(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の観点から、本発明の目的は、ポリマレイミド/コモノマー系における使用のためのコモノマーを提供すること、ならびに速い硬化速度(コモノマーとポリマレイミドとの速い反応)および良好な加工特性、水を吸収する傾向の低いコモノマーの提供、その結果としての、(i)高温での良好な機械的特性、および/または(ii)熱サイクルの条件下において微小亀裂を生じる傾向が少ないこと、および/または(iii)良好な電気特性(低い誘電率)によって特徴付けられるそのようなポリマレイミド/コモノマー系にあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の詳細な説明
この目的は、下記の式(I):
【0013】
【化1】
【0014】
[式中、
Dは、x官能性基であり;および
xは、整数≧2であり;
ただし、
当該x官能性基Dは、15000g/molから150000g/molの範囲の平均分子量を有するポリカーボネートではない]の[(2−エトキシ−5−trans−1−プロペン−1−イル)−フェノキシ]末端化合物によって達成される。
【0015】
(2−エトキシ−5−trans−1−プロペン−1−イル)−フェノールは、一般的には、バニトロープと呼ばれる。特定の分子量のバニトロープ末端ポリカーボネートは、先行技術(日本特許第3220567号、段落[0047]、実施例4:20800g/molの平均分子量および51200g/molの重量平均分子量)において開示されているが、当該先行技術において、ポリマレイミドに対するコモノマーとしての、このポリカーボネートの有用性に関して言及はなされていなかった。
【0016】
本発明の一実施形態において、Dはポリカーボネートではない。
【0017】
興味深いことに、米国特許第4,789,704号では、ビスマレイミドと、多官能性エポキシ樹脂ならびにo−アリルフェノールおよび/またはオイゲノールの重付加生成物をベースとする、したがって、本発明において開示されるコモノマーに対していくつかの構造的類似性を有するアルケニルフェノキシエーテルとで構成される樹脂について開示されているが、これらのアリルフェノキシ置換エポキシは、硬化を遅くし、結果として長い硬化時間を必要とする、ビスマレイミドとの混合物を生じる。
【0018】
式(I)の本発明のtrans−2−エトキシ−5−(1−プロペニル)フェノキシ置換化合物の合成のためのキーとなる原材料は、trans(E)−2−エトキシ−5−(1−プロペニル)フェノールであり、これは市販されている。この分子における(1−プロペニル)基のエナンチオマー的純度(trans(E)立体配置)に起因して、式(I)による本発明の化合物は、cis(Z)−異性体を全く含まない。本発明のtrans(E)−プロペニルフェノキシ化合物とポリマレイミドとのディールス‐アルダー共重合は速く、そのため、多くの技術的用途にとって望ましいポリマレイミド/コモノマー系を速く硬化させる配合が可能となる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)のDは、以下から選択される二官能性基である:
(a)2個から12個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレン基;
(b)5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;
(c)複素環に3個から5個の炭素原子と少なくとも1個の窒素、硫黄、または酸素原子とを有する複素環基;
(d)一炭素環式基または二炭素環式基;
(e)以下:
一炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基から選択される少なくとも2つの基からなる橋かけ多環式基であって、これら2つ以上の基は、直接的な炭素−炭素結合または二価の基によって互いに結合されており、好ましくは、当該二価の基は、以下:オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基から選択される、橋かけ多環式基;
(f)下記の構造の基のうちの1つ:
【0020】
【化2】
【0021】
[式中、AR
1、AR
2、AR
3、AR
4、AR
5、およびAR
6は、独立して、二官能性脂肪族または芳香族残基であり;
nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格中の繰り返し構造ユニットの数を表す];
(g)下記の構造の基:
【0022】
【化3】
【0023】
[式中、R
26は、以下から選択される単官能性基である:
(1)2個から12個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基、
(2)5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
(3)6個から12個の炭素原子を有するアリール基、
(4)[(2−エトキシ−5−trans−1−プロペン−1−イル)−フェノキシ]基]。
【0024】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、式(I)のDは、以下:
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格中の繰り返し構造ユニットの数を表す]から選択される二官能性基である。
【0028】
本発明の硬化性組成物
別の態様において、本発明はさらに、以下:
i.下記の式(I):
【0029】
【化6】
【0030】
[式中、
Dは、x官能性基であり;
xは、整数≧2である]による少なくとも1つの[(2−エトキシ−5−trans−1−プロペン−1−イル)−フェノキシ]末端化合物;および、
ii.下記の式(II):
【0031】
【化7】
【0032】
[式中、
Bは、炭素−炭素二重結合を含む二官能性基であり、
Aは、y官能性基であり;ならびに
yは、整数≧2である]の少なくとも1種のポリイミド、
を含む硬化性組成物に関する。
【0033】
本発明の好ましい硬化性組成物において、式(I)のDは、以下から選択される二官能性基である:
(a)2個から12個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレン基;
(b)5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;
(c)複素環に3個から5個の炭素原子と少なくとも1個の窒素、硫黄、または酸素原子とを有する複素環基;
(d)一炭素環式基または二炭素環式基;
(e)以下:
一炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基から選択される少なくとも2つの基からなる橋かけ多環式基であって、これら2つ以上の基は、直接的な炭素−炭素結合または二価の基によって互いに結合されており、好ましくは、当該二価の基は、以下:オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基から選択される、橋かけ多環式基;
(f)下記の構造:
【0034】
【化8】
【0035】
[式中、AR
1、AR
2、AR
3、AR
4、AR
5、およびAR
6は、独立して、二官能性脂肪族または芳香族残基であり;
nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格における繰り返し構造ユニットの数を表す]の基のうちの1つ;
(g)下記の構造:
【0036】
【化9】
【0037】
[式中、R
26は、以下:
(1)2個から12個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基、
(2)5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
(3)6個から12個の炭素原子を有するアリール基、
(4)[(2−エトキシ−5−trans−1−プロペン−1−イル)−フェノキシ]基、
から選択される単官能性基である]の基。
【0038】
本発明のさらなる好ましい硬化性組成物において、式(I)のDは、以下:
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
[式中、nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格における繰り返し構造ユニットの数を表す]から選択される二官能性基である。
【0042】
本発明の好ましい硬化性組成物において、式(II)によるポリイミドにおけるy官能性基Aは、以下の二官能性基から選択される:
a)2個から12個の炭素原子を有するアルキレン基;
b)5個から6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;
c)環に4個から5個の炭素原子と少なくとも1個の窒素、酸素、または硫黄原子とを有する複素環基;
d)一炭素環式基または二炭素環式基;
e)以下から選択される少なくとも2つの基からなる橋かけ多環式基:一炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基;この場合、これら2つ以上の基は、直接的な炭素−炭素結合または二価の基によって互いに結合されており、好ましくは、当該二価の基、以下:オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、または、以下の基のうちの1つ:
【0043】
【化12】
【0044】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに、
R
7およびR
8は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]から選択される;
f)下記の式(III)によって定義される基:
【0045】
【化13】
【0046】
[式中、R
9は、下記の基:
【0047】
【化14】
【0048】
のうちの1つである]。本発明の好ましい硬化性組成物において、式(II)によるポリイミドにおけるBは、以下の二官能性基から選択される。
【0049】
【化15】
【0050】
本発明のさらなる好ましい硬化性組成物において、式(II)によるポリイミドは、以下から選択される:
4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3−メチル−5−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’−ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3’−ビスマレイミドジフェニルスルホン、ビスマレイミドジフェニルインダン、2,4−ビスマレイミドトルエン、2,6−ビスマレイミドトルエン、1,3−ビスマレイミドベンゼン、1,2−ビスマレイミドベンゼン、1,4−ビスマレイミドベンゼン、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,4,4−トリメチル)ヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン。
【0051】
本発明のさらなる好ましい硬化性組成物において、式(I)のDは、以下:
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
[式中、nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格中の繰り返し構造ユニットの数を表す]から選択される二官能性基であり、
ならびに式(II)によるポリイミドは、以下から選択される:
4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3−メチル−5−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’−ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3’−ビスマレイミドジフェニルスルホン、ビスマレイミドジフェニルインダン、2,4−ビスマレイミドトルエン、2,6−ビスマレイミドトルエン、1,3−ビスマレイミドベンゼン、1,2−ビスマレイミドベンゼン、1,4−ビスマレイミドベンゼン、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,4,4−トリメチル)ヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン。
【0056】
別の実施形態において、本発明はさらに、上記において定義されるような硬化性組成物であって、重合反応を遅らせるための1種または複数種の硬化抑制剤をさらに含み、その結果として、当該組成物および中間生成物、例えば、プリプレグ、成形コンパウンド、および樹脂溶液などの加工性および貯蔵安定性を変更する硬化性組成物に関する。好適な硬化抑制剤は、ヒドロキノン、1,4−ナフトキノン、イオノール、およびフェノチアジンであり、これらは、当該組成物の総重量に対して0.1重量%から2.0重量%の間の濃度において使用される。当該混合物を調製する前に、当該抑制剤を成分のうちの1つに溶解させることは有利である。
【0057】
別の実施形態において、本発明はさらに、硬化プロセスを加速するために1種または複数種の硬化促進剤をさらに含む、上記において定義されるような硬化性組成物に関する。典型的には、硬化促進剤は、当該硬化性組成物の総重量に対して0.01重量%から5重量%の量において、好ましくは0.1重量%から2重量%の量において加えられる。好適な硬化促進剤としては、イオン触媒およびフリーラジカル重合触媒が挙げられる。フリーラジカル重合触媒の例としては、(a)有機過酸化物、例えば、ジ第三級ブチルペルオキシド、ジアミルペルオキシド、およびt−ブチルペルベンゾエート、ならびに(b)アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。イオン触媒の例は、アルカリ金属化合物、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアニリン,アザビシクロオクタンなど、複素環式アミン、例えば、キノリン、N−メチルモルホリン、メチルイミダゾール、およびフェニルイミダゾールなど、ならびに亜リン酸化合物、例えば、トリフェニルホスフィンおよびハロゲン化第四級ホスホニウムなどである。当該硬化促進剤は、当該硬化性組成物の成分と混和することができ、あるいは粉末ブレンドプロセスまたは溶媒ブレンドプロセスのどちらかによってプレポリマーの製造の際に加えてもよい。
【0058】
二次コモノマー成分を含む硬化性組成物
別の態様において、本発明はさらに、上記において定義されるような式(I)による少なくとも1種の[2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ]末端化合物および上記において定義されるような式(II)の少なくとも1種のポリイミドに加えて、以下:アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジド、シアネートエステル、フタル酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、ジビニルベンゼンから選択される1種のコモノマーまたは少なくとも2種のコモノマーの組み合わせからなる二次コモノマー成分を含む硬化性組成物であって、当該二次コモノマー成分が、総組成物の1重量%から30重量%の間を占める硬化性組成物に関する。
【0059】
これらの二次コモノマーは、粘度および/または加工性を変更する、本発明の組成物のための希釈剤として機能し得る。当該二次コモノマーは、本発明の組成物において硬化促進剤としてまたは硬化遅延剤としても機能し得る。
【0060】
好ましくは、当該二次コモノマー成分は、以下から選択される1種のコモノマーまたは少なくとも2種のコモノマーの組み合わせからなる:
(a)式(IV)の化合物
【0061】
【化19】
【0062】
[式中、
R
10は、二官能性基であり、ならびに
R
11およびR
12は、独立して、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基である];
(b)式(V)の化合物
【0063】
【化20】
【0064】
[式中、
R
13は、二官能性基であり、ならびに
R
14およびR
15は、独立して、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基である];
(c)式(VI)の化合物
【0065】
【化21】
【0066】
[式中、
R
16は、二官能性基であり、ならびに
R
17およびR
18は、独立して、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基である];
(d)式(VII)の化合物
【0067】
【化22】
【0068】
[式中、
R
19は、二官能性基であり、ならびに
R
20およびR
21は、独立して、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基である];
(e)式(VIII)の化合物
【0069】
【化23】
【0070】
[式中、
R
22は、y’官能性基であり、ならびに
R
23は、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、ならびに
y’は、整数≧2である];
(f)式(IX)の化合物
【0071】
【化24】
【0072】
[式中、
R
24は、y”官能性基であり、ならびに
R
25は、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、ならびに
y”は、整数≧2である]。
【0073】
好ましくは、式IVにおける残基R
10および式VにおけるR
13は、以下の基から選択され、
【0074】
【化25】
【0075】
ならびに、式VIにおける残基R
16および式VIIにおけるR
19は、以下の基から選択され、
【0076】
【化26】
【0077】
ならびに、式VIIIにおける残基R
22および式IXにおけるR
24は、以下の基から選択される二官能性基であり、
【化27】
【0078】
ならびに、式VIIIにおける残基R
23および式IXにおけるR
25は、1−プロペン−1−イルまたは2−プロペン−1−イル基である。
【0079】
好ましくは、当該二次コモノマー成分は、以下から選択される1種のコモノマーまたは少なくとも2種のコモノマーの組み合わせからなる:
2,2’−ジアリルビスフェノール−A、ビスフェノール−Aジアリルエーテル、ビス(o−プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン、m−アミノベンズヒドラジド、ビスフェノール−Aジシアネートエステル、フタル酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、ジビニルベンゼン。
【発明を実施するための形態】
【0080】
式(I)による化合物の合成
式(I)による[2−エトキシ−5−trans−(1−プロペン−1−イル)フェノキシ]置換化合物は、trans(E)−2−エトキシ−5−(1−プロペニル)フェノール(バニトロープ)および適切な、多官能性の、好ましくは二官能性の出発物質から、様々な周知の化学反応によって合成することができる。
【0081】
Dが以下:
(a)2個から12個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレン基;
(b)5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;
(c)複素環に3個から5個の炭素原子と少なくとも1個の窒素、硫黄、または酸素原子とを有する複素環基;
(d)単炭素環式または二炭素環式基;
(e)以下から選択される少なくとも2つの基からなる橋かけ多環式基:一炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基;この場合、これらの基は、直接的な炭素−炭素結合または二価の基によって互いに結合されており、好ましくは、当該二価の基は、以下:オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基から選択される;
から選択される二価の基を表す場合の式(I)による化合物は、Williamsonエーテル合成経路の使用による、または求核ハロ置換反応による、ナトリウム塩またはカリウム塩の形態の2−エトキシ−5−trans(1−プロペン−1−イル)フェノール(バニトロープ)と、対応するジハロ化合物、Hal−D−Hal、との反応によって得られる。
【0082】
目的の化合物(I)の好ましい群は、α,ω−ビス(trans−2エトキシ−5−(1−プロペニル))アルカンを提供する、約60℃〜80℃の温度における、中性溶媒中での、ナトリウム塩またはカリウム塩の形態のバニトロープと、α,ω−ジハロアルカンとの反応によって調製することができる。
【0083】
式(I)による化合物の別の群は、溶媒としてのN−メチルピロリドンおよび触媒、例えば、炭酸カリウムなどの存在下における、170℃〜190℃の温度でのバニトロープとジハロベンゾフェノンとの反応によって調製することができる。当該合成は、ジハロベンゾフェノンを、ビスフェノール、例えば、レゾルシノールまたはヒドロキノンまたはビスフェノール−Aなどと反応させて、ハロ末端ポリエーテルケトンを形成させ、それをバニトロープでエンドキャップするように変更してもよい。当該合成において、ジハロベンゾフェノンの代わりに4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを使用することにより、対応する4,4’−ビス(2−エトキシ−5−trans−(1−プロペン−1−イル)フェノキシ)ジフェニルスルホンまたは対応するバニトロープでエンドキャップされたポリエーテルスルホンを提供することができる。
【0086】
[式中、nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格における繰り返し構造ユニットの数を表し、AR
1およびAR
2は、独立して、二官能性脂肪族または芳香族残基である]のうちの1つを表す、式(I)による化合物は、対応するジカルボン酸およびバニトロープからエステル化反応によって合成することができる。バニトロープ末端ポリエステルも、エステル化により、カルボキシ末端ポリエステルおよびバニトロープから得ることができる。
【0089】
[式中、AR
3は、二官能性脂肪族または芳香族残基である]のうちの1つを表す、式(I)による化合物は、触媒、例えば、トリフェニルホスフィンまたはアルキルトリフェニルホスホニウムハライドなどの存在下における、80℃から150℃の間の温度での、エポキシ化合物とバニトロープとの溶融反応によって調製することができる。当該反応は、有機溶媒の存在下においてまたは希釈剤の不在下において実施することができる。バニトロープとポリエポキシ化合物との間のモル比は、残留エポキシ基が当該反応の終了時に残らないようなモル比であり得るか、または、自由な未反応のエポキシ基を含む化合物を提供するように、バニトロープの量は化学量論よりも少ないモル比であってもよい。この合成において使用される好ましいエポキシ化合物は、1,3−ビスグリシジルレゾルシノール、4,4’−ビスグリシジルビスフェノール−A、4,4’−ビスグリシジルビスフェノール−F、ならびにビスフェノールまたはポリフェノールの他のグリシジルエーテル、例えば、フェノールノボラックまたはビスフェノールノボラックなどである。トリグリシジル−p−アミノフェノールまたはテトラグリシジルメチレンジアニリンも、好適な出発材料である。ポリエポキシ樹脂と末端エポキシ基を有するビスフェノールとから合成された高分子量のフェノキシ樹脂は、バニトロープ末端フェノキシ樹脂のための好適なエポキシ化合物である。
【0092】
[式中、nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格中の繰り返し構造ユニットの数を表す]のうちの1つを表す、式(I)による化合物は、バニトロープカーボネートを提供するバニトロープとホスゲンとの反応、バニトロープ/ビスフェノール−Aカーボネートを提供するバニトロープとビスクロロギ酸ビスフェノール−Aとの反応、またはバニトロープ末端ポリカーボネートを提供するバニトロープとクロロギ酸末端ポリカーボネートとの反応によって合成することができる。
【0095】
[式中、nは、2から100の範囲において選択される整数であり、ポリマー骨格中の繰り返し構造ユニットの数を表し、AR
4およびAR
6は、独立して、二官能性脂肪族または芳香族残基である]のうちの1つを表す、式(I)による化合物は、バニトロープと、ビス−イソシアネートまたはイソシアネート末端ポリウレタンとの反応によって合成することができる。バニトロープと反応させるために、芳香族、脂肪族、および脂環式のポリイソシアネートなどの様々な有機ポリイソシアネートを用いることができる。代表的な化合物としては、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビスフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’ビスイソシアナトジフェニルメタン、4,4’−ビスイソシアナトジフェニルエーテル、1,6−ビスイソシアナトヘキサン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および任意の他のポリイソシアネートが挙げられる。バニトロープと反応させるための非常に有利なポリイソシアネートは、イソシアネート末端マクロポリイソシアネートを提供する、ビス−イソシアネートとポリアルキレンエーテルグリコールとの反応によって得られるものである。ポリプロピレンエーテルグリコールをベースとする生成物は、それらの低い吸湿性により、特に興味深い。
【0096】
本発明の硬化性組成物の製造のためのプロセス
一態様において、本発明はさらに、本発明による硬化性組成物の製造のためのプロセスであって、当該組成物の成分を粉末支援ブレンドプロセス、溶融支援ブレンドプロセス、溶媒支援ブレンドプロセス、または他のブレンドプロセスを使用してブレンドし、その結果として、固体で、低融点の、または粘着性の硬化性組成物を生じる工程を含むプロセスに関する。
【0097】
溶融ブレンドプロセス
一態様において、本発明は、本発明の硬化性組成物の製造のためのプロセスであって、以下の工程:
本発明のコモノマー成分を含む、組成物の成分と、上記において定義されるようなポリイミド成分とを、70℃から250℃の範囲の温度でブレンドすることにより、低融点で低粘度の塊(樹脂)として硬化性組成物を得る工程
を含むプロセスに関する
【0098】
この方法の実践において、ブレンド温度は、比較的広い範囲にわたって変えることができる。一実施形態において、当該方法は、90℃から170℃、好ましくは100℃から160℃の温度で実施される。
【0099】
溶液ブレンドプロセス
一態様において、本発明は、本発明の硬化性組成物の製造のためのプロセスであって、以下の工程:
本発明のコモノマー成分を含む、組成物の成分と、上記において定義されるようなポリイミド成分とを、溶媒または希釈剤に溶解させる工程、および
当該溶媒または希釈剤を除去して、溶媒不含の低融点で低粘度の塊(樹脂)として硬化性組成物を得る工程、
を含む、プロセスに関する。
【0100】
一実施形態において、本発明のコモノマー成分および上記において定義されるようなポリイミド成分は、高温において溶媒に溶解される。
【0101】
好適な溶媒および希釈剤は、全ての通例の不活性有機溶媒である。そのようなものとしては、これらに限定されるわけではないが、好ましくは共溶媒としての1,3−ジオキソランとの組み合わせにおける、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど;グリコールエーテル、例えば、メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(METHYL PROXITOL)、METHYL PROXITOL ACETATE、ジエチレングリコール、およびジエチレングリコールモノメチルエーテルなど;トルエンおよびキシレンが挙げられる。
【0102】
好ましい実施形態において、当該溶媒は、1,3−ジオキソランまたは1,3−ジオキソラン含有溶媒である。
【0103】
一実施形態において、当該溶媒混合物中の1,3−ジオキソランの量は、20重量%から80重量%、例えば、30重量%から70重量%、または40重量%から60重量%の範囲である。
【0104】
当該硬化性組成物の製造のためのプロセスの実践において、すなわち、溶融プロセスおよび溶液プロセスにおいて、当該組成物中における不飽和イミド基と反応性アルケニル基との間のモル比は、所望の硬化速度を達成するために、1.0から0.1、例えば、1.0から0.2、1.0から0.3、1.0から0.4、1.0から0.5、1.0から0.6、1.0から0.7、または1.0から0.8の範囲である。
【0105】
他のブレンドプロセス
本発明の硬化性組成物の調製は、温度処理の所要時間に応じてモノマーまたはプレポリマーの均一なブレンドを得るために、必要であれば高温において、粉末、ペースト、または液体としての成分を十分に混合するための希釈剤または溶媒を全く用いずに実施することができる。このプロセスは、BMI/バニトロープタイプのコモノマー混合物の高い反応性に起因して、十分な規模へと拡張することができない。押出機プロセスを使用することで、必要な溶融温度を制御および設定することができ、それにより、反応ゾーンにおいて予備重合のために必要な温度を提供することができ、ならびにスループットによって温度に対して時間を設定することができる。冷却後、当該押出物は、ホットメルト製品または固化された溶融物であり得、これらは、樹脂粉末へと微粉砕することができる。
【0106】
貯蔵安定な混合物
当該硬化性組成物の多くの技術的用途にとって、加工性および使用前の貯蔵安定性を向上させるために、反応抑制剤を加えることによって重合を遅らせることは有利である。好適な反応抑制剤は、ヒドロキノン、1,4−ナフトキノン、およびフェノチアジンであり、これらは、当該組成物の総重量に対して0.1重量%から2.0重量%の間の濃度において使用される。当該組成物の調製の前に、当該抑制剤を成分の1つに溶解させることは有利である。
【0107】
二次コモノマー成分を含む組成物
多くの場合、本発明の硬化性組成物は、溶融物から加工することができる。溶融粘度をさげ、樹脂のポットライフを改善するために、二次コモノマー成分を加えてもよく、これらは、以下:アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジド、シアネートエステル、フタル酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、ジビニルベンゼンから選択される1種または複数種のコモノマーからなり、この場合、当該二次コモノマー成分は、総組成物の1重量%から30重量%の間を占める。当然のことながら、アリルタイプの二次コモノマー成分、例えば、ジアリルビスフェノール−A、ビスフェノール−Aジアリルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、およびトリアリルシアヌレートなどは、当該硬化性組成物に加えられた場合、重合速度を低下させ、その結果、加工性の窓を広げる。スチレンまたはジビニルベンゼンのような二次コモノマー成分は、10重量%から20重量%の間の濃度において非常に効果的であるが、重合速度を加速し、樹脂のより速い硬化とそれらの重合温度の低下をもたらす。したがって、二次コモノマー成分は、本発明の硬化性組成物の硬化速度を変更するための追加的なツールである。そのような二次コモノマー成分が使用される場合においては、最初に、[2−エトキシ−5−trans−(1−プロペン−1−イル)フェノキシ]置換化合物(I)と二次コモノマー成分とを必要な割合においてブレンドし、次いで、第二段階において、必要であれば高温で、このブレンドに混合物のポリイミド部分を溶解させるのが有利である。
【0108】
熱可塑性靭性変更剤を含む組成物
本発明の硬化性組成物はさらに、当該組成物の総重量に対して0重量%から約30重量%の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリイミド−エーテル、ポリオレフィン、ABS樹脂、ポリジエン、またはジエンコポリマー、あるいはそれらの混合物などを含み得る。熱可塑性樹脂、例えば、ポリスルホン樹脂およびフェノキシ樹脂などは、本発明の硬化性組成物と特に混和性であり、樹脂粘度を調節して硬化時の流動性を制御するために使用することができる。熱可塑性高分子はさらに、破壊靭性を向上させるために加えられ得る。熱可塑性ポリマーは、微粉末として当該硬化性組成物に加えることができ、または[2−エトキシ−5−trans−(1−プロペン−1−イル)フェノキシ]置換化合物(I)または二次コモノマー成分のどちらかに溶解させてもよい。
【0109】
本発明の硬化性組成物は、通例の技術およびプロセスによって単離することができる(例えば、実施例のセクションを参照されたい)。
【0110】
本発明の硬化性組成物のプレポリマーおよびそれらの製造のためのプロセス
一態様において、本発明は、プレポリマーの調製に対して上記において定義されるような硬化性組成物の使用に関する。
【0111】
本発明の硬化性組成物は、部分的に架橋された生成物(すなわち、プレポリマー)の調製にとって有用であることが見いだされた。プレポリマーは、上記において定義されるような硬化性組成物を、熱および/または圧力の適用において依然として成型可能であるプレポリマーを得るのに十分な時間において、80℃から350℃、好ましくは100℃から250℃の温度に加熱することによって調製される。これは、任意選択により、硬化触媒または硬化安定化剤の存在下において実施される。
【0112】
硬化促進剤
本発明の硬化性組成物のいくつかの用途では、当該硬化性組成物の総重量に対して0.01重量%から5重量%の量、好ましくは0.1重量%から2重量%の量において触媒を加えることによって硬化プロセスを促進することは有利である。好適な触媒としては、イオン触媒およびフリーラジカル重合触媒が挙げられる。フリーラジカル重合触媒の例としては、(a)有機過酸化物、例えば、ジ第三級ブチルペルオキシド、ジアミルペルオキシド、およびt−ブチルペルベンゾエート、ならびに(b)アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。イオン触媒の例は、アルカリ金属化合物、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアニリン、アザビシクロオクタンなど、複素環式アミン、例えば、キノリン、N−メチルモルホリン、メチルイミダゾール、およびフェニルイミダゾールなど、ならびに亜リン酸化合物、例えば、トリフェニルホスフィンおよびハロゲン化第四級ホスホニウムなどである。当該触媒は、当該硬化性組成物の成分と混和することができ、あるいは、上記において説明したような粉末ブレンドプロセスまたは溶媒ブレンドプロセスのどちらかによるプレポリマーの製造の際に加えてもよい。
【0113】
別の態様において、本発明はさらに、プレポリマーを得るのに十分な時間において50℃から250℃、好ましくは70℃から170℃の範囲の温度に本発明の硬化性組成物を加熱する工程を含むプロセスによって、本発明による硬化性組成物から得ることができる硬化性プレポリマーであって、熱および/または圧力の適用において依然として成型可能である硬化性プレポリマーを含む。
【0114】
当該方法が、溶媒の存在下において実施される場合、高沸点の極性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、およびブチロラクトンなどは、原則として、使用することができる。しかしながら、そのような溶媒の使用は、概して、残留溶媒の含有量が高いプレポリマーを与える。
【0115】
当該方法が、溶媒の存在下において実施される場合、一実施形態において、1,3−ジオキソランを含有する低沸点の溶媒混合物を使用してもよい。このようなものとして、好ましくは、これらに限定されるわけではないが、1,3−ジオキソランと、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど、またはグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ブチレングリコールエーテル、およびそれらのアセテートなどとの溶媒混合物が挙げられる。
【0116】
1,3−ジオキソランと上記において特定された溶媒とを含む溶媒混合物は、そのような溶媒混合物の低沸点に起因して、溶媒不含プレポリマーの調製にとって有用である。さらに、そのようにして得たプレポリマーは、空隙を含まない繊維強化複合材料へと加工することができる。
【0117】
一実施形態において、当該溶媒混合物は、当該溶媒混合物の総重量に対して50重量%までの、好ましくは40重量%までのケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど、またはグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ブチレングリコールエーテル、およびそれらのアセテートなどを含む。
【0118】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物の溶液は、30重量%から70重量%、好ましくは40重量%から60重量%の溶媒、例えば、1,3−ジオキソラン、または1,3−ジオキソランと上記において特定した溶媒とを含む溶媒混合物を含む。そのような濃度は、典型的には、工業的ディップコーティングプロセスにおいて使用される。
【0119】
本発明の硬化性組成物のプレポリマーは、後続の使用が溶媒不含の場合、一般的に通例のプロセス、例えば、溶媒の蒸発除去などによって単離することができる。
【0120】
本発明の方法により得られるプレポリマーは、依然として、選択された有機溶媒に可溶性である。さらに、本発明のプレポリマーは、依然として、熱および/または圧力の適用において溶融可能かつ成型可能である。
【0121】
別の態様において、本発明は、上記において説明したような方法により得ることができる硬化性プレポリマーに関する。
【0122】
本発明の硬化性組成物の架橋ポリマーおよびそれらの製造のためのプロセス
一態様において、本発明は、架橋ポリマーの調製のための、上記において定義されるような硬化性組成物の使用または上記において定義されるようなプレポリマーの使用に関する。
【0123】
本発明の硬化性組成物および硬化性プレポリマーは、架橋ポリマーの調製にとって有用であることが見いだされた。
【0124】
一態様において、本発明は、以下の工程:
上記において定義されるような硬化性組成物または上記において定義されるような硬化性プレポリマーを、硬化を完了させるのに十分な時間において70℃から280℃の範囲の温度に加熱する工程、
を含む、架橋ポリマーの調製のための方法に関する。
【0125】
この方法の実践において、当該反応温度は、比較的広い範囲にわたって変えることができる。一実施形態において、当該方法は、80℃から270℃、より好ましくは90℃から260℃、最も好ましくは100℃から250℃の温度において実施される。
【0126】
別の態様において、本発明はさらに、本発明による硬化性組成物を、ポリマーを得るのに十分な時間において70℃から280℃の範囲の温度に加熱する工程を含むプロセスによって、当該硬化性組成物から得ることができる架橋ポリマーを含む。
【0127】
当該転化は、成型物、ラミネート、接着ボンド、および発泡体を得るために、圧力下での同時成形と共に行われ得る。
【0128】
これらの用途の場合、当該硬化性組成物を、添加剤、例えば、フィラー、顔料、着色剤、および難燃剤などと混和することが可能である。好適なフィラーは、ガラス繊維または炭素繊維、グラファイト、クォーツ、金属粉、および金属酸化物である。離型剤、例えば、シリコーンオイル、ワックス、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カリウムなども加えることができる。
【0129】
別の態様において、本発明は、本発明の硬化性組成物および硬化性プレポリマーを加工することによって得ることができる、成形物、ラミネート、接着ボンド、または発泡体に関する。
【0130】
本発明の複合材料およびそれらの製造のためのプロセス
本発明の硬化性組成物および硬化性プレポリマーは、複合材料の調製にとって有用であることが見いだされた。
【0131】
微粒子フィラーを含有する混合物
本発明の硬化性組成物は、加圧下において成形と同時に硬化を生じさせる、成形物を製造するための粉末成形産業の既知の方法によって加工することができる。これらの用途の場合、当該硬化性組成物は、添加剤、例えば、フィラー、着色剤、および難燃剤などと混和される。理想的なフィラーは、例えば、ガラス短繊維、炭素短繊維、またはアラミド繊維、微粒子フィラー、例えば、クォーツ、シリカ、セラミック、金属粉、および炭素粉末などである。当該成形物品の技術的用途に応じて、2種以上の異なるフィラーを同時に使用することができる。
【0132】
用途
本発明の硬化性組成物の好ましい使用法の1つは、繊維複合材料のためのバインダーとしてである。この用途の場合、ロービング、織物、短繊維マット、またはフェルトの形態の繊維、例えば、ガラス、炭素、またはアラミドなどが当該硬化性組成物に含浸され、当該補強材を含浸させるために当該硬化性組成物の溶液を用いる。当該溶媒を乾燥した後に、プリプレグが残され、これは、第二段階において、任意選択により圧力下において、180℃から350℃の間の温度で硬化され得る。
【0133】
溶融プリプレグ
本発明の硬化性組成物の好ましい用途は、繊維強化複合材料のためのホットメルト樹脂としてである。そのような繊維強化複合材料を得るために、当該硬化性組成物は、ホットメルトとして、担持体ホイル上の樹脂フィルムへと加工され、次いで、繊維が、ロービングまたは織物の形態において、当該溶融樹脂フィルム中へとプレス加工されることにより、プリプレグを形成する。このプロセスの場合、硬化性樹脂は、低温において低粘度を有しており、繊維ロービングまたは織物の適切な含浸を提供するために有利である。
【0134】
ラミネート
本発明の硬化性組成物の好ましい用途の1つは、繊維ラミネートのための樹脂としてである。溶媒/溶液プロセスまたはホットメルトプロセスのどちらかによって、織物またはロービングの形態のガラス繊維、炭素繊維、またはアラミド繊維から製造されたプリプレグは、プリプレグラミネートを提供するためにスタックされ、これは、続いて、150℃から280℃の間、好ましくは170℃から260℃の間の温度において、圧力下または真空バッグ内において硬化される。
【0135】
したがって、一態様において、本発明は、以下の工程:
硬化性組成物を、上記において定義されるような方法により得ることができる低粘度溶融安定樹脂または上記において定義されるようなプレポリマーの形態において、繊維質または微粒子補強材(フィラー)上に塗工するかまたはそれらとブレンドする工程;およびその後に硬化させる工程、
を含む、複合材料の調製のための方法に関する
【0136】
一実施形態において、上記において定義されるような硬化性組成物またはプレポリマーは、標準的加工技術、例えば、ホットメルトまたは溶液ベースのプリプレグ成形、樹脂トランスファ成形(RTM)、樹脂注入成形法(RIM)、フィラメントワインディング(FW)、またはコンパウンディング技術などの使用により、繊維質または微粒子補強材(フィラー)上に塗工されるかまたはそれらとブレンドされる。
【0137】
硬化工程は、硬化を完了させるのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度において、好ましくは80℃から270℃の範囲の温度において、より好ましくは90℃から260℃の範囲の温度において、最も好ましくは100℃から250℃の範囲の温度において実施され得る。
【0138】
別の態様において、本発明はさらに、本発明による硬化性組成物または本発明による硬化性プレポリマーを、繊維質または微粒子補強材と組み合わせる工程と、結果として得られる生成物を硬化させる工程とを含む、複合材料の製造のためのプロセスを含む。
【0139】
一実施形態において、当該複合材料は、繊維強化複合材料である。
【0140】
一実施形態において、当該複合材料は、微粒子充填複合材料である。
【0141】
一態様において、本発明は、以下の工程:
(a)上記において定義されるような硬化性組成物またはそれらのプレポリマーを調製する工程、
(b)上記において定義されるような硬化性組成物またはそれらのプレポリマーを繊維強化材上に塗工するか、微粒子フィラーとブレンドする工程、
(c)上記において定義されるような硬化性組成物またはそれらのプレポリマーを、硬化を完了させるのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度で硬化させる工程、
(d)同時に圧力を加えて、複合材料を得る工程、
を含む、複合材料の調製のための方法に関する。
【0142】
プロセス工程c)は、硬化を完了させるのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度において、好ましくは80℃から270℃の範囲の温度において、より好ましくは90℃から260℃の範囲の温度において、最も好ましくは100℃から250℃の範囲の温度において実施され得る。
【0143】
プロセス工程c)の実践において、本発明の硬化性組成物またはプレポリマーの架橋(硬化)ポリマーへの転化は、上記において定義されるような硬化触媒の存在下において実施され得る。
【0144】
プロセス工程d)の実践において、本発明の複合材料を得るために、圧力下での成形が実施される。プロセス工程c)およびd)は、同時に実施される。
【0145】
本発明の硬化性組成物の好ましい用途は、繊維強化複合材料のための樹脂である。そのような繊維複合材料を得るために、本発明の硬化性組成物は、ホットメルトとして、担持体ホイル上の樹脂フィルムへと加工され、次いで、繊維が、ロービングまたは織物の形態において、当該樹脂フィルム中へとプレス加工されることによってプレポリマーを形成するために使用される。このプロセスの場合、硬化性樹脂は、低温において低粘度を有しており、繊維ロービングまたは織物の適切な含浸を提供するために有利である。
【0146】
一態様において、本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができる複合材料を含む。
【0147】
定義
添付の特許請求の範囲の範囲を含め、本明細書において使用される場合、用語は、集合的に使用され、以下の意味を有する。
【0148】
本明細書において使用される場合、用語「硬化性」は、元の化合物または混合物材料が、化学反応、架橋、放射線架橋などによって固体、実質的に非流動性材料、へと変わり得ることを意味する。
【0149】
本明細書において使用される場合、用語「混合物」は、化学的に一体化されていない2つ以上の個別の化学的に異なる化合物の物理的または機械的な凝集物または組み合わせ物を意味する。
【0150】
本明細書において使用される場合、用語「ポリイミド成分」は、1種のポリイミドまたは2種以上のポリイミドの混合物、好ましくは1種のポリイミドまたは2種から4種のポリイミドの混合物を意味する。
【0151】
本明細書において使用される場合、用語「コモノマー」は、重合または共重合を受けることができ、それにより構成ユニットがポリマーの基本構造へと転化することに貢献する化合物を意味する。
【0152】
本明細書において使用される場合、用語「コモノマー成分」は、1種のコモノマーまたは2種以上のコモノマーの混合物、好ましくは1種のコモノマーまたは2種から4種のコモノマーの混合物を意味する。
【0153】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニルフェノール」は、少なくとも1つのアルケニル置換フェノール基を有する有機化合物を意味する。用語「アルケニルフェノール」は、2つのフェノール基が二官能性基によって橋かけされたアルケニルフェノール類、例えば、アルケニルビスフェノールなどを包含する。例としては、2,2’−ジアリル−ビスフェノールAが挙げられる。
【0154】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニルフェニルエーテル」は、少なくとも1つのアルケニルオキシフェニル基、すなわち、エーテル酸素原子が、一方でアルケニル残基に、他方でフェニル残基に結合しているエーテル基を有する有機化合物を意味する。用語「アルケニルフェニルエーテル」は、2つのフェニル基が二官能性基によって橋かけされたアルケニルフェニルエーテル類、例えば、アルケニルビスフェノールエーテなどルを包含する。例としては、ビスフェノールAのジアリルエーテルが挙げられる。
【0155】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニルフェノールエーテル」は、少なくとも1つのアルケニルフェノキシ基、例えば、エーテル酸素原子が、一方でアルケニルフェニル基に、他方でアルキル基またはアリール基に結合しているエーテル基を有する有機化合物を意味する。用語「アルケニルフェノールエーテル」は、2つのアルケニルフェノキシ基が、二官能性基、例えば、ベンゾフェノン基などの芳香族基によって橋かけされている有機化合物を包含する。例としては、ビス−(o−プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンが挙げられる。
【0156】
本明細書において使用される場合、用語「ポリアミン」は、2つ以上の第一級アミノ基、−NH
2を有する有機化合物を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルインダン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、および脂肪族ジアミン、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,12−ジアミノドデカンなどが挙げられる。
【0157】
本明細書において使用される場合、用語「アミノフェノール」は、アミノ置換フェノールを意味する。例としては、m−アミノフェノールおよびp−アミノフェノールが挙げられる。
【0158】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ酸ヒドラジド」は、アミノ酸の任意のヒドラジドを意味する。例としては、m−アミノベンズヒドラジドおよびp−アミノベンズヒドラジドが挙げられる。
【0159】
本明細書において使用される場合、用語「シアン酸エステル」は、フェノール性OH基の水素原子がシアノ基で置換されることにより−OCN基を生じた、ビスフェノールまたはポリフェノール、例えば、ノボラック誘導体などを意味する。例としては、例えば、Lonza製のPrimaset BADCyまたはHuntsman製のAroCy B−10として市販されている、ビスフェノールAジシアン酸エステル、ならびに他のPrimasetまたはAroCyタイプ、例えば、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン(AroCy M−10)、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン(AroCy L−10)、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(AroCy F−10)、1,3−ビス(1−(4−シアナトフェニル)−1−メチルエチリデン)ベンゼン(AroCy XU−366)、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル(AroCy RDX−80371;AroCy T−10)、ビス(4−シアナトフェニル)ジクロロメチリデンメタン(AroCy RD98−228)、ビス(4−シアナトフェニル)オクタヒドロ−4,7−メタノインデン(AroCy XU−71787.02L)、ならびにビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、4,4−ジシアナトビフェニル、1,4−ビス(1−(4−シアナトフェニル)−1−メチルエチリデン)ベンゼン、レゾルシノールジシアネートなどが挙げられる。好ましい例は、ビスフェノールAジシアン酸エステルである。
【0160】
角括弧と交差する全ての結合は、角括弧内の部分を同じ化合物の他の部分に接続する結合を示す。例えば、下記に示す基において、右側の角括弧と交差するエテニル基の2つの結合は、このエテニル基を有する化合物の他の部分にこの部分を接続する。
【0162】
本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子を意味する。
【0163】
本明細書において使用される場合、「アルキル」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルキル」は、n個からm個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。特に明記されない場合、「アルキル」は、1個から6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。本発明との関連において、好ましいアルキル基は、1個から4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。直鎖状および分岐鎖状のアルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、異性体ペンチル、異性体ヘキシル、好ましくはメチルおよびエチル、最も好ましくはメチルが挙げられる。
【0164】
本明細書において使用される場合、「アルキレン」は、二官能性アルキル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルキレン」は、n個からm個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。特に明記されない場合、「アルキレン」は、1個から12個の炭素原子を有するアルキレンを意味する。本発明との関連において、好ましいアルキレン基は、1個から9個の炭素原子、より好ましくは1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である。例としては、これらに限定されるわけではないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンが挙げられる。特に好ましいのは、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンである。
【0165】
本明細書において使用される場合、「アルケニレン」は、二官能性アルケニル基を意味する。 用語「n個からm個の炭素原子を有するアルケニレン」は、n個からm個の炭素原子を有するアルケニレン基を意味する。特に明記されない場合、「アルケニレン」は、2個から12個の炭素原子を有するアルケニレンを意味する。本発明との関連において、好ましいアルケニレン基は、2個から10個の炭素原子、より好ましくは2個から6個の炭素原子を有するアルケニレン基である。例としては、これらに限定されるわけではないが、エテニレン、プロペニレン、およびブテニレンが挙げられる。特に好ましいのは、エテニレンである。
【0166】
本明細書において使用される場合、「アルコキシ」は、酸素原子(−O−)を介して当該化合物に結合している、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルコキシ」は、n個からm個の炭素原子を有するアルコキシを意味する。特に明記されない場合、「アルコキシ」は、1個から6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。本発明との関連において、好ましいアルコキシ基は、1個から4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。
【0167】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」は、炭素−炭素二重結合を有する、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルケニル」は、n個からm個の炭素原子を有するアルケニルを意味する。特に明記されない場合、「アルケニル」は、任意の所望の位置における炭素−炭素二重結合と2個から10個の炭素原子とを有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を意味する。本発明との関連において、好ましいアルケニル基は、任意の所望の位置における炭素−炭素二重結合と、2個から6個、より好ましくは2個から4個の炭素原子とを有する。アルケニル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、およびイソブテニルが挙げられる。好ましい例は、1−プロペニルおよび2−プロペニルである。
【0168】
本明細書において使用される場合、用語「一炭素環式基」は、「一炭素環式脂肪族基」または「一炭素環式芳香族基」を意味する。
【0169】
本明細書において使用される場合、用語「二炭素環式基」は、「二炭素環式脂肪族基」または「二炭素環式芳香族基」を意味する。
【0170】
本明細書において使用される場合、「一炭素環式脂肪族基」は、シクロアルキレン基を意味する。
【0171】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」は、単官能性炭素環式飽和環系を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキル」は、n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキルを意味する。特に明記されない場合、「シクロアルキル」は、5個から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロプロパニル、シクロブタニル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、またはシクロオクタニル、好ましくはシクロペンタニル、およびシクロヘキサニルが挙げられる。
【0172】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキレン」は、二官能性炭素環式飽和環系を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキレン」は、n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキレンを意味する。特に明記されない場合、「シクロアルキレン」は、3個から8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を意味する。本発明との関連において、好ましいシクロアルキレン基は、5個から7個の炭素原子、より好ましくは5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基である。例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、またはシクロオクチレン、好ましくはシクロペンチレンおよびシクロヘキシレンが挙げられる。
【0173】
本明細書において使用される場合、「二炭素環式脂肪族基」は、二官能性の二環式縮合飽和環系、橋かけ飽和環系、または縮合飽和環系を意味する。特に明記されない場合、「二炭素環式脂肪族基」は、9個から20個の炭素原子を有する二官能性の二環式縮合飽和環系、橋かけ飽和環系、または縮合飽和環系を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、デカリニル、ヒドリンダニル、およびノルボルニルが挙げられる。
【0174】
本明細書において使用される場合、用語「一炭素環式または二炭素環式芳香族基」は、好ましくは6個から12個の炭素原子を有する、二官能性の単環式または二環式芳香族系、好ましくは単環式芳香族系を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、トルエン、フェニレン、ナフチレン、テトラヒドロナフチレン、インデニレン、インダニレン、ペンタレニレン、フルオレニレンなど、好ましくはトルエン、フェニレン、またはインダニレンが挙げられる。
【0175】
本明細書において使用される場合、用語「アリール」は、好ましくは6個から12個の炭素原子を有する単官能性の単環式または二環式芳香族系、好ましくは単環式芳香族系を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、トルイル、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニル、ペンタレニル、フルオレニルなど、好ましくはトルイル、フェニル、またはインダニルが挙げられる。
【0176】
本明細書において使用される場合、用語「複素環式基」は、「複素環式脂肪族基」または「複素環式芳香族基」を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「複素環式脂肪族基」は、炭素原子に加えて、窒素、酸素、および/または硫黄から選択される1個、2個、または3個の原子を含む、二官能性の飽和環系を意味する。好ましい複素環式脂肪族基は、3個から5個の炭素原子と1個の窒素原子、酸素原子、または硫黄原子とを含むものである。
【0177】
本明細書において使用される場合、用語「複素環式芳香族基」は、窒素、酸素、および/または硫黄から選択される1個、2個、または3個の原子を含む、単環式芳香族の5員環または6員環、あるいは、一方または両方の環が、窒素、酸素、および/または硫黄から選択される1個、2個、または3個の原子を含むことができる2つの5員環または6員環を含む二環式芳香族基を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキシジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チエニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、キノキサリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリルが挙げられる。
【0178】
本明細書において使用される場合、用語「橋かけ多環式基」は、一炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基から選択される少なくとも2つの基からなる基を意味し、この場合、これらの基は、直接的な炭素−炭素結合または二価の基によって互いに結合している。
【0179】
好ましい二価の基は、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、ならびに下記の基:
【0181】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
7およびR
8は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]である。
【0182】
一実施形態において、用語「橋かけ多環式基」は、直接的な炭素−炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、または、下記の基:
【0184】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
7およびR
8は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]によって互いに結合された2つの一炭素環式脂肪族基からなる基を意味する。
【0185】
一実施形態において、用語「橋かけ多環式基」は、直接的な炭素−炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基によって、互いに結合された2つのシクロヘキシレン基からなる基を意味する。
【0186】
一実施形態において、用語「橋かけ多環式基」は、直接的な炭素−炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、またたは、以下の基:
【0188】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
7およびR
8は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]によって互いに結合された2つの一炭素環式芳香族基からなる基を意味する。
【0189】
一実施形態において、用語「橋かけ多環式基」は、直接的な炭素−炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基によって、互いに結合された2つのフェニレン基からなる基を意味する。
【0190】
本明細書において使用される場合、用語「非置換」または「置換」の追加は、それぞれの基が、非置換であるか、または、アルキル、アルコキシ、ハロゲンから選択される1つから4つの置換基を有していることを意味する。好ましい置換基は、メチルまたはエチルである。
【0191】
本明細書において使用される場合、用語「x官能性基」、「y官能性基」、「y’官能性基」、および「y”官能性基」は、それぞれ、x、y、y’、またはy”の数の結合によって当該化合物の残部に結合している基をそれぞれ意味する。好ましくは、「x官能性基」、「y官能性基」、「y’官能性基」、および「y”官能性基」は、二官能性基であり、すなわち、x、y、y’、およびy”は、好ましくは2である。
【0192】
本明細書において使用される場合、用語「二官能性基」は、2つの結合によって当該化合物の残部に結合している基を意味する。二官能性基としては、これらに限定されるわけではないが、二官能性脂肪族基および二官能性芳香族基が挙げられる。二官能性脂肪族基としては、これらに限定されるわけではないが、以下の基が挙げられる。
【0194】
二官能性芳香族基としては、これらに限定されるわけではないが、以下の基が挙げられる。
【0196】
さらなる二官能性基としては、これらに限定されるわけではないが、以下の基が挙げられる。
【0198】
本明細書において使用される場合、用語「ガラス転移温度」または「Tg」は、非晶質固体、例えば、ポリマーなどが低温時に脆くなり、加熱時に柔らかくなる場合、そのようなポリマーの高弾性状態とガラス状態(ガラス状)との間での可逆的な転移の温度を意味する。より詳細には、それは、過冷却された溶融物が、冷却時に、結晶性材料、例えば、等方性固体材料、と同様のガラス状の構造および特性をもたらす、疑似的な二次相転移を定義する。
【実施例】
【0199】
以下の実施例は、例証することを意図するものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【0200】
I.バニトロープ末端化合物(I)の合成
実施例1
4,4’−ビス−[(2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル))フェノキシ]ベンゾフェノンの合成:
【0201】
【化39】
【0202】
スターラー、還流冷却器、および温度計を嵌合した1500mlフラスコに装入された、180mlのジメチルアセトアミド(DMAc)中における141.8g(0.65mol)の4,4’−ジフルオロベンゾフェノンに、129g(0.93mol)の炭酸カリウムを加え、当該混合物を100℃に加熱し、それに、その温度において数分以内に、120mlのDMAcに溶解させた254.8g(1.43mol)のバニトロープの温かい(60℃)溶液を加えた。当該混合物を155℃で6時間加熱し、続いて120℃に冷却した。当該溶液を撹拌しながら600mlの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、続いて600mlの水を加えた。当該バッチを室温まで冷却し、形成された沈殿物を濾別し、メタノール/水混合物で洗浄した。当該湿潤生成物を、1000mlの1−メトキシ−2−プロパノールから再結晶させ、濾別し、100mlのジイソプロピルエーテルで洗浄した。微結晶性でオフホワイトの当該生成物を、真空オーブンにおいて70℃で乾燥させた。収量:278.0g(80%)。純度:99.3%(HPLC領域%)。融点:112℃。
【0203】
実施例1a
バニトロープ末端ポリエーテルエーテルケトンの合成:
【0204】
【化40】
【0205】
72g(0.33mol)の4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、33.03g(0.30mol)のレゾルシノール、および116.1g(0.84mol)の乾燥炭酸カリウムを、200mlのN−メチルピロリドンおよび70mlのトルエンと一緒に、スターラー、還流冷却器、およびディーン・スターク・トラップを備える三ツ口フラスコに装入し、155℃で4時間加熱し、その後、水を蒸留除去してディーン・スターク・トラップによって分離した。110℃に冷却した後、10.51g(0.06mol)のバニトロープおよび11.60g(0.084mol)の乾燥炭酸カリウムを加えた。次いで、当該反応混合物を155℃で5時間加熱し、続いて180℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、撹拌しながら、1000mlの1:1メタノール/水混合物を30分以内において加えた。沈殿物を吸引濾過し、1000mlの温水においてスラリー化させ、再び吸引濾過して、当該濾過ケーキを200mlの温水で2回洗浄した。当該オフホワイトの粉末を、循環空気オーブンにおいて70℃で乾燥させた。収量:92.0g(95%)。固有粘度:0.10dl/g(100mlのDMAc中に0.5g)。
【0206】
実施例2
4,4’−ビス−[(2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル))フェノキシ]ジフェニルスルホンの合成:
【0207】
【化41】
【0208】
スターラー、還流冷却器、および温度計を嵌合した750mlフラスコに装入された、100mlのジメチルアセトアミド(DMAc)中における25.0g(0.1mol)のビス(4−フルオロフェニル)スルホンに、20g(0.145mol)の炭酸カリウムを加え、当該混合物を90℃に加熱し、それに、その温度において数分以内に、36.8g(0.21mol)のバニトロープを加えた。次いで、当該混合物を150℃で4時間加熱し、続いて120℃に冷却した。当該バッチを撹拌しながら、150mlの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、80℃に冷却した後、150mlのイソ−プロパノールを加え、続いて200mlの水を加えた。室温において、沈殿物を分離し、濾別して、400mlの3:5(vol/vol)MTBE/メタノール混合物から結晶化させた。濾過し70℃で乾燥させて、47g(82.5%)のオフホワイトの結晶性生成物を得た。純度:98.4%(HPLCによる領域%)。融点:106〜107℃。
【0209】
実施例2a
バニトロープ末端ポリエーテルエーテルスルホンの合成:
【0210】
【化42】
【0211】
54.56g(0.19mol)の4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、19.82g(0.18mol)のレゾルシノール、および34.82g(0.25mol)の乾燥炭酸カリウムを、200mlのN−メチルピロリドンおよび70mlのトルエンと一緒に、スターラー、還流冷却器、およびディーン・スターク・トラップを備える三ツ口フラスコに装入した。次いで、当該混合物を155℃で4時間加熱し、その後、水を蒸留除去してディーン・スターク・トラップによって分離した。当該混合物をさらに、180℃で2時間加熱した。140℃に冷却した後、3.5g(0.02mol)のバニトロープおよび1.95g(0.014mol)の乾燥炭酸カリウムを加え、当該反応混合物を155℃で4時間加熱し、次いで、180℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、撹拌しながら、1000mlの1:1メタノール/水混合物を30分以内において加えた。沈殿物を吸引濾過し、1000mlの温水においてスラリー化させ、再び吸引濾過し、当該濾過ケーキを200mlの温水で5回洗浄した。最後に、生成物を循環空気オーブンにおいて80℃で乾燥させて、60.0g(95%)のオフホワイトの粉末を得た。固有粘度:0.15dl/g(100mlのDMAc中に0.5g)。
【0212】
実施例3
1,3−ビス[(2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル))フェノキシ]ピリミジンの合成:
【0213】
【化43】
【0214】
250mlのDMSO中における14.9g(0.1mol)の4,6−ジクロロピリミジンおよび37.4g(0.21mol)のバニトロープの溶液を激しく撹拌しながら、69.1g(0.5mol)の粉末状炭酸カリウムを加えた。当該混合物を、窒素下において撹拌しながら90℃で1時間加熱し、次いで、15℃に冷却した。750mlの水をゆっくりと加えた。当該バッチをさらに30分間撹拌した後、沈殿した生成物を濾別して、水で洗浄した。当該湿潤した生成物を、50〜70℃の温度において300mlの1−メトキシ−2−プロパノールおよび100mlのメタノールの混合物中で撹拌し、次いで、10℃に冷却し、当該スラリーを撹拌しながら300mlの水を加えた。さらに1時間撹拌した後、当該生成物を濾別して、メタノールで洗浄した。当該生成物を真空オーブンにおいて50℃で乾燥させて、35.9g(83%)のオフホワイトの粉末を得た。純度:99.5%(HPLC領域%)。融点:154〜155℃。
【0215】
実施例4
1,3−ビス[(2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル))フェノキシメチル]ベンゼンの合成:
【0216】
【化44】
【0217】
130mlのイソ−プロパノール中における36.8g(0.21mol)のバニトロープの溶液に、23.6g(0.21mol)のカリウムtert−ブチレートを加え、当該混合物を15分間撹拌した。次いで、30mlのイソ−プロパノールに溶解させた17.5g(0.1mol)のm−キシリレンジクロリドを数分以内において加え、当該混合物を30分間撹拌した。次いで、当該混合物を、還流下(82℃)において4時間加熱した。追加の2.3gのカリウムtert−ブチレートを加え、当該反応を還流下においてさらに2時間加熱した。次いで、400mlのトルエンを加え、当該混合物を室温まで冷却した。次いで、350mlの水を加え、当該混合物を30分間撹拌した。当該トルエン相を分離し、無水CaCl
2において乾燥させた。CaCl
2を分離した後、100mlのトルエンを加え、当該溶液を最高60℃まで加熱し、50mlのメタノールを加えた。当該バッチをゆっくりと室温まで冷却し、追加の50mlのメタノールを加え、当該混合物を1時間撹拌した。次いで、沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄し、真空オーブンにおいて35℃で乾燥させた。母液をロータリーエバポレーターにおいて濃縮し、二回目の回収物(second crop)を得るために上記と同様に処理した。合わせた収量は33.0g(72%)であった。純度:96%(HPLC領域%)。融点:97℃。
【0218】
実施例5
1,4−ビス[(2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル))フェノキシ]ブタンの合成:
【0219】
【化45】
【0220】
36.8g(0.21mol)のバニトロープを、室温で撹拌しながら、120mlのイソプロパノールに懸濁させた。23.6g(0.21mol)のカリウムtert−ブチレートを加え、当該混合物を30分間撹拌した。発熱反応により、温度が最高30℃まで上がる。40mlのイソプロパノールに溶解させた21.6g(0.1mol)の1,4−ジブロモブタンを20分以内において加えた。当該バッチを最高80℃まで加熱し、14時間撹拌した。200mlのトルエンおよび350mlの水を加え、当該混合物を15分間撹拌し、次いで、当該相を50℃で分離させた。有機相を希塩酸(pH4)で洗浄し、相を再び分離させ、有機相を無水CaCl
2において乾燥させた。次いで、トルエンをロータリーエバポレーターにおいて除去した。残留物を69℃において200mlのn−ヘキサンに溶解させ、当該溶液を室温まで冷まして、薄いベージュ色の結晶を得て、それを濾別し、真空オーブンにおいて40℃で10時間乾燥させた。収量:14.2g(34.6%)。純度:99.2%(HPLC領域%)。融点:115℃。
【0221】
実施例6
1,3−ビス[3−[2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ]−2−ヒドロキシプロピル]ベンゼンの合成:
【0222】
【化46】
【0223】
35.65g(0.2mol)のバニトロープ、22.22g(0.1mol)のレゾルシノールジグリシジルエーテル、および0.15g(0.35mmol)のトリフェニルエチルホスホニウムヨージドを反応フラスコに装入し、当該混合物を窒素雰囲気下において120℃で2時間加熱した。次いで、当該温度を140℃に上げて、当該混合物を12時間加熱した。80℃まで冷却した後、150mlのメタノールを加えて、部分的に固化していた当該材料を溶解させた。当該溶液をゆっくりと室温まで冷却して、生成物を結晶化させた。濾過後、濾過ケーキを吸引漏斗において20mlのメタノールで洗浄して、依然として4.8%のバニトロープを含有する、65gの湿潤した粗生成物を得た。粗純度:92.5%(HPLC領域%)。当該粗生成物をさらに、メタノールから再結晶させて98.5%の純度まで精製した。再結晶させた材料の融点:115〜116℃・
【0224】
II.BMI(II)とバニトロープ置換化合物(I)との混合物
本発明の粗組成物は、以下の基本的プロセスにより得ることができる。
【0225】
a.溶融プロセス
式(II)のポリマレイミド、または2種以上のポリマレイミドの混合物と、式(I)の少なくとも1種の2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ置換化合物とを、完全な溶融物が得られるまで、120〜140℃の温度範囲において溶融ブレンドした。続いて、このようにして得た溶融物を、同じ温度範囲において安定な溶融物を得るのに十分な時間においてさらに加熱した。最後に、当該溶融物を、20hPa[15mmHg]の減圧下において2〜10分間脱気することにより硬化性組成物を得た。
【0226】
b.溶媒支援プロセス
式(II)のポリマレイミド、または2種以上のポリマレイミドの混合物と、式(I)の少なくとも1種の2−エトキシ−5−(trans−1−プロペニル)フェノキシ置換化合物と、任意選択により1:1の固体対溶媒重量比における1種の追加のコモノマーおよびトルエンとを、完全な溶液が得られるまで、90〜100℃において加熱した。続いて、減圧下においてトルエンを除去し、同時に温度を120℃に上げた。最後に、当該混合物を、20hPa[15mmHg]の減圧下において30分間脱気することにより硬化性組成物を得た。樹脂/溶媒比は、成分の溶解度に応じて変えてもよい。
【0227】
c. 反応性測定
c.1.示差走査熱量測定(DSC)
20℃から380℃の温度範囲における、定義された加熱速度(10℃/分)において得られる示差走査熱量測定(DSC)の軌跡を使用して、2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ置換化合物(I)およびBMI(II)による硬化性組成物の硬化速度を特徴付けた。当該硬化の最高発熱温度T
MAXは、指定された加熱速度での最大熱放出の温度を表している。T
MAXが高いほど、樹脂の硬化は遅い。実施例7から16において調製した、BMI(II)および2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ置換化合物(I)による硬化組成物のT
MAXデータを表1にまとめる。
【0228】
c.2.ホットプレートゲル化時間
樹脂の反応性の標準的測定において、ゲル化時間は、ISO 8987およびASTM D4217規格において説明されているように、130℃から230℃の間の温度に維持することができる、電気的に加熱された、鏡面研磨された表面を有する金属ブロックの上に1gの樹脂を置き、木製のロッドで連続的に撹拌および探測することによって測定した。実施例7から16において調製した、BMI(II)および2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ置換化合物(I)による硬化性組成物のゲル化の結果を表1にまとめる。
【0229】
III.実施例7から15
表1.BMI(II)および2−エトキシ−5−(trans−1−プロペン−1−イル)フェノキシ置換化合物(I)による反応性組成物の反応性データ。全てのBMI(II)/コモノマー(I)混合物のモル比は、それぞれ、1.0:0.5mol/molであった。DSC加熱速度は10℃/分。
【0230】
【表1】
【0231】
MDAB=4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン;
BAC−BMI=1,3−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン;
C353A=ヒドロキノンで安定化した、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、2,4−ビスマレイミドトルエン、および1,6−ビスマレイミド−2,2,4(4,4,2)−トリメチルヘキサンの共晶混合物、Evonik Industriesから入手可能な市販のビスマレイミド混合物;
ME−MDAB=ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン。
【0232】
IV.比較例16から21
表2.BMI(II)/市販のコモノマー混合物の比較反応性データ。全てのBMI(II)/コモノマー(I)比較混合物のモル比は、それぞれ、1.0:0.5mol/molであった。DSC加熱速度は10℃/分。
【0233】
【表2】
【0234】
TM124=o,o’−ジアリルビスフェノール−A(Evonik Industriesから入手可能な市販品);
TM123=4,4’−ビス(o−プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン(Evonik Industriesから入手可能な市販品);
MDAB=4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン;
ME−MDAB=ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン;
C353A=ヒドロキノンで安定化された、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、2,4−ビスマレイミドトルエン、および1,6−ビスマレイミド−2,2,4(4,4,2)−トリメチルヘキサンの共晶混合物、Evonik Industriesから入手可能な市販のビスマレイミド混合物;
【0235】
実施例7から15のゲル化時間のデータ(バニトロープベースの混合物、表1)と、対応する実施例16から21のゲル化時間(非バニトロープベースの混合物、表2)との比較は、本発明のバニトロープタイプのコモノマーを含む混合物において著しく速い硬化が得られることを明確に実証している。示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果は、ゲル化時間の測定から得られた結果と一致する。本発明のバニトロープタイプのコモノマーを含むより速く硬化する混合物の場合、対応する配合物のDSCの最高温度T
MAXは、より低い温度において見いだされた。
【0236】
本発明について詳細に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲における変更は、当業者には容易に明らかとなるであろう。当業者は、前述の説明が単なる例であって、本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。