特許第6567145号(P6567145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567145車の角度位置を検出する装置を備える時計ムーブメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567145
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】車の角度位置を検出する装置を備える時計ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/00 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G04C3/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-141063(P2018-141063)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-32309(P2019-32309A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年7月27日
(31)【優先権主張番号】17184981.3
(32)【優先日】2017年8月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ルネ・ルフェナー
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−118559(JP,A)
【文献】 特開2017−116541(JP,A)
【文献】 スイス国特許出願公開第00710522(CH,A3)
【文献】 特開2002−277280(JP,A)
【文献】 特開2003−255061(JP,A)
【文献】 特開2004−132854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転インジケータ及び該回転インジケータに回転固定する車(MB)を備え、該車(MB)は、位置特定要素(OV)を含むローラ(PT)を備える、アナログ表示、
前記位置特定要素(OV)の少なくとも1つの角度位置を検出する装置であって、該装置は、前記ローラ(PT)に対して固定されて前記ローラ(PT)と略平行に延在するプレート(PAa、PAb、PAc)を備え、該プレート上には、第1電極(E1a、E1b、E1c)、第2電極(E2a、E2b、E2c)、及び前記第1電極(E1a、E1b、E1c)と前記第2電極の間に配置する共通電極(Ema、Emb、Emc)を配設し、前記電極を、平坦とし、前記車(MB)の角度位置で、前記位置特定要素(OV)を、前記各電極の少なくとも一部の上方に位置させ、前記第1電極(E1a、E1b、E1c)及び第2電極(E2a、E2b、E2c)は、前記車(MB)の軸と前記プレート(PAa、PAb、PAc)との交点を中心とするリングの2つの分割部分(segment)の形を有するように、配設する装置
を備える時計ムーブメントであって、
前記共通電極(Ema、Emb、Emc)は、2つの分岐部であって、第1分岐部(Bga、Bgb、Bgc)が、前記第1電極(E1a、E1b、E1c)の側縁部(L1da、L1db、L1dc)に径方向に対向して延在し、第2分岐部(Bda、Bdb、Bdc)が、前記第2電極(E2a、E2b、E2c)の側縁部(L2ga、L2gb、L2gc)に径方向に対向して延在する分岐部、及び前記車(MB)の前記軸と前記プレート(PAa、PAb、PAc)との前記交点を中心とする円に対して径方向に延在する前記2分岐部を連結する中心部(Bca、Bcb、Bcc)を備えることを特徴とする、時計ムーブメント。
【請求項2】
前記中心部(Bca)は、前記車(MB)の前記軸に最も近い、前記第1分岐部(Bga)と前記第2分岐部(Bgd)の、下端部と呼ばれる端部同士間に延在することを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項3】
前記中心部(Bcc)は、前記車(MB)の前記軸から最も遠い、前記第1分岐部(Bgc)と前記第2分岐部(Bdc)の、上端部と呼ばれる端部同士間に延在することを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項4】
前記中心部(Bcb)は、前記第1分岐部(Bgb)と前記第2分岐部(Bdb)の中点同士間に延在することを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項5】
前記中心部(Bca、Bcb、Bcc)は、前記車(MB)の前記軸と前記プレート(PAa、PAb、PAc)との前記交点を中心とするリングの分割部分の形を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の時計ムーブメント。
【請求項6】
前記位置特定要素(OV)は、前記車(MB)の前記ローラ(PT)を貫通する開口部であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の時計ムーブメント。
【請求項7】
前記位置特定要素(OV)を、前記ローラの残部の誘電率及び空気の誘電率とは異なる誘電率の材料から作製することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の時計ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ表示及び該アナログ表示の回転式インジケータに回転固定する少なくとも1個の車を備える時計ムーブメントの分野に関する。本発明は、特に、回転式インジケータの角度位置を決定するために、かかる車の角度位置を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計ムーブメントに属する車の少なくとも1つの角度位置を検出する装置が、知られている。特に、欧州特許出願第152023495号(特許文献1)では、部品について図1で図式的に示した検出装置を開示している。該装置は、プリント回路基板PAを備え、該基板を、ムーブメントの主プレートに対して固定し、車MBと平行して配設している。プレートPAは、第1電極E1、第2電極E2及び共通電極Emと呼ばれる、3つの平坦電極を備える。電極は、同一リングの分割部分(segment)の形をしており、共通電極Emを、第1電極E1と第2電極E2との間に配置している。車MBとしては、開口部OVによって貫かれた導電性ローラPTを備える。開口部OVを、車MBが回転を実行すると、第1電極E1のみに、次に第1電極E1と共通電極Em、次に3電極全て、次に共通電極Emと第2電極E2、最終的に第2電極E2のみと対向するように、連続的に位置できるように、配設する。
【0003】
また、検出装置は、第1電極E1、第2電極E2及び共通電極Emに電位を付与可能にする電子回路も備える。同回路によると、第1電極1Eと第2電極E2を交互に充電するように、すなわち、第1電極E1を高電位に維持する一方で第2電極を低電位に維持し、その後、逆に、第1電極E1を低電位に維持する一方で第2電極2Eを高電位に維持するように、パルス電圧を第1電極E1及び第2電極E2に印加する。共通電極Emとしては、有利には高電位と低電位の平均である、中間電位に維持する。
【0004】
第1電極E1と共通電極Emが、互いに近接し対向する側縁部を備え、両電極が異なる電位であり、第1電極E1の電位が可変であるとすると、容量結合は、これら2電極間で生じる。これら2電極間の容量を、第1容量C1と呼ぶ。同様に、第2電極E2と共通電極Emが、互いに近接し対向する側縁部を備え、両電極が異なる電位であり、第2電極E2の電位が可変であるとすると、容量結合は、これら2電極間で生じる。これら2電極間の容量を、第2容量C2と呼ぶ。
【0005】
これら容量C1、C2には、車の開口部OVの位置の関数として、該容量の値に変化が見られる。すなわち、開口部OVが、同時に第1電極E1と共通電極Emの上方にあるとき、車が、第1電極E1と共通電極Emの間にあるいかなる電気力線とも交差しないため、第1容量C1は、最大になる。同様に、開口部が、同時に第2電極E2と共通電極Emの上方にあるとき、車が、第2電極E2と共通電極Emの間にあるいかなる電気力線とも交差しないため、第2容量C2は、最大になる。
【0006】
また、電子回路は、共通電極Emに接続する電子装置(setup)も備える。電子装置(setup)は、車MBが回転を実行するときに、開口部の位置の関数として、(C2−C1)/(C1+C2)の測定を可能にする。線形補間によってこれらの測定値から得られる曲線を、図2に示している。前に説明した通り、この曲線は、第1電極E1と共通電極Emのみが開口部OVと完全に対向すると、最小になり、共通電極Emと第2電極E2のみが開口部OVに完全に対向すると、最大になる。
【0007】
測定を妨害する可能性がある車MBのローラPTと共通電極Emとの容量結合を避けるために、ローラPTを、車のシャフトを介してローラPTに印加される固定電位に、有利にはゼロ電位に維持する。しかしながら、腕時計の着用時に、衝撃や急激な動きが原因で、電気的接触不良を起こすことがあり、シャフトの電位が、そして結果としてローラの電位が変動することがある。これは、ローラPTと共通電極Emとの間に形成される浮遊容量の源となる。この浮遊容量は、車の振動の変化(即ち、共通電極Emと車MBとの距離の変化)と共に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願第152023495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、共通電極Emと車MBのローラPTとの容量結合を、共通電極Emと電極E1及びE2との結合を大幅に変更せずに、減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の主題を、請求項1で規定したような時計ムーブメントとする。
【0011】
共通電極の特定の形状は、共通電極の第1電極との結合及び第2電極との結合に影響を与えずに、ローラとの結合を減少可能にする。
【0012】
第1電極と共通電極との結合を、第1電極の側縁部と共通電極の第1分岐部との間に生成する一方で、第2電極と共通電極との結合を、第2電極の側縁部と共通電極の第2分岐部との間に生成する。これらの結合は、分岐部の厚さによって左右されないが、第1電極と第2電極の対向配置の長さ、及び両電極を分離する距離のみに左右される。従って、共通電極の第1電極との、及び第2電極との結合は、影響を受けない。対照的に、共通電極とローラとの結合は、共通電極の全表面によって左右され、従って、この表面を、共通電極を透かし細工形状にすることで最小限にした。
【0013】
特定の実施形態では、時計ムーブメントは、請求項2で規定した特徴を備える。
【0014】
この構成は、共通電極と、分岐部の上端部付近に位置する時計ムーブメントの別の金属要素(例えば、別の車)との結合を限定するのに特に有利である。実際には、共通電極とかかる金属要素との対向配置を、中心部と該要素との間を最大限に分離することで、最小限にする。
【0015】
特定の実施形態では、時計ムーブメントは、請求項3で規定した特徴を備える。
【0016】
この構成は、共通電極と車のシャフトとの結合を限定するのに特に有利である。実際には、共通電極とシャフトとの対向配置を最小限にし、中心部とシャフト間を最大限に分離することで、中心部を、要素から最大限に分離する。
【0017】
特定の実施形態では、時計ムーブメントは、請求項4で規定した特徴を備える。
【0018】
この構成は、前の2実施形態の利点を提供する。すなわち、共通電極と、分岐部の上端部付近に位置する時計ムーブメントの別の金属要素(例えば、別の車)との結合を限定できるだけでなく、共通電極と車のシャフトとの結合も限定できる。
【0019】
特定の実施形態では、時計ムーブメントは、請求項5、6及び/又は7で規定した特徴を備える。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、単に非限定的な実施例として提示し、添付図を参照して提示した幾つかの実行形態に関して読むと、明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】既に記述済みで、車と従来技術による車の角度位置を検出する装置の一部を表しており、該検出装置は、第1電極、第2電極及び共通電極を配設したプレートを備えている。
図2】既に記述済みで、車の回転角度の関数として、(C2−C1)/(C1+C2)を示す曲線を表している。式中、C1は、第1電極と共通電極間の容量、C2は、第2電極と共通電極間の容量である。
図3】本発明の第1実施形態による第1電極、第2電極及び共通電極を、車の角度位置を検出する装置のプレート上に配設して、表している。
図4】本発明の第2実施形態による第1電極、第2電極及び共通電極を、車の角度位置を検出する装置のプレート上に配設して、表している。
図5】本発明の第3実施形態による第1電極、第2電極及び共通電極を、車の角度位置を検出する装置のプレート上に配設して、表している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図3図4及び図5は、従来技術を参照して既に記述したプレートPAの代わりに、本発明の第1実施形態によるプレートPAa、本発明の第2実施形態によるプレートPAb、及び本発明の第3実施形態によるプレートPAcをそれぞれ示している。本明細書の以下の説明では、添え字「x」は、区別なく「a」、「b」又は「c」と置き換えられる。
【0023】
プレートPAxは、第1電極E1x、第2電極E2x及び共通電極Emxを備え、3電極全ては平坦である。プレートPAxの第1電極E1x及び第2電極E2xは、プレートPAの第1電極E1及び第2電極E2と同様の形状をしている。すなわち、2電極は、プレートPAxと車MBの軸との交点を中心とする同一リングの分割部分の形をしている。その結果、第1電極E1x及び第2電極E2xのそれぞれは、2側縁部L1gx、L1dx及びL2gx、L2dxをそれぞれ備え、プレートPAxと車MBの軸との交点を中心とする円に対して径方向に延在する。また、第1電極E1x及び第2電極E2xはそれぞれ、2縁部も備え、各縁部は、円弧状に延在し、側縁部L1gx、L1dx及びL2gx、L2dxとそれぞれ連結している。
【0024】
共通電極Emxを、第1電極E1xと第2電極E2xの間に配設する。共通電極Emxを、3部分、より具体的には、第1分岐部Bgx、第2分岐部Bdx、及び第1分岐部Bgxと第2分岐部Bdxを連結する中心部Bcxから構成する。第1分岐部Bgxと第2分岐部Bdxは、プレートPAxと車MBの軸との交点を中心とする円に対して、径方向に延在する。第1分岐部Bgxと第2分岐部Bdxの長さは、略等しい。第1分岐部Bgxは、第1電極E1xと対向して延在し、第2分岐部Bdxは、第2電極E2xと対向して延在する。中心部Bcxは、第1分岐部Bgxと第2分岐部Bdxの間に円弧状に延在する。
【0025】
第1電極E1xと共通電極Emxの間の容量C1xは、第1電極E1xの側縁部L1dxと、第1電極E1xの側に位置する共通電極Emxの第1分岐部Bgxの縁部との間の平均偏差によって決まる。また、容量C1xは、第1分岐部Bgxの長さでもある第1電極E1xの側縁部L1dxの長さによっても決まる。第2電極E2xと共通電極Emxの間の容量C2xに関しては、第2電極E2xの側縁部L2gxと第2電極E2xの側に位置する共通電極Emxの第2分岐部Bdxの縁部との間の平均偏差によって決まる。また、容量C2xは、第2分岐部Bdxの長さでもある第2電極E2xの側縁部L2gxの長さによっても決まる。従って、本明細書で一例として提示した共通電極の3形状は、従来の共通電極の形状と比較して、一方では共通電極と第1電極との結合に、他方では、第2電極と共通電極との結合に、実質的に全く影響を与えない点に留意されたい。更に、従来技術による共通電極の表面と比べて、3例それぞれにおいて、共通電極の表面は、小さい。その結果、共通電極と車との結合は、減少する。
【0026】
また、第1実施形態では、中心部Bc1は、プレートPA1と車MBの軸との交点の最も近くに位置する第1分岐部Bg1と第2分岐部Bd1の端部同士を連結する。第2実施形態では、中心部Bc2は、第1分岐部Bg2と第2分岐部Bd2の中点同士を連結する。第3実施形態では、中心部Bc3は、プレートPA3と車MBの軸との交点から最も遠くに位置する第1分岐部Bg3と第2分岐部Bd3の端部同士を連結する。中心部の位置は、一方で共通電極と車のシャフトとの結合に影響を与え、他方で、共通電極と、ムーブメントの別の金属要素(例えば、車又はシャフト)との結合に影響を与えるが、該別の金属要素は、プレートPA3と車MBの軸との交点から最も遠くに位置する第1分岐部Bg3及び第2分岐部Bd3の端部付近に位置する。第1実施形態では、共通電極と他の金属要素との結合を最小限にする。第3実施形態では、共通電極と車のシャフトとの結合を最小限にする。第2実施形態は、これら2結合間のトレードオフの結果得られたものである。
【0027】
当然ながら、当業者には明らかな様々な変形及び/又は改良(enhancement)及び/又は組合せを、付記した特許請求の範囲で規定した本発明の範囲から逸脱せずに、上記で説明した本発明の異なる実施形態に適用できる。例えば、中心部Bcxは、分岐部Bgx、Bdxの端部又は中点以外の箇所の間に延在してもよい。また、中心部Bcxは、円弧状に延在しなくてもよい。
【0028】
また、車MBのローラPTにある開口部OVを、ローラPTの残部の誘電率及び空気の誘電率とは異なる誘電率を有する材料製の、開口部と同じ幾何学的形状の要素と置換してもよい点に、留意されたい。これは、本発明の原理を決して変更するものではない。従って、一般化するために、開口部又はかかる要素を、「位置特定要素(location element)」と呼ぶ。
【符号の説明】
【0029】
E1、E1x 第1電極
E2、E2x 第2電極
Em、Emx 共通電極
C1、C1x、C2、C2x 容量
PA、PAx プレート
MB 車
PT ローラ
OV 開口部
L1gx、L1dx、L2gx、L2dx 側縁部
Bdx、Bgx 分岐部
Bcx 中心部
図1
図2
図3
図4
図5