(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の時点と第二の時点との間でBPTFレベルが増加した場合に、被験体にBPTF阻害剤を投与することの判定を補助するステップをさらに含む、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
1つ以上の追加の抗ガン治療剤が、白金類似体、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アンドロゲン、抗副腎剤、抗アンドロゲン剤、抗生物質、抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、代謝拮抗物質、葉酸類似体、エチレンイミン及びメチラメラミン、葉酸補給薬、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、プリン類似体、ピリミジン類似体、トポイソメラーゼ阻害剤、チミジル酸合成酵素阻害剤、抗ガン抗体、化学療法剤、脱メチル化剤及び標的化治療剤から成る群より選択される、請求項19記載の薬剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、単数形「a」、「and」及び「the」は、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、複数の該ポリヌクレオチドを含み、「細胞(the cell)」への言及は、1つ又はそれ以上の細胞などへの言及を含む。
【0016】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと類似又は同等の方法及び材料を、開示される方法及び組成物の実施に用いることができるが、例示的方法、デバイス及び材料が本明細書に記載される。
【0017】
また、「又は」の使用は、別段記載されない限り「及び/又は」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」は、交換可能であり、限定することは意図されない。
【0018】
様々な実施形態の記載が用語「含む(comprising)」を用いる場合、いくつかの具体的な例において、実施形態を言語「実質的になる(consisting essentially of)」又は「なる(consisting of)」を用いて代替的に記載できることを当業者は理解することが、さらに理解される。
【0019】
上に及びテキストを通して論じられる文献は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書中のいずれも、本発明者らが先の開示のためにそのような開示を先行する権限を有しないことを許すものと解釈されない。さらに、本開示に明示的に定義されている用語と類似又は同一の、1つ以上の文献に提示される用語に関して、本開示に明示的に提供される用語の定義は、全ての点において統制する。
【0020】
ヌクレオソーム再構築及びヒストン変異体の組み込みは、遺伝子発現を制御する機構の重要な成分を表すATP依存性クロマチン再構築複合体の作用を通して主に達成される。ATP依存性クロマチン再構築因子は、関連するATPaseの配列相同性に基づき4つの主要なサブファミリー(ISWI、SWI/SNF、CHD及びINO80)に分類される。
【0021】
様々なヒトのガンにおけるクロマチン調節因子の突然変異の最近の証拠を考えると、クロマチン再構築因子は、腫瘍発生においてますます重要な役割を果たすと認識されている。さらに、17q24遺伝子座は、いくつかの腫瘍におけるその増幅を考えると、ガン遺伝子を含有すると長く推測されてきた。NURF複合体の最大の構成要素である、ブロモドメインPHDフィンガー転写因子(BPTF; FALZとも称される)(その遺伝子は17q24上に存在する)は、胚発生、胸腺細胞成熟、及びクロマチン再構築に関与している。哺乳動物におけるNURF複合体は、十分に特徴付けられたATP依存性クロマチン再構築複合体である。しかし、腫瘍発生においてBPTFが果たす機能的役割についてほとんどわかっていない。
【0022】
ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で同定された、ヌクレオソーム再構築因子(NURF)は、ATP依存性クロマチン再構築因子のISWIファミリーの主要メンバーである。哺乳動物において、BPTF(ブロモドメインPHDフィンガー転写因子)は、NURFクロマチン再構築複合体の最大サブユニットである、ショウジョウバエ(Drosophila)NURF301のオルソログを表す。NURF301ホモログは、全ての真核生物種にわたって存在し、進化的に保存されているようである。NURF301は、おそらくヌクレオソームの周期的アライメントを変化させることによって、engrailed 1及び2の発現の調節に関与する。
【0023】
NURF複合体は、配列特異的転写因子との相互作用を通してその細胞機能のいくつかを媒介する。ショウジョウバエにおいて、熱ショック因子(HSF)、GAGA、及びアーティフィシャル(artificial)ドメインVP16は、NURF301上の複数の表面と相互作用し、ISWIと弱く相互作用することが示されている。NURF301は、特定のヒストン翻訳後修飾に結合する2つの十分に特徴付けられたドメインを有する。ブロモドメインに隣接するPHDフィンガーはH3K4me2/3と相互作用し、隣接するブロモドメインはH4K16acに結合する。さらにNURFは、おそらく、配列特異的な様式でDNAと直接相互作用する。BPTF(FALZとも称される)は、胚発生に不可欠であり、ATP依存性クロマチン再構築に関与することが報告されている。
【0024】
本開示は、cDNAマイクロアレイ解析及びFISHによって、BPTF(本明細書において時々FALZと称される)が、転移性黒色腫及び乳ガンにおいて顕著に過剰発現されることを実証する。ヒトBPTF遺伝子(配列番号1)は、多くの腫瘍において染色体変化のホットスポットである染色体17q24上に位置する。17q24の増幅が乳ガンにおいて示されており、17q24コピー数の増加が他の固形腫瘍において観察されている。BPTF遺伝子を包含する17q24.3遺伝子座で生じる転座は、肺の胎児細胞において実証された。BPTFの切断型であるFAC1(Fetal Alz-50-reactive clone 1)は、神経変性疾患において上方制御され、配列特異的DNA結合活性を示し、転写調節において機能し得る。NURFなどの再構築複合体の重要性は十分理解されているが、これまでに、腫瘍発生におけるBPTFの機能的役割は、不完全に特徴付けられている。
【0025】
本開示は、黒色腫、多形性膠芽腫(GBM)、及び乳ガンにおけるBPTFの機能的及び生物学的役割を提供する。これらのガンの種類を具体的に分析したが、他の腫瘍及びガンにおけるBPTFの役割が予期される。本開示は、BPTFの標的化抑制が、黒色腫、GBM及び乳ガン細胞増殖を抑制すること; BPTFコピー数が、黒色腫及び乳ガンの顕著な割合において上昇し、BPTF過剰発現が、ヒト黒色腫患者における生存の低下のマーカーであることを実証する。さらに、BPTFは、ERK経路を調節し、BRAF突然変異体黒色腫細胞において選択的BRAF阻害剤に対する獲得耐性を付与する。
【0026】
本開示は、黒色腫、膠芽腫、及び乳ガンに具体的に焦点を当て、腫瘍進行におけるBPTFの機能的及び生物学的重要性を実証する。マウス黒色腫細胞及び乳ガン細胞におけるBPTF発現の抑制は、腫瘍細胞増殖及び侵襲性の顕著な抑制をもたらした。腫瘍細胞成長及び転移性腫瘍カウントの顕著な減少が、BPTFを標的とする様々なshRNAを用いることによって観察されたため、in vivo研究は、黒色腫進行においてBPTFが果たす強力な役割を確かめた。細胞周期進行並びにin vitro及びin vivo腫瘍細胞成長に対するBPTFの影響を、2種のヒト黒色腫及びGBM細胞株、並びに乳ガン細胞において確かめた。
【0027】
黒色腫細胞におけるBPTF機能への機構的洞察を得るために、総合的解析により、腫瘍細胞増殖、細胞周期進行、及びアポトーシスの重要な媒介因子であるBCL2、BCL-XL及びCCND2の、BPTF発現の抑制後の下方制御が同定された。これらの遺伝子の下方制御は、黒色腫及びGBM細胞株におけるqRT-PCR及びウエスタンブロット解析によって確かめられた。哺乳動物におけるNURF複合体は、ヌクレオソーム位置決定及びin vitroにおけるヌクレアーゼ過感受性部位に影響を及ぼすことが示されたため、本開示は、BPTF発現の抑制が、BCL2及びBCL-XL遺伝子のDNase I処理に対する感受性を増強したことを実証する。
【0028】
黒色腫、乳ガン及びGBMにおけるBPTF作用の機構的解析を超えて、黒色腫のバイオマーカーとしてのBPTFの役割の詳細な解析も実施した。原発性黒色腫のFISH解析は、36%の症例においてBPTFコピー数の上昇を明らかにし、対照的に良性母斑では、BPTFコピー数の増加はなかった。このことは、母斑から黒色腫を識別するための潜在的診断マーカーとしてのBPTFの潜在的有用性を示唆する。さらに、観察されたBPTFコピー数の増加は、黒色腫におけるBPTF活性化のメカニズムを提供し、遺伝子発現プロファイリング解析において観察されたBPTFの過剰発現に対する遺伝的根拠を同定し得る。さらに、BPTF免疫染色のデジタル画像解析は、ヒト黒色腫患者における遠隔転移のない、疾患特異的な生存の独立した予測因子としてBPTF過剰発現を同定した。したがって、これらの研究は、BPTFが、黒色腫進行における致死的事象である遠隔転移の予測因子と促進因子の両方であること示した。まとめると、これらの知見は、黒色腫の腫瘍発生及び腫瘍進行の新規標的、分子マーカー及び媒介因子としてBPTFを確立する。さらに、GBM組織及び乳ガン細胞におけるBPTF発現の解析は、BPTF発現が、化学治療剤に対する応答性の乏しいGBMの前神経サブタイプにおいて、及び乳ガン細胞において高められたことを示した。
【0029】
BRAFは、40〜50%の症例において点突然変異のために黒色腫における主要な発ガン性駆動因子である。突然変異体BRAFは、MAPキナーゼ経路を構成的に活性化し、黒色腫細胞において増殖促進性及び生存促進性シグナルを伝達し、さらに、腫瘍細胞侵襲及び血管形成を促進する。重要なことに、BPTF発現の抑制は、突然変異体(1205-Lu)又は野生型(C8161.9)BRAFのいずれかを有する黒色腫細胞において顕著な抗腫瘍効果を生成し、MAPK経路の下流エフェクターを表すリン酸化ERK1/2(Thr204/Tyr204)及びその直接の標的であるp90RSK(Ser380)のレベルの顕著な低下をもたらした。興味深いことに、BPTFノックダウンの際に抑制された遺伝子の3つ(BCL2、BCL-XL及びCCND2)は、ERKによって調節される。これらの知見は、BPTFがMAPK経路を活性化し、それによって、腫瘍細胞アポトーシスを抑制しながら腫瘍細胞増殖、侵襲性及び生存を増強するという証拠を提供する。
【0030】
BRAF突然変異を有する転移性黒色腫患者の選択的BRAF阻害剤での治療は、全体的生存率の改善を付与することが示されている。しかし、完全な応答は稀であり、これらの薬剤に対する獲得耐性が、治療した症例の大部分において生じる。MAPK経路の再活性化[N-RAS突然変異又はCOT/MAP3K8キナーゼ過剰発現を介して]、血小板由来成長因子受容体βの活性化、又はPI3K経路の活性化を介するもの(IGF1Rの過剰発現を介して)を主に含む、獲得耐性のいくつかのメカニズムが記載されている。本開示は、BPTF発現の調節(過剰発現又はshRNA媒介性下方制御のいずれかによる)が、選択的BRAF阻害剤に対する突然変異体BRAF黒色腫細胞の感受性を顕著に調節したことを示し、クロマチン再構築因子が、ガンにおける標的療法に対する獲得耐性の促進に関与するという新たな証拠をさらに提供する。黒色腫細胞株におけるBRAF阻害剤に対する感受性の機構的解析に加えて、選択的BRAF阻害剤を用いた進行の前又は後の標本の解析は、症例のサブセットにおける治療耐性時のBPTFコピー数の増加を示した。それが黒色腫細胞の増殖及び生存を促進し得ることを考えると、このことは、黒色腫における標的療法に対する耐性の間にBPTF活性化が選択され得ることを示唆する。
【0031】
驚くべきことに、治療前及び進行中の病変におけるBPTF発現の免疫組織化学的解析において顕著な差があった。治療前の転移性腫瘍におけるBPTF発現は均質であったが、いくつかの腫瘍において、進行中の病変の解析は、多様な形態及びBPTF発現を有する細胞の異なるクローンを同定した。腫瘍細胞の1つのクローン(BPTF染色がない)は、療法に応答したように見えるアポトーシス細胞を表したが、一方、他のクローンは、おそらく耐性クローンを表した生存細胞(顕著なBPTF染色を有する)を同定した。このことは、標的療法に対する耐性がある転移性腫瘍が、一様には耐性でなく、むしろ、治療に依然として活発に応答している細胞の部分集団からなるという興味深い推測を導く。これらの観察は、腎細胞ガンの腫瘍内分子不均質性の最近の証拠と一致し、標的療法における進行後の転移性黒色腫における不均質な免疫組織化学的マーカー発現を示した最近の研究によって支持される。まとめると、これらの結果は、前述の耐性メカニズムのいくつかを標的とする、計画されている又は進行中の組み合わせ療法の潜在的有用性を調べる努力を明らかに支持する。さらに、それらは、BRAF阻害剤に対する耐性に打ち勝つための可能なアプローチとして、又は突然変異体BRAFを有する転移性黒色腫に対する可能な組み合わせ治療として、BPTF標的化を示唆する。
【0032】
最近の研究において、全ゲノムシークエンシングによって、BPTFは、肝臓ガンにおいて突然変異されるクロマチン再構築因子のグループの中にあった。COSMICデータベースの解析は、黒色腫を含めた皮膚ガンの少数におけるBPTF中の突然変異を明らかにする。本開示は、症例のサブセットにおいてコピー数の増加によって一部には引き起こされる、黒色腫、乳ガン及び膠芽腫におけるBPTFの発ガンにおける役割を実証する。本明細書に提示される結果は、BCL2、BCL-XL、CCND2、及びERKの活性化を介した、腫瘍細胞の増殖及び生存に対するその影響のために、BPTFに腫瘍進行における新規な機能的役割を割り当てる。BPTF過剰発現は、黒色腫に関連した生存の独立した予測因子である。さらに、BPTFのレベルの増加は、突然変異体BRAFを標的とする療法に対する耐性を促進し、これらの薬剤に対する獲得耐性の間に選択され得る。
【0033】
本明細書及び以下の実施例に提供されるデータを考慮すると、本開示は、(a)BPTFの異常発現を有するガンを治療すること、(b)BPTF発現に起因する誘導された薬物耐性を阻害することによって、既存の第一選択化学療法剤及び抗体を用いた標的療法を高めること、並びに(c)ガンの進行及び療法を同定するのに有用な診断法、に有用な方法及び組成物を提供する。本明細書に記載される治療方法は、BPTF発現を下方制御するために阻害剤核酸療法(例えば、shRNA、siRNA、アンチセンス分子など)を使用し得る。あるいは、本開示は、BPTF阻害剤(例えば、ブロモドメイン阻害剤)を第一治療剤と組み合わせることによって、療法を改善し得る。例示的ブロモドメイン阻害剤は、例えば米国特許公開第2014/0066410号に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。この後者の実施形態において、治療方法及び組成物は、ブロモドメイン阻害剤と、ガンに対する第一選択治療剤との組み合わせである。ブロモドメイン阻害剤は、第一選択治療剤/化学治療剤の投与の前に、それと組み合わせて、又はその後に投与し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、BPTFの転写又は翻訳に関連するポリヌクレオチド配列(例えば、BPTFポリヌクレオチドのプロモーター)を含むBPTFポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する非修飾又は修飾核酸を指し、この場合、アンチセンスポリヌクレオチドは、BPTFポリヌクレオチド配列にハイブリダイズできる。特に関心があるのは、in vitro又はin vivoのいずれかにおいてBPTFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳を阻害することができるアンチセンスポリヌクレオチドである。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、電荷中和部分(例えば、TAT又は他のタンパク質形質導入ドメイン、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2009/0093425号、同第2009/0093026号及び同第2006/0222657号を参照のこと)に作動的に連結された遺伝子療法(例えば、組換えウイルスベクター)、又は直接核酸送達技術を通して標的細胞に送達され得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「siRNAオリゴヌクレオチド」、「RNAiオリゴヌクレオチド」、「短鎖干渉(short interfering)RNA」又は「siRNA」は交換可能に使用され、RNA干渉(RNAi)としても知られる、翻訳後遺伝子サイレンシングを通して機能するオリゴヌクレオチドを指す。その用語は、RNA干渉「RNAi」が可能な二本鎖核酸分子を指す(Kreutzer et al., WO 00/44895; Zernicka-Goetz et al. WO 01/36646; Fire, WO 99/32619; Mello and Fire, WO 01/29058を参照のこと)。siRNA分子は、一般にRNA分子であるが、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドをさらに包含する。siRNA遺伝子標的化実験は、細胞への一過的siRNA移行によって実施されている(リポソーム媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、又はマイクロインジェクションなどの従来の方法によって達成される)。siRNAの分子は、21〜23ヌクレオチドのRNAであり、通常RNAiを開始する長い二本鎖RNA(dsRNA)のRNase IIIプロセシング生成物に似た、特徴的な2〜3ヌクレオチドの3'オーバーハング末端を有する。
【0036】
遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA経路の効果的な活用は、siRNAの細胞内送達の効率的方法に一部には依存する。siRNA分子は、細胞内で短命であり、トランスフェクトするのが難しい細胞種に容易に送達することはできず、かつ、化学合成を介して製造するために比較的高価である傾向がある(Jacks et al., (2005) Biotechniques 39: 215-224; Bernards et al., (2006) Nature Methods 3: 701-706)。
【0037】
siRNAの効率的細胞内送達の1つの方法は、ショートヘアピンRNA又は「shRNA」の使用である。shRNAは、非相補的領域によって接続された2つの相補的配列を含む一本鎖RNA分子である。in vivoにおいて、相補的配列はアニールして、一端に対合していないループを有する二本鎖へリックスを作製する。得られたロリポップ型構造はステムループと呼ばれ、RNAi機構によって認識され、siRNA様性質を有する短い二本鎖RNAへと細胞内でプロセスされ得る。
【0038】
shRNAは、適切なベクターに挿入されているDNA鋳型から転写によって細胞内で合成され得る。有用なshRNAは、典型的には、5〜10ヌクレオチドのループによって隔てられた19〜29ヌクレオチドの2つの相補的配列を有する50〜70ヌクレオチドの長さである。shRNA構築は、一般に、ダイム(dime)方法の1つによって達成される: 相補的オリゴヌクレオチドのアニーリング; プロモーターに基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR); 又はプライマー伸長。多くのベクター系は、RNA Pol IIIプロモーターを用いる; Pol III媒介性転写は、十分に規定された開始部位で開始し、ポリ(A)を含有しない転写産物を生成し、また、Pol IIIプロモーターは全ての細胞種において活性であるために、有利である(Brummelkamp et al., (2002) Science 296: 550-553; McIntyre, G. and Fanning, G. (2006) BMC Biotechnology 6: 1-8)。
【0039】
shRNAをコードするベクター系は、宿主ゲノムへのベクターの安定な組み込みの後に、持続的遺伝子サイレンシングを媒介し得る遺伝子サイレンシング試薬の再生可能な細胞内供給源を提供する。さらにshRNAカセットは、非分裂初代培養物を含む、幅広い細胞種へのshRNAの送達を促進するために、レトロウイルス、レンチウイルス、又はアデノウイルスベクターに容易に挿入することができる。shRNAベクターの調節可能なバージョンは、遺伝子選抜に特に有用である。
【0040】
あるいは、iRNA分子は、電荷中和プロセス及び組成物を通して送達され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2009/0093425号、同第2009/0093026号及びWO/2014/031575。
【0041】
一実施形態において、本開示は、ガンを治療するための方法及び組成物を提供し、ここで、ガン細胞は、BPTFの過剰発現を含み、該方法は、BPTFの核酸阻害剤を含む組成物を投与することを含む。そのような核酸阻害剤は、例えば、siRNA、shRNA及びそれらの前駆体を含み得る。例えば、本開示は、shRNAを用いて、BPTFの発現をノックダウンし得ることを実証し、有益な結果を提供する。そのようなshRNAとしては、限定されないが、BPTF shRNA1: TGGCTGTGATCGGTGTCAGAATTGGTACC(配列番号3; ここでTはUであってもよい); BPTF shRNA2: GGTGATGAAGCATAATGCTGTAATAGAAC(配列番号4; ここでTはUであってもよい); 及びBPTF shRNA3(配列番号5; ここでTはUであってもよい): ATTTAGATTCATCATAAGGCG、並びに修飾塩基、電荷中和部分などを含む前述のいずれかが挙げられる。阻害性核酸は治療上有効量で投与される。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「治療上有効量」は、治療上有効量の医薬が個体に投与される場合、個体における1つ以上の臨床的エンドポイント、ガン細胞の成長及び/若しくは生存、ガンの転移における低下又は回復、あるいは第一選択抗ガン剤の化学療法剤に対するガン細胞の耐性の低下、として観察される薬効を示す医薬の量を指すことを意味する。治療上有効量は、典型的には、有効成分を含まない組成物を類似した状況の個体に投与する場合に観察される効果と比較して、それらが有する効果によって決定される。被験体に対する正確な有効量は、被験体のサイズ及び健康、症状の性質及び程度、並びに投与のために選択された治療剤若しくは治療剤の組み合わせに依存する。しかし、所定の状況に対する有効量は、日常の実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内にある。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「組み合わせて(in combination with)」又は「併用して(in conjunction with)」は、本開示のBPTFモジュレーターの、他の治療レジメンとの投与を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「感受性である(susceptible)」とは、BPTF療法が治療の許容可能な方法である患者、例えば、プラスに応答する可能性が高い患者を指す。BPTF療法に感受性であるガン患者は、BPTF療法に感受性でない患者と比べて高レベルのBPTFを発現する。BPTF療法に対する良い候補者ではないガン患者は、それらのガン細胞内又はガン細胞上にBPTFを欠く又は低レベルのBPTFを有する腫瘍サンプルを有するガン患者を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「検出すること」は、活性(例えば、遺伝子発現)又は生体分子(例えば、ポリペプチド)の証拠を確立し、発見し、又は確実にすることを意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、フレーズ「相同なヌクレオチド配列」又は「相同なアミノ酸配列」又はそれらの変形は、ヌクレオチドレベル又はアミノ酸レベルでの、少なくとも特定のパーセンテージの相同性によって特徴付けられる配列を指し、「配列同一性」と交換可能に使用される。相同なヌクレオチド配列は、タンパク質のアイソフォームをコードする配列を含む。そのようなアイソフォームは、例えばRNAのオルタナティブスプライシングの結果として、同じ生物の異なる組織において発現され得る。あるいは、アイソフォームは、異なる遺伝子によってコードされ得る。相同なヌクレオチド配列は、哺乳動物を含むがそれに限定されない、ヒト以外の種のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。相同なヌクレオチド配列はまた、限定されないが、本明細書に記載されるヌクレオチド配列の天然に生じる対立遺伝子変異及び突然変異を含む。相同なアミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換を含有するアミノ酸配列、並びにポリペプチドが同じ結合及び/若しくは活性を有するアミノ酸配列を含む。
【0047】
相同性又は同一性パーセントは、例えば、Smith及びWatermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482-489)を用いる、デフォルト設定を使用したGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, UNIXのためのVersion 8, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison Wis.)によって、決定できる。いくつかの実施形態において、プローブと標的との間の相同性は、約50%〜約60%である。いくつかの実施形態において、核酸は、配列番号1又はその部分に対して約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約92%、約94%、約95%、約97%、約98%、約99%及び約100%相同であるヌクレオチドを有する。本開示は、配列番号1の部分的若しくは完全な相補体又はそのホモログをさらに提供する。
【0048】
相同性はまた、ポリペプチドレベルにおけるものであってよい。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2又はその一部と約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約92%、約94%、約95%、約97%、約98%、約99%及び約100%相同である。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「プローブ」は、可変の長さの核酸配列を指す。いくつかの実施形態において、プローブは、少なくとも約10ヌクレオチド、及び約6,000もの数のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、プローブは、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも75個の連続ヌクレオチドを含む。プローブは、同一、類似又は相補的核酸配列の検出に使用される。より長い長さのプローブは、通常、天然若しくは組換え供給源から得られ、標的配列に高度に特異的であり、オリゴマーよりも標的にはるかにゆっくりハイブリダイズする。プローブは、一本鎖又は二本鎖であってよく、PCR、メンブレンに基づくハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、又はELISA様技術において特異性を有するように設計される。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「混合する」とは、同じ領域において1つ以上の化合物、細胞、分子などを一緒に組み合わせるプロセスを指す。これは、1つ以上の化合物、細胞又は分子を混合することを可能にする、例えば試験チューブ、ペトリ皿、又は任意の容器中で実施され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は抗体が天然に生じる環境とは異なる環境にあるポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、又は宿主細胞を指す。細胞を単離する方法は、当業者に周知である。単離されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は抗体は、一般に実質的に精製されている。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に精製された」とは、その天然の環境から取り出され、それが天然では結合している他の成分から少なくとも60%遊離している、少なくとも75%遊離している、及び少なくとも90%遊離している化合物(例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は抗体のいずれか)を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「結合する」とは、2個以上の生体分子又は化合物間の物理的又は化学的相互作用を意味する。結合は、イオン性、非イオン性、水素結合、ファンデルワールス、疎水性相互作用などを含む。結合は、直接的又は間接的のいずれかであってよく、間接的とは、別の生体分子又は化合物の影響を通したもの又はそれに起因したものである。直接的結合は、別の分子又は化合物の影響を通して又はそれに起因して生じないが、代わりに他の実質的な化学媒介体のない相互作用を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「接触させる」とは、1つの分子を第2の分子に対して物理的近位へ直接的又は間接的に会合させることをいう。分子は、いかなる数の緩衝液、塩類、溶液などの中にあってもよい。「接触させる」には、例えば、核酸分子を含有する、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコ又はマイクロアレイなどの中にポリヌクレオチドを入れることが含まれる。また、接触させることには、例えば、ポリペプチドを含有する、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコ又はマイクロアレイなどの中に抗体を入れることが含まれる。接触は、in vivo、ex vivo又はin vitroで行われ得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、フレーズ「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」又は「ストリンジェントな条件」とは、プローブ、プライマー又はオリゴヌクレオチドがその標的配列にハイブリダイズするが、ごく少数の他の配列ともハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる状況では異なる。より長い配列は、より高い温度でそれらの適切な相補体と特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件は、特定されたイオン強度及びpHでの特異的配列についての熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(特定されたイオン強度、pH及び核酸濃度で)標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmではプローブの50%がそれらの相補体と平衡状態でハイブリダイズする。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3で約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン(又は他の塩類)であり、温度が、短いプローブ、プライマー又はオリゴヌクレオチド(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、より長いプローブ、プライマー又はオリゴヌクレオチドについては少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、脱塩剤、例えばホルムアミドの添加により達成され得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「緩和なストリンジェンシー条件」は、プローブ、プライマー又はオリゴヌクレオチドがその標的配列とハイブリダイズするが、限られた数の他の配列ともハイブリダイズする条件を指す。緩和な条件は、配列依存的であり、異なる状況では異なる。緩和な条件は、当業者に周知であり、特に、Maniatis et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 第2版(1989年12月))に記載されている。
【0057】
本明細書に記載される核酸組成物は、例えば、生物学的サンプル(例えば、ヒト細胞の抽出物)中のmRNA又はそのようなサンプルから生成されるcDNAを検出するためのプローブとしてポリペプチドを製造するため、ポリヌクレオチドの追加コピーを製造するため、リボザイム若しくはオリゴヌクレオチド(一本及び二本鎖状)を作製するために使用され、また一本鎖DNAプローブとして、又は三本鎖形成オリゴヌクレオチドとして使用され得る。本明細書に記載されるプローブは、例えば、サンプルにおいて、本明細書に提供されるポリヌクレオチドの存在又は不在を決定するために使用され得る。ポリペプチドは、ガンに関連するポリペプチドに特異的な抗体を産生するために使用することができ、それらの抗体は、本明細書でより詳細に論じられるように、診断方法、予後判断方法などにおいて有用である。ポリペプチドはまた、本明細書でより詳細に論じられるように、治療的介入に関する標的としても有用である。本開示の抗体はまた、例えば、in vitro及びin vivoの診断及び治療方法の両方を含め、本発明のポリペプチドを精製、検出及び標的化するために使用され得る。例えば、抗体は、生物学的サンプルにおける本発明のポリペプチドのレベルを定性的及び定量的に測定するための免疫アッセイおいて有用である。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版, 1988)を参照のこと。これら及び他の使用については下記でより詳述されている。BPTFに対する抗体は公知である(例えば、Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX, USAから)。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「造影剤」は、当業者に公知の技術を用いて検出され得る本開示の抗体、小分子、又はプローブに連結された組成物を指す。本明細書で使用される場合、用語「遺伝子発現の証拠」は、遺伝子が発現されるという任意の測定可能な証拠を指す。
【0059】
用語「製薬上許容される担体」は、治療剤、例えば抗体若しくはポリペプチド、遺伝子及び他の治療剤を投与するための担体を指す。この用語は、組成物を投与される個体にとって危険性のある抗体の産生をそれ自体で誘導せず、また過度の毒性を伴うことなく投与され得る任意の製薬用担体を指す。適切な担体は、大きく、代謝が緩慢な高分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体及び不活性ウイルス粒子であり得る。そのような担体は当業者に周知である。治療組成物中における製薬上許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含み得る。補助物質、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝物質などもまた、そのようなビヒクル中に存在し得る。
【0060】
本開示の方法及び組成物により治療され得るガンの具体的な例は、BPTFに関連するガンを含むが、これに限定されない。本明細書で使用される場合、「BPTFに関連するガン」は、非ガン性細胞に対して異なってBPTFを発現する細胞を特徴とするガンを指す。本開示はまた、BPTFが、ガン細胞成長、腫瘍形成、ガン細胞増殖、ガン細胞転移、細胞移動、治療への耐性、及び血管形成においてある役割を果たす、任意の腫瘍細胞種に適用可能である。いくつかの実施形態において、ガンは、乳ガン、皮膚ガン、食道ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、肺ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、多発性骨髄腫、及び黒色腫である。
【0061】
本開示は、BPTF過剰発現と関連する疾患及び障害の治療、阻害、及び管理、並びにそのような疾患及び障害の症状の治療、阻害、及び管理を提供する方法及び組成物を提供する。本発明のいつくかの実施形態は、ガン転移、ガン細胞増殖、ガン細胞成長及びガン細胞侵襲を非限定的に含む、ガンを治療し、阻害し又は管理する組成物を含む方法及び組成物に関する。
【0062】
本開示は、本開示のBPTFモジュレーター及び阻害剤と組み合わせた他の有効成分を含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の従来のガン治療を患者に施すことをさらに含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、BPTFモジュレーター又は阻害剤と組み合わせて化学療法、放射線療法又は手術の1つ以上で患者を治療することをさらに含む。任意の他の療法と組み合わせたBPTFの投与は、非BPTF療法の投与の前に、それと同時、又はその後に実施され得る。
【0063】
本開示はまた、ガンを診断する及び/又はガン進行を予測するための、本開示のBPTFモジュレーター、特にBPTF阻害性抗体及び阻害性RNA小分子(例えば、siRNA、shRNAなど)を用いた、診断及び/又は画像化法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、腫瘍及び/又は転移を画像化する及びその位置を特定する方法、並びにガンの診断及び予後判断の方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、BPTFに関連した療法の妥当性を評価する方法を提供する。
【0064】
本開示は、とりわけ、ガンの治療、診断、検出又は画像化のためのBPTFモジュレーター及び阻害剤を提供する。BPTFモジュレーター又は阻害剤はまた、ガンの治療のための医薬の調製において有用である。
【0065】
いくつかの実施形態において、BPTFモジュレーター又は阻害剤は、オリゴヌクレオチド、小分子、模倣体、又は抗体である。いくつかの実施形態において、BPTFモジュレーターは、BPTFの生物学的活性を、対照と比較して、25%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%阻害する。いくつかの実施形態において、BPTFモジュレーターは、BPTF発現を、対照と比較して、少なくとも25%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%阻害する。
【0066】
本明細書で使用される場合、BPTFモジュレーターは、BPTFの発現又は活性を調節する任意の薬剤を含む。「モジュレーター」は、アンタゴニスト又はアゴニストであってよい。ガンの治療のために、BPTFモジュレーターは、阻害性分子又はアンタゴニスト分子である。例示的BPTF阻害剤は、阻害性抗体、小分子阻害剤(例えば、ブロモドメイン阻害剤)、及び阻害剤核酸分子を含む。BPTF阻害性抗体は、BPTFポリペプチド(例えば、配列番号2の配列を含むポリペプチド、その突然変異体又は変異体)の生物学的活性を阻害又は低減する抗体を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、BPTFモジュレーターは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、又はFabフラグメントである。抗体は、例えば、酵素、放射性同位体、又はフルオロフォアで標識されてよい。いくつかの実施形態において、BPTFモジュレーターは、配列番号2に記載される配列からなるBPTFに結合するモノクローナル抗体である。診断適用において、抗体は検出可能な標識で標識されることができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は、例えば(1)ヒトフレームワーク及び定常領域へ非ヒト相補性決定領域(CDR)を移植する(当技術分野では「ヒト化する」と称されるプロセス)か、又は別法として(2)全非ヒト可変ドメインを移植するが、表面残基の置換によりそれらをヒト様表面で「覆う」(当技術分野では「ベニヤリング」と称されるプロセス)ことを含む、様々な方法により達成され得る。本発明では、ヒト化抗体は、「ヒト化」及び「ベニヤ化」抗体の両方を含む。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、トランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活化されているマウスへ導入することにより作製され得る。投与すると、ヒト抗体の産生が観察されるが、これは遺伝子の再配置、会合、及び抗体レパートリーを含め、全ての点でヒトに見られるものと密接に類似している。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び以下の科学文献:Marks et al., Bio/Technology 10; 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995); Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci; U.S.A., 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyer et al.; Science 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun. 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immunol. 31(3):169-217 (1994)及びKettleborough, C.A. et al., Protein Eng. 4(7):773-83 (1991)に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
BPTFに対する抗体は、単独又は他の組成物と組み合わせてのいずれかで使用され得る。さらに、抗体は、N若しくはC末端で異種ポリペプチドに組換え技術により融合され得るか、又はポリペプチド若しくは他の組成物に化学的にコンジュゲート(共有結合的及び非共有結合的コンジュゲーションを含む)され得る。例えば、本開示の抗体は、検出アッセイにおける標識として有用な分子、及びエフェクター分子、例えば異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、若しくは毒素に、組換え技術により融合又はコンジュゲートされ得る。例えば、PCT公開WO 92/08495号、WO 91/14438号、WO 89/12624号、米国特許第5,314,995号及びEP 396,387を参照のこと。
【0070】
キメラ及びヒト化抗体に加えて、完全ヒト抗体が、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから(例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,075,181号、同第6,091,001号、及び同第6,114,598号を参照のこと)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子のファージディスプレイライブラリーから(例えば、McCafferty et al.,Nature, 348:552-554 (1990), Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)を参照のこと)得ることができる。
【0071】
モノクローナル抗体は、Kohler et al. (1975) Nature 256:495-496の方法又はその改変法を用いて製造され得る。典型的には、マウスを抗原含有溶液により免疫化する。免疫化は、抗原含有溶液を生理食塩水中、好ましくはアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント中で混合又は乳化し、混合物又はエマルジョンを非経口的に注射することにより実施され得る。当技術分野で公知の任意の免疫化方法を用いて、本発明のモノクローナル抗体を得てよい。動物の免疫化後、脾臓(及び場合により、いくつかの大きなリンパ節)を取り出し、単細胞へ解離させる。脾臓細胞は、対象抗原でコーティングしたプレート又はウェルに細胞の十分な懸濁液を適用することにより、スクリーニングされ得る。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞は、プレートに結合し、洗い流されない。次いで、得られたB細胞、又は解離された全脾臓細胞を、骨髄腫細胞と融合するように誘導してハイブリドーマを形成させ、それらを選択培地中で培養する。得られた細胞を、連続又は限界希釈によりプレーティングし、対象抗原と特異的に結合する(そして非関連抗原とは結合しない)抗体の産生についてアッセイする。次いで、選択されたモノクローナル抗体(mAb)分泌性ハイブリドーマを、in vitro(例えば、組織培養ボトル又は中空ファイバー反応器中)又はin vivo(マウスの腹水として)で培養する。
【0072】
発現に関するハイブリドーマの使用に代わるものとして、抗体は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,545,403号、同第5,545,405号及び同第5,998,144号に開示されているように、細胞株、例えばCHO又は骨髄腫細胞株で製造され得る。簡単に述べると、軽鎖及び重鎖をそれぞれ発現し得るベクターで細胞株をトランスフェクションする。2種のタンパク質を別々のベクターでトランスフェクションすることにより、キメラ抗体が製造され得る。全て参照により本明細書に組み込まれる、Immunol. 147:8; Banchereau et al. (1991) Clin. Immunol. Spectrum 3:8及びBanchereau et al. (1991) Science 251:70。
【0073】
フレーズ「相補性決定領域」は、天然免疫グロブリン結合部位の天然FY領域の結合アフィニティ及び特異性を全体として規定するアミノ酸配列を指す。例えば、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services NaI Publication No.91-3242 (1991)を参照のこと。フレーズ「定常領域」は、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。本発明では、マウス定常領域をヒト定常領域により置き換える。対象ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンから得られる。重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ又はミューのいずれかから選択され得る。抗体をヒト化する1つの方法は、ヒト重鎖及び軽鎖配列に対し非ヒト重鎖及び軽鎖配列を整列させ、そのようなアラインメントに基づき非ヒトフレームワークを選択してヒトフレームワークにより置き換え、分子モデリングにより、ヒト化配列のコンホメーションを予測し、親抗体のコンホメーションと比較することを含む。このプロセスの後、ヒト化配列モデルの予測コンホメーションが親非ヒト抗体の非ヒトCDRのコンホメーションと密接に近似するまで、CDRの構造を乱す、CDR領域における残基の繰り返し復帰突然変異が続く。そのようなヒト化抗体はさらに誘導体化され、例えばAshwell受容体を介して、取り込み及びクリアランスを促進し得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,530,101号及び同第5,585,089号を参照のこと。
【0074】
ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように遺伝子操作されたトランスジェニック動物を用いて製造され得る。例えば、WO 98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示し、上記動物は、内在重鎖及び軽鎖遺伝子座の不活化故に機能的内在性免疫グロブリンを生産しない。またWO 91/10741は、免疫原に対して免疫応答を起こし得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示し、ここで抗体は、霊長類定常及び/又は可変領域を有し、内在性免疫グロブリンをコードする遺伝子座は置換又は不活化されている。WO 96/30498は、Cre/Lox系の使用による哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座の改変、例えば定常又は可変領域の全部又は一部分の置換による修飾抗体分子の形成について開示する。WO 94/02602は、不活化内在性Ig遺伝子座及び機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示する。米国特許第5,939,598号は、内在重鎖を欠き、1つ以上の異種定常領域を含む外来性免疫グロブリン遺伝子座を発現するマウスであるトランスジェニックマウスの作製方法を開示する。本発明の抗体はまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,766,886号において論じられるように、ヒト遺伝子操作技術を用いて製造され得る。
【0075】
本開示の抗体は、Fang et al.(2005), Nat. Biotechnol. 23, 584-590に論じられるように、in vivo治療用抗体遺伝子導入を介して被験体に投与されてよい。例えば、組換えベクターを作製し、MAb重鎖及び軽鎖をコードする配列間に位置するポリペプチドの酵素非依存的共翻訳自己開裂を媒介するペプチドを含む多シストロン性発現カセットを送達することができる。発現は、両MAb鎖の化学量論量を導く。酵素非依存的共翻訳自己開裂を媒介するペプチドの好ましい例は、口蹄疫由来の2Aペプチドである。
【0076】
抗体のフラグメントは、それらが全長抗体の所望のアフィニティを保持する限り、本発明の方法における使用に適している。したがって、抗BPTF抗体のフラグメントは、BPTFへの結合能を保持する。そのようなフラグメントは、対応する全長抗BPTF抗体と類似した特性を特徴とし、すなわち、フラグメントは、ヒト細胞の表面で発現されたヒトBPTF抗原に特異的に結合する。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗体は、 BPTFのドメインにおける1つ以上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体は、1つ以上のBPTFに関連する生物学的活性を調節する。いくつかの実施形態において、抗体は、ガン細胞成長、腫瘍形成、及びガン細胞増殖の1つ以上を阻害する。
【0078】
抗体は、(1)それらが閾値レベルの結合活性を示す場合、及び/又は(2)それらが公知の関連ポリペプチド分子と顕著に交差反応しない場合、「特異的に結合する」と定義される。抗体の結合アフィニティは、例えばScatchard解析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51: 660-672, 1949)によって、当業者によって容易に決定され得る。
【0079】
本開示は、治療上有効量の、本開示の1つ以上のBPTF阻害剤を被験体に投与することを含む、被験体においてガン若しくはガンの症状を治療及び/又は阻止する方法を提供する。いくつかの実施形態において、ガンは、BPTF過剰発現に関連するガンである。いくつかの実施形態において、ガンは、乳ガン、皮膚ガン、食道ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、肺ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、多発性骨髄腫、又は黒色腫である。いくつかの実施形態において、ガンは、ホルモンによって調節されない組織である。
【0080】
阻害剤化合物の治療上有効量は、医薬品化学者に周知の手順にしたがって経験的に決定することができ、特に患者の年齢、症状の重症度、及び所望の最終医薬製剤に依存する。本発明のモジュレーターの投与は、例えば、吸入剤若しくは坐剤によって、又は粘膜組織へ、例えば洗浄によって膣組織、直腸組織、尿道組織、口腔組織及び舌下組織へ、経口的に、局所的に、鼻腔内に、腹腔内に、非経口的に、静脈内に、リンパ管内に(intralymphatically)、腫瘍内に、筋肉内に、間質に(interstitially)、動脈内に、皮下に、眼内に、滑液嚢内に(intrasynovial)、経上皮的に(transepithelial)、及び経皮的に実施することができる。いくつかの実施形態において、阻害剤は、洗浄によって、経口的に又は動脈内に投与される。他の好適な導入方法はまた、再充電可能な若しくは生分解可能なデバイス、並びに徐放若しくは持続放出ポリマーデバイスを含み得る。上に論じたように、本開示の治療用組成物はまた、他の公知の抗ガン剤又は他の公知の抗骨疾患治療レジメンとの組み合わせ療法の一部として投与することができる。
【0081】
本開示は、患者においてBPTFに関連した生物学的活性を調節する方法をさらに提供する。本方法は、1つ以上のBPTFの生物学的活性を阻害するために効果的なBPTF阻害剤の量を患者に投与することを含む。BPTF生物学的活性を測定するための好適なアッセイは、上及び下に記載される。
【0082】
本開示はまた、治療上有効量の1つ以上のBPTF阻害剤を患者に投与することを含む、それを必要とする患者においてガン細胞成長を阻害する方法を提供する。BPTFに関連した細胞成長を測定するための好適なアッセイは、当業者に公知であり、上及び下に記載される。
【0083】
本開示は、それを必要とする患者においてガンを阻害する方法をさらに提供する。本方法は、患者がBPTF療法についての候補であるかどうかを本明細書に記載されるように(例えば、BPTFが過剰発現される)決定し、患者がBPTF療法についての候補である場合、治療上有効量の1つ以上のBPTF阻害剤を患者に投与することを含む。患者がBPTF療法についての候補でない場合、患者は従来のガン治療で治療される。
【0084】
本開示は、ガンを有すると診断された又は疑われる患者においてガンを阻害する方法をさらに提供する。本方法は、治療上有効量の1つ以上のBPTF阻害剤を患者に投与することを含む。
【0085】
本開示はまた、治療上有効量の本明細書に記載されるBPTF阻害性組成物を患者に投与することを含む、患者においてガンの1つ以上の症状を調節する方法を提供する。
【0086】
本開示はまた、治療上有効量のBPTF阻害剤を患者に投与することを含む、それを必要とする患者においてガン細胞の移動を阻害する方法を提供する。BPTFに関連した細胞移動を測定するための好適なアッセイは、当業者に公知である。
【0087】
本開示はまた、ガン、ガン転移を発症しやすい素因を有する患者、又は転移を有していたものであり、したがって、ぶり返し又は再発を起こしやすい患者を予防的に処置する方法を提供する。本方法は、例えば、ガン若しくは腫瘍転移の家族歴を有するか、又はガン転移について遺伝的素因を示す、ハイリスクの個体において特に有用である。いくつかの実施形態において、腫瘍は、BPTFに関連した腫瘍である。「BPTFに関連した」腫瘍又はガンは、同じ非腫瘍又はガン細胞種と比較して、BPTFの発現の増加を示す腫瘍又はガンである。さらに、本方法は、外科的切除によって除去された又は従来のガン治療で治療された、BPTFに関連した腫瘍を有していた患者が、BPTFに関連した腫瘍の再発を有することを防ぐために有用である。
【0088】
本開示はまた、治療上有効量のBPTF阻害剤を患者に投与することを含む、ガン進行を阻害する及び/又はガン退縮を引き起こす方法を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態において、抗ガン治療を必要とする患者は、化学療法及び/又は放射線療法と併用して、本開示のBPTF阻害剤で処置される。例えば、BPTF阻害剤の投与後、患者はまた、治療上有効量の抗ガン放射線で処置される。いくつかの実施形態において、化学療法治療は、BPTF阻害剤と組み合わせて提供される。いくつかの実施形態において、BPTF阻害剤は、化学療法及び放射線療法と組み合わせて投与される。
【0090】
治療の方法は、患者に、1つ以上のBPTF阻害剤の一回用量又は複数回用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、BPTF阻害剤は、滅菌でパイロジェンフリー(pyrogen free)であり、かつ製薬上許容される担体若しくは希釈剤と組み合わせてBPTFモジュレーターを含む、注射用医薬組成物として投与される。
【0091】
いくつかの実施形態において、本開示の治療レジメンは、手術、放射線療法、ホルモン除去、及び/又は化学療法を含むがこれらに限定されない、ガンに対する従来の治療レジメンと共に使用される。本開示のBPTF阻害剤の投与は、従来のガン治療の前に、それと同時に、又はその後に生じてよい。いくつかの実施形態において、2種以上の異なるBPTF阻害剤が患者に投与される。
【0092】
いくつかの実施形態において、患者に投与されるBPTF阻害剤の量は、ガン細胞成長、腫瘍形成、ガン細胞増殖、ガン細胞転移、ガン細胞移動、血管形成などの1つ以上を阻害するのに有効である。いくつかの実施形態において、患者に投与されるBPTF阻害剤の量は、アポトーシスを通したガン細胞死の増加に有効である。
【0093】
いくつかの実施形態において、本開示は、ガンに対する、さらに改善した有効性を提供するための、2種以上のBPTF阻害剤を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、BPTF阻害剤は、阻害性核酸分子(例えば、shRNA、siRNA及びアンチセンス分子)又は阻害性抗体である。2種以上の治療剤の同時投与は、薬剤がそれらの治療効果を発揮している期間に重なりがある限り、薬剤は同じ時に又は同じ経路によって投与されることを必要としない。同時又は連続投与が予期され、異なる日又は週における投与が予期される。
【0094】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、異なるBPTF阻害剤の組み合わせ又は「カクテル」の投与を予期する。
【0095】
本開示のBPTF阻害剤と組み合わせて使用することができるガン化学療法剤は、限定されないが、アルキル化剤、例えばカルボプラチン及びシスプラチン; ナイトロジェンマスタードアルキル化剤; ニトロソウレアアルキル化剤、例えばカルムスチン(BCNU); 代謝拮抗物質、例えばメトトレキセート; フォリン酸; プリン類似体代謝拮抗物質、メルカプトプリン; ピリミジン類似体代謝拮抗物質、例えばフルオロウラシル(5-FU)及びゲムシタビン(ゲムザール(Gemzar、登録商標)); ホルモン性抗新生物薬、例えばゴセレリン、ロイプロリド及びタモキシフェン; 天然抗新生物薬、例えばアルデスロイキン、インターロイキン-2、ドセタキセル、エトポシド(VP-16)、インターフェロンアルファ、パクリタキセル(タキソール(Taxol、登録商標))、及びトレチノイン(ATRA); 抗生物質天然抗新生物薬、例えばブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン及びミトマイシンCを含むミトマイシン類; 並びにビンカアルカロイド天然抗新生物薬、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン; ヒドロキシ尿素; アセグラトン、アドリアマイシン、イフォスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、塩酸プロカルバジン、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍多糖類、抗腫瘍血小板因子、シクロホスファミド(サイトキシン(Cytoxin、登録商標))、シゾフィラン、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ダカルバジン、チオイノシン、チオテパ、テガフール、ドラスタチン類、ドラスタチン類似体、例えばアウリスタチン、CPT-11(イリノテカン)、ミトザントロン、ビノレルビン、テニポシド、アミノプテリン、カルミノマイシン、エスペラマイシン類(例えば、米国特許第4,675,187号を参照のこと)、ネオカルジノスタチン、OK-432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロクスウリジン、ブスルファン、ホンバン、ペプロマイシン、ベスタチン(ウベニメクス(Ubenimex、登録商標))、インターフェロン-β、メピチオスタン、ミトブロニトール、メルファラン、ラミニンペプチド類、レンチナン、カワラタケ(Coriolus versicolor)抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)を含む。
【0096】
ガン患者に対する療法として使用され得る追加薬剤は、EPO、G-CSF、ガンシクロビル;抗生物質、ロイプロリド; メペリジン; ジドブジン(AZT); 突然変異体及び類似体を含むインターロイキン1〜18; インターフェロン又はサイトカイン類、例えばインターフェロンα、β及びγ、ホルモン類、例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及び類似体並びにゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH); 成長因子、例えばトランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、線維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子相同因子(FGFHF)、肝細胞成長因子(HGF)及びインスリン成長因子(IGF); 腫瘍壊死因子-α及びβ(TNF-α及びβ); 浸潤阻害因子-2(IIF-2); 骨形成タンパク質1〜7(BMP1〜7); ソマトスタチン; サイモシン-α-1; γ-グロブリン; スーパーオキシドジスムターゼ(SOD); 補体因子; 抗血管形成因子; 抗原性物質及びプロドラッグを含む。さらに、BPTF阻害剤は、BRAFを標的とする標的化剤(ベムラフェニブ又はダブラフェニブ)、MEKを標的とする標的化剤(トラメチニブ)、HER2を標的とする標的化剤(例えばハーセプチン)、及びEGFRを標的とする標的化剤(例えばゲフィチニブ)を含むがこれらに限定されない標的化剤と組み合わせることができる。他の標的化の組み合わせは、BPTF阻害剤と以下の1つ以上とを含む: アービタックス(セツキシマブ)、ヤーボイ(イピリムマブ)及びペルツズマブ。そのような療法の例はまた、非限定的に、小分子キナーゼ阻害剤、例えばイマチニブ(グリベック)、スニチニブ(スーテント)、ソラフェニブ(ネクサバール)、エルロチニブ(タルセバ)、ダサチニブ(スプリセル)、ニロチニブ(タシグナ)、ラパチニブ(タイケルブ)、クリゾチニブ(ザーコリ)、ルキソリチニブ(ジャカフィ)、バンデタニブ(キャプレーサ)、パゾパニブ(ヴォトリエント)、アファチニブ、アリセルチブ、アムバチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、ブリバニブ、カネルチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、クレノラニブ、ダコミチニブ、ダヌセルチブ、ドビチニブ、フォレチニブ、ガネテスピブ、イブルチニブ、イニパリブ、レンバチニブ、リニファニブ、リンシチニブ、マシチニブ、モメロチニブ、モテサニブ、ネラチニブ、ニラパリブ、オプロゾミブ、オラパリブ、ピクチリシブ、ポナチニブ、キザルチニブ、レゴラフェニブ、リゴサチブ、ルカパリブ、サラカチニブ、サリデギブ(saridegib)、タンズチニブ、タソシチニブ、テラチニブ、チバンチニブ、チボザニブ、トファシチニブ、バタラニブ、ベリパリブ、ビスモデギブ、ボラセルチブ、BMS-540215、BMS777607、JNJ38877605、TKI258、GDC-0941(Folkes, et al., J. Med. Chem. 2008, 51, 5522)、BZE235及びその他を含む。
【0097】
プロドラッグは、親薬物と比べて腫瘍細胞に対する細胞毒性が低いか又は非細胞毒性であり、酵素的に活性化され得るか又は活性形態若しくはより高活性の親形態に変換され得る医薬活性物質の前駆体又は誘導体を指す。例えば、Wilman, "Prodrugs in Cancer Chemotherapy" Biochemical Society Transactions, 14, 375-382頁, 615th Meeting Belfast(1986)及びStella et al., "Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery," Directed Drug Delivery, Borchardt et al.(編), 247-267頁, Humana Press(1985)を参照のこと。プロドラッグは、限定されないが、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、b-ラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含み、これらはさらに高活性の細胞毒のない離薬物に変換され得る。本明細書で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化され得る細胞毒性薬物の例は、上記の化学療法剤を含むが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示の方法及び組成物は、乳ガン、脳腫瘍(多形性膠芽腫)、皮膚ガン、食道ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、肺ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、多発性骨髄腫、及び黒色腫に特に有用である。
【0099】
本開示はまた、本明細書に記載されるBPTF阻害剤の1つ以上、及び製薬上許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、液体溶液又は懸濁液としての注射剤として調製される; 注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適した固体形態も調製することができる。リポソームは、製薬上許容される担体の定義内に含まれる。製薬上許容される塩、例えば、鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など; 並びに有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩なども医薬組成物中に存在することができる。製薬上許容される添加物の徹底的な議論は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (1995) Alfonso Gennaro, Lippincott, Williams, & Wilkinsにおいて利用できる。
【0100】
本開示はまた、BPTFを検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、BPTFは、in vivoで患者において、又はin vitroで患者サンプルにおいて検出され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、BPTFポリペプチド又は核酸に結合する1つ以上のBPTF阻害剤を含む組成物を患者に投与し、検出可能な標識で標識されたBPTF作用剤の局在を患者において検出することを含む。いくつかの実施形態において、患者サンプルは、ガン細胞を含む。いくつかの実施形態において、BPTF阻害剤は、造影剤に連結されるか、又は検出可能に標識される。いくつかの実施形態において、BPTF阻害剤又は結合剤は、造影剤にコンジュゲートされたBPTF抗体であり、1つ以上の腫瘍を検出するため、又は患者のBPTF療法に対する感受性を決定するために、患者に投与される。標識された抗体は、細胞内又は細胞上でBPTFポリペプチドに結合し、それによって、腫瘍部位に蓄積する。標準的画像技術を用いて、腫瘍の部位は決定され得る。
【0101】
本開示はまた、BPTFに結合する薬剤(例えば、核酸又は抗体)を含む組成物をサンプルと接触させ、サンプル中のBPTFの存在を検出することを含む、BPTFを発現又は過剰発現する細胞又は腫瘍を画像化/検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、サンプルは患者サンプルである。いくつかの実施形態において、患者サンプルはガン細胞を含む。
【0102】
検出方法は、当業者に周知である。例えば、ポリヌクレオチドの検出方法は、PCR、ノザンブロッティング、サザンブロッティング、RNA保護及びDNAハイブリダイゼーション(in situ ハイブリダイゼーションを含む)を含むが、これらに限定されない。ポリペプチドの検出方法は、ウエスタンブロッティング、ELISA、酵素活性アッセイ、スロットブロッティング、ペプチド質量フィンガープリンティング、電気泳動、免疫化学及び免疫組織化学を含むが、これらに限定されない。検出方法の他の例は、限定されないが、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、時間分解蛍光免疫アッセイ(TR-FIA)、2色蛍光顕微鏡、又は免疫クロマトグラフィーアッセイ(ICA)を含み、全て当業者には周知である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド発現はPCR法を用いて検出され、ポリペプチド生成はELISA技術を用いて検出される。
【0103】
所定の核酸のノザンブロットハイブリダイゼーションのために好適なプローブは、BPTFの核酸配列(例えば配列番号1)から作製され得る。標識されたDNA及びRNAプローブの調製方法、並びに標的ヌクレオチド配列へのそのハイブリダイゼーションのための条件は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al.編, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 第10章及び第11章に記載されている。
【0104】
一例では、核酸プローブは、例えば放射性ヌクレオチド、例えば
3H、
32P、
33P、
14C、若しくは
35S; 重金属; 又は標識されたリガンド(例えばビオチン、アビジン若しくは抗体)、蛍光分子、化学発光分子、若しくは酵素についての特異的結合対メンバーとして機能することができるリガンドで標識され得る。プローブは、ニック翻訳、ランダムプライミング、又は当業者に公知の他の方法によって高い特異的活性まで標識され得る。例えば、ニック翻訳法にしたがって、既存のヌクレオチドを高放射性ヌクレオチドで置き換えることによって、10
8 cpm/マイクログラムの十分過度の、特異的活性を有する
32P標識核酸プローブを調製することが知られている。
【0105】
次いで、ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィ検出は、ハイブリダイズされたフィルターを写真用フィルムに露光することによって実施され得る。ハイブリダイズされたフィルターによって露光された写真用フィルムのデンシトメトリースキャニングは、miRNA転写産物レベルの正確な測定を提供する。別の実施形態において、遺伝子転写産物 レベルは、コンピュータ画像システム、例えば、Amersham Biosciences, Piscataway, N.Jから利用できるMolecular Dynamics 400-B 2D Phosphorimagerによって定量され得る。
【0106】
別の実施形態において、ランダムプライマー法を用いて、アナログ、例えばdTTPアナログ5-(N-(N-ビオチニル-イプシロン-アミノカプロイル)-3-アミノアリル)デオキシウリジン三リン酸を、プローブ分子に組み込むことができる。ビオチン化プローブオリゴヌクレオチドは、呈色反応を生じる蛍光色素又は酵素に結合された、ビオチン結合タンパク質、例えばアビジン、ストレプトアビジン、及び抗体(例えば、抗ビオチン抗体)との反応によって、検出され得る。
【0107】
さらなる実施形態において、発現のレベルの決定は、in situハイブリダイゼーションの技術を用いて達成され得る。この技術は、ノザンブロッティング技術より少ない細胞を必要とし、顕微鏡カバーガラス上に細胞全体を置き、放射性又は他の方法で標識された核酸(例えば、cDNA又はRNA)プローブを含有する溶液で細胞の核酸内容物をプローブすることを含む。この技術は、被験体からの組織生検サンプルの分析に特によく適している。in situハイブリダイゼーション技術の実施は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,427,916号により詳細に記載される。
【0108】
細胞中の遺伝子転写産物の相対数はまた、遺伝子転写産物の逆転写、その後のポリメラーゼ連鎖反応による、逆転写された転写産物の増幅(RT-PCR)によって、決定され得る。遺伝子転写産物のレベルは、内部標準、例えば同じサンプル中に存在する「ハウスキーピング」遺伝子からのmRNAのレベルと比較して定量され得る。内部標準として使用するための適切な「ハウスキーピング」遺伝子としては、例えば、ミオシン又はグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)が挙げられる。定量的RT-PCRのための方法及びその変法は、当技術分野の技能の範囲内である。別の実施形態において、ハイスループットステムループリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)は、miRNA発現を検出するために使用される。Mestdagh et al., Nucleic Acid Research 36(21) (2008)を参照のこと。
【0109】
特定のサンプルの「発現プロファイル」又は「ハイブリダイゼーションプロファイル」は、実質的に、サンプルの状態のフィンガープリントである; 2つの状態は、同様に発現される任意の特定の遺伝子を有し得るが、いくつかの遺伝子の評価は、細胞の状態に固有の遺伝子発現プロファイルの生成を同時に可能にする。すなわち、正常組織は、ガン組織から区別されることができ、ガン組織内で、異なる予後状態(例えば、良い又は悪い長期の生存見込み)が決定され得る。異なる状態におけるガン組織の発現プロファイルを比較することによって、これらの状態のそれぞれにおいてどの遺伝子が重要であるかに関する情報(遺伝子の上方及び下方制御を含む)が得られる。ガン組織又は正常組織において異なって発現される配列の同定、並びに異なる予後アウトカムをもたらす差次的発現の同定は、いくつかのやり方でこの情報の使用を可能にする。例えば、特定の治療レジメンが評価され得る(例えば、化学療法薬物が、特定の患者において長期予後を改善するように作用するかどうかを決定するため)。同様に、診断は、患者サンプルを、公知の発現プロファイルと比較することによって行われ又は確かめられ得る。さらに、これらの遺伝子発現プロファイル(又は個々の遺伝子)は、ガン発現プロファイルを抑制する又は悪い予後プロファイルをより良い予後プロファイルに変換する薬物候補のスクリーニングを可能にする。
【0110】
本明細書に記載される発現プロファイリング法にしたがって、ガン(例えば、黒色腫、乳ガン、GBM)を有することが疑われる被験体由来のサンプルからの全RNAは、定量的に逆転写され、サンプル中のRNAに相補的な、標識された標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供する。次いで、標的オリゴデオキシヌクレオチドは、RNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズされ、サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する。結果は、サンプル中の遺伝子の発現パターンを表す、サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルである。ハイブリダイゼーションプロファイルは、サンプルからの標的オリゴデオキシヌクレオチドの、マイクロアレイにおけるBPTF特異的プローブオリゴヌクレオチドへの結合に由来するシグナルを含む。プロファイルは、結合の存在又は不在として記録され得る(シグナル対ゼロシグナル)。典型的には、記録されたプロファイルは、各ハイブリダイゼーションからのシグナルの強度を含む。プロファイルは、対照サンプルから生成されたハイブリダイゼーションプロファイルと比較される。シグナルにおける変化は、被験体における化学療法応答を示す。
【0111】
遺伝子発現を測定する他の技術はまた、当技術分野の技能の範囲にあり、RNA転写及び分解の速度を測定する様々な技術、例えばRnase保護アッセイ、核ランオン(Nuclear run-on)、スロットブロッティングなどを含む。
【0112】
別の実施形態において、本開示は、被験体においてガンの存在を予測する方法を提供する。本方法は、被験体由来の生物学的サンプルにおいて、1つ以上の対照サンプル由来のBPTFの発現と比較して、BPTFが、過剰発現又は過少発現(under-expressed)されているかいないかを決定するステップを含む。特定の実施形態において、対照生物学的サンプルと比較した、被験体の生物学的サンプル由来のBPTFの過剰発現のレベルは、被験体のサンプルが悪性であるかどうかを示す。ガンは、例えば、GBM、黒色腫又は乳ガンであってよい。
【0113】
さらに別の実施形態において、本開示は、被験体においてガンの進行を決定する方法を提供する。本方法は、ガンを有する患者から様々な時点に得た生物学的サンプルからのBPTFの発現レベルを測定するステップを含み、異なる時点のサンプル間のBPTFの発現レベルにおける変化は、被験体におけるガンの進行又はガンからの回復を示す。特定の実施形態において、BPTFの発現のレベルがより早い時点とより遅い時点との間で増加している場合、このことは、被験体のガンがガンのより後期へ進行していることを示す。代替的な実施形態において、BPTFの発現のレベルがより早い時点とより遅い時点との間で減少している場合、このことは、被験体のガンが寛解の過程にあることを示す。さらなる実施形態において、前記ガンは黒色腫、乳ガン又はGBMである。
【0114】
さらに別の実施形態において、本開示は、ガンを有する被験体の生存率を決定する方法を提供する。本方法は、ガンを有する患者から様々な時点に得た生物学的サンプルからのBPTFのレベルを測定するステップを含み、異なる時点のサンプル間のBPTFのレベルにおける変化は、被験体の生存率の増加又は減少を示す。特定の実施形態において、BPTFの発現又は過剰発現のレベルがより早い時点とより遅い時点との間で増加している場合、このことは、被験体の生存率が減少していることを示す。代替的な実施形態において、BPTFのレベルがより早い時点とより遅い時点との間で減少している場合、このことは、被験体の生存率が向上していることを示す。さらなる実施形態において、前記ガンは黒色腫、乳ガン又はGBMである。BPTFのレベルは、タンパク質検出、DNA検出技術及びRNA発現の測定を通して決定され得る。
【0115】
別の実施形態において、本開示は、ガンを治療する方法を提供し、該方法は、BPTFの発現又は活性を阻害する有効量の薬剤を投与することを含む。
【0116】
用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、本明細書で使用される場合、疾患症状の開始を阻止若しくは遅らせること、並びに/又は疾患若しくは状態の症状の重症度若しくは頻度を低下させることを含め、疾患若しくは状態、例えば黒色腫に関連した症状を改善することを指す。用語「被験体」及び「個体」は、動物、例えば哺乳動物、例えば限定されないが霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシの種、ヒツジの種、ウマの種、イヌの種、ネコの種、げっ歯類の種、若しくはマウスの種を含むことが本明細書において定義される。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0117】
本明細書で使用される場合、BPTF阻害剤の「有効量」は、ガンを患っている被験体におけるガン細胞の増殖又は侵襲性を阻害するのに十分な量である。当業者は、被験体のサイズ及び体重; 疾患の侵入の程度; 被験体の年齢、健康及び性別; 投与経路; 並びに投与が局所的か全身的かなどの因子を考慮することによって、所定の被験体に投与されるBPTF阻害剤の有効量を容易に決定することができる。
【0118】
阻害性BPTF薬剤を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTF発現を減少させる薬剤を含む組成物によって治療され得るガンは、血管新生されていない若しくはまだ実質的に血管新生されていない腫瘍、並びに血管新生された腫瘍を含む。ガンは、非固形腫瘍(例えば白血病及びリンパ腫)からなってよく、又は固形腫瘍であってもよい。
【0119】
特定の実施形態において、本開示は、被験体において黒色腫、乳ガン又はGBMなどのガンを治療する方法を提供し、本方法は、有効量の、BPTFの発現又は活性を阻害する薬剤を投与することを含む。別の実施形態において、薬剤はshRNAである。別の実施形態において、薬剤は二本鎖miRNA模倣体である。miRNA模倣体技術は、当技術分野において周知である。例えば、Wang, Z., 2009, miRNA mimic technology, In MicroRNA Interference Technologies, 93-100頁, Springer-Link Publicationsを参照のこと。別の実施形態において、薬剤はオリゴヌクレオチドベースのBPTF薬物である。
【0120】
BPTFに対するshRNA又はmiRNA分子をコードする発現ベクターは、ガンの治療又は阻止のために被験体の細胞に送達され得る。核酸分子は、それらが取り込まれることができ、かつ、治療上有効レベルが達成され得るように有利に発現される形態で、被験体の細胞に送達される。BPTF shRNAを発現することができる発現ベクターは、様々な業者から市販されている。
【0121】
BPTF発現を減少させる阻害性核酸剤を含むポリヌクレオチドを細胞に送達する方法は、リポソーム、ポリマー、ミクロスフェア、遺伝子療法ベクター、修飾核酸(例えば、電荷中和核酸)及び裸のDNAベクターなどの送達系を使用することを含む。
【0122】
形質導入ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルス)ベクターは、とりわけそれらの感染の高い効率並びに安定な組み込み及び発現を理由として、体細胞遺伝子療法のために用いることができる(例えば、Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430 (1997); Kido et al., Current Eye Research 15:833-844 (1996); Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649 (1997); Naldini et al., Science 272:263-267 (1996); 及びMiyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319 (1997)を参照されたい)。例えば、BPTFに対する阻害性核酸をコードするポリヌクレオチドは、レトロウイルスベクターにクローニングすることができ、その発現は、内因性プロモーターから、レトロウィルスの長い末端反復から、又は目的の標的細胞種に特異的なプロモーターから駆動され得る。使用できるその他のウイルスベクターは、例えば、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、又はヘルペスウイルス、例えばエプスタインバーウイルスを含む(例えば、Miller, Human Gene Therapy 15-14 (1990); Friedman, Science 244:1275-1281 (1989); Eglitis et al., BioTechniques 6:608-614 (1988); Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61 (1990); Sharp, The Lancet 337:1277-1278 (1991); Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36(31):1-322 (1987); Anderson, Science 226:401-409 (1984); Moen, Blood Cells 17:407-416 (1991); Miller et al., Biotechnology 7:980-990 (1989); Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990 (1993); 及びJohnson, Chest 107:77S-83S (1995)のベクターも参照されたい)。レトロウイルスベクターは特に十分に開発されていて、臨床状況で用いられている(Rosenberg et al., N. Engl. J. Med 323:370 (1990); Anderson et al., 米国特許第5,399,346号; Gruber et al., 米国特許公開第2011/0287020A1号)。ウイルスによらない手法も、新生物を有すると診断された患者の細胞への、BPTFに対する阻害性核酸に基づいた治療剤の導入のために用いることができる。例えば、BPTFに対する阻害性核酸を含むポリヌクレオチドは、カチオン性脂質(Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413 (1987); Ono et al., Neuroscience Letters 17:259 (1990); Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278 (1989); 及びStaubinger et al., Methods in Enzymology 101:512 (1983)); アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wu et al. Journal of Biological Chemistry 263:14621 (1988); Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985 (1989))の存在下で核酸を投与することによって、又は手術条件下でマイクロインジェクションによって(Wolff et al., Science 247:1465 (1990))細胞へ導入することができる。BPTFに対する阻害性核酸を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTF発現を阻害する薬剤は、リポソーム及びプロタミンと組み合わせて投与され得る。
【0123】
別の実施形態において、本開示は、黒色腫などのガンの治療のための、BPTFの発現を阻害する、BPTFに対する阻害性核酸を含むポリヌクレオチドを含む治療組成物を提供する。別の実施形態において、本開示は、BPTFの発現を阻害する薬剤を含む医薬組成物を提供する。
【0124】
BPTFに対する阻害性核酸を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTFの発現を阻害する薬剤は、医薬組成物の一部として投与され得る。医薬組成物は、好ましくは滅菌であり、被験体への投与に適した重量又は体積の単位中に治療上有効量の、BPTF阻害性核酸を含むポリヌクレオチド分子及び/又はBPTFの発現を阻害する薬剤を含有する。
【0125】
BPTF阻害性核酸を含む治療用ポリヌクレオチド分子及び/又はBPTFの発現を阻害する薬剤は、単位投薬形態において製薬上許容される担体と投与されてよい。従来の薬学慣行を用いて、ガンに罹患している患者に化合物を投与するための適切な製剤又は組成物を提供し得る。
【0126】
担体は、本明細書で使用される場合、使用される投薬量及び濃度において、それに暴露される細胞又は哺乳動物に対して無毒性である、製薬上許容される担体、添加剤、又は安定剤を含む。生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容される担体の例は、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸及び他の有機酸; 抗酸化剤、例えばアスコルビン酸; 低分子量(約10残基未満)のポリペプチド; タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン; 親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン; アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジン; 単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、若しくはデキストリン; キレート剤、例えばEDTA; 糖アルコール、例えばマンニトール若しくはソルビトール; 塩形成対イオン、例えばナトリウム; 並びに/あるいは非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)を含む。
【0127】
BPTF阻害性核酸を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTFの発現を阻害する薬剤はまた、例えば界面重合によって調製したマイクロカプセル中に、それぞれ例えばヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン-マイクロカプセル並びにポリ(メチルメタシレート)マイクロカプセル中に、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルジョン中に捕捉されてもよい。in vivo投与のために使用される製剤は滅菌でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通したろ過によって容易に達成される。持続放出調製物を調製してもよい。持続放出調製物の好適な例は、BPTF阻害性核酸を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTF発現を阻害する薬剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、該マトリックスは、造形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用マイクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸は、100日を超えて分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短期間、分子の放出を可能にする。
【0128】
別の実施形態において、BPTF阻害性核酸を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTFの発現を阻害する薬剤を含む医薬組成物は、他の治療剤と併用して投与される。他の治療剤の投与に関する「併用」とは、BPTF阻害性核酸を含むポリヌクレオチド及び/又はBPTFの発現を阻害する薬剤を含む医薬組成物の前に、それと同時に又はその後に投与され得る薬剤を指す。
【0129】
別の実施形態において、本開示は、ガン及び/又はガンの進行を有する被験体の可能性を決定するためのキットを提供し、前記キットは、(a)BPTFに相補的なオリゴヌクレオチド; 及び(b)場合により、前記オリゴヌクレオチド及びBPTFの間のハイブリダイゼーションの形成のための試薬を含む。別の実施形態において、キットは場合により、被験体に由来する生物学的サンプル中のマーカーの核酸分子レベルをモニターするための指示書を含む。別の実施形態において、キットは、プライマー、プローブ、又は他の検出試薬を含有する滅菌容器を含む; そのような容器は、箱、アンプル、瓶、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック(blister-pack)又は当技術分野で公知の他の適切な容器形態であってよい。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は核酸を保持するのに適切な他の材料から作られていてよい。説明書は、一般に、本明細書に記載されるプライマー若しくはプローブの使用並びにガンの診断におけるそれらの使用に関する情報を含む。好ましくは、キットは、本明細書に記載される診断アッセイにおいて記載される試薬の任意の1つ以上をさらに含む。他の実施形態において、説明書は、以下の少なくとも1つを含む: プライマー若しくはプローブの記載; ガンの診断のための同封された材料を使用する方法; 事前注意; 警告; 指示; 臨床若しくは調査研究; 及び/又は参考資料。説明書は、容器に直接印刷されてよく(存在する場合)、又は容器に貼られたラベルとして、又は容器内若しくは容器と共に供給される別のシート、パンフレット、カード若しくはフォルダーとしてあってもよい。
【0130】
別の実施形態において、本開示は、BPTFの発現レベルを決定するための装置を提供し、該装置は固体支持体を含み、ここで、該固体支持体の表面はBPTFに相補的なオリゴヌクレオチドに連結される。一実施形態において、装置はマイクロアレイである。固体支持体の例は、限定されないが、核酸を結合するために使用される、ガラス又はニトロセルローススライドを含む。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)ガンの予後判断の方法であって、以下:
(i)被験体から生物学的サンプルを得るステップ、
(ii)被験体のサンプル中のBPTFのレベルを測定するステップ、
(iii)被験体のサンプル中のBPTFのレベルを、1つ以上の対照生物学的サンプルからのBPTFの平均レベルと比較するステップ、
(iv)対照におけるBPTFの平均レベルと比較して、BPTFについてより低い(又はより高い)レベルを有することに基づいて、被験体がガンを有し得るという予後判断を提供するステップ
を含む、方法。
(2)ガンが、黒色腫、乳ガン及び脳腫瘍からなる群より選択される、(1)に記載の方法。
(3)被験体の生物学的サンプルが、組織生検からのものである、(1)に記載の方法。
(4)1つ以上の対照生物学的サンプルが、良性母斑の組織生検からのものである、(2)に記載の方法。
(5)対照生物学的サンプルが、被験体に由来するサンプルを含む、(4)に記載の方法。
(6)対照生物学的サンプルが、被験体に由来しないサンプルを含む、(4)に記載の方法。
(7)被験体がガンを有するかどうかを決定する方法であって、以下:
(i)被験体から生物学的サンプルを得るステップ、
(ii)被験体のサンプル中のBPTFのレベルを測定するステップ、
(iii)被験体のサンプル中のBPTFのレベルを、1つ以上の対照生物学的サンプルからのBPTFの平均レベルと比較するステップ、
(iv)対照におけるBPTFの平均レベルと比較して、BPTFについて有意により低い(又はより高い)レベルを有することに基づいて、被験体がガンを有するかどうかを決定するステップ
を含む、方法。
(8)ガンが、黒色腫、乳ガン及び脳腫瘍からなる群より選択される、(7)に記載の方法。
(9)被験体の生物学的サンプルが、組織生検からのものである、(7)に記載の方法。
(10)1つ以上の対照生物学的サンプルが、良性母斑の組織生検からのものである、(7)に記載の方法。
(11)対照生物学的サンプルが、被験体に由来するサンプルを含む、(10)に記載の方法。
(12)対照生物学的サンプルが、被験体に由来しないサンプルを含む、(10)に記載の方法。
(13)被験体におけるガンが進行中であるか又は寛解期にあるかを決定する方法であって、以下:
(i)第一の時点において被験体から生物学的サンプルを得るステップ、
(ii)第一の時点からの被験体のサンプル中のBPTFのレベルを測定するステップ、
(iii)第二の時点において被験体から生物学的サンプルを得るステップ、
(iv)第二の時点からの被験体のサンプル中のBPTFのレベルを測定するステップ、
(v)第一の時点のBPTFのレベルを、第二の時点のレベルと比較するステップ、及び
(vi)2つの時点のBPTFのレベルにおける変化に基づいて、ガンが進行中であるか又は回復期にあるかを決定するステップであって、第一の時点と第二の時点との間のBPTFレベルにおける増加によって、ガンが寛解期にあることが示され、第一の時点と第二の時点との間のBPTFレベルにおける増加によって、ガンが進行中であることが示される、ステップ
を含む、方法。
(14)ガンが、黒色腫、乳ガン及び脳腫瘍からなる群より選択される、(13)に記載の方法。
(15)生物学的サンプルが、組織生検からのものである、(13)に記載の方法。
(16)第一のサンプルを得た後に、被験体に抗ガン治療剤を投与するステップをさらに含む、(13)に記載の方法。
(17)BPTFレベルが増加した場合に、被験体にBPTF阻害剤を投与するステップをさらに含む、(13)に記載の方法。
(18)ガンを有する被験体の生存率の予後判断を提供する方法であって、以下:
(i)第一の時点において被験体から生物学的サンプルを得るステップ、
(ii)第一の時点からの被験体のサンプル中のBPTFのレベルを測定するステップ、
(iii)第二の時点において被験体から生物学的サンプルを得るステップ、
(iv)第二の時点からの被験体のサンプル中のBPTFのレベルを測定するステップ、
(v)第一の時点のBPTFのレベルを、第二の時点のレベルと比較するステップ、及び
(vi)2つの時点のBPTFのレベルにおける変化に基づいて、被験体の生存率の予後判断を提供するステップであって、第一の時点と第二の時点との間のBPTFレベルにおける増加によって、被験体について低い生存率が示され、第一の時点と第二の時点との間のBPTFレベルにおける減少によって、被験体についてより良好な生存率が示される、ステップ
を含む、方法。
(19)ガンが、黒色腫、乳ガン及び脳腫瘍からなる群より選択される、(18)に記載の方法。
(20)生物学的サンプルが、組織生検からのものである、(18)に記載の方法。
(21)被験体におけるガンを治療する方法であって、有効量のBPTF阻害性核酸、及び/又はBPTFの発現を阻害する有効量の薬剤を投与することによって、BPTFの発現を阻害するステップを含む、方法。
(22)ガンが、黒色腫、多形性膠芽腫及び乳ガンからなる群より選択される、(21)に記載の方法。
(23)BPTFの発現の阻害が、ガン細胞の増殖若しくは移動の阻害又は阻止をもたらす、(21)に記載の方法。
(24)1つ以上の追加の抗ガン治療剤と組み合わせて使用される、(21)に記載の方法。
(25)1つ以上の追加の治療剤が、白金類似体、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アンドロゲン、抗副腎剤、抗アンドロゲン剤、抗生物質、抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、代謝拮抗物質、葉酸類似体、エチレンイミン及びメチラメラミン、葉酸補給薬、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、プリン類似体、ピリミジン類似体、トポイソメラーゼ阻害剤、チミジル酸合成酵素阻害剤、抗ガン抗体、化学療法剤、脱メチル化剤、及び標的化治療剤からなる群より選択される、(24)に記載の方法。
(26)BPTF阻害性核酸を含むベクターを被験体に投与するステップを含む、(21)に記載の方法。
(27)ベクターが発現ベクターを含む、(26)に記載の方法。
(28)ベクターが、複製可能なレトロウイルスベクターを含む、(26)に記載の方法。
(29)BPTF阻害剤及び第一選択抗ガン治療剤を含む、組成物。
【実施例】
【0131】
以下の実施例は、本開示を説明することが意図され、本開示を限定することは意図されない。これらは使用され得るものの典型であるが、当業者に公知の他の手順を代わりに使用してもよい。
【0132】
細胞培養及びトランスフェクション
C8161.9及び1205-Luヒト黒色腫並びにB16-F10マウス黒色腫細胞を、記載されるように得た(Bagheri et al., 2006; Dar et al., 2011)。U251及びLN18膠芽腫細胞株を、ATCC(Manassas, VA)から購入した。C8161.9細胞を、5%胎児ウシ血清(FBS)(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を有するDMEM/F12中で増殖させ; 1205-Lu細胞を、TU2%培地中で増殖させ; B16-F10細胞を、5% FBSを有するRPMI-1640中で増殖させた。U251及びLN18を、5% FBSを有するDMEM中で増殖させた。全ての細胞を、5% CO
2を含有する大気中で37℃にて増殖させた。一過的トランスフェクションを、リポフェクタミン-2000(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)によって製造業者のプロトコールにしたがって実施した。
【0133】
プラスミド
プラスミドpcMV6-BPTF、pcMV6-Entry及びBPTF標的化shRNAベクターセット(4クローン)pGFP-V-RSを、Origene(Origene Technologies Rockville MD)から購入した。BPTF shRNA 1及びBPTF shRNA 2を、マウス細胞株に対するこのセットから使用した。BPTFを標的化するレンチウイルスベースのshRNAベクターセット(5クローン)(RHS4533_NM_0059、参照により本明細書に組み込まれる)を、Openbiosystems(Lafayette, CO)から購入した。
【0134】
RNA抽出及びcDNA合成
RNA抽出及びcDNA合成を、当技術分野で一般的な技術を用いて実施した。
【0135】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)
mRNAを、TaqMan遺伝子発現アッセイを用いて製造業者の説明書(Applied Biosystems)にしたがってアッセイした。BPTF、HPRT1、CCND2、BCL-XL、TWIST1、RAB14、CEBPB、CHI3L1、DLL3、OLIG2、PDGFRA及びBCL2に対するTaqManプローブを、Applied Biosystems(Foster City, CA)から購入した。
【0136】
細胞生存性、コロニー形成、細胞周期解析及びBRAF阻害剤処理
当技術分野で一般的な技術を用いて、記載されるように、細胞生存性及びコロニー形成を実施し、細胞周期解析を実施した。細胞を、様々な濃度のベムラフェニブで72時間、又はダブラフェニブ(Chemitek, Indianapolis, IN)で48時間又は示されるように処理した。DMSOをビヒクルとして使用した。
【0137】
ウエスタンブロット解析
ウエスタンブロット解析を実施した。標的タンパク質を、BPTF(Bethyl Laboratories Montgomery, TX)、BCL2、及びGAPDH(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、並びにERK1/2、pERK1/2、CCND2、BCL-XL、p90RSK(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)に対する特異的抗体を用いて検出した。
【0138】
レンチウイルス形質導入及び安定な細胞の作製
pLKO1-ベクターにクローニングされた選択したshRNAを、GAG/POL、REV及びVSVG遺伝子を含有する発現ベクターと共に、293T細胞に共トランスフェクションした。レンチウイルスを、トランスフェクションの48時間後に回収した。サブコンフルエントのヒト黒色腫又は膠芽腫細胞を、8μg/mlのポリブレンの存在下でそれぞれの回収したレンチウイルスで感染させ、各培養培地中で感染後48時間に1μg/mlのピューロマイシン中で選択した。B16-F10細胞を、BPTF shRNA1、BPTF shRNA 2又はNeg shRNAベクターでトランスフェクションし、安定な形質転換体を2μg/mlのピューロマイシンで選択した。
【0139】
侵襲アッセイ
腫瘍侵襲についてのマトリゲル(Matrigel)アッセイを、日常的な技術を用いて実施した。B16-F10、1205-Lu及びC8161.9細胞について、挿入チャンバーを、6mg/mlタンパク質にて15μlのマトリゲルでコーティングし、C8161.9細胞については7mg/mlタンパク質にて17μlのマトリゲルで、1205-Lu及びU251細胞株については5mg/mlタンパク質にて15μlのマトリゲルでコーティングした。
【0140】
DNase I感受性の定量
細胞を、回収し、氷冷した溶解バッファー(100mM KCL、50mM Tris-CL [pH 7.9]、50% [vol/vol] グリセロール、200mM β-メルカプトエタノール及び5mM MgCl
2)中に再懸濁し、10分間インキュベートした。懸濁液を4℃にて15分間13,000gでの遠心分離に供し、細胞をバッファーA(50mM Tris-Cl [pH 7.9]、3mM MgCl
2、0.2mM フッ化フェニルメタンスルホニル、100mM NaCl、及び1mM ジチオスレイトール)に再懸濁することによって、溶解した細胞から核を回収した。核を、バッファーA中で室温にて3分間DNase Iで消化した。次いで、サンプルをプロテイナーゼKで処理し、DNAをQIAGEN PCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて回収した。DNase処理したDNAを、BCL2及びBCL-XLに対する特異的プライマーを用いたqPCRに供した。
【0141】
組織アレイ及び免疫染色
用いた組織マイクロアレイは、パラフィンブロックから得たコア径1.0mmを用いて以前に作製した。スライドを、ホルマリン固定組織マイクロアレイから調製し、1:100希釈にて抗ヒトBPTF抗体(Bethyl Laboratories Montgomery, TX)で染色した。マイクロウェーブ抗原回収(retrieval)を10mM クエン酸バッファー、pH 6.0中で行った。内因性のペルオキシダーゼを3% H
2O
2でブロックし、さらなるブロッキングを通常のウサギ血清で実施した。一次抗体をPBS中の1.0% BSA中に希釈し、4℃で一晩適用した。抗体染色を、ビオチン標識抗ヤギIgG及びアビジン-ビオチン(Vector Laboratories, Burlingame, CA)、その後ジアミノベンジジンを用いることによって観察した。切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0142】
免疫組織化学的染色のデジタル評価
組織マイクロアレイ切片の全体スライド画像を、Mirax MIDI高解像度スキャニングシステム(Carl Zeiss Micro Imaging, Jena, Germany)を用いて撮った。デジタル化プロセスを、Zeiss Plan-Apopchromat 20x/.8NA対物(Carl Zeiss Optronics GmBh, Oberkochen, Germany)を用いてMarlin CCDカメラ(Allied Vision Technologies GmbH, Germany)を使用してソフトウェアによって制御し、.32ミクロン/ピクセルの解像度で画像を作製した。同定可能なメラノサイト病変を有する領域を評価のために選択し、免疫組織化学的染色を、核(ヘマトキシリン染色した)及び細胞質(茶色免疫染色した)を認識する2種の異なるフェーズ測定マスク(phase measurement mask)を有するセグメンテーション特性を適用することによって計算した。画像解析を、コンピュータによって補助される色セグメンテーションによって実施し、陽性色発現ピクセルのパーセンテージを決定した。各陽性ピクセルについて、強度(赤、緑及び青色値の平均として定義される)を、続く解析のために計算した。黒色腫アウトカムにおける様々な予後因子の有意性を評価するために使用した統計的方法は、以前記載された(Bagheri et al., 2006)。
【0143】
遺伝子発現プロファイリング
全RNAを、RNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて細胞から抽出した。10μgの全RNAを、ユニバーサルマウス参照RNA(Stratagene, Santa Clara, CA)と並行して、SuperScript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いる、オリゴ(dT)によってプライムした重合によってアミノアリル修飾cDNAに変換し、Cy3又はCy5のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(Amersham Pharmacia, Pittsburgh, PA)にカップリングさせ、次いで記載されたように(Haqq et al., 2005)マイクロアレイスライドにハイブリダイズさせた。線形正規化、対数(底2)変換、及び教師あり(supervised)階層的クラスタリングの後、得られたクラスターデータ表を、マイクロアレイソフトウェアパッケージの有意性解析に送った。5%の予測擬陽性が含まれるように、デルタを、アウトプット遺伝子リストを制限するために選択した。
【0144】
FISH及び顕微鏡
BACクローンRP11-304I14、RP11-1134M2、RP11-29C18及びCTD-2314M10を用いて、17q24.3上のBPTF遺伝子座を検出した(2009年2月 UCSC Genome Browser, http://genome.ucsc.eduのフリーズ)。全てのクローンを、Children's Hospital of Oakland Research Institute (CHORI)から得た。BAC DNAを、Large-Constructキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて調製し、記載されたように(Wiegant and Raap, 2001)Alexa Fluor 488 dUTP(Molecular Probes, Green Island, NY)を用いてニック翻訳によって標識した。組織解析前に、全てのプローブの質及びマッピングを、染色体17に対する市販のセントロメアプローブ(Openbiosystems, Lafayette, CO)と組み合わせた、通常の中期スプレッド(metaphase spread)に対するハイブリダイゼーションによって確かめた。組織切片に対するハイブリダイゼーションを、以前記載されたように実施した(Wiegant and Raap, 2001)。画像を、Axiovisionソフトウェア(Zeiss, Jena, Germany)によって制御されるZeiss Axio Imager Z2を用いて得た。
【0145】
FISH結果の分析
FISHシグナルを評価し、いくつかのZスタック層を有する画像から手動で数えた。各症例から最低30個の核を評価し、シグナルを以前に記載されたガイドラインにしたがって解釈し(Munne et al., 1998)、2、3、4又はそれ以上として記録した。
【0146】
動物研究
全ての動物ケアは、Animal Research and California Pacific Medical Center Research InstituteにおけるUniversity of California San Francisco Committeeによって承認された組織ガイドライン及びプロトコールにしたがった。45日齢の雌C57Bl/6(Charles River)の群を、尾静脈注射によって30,000個のB16-F10 BPTF安定細胞で接種した。1x10
6個の1205-Lu細胞をヌードマウスの尾静脈に注射した。皮下注射について、1x10
6個の1205-Lu、B16-F10、若しくはC8161.9細胞並びに2x10
6個のU251細胞をそれぞれ注射した。
【0147】
統計解析
全ての定量データは、少なくとも3重のサンプルの平均を、又は示されるように表す。エラーバーは、平均の標準偏差を表す。統計的有意性を、Studentのt検定又はMann-Whitney検定によって決定し、両側p値<0.05を有意と見なした。
【0148】
BPTFノックダウンは、マウス黒色腫の増殖、in vivo成長、及び転移能を抑制する
黒色腫におけるBPTFの機能的役割を、B16-F10マウス黒色腫モデルにおいてshRNA媒介性標的化を用いて最初に評価した。BPTF発現は、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)によって決定されるように、2種の異なる抗BPTF shRNA(1及び2)によって顕著に抑制された(
図1A)。BPTF発現のshRNA媒介性抑制は、対照shRNAと比較した場合、B16-F10細胞の増殖能を大きく抑制した(
図1B)。BPTF shRNA発現細胞はまた、対照shRNA発現細胞と比較した場合、マトリゲル(Matrigel、登録商標)への侵襲の有意な低下を示した(
図7A)。BPTF shRNA発現細胞の皮下注射は、腫瘍細胞成長における有意な抑制を示した(
図1C)。C57Bl/6マウスにおけるBPTF shRNAの静脈内接種は、肺における転移性腫瘍カウントの高度に有意な低下を示した(
図1D)。これらの結果は、黒色腫の増殖及び転移能におけるBPTFの重要な役割を実証する。
【0149】
ガンにおけるBPTFの役割が特定されてないため、cDNAマイクロアレイ解析を実施して、BPTF発現の抑制後の遺伝子発現の全体的パターンを同定した。cDNAマイクロアレイ解析を、BPTF shRNA 2を安定に発現するB16-F10クローン対対照ベクターについて実施した。マイクロアレイの解析は、27個の遺伝子の発現の下方制御、及び1008個の遺伝子の過剰発現を同定した。下方制御された遺伝子は、腫瘍細胞増殖及びアポトーシスの重要な媒介因子であるBcl-xl及びCcnd2を含んだ。B16-F10黒色腫におけるこれらの遺伝子(及びBcl-2)の差次的発現を、qRT-PCR及びウエスタンブロット解析によって確かめた(
図1E〜F)。
【0150】
BPTFノックダウンは、ヒト黒色腫の増殖、in vivo成長、及び転移能を抑制する
マウス黒色腫細胞におけるBPTFについての機能的役割を実証したため、ヒト黒色腫の進行における役割を解析した。マウス研究で使用したものとは異なるshRNA(BPTF shRNA 3)を用いたBPTFの標的化は、突然変異体BRAFを有する1205-Luヒト黒色腫細胞におけるBPTF発現の顕著な抑制をもたらした(
図2A)。BPTFの抑制は、G1/G0細胞周期停止を導き、対照shRNAベクターと比べた場合、S期の顕著な短縮をもたらした(
図2B)。BPTFノックダウンは、細胞生存(
図2C)及びコロニー形成能(
図2D、p<0.02)の抑制によって証明されるように、黒色腫細胞の増殖能に有意な影響を有し、1205-Lu細胞のアポトーシス指数の顕著な増加を伴った(
図2E、p<0.02)。黒色腫細胞の増殖及び生存に対する同様の影響が、ヒトBPTFを標的とする2種の他のshRNAを用いて観察された。BPTFの抑制はまた、マトリゲル(Matrigel、登録商標)への1205-Lu侵襲性の有意な減少を導いた(
図7B)。ヌードマウスにおける皮下腫瘍細胞成長は、対照shRNA発現細胞と比べて、BPTF shRNA発現細胞において、大幅に抑制された(
図2F)。最後に、1205-Lu細胞を静脈内接種すると、BPTF発現の抑制は、ヌードマウスの肺において転移性腫瘍負荷の66%の低下をもたらした(
図2G)。これらの抗腫瘍効果は、野生型BRAFを有する、高度に悪性(aggressive)のC8161.9黒色腫細胞株においてBPTFのshRNA媒介性抑制後に確かめられた(
図8A〜E)。まとめると、これらの研究は、BPTFが、BRAF野生型及び突然変異体の両方の黒色腫細胞株の増殖及び転移能の促進において重要な役割を果たすことを実証する。
【0151】
BPTFは、BCL2、BCL-XL、CCND2の発現、及びERK1/2経路を調節する
BPTFの切断型であるFAC1は、配列特異的DNA結合活性を示す。BCL2及びBCL-XLのプロモーター領域の解析は、BPTFについて可能性のあるコンセンサス配列の存在を示した。これらの遺伝子のプロモーター領域におけるDNase I処理の感受性を、対照対BPTF shRNAを安定に発現する2種のヒト黒色腫細胞株において評価した。DNase I過感受性は、転写因子結合、又はヌクレオソーム位置決定若しくはパッキングにおける変化に起因し得る(Gross and Garrard, 1988)。qPCR解析を用いて、BCL2及びBCL-XL内の推定BPTF結合部位を含有するDNA領域を定量し、これが、BPTF shRNAを発現する1205-Lu及びC8161.9の両方のヒト黒色腫細胞において大幅に低下したレベルで存在することが見出された(
図3A〜B)。したがって、BCL2及びBCL-XLのプロモーター領域は、低下したBPTF発現を有するヒト黒色腫細胞においてDNase I処理に対して感受性の増加を示した。次いで、BPTF shRNA発現後に、ヒト黒色腫細胞におけるmRNAレベルでのこれらの遺伝子の下方制御を確かめた(
図3C〜D)。これらの遺伝子は生存促進(pro-survival)経路を媒介するため、BPTF発現によって調節される増殖性シグナル伝達経路を調べ、BPTF shRNA発現黒色腫細胞におけるpERK1/2(Thr202/Tyr204)のレベルの大幅な抑制が観察された(
図3E〜F)。pERKの下流標的であるp90RSK(Ser380)もBPTFノックダウンによって抑制された。ERK経路のさらなるエフェクターを表すBCL2及びBCL-XL(Boucher et al., 2000)も、1205-Lu及びC8161.9ヒト黒色腫細胞において、CCND2に加えて、BPTFノックダウンによって調節された(
図3E〜F)。BPTF shRNAを安定に発現する黒色腫細胞におけるERK1/2又はBCL-XLのいずれかのcDNAの過剰発現は、BPTFノックダウン後に細胞生存の抑制を逆転させ(reverse)、このことは、BPTFの増殖促進機能がERK1/2及びBCL-XLによって少なくとも部分的には媒介されることを示す(
図9)。
【0152】
逆に、1205-Lu細胞におけるBPTFの過剰発現は、増殖能の顕著な増加をもたらし(
図10A)、mRNA及びタンパク質レベルでのCCND2、BCL-XL及びBCL2の発現における上方制御を伴った(
図10B〜C)。
【0153】
メラノサイト新生物におけるBPTFレベルの定量
マウス及びヒト黒色腫の増殖及び転移の促進におけるBPTFの機能的役割を決定したため、BPTF発現の免疫組織化学的解析を、311人のヒト黒色腫患者の組織マイクロアレイコホートにおいて実施し(Rangel et al., 2006)、デジタル画像解析を用いてBPTFレベルを定量した(
図11)(Kashani-Sabet et al., 2009)。カプラン・マイヤー解析によって、高レベルのBPTF発現は、遠隔転移のない生存(DMFS、p=0.03、
図4A)及び疾患特異的生存(DSS、p=0.008、
図4B)の低下を顕著に予測した。多変量Cox回帰分析によって、BPTF発現の増加は、DMFS(表1)及びDSS(表2)の独立した予測因子であった。したがって、BPTF過剰発現は、ヒト黒色腫における遠隔転移の発達及び生存の低下と直接相関し、生存の独立した予測因子であった。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
黒色腫におけるBPTFコピー数を決定するために、間期蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を、81個の良性母斑サンプル及び77個の原発性黒色腫について実施した。全ての母斑は2コピーのBPTF遺伝子を有したが、黒色腫の64%は2コピー超有し(2〜2.9コピー)、22%は3コピー超有し(3〜3.9コピー)、14%は4コピー超有した(表3)。
図4C〜Dは、低及び高BPTFコピー数の実例となる代表的FISH顕微鏡写真を示す。これらの知見は、BPTFコピー数が原発性黒色腫の顕著な割合において増加することを示し、その発ガンにおける役割をさらに支持する。
【0157】
【表3】
【0158】
BPTFは、選択的BRAF阻害剤に対する感受性を調節する
ERK1/2は、MAPキナーゼ経路内のBRAFの下流標的であり、選択的BRAF阻害剤での処理後に顕著に抑制される(Greger et al., 2012; Joseph et al., 2010)。ヒト黒色腫細胞におけるBPTFのshRNA媒介性抑制後の活性化ERK1/2の下方制御を考えて、BPTF発現のレベルを、選択的BRAF阻害剤に対する感受性を決定するために評価した。BPTF shRNA発現1205-Lu細胞は、対照shRNA発現細胞と比べて、ベムラフェニブ処理に対して3.2倍感受性であり(
図5A)、ダブラフェニブ処理に対して2.8倍感受性であった(
図5B)。逆に、1205-Lu細胞におけるBPTFの過剰発現は、ベムラフェニブ又はダブラフェニブ処理に対するそれらの感受性を顕著に低減した(それぞれ2.5〜3.4倍)(
図5C〜D)。BPTF発現の調節後におけるヒト黒色腫細胞の選択的BRAF阻害に対する感受性の調節を、BRAF突然変異体発現LOX細胞株において確かめた(
図12)。
【0159】
さらに、選択的BRAF阻害剤ベムラフェニブ又はダブラフェニブに対する進行の開始前及び進行後に8人の転移性黒色腫患者から得られたサンプルを、遺伝子型決定、免疫組織化学的染色、及びFISH解析に供した。5人の患者をベムラフェニブで処置し、3人をダブラフェニブで処置した。標的療法に対する獲得耐性後、5人の患者は野生型NRASを有し、3人はヘテロ接合NRAS突然変異(コドン-61)を有した。ベムラフェニブで処置した患者において、BPTF発現の免疫組織化学的解析は、BPTF発現がBRAF阻害剤処置前に転移性標本において均質であったのに対し、進行中の標本では、1つのクローンの細胞はBPTF発現がなく(処置に応答する細胞を示す)、別のクローンの細胞は高レベルのBPTF発現を有し(処置に耐性がある細胞を示す)、BPTF発現が不均質であったことを示した(
図5E〜F)。メラノサイト抗原MART1、HMB45及びチロシナーゼを標的とする抗体を用いた免疫組織化学的解析は、これらの領域の両方において陽性染色を明らかにし(
図5G)、これらの細胞のメラノサイト系統を確かめた。TUNEL染色は、BPTFをほとんど発現しないか又はBPTF発現がない細胞の多くが、アポトーシスを経たことを同定した。FISH解析は、進行中標本におけるBPTFコピー数の不均質性を明らかにした(
図5H)。さらに、処置前及び進行中標本を比較した場合、平均BPTFコピー数の増加があった(2.6±1.9から3.5±2.5へ)。ベムラフェニブで処置した患者からの標本において同様の知見が示される(
図13)。全体で、8個の患者の処置後腫瘍のうち6個(75%)がBPTF発現の不均質性を特徴とした。まとめると、これらの結果は、BPTFのレベルの増加が、黒色腫患者における選択的BRAF阻害剤に対する獲得耐性を媒介し得ること、そしてこれらの薬剤に対する獲得耐性の発生の間に選択され得ることを示唆する。
【0160】
BPTFは膠芽腫進行を促進する
BPTFが他の固形腫瘍の進行に関与したかどうかの調査を実施した。メラノサイトは胎児の神経堤に由来するため、そして、BPTF発現はヒト胎児脳に豊富にあるため(Bowser et al., 1995)、これもまた神経外胚葉起源であるGBMの進行におけるBPTFの機能的役割を決定することを目的とした実験を実施した。U251ヒトGBM細胞におけるBPTF shRNA 3によるBPTF発現の安定な抑制(
図6A)は、細胞生存(
図6B)及びコロニー形成(
図6C)のアッセイによって決定されるように、増殖の顕著な低下をもたらした。BPTF発現の抑制は、S期における同時抑制を伴い(
図6D、p<0.01)、顕著なG1/G0細胞周期停止、及びアポトーシスの誘導(
図6E、p<0.02)を導いた。BPTF抑制はまた、U251細胞の侵襲性を有意に低減した(
図7C)。BPTFノックダウンは、GBM細胞においてBCL2、BCL-XL及びCCND2の発現の抑制をもたらし(
図6F〜G)、リン酸化ERK1/2及びp90RSKの顕著な抑制を伴った(
図6G)。in vivo研究は、BPTF抑制時の皮下接種後にU251腫瘍細胞成長の高度に有意な低下を示した(
図6H)。LN18細胞におけるBPTF細胞の抑制後に同様の影響が観察された(
図14)。したがって、これらの結果は、黒色腫細胞において同定されたのと類似した遺伝子及び経路を活性化することによる、膠芽腫進行の促進におけるBPTFの機能的役割を実証する。
【0161】
最後に、BPTF発現が高められるGBMの分子サブタイプを同定した。TCGAデータセットの解析は、BPTF過剰発現が、GBMの前神経サブセットにおいて最もよく生じることを明らかにした(Verhaak et al., 2010)。この観察を確かめるために、いくつかの確立された分類マーカー(間葉マーカーCEBPB、CHI3L1、TWIST1、並びに前神経マーカーDLL3、OLIG2及びPDGFRA)の発現のために、前神経又は間葉と分類された14個のGBMの独立したサンプルにおいてBPTF発現レベルを観察した。BPTF発現(qRT-PCR解析によって決定される)は、GBMの前神経サブセットにおいて間葉サブセットに対して顕著により高かった(
図6I)。
【0162】
いくつかの実施形態が本明細書に記載された。それにもかかわらず、様々な改変を、本開示の精神及び範囲から逸脱することなくなし得ることが理解される。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内にある。