(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持手段は、車両緊急時に増加された前記ショルダウェビングの張力によって幅方向他側へ移動されると共に、車両緊急時に増加された前記ショルダウェビングの張力が低減されることによって幅方向一側へ移動される請求項1に記載のシートベルト装置。
前記支持手段は、付勢手段の付勢力によって幅方向一側へ付勢され、前記シートにおける幅方向一側の上側で保持されると共に、前記付勢手段の付勢力に抗する力が付与されることによって幅方向他側へ移動され、前記力が解消されることによって前記付勢手段の付勢力によって幅方向一側へ移動される請求項1又は請求項2に記載のシートベルト装置。
前記付勢手段の付勢力は、前記支持手段の幅方向他側へ移動によって増加され、前記支持手段は、前記付勢手段の付勢力が最大になる前に幅方向他側への移動が制限される請求項3に記載のシートベルト装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、
図1及び
図2に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において矢印LHは、本シートベルト装置10が適用された車両用のシート12のシート左側(シート12の幅方向他側)を示し、矢印UPは、シート上側を示す。
【0017】
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るシートベルト装置10は、ウェビング巻取装置14を備えている。ウェビング巻取装置14は、シート12のシートバック16の内側に配置されている。また、ウェビング巻取装置14は、スプール18を備えている。スプール18は、略円筒形状に形成されており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。スプール18には、シートベルト装置10のウェビング20の長手方向基端部が係止されている。ウェビング20は、長尺帯状に形成されており、スプール18が巻取方向へ回転されると、ウェビング20が長手方向基端側からスプール18に巻取られる。
【0018】
また、ウェビング巻取装置14は、スプール付勢機構22を備えている。スプール付勢機構22は、ぜんまいばね等のスプール付勢ばねを備えており、ウェビング巻取装置14のスプール18は、スプール付勢機構22のスプール付勢ばねによって巻取方向へ付勢されている。
【0019】
さらに、ウェビング巻取装置14は、ロック機構24を備えている。ロック機構24は、車両衝突時等の車両緊急時に作動される。ロック機構24が作動されると、スプール18の巻取方向とは反対の引出方向への回転がロック機構24によって制限される。これによって、車両緊急時におけるスプール18からのウェビング20の引出しが制限される。また、ウェビング巻取装置14は、張力付与手段としてのプリテンショナ26を備えている。プリテンショナ26は、車両衝突時等の車両緊急時に作動される。プリテンショナ26が作動されると、スプール18は、プリテンショナ26によって巻取方向へ回転され、これによって、車両緊急時にウェビング20がスプール18に巻取られる。
【0020】
さらに、ウェビング巻取装置14は、モータ27を備えている。モータ27は出力軸(図示省略)を備えており、モータ27の出力軸は、クラッチを含んで構成されたギヤ列等の回転力伝達手段を介してスプール18に連結されている。モータ27は、制御手段としてのモータドライバ及びECU(図示省略)に電気的に接続されており、ECUは、ミリ波レーダ装置等の前方監視装置(図示省略)に電気的に接続されている。前方監視装置は、本シートベルト装置10が搭載された自車両の前方の他車両や障害物までの距離を検出する。ECUは、前方監視装置によって検出された前方の他車両や障害物までの距離が一定値以下になると、車両緊急時の一態様である車両の衝突が予測される状態と判定し、ECUは、モータ27を正転駆動させる。モータ27が正転駆動されると、回転力伝達手段のクラッチが作動され、モータ27の正転駆動力は、スプール18に伝えられる。これによって、スプール18が巻取方向へ回転され、ウェビング20がスプール18に巻取られる。
【0021】
一方、ウェビング20は、スプール18からシート右上側へ延びて、シート12のシートバック16のシート上側へ引出されている。
図2に示されるように、シート12のシートバック16のシート上側端部には、プーリ28が設けられている。プーリ28は、断面円形の棒形状に形成されており、プーリ28の中心軸線方向は、シート左右方向に沿っている。プーリ28は、中心軸線周りに回転可能とされている。シートバック16のシート上側に引出されたウェビング20は、プーリ28に掛回され、ウェビング20におけるプーリ28よりも長手方向先端側は、シート前側へ延びている。
【0022】
プーリ28のシート前側には、支持装置30の支持手段としての支持部32が設けられている。支持部32には、長孔34が形成されている。長孔34の長手方向は、シート左右方向に沿っており、ウェビング20は、支持部32のシート後側から支持部32の長孔34を通っている。
【0023】
支持部32の長孔34を通ったウェビング20の長手方向先端部は、アンカプレート36に係止されている。アンカプレート36は、シート12のシート右側(シート12の幅方向一側)でシート12のシートクッション38のシート下側に設けられており、アンカプレート36は、シート12のシートフレーム又は車両の車体等の車体側部分に固定されている。
【0024】
ウェビング20における支持装置30の支持部32とアンカプレート36との間には、タング40が設けられている。タング40は、ウェビング20の長手方向に移動可能とされている。また、シート12のシート左側には、バックル42が設けられている。
図1に示されるように、シート12に着座した乗員44の身体のシート前側でウェビング20が乗員44の身体に掛回された状態で、タング40がバックル42に係合され、タング40がバックル42に保持されることによって、乗員44の身体に対するウェビング20の装着状態になる。
【0025】
乗員44の身体に対するウェビング20の装着状態で、ウェビング20におけるタング40とアンカプレート36との間の部分は、ラップウェビング20Aとされ、乗員44の腰部がラップウェビング20Aによって拘束される。これに対して、乗員44の身体に対するウェビング20の装着状態で、ウェビング20における支持装置30の支持部32とタング40との間の部分は、ショルダウェビング20Bとされ、乗員44の身体におけるシート右側の肩部と乗員44の身体における腰部のシート左側部分との間がショルダウェビング20Bによって拘束される。
【0026】
一方、支持装置30は、ベース部材46を備えている。ベース部材46は、シート12のシートバック16のシート上側部分におけるシートバック16の内側に設けられている。ベース部材46は、ガイド手段としてのガイド部48を備えており、ガイド部48のシート上側面は、ガイド面50とされている。ガイド面50は、シート左側へ向かうにつれてシート下側へ変位する平面状の斜面とされている。また、ベース部材46のガイド部48には、ガイド溝(図示省略)が形成されている。ガイド部48のガイド溝の長手方向は、シート左右方向に沿っており、ガイド部48のガイド面50で開口されている。
【0027】
さらに、ベース部材46のガイド部48には、スライダ52が設けられている。スライダ52のシート下側部分は、ベース部材46のガイド部48のガイド溝に係合されており、スライダ52のシート前後方向側への移動が、ガイド部48によって制限されている。さらに、ベース部材46のガイド部48のガイド面50に案内されることによるスライダ52のシート左右方向への移動量は、ガイド面50に案内されることによるスライダ52のシート上下方向への移動量よりも大きくなるように、ガイド面50のシート左右方向に対する傾斜角度θ1は、45度未満とされている。
【0028】
また、スライダ52は、ベース部材46のガイド部48のガイド面50に沿ってシート左下側(
図1及び
図2の矢印A方向)及びその反対のシート右上側(
図1及び
図2の矢印Aとは反対方向)へ一定範囲スライド可能とされている。さらに、ベース部材46のガイド部48に対するスライダ52のスライド可能範囲(以下、単に、「スライダ52のスライド可能範囲」と称する)のシート右側端にスライダ52が配置された状態では、スライダ52のシート右側及びシート上下方向側へのスライダ52の移動がベース部材46のガイド部48によって制限される。また、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態では、スライダ52のシート左側及びシート上下方向側へのスライダ52の移動がベース部材46のガイド部48によって制限される。
【0029】
また、スライダ52のシート上側端部におけるシート前側には、支持部32が配置されており、支持部32がスライダ52に固定されている。したがって、支持部32は、スライダ52と共にシート左下側(
図1及び
図2の矢印A方向)及びその反対のシート右上側(
図1及び
図2の矢印Aとは反対方向)へスライド可能とされている。このように、支持部32がスライダ52と共にスライドされることによって、ウェビング20において支持部32の長孔34に入っている部分が移動される。
【0030】
さらに、上記のように、支持部32は、スライダ52のシート上側端部におけるシート前側に配置される。このため、支持部32のシート下側面は、シート上下方向にシート12のシートバック16のシート上側面に対向される。ここで、
図2に示されるように、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態で、支持部32のシート下側端は、制限手段としてのシートバック16のシート上側面に当接され、これによって、スライダ52は、それ以上のシート左側(更に詳細には、シート左下側)へのスライドが制限されるように、ベース部材46の形状、ガイド部48の形状、スライダ52の形状、ベース部材46の配置位置等が設定されている。
【0031】
また、
図1に示されるように、ベース部材46のガイド部48のガイド面50のシート左右方向に対する傾斜角度θ1は、スライダ52のスライド可能範囲のシート右側端にスライダ52が配置された状態でのシート左右方向に対するショルダウェビング20Bの長手方向の傾斜角度θ2よりも小さい。
【0032】
さらに、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態では、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端よりもシート右側にスライダ52が配置された状態に比べ、プーリ28とバックル42に係合されたタング40との間でウェビング20での長さが短い。
【0033】
また、ベース部材46は、ばね係止部54を備えている。ばね係止部54は、ベース部材46におけるガイド部48のシート左側に設けられており、ばね係止部54は、ガイド部48に一体的に繋がっている。ベース部材46のばね係止部54と、スライダ52との間には、付勢手段としての圧縮コイルばね56が設けられている。圧縮コイルばね56のシート左側端は、ベース部材46のばね係止部54に係止されており、圧縮コイルばね56のシート右側端は、スライダ52のシート左側端に係止されている。スライダ52は、圧縮コイルばね56によってシート右側へ付勢されている。
【0034】
圧縮コイルばね56の付勢力は、少なくともウェビング20の乗員44の身体への装着状態(
図1図示状態)で、スプール18を巻取方向へ付勢するスプール付勢機構22のスプール付勢ばねの付勢力よりも大きい。このため、車両緊急時ではない通常状態におけるウェビング20の乗員44の身体に対する装着状態では、スライダ52は、ベース部材46のガイド部48に対するスライダ52のスライド可能範囲のシート右側端にスライダ52に配置される(
図1図示状態)。
【0035】
また、
図2に示されるように、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態(すなわち、支持部32のシート下側面が制限手段としてのシートバック16のシート上側面に当接された状態)では、圧縮コイルばね56の付勢力が最大にならず、圧縮コイルばね56のコイル部分は、圧縮コイルばね56の軸方向に全密着されない(換言すれば、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態圧縮コイルばね56は、軸方向に更に短くなるように変形でき、付勢力を更に増加できる)ように、圧縮コイルばね56の材質、線径、巻数等が設定されている。
【0036】
<本実施の形態の作用、効果>
本実施の形態では、シート12に着座した乗員44によってウェビング20が引張られることによって、ウェビング20がウェビング巻取装置14のスプール18から引出される。このようにして引出されたウェビング20が乗員44の身体のシート前側から乗員44の身体に掛回され、この状態で、ウェビング20に設けられたタング40がバックル42に係合され、タング40がバックル42に保持されることによって、ウェビング20が乗員44の身体に装着される。この状態では、乗員44の身体のうち腰部がウェビング20のラップウェビング20Aによって拘束され、乗員44の身体のうち、シート右側の肩部から胸部を介して腰部のシート左側部分との間の部分がショルダウェビング20Bによって拘束される。
【0037】
ここで、この状態では、支持装置30のスライダ52が、圧縮コイルばね56の付勢力によってベース部材46のガイド部48に対するスライダ52のスライド可能範囲のシート右側端までスライドされている。このため、この状態では、支持装置30の支持部32は、乗員44の身体(特に、乗員44の頸部)に対してシート右側へ離れる。このため、ショルダウェビング20B及び支持部32が乗員44の身体(特に、乗員44の頸部)に当接することを防止又は抑制できる。これによって、ショルダウェビング20B又は支持部32が乗員44の頸部に当接することによって乗員44が不快に感じることを防止又は抑制できる。
【0038】
一方、本シートベルト装置10が適用された車両では、前方の他車両や障害物までの距離が前方監視装置によって検出される。前方監視装置によって検出された前方の他車両や障害物までの距離が一定値以下になると、ECUは、車両緊急時の一態様である車両の衝突が予測される状態と判定し、モータ27がECUによって正転駆動される。モータ27が正転駆動されると、回転力伝達手段のクラッチが作動され、モータ27の正転駆動力がスプール18に伝えられる。これによって、スプール18が巻取方向へ回転され、ウェビング20がスプール18に巻取られる。これによって、乗員44の身体に装着されたウェビング20の弛みが除去される。
【0039】
また、このように、モータ27が作動され、ウェビング20がスプール18に巻取られると、少なくとも、プーリ28とバックル42に係合されたタング40との間でウェビング20の張力が大きくなる。プーリ28とバックル42に係合されたタング40との間でのウェビング20の張力は、支持装置30の圧縮コイルばね56の付勢力に抗する力になる。このため、モータ27が作動されると、支持装置30の支持部32は、ウェビング20によってシート左側へ引張られる。これによって、支持装置30のスライダ52は、スライダ52のスライド範囲のシート左側端に配置されるまで、支持装置30のベース部材46のガイド部48のガイド面50に案内され、シート左下側(
図1及び
図2の矢印A方向側)へスライドされる。
【0040】
このように、支持装置30のスライダ52が、スライダ52のスライド範囲のシート左側端に配置された状態では、支持部32が乗員44の身体、特に、乗員44の頸部に最接近され、ウェビング20において支持部32の長孔34の内側に配置される部分、すなわち、ウェビング20のショルダウェビング20Bのシート上側端部が乗員44の身体、特に、乗員44の頸部に最接近される。これによって、ショルダウェビング20Bのシート上側端部と、乗員44の身体におけるシート左右方向中央(
図2に示される中心線C)との間隔が短くなるため、ショルダウェビング20Bによる乗員44の身体の拘束性能を向上でき、特に、乗員44の身体が、シート右側へ移動されることを効果的に抑制でき、乗員44の身体のシート右側に設けられた車両の内装材等へ乗員44の身体が接近することを効果的に抑制できる。
【0041】
また、
図2に示されるように、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置されることによって、支持部32のシート下側面がシート12のシートバック16のシート上側面に当接される。このため、シート前側へ慣性移動しようとする乗員44の身体がウェビング20を引張っても、支持部32のシート下側への変位は、ベース部材46のガイド部48と、シートバック16とによって防止又は抑制される。これによって、ショルダウェビング20Bによる乗員44の身体の拘束性能を更に向上できる。
【0042】
さらに、
図2に示されるように、ベース部材46のガイド部48のガイド面50のシート左右方向に対する傾斜角度θ1は、45度未満とされている。このため、ガイド面50に案内されることによるスライダ52のシート左側への移動量は、ガイド面50に案内されることによるスライダ52のシート上下方向の移動量よりも大きくされている。このため、スライダ52がガイド面50に案内され、これによって、支持部32がシート左下側(
図1及び
図2の矢印A方向側)へスライドされた際の支持部32のシート左側への移動量は、支持部32のシート下側への移動量よりも大きくなる。しかも、ベース部材46のガイド部48のガイド面50のシート左右方向に対する傾斜角度θ1は、スライダ52のシート左下側へのスライド前でのシート左右方向に対するショルダウェビング20Bの長手方向の傾斜角度θ2よりも小さい。
【0043】
このため、スライダ52がシート左下側へスライドされた後の状態でのシート左右方向に対するショルダウェビング20Bの長手方向の傾斜角度θ3(
図2参照)は、スライダ52がシート左下側へスライドされる前の状態でのシート左右方向に対するショルダウェビング20Bの長手方向の傾斜角度θ2(
図1参照)よりも大きく、直角に近くなる。これによって、ショルダウェビング20Bによる乗員44の身体の拘束性能を更に向上できる。
【0044】
また、支持部32が固定されたスライダ52は、モータ27の作動によって増加されたウェビング20の張力によってスライドされる。しかも、モータ27の作動によって増加されたウェビング20の張力によって、スライダ52のスライド可能範囲のシート右側端におけるスライダ52の保持を解除できる。このため、スライダ52を移動させるためだけの、モータ等の特別な駆動手段及びスライダ52のスライド可能範囲のシート右側端におけるスライダ52の保持を解除するための特別な構成が不要であり、低コストで実現でき、モータ27の作動に対するスライダ52の移動の遅れを抑制できる。
【0045】
しかも、スライダ52が案内されるベース部材46のガイド部48のガイド面50は、シート左側へ向かうにつれてシート下側へ変位する平面状の斜面とされている。このため、スライダ52は、直線的にスライドされ、スライダ52のスライド方向がスライド途中で大きく曲げられることがない。このため、スライダ52は、モータ27の作動によって増加されたウェビング20の張力によってスライド可能範囲のシート左側端へ向けて円滑にスライドできる。
【0046】
さらに、乗員44による車両の操作等によって、車両の衝突が回避されると、モータ27が停止される。モータ27が停止されると、回転力伝達手段のクラッチによるモータ27の出力軸とスプール18との連結が解消される。この状態では、スプール18を巻取方向へ回転させようとする力は、スプール付勢機構22のスプール付勢ばねだけである。これに対して、圧縮コイルばね56の付勢力は、少なくともウェビング20の乗員44の身体への装着状態(
図1図示状態)で、スプール18を巻取方向へ付勢するスプール付勢機構22のスプール付勢ばねの付勢力よりも大きい。このため、この状態では、スライダ52が、圧縮コイルばね56の付勢力によって、スライダ52のスライド可能範囲のシート右側端までスライドされる(
図1図示状態)。このため、車両の衝突が回避されて通常の走行状態に戻った場合には、支持装置30の支持部32を乗員44の身体(特に、乗員44の頸部)からシート右側へ離すことができる。
【0047】
また、ガイド部48のガイド面50は、シート左側へ向かうにつれてシート下側へ変位する平面状の斜面とされているため、スライダ52は、直線的にスライドされ、スライダ52のスライド方向がスライド途中で大きく曲げられることがない。このため、スライダ52は、圧縮コイルばね56の付勢力によってスライド可能範囲のシート右側端へ向けて円滑にスライドできる。
【0048】
さらに、スライダ52がスライド可能範囲のシート左側端に到達すると、支持装置30の支持部32のシート下側面が制限手段としてのシートバック16のシート上側面に当接される。これによって、スライダ52は、それ以上のシート左側(更に詳細には、シート左下側)へのスライドが制限される。ここで、このように、スライダ52がスライド可能範囲のシート左側端に到達した状態で、圧縮コイルばね56の付勢力が最大にならず、圧縮コイルばね56のコイル部分は、圧縮コイルばね56の軸方向に全密着されない。
【0049】
すなわち、本実施の形態では、スライダ52がスライド可能範囲のシート左側端に到達した状態で、圧縮コイルばね56は、まだ圧縮コイルばね56の軸方向の圧縮による弾性変形が可能である。このため、例えば、スライダ52がスライド可能範囲のシート左側端に到達しても、圧縮コイルばね56の軸方向の圧縮による弾性変形が限界になることを抑制できる。これによって、モータ27の作動によるウェビング20の張力の増加が解消されると、スライダ52は、圧縮コイルばね56の付勢力によってスライダ52のスライド可能範囲のシート右側端へ向けてスライドできる。
【0050】
一方、車両衝突時等の車両緊急時には、ロック機構24が作動され、これによって、ウェビング20のスプール18からの引出しが防止又は抑制される。このため、車両緊急時における乗員44のシート前側への慣性移動をウェビング20によって効果的に抑制できる。また、車両衝突時等の車両緊急時には、プリテンショナ26が作動され、これによって、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られ、乗員44の身体に装着されたウェビング20の弛みが除去される。これによって、乗員44の身体をウェビング20によって更に強く拘束でき、乗員44のシート前側への慣性移動をウェビング20によって更に効果的に抑制できる。
【0051】
また、このようにプリテンショナ26が作動され、ウェビング20がスプール18に巻取られると、少なくとも、プーリ28とバックル42に係合されたタング40との間でウェビング20の張力が大きくなる。プーリ28とバックル42に係合されたタング40との間でのウェビング20の張力は、支持装置30の圧縮コイルばね56の付勢力に抗する力になる。このため、プリテンショナ26が作動されると、支持装置30の支持部32は、ウェビング20によってシート左側へ引張られる。
【0052】
これによって、支持装置30のスライダ52は、スライダ52のスライド範囲のシート左側端に配置されるまで、支持装置30のベース部材46のガイド部48のガイド面50に案内され、シート左下側(
図1及び
図2の矢印A方向側)へスライドされる。このため、プリテンショナ26が作動された場合には、モータ27が作動されて、モータ27の正転駆動力によってスプール18が巻取方向へ回転された場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、スライダ52が案内されるベース部材46のガイド部48のガイド面50は、シート左側へ向かうにつれてシート下側へ変位する平面状の斜面とされていた。しかしながら、ガイド部48のガイド面50が平面状に限定されるものではなく、ガイド部48のガイド面50は、スライダ52のスライド方向がスライド途中で大きく曲がることなくスライダ52を案内できればよい。したがって、例えば、ガイド部48のガイド面50は、シート左側へ向かうにつれてシート下側へ変位する曲面状の斜面とされていてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態で、スライダ52のそれ以上のシート左側への移動を制限するための制限手段がシートバック16とされた。しかしながら、制限手段は、例えば、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態で、シート左側からスライダ52又はガイド部48に当接してスライダ52のそれ以上のシート左側への移動を制限する制限部材であってもよい。すなわち、制限手段は、スライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態で、スライダ52のそれ以上のシート左側への移動を制限できる構成であれば、その具体的な構成に限定されるものではない。
【0055】
さらに、本実施の形態では、支持装置30の支持部32が固定されたスライダ52をシート右側(シートの幅方向一側)へ付勢するための付勢手段が圧縮コイルばね56とされた。しかしながら、スライダ52のシート右側に設けられて、スライダ52がシート右側に付勢される引張りコイルばねを付勢手段としてもよいし、スライダ52に対する適宜位置に設けられて、スライダ52がシート右側に付勢される板ばね又は捻りコイルばねを付勢手段としてもよく、付勢手段は、支持装置30の支持部32をシート右側(シートの幅方向一側)へ直接又は間接的に付勢する構成であれば、その具体的な構成については特に限定されることなく広く適用できる。
【0056】
また、本実施の形態では、支持装置30の支持部32が固定されたスライダ52のスライド可能範囲のシート左側端にスライダ52が配置された状態では、圧縮コイルばね56の付勢力が最大にならず、圧縮コイルばね56のコイル部分は、圧縮コイルばね56の軸方向に全密着されない構成であった。しかしながら、付勢手段は、支持手段のシート左側(シートの幅方向他側)への移動が制限された状態で、付勢手段の付勢力が最大となる構成であってもよい。
【0057】
さらに、本実施の形態では、モータ27又はプリテンショナ26の作動によって増加されるウェビング20の張力によって支持部32が固定されたスライダ52がシート左側へ移動される構成であった。しかしながら、モータ又はソレノイド等の駆動手段の駆動力によってスライダ52がシート左側へスライドされる構成であってもよく、また、圧縮コイルばねに代えてスライダをシート左側へ付勢する付勢ばねを設けると共に、スライダ52のスライド可能範囲のシート右側端にスライダ52が配置された状態でスライダ52を保持する保持手段を設け、車両緊急時に保持手段によるスライダ52の保持が解除され、スライダ52が付勢ばねの付勢力によってシート左側へスライドされる構成であってもよい。このように、スライダ52をスライドさせるための構成については、特に限定されることなく、広く適用できる。
【0058】
また、本実施の形態では、乗員44の身体へのウェビング20の装着状態で、ウェビング20の一部がショルダウェビング20Bとされ、ウェビング20の他の一部がラップウェビング20Aとされる構成であった。乗員44の身体へのウェビング20の装着状態で、ウェビング20の一部が、ラップウェビング20Aとされないような構成であってもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態は、ウェビング巻取装置14がシート12のシートバック16の内側に設けられた構成であった。しかしながら、ウェビング巻取装置14は、シートバック16のシート後側に設けられる構成であってもよいし、シート12のシート左右方向側方に設けられる構成であってもよいし、車両の天井部に設けられる構成であってもよく、ウェビング巻取装置14の配置位置に関しては特に限定されるものではない。
【0060】
また、本実施の形態では、車両の衝突が回避された場合に、モータ27が停止され、回転力伝達手段のクラッチによるモータ27の出力軸とスプール18の連結が解除される構成であった。しかしながら、例えば、車両の衝突が回避された場合に、モータ27が逆転駆動され、これによって、スプール18が引出方向へ回転され、圧縮コイルばね56の付勢力によってスライダ52と共に移動された支持装置30の支持部32によりウェビング20がスプール18から引出される構成であってもよい。
【0061】
さらに、本実施の形態は、プリテンショナ26及びモータ27を備える構成であったが、プリテンショナ26及びモータ27の一方のみを備える構成であってもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、車両衝突時及び車両の衝突が予測される場合を車両緊急時の一例とした。しかしながら、車両緊急時は、車両衝突時及び車両の衝突が予測される場合の一方であってもよいし、車両衝突時及び車両の衝突が予測される場合の何れでもない他の状態であってもよい。
【0063】
さらに、本実施の形態では、ショルダウェビング20Bのシート上側端部が、シート12のシートバック16のシート右側のシート上側に配置される構成であったが、ショルダウェビング20Bのシート上側端部が、シート12のシートバック16のシート左側のシート上側に配置される構成であってもよい。このような構成では、ウェビング巻取装置14、プーリ28、支持装置30、アンカプレート36、バックル42等の配置が、本実施の形態とは、シート左右方向に左右反対となる。