配されることから、繊維シート40は繊維ウエブ50の賦形に沿って変形する。その際、繊維シート40は、繊維シートの凸条部41および凹条部42が延ばされ、延ばされた分が第2突出部24となる。しかし、繊維シートの凸条部41および凹条部42による波板形状をなしていたため、賦形時の熱風Wによる風力に対向して、波板形状を保持しようとする力が作用する。そのため、前述の
図4に示した繊維シートの凸条部41および凹条部42をほぼ維持した状態で、第2突出部24および第2窪み部25が成される。そして、繊維シートの凸条部41が第2層の凸条部22になり、繊維シートの凹状部42が第2層の凹条部23になる。このようにして、第2層21は、第1層11の凹凸形状に対応した緩やかな凹凸形状が形成される。すなわち、第1突出部12に対応して第2突出部24が配され、第1窪み部14に対応して第2窪み部25が配される。
【0076】
第1層11および第2層21の賦形とともに、第3層31の不織布も賦形されて、第3層31が第2層21の第2面側Z2の全体に配され、第2突出部24の第2面側Z2に配されている凹部26を埋め込む。凹部26は、第2突出部24の内部空間24Kであり、第2層の凸条部22の第2面側Z2に配されている内部空間22Kも含む。また第3層31の第2面側Z2は平坦な面であることが好ましい。
【0077】
また突起102に支持された部分のおいては、熱風Wに伴う圧力が掛かり、第3層31、第2層21の第2窪み部底部24Tおよび第1層11の第1窪み部底部14Tは押し潰されて、それぞれが密着して一体化されている。
以上のとおり熱風処理により賦形されることで、第3層31の繊維密度、第2層21の繊維密度および第1層11の繊維密度は、いずれも突起102で支持された部分において最も高密度となる。
【0078】
次に第2層21となる繊維シート40の製造方法を以下に説明する。
前述のとおり、不織布10の製造方法おいては、第2層21は予め準備される。その第2層21の好ましい製造方法を次に説明する。
好ましい製造方法としては、繊維ウエブの構成繊維同士の交点を熱融着する融着工程と、前記融着工程の後に、融着された前記繊維ウエブを一方向に延伸して筋状の凹凸形状に賦形する延伸工程とを備える。前記繊維ウエブは、延伸加工における繊維の小径部46および大径部47の形成の観点から、前述した繊維処理剤が付与された高伸度繊維を含むことが好ましい。以下、高伸度繊維を含むものとして説明する。
【0079】
前記融着工程では、カード機やエアレイド装置といったウエブ形成装置で形成された繊維ウエブ40Bを搬送しながら、エアースルー方式による熱風の吹き付け処理を行う。これにより、繊維ウエブ40Bの繊維同士が緩く絡合した状態がさらに進むとともに、絡合した繊維の交点が熱融着して、シート状の保形性を有する繊維シート40となる。
【0080】
熱風の温度および熱処理時間は、繊維ウエブ40Bの構成繊維が含む高伸度繊維の交点が熱融着するように調整することが好ましい。具体的に、熱風の温度は、繊維ウエブ40Bの構成繊維の内の最も融点が低い樹脂の融点に対して、0℃から30℃高い温度に調整することが好ましい。熱処理時間は、熱風の温度に応じて、1秒から5秒に調整することが好ましい。また、構成繊維同士の更なる交絡を促す観点から、熱風の風速は0.3m/秒から1.5m/秒程度であることが好ましい。また、搬送速度は、5m/minから100m/min程度であることが好ましい。
【0081】
延伸工程では、前記融着工程で得た繊維シート40を一方向に延伸処理する。
まず、延伸装置について説明する。
図8に示すように、幅方向に延伸するには、ロール幅方向に等間隔に歯溝を切った凹凸ロール401、402を用いる。凹凸ロール401、402においては、凸部403および凸部404はそれぞれのロール周面上の周方向に沿って配され、かつ、それぞれのロール幅方向に等間隔に離間させて複数配されている。この場合、繊維シート40の賦形は、繊維シート40の搬送方向(MD)に延出する畝状の繊維シートの凸条部41と溝状の繊維シートの凹条部42とが搬送方向と直交する方向(CD)に交互に形成される。すなわち、CDの方向に、延伸されて波形形状が形成される。
【0082】
具体的には、
図8および9に示すように、繊維シート40を、一対の凹凸ロール401、402の、互いの向かう合う凸部403と凸部404とが互い違いされた噛み合い部分に搬送する。これにより、繊維シート40に対して凸部403と凸部404とを反対方向に押し込んで、繊維シート40を波板状に賦形する。そのとき、繊維シート40は、凸部403の頂部403Aに接する部分と凸部404の頂部404Aに接する部分の間で、該両接触部分を含めて延伸される。延伸によって、
図6に示した構成繊維単位では、隣り合う融着部45、45同士の間の1本の構成繊維44に、繊維径の小さい2個の小径部46、46に挟まれた繊維径の大きい大径部47を形成する。具体的には、各融着部45の近傍で、先ず局部収縮が起こり易い。これにより、隣り合う融着部45,45同士の間の1本の構成繊維44に関しては、両端に2個の小径部46、46が形成される。この2個の小径部46、46に挟まれた部分が大径部47となり、2個の小径部46,46に挟まれた大径部47が形成される。さらに、隣り合う融着部45、45同士の間の大径部47が延伸され、大径部47の中に小径部46が形成されるものもある。
【0083】
上記の延伸において、小径部46から該大径部47への変化点48を、該融着部45から隣り合う該融着部45、45同士の間隔Tの、融着部45寄りの1/3の範囲内(
図6のT1およびT3の範囲)に配する。この変化点48の配置が、より柔らかい肌触りの観点から好ましい。なお、上記の変化点48とは、極端に繊維径が変化する部位を意味する。したがって、小さい繊維径で延出する小径部46から、小径部46よりも繊維径の大きい繊維径で延出する大径部47へ、連続的に漸次変化する部位または連続的に複数段階に亘って変化する部位は含まない。また、延伸される繊維が芯鞘型複合繊維の場合には、変化点48とは、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分との間で剥離することによって繊維径が変化する状態を含まない。あくまで、延伸により繊維径が変化している部位を意味する。
【0084】
さらに、繊維シート40の畝状の繊維シートの凸条部41と溝状の繊維シートの凹条部42とが第1層11の搬送方向(MD)に対して斜め方向、例えば45度方向になるように作製されていてもよい。このように作製された第2層21を用いた場合には、不織布10は、凸状部41の畝および凹状部42の溝の伸びる方向に溝の作用によって、液の拡散を制御できるという効果が得られる。例えば、センターに対し左右対称に45度の方向に畝と溝を製作すると前後方向の広がった方向に液が流れやすくなり、狭まる方向へは液が広がりにくくなる。
【0085】
上記の延伸加工では、1本の構成繊維44における隣り合う該融着部45、45どうしの間の領域を積極的に引き伸ばす。その際、構成繊維44の表面に付着した繊維処理剤の内、延展性のある成分は、低温での流動性に優れている。そのため、繊維の伸長に伴って流動し、小径部46の表面に付着した状態が維持される。一方、構成繊維44の表面に付着した繊維処理剤の内、延展性のある成分以外の成分は、繊維の伸長に伴って流動できず、小径部46の表面に付着した状態が維持できない。したがって、隣り合う融着部45、45どうしの間の領域を延伸することによって形成される小径部46の表面と大径部47の表面では、付着されている繊維処理剤の組成比率が変化する。具体的には、小径部46の表面には、延展性のある成分のみ付着し易くなる。一方、大径部47の表面には、延展性のある成分と親水化成分とを含む繊維処理剤が付着するようになる。この結果、小径部46の親水度が大径部47の親水度よりも小さくなり易い。特に、延展性のある成分として上述したポリオルガノシロキサンが用いられていると、ポリオルガノシロキサン自身が疎水性であるため、さらに小径部46の親水度が大径部47の親水度よりも小さくなり易い。
【0086】
また、このような延伸が、上記した延伸装置においてもなされる。そのため、シート全体としても延伸前よりも繊維密度が低くなっている。その中でも、繊維シート40の側部域40cは、特に延伸されやすいため、繊維シートの凸条部41および繊維シートの凹条部42よりも繊維密度が低くなされる。
【0087】
なお、第2層21は、同一繊維内に小径部46および大径部47を形成して、柔らかく肌触りを良好にする観点から、高伸度繊維のみからなることが好ましい。
仮に、構成繊維に弾性繊維が入っている場合、不織布が収縮されながら延伸されるため、不織布の製造方法と機械延伸倍率が同じ場合であっても、繊維径の変化が起こりにくい。その為、構成繊維に弾性繊維が入っている場合、極端に繊維径が変化する部位である変化点48ができにくく、小径部46から大径部47へ連続的に漸次変化する部位が形成されやすくなる。このように形成される連続的に漸次変化する部位は、弾性繊維が入っているため、融着点付近で局部的に延伸されるとは限らず、融着点付近というよりもランダムに観察されるようになる。この観点からも、構成繊維に弾性繊維を含まないほうが好ましい。
【0088】
上記第2層21の製造方法によれば、
図6に示した構成繊維44を備える。すなわち、小径部46の接触角が大径部47の接触角よりも大きい(すなわち親水度が小さい)第2層21を連続的に効率よく製造することができる。
【0089】
製造された第2層21(繊維シート40)は、一旦巻き取られてロールの形態とされた後、ロールから繰り出されて、支持体100側に第1層11の原料となる繊維ウエブ50を配し、最上層に第3層31を配して積層され、熱風Wを吹き付けて賦形されて不織布10が成される。
【0090】
上記製造方法では液拡散性、液吸収性、耐圧縮性、液戻り性、クッション性に優れているという作用効果を奏する上記説明した不織布10を製造することができる。
具体的には、幅方向の液の拡散を抑制し、長手方向の液の拡散を促進して、液の吸収速度を上げることができるとともに、良好なクッション感を得ることができる。
また上記製造方法では、第2層21は、延伸加工によりなる、いわゆる歯溝不織布である。この不織布は、繊維44の小径部46の親水度が大径部47の親水度よりも低いことから、繊維44が親水疎水構造となっている。これにより液戻りが低減される不織布10を製造できる。
また、繊維シート40は、繊維シートの凸条部41および繊維シートの凹条部42が交互に配された、いわゆる波板構造であることから、熱風Wを吹き付ける賦形処理を行っても、形状保持性がよい。そのため、第2層21は、繊維シートの凸条部41および繊維シートの凹条部42がほぼそのまま残って第2層の凸条部22および第2層の凹条部23になる。
【0091】
本発明の不織布10は、その他、各種用途に用いることができる。例えば、使い捨ておむつや、生理用ナプキン、パンティライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に使用することができる。その他、おしり拭きシート、清掃シート、フィルターとして利用する形態も挙げられる。
【0092】
次に、
図10を参照しながら本発明に係る積層不織布を表面材(以下、表面シートともいう。)に用いた吸収性物品の好ましい一実施形態として使い捨ておむつ200の本体4への適用例について以下に説明する。同図に示した使い捨ておむつはテープ型の乳幼児用使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。また、
図1に対応するX方向はおむつの幅方向を示し、Y方向はおむつの長手方向を示し、Z方向はおむつの厚み方向を示す。
【0093】
図10に示すように、使い捨ておむつ200は、肌当接面側に配された液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配された液難透過性の裏面シート2、および前記両シートの間に介在配置された液保持性の吸収体3を備える。
表面シート1には上記実施形態の不織布10が適用され、第1層11側を肌面として使用し、第3層31側を吸収体(図示せず)側として使用する。したがって、第1層11の第1突出部12側が肌当接面とされる。
【0094】
裏面シート2は展開状態で、その両側縁が長手方向中央部Cにおいて内側に括れた形状を有しており、1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。裏面シート2としては、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されない。
吸収体3としては、液保持性を有するものであれば、この種の物品に用いられる様々の態様ものを広く採用できる。例えば、パルプ繊維をコアラップシートで被覆したものや、エアレイド不織を用いたシート状のものや、高吸水性ポリマーを繊維シートで挟持してなるシート状のものなど様々ある。
またコアラップシートは、親水性の部材である。例えば、親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、クレープ紙、不織布を挙げることができる。
本例ではサイドシート5が配されている。サイドシート5としては、撥水性の不織布が好ましい。
さらにサイドシート5がなす横漏れ防止ギャザー7が設けられており、これにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止しうる。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。なお、
図10においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。
【0095】
上記使い捨ておむつ200はテープ型のものとして示しており、背側Rのフラップ部にはファスニングテープ6が設けられている。ファスニングテープ6を腹側Fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、使い捨ておむつ200を装着固定することができる。
使い捨ておむつ200は、不織布10を表面シート1として適用したことにより、肌当接面上での液戻りの防止と肌触りの良さ、クッション感の向上の両立を図ることができる。また、不織布10の凹凸形状によってより高い通気性が得られる。
【0096】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態のおむつに制限されるものではなく、例えば生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、尿とりパッド等に適用することができる。なお吸収性物品の構成部材として、表面シート1、裏面シート2、吸収体3の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。
【0097】
以下に、上述の不織布の製造方法により不織布を製造した実施例、および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、特に断らない限り「部」および「%」は質量基準である。
【0098】
(実施例1)
実施例1の不織布として、
図11に示すものを作製した。
まず、第2層21を次の方法により作製した。
構成繊維として、普通伸度繊維のみからなり、弾性(エラストマー)を有していない繊維を用いた。具体的には、前記普通伸度繊維は、芯部がポリエチレンテレフタレートであり、鞘部がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であった。普通伸度繊維は、繊度3.3dtexで、伸度55%であった。この「普通伸度繊維」とは、「高伸度繊維」に対して用いられる用語であり、具体的には繊維の破断伸度が30%以上100%未満の性能を有する繊維を意味する。
上記構成繊維のウエブを温度133℃、風速0.7m/sec、処理時間30秒、加工速度5m/minの条件で熱風を吹き付けて融着処理を行った。
【0099】
次いで、
図8に示した凹凸ロール401、402を用いて延伸処理を行った。具体的には、一対の凹凸ロール401、402が備える凸部どうしの間隔(ピッチ)が2.0mmであり、一対の凹凸ロール401、402の押し込み深さが1.2mmのものを用いた。機械延伸倍率が1.9倍であった。尚、構成繊維への繊維処理剤の塗布は、延伸工程の前に行い、付着量0.47質量%とした。得られた第2層21の坪量は28g/m
2であり、厚みは2.12mmであった。
【0100】
また、繊維同士が融着されているフラットな不織布の第3層を用意した。この第3層31は、芯部がポリエチレンテレフタレートであり、鞘部がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であった。この第3層31は、坪量が18g/m
2であり、厚みが0.8mm、繊維は、繊度2.0dtex、伸度40%であった。
【0101】
次に、
図7に示したように、上記の第3層31、第2層21を、第1層11を形成する繊維ウエブ50を合わせて、支持体100を用いて、熱風Wを吹き付けて不織布10を作製した。支持体100における突起102のピッチはMD方向20mm、CD方向10mmとした。
第1層11となる繊維ウエブ50には、構成繊維として、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンの芯鞘構造の繊維を用い、繊度2.4dtexのものを用いて、カード機により坪量20g/m
2のものを作製した。次いで、
図7のように、支持体100の突起102上に、繊維ウエブ50、第2層21、第3層31の順に積層した。そして、第1エアースルー工程により賦形処理を行い、第2エアースルー工程により融着処理を行った。
【0102】
第1エアースルー工程は、第1ノズルから吹き付ける空気の温度を80℃、風速を65m/sに設定して行った。
また、第2エアースルー工程は、第2ノズルから吹き付ける空気の温度を145℃、風速を5.0m/sに設定して行った。
これにより得た不織布10は、
図11に示すような、3層構造で、坪量66g/cm
2、厚み5.5mmのものとなった。
加えて、第1層11は、第1突出部12が第1窪み部14よりも繊維密度が低くされていた。これは、前述の走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM−5100)を用いた測定方法により確認した。
【0103】
(実施例2)
実施例2は、第2層21に下記の高伸度繊維を用いた以外、実施例1と同様の製造方法により作成した。
構成繊維として、高伸度繊維のみからなり、弾性(エラストマー)を有していない繊維を用いた。具体的には、高伸度繊維は、芯部がポリエチレンテレフタレートであり、鞘部がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であった。高伸度繊維は、繊度3.3dtexで、伸度350%であった。高伸度繊維に付着させる繊維処理剤として次の組成のものを用いた。
高伸度繊維に付着させる繊維処理剤として次の組成のものを用いた。
延展性のある成分:ポリオルガノシロキサン 5.0質量%
親水性成分:ポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーン 19.0質量%
ポリオキシエチレン(POE)アルキルアミド 28.5質量%
ステアリルベタイン 14.3質量%
疎水性成分:アルキルリン酸エステル 23.7質量%
アニオン界面活性剤 9.5質量%
また、第2層21の層には、同一繊維内に、小径部および大径部が混在していた。これは、後述の走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM−5100)を用いた測定方法により確認した。
【0104】
(比較例1)
比較例1は、第2層21および第3層31を用いず、第3層の繊維に普通伸度(伸度100%、繊度3.3dtex)の繊維を用いた以外、実施例1と同様の製造方法により作製した。
【0105】
[不織布厚みの測定方法]
不織布の厚みの測定方法は、不織布に0.005kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定した。厚み測定器にはオムロン株式会社製のレーザー変位計を用いた。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとした。
【0106】
<厚みの測定>
不織布試験体に0.05kPaの圧力がかかるように荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定した。厚み測定器にはオムロン株式会社製レーザー変位計を用いた。測定は、5回行い、平均してそのサンプルの不織布10の厚みとした。
【0107】
<平均繊維密度の測定>
不織布部分の切断面を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率(150〜500倍)に調整し(本実施例については100倍とした)、一定面積あたりの前記切断面によって切断されている繊維の断面積を数えた。また、観察の中心は、第1突起部頂部12Tおよび第2突起部頂部12Tの厚みの中点付近とした。次に1mm
2あたりの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm
2)とした。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの平均繊維密度とした。なお、走査電子顕微鏡には、日本電子株式会社製のJCM−5100(商品名)を用いた。
【0108】
[加圧下厚みの測定方法]
不織布試験体に4kPaの圧力がかかるように荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定した。厚み測定器にはオムロン株式会社製レーザー変位計を用いた。測定は、それぞれについて5回行い、その平均値を算出して4kPa荷重時の厚み(mm)とした。
【0109】
[拡散面積の測定]
拡散面積の測定は、吸収性物品の一例として花王株式会社製:ロリエ肌キレイガード(登録商標)20.5cm、2013年製)から表面シートを取り除き、その代わりに積層
不織布20の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の生理用ナプキンを用いた。
上記不織布試験体上に0.05kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積75mm
2の筒を当て、そこから馬血(粘度40cp)を9g注入した。注入は3gずつ3回に分けた。株式会社日本バイオテスト研究所製の馬血を用い、東機産業株式会社の粘度計VISCOMETER TVB−10Mを用いて、同一の馬血の高粘度成分と低粘度成分を混ぜ合わせて40cPに調整した。
注入完了から10秒静置した後に、馬血が拡散された面積をOHPシートに転写した。具体的には、最表面(第1層11表面)の馬血の拡散面積は、注入面の最表面が濡れている部分にOHPシートを当てて、その上から濡れている部分の輪郭をなぞって記録した。第2層表面の馬血の拡散面積は、注入面からみて、1層内部で、最表面の濡れよりも少し薄く見える濡れた部分にOHPシートを当てて、その上から濡れている部分の輪郭をなぞって記録した。このようにして、馬血の拡散面積を確定し、画像解析ソフトを用いて拡散面積を測定した。画像解析ソフトには、Media Cybernetics社のImage-Pro PLUSを用いた。
【0110】
[吸収時間の測定]
<加圧下吸収時間の測定>
花王株式会社の市販のベビー用おむつ(商品名「メリーズさらさらエアスルーMサイズ」)から表面シートを取り除き、その代わりに、100×250mmに切り出した不織布試験体を積層し、その周囲を固定して評価用のベビー用おむつを得た。上記不織布試験体上に20g/cm
2の圧力となる荷重を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積1000mm
2の筒を当て、そこから人口尿を注入した。人工尿としては生理食塩水を用い、10分ごとに40gずつ3回にわたり人工尿を注入し、吸収しきる時間(秒)を測定した。
【0111】
[液戻り量の測定および評価方法]
液戻り量の測定は、吸収性物品100の一例として乳幼児用おむつ(花王株式会社製:メリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ、2012年製)から表面シートを取り除き、その代わりに積層不織布10の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の乳幼児用おむつを用いた。
上記不織布試験体上に4kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積1000mm
2の筒を当て、そこから人口尿を注入した。人工尿としては、生理食塩水を用い、10分ごとに40gずつ4回にわたり、計160gの人工尿を注入した。
注入完了から10分静置した後に、上述の円筒および圧力を取り除いた。そして、アドバンテック株式会社製のろ紙No.5C(100mm×100mm)を20枚重ねた吸収シート(質量=M1)に4kPaの圧力がかかるように調整した重りを、注入点を中心として不織布試験体上に置いた。
5分静置した後に重りを取り除き、ろ紙の質量(M2)を測定し、次式のようにして、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(M2)−加圧前のろ紙の質量(M1)
【0112】
クッション性は、下記に説明する形状保持性と圧縮回復性で評価する。
[形状保持性の評価方法]
形状保持性は、以下の式で計算した。数値の小さい方が潰れにくく、耐圧縮性があると評価した。
[(0.05kPa時の厚み−4kPa時の厚み)/0.05kPa時の厚み]×100
【0113】
[圧縮回復性の評価]
圧縮回復性は、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB−3)を用い、通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行い、RC値を読み取った。測定値としては、3点を測定しその平均値を圧縮回復性とした。このKES圧縮試験機は、圧縮部位が面積2cm
2の円形平面を持つ板であり、圧縮速度は0.02mm/s、圧縮最大圧力は5.0kPaで、圧縮最大圧力に到達した時点で圧縮方向を反転させ回復過程に移行するものである。上記RC値は、圧縮時のエネルギーに対する回復されるエネルギーの割合を%表示したものであり、RC値が大きいほど、圧縮に対する回復性が良く、弾力性があるとされる。上記圧縮特性評価におけるRC値は、不織布の試験体に掛かる初期圧力0.05kPaがかかる時間T
0から最大圧力5.0kPaがかかる時間T
mまでの圧力の時間積分値を最大圧力5.0kPaまでの仕事量で除し、%で表示したものである。
【0115】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1および実施例2は、比較例よりも拡散面積が大きく、広く拡散されていた。吸収時間も実施例は比較例より短時間に液吸収を行うことができた。液戻り量も実施例は比較例より少なくなっていた。さらに形状回復性も実施例は比較例より低く、高荷重に対して潰れ難くなっていた。言い換えれば、高荷重で加圧されても元の形状に戻りやすくなっていた。さらに、圧縮回復性が実施例は比較例より高く、良好なクッション感が得られた。
上記したように実施例1から2は、幅方向の液の拡散を抑制し、長手方向の液の拡散を促進して、液の吸収速度を上げることができるとともに、良好なクッション感を得ることができた。また、液戻り量を低減することができた。