(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記穀粒排出装置が前記排出姿勢である場合に、前記上揺動指令を有効にし、かつ、前記穀粒排出装置が前記排出姿勢にない場合に、前記上揺動指令を無効にする請求項1から3のいずれか一項に記載のコンバイン。
前記判定部は、前記穀粒タンクが前記下降姿勢である場合に、前記格納旋回指令を有効にし、かつ、前記穀粒タンクが前記下降姿勢にない場合に、前記格納旋回指令を無効にする請求項1、3から5のいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施例に係るコンバインについて説明する。
図1は、コンバインの全体を示す右側面図である。
図2は、コンバインの全体を示す平面図である。
図1及び
図2に示す[F]の方向が機体の前側、[B]の方向が機体の後側、[L]の方向が機体の左側、[R]の方向が機体の右側と定義する。
【0016】
図1,2に示すように、コンバインは、機体の主要構成要素である機体フレーム1に左右一対の前車輪2及び左右一対の後車輪3が装備されている。前車輪2と後車輪3との間の部位にエンジンEが設けられている。エンジンEから走行ミッション6に駆動力が伝達され、走行ミッション6によって左右の前車輪2が駆動されることで、コンバインは自走する。機体フレーム1の前部に搭乗型の運転部7が設けられている。運転部7には、搭乗空間を覆うキャビン70が備えられている。機体フレーム1の前部に刈取部4が揺動昇降可能に連結されている。機体フレーム1における運転部7の後方に、脱穀装置11が設けられ、脱穀装置11の上に、穀粒タンク12が設けられている。脱穀装置11によって得られた穀粒は、揚穀装置14によって穀粒タンク12へ搬送されて穀粒タンク12に貯留される。
【0017】
図3に示すように、タンクフレーム体15が、機体フレーム1における脱穀装置11の周辺に立設されている。タンクフレーム体15は、脱穀装置11と連結されている。
【0018】
図3に示すように、穀粒タンク12は、機体前後方向に延びる底スクリュー19の横軸心Pを揺動中心として上下揺動可能に、タンクフレーム体15に支持されている。タンクフレーム体15と穀粒タンク12の下部とに亘って、タンク昇降シリンダ25が連結されている。タンク昇降シリンダ25は、油圧シリンダによって構成されている。穀粒タンク12は、タンク昇降シリンダ25によって、横軸心Pを揺動昇降中心として、下降姿勢を作り出す下降位置と、上昇姿勢を作り出す上昇位置と、に亘って上下揺動する。タンク昇降シリンダ25は、穀粒タンク12を横軸心P周りで上下揺動させるタンク揺動機構TMを構成している。
【0019】
穀粒タンク12を下降姿勢にすると、穀粒タンク12は、穀粒タンク12の左端側が脱穀装置11の上端近くに下降した水平状態となる。穀粒タンク12の下降姿勢においては、穀粒タンク12の供給口と揚穀装置14の吐出口とが連通し、揚穀装置14によって供給される穀粒を穀粒タンク12に貯留できる。穀粒タンク12を上昇姿勢にすると、穀粒タンク12の左端側が、穀粒タンク12の右端側の下端部12aよりも上昇した傾斜状態となる。穀粒タンク12の上昇姿勢においては、貯留された穀粒を自然流下によって下端部12aへ移動させて底スクリュー19に供給できる。
【0020】
図1に示すように、接続ケース23から機体上方向きに延出された縦搬送部41と、縦搬送部41の上端部から横向きに延出された横搬送部45とによって、穀粒排出装置40が構成されている。穀粒排出装置40によって、穀粒タンク12に貯留された穀粒は機外へ排出される。
【0021】
横搬送部45は、
図2に示すように、搬送筒46と、搬送筒46の内部に回転駆動可能に設けられた横スクリュー47を備えている。搬送筒46の先端部に排出口48が備えられている。排出口48に連通した吐出筒49(
図1参照)が搬送筒46の先端部から下向きに延出されている。
【0022】
図4に示すように、底スクリュー19と縦搬送部41とは、接続ケース23によって接続されている。接続ケース23は、タンクフレーム体15に固定されている。接続ケース23は、穀粒タンク12が軸心P周りで上下揺動可能に、底スクリュー19を支持している。縦搬送部41は、接続ケース23に支持され、かつ、縦軸心Y周りで、横搬送部45が穀粒タンク12の上方に位置する格納姿勢と、横搬送部45が機体横外に張り出す排出姿勢と、の間で旋回可能である。
【0023】
図4と
図6とに示すように、縦搬送部41の外周部に三日月形状のシリンダブラケット75が設けられている。シリンダブラケット75に油圧シリンダである旋回シリンダ78の一端が連結されている。旋回シリンダ78の他端はタンクフレーム体15に連結されている。シリンダブラケット75が旋回シリンダ78の伸縮によって押し引き操作されることで、穀粒排出装置40は、排出姿勢と格納姿勢とに亘って旋回する。旋回シリンダ78は、排出口48が横方向に移動するように穀粒排出装置40を縦軸心Y周りで旋回させる旋回機構SMを構成している。
【0024】
穀粒排出装置40が排出姿勢になると、横搬送部45が機体フレーム1の右横外側へ張り出た状態になる。穀粒排出装置40が格納姿勢になると、横搬送部45が機体内側に格納された状態になる。
【0025】
穀粒タンク12の下端部12aに位置する穀粒が、底スクリュー19によって機体前方側へ搬送されて、穀粒タンク12の前壁に形成された排出口20から接続ケース23に排出される。底スクリュー19による穀粒排出が進むにしたがって、穀粒タンク12の左端側に位置する穀粒が下端部12aへ流動する。穀粒タンク12が上昇姿勢となっていれば、その穀粒の流動が促進される。底スクリュー19の駆動力によって縦搬送部41が駆動され、縦搬送部41の駆動力によって横搬送部45が駆動され、穀粒タンク12から排出された穀粒が縦搬送部41によって横搬送部45へ搬送され、横搬送部45によって排出口48へ搬送される。
【0026】
図5に示すように、穀粒タンク12の上下揺動角を検出するための揺動角検出ユニット9Aが設けられている。この実施形態では、揺動角検出ユニット9Aは、穀粒タンク12の姿勢を検出する第1検出部として用いられ、3点リンク式の揺動リンク91と揺動角センサ92とを備えている。揺動リンク91は、第1リンクピン911、第2リンクピン912、第3リンクピン913、第1リンク914、第2リンク915からなる。第1リンクピン911は、穀粒タンク12の壁体12bに支持され、第1リンク914の一端と連結されている。第3リンクピン913は、タンクフレーム体15に支持され、第2リンク915の一端と連結している。第2リンクピン912は、第1リンク914の他端と第2リンク915の他端とを連結している。穀粒タンク12が上下揺動すると、第3リンクピン913が回動する。揺動角センサ92は、第3リンクピン913の回動角を検出するように第3リンクピン913に装着されている。
【0027】
図6に示すように、穀粒排出装置40の旋回角を検出するための旋回角検出ユニット9Bが設けられている。この実施形態では、旋回角検出ユニット9Bは、穀粒排出装置40の姿勢を検出する第2検出部として用いられ、検出アーム96と、アーム回動軸97と、旋回角センサ98とを備えている。アーム回動軸97は、接続ケース23に軸受け支持されている。縦軸心Yの周方向に延びた三日月形状のカム板76が縦搬送部41に設けられている。カム板76の周端面の一部は縦軸心Yからの径方向距離が周方向で増加するようにカム面76aとして形成されている。検出アーム96の基端はアーム回動軸97に固定されているとともに、検出アーム96の先端がカム面76aに常時接当するように、図示されていないばねでカム面76aの方に付勢されている。旋回角センサ98は、アーム回動軸97の回動角を検出するようにアーム回動軸97に装着されている。縦搬送部41、つまり穀粒排出装置40が旋回シリンダ78の駆動により旋回すると、検出アーム96がアーム回動軸97とともに回動し、このアーム回動角が旋回角として旋回角センサ98に検出される。
【0028】
図7に、遠隔操作器8が示されている。この遠隔操作器8は、通信ケーブルを通じてコンバインの制御ユニット5に接続されている。もちろん、遠隔操作器8と制御ユニット5に無線データ通信機能が備えられていると、互いに無線でデータ通信を行うことができる。この実施形態では、遠隔操作器8は、穀粒タンク12や穀粒排出装置40を操作するために用いられる。
【0029】
遠隔操作器8は、
図1及び
図2に示すようにキャビン70の後壁に取り付けられたポケットに取り出し可能に装着されている。使用時には、遠隔操作器8は、操作者によって取り出され、片手使用が可能である。
【0030】
遠隔操作器8は、手のひらに載せて掴むことができる直方体形状であり、その表面が長方形状の操作面80として形成されている。操作面80のほぼ中央に十字キー81が配置されている。十字キー81の縦方向の第1片82がタンク揺動機構TMの上下揺動動作を指令する揺動操作部UDとして機能する。また、十字キー81の横方向の第2片83が旋回機構SMの旋回動作を指令する旋回操作部LRとして機能する。つまり、この実施形態では、揺動操作部UDが、タンク揺動機構TMを介して、穀粒タンク12を上昇姿勢の方向に揺動させる上揺動指令と、穀粒タンク12を下降姿勢の方向に揺動させる下揺動指令とを含む揺動動作指令を与える第1人為操作具として用いられる。また、旋回操作部LRが、旋回機構SMを介して、穀粒排出装置40を排出姿勢の方向に旋回させる排出旋回指令と、穀粒排出装置40を格納姿勢の方向に旋回させる格納旋回指令とを含む旋回動作指令と与える第2人為操作具として用いられる。
【0031】
第1片82の上端部82Uがタンク揺動機構TMの上方揺動動作のための第1揺動指令接点に対応しており、第1片82の上端部82Uを押すことによって、上揺動指令が出力される。第1片82の下端部82Dがタンク揺動機構TMの下方揺動動作のための第2揺動指令接点に対応しており、第1片82の下端部82Dを押すことによって下揺動動作指令が出力される。
【0032】
第2片83の左端部83Lが、旋回機構SMの左旋回動作(排出姿勢への旋回動作)のための第1旋回指令接点に対応しており、第2片83の左端部83Lを押すことによって排出旋回指令が出力される。第2片83の右端部83Rが、旋回機構SMの右旋回動作(格納姿勢への旋回動作)のための第2旋回指令接点に対応しており、第2片83の右端部83Rを押すことによって格納旋回指令が出力される。ここで、「右旋回」とは、平面図において、穀粒排出装置40(横搬送部45)が縦軸心Yを中心として右回り(時計回り)することを示し、「左旋回」とは、穀粒排出装置40(横搬送部45)が縦軸心Yを中心として左回り(反時計回り)することを示す。
【0033】
図7から明らかなように、この実施形態では、穀粒タンク12の揺動と穀粒排出装置40の旋回を指令するために上端部82U(第1揺動指令接点)及び下端部82D(第2揺動指令接点)を通る第1仮想線VL1と、左端部83L(第1旋回指令接点)及び右端部83R(第2旋回指令接点)を通る第2仮想線VL2と、が操作面80上で直交する十字キー81が採用されている。これに代えて、穀粒タンク12の揺動を指令するスイッチ(例えばシーソ式スイッチ)を縦配置し、その上またはその下に穀粒排出装置40の旋回を指令するスイッチ(例えばシーソ式スイッチ)を横配置してもよい。いずれにせよ、操作者がこの遠隔操作器8を正規に把持した状態では、操作面80の長辺方向が操作者を基準とする遠近方向に沿うことになり、遠隔操作器8は縦姿勢となる。その縦姿勢では、遠隔操作器8の上部に比べて十字キー81は操作者に近い位置となり、親指での十字キー81の操作が容易である。
【0034】
なお、ここで用いられている十字キー81は、第1仮想線VL1と第2仮想線VL2とが直交している形状であるが、他の形態のスイッチやボタンを用いる場合は、第1仮想線VL1と第2仮想線VL2とが必ずしも90°で交わっている必要はない。また、ここで用いられている指令接点も、電気スイッチの電極同士が接触する点だけを意味しているのではなく、操作員が操作することで、特定の信号が生成される点 (位置)も意味している。例えば、操作面80がタッチパネルで形成される場合、特定の信号が生成される操作面80の位置が上記接点として解釈することができる。
【0035】
操作面80の上領域、つまり、揺動操作部UD及び旋回操作部LRとして機能する十字キー81の上には、揺動操作部UD及び旋回操作部LRとは異なる機器操作部として、自動スイッチ84及び排出ボタン85が配置されている。排出ボタン85は穀粒排出装置40による穀粒の排出動作を指令する排出操作部として機能する。
【0036】
自動スイッチ84は、タンク揺動機構TMによる穀粒タンク12の姿勢変更及び旋回機構SMによる穀粒排出装置40の姿勢変更を自動的に行う自動動作指令を与える。
【0037】
自動スイッチ84及び排出ボタン85の上、つまり操作面80の上縁に近接して、ランプ86が配置されている。このランプ86は、その点灯状態(常時点灯、短周期点滅、長周期点滅)によって種々の情報を報知することができる。ランプ86は、例えば、点灯により、穀粒排出装置40による排出を報知すると共に、短周期点滅や長周期点滅により、穀粒タンク12の揺動または穀粒排出装置40の旋回などが行われていることや、その他コンバインの機器故障や燃料低下などを報知する。
【0038】
なお、上述した遠隔操作器8に備えられている各種操作のためのスイッチやボタンなどは、運転部7に操作パネル800(
図8参照)を配置して、組み込んでいてもよい。遠隔操作器8と操作パネル800のいずれを用いても、同様の操作を行うことができる。
【0039】
図8は、コンバインの制御ユニット5のうち、穀粒タンク12及び穀粒排出装置40の姿勢変更制御に関する機能を示す機能ブロック図である。制御ユニット5は、入力信号処理部51、機器制御部52、タンク位置算定部53、排出装置位置算定部54、姿勢変更制御モジュール55を備えている。ここでは図示されていないが、この制御ユニット5によって生成された制御信号は機器制御部52を介して各種動作機器に送られる。入力信号処理部51は、各種操作デバイスからの信号、例えば操作パネル800や遠隔操作器8からの操作信号(操作指令)、揺動角検出ユニット9Aや旋回角検出ユニット9Bからの検出信号、その他このコンバインを構成する機器の状態を検出するセンサやスイッチなど作業状態検出センサ群9からの信号を入力して、制御ユニット5の各機能部に転送する。
【0040】
タンク位置算定部53は、揺動角検出ユニット9Aからの検出信号に基づいて、穀粒タンク12の揺動位置ないしは下降姿勢や上昇姿勢などの揺動姿勢を算定し、タンク位置データとして出力する。排出装置位置算定部54は、旋回角検出ユニット9Bからの検出信号に基づいて、穀粒排出装置40の旋回位置ないしは格納姿勢や排出姿勢などの旋回姿勢を算定し、排出装置位置データとして出力する。
【0041】
姿勢変更制御モジュール55は、穀粒タンク12及び穀粒排出装置40の操作者による操作指令に基づいて、その姿勢変更のための制御データを出力する。この実施形態では、姿勢変更制御モジュール55は、判定部551と自動移行管理部552と無効回避部553とを含んでいる。姿勢変更制御モジュール55には、タンク位置算定部53から、現状の穀粒タンク12の姿勢状態を示すタンク位置データが入力され、排出装置位置算定部から、現状の穀粒排出装置40の姿勢状態を示す排出装置位置データが入力される。タンク位置データには、穀粒タンク12が下降姿勢であるか、上昇姿勢であるかを示すデータが含まれている。排出装置位置データには、穀粒排出装置40が、格納姿勢であるか、排出姿勢であるか、格納姿勢と排出姿勢の間の移行姿勢にあるかを示すデータが含まれている。
【0042】
判定部551は、現状の穀粒タンク12の姿勢状態及び現状の穀粒排出装置40の姿勢状態と、揺動操作部UDに対する人為操作に基づく穀粒タンク12の姿勢変更及び旋回操作部LRに対する人為操作に基づく穀粒排出装置40の姿勢変更とを評価して、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じないかどうかを判定する。姿勢変更によって干渉が生じる可能性がある場合、そのような姿勢変更を行う指令は無効にされる。
【0043】
図9と
図10とを用いて、判定部551による判定処理を説明する。まず、この実施形態では、穀粒排出装置40の姿勢、詳しくは、横搬送部45の縦軸Y周りの旋回範囲と、穀粒タンク12の揺動範囲が、
図9で示すように定義されている。穀粒排出装置40に関しては、格納姿勢(基準となる格納位置からプラスマイナス数度の範囲を有しており、
図9では符号Hが付与されている)から約90度の位置が排出姿勢の基点であり、この基点のプラスマイナス数度から十数度の旋回範囲が主排出姿勢(図では符号Dが付与されている)と定義され、この主排出姿勢(D)から格納姿勢(H)までの旋回範囲が移行姿勢(図では符号Cが付与されている)と定義されている。主排出姿勢(D)及び移行姿勢(C)で、コンバインに横づけしたトラックの荷台などに穀粒の排出が可能である。このため、この移行姿勢(C)の範囲は副排出姿勢とも称せられる。横搬送部45の旋回角が主排出姿勢(D)であれば、横搬送部45は穀粒タンク12が上昇姿勢(U)であっても穀粒タンク12と干渉することはないが、横搬送部45の旋回角が移行姿勢(C)であれば、上昇姿勢(U)の穀粒タンク12と干渉する可能性がある。即ち、主排出姿勢(D)が、本発明における「排出姿勢」に対応する。穀粒タンク12に関しては、揺動下限から上方の数度の揺動範囲が下降姿勢(図では符号Lが付与されている)を示す、下降姿勢から揺動上限までの揺動範囲が上昇姿勢(図では符号Uが付与されている)を示す。主排出姿勢(D)に、排出側の旋回限界位置が含まれており、格納姿勢(H)に、格納側の旋回限界位置が含まれており、下降姿勢(L)に、揺動下限位置が含まれており、上昇姿勢(U)に、揺動上限位置が含まれている。
【0044】
図10のステップ#01の状態は、穀粒タンク12が下降姿勢(L)、穀粒排出装置40が格納姿勢(H)の状態である。この状態では、穀粒排出装置40が排出姿勢の側(C,D側)に旋回しても穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じないので、排出旋回指令は有効であり、この排出旋回指令によりステップ#02の状態に移行可能である。ステップ#01の状態で、穀粒タンク12が上昇姿勢の側(U側)に揺動すると、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じる可能性があるので、上揺動指令は無効となる。なお、ステップ#01の状態での穀粒タンク12の下揺動指令によって、揺動下限位置までの穀粒タンク12の下方揺動は実行されるが、実質的に下降姿勢(L)は維持されている。また、ステップ#01の状態での穀粒排出装置40の格納旋回指令によって、格納側の旋回限界位置までの穀粒排出装置40の旋回は実行されるが、実質的に格納姿勢(H)は維持されている。
【0045】
図10のステップ#02の状態は、穀粒タンク12が下降姿勢(L)、穀粒排出装置40が排出姿勢における副排出姿勢(C)に位置する状態である。この状態では、穀粒排出装置40がさらに主排出姿勢の側(D側)に旋回しても穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じないので、排出旋回指令は有効であり、この排出旋回指令によりステップ#03の状態に移行可能である。ステップ#02の状態でも、穀粒タンク12が上昇姿勢に揺動すると、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じる可能性があるので、上揺動指令は無効となる。ステップ#02の状態で、穀粒排出装置40が格納姿勢の側(H側)に旋回しても、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じずに、ステップ#01の状態に戻るだけなので、格納旋回指令は有効である。ステップ#02の状態での穀粒タンク12の下揺動指令は、ステップ#01の状態のときと同様である。
【0046】
図10のステップ#03の状態は、穀粒タンク12が下降姿勢(L)、穀粒排出装置40が排出姿勢の主排出姿勢(D)に位置する状態である。この状態で、穀粒タンク12が上昇姿勢の側(U側)に揺動しても、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じないので、上揺動指令は有効であり、この上揺動指令によりステップ#04の状態に移行可能である。また、ステップ#03の状態で、穀粒排出装置40が格納姿勢の側(C,H側)に旋回しても穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じないので、格納旋回指令は有効であり、この各旋回指令によりステップ#02の状態に移行する。ステップ#03の状態での穀粒タンク12の下揺動指令は、ステップ#01の状態ときと同様である。ステップ#03の状態での穀粒排出装置40の排出旋回指令によって、排出側の旋回限界位置までの穀粒排出装置40の旋回は実行されるが、実質的に排出姿勢(H)は維持されている。
【0047】
図10のステップ#04の状態は、穀粒タンク12が上昇姿勢(U)、穀粒排出装置40が主排出姿勢(D)に位置する状態である。この状態で、穀粒タンク12が下降姿勢の側(L側)に揺動しても、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じないので、下揺動指令は有効であり、この下揺動指令によりステップ#03の状態に移行可能である。ステップ#04の状態で、穀粒排出装置40が主排出姿勢(D)を超えて格納姿勢の側(C,H側)へ旋回すると、穀粒タンク12と穀粒排出装置40との間で干渉が生じるので、主排出姿勢(D)を超える旋回、つまり排出姿勢から移行姿勢(C)への姿勢変更をともなう格納旋回指令は無効である。ただし、
図10のステップ#03や#04の状態においては、穀粒排出装置40が主排出姿勢(D)にとどまる限り、つまり排出姿勢を維持する限り、格納旋回指令は許可される。これは、穀粒の排出先を調節するための措置である。ステップ#04の状態での穀粒タンク12の上揺動指令によって、揺動上限位置までの穀粒タンク12の上方揺動は実行されるが、実質的に上昇姿勢は維持されている。
ステップ#03の状態での穀粒排出装置40の排出旋回指令は、ステップ#03の状態の時と同様である。
【0048】
つまり、判定部551は、
図11に示されているルールで機能することになる。
(1)穀粒タンク12に対する上揺動指令は、穀粒排出装置40が排出姿勢(D)であれば有効であり、上昇揺動が実行され、格納姿勢(H)または移行姿勢(C)であれば無効となる。
(2)穀粒タンク12に対する下揺動指令は、穀粒排出装置40の姿勢に関係なく有効であり、揺動下限位置までの下降動作が可能である。
(3)穀粒排出装置40に対する格納旋回(右旋回)指令は、穀粒タンク12が上昇姿勢(U)であり、かつ穀粒排出装置40が排出姿勢(D)であれば有効であり、右旋回が実行される。しかし、格納旋回(右旋回)指令は、穀粒タンク12が上昇姿勢(U)であり、かつ、穀粒排出装置40が格納姿勢(H)または移行姿勢(C)であれば無効となる。
(4)穀粒排出装置40に対する格納旋回(右旋回)指令は、穀粒タンク12が下降姿勢(L)であり、かつ、穀粒排出装置40が排出姿勢(D)または移行姿勢(C)であれば有効であり、右旋回が実行される。しかし、穀粒タンク12が下降姿勢(L)であり、かつ、穀粒排出装置40が格納姿勢(H)の場合は、穀粒排出装置40による穀粒排出作業が行われていなければ、格納旋回(右旋回)指令は有効となって右旋回が実行されるが、穀粒排出作業が実行されていると無効となる。
(5)穀粒排出装置40に対する排出旋回(左旋回)指令は、穀粒タンク12の姿勢及び穀粒排出装置40の姿勢に関係なく有効であり、左旋回が実行される。
【0049】
上述の実施形態に基づいて、判定部551に課されるルールを別の表現でまとめると、以下のようになる。
[A]穀粒排出装置40が排出姿勢である場合に、上揺動指令を有効にし、かつ、穀粒排出装置40が排出姿勢にない場合に、上揺動指令を無効にする。
[B]穀粒排出装置40の姿勢とは関係なく、下揺動指令を有効にする。
[C]穀粒タンク12が下降姿勢である場合に、格納旋回指令を有効にし、かつ、穀粒タンク12が下降姿勢にない場合に、格納旋回指令を無効にする。
[D]格納旋回指令が穀粒排出装置40の主排出姿勢内での揺動であれば、穀粒タンク12が下降姿勢にない場合であっても、格納旋回指令を有効にする。
[E]穀粒排出装置40による穀粒排出作業を行っている場合には、穀粒タンク12が下降姿勢である場合であっても、穀粒排出装置40を格納姿勢にする格納旋回指令を無効にする。
[F]穀粒タンク12の姿勢とは関係なく、排出旋回指令を有効にする。
【0050】
無効回避部553は、判定部551が揺動動作指令(上揺動指令または下揺動指令)または旋回動作指令(格納旋回指令または排出旋回指令)を無効にした場合、当該指令を一時保留させ、かつ、当該指令の無効を回避するための穀粒タンク12の姿勢変更または穀粒排出装置40の姿勢変更を実行する無効回避指令を生成する。これにより、一時保留された指令を無効にする条件がなくなれば、当該指令が実行される。例えば、ステップ#01で、揺動操作部UDによって穀粒タンク12の上昇揺動を意図する操作が行われた場合、その時点では上揺動指令は無効となるが、無効回避部553が当該上揺動指令を一時保留し、その代わりに排出旋回指令を出力する。その後、ステップ#03の状態が達成されると、一時保留された上揺動指令が有効となり、ステップ#04の状態に移行する。
【0051】
自動移行管理部552は、穀粒排出装置40が格納姿勢である場合、自動スイッチ84によって与えられた自動動作指令に基づいて、穀粒排出装置40を排出姿勢に移行させるとともに穀粒タンク12を上昇姿勢に移行させる自動排出移行指令を出力する。さらに、自動移行管理部552は、穀粒排出装置40が格納姿勢でない場合、自動スイッチ84によって与えられた自動動作指令に基づいて、穀粒排出装置40を格納姿勢に移行させるとともに穀粒タンク12を下降姿勢に移行させる自動格納指令を出力する。ただし、穀粒排出作業が行われている間は、穀粒排出装置40が格納姿勢に移行することは避けなければならないので、自動移行管理部552は、自動格納指令の出力を保留する。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上述した実施形態では、遠隔操作器8は、操作面80に種々の機械的なボタンやスイッチなどが配置されていた。これに代えて、操作面80をタッチパネルとして、ソフトウエアでボタンやスイッチなどを構成してもよい。もちろん、操作パネル800にも、タッチパネルを備えて、上述したボタンやスイッチなどをソフトウエアで構築してもよい。
(2)上述した実施形態では、遠隔操作器8は、縦長形状に構成されていたが、これに代えて、横長形状やその他の形状に構成されていても良い。遠隔操作器8の形状の変更に合わせて、揺動操作部UD及び旋回操作部LRの配置も適宜変更可能である。
(3)揺動操作部UDや旋回操作部LRは、上述した十字キーやシーソー式スイッチの形態以外に、各接点が独立した四つの押し式スイッチであったり、または、これらの組合せであったりしても良い。
(4)上述した実施形態では、遠隔操作器8は、専用品であったが、これに代えて、スマートフォンやタブレットコンピュータに適当なアプリをインストールすることで、スマートフォンやタブレットコンピュータを本発明の遠隔操作器8として利用してもよい。