【実施例】
【0039】
以下の実施例において、エチレンのオリゴマー化を、6カ月間の連続した期間にわたって、特定の触媒の存在下で1〜2時間実施した。比較例1(C1)および実施例1〜3(E1−E3)を、0.15メートル(m)の全径および2.0mの全高を有する気泡塔型反応器中で実施した。ガス状エチレンを、気相分配板を通してバブリングさせた。線状αオレフィンを、本発明による液相中での均一触媒によるエチレンオリゴマー化によって製造した。
nC
2H
4→CH
3−(CH
2)
m−CH=CH
2
(式中、mは奇数である)
【0040】
オリゴマー化を、ジルコニウム含有触媒(Zr(OOCR)
4)、具体的にはジルコニウムテトライソブチラート、および3:1のEASC:DEAC比を用いたエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)とジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)の混合共触媒によって触媒作用させた。上述した通り、エチレンのオリゴマー化は、余剰流のエチレンによって冷却される発熱反応である。二相レベル内での多点温度測定は、温度勾配の検出を可能にする。反応器の頂部を出るガスは、一連の外部冷却器および凝縮器を使用して冷却した。さらに冷却した後、気相を循環させた。
【0041】
オリゴマー化反応器を出る底部ストリームは、活性触媒および未反応エチレンを含んだ。望ましくない副反応を回避するために、苛性水相での抽出により有機相から触媒成分を除去することによって、反応を終了させた。
【0042】
触媒除去システムを通過させた後、有機相を分子篩吸収床に通し、次いで、蒸留塔にフィードして溶解エチレンを回収した。回収エチレンを、エチレン再循環ループを介して再循環し、同時に、生成物を中間槽に、最後に分離セクションにフィードした。
【0043】
線状αオレフィン生成物の線状性に対する、共触媒組成物を変化させることの効果を試験するために、3つの異なる温度60、70および78℃で、反応器を連続方式で操作した。アルミニウムとジルコニウム(Al:Zr)の比は35:1で一定に保持した。各実施例についての触媒活性および生成物分布を表1に示す。活性は、時間(hr)当たり、ジルコニウムのグラム(g)当たりに生成した、線状αオレフィンのキログラム(kg)で測定した。生成物分布は、重量パーセント(wt%)で測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例1(C1)は、78℃の温度で共触媒としてEASCだけを使用する商業用反応器の条件を模倣している。実施例1〜3は、EASCおよびDEACを含む共触媒を使用し、可変の操作温度の効果を実証する。EASCおよびDEACを含む共触媒を使用した場合、触媒活性は増大しており、これは、温度に対する依存性を示している。比較例C1について決定された触媒活性は7.5kg
LAO/g
Zr/hrであった。実施例E1は、EASCおよびDEACを含む共触媒を使用した場合、より低い操作温度(60℃)を、匹敵するかまたはより高い触媒活性(8.2kg
LAO/g
Zr/hr)を得るために使用できることを示している。同様に、実施例E2は、70℃での9.5kg
LAO/g
Zr/hrの改善された触媒活性を示した。EASCおよびDEACを含む共触媒を使用した場合、比較例C1と同じ操作温度の78℃で、触媒活性はほぼ倍増した(14.4kg
LAO/g
Zr/hr)。別の言い方をすれば、78℃でEASCおよびDEACを含む共触媒を使用した場合、触媒活性は92%増大した。
【0046】
表2は、実施例のそれぞれについて、線状αオレフィン画分の純度を示し、さらに、気泡塔型反応器プラントデータを商業用プラントデータと比較している。表2のデータは、EASCおよびDEACを含む改変された共触媒は、LAO画分の線状性を大幅に改善できることを実証している。
【0047】
【表2】
【0048】
EASCおよびDEACを含む共触媒を使用した場合、C8+線状αオレフィン画分の線状性が改善されるのが観察され、C10+線状αオレフィン画分において、特に顕著な線状性の改善が見られた。実施例E1は、比較例C1(例えば、エチレンのオリゴマー化のための異なる触媒組成物を使用)について得られた対応する線状性と比べて、60℃の温度で、C8〜C18画分の線状性を約2〜約17%増大させることができ、C10〜C18画分の線状性を約9〜約17%増大させることができることを示している。実施例E1のC4〜C20線状αオレフィンは92.8%の平均線状性を有し、比較例C1のC4〜C20線状αオレフィンは81.8%の平均線状性を有していた。実施例E2は、比較例C1と比べて、70℃の温度で、C8〜18画分の線状性を約2〜約15%増大させることができ、C10〜C18画分の線状性を約6.5〜約15%増大させることができることを示している。実施例E2のC4〜C20線状αオレフィンは90.6%の平均線状性を有していた。実施例E3は、比較例C1と比べて、78℃の温度で、C8〜C18画分の線状性を約2〜約16.5%増大させることができ、C10〜C18画分の線状性を約6.5〜約16.5%増大させることができることを示している。実施例E3のC4〜C20線状αオレフィンは91.1%の平均線状性を有していた。興味深いことに、EASCおよびDEACを含む共触媒混合物を使用した場合、比較例C1のC20画分の線状性と比べて、C20画分の線状性は、劇的に約80〜約92%増大した。
【0049】
さらに、表2に示したデータは、EASCおよびDEACを含む共触媒混合物が、EASCおよびDEAC混合物と異なる共触媒を使用した場合に必要な操作温度より低い操作温度で改善された線状性をもたらすことができることを表している。実施例E1〜3は集合的に、比較例C1に対する線状性の増大を示しているが、線状性における最も大きい改善は、最も低い60℃の操作温度(実施例E1)で認められた。
【0050】
本明細書で開示される触媒組成物および作製方法は、少なくとも以下の実施形態を含む。
【0051】
実施形態1:触媒および共触媒を含むエチレンのオリゴマー化のための触媒組成物であって;前記共触媒が、エチルアルミニウムセスキクロリドおよびジエチルアルミニウムクロリドを含む触媒組成物。
【0052】
実施形態2:前記触媒がジルコニウムを含む、実施形態1の触媒組成物。
【0053】
実施形態3:前記触媒がジルコニウムテトライソブチラートである、実施形態1または2の触媒組成物。
【0054】
実施形態4:Al:Zr比が35:1である、実施形態1〜3のいずれかの触媒組成物。
【0055】
実施形態5:前記共触媒が、3:1の比でエチルアルミニウムセスキクロリドおよびジエチルアルミニウムクロリドを含む、実施形態1〜4のいずれかの触媒組成物。
【0056】
実施形態6:オレフィン、溶媒および触媒組成物を反応器にフィードするステップと;反応器中でそのオレフィンをオリゴマー化して線状αオレフィンを含む反応生成物を生成させるステップを含むオレフィンのオリゴマー化のための方法であって、前記触媒組成物が触媒および共触媒を含み、前記共触媒がエチルアルミニウムセスキクロリドおよびジエチルアルミニウムクロリドを含む方法。
【0057】
実施形態7:前記オレフィンがエチレンである、実施形態6の方法。
【0058】
実施形態8:前記溶媒がトルエンである、実施形態6または7の方法。
【0059】
実施形態9:前記触媒がジルコニウムを含む、実施形態6〜8のいずれかの方法。
【0060】
実施形態10:前記触媒がジルコニウムテトライソブチラートである、実施形態6〜9のいずれかの方法。
【0061】
実施形態11:オリゴマー化を30〜120℃の温度で実施する、実施形態6〜10のいずれかの方法。
【0062】
実施形態12:前記反応器が気泡塔型反応器である、実施形態6〜11のいずれかの方法。
【0063】
実施形態13:前記触媒組成物が、オレフィンのオリゴマー化のために使用される異なる触媒組成物より10%高い触媒活性を有する、実施形態6〜12のいずれかの方法。
【0064】
実施形態14:前記触媒組成物が、オレフィンのオリゴマー化のために使用される異なる触媒組成物より26%高い触媒活性を有する、実施形態6〜13のいずれかの方法。
【0065】
実施形態15:前記触媒組成物が、オレフィンのオリゴマー化のために使用される異なる触媒組成物より92%高い触媒活性を有する、実施形態6〜14のいずれかの方法。
【0066】
実施形態16:線状αオレフィン反応生成物が、オレフィンのオリゴマー化のために使用される異なる触媒組成物と比べて、2%以上の線状性の増大を有するC8+画分を含む、実施形態6〜15のいずれかの方法。
【0067】
実施形態17:C8+画分が、オレフィンのオリゴマー化のために使用される異なる触媒組成物と比べて、6%以上の線状性の増大を有する、実施形態16の方法。
【0068】
実施形態18:C8+画分が、オレフィンのオリゴマー化のために使用される異なる触媒組成物と比べて、10%以上の線状性の増大を有する、実施形態16または17の方法。
【0069】
実施形態19:少なくとも90%の線状性を有するC4〜C14画分を含む、実施形態6〜18のいずれかの方法によって作製される線状αオレフィン組成物。
【0070】
実施形態20:少なくとも99%の線状性を有する、実施形態6〜19のいずれかの方法によって作製されるC4線状αオレフィン。
【0071】
実施形態21:少なくとも98%の線状性を有する、実施形態6〜19のいずれかの方法によって作製されるC6線状αオレフィン。
【0072】
実施形態22:少なくとも96%の線状性を有する、実施形態6〜19のいずれかの方法によって作製されるC8線状αオレフィン。
【0073】
実施形態23:少なくとも80%の線状性を有する、実施形態6〜19のいずれかの方法によって作製されるC10+線状αオレフィン。
【0074】
実施形態24:前記ポリエチレンが実施形態6〜23のいずれかの方法によって作製される少なくとも1つの線状αオレフィンから誘導されるポリエチレン組成物。
【0075】
実施形態25:ジルコニウム系触媒および少なくとも2つの共触媒組合せを含む触媒組成物を含むオレフィンオリゴマー化反応であって、前記触媒組成物の触媒活性が、ジルコニウム系触媒および少なくとも2つの共触媒組合せの1つの共触媒を含む触媒組成物と比べて、約92%増大しているオレフィンオリゴマー化反応。
【0076】
実施形態26:前記少なくとも2つの共触媒組合せがエチルアルミニウムセスキクロリドおよびジエチルアルミニウムクロリドを含む、実施形態25のオレフィンオリゴマー化反応。
【0077】
実施形態27:前記オレフィンがエチレンである、実施形態25〜26のいずれかのオレフィンオリゴマー化反応。
【0078】
実施形態28:線状αオレフィン組成物をもたらす実施形態25〜27のいずれかのオレフィンオリゴマー化反応であって、C4画分の純度が少なくとも約99%であるオレフィンオリゴマー化反応。
【0079】
実施形態29:線状αオレフィン組成物をもたらす実施形態25〜27のいずれかのオレフィンオリゴマー化反応であって、C6画分の純度が少なくとも約98%であるオレフィンオリゴマー化反応。
【0080】
実施形態30:線状αオレフィン組成物をもたらす実施形態25〜27のいずれかのオレフィンオリゴマー化反応であって、C8画分の純度が少なくとも96%であるオレフィンオリゴマー化反応。
【0081】
実施形態31:C4、C6およびC8線状オレフィン画分を含む線状αオレフィン組成物をもたらすジルコニウム系触媒および少なくとも2つの共触媒組合せを含む触媒組成物を含むオレフィンオリゴマー化反応であって、そのC4画分の純度が少なくとも約99%であるオレフィンオリゴマー化反応。
【0082】
実施形態32:前記C6画分の純度が少なくとも約98%である、実施形態31のオレフィンオリゴマー化反応。
【0083】
実施形態33:前記C8画分の純度が少なくとも約96%である、実施形態31のオレフィンオリゴマー化反応。
【0084】
実施形態34:前記少なくとも2つの共触媒組合せがエチルアルミニウムセスキクロリドおよびジエチルアルミニウムクロリドを含む、実施形態31〜33のいずれかのオレフィンオリゴマー化反応。
【0085】
実施形態35:C4〜C14線状オレフィン画分を含む、オリゴマー化反応によって得られる線状αオレフィン組成物であって、前記C4〜C14画分の純度が少なくとも約90%である線状αオレフィン組成物。
【0086】
実施形態36:前記C4画分の純度が少なくとも約99%である、実施形態35の線状αオレフィン組成物。
【0087】
実施形態37:実施形態36の線状αオレフィン組成物から得られるポリエチレンポリマー組成物。
【0088】
一般に、本発明は、本明細書で開示される適切な任意の成分を、含む、またはそれからなる、またはそれから本質的になる、のいずれかであり得る。これに加えてまたはこれに代えて、本発明は、従来技術の組成物において使用される任意の成分、材料、構成要素、補助剤もしくは種、または本発明の機能および/もしくは目的の達成のために必ずしも必要でないものを欠くかまたは実質的に含まないように組み立てられることができる。
【0089】
本明細書で開示されるすべての範囲はその端点を含み、その端点は独立に、互いに組み合わせることができる。「組合せ(combination)」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。さらに、「第1の(first)」、「第2の(second)」などの用語は、本明細書では、いずれの順番、量または重要度を表すものでもなく、むしろ、別の要素に対して、1つの要素を表すために使用される。「a」、「an」および「the」という用語は、本明細書では、量の限界を表すものではなく、本明細書での別段の指定または文脈による明らかな矛盾のない限り、単数と複数の両方を含むものと解釈すべきである。本明細書を通して、「一実施形態(one embodiment)」、「別の実施形態(another embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」等への参照は、その実施形態との関連で説明される特定の要素(例えば、特性、構造および/または特徴)が、本明細書で説明される少なくとも1つの実施形態に含まれており、それが他の実施形態中に存在していてもいなくてもよいことを意味する。さらに、記載された要素は、種々の実施形態において適切な任意の仕方で組み合わせることができることを理解すべきである。
【0090】
特定の実施形態を説明してきたが、現在予見されていないまたは予見されていない可能性がある代替形態、改変形態、変更形態、改善形態および実質的な均等形態が、出願者または他の当業者に想起される可能性がある。したがって、出願され、かつ修正され得る添付の特許請求の範囲は、そうしたすべての代替形態、改変形態、変更形態、改善形態および実質的な均等形態を包含するものとする。