特許第6567045号(P6567045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567045手動または電動式に可動のステージを備えた顕微鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567045
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】手動または電動式に可動のステージを備えた顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/24 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G02B21/24
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-518515(P2017-518515)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公表番号】特表2017-530418(P2017-530418A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】EP2014071350
(87)【国際公開番号】WO2016055089
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2017年6月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516114695
【氏名又は名称】ライカ インストゥルメンツ (シンガポール) プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Instruments (Singapore) Pte. Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】500519563
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ (シュヴァイツ) アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems (Schweiz) AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】セン ホー シー
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−172619(JP,A)
【文献】 特開平02−292522(JP,A)
【文献】 特開2014−153500(JP,A)
【文献】 特開昭58−192014(JP,A)
【文献】 特開2004−226882(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第01316033(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡であって、
顕微鏡観察すべき対象物を保持する可動のステージ(18)と、
前記対象物に焦点を合わせるために前記ステージ(18)を前記顕微鏡(10)のベース(22)に対して相対的に移動させる調整ユニット(24)であって、駆動シャフト(38)を備え、該駆動シャフト(38)の回転により前記ステージ(18)と前記ベース(22)との間の距離が調整可能である、調整ユニット(24)と、
前記ステージ(18)を手動で移動させるための、手動で駆動可能な第1の出力シャフト(46)を備えた手動で操作可能な操作ユニット(26)と、
前記ステージ(18)を電動式に移動させるための、第2の出力シャフト(52)を備えた電気的な駆動ユニット(28)と
を備え、
手動の操作モードにおいて、前記第1の出力シャフト(46)が第1の連結ユニット(54)を介して前記駆動シャフト(38)に連結され、
電動式の操作モードにおいて、前記第2の出力シャフト(52)が第2の連結ユニット(56)を介して前記駆動シャフト(38)に連結されており、
前記第1の連結ユニット(54)および前記第2の連結ユニット(56)は、それぞれ電磁クラッチとして設計されており、
前記第1の連結ユニット(54)および前記第2の連結ユニット(56)は、
通電された状態において、前記第1の出力シャフト(46)または前記第2の出力シャフト(52)の一方が前記駆動シャフト(38)に連結された作動モードと、
通電されていない状態において、前記第1の出力シャフト(46)および前記第2の出力シャフト(52)のいずれもが前記駆動シャフト(38)に連結されていない非作動モードと、を有する
ことを特徴とする、顕微鏡(10)。
【請求項2】
前記操作ユニット(26)は、前記第1の出力シャフト(46)を回転させるための少なくとも1つのノブ(42,44)を有している、請求項1記載の顕微鏡(10)。
【請求項3】
前記操作ユニット(26)は、前記ステージ(18)の粗調整のための第1のノブと、前記ステージ(18)の微調整のための第2のノブとを有している、請求項2記載の顕微鏡(10)。
【請求項4】
前記手動の操作モードにおいて、前記駆動シャフト(38)は前記第2の出力シャフト(52)には連結されておらず、前記電動式の操作モードにおいて、前記駆動シャフト(38)は前記第1の出力シャフト(46)には連結されていない、請求項1からまでのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項5】
前記手動の操作モードでは、前記2つの連結ユニット(54,56)のうちの前記第1の連結ユニット(54)にのみエネルギが供給され、前記電動式の操作モードでは、前記2つの連結ユニット(54,56)のうちの前記第2の連結ユニット(56)にのみエネルギが供給されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項6】
前記駆動シャフト(38)は、ピニオンシャフトとして設計されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項7】
前記駆動シャフト(38)は、前記調整ユニット(24)の定置のユニット(30)の部分を形成し、前記調整ユニット(24)は、前記定置のユニット(30)に対して相対的に前記ステージ(18)を移動させるための、前記駆動シャフト(38)により駆動可能であるラック・アンド・ピニオン機構(40)を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項8】
前記ステージ(18)の位置を求めるセンサユニット(60)が設けられている、請求項1からまでのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項9】
前記センサユニット(60)は、前記操作ユニット(26)から独立してかつ前記電気的な駆動ユニット(28)から独立して動作し、特に前記操作ユニット(26)の構成要素の位置も、前記電気的な駆動ユニット(28)の構成要素の位置も前記センサユニット(60)によって検出されない、請求項記載の顕微鏡(10)。
【請求項10】
前記センサユニット(60)は、前記ステージ(18)と共に移動させられる第1のセンサエレメント(62)と、前記調整ユニット(24)の定置のユニット(30)の部分を形成する第2のセンサエレメント(64)とを有しており、前記センサユニット(60)は、前記第1のセンサエレメント(62)と前記第2のセンサエレメント(64)との互いに対する相対位置を検出する、請求項または記載の顕微鏡(10)。
【請求項11】
前記手動の操作モードと前記電動式の操作モードとの切換えのための、手動で操作可能な切換ユニットが設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項12】
前記切換ユニットは、常時、前記第1の連結ユニット(54)または前記第2の連結ユニット(56)のどちらか一方のみが作動されているように、設計されている、請求項11記載の顕微鏡(10)。
【請求項13】
予め規定された位置において前記ステージを保持するセルフロックモードにおいて、前記ステージは、前記第1の連結ユニット(54)を介して、前記手動の操作ユニット(26)に連結されている、かつ/または前記第2の連結ユニット(56)を介して前記電気的な駆動ユニット(28)に連結されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡観察すべき対象物が置かれる可動のステージを有する顕微鏡に関する。ステージを移動させるために、調整ユニットが設けられており、該調整ユニットにより、ステージは顕微鏡のベースに対して相対的に可動であるので、ステージとベースとの間の距離が拡大させられる。ステージの移動により、特に対象物への焦点合わせ達成される。この調整ユニットは、駆動シャフトを有しており、ステージとベースとの間の距離は、この駆動シャフトの回転により調整可能である。
【0002】
標準的な顕微鏡は、高さ調整可能なステージを有しているので、顕微鏡観察すべき、ステージ上に置かれた対象物へ焦点を合わせること、つまり合焦が実施され得る。一方では、ステージ高さが適切な合焦ノブを用いて手動で調整される顕微鏡が知られている。この手動の調整は、調整のために電力が要求されないという利点を有しており、ユーザには、調整中に直接的なフィードバックが与えられる。しかし不都合なことは、位置の正確な、特に再現可能な調整は極めて困難であり、ユーザに多大な敏感さを要求することである。
【0003】
他方では、ステージ高さが電動モータを用いて電動式に調整される顕微鏡が知られている。この方法により、所望の位置が極めて正確かつ再現可能に調整され得る。しかし、このような顕微鏡は、ユーザが直接的なフィードバックを与えられず、顕微鏡が電源を要求し、高価であり複雑な構造を有している、という欠点を有している。
【0004】
独国実用新案公開第8715891号明細書からは、顕微鏡のステージ高さが、電動モータを用いて調整可能である顕微鏡が知られている。所望の調整は、ノブを介して調節される。ノブの回転運動は、適切なセンサにより検出されて、相応してモータにより実施される。ノブの軸方向の動きは、微細駆動と、粗駆動との間の切換えを可能にする。
【0005】
しかしこの顕微鏡は、多数の構成部分が動かされ、その結果として不正確さが生じ、この顕微鏡はエラーを起こしやすい、という欠点を有している。さらに、顕微鏡は複雑な構造を有しており、したがって高コストである。さらに複数のスイッチノブのうちの1つのスイッチノブの操作は、粗駆動または微細駆動のどちらか一方のための単に1つの信号を発生させる効果しか有していない。スイッチノブの対応する回転運動により設定される微細焦点合わせを実施することは不可能である。
【0006】
本発明の課題は、単純な構造を有し、顕微鏡により検査すべき対象物への正確な焦点合わせを可能にする顕微鏡を提供することにある。
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する顕微鏡により解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項において規定されている。
【0008】
本発明によれば、ステージを調整する調整ユニットは、一方では手動で操作可能な操作ユニットにより、かつ他方では電気的な駆動ユニットにより駆動可能である。手動の操作ユニットは、第1の出力シャフトを有しており、この第1の出力シャフトは、この操作ユニットにより相応して駆動される。電気的な駆動ユニットは、第2の出力シャフトを有しており、この第2の出力シャフトは、相応して電気的に駆動される。手動の操作モードでは、操作ユニットの第1の出力シャフトが、第1の連結ユニットを介して調整ユニットの駆動シャフトに連結されているので、操作ユニットが手動で操作されると、調整ユニットは操作ユニットにより駆動され、したがってステージは、ベースに対して相対的に移動させられる。他方で、電動式の操作モードにおいて、電気的な駆動ユニットの第2の出力シャフトは、第2の連結ユニットを介して調整ユニットの駆動シャフトに連結されているので、この電動式の操作モードでは、調整ユニットは、電気的な駆動ユニットにより駆動される。特に、手動の操作モードでは、駆動シャフトは第2の連結ユニットを介して第2の出力シャフトに連結されておらず、電動式の操作モードでは駆動シャフトは第1の連結ユニットを介して第1の出力シャフトに連結されていない。したがって、手動の操作モードでは、駆動シャフトは、第1の出力シャフトのみに連結されており、電動式の操作モードでは駆動シャフトは第2の出力シャフトのみに連結されている。結果として、ステージの手動の調整と、ステージの電動式の調整との任意の切換が可能にされている。
【0009】
顕微鏡を手動の操作モードで操作することにより、焦点面上における試料の迅速かつ直感的な位置決めが達成される。さらにこの手動の操作モードでは、顕微鏡に電源を接続する必要がない。
【0010】
これに対して、電動式の操作モードの使用は、精密かつ再現可能な焦点合わせ操作および自動化された焦点合わせおよびzスタック(Z-stacking)および別の自動化された機能を実施することができる、という利点を有している。したがって、速度(手動の操作モード)および精度(電動式の操作モード)のための相反する要求がバランスを取って実現される。
【0011】
電気的な駆動ユニットは特に、電動モータおよび/または変速装置を有している。
【0012】
手動の操作ユニットは特に、純機械的な連結部が実現されることによってステージ高さが純粋に機械的に調整されるように、設計されかつ手動の運転モードにおいて調整ユニットに連結されている。特に、操作エレメントの回転運動はエンコーダにより検出されず、この検出された動きを実施する電気的な駆動ユニットに伝達されない。
【0013】
本発明の有利な態様では、第1の連結ユニットおよび/または第2の連結ユニットは、それぞれ電磁クラッチとして設計されている。電磁クラッチの使用は多数の利点を有している。一方ではこのような電磁クラッチは、コンパクトな構造を有しており、エラーが少なく、完全に発展されていて、コスト効率よく購入され得る。さらに、このような電磁クラッチの非作動の状態において、出力シャフトは完全に駆動シャフトから切り離されているので、運転モードの切換時に、ステージの位置は変更されず、ステージは常に確実に予め設定された位置に留まる。さらに、電磁クラッチの使用は、クラッチプレートと駆動シャフトおよび出力シャフト間の非接触のギャップによって、あらゆる組み付け位置におけるゼロ残留トルクと、トルク伝達中のゼロバックラッシュとを保証する。さらに、電磁クラッチは、僅かなメンテナンスしか要求しない。さらに、電磁クラッチにより、伝達可能な最大トルクの制限が達成される。電磁クラッチの相応する摩擦により予め規定されたトルクが超過された場合に、クラッチはスリップし、したがって高いトルクの伝達は不可能であるからである。これによって、構成要素は保護されている。特に調整ユニットへの損傷が確実に阻止されるように伝達可能な最大トルクが選択されているように、電磁クラッチが設計されている。
【0014】
第1の連結ユニットおよび/または第2の連結ユニットは、特に電磁的なフリクションプレートクラッチである。このようなフリクションプレートクラッチは、特に単純な構造を有しており、エラーは極めて少ない。
【0015】
第1の連結ユニットと第2の連結ユニットのそれぞれは、特に2つのフリクションプレートを有している。フリクションプレートの一方は各出力シャフトに、他方は駆動シャフトに取り付けられている。各連結ユニットの作動により、この連結ユニットの磁石が磁界を形成し、この磁界により2つのフリクションプレートが互いに押し合わされるので、出力シャフトが回転すると、フリクションプレート間の摩擦力の結果として力が伝達され、駆動シャフトも同様に駆動される。
【0016】
択一的には、電磁クラッチは多板クラッチであってもよく、電磁的なツースクラッチ、電磁的な粒子式クラッチおよび/またはヒステリシス給電クラッチであってもよい。第1および第2の連結ユニットは特に同一に設計されている。択一的には互いに異なる連結ユニットも使用され得る。
【0017】
特に、各連結ユニットが、作動モードと非作動モードとを有しているように設計されており、作動モードでは、各出力シャフトと駆動シャフトとの間の連結が形成され、非作動モードでは、各出力シャフトと駆動シャフトとの間の連結はない。
【0018】
作動モードは、特に連結ユニットに電流が供給される1つのモードであり、これに対して非作動モードでは連結ユニットに電流が供給されない。したがって2つの操作モードの間の切換えは、2つの連結ユニットの対応する作動または非作動により簡単に達成されている。
【0019】
手動の操作モードでは、特に連結ユニットのうちの第1の連結ユニットにのみエネルギが供給され、電動式の操作モードでは連結ユニットのうち第2の連結ユニットにのみエネルギが供給される、つまり通電される。
【0020】
特に好適な態様では、操作ユニットは第1の出力シャフトを回転させるための少なくとも1つのノブを有している。このノブが手動で回転させられると、第1の出力シャフトが回転し、手動の操作モードがスイッチオンされて、調整ユニットの駆動シャフトも同様に回転する。したがって、特に簡単な形式でステージの調整が純粋に機械的にかつ純粋に手動で可能にされている。さらに、ユーザは、調整に関する直接的なフィードバックを与えられ、したがって、直感的に顕微鏡を操作することができる。
【0021】
操作ユニットが第1のノブと第2のノブとを有していて、第1のノブがステージの粗調整のために使用され、第2のノブがステージの微調整のために使用されると特に有利である。粗調整とは特に、第1のノブが予め規定された角度だけ回転させられると、ステージは、微調整のための第2のノブの同一の回転時に比べて明らかに長い距離だけ移動させられることを意味する。したがって、第1のノブは、対象物を見つけるための、特に適切な焦点面を見つけるための急速な調整のために使用されるので、適切な焦点面の迅速な調整が可能である。微調整のための第2のノブの続く使用は、この焦点の正確な調整を可能にする。
【0022】
駆動シャフトは、特にピニオンシャフトとして設計されており、その結果特に単純かつ安定的な構造が達成される。
【0023】
好適な態様では、駆動シャフトは、調整ユニットの定置のユニットの部分を形成し、この定置のユニットは顕微鏡のベースに対して相対的に移動させられない。さらに調整ユニットはラック・アンド・ピニオン機構を有している。このラック・アンド・ピニオン機構は、駆動シャフトにより駆動可能であり、ラック・アンド・ピニオン機構により、ステージは、該ステージの各高さ調整、ひいては対象物へ焦点を合わせるために、定置のユニットに対して相対的に移動され得る。
【0024】
本発明の特に好適な態様では、顕微鏡は、ステージの位置を求めるためのセンサユニットを有している。したがって、ステージの位置は常に知られており、このことは、自動焦点合わせまたは予め規定された位置の再現のために重要である。
【0025】
このセンサユニットは、特に両方の操作ユニットおよびモータから独立して機能するように設計されているので、顕微鏡が目下、どちらの操作モードで操作されているのかは重要ではない。したがって特に、たとえば電動式の操作モードであり、駆動シャフトから操作ユニットが相応して連結解除されている場合には、たとえユーザが操作エレメントを操作した場合でも、センサ信号は操作エレメントのこの操作により影響されない。このためには、センサユニットは特に、センサユニットが操作ユニットの構成要素の位置も、モータの構成要素の位置も求めないように設計されていて、特にセンサ自体は、操作ユニットの部分もモータの部分も形成しない。
【0026】
センサユニットが、第1のセンサエレメントと第2のセンサエレメントとを有していて、第1のセンサエレメントはステージと一緒に移動され、そのためには特に、ステージに堅固に取り付けられかつ相応して調整ユニットによってステージと一緒に移動させられる構成要素に配置されていると特に有利である。他方で第2のセンサエレメントは、調整ユニットの定置のユニットの部分を形成し、したがって調整ユニットが駆動された場合に移動させられない。第1のセンサエレメントと第2のセンサエレメントとの互いに対する位置に基づいて、センサユニットはステージの位置を求める。2つのセンサエレメントの互いに対して相対的な運動は、ステージの動きも対応するからである。
【0027】
センサユニットは特にエンコーダとして設計されている。エンコーディングシステムおよび調整ユニットの駆動機構は、特に1つの単独の位置測定システムを備えた同一の焦点軸線上にあり、この位置測定システムは、対応するクラッチが係合されていない場合に、手動の操作ユニットおよびモータから独立して操作される。
【0028】
顕微鏡が、手動の操作モードと電動式の操作モードとの切換えのための切換ユニットを有していると特に有利であり、この切換ユニットは特に、任意には常に第1の連結ユニットまたは第2の連結ユニットのどちらか一方のみが作動されるので、一度に駆動シャフトが第1の出力シャフトまたは第2の出力シャフトのどちらか一方にのみ連結されているように設計されている。したがって、特に、両方の出力シャフトと駆動シャフトとの同時的な連結が行われることは回避されている。結果として今度は、モータが損傷され得るような高いトルクでユーザが手動で操作ユニットを回転させることが起こりえないことが達成される。さらに、電動式の操作モードにおいて、操作ユニットのノブが回転させられて、ユーザを混乱させ得ることは阻止されている。
【0029】
特に好適な態様では、さらに対象物を予め規定された位置に保持するセルフロックモードが設けられている。このセルフロックモードでは、ステージは、駆動シャフトおよび第1の連結ユニットを介して手動の操作ユニットに接続されている、かつ/または作動された第2の連結ユニットを介してモータに接続されている。たとえばステージに力が加えられた場合の、ステージの意図しない調整はしたがって阻止されている。
【0030】
本発明の別の特徴および利点は、本発明を添付の図面に関連して実施の形態に基づき詳細に説明した以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】顕微鏡の概略的な斜視図である。
図2図1に示した顕微鏡のステージの高さ調整のための調整機構の概略的な斜視図である。
図3図2に示した調整機構を、ハウジング部分を取り除いて示した概略的な斜視図である。
図4図2および図3に示した調整機構の部分を示す別の概略的な斜視図である。
図5図2から図4に示した調整機構の断面図である。
図6図2から図5に示した調整機構の平面図である。
図7図2から図6に示した調整機構を、クラッチを取り除いて示した別の平面図である。
図8図2から図7に示した調整機構の詳細を示す概略的な斜視図である。
【0032】
図1には、デジタル顕微鏡10の概略的な斜視図が示されている。顕微鏡10は、定置のスタンドベースボディ12を有しており、該スタンドベースボディ12により、顕微鏡10は面上に設置され得る。さらに、顕微鏡10は、旋回ユニット14を有している。この旋回ユニット14は、スタンドベースボディ12に対して相対的に旋回可能である。旋回ユニット14は、少なくとも1つの画像取込ユニットを有しており、この画像取込ユニットにより、顕微鏡観察すべき対象物の画像が取り込まれ得る。特に、画像取込ユニットにより、単独の画像が取り込まれ得るのみならず、動画も取り込まれ得る。この動画は、顕微鏡観察すべき対象物を様々な視点角から見ることを可能にする。
【0033】
さらに旋回ユニット14は、対物レンズシステムまたはズームシステムを有しており、この対物レンズシステムまたはズームシステムにより、顕微鏡観察すべき対象物の様々な倍率が設定され得る。
【0034】
対物レンズシステムは特に、多数の対物レンズを有している。多数の対物レンズのうちの1つが任意に顕微鏡の光線経路内へと旋回されている。
【0035】
画像取込ユニット、特にカメラと、対物レンズシステムとは、旋回ユニット14のハウジング16により覆われているので、図1では見えない。
【0036】
対物レンズシステムの複数の対物レンズは、特に同焦点の対物レンズであるので、対物レンズの交換時に、ユーザによる再焦点合わせは不要である。対物レンズは、特に旋回ユニットが回転させられる回転軸線と、対物レンズの境界面、つまり現在使用されている対物レンズが配置されている領域との間の距離に調整されるので、ユーセントリックなシステムが生じ、その結果、旋回ユニット14がスタンドベースボディ12に対して相対的に旋回された場合に、再焦点合わせは要求されない。
【0037】
さらに顕微鏡観察すべき対象物が置かれるステージ18が、スタンドベースボディ12に組み付けられている。このステージ18は、調整機構20によって高さ調整され得る、つまりステージ18と顕微鏡10のベース22との間の距離が変更され得る。ステージ18のこの高さ調整により、顕微鏡観察すべき対象物における焦点合わせが達成されるので、対象物を、鮮明に焦点を合わせられた形式で見ることができる。ステージ18は、特に二方向矢印P1の方向で線状に調整させられる。
【0038】
図2図8の各図には、調整機構20の図が示されている。図2は、概略的な概観の斜視図を示しており、図3は、ハウジングが取り除かれた状態の斜視図を示しており、図4は、別の斜視図を示しており、図5は、断面図を示しており、図6および図7は両方とも、上から見た平面図を示しており、図8は、調整機構20の詳細の概略的な斜視図を示している。
【0039】
調整機構20は、調整ユニット24を有している。調整ユニット24により、ステージ18が移動され得る。この調整ユニット24は、任意で、手動の駆動のための操作ユニット26によって、または電気的な駆動ユニット28により駆動され得る。
【0040】
調整ユニット24は、定置のユニット30を有している。この定置のユニット30は、顕微鏡ベース22に対して相対的に不動であり、スタンドベースボディ12に堅固に結合されている。さらに、調整ユニット24は、可動のユニット32を有している。この可動のユニット32は、スライドと同様に、定置のユニット30に対して相対的に移動され得る。この移動によって、図2に示す可動のユニット32の上面においてこの可動のユニット32に取り付けられているステージ18が移動させられる。
【0041】
定置のユニット30は、ハウジング34を有している。このハウジング34は、図3では省略されているので、内側の構成要素、特に可動のユニット32の可動のスライド36を見ることができる。
【0042】
調整ユニット24は、静的に組み付けられた駆動シャフト38を有している(たとえば図5を参照)この駆動シャフト38は、本実施の形態では、ピニオンシャフトとして設計されている。この駆動シャフト38は、ラック・アンド・ピニオン機構40を介してスライド36に連結されており、この場合、駆動シャフト38が回転させられると、スライド36が、駆動シャフト38の回転方向に応じて、二方向矢印P1の方向で移動させられるので、ステージ18は相応して高さ調整させられる。
【0043】
手動の操作ユニット26は、2つのノブ42,44を有している。これらのノブ42,44の回転により、手動の操作ユニット26の第1の出力シャフト46が回転させられる。2つのノブ42,44のうちの一方のノブは、微細駆動部として機能し、他方のノブは、粗駆動部として機能する。この場合、同一の回転が行われた場合に、シャフトは、粗駆動部によって、微細駆動部によってもよりも高速で回転させられるので、ステージ18の迅速な調整が実施される。粗駆動部は特に、まず、対象物が大まかに焦点合わせされている位置へとステージ18を素早く移動させるために用いられる。焦点面における正確な位置決めは、次いで微細駆動部によって行われる。
【0044】
電気的な駆動ユニット28は、モータ48、特に電動モータと、変速装置50とを有しており、該変速装置50を介して、モータ48が第2の出力シャフト52に連結されている。本発明の択一的な実施の形態では、モータ48は、第2の出力シャフト52に直接的に連結されていてもよい。
【0045】
図5および図7において見ることができるように、調整ユニット24の駆動シャフト38と、2つの出力シャフト46,52とは、その長手方向軸線が1つの直線L上に延びているように配置されている。さらに、これらの図からは、駆動シャフト38と出力シャフト46との間、ならびに駆動シャフト38と出力シャフト52との間に間隙が形成されていることを良好に見ることができる。したがって、駆動シャフト38は、上記出力シャフト46,52に対して持続的には連結されていない。
【0046】
むしろ、駆動シャフト38と、手動の操作ユニット26の第1の出力シャフト46との間の連結は、電磁クラッチとして設計されている第1の連結ユニット54を介して形成され、かつ駆動シャフト38と電気的な駆動ユニット28の第2の出力シャフト52との間の連結は、同様に電磁クラッチとして設計されている第2の連結ユニット56を介して形成されている。
【0047】
2つの電磁クラッチ54,56は、特に同一に設計されている。択一的な態様では、両方のクラッチ54,56は、同一に形成されていなくてもよい。択一的には、電磁クラッチとは別の種類のクラッチが使用されることも同様に可能である。
【0048】
図2から図8に示された電磁クラッチ54,56は、いわゆるフリクションプレートクラッチである。フリクションプレートクラッチでは、その都度一方のフリクションプレートが回転固定された形式で各出力シャフト46,52に結合されており、他方のフリクションプレートが回転固定された形式で駆動シャフト38に結合されている。各クラッチ54,56が作動されていない場合、つまり電流が供給されていない場合、フリクションプレート間には小さな間隙があるので、各出力シャフト46,52が回転させられた場合に、駆動シャフト38へとトルクが伝達されず、駆動シャフト38は回転させられない。
【0049】
他方で各クラッチ54,56に電流が供給された場合、各クラッチ54,56の磁石は、2つのフリクションプレートが押し付け合うことを生ぜしめるので、摩擦の結果として、各出力シャフト46,52のトルクが、駆動シャフト38に伝達されてもよく、したがって駆動シャフト38は同様に回転させられる。
【0050】
顕微鏡10は2つの操作モード、つまり手動の操作モードと、電動式の操作モードで操作され得る。手動の操作モードでは、第1のクラッチ54にエネルギが供給されるので、この第1のクラッチ54が作動させられて、第1の出力シャフト46と駆動シャフト38との間で連結部が形成される。他方では、第2のクラッチ56は、この手動の操作モードでは非作動にされる、つまりエネルギを供給されないので、電動的な駆動ユニット28の第2の出力シャフト52と駆動シャフト38との間でトルクは伝達されない。したがって、この手動の操作モードでは、駆動シャフト38は、手動の操作ユニット26によってのみ駆動され得るので、ステージ18は手動で高さ調整され得る。
【0051】
他方で電動式の操作モードでは、第2のクラッチ56が作動され、つまりエネルギを供給されるので、第2の出力シャフト52から、つまり電気的な駆動ユニット28から駆動シャフト38にトルクが伝達される。第1のクラッチ54は非作動にされる、つまりエネルギを供給をされないので、手動の操作ユニット26の第1の出力シャフト46と、駆動シャフト38との間で連結部は存在しない。したがって、この電動式の操作モードでは、ステージ18は電気的な駆動ユニット28によって調整される。
【0052】
特に、切換ユニットが設けられており、この切換ユニットにより、ユーザは、任意でこれら2つの操作モードを切り換えることができるので、ユーザは常に簡単な形式でステージ18の調整がどのように行われるべきかを規定することができる。
【0053】
本発明の択一的な実施の形態では、別の種類の電磁的なクラッチも使用され得る。択一的には、2つのクラッチ54,56のために互いに異なる種類のクラッチが使用されることも同様に可能である。
【0054】
さらに調整機構20は、センサユニット60を有しており、このセンサユニット60により、ステージ18の各現在位置が検出され得る。センサユニット60は、調整ユニット24の部分を形成するので、センサユニット60は、操作モードとは関係なく、かつ手動の操作ユニット26および電気的な駆動ユニット28とは関係なく機能する。
【0055】
センサユニット60は特に、第1のセンサエレメント62を有している。この第1のセンサエレメント62は、スライド36に組み付けられており、したがってステージ18と一緒に移動させられる。さらに、センサユニット60は、第2のセンサエレメント64を有している。この第2のセンサエレメント64は、調整ユニット24の定置のユニット30の部分を形成しており、したがってステージと18一緒に移動させられない。センサユニット60は、常時、第1のセンサエレメント62と第2のセンサエレメント64との互いに対する相対位置を検出することができるように設計されており、その結果として、同様にステージ18の位置も検出され得る。これにより、ステージ18の位置が、操作モードがいかに頻繁に、かつ何時切り換えられたかに拘わらず、常に確実に検出され得ることが達成される。
【0056】
上述の調整ユニット20により、特に、ステージ18の手動の調整の全ての利点と、ステージ18の電動式の調整の全ての利点とが簡単な形式で組み合わせられることが達成され、それにも拘わらず、極めて単純な構造が達成される。特に、手動の調整および電動式の調整は、使用されていないユニットを電磁クラッチを介して完全に分離した結果、互いに完全に独立して使用されてもよく、この場合、一方の駆動ユニットは他方の駆動ユニットに対していかなる影響も有しない。
【0057】
手動の機構の粗駆動部は特に、ユーザが対象物を見つけるためにステージ18を極めて迅速に駆動させ、その後に、正確な焦点を見つけるための微細駆動機構に切り換えることを可能にする。急速な動作において、ユーザはより正確かつ精密な焦点合わせのための電動式の駆動部を係合させるために対応するクラッチ54,56を作動/非作動にすることを介して電動式の操作モードに切り換えることもできる。
【0058】
手動の合焦駆動部を有することは、焦点面における迅速かつ直感的で単純な位置決めを可能にする一方で、同一の軸をモータにより駆動することは、精密かつ再現可能な合焦操作および自動化された焦点合わせを可能にする。したがって、スピードと精度のための相反する要求がバランスを取って実現される。
【0059】
さらに、電磁クラッチ54,56は、駆動シャフト38へのトルク伝達の制限により主要システムに対する付加的な利点を提供する。加えられたトルクが係合したクラッチ54,56の保持トルクを超過した場合、クラッチ54,56は、摩耗を最小限にするためにスリップし、不適切な取扱いの結果システム内で分離する。したがって、システムへの損傷は阻止される。
【符号の説明】
【0060】
10 顕微鏡
12 スタンドベースボディ
14 旋回ユニット
16 ハウジング
18 ステージ
20 調整機構
22 ベース
24 調整ユニット
26 手動の操作ユニット
28 電気的な駆動ユニット
30 定置のユニット
32 可動のユニット
34 ハウジング
36 スライド
38 駆動ユニット
40 ラック・アンド・ピニオン機構
42,44 ノブ
46 第1の出力シャフト
48 モータ
50 変速装置
52 第2の出力シャフト
54,56 クラッチ
60 センサユニット
62,64 センサエレメント
P1 方向
L 長手方向軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8