(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567031
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】移動無線セル内における移動無線ネットワーク加入者局間の通信を整理するための方法、並びに、本発明に係る方法を使用する場合における移動無線ネットワーク加入者局及び移動無線ネットワーク管理ユニット
(51)【国際特許分類】
H04W 4/46 20180101AFI20190819BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20190819BHJP
H04W 28/26 20090101ALI20190819BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20190819BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20190819BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
H04W4/46
H04W28/06
H04W28/26
H04W92/18
H04W72/04 131
H04W72/04 132
G08G1/09 F
G08G1/09 H
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-245294(P2017-245294)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-107802(P2018-107802A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】10 2016 225 977.6
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2017 203 905.1
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ヘーン
(72)【発明者】
【氏名】エアンスト ツィエリンスキ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クヴォチェク
(72)【発明者】
【氏名】テオドール ブブルザン
(72)【発明者】
【氏名】ローマン アリエイエフ
【審査官】
大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/194279(WO,A1)
【文献】
特開2011−191814(JP,A)
【文献】
特表2015−508598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動無線セル(MFZ)内における移動無線ネットワーク加入者局(30,33)間の通信を整理するための方法であって、
前記移動無線セル(MFZ)内における移動無線ネットワーク管理ユニット(24)、特に基地局(20)のスケジューラが、無線リソースの割り当てを実施する、
方法において、
前記移動無線ネットワーク管理ユニット(24)によって、前記移動無線セル(MFZ)について複数のサブ無線領域(D2DSFB)を定義し、
前記サブ無線領域(D2DSFB)内では、複数の移動無線加入者局(30)が相互間の直接通信のために同一の無線リソースを並列動作で利用することが許容され、
2つの加入者局(30)の間での前記直接通信は、少なくとも2つの車両の間での車両直接通信に相当し、
前記車両直接通信のために、「ビームフォーミング」技術とも称される、ビームアライメント手段を用いたアンテナ技術を使用し、
前記車両直接通信を実施する前記車両(30)は、ビームアライメント(BD)の設定に関する情報を前記基地局(20)に伝送する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ビームアライメント(BD)の設定に関する情報のために、ルックアップテーブルを利用し、
前記ビームアライメント(BD)の設定に関する情報を伝送する際に、前記ルックアップテーブルの対応するエントリに対するインデックス値を伝送する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
都市の建築物の領域における前記サブ無線領域(D2DSFB)は、地図データを用いて、建築物又は植栽物によって局地的に遮蔽されている地理的領域に対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記地理的領域は、個々の道路に対応する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
サブ無線領域(D2DSFB)を決定するために、前記直接通信を実施する加入者局(30)の並列動作によって干渉される可能性のある加入者局を識別する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移動無線ネットワーク管理ユニット(24)の側で、識別された前記加入者局(30)に特別な測定間隔を割り当て、
前記測定間隔で、前記識別された加入者局(30)が測定を実施し、その一方で、前記並列動作のために試験される加入者局(30)が対応するアップリンク試験信号を送信する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定は、特に前記アップリンク試験信号の受信信号強度又は干渉電力の測定に関連する、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
直接通信を計画している前記加入者局(30)は、特にサービス種類、サービス品質、及び/又は、当該加入者局(30)の無線特性に関して、前記直接通信に関する当該加入者局(30)の情報を前記基地局(20)に伝送する、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記無線特性に関する前記情報は、特に位置、送信電力、アンテナ種類、及び/又は、使用されている動作方式に相当する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法において使用するための移動無線ネットワーク加入者局において、
前記移動無線ネットワーク加入者局(30)は、前記移動無線ネットワーク管理ユニット(24)から、実施すべき所定の測定に関する情報を受信し、前記測定の測定結果を前記移動無線ネットワーク管理ユニット(24)に返送するように構成されており、
前記車両直接通信のために、ビームアライメント手段を用いたアンテナ技術が装備された、車載コンポーネントとしての無線通信モジュール(31)を有し、
前記無線通信モジュール(31)は、前記ビームアライメント(BD)の設定に関する情報を基地局(20)に伝送するように構成されている、
ことを特徴とする移動無線ネットワーク加入者局。
【請求項11】
請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法において使用するための移動無線ネットワーク管理ユニットにおいて、
前記移動無線ネットワーク管理ユニット(24)は、実施すべき所定の測定に関する情報を前記移動無線ネットワーク加入者局(30)に送信し、前記測定の測定結果を前記移動無線ネットワーク加入者局(30)から受信し、前記測定結果に基づいて前記サブ無線領域(D2DSFB)を画定するように構成されており、
前記サブ無線領域(D2DSFB)内では、複数の移動無線加入者局(30)が相互間の前記直接通信のために同一の無線リソースを並列動作で利用することが許容され、
前記移動無線ネットワーク管理ユニット(24)は、前記ビームアライメント(BD)の設定に関する情報を、前記車両直接通信のためにビームアライメント手段を用いたアンテナ技術が装備された車両から受信し、前記サブ無線領域(D2DSFB)を画定するために前記情報を考慮するように構成されている、
ことを特徴とする移動無線ネットワーク管理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
無線通信モジュールが装備された車両同士が公道上で相互に直接的に通信するシナリオでは、協調運転の場合であれ自律運転の場合であれ、セーフティクリティカルな用途に対する非常に高い信頼性が極めて重要である。車車間の直接通信に関する技術は、既に開発されており、発展し続けている。一例として、ここでは特にWLAN標準IEEE802.11pに準拠したバリエーションである、WLANを介した車両直接通信が挙げられる。この技術により、車両間の通信のためにアドホックWLANネットワークが構築される(「アドホックドメイン」の領域内での通信)。
【背景技術】
【0002】
しかしながら、移動無線ネットワークの分野においても車両通信が可能である。もっとも、この技術では、基地局が車両から車両にメッセージを中継しなければならない。これは、いわゆる「インフラストラクチャドメイン」において通信が実施される分野である。今後の移動無線世代では、直接車両通信も可能になる。このバリエーションは、LTE(ロングタームエボリューション)ではLTE−Vと呼ばれており、5GイニシアチブではeV2Xと呼ばれている。
【0003】
典型的な通信シナリオは、安全性シナリオ、トラフィック効率性シナリオ、及び、インフォテイメントである。安全性の分野に関しては、「協調型前方衝突警告(Cooperative Forward Collision Warning)」、「プリクラッシュ検知/警告(Pre-Crash Sensing/Warning)」、「危険場所警告(Hazardous Location Warning)」のシナリオが挙げられる。これらの分野では、車両同士が相互に位置、方向及び速度のような情報や、寸法及び重量のようなパラメータも交換する。伝送される別の情報は、どのようにして車両が追い越しを実施するつもりであるか、どのようにして車両が右折/左折するか等のような、協調運転にとって関心が持たれる意図情報に関する。この場合には、しばしばセンサデータが伝送される。危険な状況が存在していて運転者が反応しない場合には、自動車を自動的に減速させることができ、これによって事故は、阻止され、又は、少なくとも不可避の事故での結果ができるだけ小さく抑制される。
【0004】
車両対車両の通信は、車車間通信(Car-to-Car-Kommunikation C2C)とも呼ばれることが多い。英語では、Vehicle-to-Vehicle Communication(V2V)という用語が一般的である。この用語は、走行中の車両間での直接的な情報交換を意味する。このような移動体通信により、機能的な無線ネットワークと、新しい用途とを実現することができる。これには、路面状態、凍結、ハイドロプレーニング、事故、停車車両に関する情報のような、道路状況及び交通状況に関する適時の情報が含まれる。このセーフティクリティカルな用途では、対応する道路利用者が、ナビゲーションシステムからのデータを用いて危険場所に関する情報を送信する。
【0005】
交通流に関するさらなる情報は、信号機の現示状況、ストップアンドゴー運転、又は、建設現場での連続的な停発車等に関する指示である。駐車場検索、又は、駐車場の空き容量に関する情報も、このような車車間通信に含めることができる。さらに、英語では「プラトーニング(Platooning)」という用語で知られているインテリジェントな隊列走行が、適用例として挙げられる。この場合には、隊列の車両間、例えばトラック間の距離が、その時々の交通状況に適合され、制御される。エネルギー消費量を削減するために、隊列の車両間の距離をできるだけ短縮することが目的である。このために、隊列の車両間でメッセージを常時交換する必要がある。
【0006】
多くの場合、標準化されたメッセージが、エアインターフェースを介して車両間で交換される。現在の交通状況に関するメッセージは、いわゆるITSステーション(高度道路交通システム)において管理され、定期的に又はイベントに応じて送信される。協調認識メッセージ(Cooperative Awareness Message CAM)、分散型環境通報メッセージ(Decentralized Environmental Notification Message DENM)、信号機の現示状況及び残り時間を伝えるメッセージ(Signal Phase and Time Message SPaT)、トポロジ仕様メッセージ(Topology Specification Message TO−PO)がある。
【0007】
車両から送信される無線電信は、GPSシステムを介して特定された車両位置と、時間情報及び速度情報とを含み、さらには、交通状況に応じて他の車両に警告しなければならない領域が画定され、イベントが符号化された状態で伝送される。
【0008】
上記の列挙は、特に安全性の分野においてタイムクリティカルなデータ伝送が実施されることを示している。従って、車車間通信の信頼性が決定的に重要である。
【0009】
移動無線では、データ伝送の信頼性は、完全性(送信された全てのペイロードが受信機に到着すること)と、正確性(送信されたペイロードと、受信されたデータから復元されたペイロードとが一致すること)を意味する。このために移動無線技術では、種々の方法が使用され、例えば、周波数ダイバーシティ、空間ダイバーシティ、変調形式及び変調パラメータの有利な選択、並びに、符号化レートのような使用すべきチャネルコードの有利な選択等が使用される。
【0010】
移動無線セル内における移動無線加入者局(英語:User Equipment UE)間の通信は、UEとネットワークとの間の通信も同様に、基地局(BS)を介して制御及び実施される。
【0011】
この通信のために、ネットワーク事業者が利用できる伝送リソースの数は限られている。ロングタームエボリューションLTEのような現代の移動無線システムは、周波数多重化技術及び時間多重化技術を使用するので、伝送リソースの大きさは、時間当たり周波数(FpZ)単位の形態で表すことができる。以下では、伝送リソースは、無線チャネルリソース又は無線リソースとも呼ばれる。空いているFpZ単位がない場合には、ネットワーク事業者は、例えば基地局を介して、問い合わせられたサービスの実行を拒否しなければならない。このことは、一方では、顧客側における保証されたサービス品質(QoS)の低下につながり、他方では、ネットワーク事業者側における収益の減少又はコストの増加につながる。
【0012】
通信プロセスに対するコストをできるだけ低く抑えるためには、無線リソース(時間当たり周波数単位)を効率的に/最適に使用又は管理しなければならない。無線リソースの管理を担当する管理ユニットは、基地局に設置されている「スケジューラ」である。スケジューラは、FpZ単位をできるだけ最適に利用するために努力し、即ち、どのUEが何個のFpZ単位をいつ使用してよいかを決定する。この決定のためにスケジューラは、例えば通信需要を有するUEの数、無線接続の特性(受信品質及びUE可能性)、所望の通信のサービス要求、顧客データ等のような、通信に関連した無線セルの状態に関する情報又は知識を利用する。
【0013】
米国特許出願公開第2014/0254401号明細書(US2014/0254401A1)からは、D2D直接通信における送信電力を決定するための技術が公知であり、同技術では、それぞれのD2D送信機が、基地局eNodeBへの送信時に引き起こす干渉レベルを学習する。
【0014】
米国特許出願公開第2015/0230250号明細書(US2015/0230250A1)からは、移動無線通信のための無線リソースを、移動無線セル内におけるD2D通信に割り当て、これらの無線リソースの残りの部分を、移動無線セル内における他の通信に割り当てることが公知である。
【0015】
国際公開第2010/125427号(WO2010/125427A1)からは、リソースブロックに対して予想される干渉レベルを受信することを含む方法が公知であり、この場合、予想される干渉レベルは、リソースブロックに関連している干渉を表すデータによって、しかもリソースブロックを使用したD2D通信に基づいて表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0254401号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0230250号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/125427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の枠内で、既存の解決策が無線リソースを効率的に利用していないことが認識された。なぜなら、これらの無線リソースの管理時に、装置分類(無線技術が装備された車両のような)の可能性及び無線特性と、利用シナリオ(場所、建築物等)の可能性及び特性とが考慮されないからである。
【0018】
無線リソースをより効率的に使用するための1つの選択肢は、端末間(D2D)通信である。端末間(D2D)通信は、特に車車間通信(V2V)にとって関心が持たれている。この技術は、相互に近距離に位置するUE間での直接通信を提供する。従って、基地局を介した通信(場合によっては高帯域幅又は多数の無線リソースを必要とする)が省略される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、移動無線セル内における移動無線ネットワーク管理ユニット、特に基地局のスケジューラが無線リソースの割り当てを実施する、移動無線セル内における移動無線加入者局間の通信を整理するための方法に関する。前記方法は、前記移動無線ネットワーク管理ユニットによって、前記移動無線セルについて複数のサブ無線領域を定義し、前記サブ無線領域内では、複数の移動無線加入者局が相互間の直接通信のために同一の無線リソースを並列動作で利用することが許容される、ことを特徴とする。
【0020】
有利な手段は、都市の建築物の領域における前記サブ無線領域を、地図データを用いて、建築物又は植栽物によって局所的に遮蔽されている地理的領域に対応するように画定することに関する。前記地理的領域は、単純なケースでは、個々の道路に対応し得る。
【0021】
さらに、サブ無線領域を決定するために、直接通信を実施する他の加入者局の並列動作によって干渉される可能性のある加入者局を識別する場合には有利である。
【0022】
前記移動無線ネットワーク管理ユニットの側で、これらの識別された前記加入者局に対して特別な測定間隔を割り当て、前記測定間隔で、前記識別された加入者局が測定を実施し、その一方で、前記並列動作のために試験される加入者局が対応するアップリンク試験信号を送信する。これによって、潜在的に干渉される可能性のある加入者局における正確な条件を特定することが可能となる。
【0023】
この場合には、サブ無線領域の推定を改善するために、他の加入者局、中継局、モノのインターネット(IoT)局、及び/又は、駐車車両のような他の加入者も、測定手順に一緒に含めることができる。
【0024】
これに関連して、前記測定が、特に前記アップリンク試験信号の受信信号強度又は干渉電力の測定に関連する場合には有利である。
【0025】
前記サブ無線領域を定義するために、直接通信を計画している前記加入者局が、特にサービス種類、サービス品質、及び/又は、当該加入者局の無線特性に関して、前記直接通信に関する当該加入者局の情報を前記基地局に伝送し、これにより、測定結果に加えてこれらの情報を前記基地局で考慮することを可能にする場合にはさらに有利である。
【0026】
前記サブ無線領域を画定するために有利なさらなる情報は、干渉源の無線特性、特に位置、送信電力、アンテナ種類、及び/又は、使用されている動作方式に関する情報に関連する。
【0027】
本手段を非常に有利に適用することができる直接通信の適用分野は、2つの車両の間での車両直接通信に関連する。
【0028】
前記車両直接通信のために、「ビームフォーミング」技術とも呼ばれる、ビームアライメント手段を用いたアンテナ技術を使用し、前記車両直接通信を実施する前記車両が、ビームアライメントの設定に関する情報を前記基地局に伝送する場合には、非常に有利である。
【0029】
これに関連して、前記ビームアライメントの設定に関する情報のために、ルックアップテーブルを利用し、前記ビームアライメントの設定に関する情報を伝送する際に、前記ルックアップテーブルの対応するエントリに対するインデックス値を伝送する場合には有利である。これにより、この目的のために伝送しなければならないデータの量を削減することが可能となる。ルックアップテーブルは、この目的のために基地局及び車両の両方において既知であるべきである。
【0030】
本発明は、本発明に係る方法において使用するための、相応に適合された移動無線ネットワーク加入者局と、相応に適合された移動無線ネットワーク管理ユニットとにも関する。
【0031】
移動無線ネットワーク管理ユニット内におけるスケジューラは、画定された「サブ無線領域」に関する情報を使用し、この「サブ無線領域」は、並列動作での干渉されない通信を可能にし、加入者局に無線リソースを相応に割り当てる。スケジューラは、無線リソースを解放し、例えば使用すべきビームフォーミングの設定や送信電力の設定等に関して加入者局をパラメータ化/制御する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】移動無線を介した車両通信の原理を示す図である。
【
図2】無線リソースの効率的な管理を示す図との組み合わせにおける、無線セルを示す図である。
【
図3】D2Dサブ無線領域に基づく無線リソースの管理の一例を示す図である。
【
図4】仮定の道路形状に対するサブD2D無線領域の定義を示す概略図である。
【
図5】干渉されないサブ無線領域を定義するための干渉推定を示す概略図である。
【
図6】信号電力分布を用いてD2Dサブ領域を定義するためのスキームを示す図である。
【
図7】無線領域の寸法に対するアンテナ特性(例えばスマートアンテナシステムの場合のような放射パターン)の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書は、本発明による開示の原理を説明するものである。従って、当業者は、本明細書に明示的に記載されていなくとも本発明による開示の原理を具現化する複数の異なる構成を構想することが可能であり、このような構成もまた本発明の範囲において保護すべきであることを理解すべきである。
【0034】
図1は、移動無線を介した車両通信の原理を示している。車両には参照符号30が付されている。車両には、それぞれ車載器(On-Board Unit)とも呼ばれる無線通信モジュール31が装備されている。車載器は、移動体通信のための送受信局として使用される。車両からの全てのメッセージ(アップリンク)及び車両への全てのメッセージ(ダウンリンク)は、移動無線セルを操作する基地局を介してルーティングされ、又は、車両直接通信(サイドリンク)の場合には、直接的に車両間で交換される。この移動無線セルの内側に車両が位置する場合には、これらの車両は、基地局20(LTEの言語でeNodeBと呼ばれる)において登録又はログインされている。車両が移動無線セルから退出すると、これらの車両は、隣接するセルに引き渡され(ハンドオーバ)、従って、基地局20において登録解除又はログアウトされる。基地局20は、インターネット10へのアクセスも提供し、これにより、移動無線セル内にいる車両30又は他の全ての移動無線加入者にインターネットデータが供給される。このために基地局20は、いわゆるS1インターフェースを介してEPC40(Evolved Packet Core 進化したパケットコア)に接続されている。
【0035】
基地局20と個々の加入者局との間の通信のため、及び、個々の加入者局間の通信のために、ネットワーク事業者が利用できる時間当たり周波数(FpZ)リソース単位の数は限られている。空いているFpZリソース単位がない場合には、ネットワーク事業者又は基地局20は、問い合わせられたサービスの実行を拒否しなければならない。このことは、一方では、顧客側における保証されたサービス品質(QoS)の低下につながり、又は、他方では、ネットワーク事業者側における収益の減少又はコストの増加につながる。通信プロセスに対するコストをできるだけ低く抑えるためには、無線リソースを効率的に使用又は管理する必要がある。スケジューラは、この課題を有しており、FpZリソース単位をできるだけ最適に利用するために努力すべきであり、即ち、どのUEが何個のFpZリソース単位をいつ使用してよいかを決定する。この決定のためにスケジューラは、例えば通信需要を有する加入者局UEの数、無線接続の特性(受信品質及びUE可能性)、所望の通信のサービス要求の種類、顧客データ等のような、通信に関連したセルの状態に関する情報又は知識を利用する。
【0036】
無線リソースをさらにより効率的に利用するための1つの選択肢は、端末間(D2D)通信である。この技術は、相互に近接した位置に存在する加入者局UE間における直接通信を提供する(サイドリンク伝送方向)。これにより、これらのデータを基地局20へとアップリンクで伝送すること、又は、基地局20からダウンリンクで伝送することが省略される。そうすると、ここでは、状況によっては高帯域幅又は複数の無線リソースが空くようになる。この場合にはこの通信を、基地局20を介して他の加入者局に対して実施される通信と同一のリソースブロックにおいて同一の周波数範囲で同時に実施することは、D2D通信にとって適当である。即ち、FpZリソース単位は、同一の時間に複数回使用される。このことは、英語で“Frequency Reuse(周波数再利用)”と呼ばれる。この場合、効率の増加は、再利用係数が定量的に示すものよりもはるかに大きい。その理由は、基地局20を介した通信は、殆どの場合、D2Dの場合よりも格段に悪いチャネル状態に基づいているという事実にある。このことによってリソースブロックの消費量が増加する。
【0037】
図2は、領域B2UE内における従来の移動無線加入者33と、D2D通信を2つ1組で実施する移動無線加入者30とを有する1つの移動無線セルMFZの概略図を左側に示している。D2D通信D2Da,D2Db及びD2Dcが、特に強調されている。移動無線セルMFZ内におけるD2D通信及びB2UE通信は、基地局20を介して制御及び実施される。この関連において、基地局20が通信をオーケストレーションするとも言われる。
【0038】
リソース管理を担当するスケジューラは、基地局20に配置されており、参照符号24が付されている。
図2の右側には、無線リソースの効率的な管理が図示されている。ここではリソースブロックが、正方形の形態で図示されている。
図2の右側の部分にも、個々の通信のためのリソースブロックが示されている。リソースブロックは、アップリンク通信方向のためと、ダウンリンク通信方向のためとに分かれて図示されている。ここで留意すべきことには、別個にサイドリンク通信とも呼ばれるD2D通信のためにも同様にしてアップリンク領域からのリソースブロックが使用される。別個に強調されたボックスの左側には、B2UE通信のためにもD2D通信のためにも周波数再利用が使用されない例が示されている。ボックスの右側の部分には、D2D通信のために周波数再利用技術が使用されるが、B2UE通信のためには使用されないことが示されている。
【0039】
図3は、周波数再利用技術を使用した場合における無線リソースの管理を示す。このために、複数の異なるD2Dサブ無線領域FB1,FB3及びFB5が定義される。この例では、スケジューラ24は、サブ無線領域FB1内におけるUE1とUE2との間のD2D通信と、サブ無線領域FB5内におけるUE5とUE6との間のD2D通信とに、同一の無線リソースを貸与することが可能である。それぞれのUEの参照符号は、
図3の左側の表から見て取れる。
【0040】
これらのサブ無線領域の大きさ及び位置は、特にセルの建築状況のような複数の異なるパラメータに依存しているが、アンテナパラメータ(放射パターン、潜在的な干渉源のアンテナ数及び潜在的な犠牲者のアンテナ数)と、送信パラメータ(特に送信電力及び周波数)にも依存している。さらに、スケジューラ24は、D2D接続のためのリソースブロック消費量を推定して、この接続のために必要となるリソースブロックを、近傍にいる潜在的な犠牲者に対して予約しなければならない。
【0041】
ここから生じる課題は、次のとおりである:
・サブ無線領域の識別:初期測定、シミュレーション(AWE社製のWinProp-ProManのようなツール)、基地局と加入者とIoTとを介した進行中の動作における測定、サービスに応じたリソースブロック消費量の推定
・通信加入者の位置特定及びマッピング:これは、加入者自身(潜在的な犠牲者も)による位置の測定若しくは推定又は伝送によって実施される
・知識の使用:スケジューラは、伝送されたGPS位置、送信電力、アンテナ種類のような追加情報を利用する。
【0042】
この関連における潜在的な犠牲者は、2つの加入者間のD2D通信のせいで受信品質が悪化する加入者局であろう。
【0043】
図4には、セル内における道路状況及び建築状況に基づいたD2Dサブ無線領域の定義が、例えば地図データを使用してどのようにして実施され得るのかが図示されている。さらに、測定間隔によって領域の定義を精緻化することが可能であろう。
図4には、複数の異なる道路区間が示されている。都市の建築状況では、このような複数の道路区間は、例えば住宅列によって相互に非常に良好に遮蔽されているので個々のサブ無線領域SFBに対応することが前提とされる。交差点においてのみ、他の措置を講じる必要があろう。2つのそのような交差点は、
図4では円によって示されている。
【0044】
D2Dサブ無線領域を特定する方法の別の1つの変形例は、特別な測定間隔を用いてD2Dサブ無線領域を識別することである。進行中の動作における干渉挙動を推定するための1つの選択肢は、特別な測定間隔(又は特別な発見手順)を使用することである。このためにセルMFZ内において、D2D通信の利用によって干渉されるおそれのある加入者局30,33を識別しなければならない。これらの加入者局30,33には、特別な測定間隔が割り当てられ、この特別な測定間隔で、潜在的な干渉源がアップリンク信号を送信する。このアップリンク信号は、特別な基準信号に相当し、又は、基地局20との通常のデータ通信に相当する。このときに測定された干渉電力が、基地局20に伝送される。このメッセージは、所定の規準に従って分類することができる。その後、この情報をスケジューラ24が使用して、D2Dサブ無線領域を定義する。
【0045】
この測定間隔には、これらの無線領域を識別するために、モノのインターネット(IoT)機器又は中継局からの通知も含めることができる。
【0046】
図5は、干渉されないサブ無線領域を定義するための干渉推定の概略図を示す。左図では、測定間隔の間に干渉電力と、場合によっては干渉の他の特徴的な特性(リソースブロックに依存した干渉、入射角に依存した干渉等)が測定される。このために、潜在的な干渉源が信号を送信し、潜在的な干渉犠牲者が受信した信号を測定する。このような測定が実施される接続は、
図5に破線で示されている。右図では、加入者局に関する測定及び知識(例えば位置、アンテナ特性、サービス要求)に基づいて、基地局20がサブ無線領域FB1〜FB6を定義し、定義したサブ無線領域に加入者局30,33を割り当てる。周波数再利用技術に基づく効率的な並列動作のために、D2Dサブ無線領域FB1,FB3及びFB5が定義される。
【0047】
D2Dサブ無線領域を定義又は識別するためのさらなる選択肢は、放射された信号の電力分布を考慮することである。スケジューラ24は、位置(又は潜在的な干渉源に対する距離)と、設定された送信電力と、必要とされるサービス品質QoSの設定とに基づいて、以下のような通信ペア、即ち、無線サービスのために、同一のセル内において同一の無線リソースを相互に干渉することなく、又は、各自のサービスに必要な最小限の品質要求を下回ることなく、並列に使用することができるような通信ペアを見つけることができる。このためにワイヤレス通信の領域では、多くの場合、下回ってはならない最小SINR値が定義される。SINRとは「信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference-plus-Noise-Ratio)」の略である。
【0048】
図6は、上記の選択肢を図解している。図示されているのは、信号電力分布(又はパスロス)曲線を用いたD2Dサブ無線領域D2DSFBの定義である。上側の部分に図示された測定曲線TPUE1,TPUE2は、雑音レベルを含む、2つの加入者局UE1とUE2との間の距離xに依存した仮定の電力分布Pを示す。雑音レベルNLが示されている。同様に図示されている測定曲線TPUE2+NPは、雑音電力の分だけ増加された送信電力を示し、雑音レベルNLの値の分だけ上方に平行シフトされている。さらに、通信に対する2つの異なる品質要求を表す2つの値QL1及びQL2が記されている。値QL1及びQL2は、所定のSINR値に対応しており、このことも
図6に示されている。値QL1は、D2Dサブ無線領域D2DSFBを定義するための非常に厳格な品質要求に対応する。値QL2は、中程度の品質要求に対応する。対応するD2Dサブ無線領域D2DSFBは、加入者局UE1を中心にして破線で示されている。品質要求QL2には比較的大きな円が対応しており、品質要求QL1には相応にして比較的小さな円が対応している。従って、換言すれば、
図6の下側の部分は、所定のSIR値又はSINR値を用いた、UE1のための「干渉されないD2Dサブ無線領域」の大きさ及び形状の定義を示す。SIRは、「信号対干渉比(Signal-to-Interference-Ratio)」を表す。この干渉されない無線領域は、潜在的な干渉源、即ち、
図6では加入者局UE2に対する距離xと、干渉源から放射された送信電力Pとによる影響を受ける。さらに、D2Dサブ無線領域D2DSFBの大きさは、使用されるサービスのために必要とされる品質レベルQL1,QL2に基づいて決定される。
【0049】
D2Dサブ無線領域D2DSFBを定義するためのさらなる選択肢は、ビームフォーミング技術を使用する場合に、放射された信号の電力分布を測定することである。このことにより、空間内での無線リソースの利用が改善される。なぜなら、放射される電力を特に所望の領域において増加させることができ、又は、他の領域における干渉を最小化若しくは阻止することができるからである。
【0050】
この利得を効率的に利用可能にすると同時に、ビームフォーミングによる不所望な干渉を回避するために、スケジューラ24は、加入者局の位置の他に、アンテナ特性(ビーム幅及び角度設定の可能性)並びにアンテナ方位に関する追加情報を受信すべきである。このような情報を伝送するための通信コストを削減するためには、ビームアライメントのためのルックアップテーブルを利用すべきである。そうすると、完全な設定値を伝送する必要がなくなり、インデックス値が伝送されれば十分となる。さらにもう1つの選択肢は、加入者局が方位の値と基準アライメントの値とを組み合わせて、送信したい/送信すべき方向のみを示すことである。
【0051】
図7は、加入者局を中心とした無線領域の形状及び寸法に対する、アンテナ特性(「スマートアンテナ」システムの場合のような放射パターン)の影響を示す図である。ビームフォーミング技術の利用により、D2Dサブ無線領域D2DSFBの形状は、アンテナ設定と、空間内における加入者局30の方位とに依存して変化する。ビームアライメントBDの角度も
図7に図示されている。本変形例では、D2Dサブ無線領域D2DSFBを定義するためにこれらの情報もスケジューラ24に伝送される。
【0052】
本提案の方法及び対応する装置は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、専用プロセッサ、又は、これらの組み合わせの種々の形態で実装することができることを理解すべきである。専用プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、及び/又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含み得る。好ましくは、本提案の方法及び装置は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実装される。ソフトウェアは、好ましくはプログラム記憶装置上のアプリケーションプログラムとしてインストールされる。典型的には、1つ又は複数の中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、1つ又は複数の入出力(I/O)インターフェースのようなハードウェアを有するコンピュータプラットフォームに基づいたマシンである。コンピュータプラットフォーム上では、典型的にはさらにオペレーティングシステムがインストールされる。本明細書に記載された種々のプロセス及び機能は、アプリケーションプログラムの一部分であってもよく、又は、オペレーティングシステムによって実行される部分であってもよい。
【0053】
本開示は、本明細書に記載された実施形態に限定されていない。当業者が各自の専門知識に基づいて本開示にも含まれるとして考慮し得る、種々の適合及び修正のための余地が存在する。
【符号の説明】
【0054】
10 インターネット
20 基地局
24 移動無線ネットワーク管理ユニット
30 D2D通信のための加入者局
31 無線通信モジュール
33 他の移動体通信のための加入者局
40 進化したパケットコア(EPC)
MFZ 移動無線セル
B2UE 基地局と加入者との間の通信
D2Da 直接通信a
D2Db 直接通信b
D2Dc 直接通信c
UL アップリンク方向での伝送
DL ダウンリンク方向での伝送
UE 加入者局(ユーザイクイップメント)
D2DSFB 直接通信のためのサブ無線領域
FB1 無線領域1
FB2 無線領域2
FB3 無線領域3
FB4 無線領域4
FB5 無線領域5
FB6 無線領域6
TPUE1 UE1の送信電力
TPUE2 UE2の送信電力
TPUE2+NP 雑音電力を加えたUE2の送信電力
QL1 品質要求1
QL2 品質要求2
SINR 信号対干渉雑音比
SIR 信号対干渉比
NL 雑音レベル
TPD 自由空間内における送信電力分布
IR 干渉領域
BD ビームアライメント