特許第6567066号(P6567066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567066
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ソーラーモジュール用裏面フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20190819BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H01L31/04 562
   B32B27/20 Z
   B32B27/28 101
   B32B27/32 E
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-546125(P2017-546125)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公表番号】特表2018-508999(P2018-508999A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2016000362
(87)【国際公開番号】WO2016138990
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】102015103045.4
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514005102
【氏名又は名称】ビショフ プルス クライン ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bischof + Klein SE & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ヒュルスマン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター レーアター
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−535365(JP,A)
【文献】 特開2013−033959(JP,A)
【文献】 特開2014−091218(JP,A)
【文献】 特開2011−152720(JP,A)
【文献】 特開2000−334897(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0083487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なEVA(エチレンビニルアセテートコポリマー)中にソーラーセルが封止されたソーラーモジュールのための裏面フィルムであって、ここで、前記裏面フィルムはソーラーモジュールに適用されるにあたっては、ソーラーモジュールの裏面において前記EVAと接して、140℃超の温度での架橋により結合されてなるものであって、かつ、前記裏面フィルムは、共押出成形により、相互に直接接合されたポリオレフィン層から構成される多層構造であり、層が全体として、偶数でかつ鏡像的に配置されており、これらの層のうち、前記EVAと接する前部層が100μm未満の層厚を有し、20%までの質量割合の顔料または反射性粒子で充填されており、かつ後続の層で300μm超の裏面フィルム合計厚になるように補強されており、これらの層はそのすべてが、あるいは一定の混合割合で、非架橋ポリプロピレンから構成され、ここで、前部層の後ろに存在する層のうち、少なくとも1つの層が、裏面フィルムの質量を基準として40%までの質量割合の、かつ、各層の質量を基準として少なくとも5%の質量割合の無機安定化フィラーで充填されており、ここで、無機安定化フィラーは、タルクおよび/またはその他の耐酸性無機材料から構成されることを特徴とする、前記裏面フィルム。
【請求項2】
偶数でかつ鏡像的に配置されたポリオレフィン層のうち、2つの隣接する最も内側の層が、30〜60%のポリエチレンの混和物を含有することを特徴とする、請求項記載の裏面フィルム。
【請求項3】
偶数でかつ鏡像的に配置されたポリオレフィン層のうち、2つの隣接する最も内側の層が、それぞれ80μm未満の厚さであることを特徴とする、請求項記載の裏面フィルム。
【請求項4】
偶数でかつ鏡像的に配置されたポリオレフィン層のうち、2つの隣接する最も内側の層が、タルクを含有しないことを特徴とする、請求項2または3記載の裏面フィルム。
【請求項5】
前部層が、30%までのポリエチレン割合を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の裏面フィルム。
【請求項6】
複数の層を有するフィルムチューブを環状ダイから共押出成形し、その後にブロー成形し、かつ、平らに置かれたフィルムチューブ硬化前ブロッキングすることによって、複数の層を偶数および鏡像の層配置で有する平面状の裏面フィルムを得ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の裏面フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記共押出成形の際に、少なくとも5%の質量割合の無機フィラーを有する、ポリプロピレンから構成される外側の層を押出成形することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記共押出成形の際に、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物から構成される、最も内側の層を押出成形することを特徴とする、請求項6または7記載の法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のソーラーモジュール用裏面フィルムに関する。ソーラーモジュールは、プレート型の、それぞれ個別または一群の配置で組み立て可能なユニットであり、ここで、電気的に相互に接続されたソーラーセルは、中央平面に配置されており、その際、全体的に、封入材料、例えばエチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)中に埋め込まれている。そのようなソーラーモジュールの前面は例えば、フロントカバーとしてのガラス板によって形成されており、このフロントカバーは、ソーラーセルのEVA封止材の前面(上面)を覆い、環境影響および洗浄に関して良好な光透過性、耐候性、耐引っかき性、また前面(上面)環境に対するソーラーセルの良好な電気的絶縁性、ならびに良好な機械的安定性がもたらす。ソーラーモジュールの裏面を覆うために、一般的には裏面フィルムが使用されるが、これは、光透過性に関しては前面の要求を満たす必要はないものの、耐候性、絶縁耐力およびEVA封止材に対する適合性については高度な要求を満たさなくてはならない。
【0002】
裏面フィルムは殊に、積層化プロセスにおいてパッケージ中のソーラーセルのEVA封止材と接合して、強固なカプセル化されたユニットにしなければならず、このプロセスでは、まず層状に緩く積み重なった材料を、140℃〜160℃の温度で相互に接合させる。
【0003】
ここでEVAは、その軟化温度をはるかに上回って加熱され、その結果、EVAはソーラーセルを包み、裏面フィルムと同様にフロントカバーにも結合する。さらにEVAは、化学的添加剤により、または照射によって架橋して、透明な塊になり、かつ耐候性が良好になる。このプロセスにおいて、裏面フィルムは「外側シェル」として役立つが、ただし、予め膨張させた裏面フィルムにおける収縮プロセスを排除しながら、相応する耐熱性が必要とされる。
【0004】
高い耐熱性の意味合いにおいて、従来的には、ポリエステル系裏面フィルムが使用されるが、しかしながらこれは、EVAに対する適合性が不良であり、接着性被覆を備えていなければならない。吸水および脆化の傾向を有するこの材料の限定的な長期耐加水分解性も欠点である。中間層および/またはカバー層を有するそのような裏面フィルムの多層構造、ならびにモジュール製造における比較的高い収縮率が、ポリエステル材料の明らかな欠点を特徴付けている。
【0005】
それに対して欧州特許第2390093号明細書(EP 2 390 093 B1)からは、ポリエチレン系裏面フィルムが公知であり、ここでは、ポリエチレンホモポリマーおよびポリエチレンコポリマーからなる材料が、直接(接着層なしに)共押出によって1つに組み合わせられる。ポリエチレン材料にとって、ソーラーモジュール構造物内のEVAに対して適合性が良好であることが有利である。しかしながら問題はポリエチレン材料の耐熱性であり、これは、材料成分を選択することによって、また殊に材料を架橋することによっても上昇させることが望ましい。しかしながら、架橋の手間は別として、限定的な耐熱性は、例えばソーラーモジュールが数十年にわたり屋外領域で使用される場合、EVA封止プロセスにおいてのみならず、長期的にも問題となる。
【0006】
本発明の課題は、耐候性であり、かつ熱に強く、ならびに価格面で有利に生産可能なソーラーモジュール用裏面フィルム、殊に、数十年の期間にわたり機能性を有する、安定かつ価格面で有利なソーラーモジュールの生産を可能にするソーラーモジュール用裏面フィルムを提供することである。
【0007】
本発明によれば、この課題は、請求項1の前提部に記載の裏面フィルムから出発して、請求項1の特徴部によって解決される。さらに本発明の課題は、請求項10記載の方法、請求項13記載の方法および請求項16記載の方法によって解決される。
【0008】
請求項1記載の裏面フィルムは、ポリプロピレンからの層、または著量のポリプロピレン割合を有するポリオレフィン混合物から構成される層の複合体を意図しており、ここでは、使用可能な温度範囲について、ポリエチレン系プラスチック混合物に比べ、大幅な上昇が生じる。これにより特に、手間と費用のかかる材料の架橋を省略することができる。使用可能な温度範囲のさらなる拡大は、無機安定化フィラーによって達成することができ、これは、フィルムの機械的特性も改善することができ、その際に収縮挙動も抑制する。またその際に、ポリプロピレンにとって、汎用性、広範囲かつ幅広く分岐した使用分野における当業者の適用知識、および大量生産用材料による長い経験が有利となる。ここで、酸化、感光性または燃焼性に対するポリプロピレンの公知の脆弱性は、従来の酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤および難燃剤によって確実かつ実証的に処理することができると理解される。
【0009】
そのような裏面フィルムは、共押出することによって相互に直接接合した層を有し、価格面で有利に製造可能である。共押出によって殊に、さらなる作業工程を要する、接着材料による中間層を介した層接合が省かれる。
【0010】
フィルム厚の均一性の意味合いで、また均一な層形成の意味合いでも、層は共押出において制限された層厚で実施するのが望ましい。このことは殊に、裏面フィルムの合計厚が300μm(0.3mm)超である場合に該当し、この厚さは通常、例えば20KVまでの電圧用の裏面フィルムに必要とされる絶縁耐力からも要求されるが、機械的応力に関連するソーラーモジュールの要求も考慮する。結果的に、裏面フィルムは、複数の共押出しされた層から構築されている。ただしここでは、概してポリプロピレンに由来する硬度および剛性、また必要とされる場合、公知のように変性により容易に調整可能な衝撃強さも有利である。
【0011】
裏面フィルムが多層構造である場合、あらかじめ常用の方法により、前部層は、ソーラーセルに向けられており、EVA封止材と直接接合しており、光を反射するように設計されており、この光は、ソーラーセルを横方向にまたは散乱光として通過させ、残りを利用するために反射させることが望ましい。この観点において、100μm未満、好適には約50μmにすぎない厚さを有する第一の層は、約20%の質量割合までの顔料、例えば二酸化チタンおよび/または反射性粒子で充填されており、その結果、この光は、内部反射の意味合いで、非常に透明な架橋EVA封止材を通り、再びソーラーセルまたはフロントカバーへと反射される。前部層をソーラーセルのエチレンビニルアセテートコポリマー封止材に良好に接着するために、前部層のポリプロピレンに、60%までの割合のポリエチレンまたはポリエチレンコポリマーを添加することができる。
【0012】
前部層の後ろに存在する、残りの裏面フィルムの合計厚は、有利には、さらに複数の層に分けられる。例えば、外側にある層は、たいていの場合は純粋に光学的観点から、また後ろから入射する熱線を反射するためにも、白くまたは反射するように着色されていてよい。それに応じて、前部層に対置される後ろの外側の層は、前部層と同じ材料で規定することさえでき、同じ押出成形機から共押出へと供給することができる。
【0013】
中間に存在する層に、殊に裏面フィルムの合計質量を基準として40%までの質量割合を有する無機安定化フィラーを備えると、それによって、より高い機械的強度、例えば向上した耐熱性も獲得され、EVAの積層化プロセスにおいて、例えば長期使用においても収縮傾向が抑制される。
【0014】
フィラーとしては殊に、無機耐酸性材料の他にはタルクが考えられ、これは、ポリプロピレンの関連で(また材料の長期耐候性の関連でも)有利であると実証された。フィラーの耐酸性は、酸性状態に対するEVA材料の長期展開の可能性に鑑みて有利である。ここで各層中のフィラーは、1つの層または各層を、特に製造過程におけるEVA材料の架橋において、また例えば場合によっては、数十年の期間にわたる使用においても、材料の収縮傾向に対して長期的に安定化させるために、または全体的に硬化させるために、それぞれ、少なくとも5%の層の質量割合を有していてもよい。
【0015】
そのような裏面フィルムの、極めてフレキシブルな方法技術的実現は、平らなキャストフィルムウェブに共押出成形することによって可能であり、ここで複数のポリプロピレン層が、フラットダイから押し出され、一体化される。ここで、層厚、延いては裏面フィルムの合計厚をも制御するためには、それぞれ制限された厚さを有する複数の層が有利である。ここで材料およびフィラーから構成される各層は、使用可能な押出成形機の数が十分である場合、相互に異なって規定することができる。しかしながら、2つまたは複数の同一材料層を備え、これらを例えば一連の層において相互に分離して配置すること、または層厚を増やすために並べて配置することも決して除外されない。
【0016】
製造コストの観点における別の有利かつ実際に、特に簡単に実施可能な、裏面フィルムの製造方法は、ポリプロピレンからなる複数の層またはポリプロピレンを有する複数の層の共押出を伴った多層ブローフィルムチューブの製造であり、ここで、押出成形され、ブロー成形された後のブローフィルムチューブは、ローラで向きをかえて平らにするか、またはローラ間でまとめて押し潰して平らにし、その結果、ブローフィルムチューブは、積層された内部層の内側がブロッキングすることによって、平らなフィルムテープへと成形される。
【0017】
それにより、偶数の層であって、かつ(鏡像)対称層構造を有する複層の平面状フィルムが製造される。例えばブローフィルムの外側の層が、顔料または反射性粒子を充填したポリプロピレンによって形成される場合、この層は、裏面フィルムの前部層のみならず、相応する色彩および相応する反射特性を有する、対置された後部層をも形成することになる。ブロッキングが生じた後に、裏面フィルムにおいて層が対称的に繰り返されるブローフィルムの中間層は殊に、適切なフィラーを含んでいてもよい。ブロッキングが生じた後に、裏面フィルムにおいて内側で二重に現れるブローフィルムの内部層は、有利にはブロッキングするように設計されている。通常は、アンチブロッキング剤としても使用されるフィラー、例えばタルクは、目的に応じて減量されることが意図されるか、または使用されない。効果的なブロッキングプロセスのために、ブローフィルムの内部層は、ポリプロピレンだけでなく、60%までのポリエチレンの混和物を備えていてよく、その結果、一方ではポリエチレンの低い融点によって、内部層の一体化される側の、効果的なブロッキング接合が生じ、他方ではポリプロピレンによって、さらに層の安定性が保証される。その際、好適には内部層を、その他の層と比べて薄く、それぞれ50μm未満の厚さで製造する。
【0018】
裏面フィルムを製造するための方法のどちらも、つまり、平らなキャストフィルムの共押出およびブローフィルムの共押出の双方は、引き続いてのブロッキングを伴い、良好に取り扱い可能で、かつコスト的に有利でもある方法で、大工業的に実施することができ、また殊にソーラーモジュールの積層化プロセスにおいて熱的に安定し、収縮することなく維持され、長期、しばしば数十年にわたると見込まれるソーラーモジュールの使用においても、耐候性および機械的耐久性、ならびにソーラーセルのEVA封止材との強固な結合力を保証する、ポリプロピレン系フィルムが提供される可能性を導く。
【0019】
また、原則、キャストフィルムのような構造を有する多層フィルムは例えば、非鏡像的に繰り返される一連の層または奇数の層数を伴う場合であっても、ブローフィルムとして、全層数での共押出により製造可能であり、その結果、ブローフィルム(ブロッキングなし)は、長さに沿ってのみ分離されて、裏面フィルムになる。
【0020】
裏面フィルムをモジュールの個別部材へと生産することができ、これを個別のソーラーモジュールに合わせて裁断し、そしてソーラーセル組と、EVAを有するその組の両面被覆と、フロントカバーを一緒にラミネータに通過させる。