(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における磁気記録媒体及び磁気記録再生装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。また、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。
【0017】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シード層に用いるAuW合金にCrまたはVを添加することで、上記の課題を解決できることを見出した。
【0018】
詳細に説明すると、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、多層化した磁性層の垂直配向性を高め、なお且つ、磁性粒子を微細化し、その結晶粒径を均質化するためには、配向制御層を構成する結晶粒子の結晶性を高め、かつ微細化し、その結晶粒径を均質化、および結晶粒径の分散を優れたものとする必要があることを解明した。
【0019】
すなわち、
図1に示すように、配向制御層11には、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部をドーム状の凸とする凹凸面11aが形成され、この凹凸面11aから厚み方向に磁性層(又は非磁性層)12の結晶粒子が柱状晶S1となって成長する。また、この柱状晶S1の上に形成される非磁性層(又は磁性層)13及び最上層の磁性層14の結晶粒子も、柱状晶S1に連続した柱状晶S2、S3となってエピタキシャル成長する。
【0020】
このように、磁性層となる層12〜14を多層化した場合、これら各層12〜14を構成する結晶粒子は、配向制御層11から最上層の磁性層14に至るまで連続した柱状晶S1〜S3となってエピタキシャル成長を繰り返す。なお、
図1に示す層13は、グラニュラー構造を有する層であり、この層13を形成する柱状晶S2の周囲には酸化物15が形成されている。
【0021】
したがって、配向制御層11の結晶粒子の結晶性を高め、かつ微細化し、その結晶粒径を均質化、および結晶粒径の分散を優れたものとすれば、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sを高密度化し、更に、これら各柱状晶Sの頂部から厚み方向に柱状に成長する各層12〜14の柱状晶S1〜S3も高密度化することが可能となる。
【0022】
そして、本発明者は、このような知見に基づいて更なる検討を重ねた結果、非磁性基板の上に、軟磁性下地層、シード層、配向制御層、垂直磁性層が、順に積層されている構造を少なくとも有する磁気記録媒体であって、軟磁性下地層は、アモルファス若しくは微結晶構造とし、シード層を、Auを90原子%〜40原子%の範囲内(40原子%以上、90原子%以下)、Wを5原子%〜30原子%の範囲内(5原子%以上、30原子%以下)、CrまたはVを5原子%〜30原子%の範囲内(5原子%以上、30原子%以下)で含む合金とすることで、シード層を起点にして、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続して結晶成長させた各層の柱状晶を、結晶性が高く、微細で、かつ均質で分散の優れた粒径を有する結晶粒子によって構成できることを見出した。
【0023】
従来より、シード層にAuW合金を用いることは知られていた。しかしながら、
図2の2元系平衡状態図に示すように、AuへのWの固溶量は極めて少なく、シード層としてAuW合金を用いる場合は、成膜にスパッタリング法等の急冷手法を用いて、Auに無理やりWを含有させていた。そのため、Auに多量のWを含有させるとAu合金粒子の結晶性が低下し、また結晶粒径の分散が悪化していた。
【0024】
よって、本実施の形態においては、AuWにさらにCrまたはVを添加することでWとCrまたはVとを固溶体とし、そして、このCrWまたはVWの固溶体をAuに固溶させることで、Au合金に多量のWを含有させても、Au合金粒子の結晶性を維持した状態で、結晶粒子の微細化と、結晶粒径の分散を優れたものとすることを可能とした。
【0025】
本実施の形態における磁気記録媒体のシード層は、Auを90原子%〜40原子%の範囲内、Wを5原子%〜30原子%の範囲内、CrまたはVを5原子%〜30原子%の範囲内で含む合金とするが、WをCrまたはVの安定的な固溶体とするためには、
図3及び
図4の2元系平衡状態図に示すように、CrとWまたはVとの添加量をほぼ同量とするのが好ましく、具体的には、CrとWまたはVとの原子比率を、1:2〜2:1の範囲内とするのが好ましい。即ち、CrとWまたはVとの原子比率をCr/W、またはCr/Vで表した場合に、1/2以上、2以下であることが好ましい。
【0026】
CrとVは周期表上隣同士で、良く似た物性を有し、Wと固溶領域を有する点でも本発明に対して同様な効果が得られる。特に、CrはAu合金の結晶配向性を高める効果があり、また、Crは耐蝕性に優れるため、磁気記録媒体のシード層への添加元素として好ましい。
【0027】
これにより、本発明では、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体を提供することができる。
【0028】
以下、本実施の形態における磁気記録媒体の特徴部分について、
図5を参照しながら更に詳細に説明する。
【0029】
本実施の形態における磁気記録媒体では、
図5において模式的に示すように、非磁性基板(図示せず。)の上に形成される軟磁性下地層2がアモルファス若しくは微結晶構造を有することで、この軟磁性下地層2の表面2aにおける平滑性を高め、この上に形成されるシード層9の表面9aにおける平滑性も高めている。
【0030】
シード層9の膜厚は、0.5nm〜10nmの範囲内(0.5nm以上、10nm以下)とすることが好ましく、更には、1nm〜5nmの範囲内(1nm以上、5nm以下)とすることがより好ましい。シード層9の膜厚を上記の範囲内とすることで、その成膜後の表面平滑性を高めることができる。
【0031】
シード層9の膜厚を制御することにより表面平滑性が高まる理由は、上記の物質はアモルファスもしくは結晶成長する材料であるが、何れの場合も上記の膜厚の範囲内で、成長表面の平坦化が図られるからである。
【0032】
そして、本実施の形態においては、このシード層9の上に、配向制御層3を形成する。配向制御層3については、Ru、Ru合金、CoCr合金からなる群から選ばれる何れか1種または2種以上を用いることが好ましく、その中で特に、Ruを用いることが好ましい。これにより、配向制御層3を構成する結晶粒子は、シード層9を構成する結晶粒子と1:1で対応しながら、厚み方向に連続した柱状晶となってエピタキシャル成長する。
【0033】
また、この配向制御層3を構成する各柱状晶の上面の頂部を含む部分には、ドーム状の凸部3aが形成されるため、この凸部3a上に形成される垂直磁性層(図示せず。)の結晶粒子を1:1で対応させながら、厚み方向に連続した柱状晶となるようにエピタキシャル成長させることができる。
【0034】
配向制御層3を構成する結晶粒子の平均粒径は、10nm以下であることが好ましく、より好ましくは8nm以下である。
【0035】
図6は、本実施の形態における磁気記録媒体の一例を示したものである。
【0036】
この磁気記録媒体は、
図6に示すように、非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2と、シード層9と、配向制御層3と、非磁性下地層8と、垂直磁性層4と、保護層5と、潤滑層6とを順次積層した構造を有している。
【0037】
垂直磁性層4は、非磁性基板1側から、下層の磁性層4aと、中層の磁性層4bと、上層の磁性層4cとの3層を含み、磁性層4aと磁性層4bとの間に下層の非磁性層7aと、磁性層4bと磁性層4cとの間に上層の非磁性層7bを含むことで、これら磁性層4a〜4cと非磁性層7a,7bとが交互に積層された構造を有している。
【0038】
さらに、図示を省略するものの、各磁性層4a〜4c及び非磁性層7a,7bを構成する結晶粒子は、配向制御層3を構成する結晶粒子と共に、厚み方向に連続した柱状晶を形成している。
【0039】
非磁性基板1としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよく、例えば、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタリング法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いることもできる。
【0040】
また、非磁性基板1は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層2と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。この場合、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設けることが好ましく、これにより、これらを抑制することが可能となる。なお、密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(20Å)以上であることが好ましい。
【0041】
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の、基板面に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
【0042】
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含むアモルファス若しくは微結晶構造の軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど。)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど。)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど。)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど。)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど。)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど。)、FeMg系合金(FeMgOなど。)、FeZr系合金(FeZrNなど。)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
【0043】
その他にも、軟磁性下地層2としては、Coを80原子%以上含有し、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo等のうち少なくとも1種を含有し、アモルファス若しくは微結晶構造を有するCo合金を用いることができる。この具体的な材料としては、例えば、CoZr、CoZrNb、CoZrTa、CoZrCr、CoZrMo系合金などを好適なものとして挙げることができる。
【0044】
軟磁性下地層2は、2層の軟磁性膜から構成し、2層の軟磁性膜の間にはRu膜を設けることが好ましい。Ru膜の膜厚を0.4nm〜1.0nm、又は1.6nm〜2.6nmの範囲で調整することで、2層の軟磁性膜がAFC構造となる。このようなAFC構造を採用することで、いわゆるスパイクノイズを抑制することができる。
【0045】
シード層9及び配向制御層3は、上述した
図5に示すシード層9、配向制御層3を順に積層したものであるため、その説明を省略する。
【0046】
また、配向制御層3と垂直磁性層4の間には、非磁性下地層8を設けることが好ましい。配向制御層3直上の垂直磁性層4の初期部には、結晶成長の乱れが生じやすく、これがノイズの原因となる。この初期部の乱れた部分を非磁性下地層8で置き換えることで、ノイズの発生を抑制することができる。
【0047】
非磁性下地層8は、Coを主成分とし、さらに酸化物を含んだ材料からなることが好ましい。酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましく、その中でも特に、TiO
2、Cr
2O
3、SiO
2などを好適に用いることができる。酸化物の含有量としては、磁性粒子を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。
【0048】
非磁性下地層8の厚みは、0.2nm以上3nm以下であることが好ましい。3nmの厚さを超えると、Hc及びHnの低下が生じるために好ましくない。
【0049】
磁性層4aは、Coを主成分とし、さらに酸化物を含んだグラニュラー構造の材料から構成するのが好ましく、この酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO
2、Cr
2O
3、SiO
2などを好適に用いることができる。また、磁性層4aは、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr
2O
3−SiO
2、Cr
2O
3−TiO
2、Cr
2O
3−SiO
2−TiO
2などを好適に用いることができる。
【0050】
磁性層4aは、
図7に示すように、酸化物41を含む層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。また、磁性粒子42は、磁性層4a,4b、更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を有することにより、磁性層4aの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)を得ることができる。
【0051】
このような構造を得るためには、含有させる酸化物41の量及び磁性層4aの成膜条件が重要となる。すなわち、酸化物41の含有量としては、磁性粒子42を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは6mol%以上13mol%以下である。
【0052】
磁性層4aに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO
2){Cr含有量14原子%、Pt含有量18原子%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiO
2からなる酸化物組成が10mol%。以下同じ。}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO
2)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr
2O
3)の他、(CoCrPt)−(Ta
2O
5)、(CoCrPt)−(Cr
2O
3)−(TiO
2)、(CoCrPt)−(Cr
2O
3)−(SiO
2)、(CoCrPt)−(Cr
2O
3)−(SiO
2)−(TiO
2)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO
2)、(CoCrPtB)−(Al
2O
3)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y
2O
3)、(CoCrPtRu)−(SiO
2)などの組成物を挙げることができる。
【0053】
磁性層4bには、磁性層4aと同様の材料を用いることができるため、説明を省略する。また、磁性層4bは、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。この磁性粒子42は、
図7に示すように、磁性層4a,4b、更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を形成することにより、磁性層4bの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得ることができる。
【0054】
磁性層4cは、Coを主成分とするとともに酸化物を含まない材料から構成することが好ましく、
図7に示すように、層中の磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42から柱状にエピタキシャル成長している構造であることが好ましい。この場合、磁性層4a〜4cの磁性粒子42が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、磁性層4bの磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42からエピタキシャル成長していることで、磁性層4bの磁性粒子42が微細化され、さらに結晶性及び配向性がより向上したものとなる。
【0055】
磁性層4c中のCrの含有量は、10原子%以上24原子%以下であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲とすることで、データの再生時における出力が十分確保でき、更に良好な熱揺らぎ特性を得ることができる。一方、Crの含有量が上記範囲を超える場合には、磁性層4cの磁化が小さくなり過ぎるため好ましくない。また、Cr含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が十分に生じず、記録再生時のノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
【0056】
また、磁性層4cは、Co、Crの他に、Ptを含んだ材料であってもよい。磁性層4c中のPtの含有量は、6原子%以上20原子%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲にある場合には、高記録密度に適した十分な保磁力を得ることができ、更に記録再生時における高い再生出力を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性を得ることができる。
【0057】
磁性層4cに適した材料としては、特に、CoCrPt系、CoCrPtB系を挙げることできる。CoCrPtB系の場合、CrとBの合計の含有量は、18原子%以上28原子%以下であることが好ましい。
【0058】
磁性層4cに適した材料としては、例えば、CoCrPt系では、Co14〜24Cr8〜22Pt{Cr含有量14〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、残部Co}、CoCrPtB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt0〜16B{Cr含有量10〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、B含有量0〜16原子%、残部Co}が好ましい。その他の系でも、CoCrPtTa系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta{Cr含有量10〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、Ta含有量1〜5原子%、残部Co}、CoCrPtTaB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta1〜10B{Cr含有量10〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、Ta含有量1〜5原子%、B含有量1〜10原子%、残部Co}の他にも、CoCrPtBNd系、CoCrPtTaNd系、CoCrPtNb系、CoCrPtBW系、CoCrPtMo系、CoCrPtCuRu系、CoCrPtRe系などの材料を挙げることができる。
【0059】
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO
2、ZrO
2を含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1nm〜10nmとすることがヘッドと媒体の距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
【0060】
潤滑層6には、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。
【0061】
図8は、本実施の形態における磁気記録再生装置の一例を示すものである。
【0062】
この磁気記録再生装置は、
図6に示す構成を有する磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に情報を記録再生する磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。また、記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。また、本実施の形態における磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0064】
(実施例1〜12、比較例1〜14)
実施例1〜12、比較例1〜14における磁気記録媒体は、先ず、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタリング装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10
−5Paとなるまで成膜チャンバ内を減圧排気した後、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて、層厚10nmの密着層を成膜した。また、この密着層の上に、基板温度を100℃以下とし、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20原子%、Zr含有量5原子%、Ta含有量5原子%、残部Co}のターゲットを用いて、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上に層厚0.7nmのRu層を成膜した後、再びCo−20Fe−5Zr−5Taのターゲットを用いて、層厚25nmの軟磁性層を成膜して、これを軟磁性下地層とした。
【0065】
次に、軟磁性下地層の上に、スパッタリング法を用いて、表1に示す材料で厚さ3nmのシード層を実施例1〜12、比較例1〜14において各々成膜した。
【0066】
次に、シード層の上に、Ruターゲットを用いて、層厚20nmの配向制御層を成膜した。なお、配向制御層を成膜する際は、スパッタ圧力を0.8Paとして層厚10nmのRuを成膜した後、スパッタ圧力を10Paとして層厚10nmのRuを成膜した。
【0067】
この段階で、基板を取り出し、Ru配向制御層の粒径、粒径の分散、配向性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
次に、配向制御層の上に、91(Co15Cr18Pt)−6(SiO
2)−3(TiO
2){Cr含有量15原子%、Pt含有量18原子%、残部Coの合金を91mol%、SiO
2からなる酸化物を6mol%、TiO
2からなる酸化物を3mol%}のターゲットを用いて、層厚9nmの磁性層を成膜した。なお、このときのスパッタ圧力は2Paとした。
【0069】
次に、磁性層の上に、88(Co30Cr)−12(TiO
2){Cr含有量30原子%、残部Coの合金を88mol%、TiO
2からなる酸化物を12mol%}のターゲットを用いて、層厚0.3nmの非磁性層を成膜した。
【0070】
次に、非磁性層の上に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO
2)−3(TiO
2){Cr含有量11原子%、Pt含有量18原子%、残部Coの合金を92mol%、SiO
2からなる酸化物を5mol%、TiO
2からなる酸化物を3mol%}のターゲットを用いて、層厚6nmの磁性層を成膜した。なお、このときのスパッタ圧力は2Paとした。
【0071】
次に、磁性層の上に、Ruターゲットを用いて層厚0.3nmの非磁性層を成膜した。
【0072】
次に、非磁性層の上に、Co20Cr14Pt3B{Cr含有量20原子%、Pt含有量14原子%、B含有量3原子%、残部Co}のターゲットを用いて、層厚7nmの磁性層を成膜した。なお、このときのスパッタ圧力は0.6Paとした。
【0073】
次に、磁性層の上に、イオンビーム法により層厚3.0nmの保護層を成膜し、次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜を成膜し、磁気記録媒体を得た。
【0074】
そして、これらの磁気記録媒体について、SNRを測定した。その測定結果を表1に示す。表1に示されるように、比較例1〜14における磁気記録媒体では、SNRが7.26dB以下であるのに対し、実施例1〜12における磁気記録媒体では、SNRが7.27dB以上である。
【0075】
【表1】