(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567148
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】破骨細胞分化及び活性抑制能を有するペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20190819BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20190819BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20190819BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190819BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20190819BHJP
【FI】
C07K7/06ZNA
A61P19/08
A61P19/10
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K38/08
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-157904(P2018-157904)
(22)【出願日】2018年8月27日
(62)【分割の表示】特願2017-505139(P2017-505139)の分割
【原出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2019-14719(P2019-14719A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年8月27日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0098362
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ウンミ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・リ
(72)【発明者】
【氏名】アルム・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジョン・クォン
【審査官】
田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/093039(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0165223(US,A1)
【文献】
特開2010−222300(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/093406(WO,A1)
【文献】
国際公開第2000/053740(WO,A1)
【文献】
PNAS, 2010年,Vol.107, No.47,p.20281-20286
【文献】
J. Biol. Chem., 2013年,Vol.288, No.8,p.5562-5571
【文献】
Protein-Peptide Interactions Revolutionize Drug Development,INTECH open science/open minds,Chapter 3,p.49-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
A61K 38/08
A61P 19/08
A61P 19/10
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列からなる、破骨細胞分化及び活性抑制能を有するペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、TRAP(tartrateresistant alkaline phosphatase)の発現を減少させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、カテプシンK(cathepsin K)の発現を減少させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、NF−κBの核内移動を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む骨疾患の予防または治療用組成物。
【請求項6】
前記骨疾患は、骨の損傷、骨粗しょう症、骨軟化症、くる病、線維性骨炎、無形性骨疾患または代謝性骨疾患であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2014年7月31日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10−2014−0098362号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は、本明細書に参照として取り込まれる。
【0002】
本発明は、破骨細胞分化及び活性抑制能を有するペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
骨(bone)は、人体の軟組織と体重を支えて、内部器官を囲んで、内部臓器を外部の衝撃から保護する。また、筋肉や臓器を構造的に支えるだけではなく、体内のカルシウムや他の必須無機質、即ちリンやマグネシウムのような物質を貯蔵する人体の重要な部分の1つである。したがって、成長の終わった成人の骨は、止まることなく死ぬ日まで、古い骨は除去して新しい骨に代替する、生成と吸収過程を非常に力動的、持続的に反復再生しながら均衡を維持する。これを骨再形成(bone remodeling)という。古い骨は除去して新しい骨に代替するような骨の循環(turnover)は、成長とストレスにより起こる骨の微細な損傷を回復させて、適切な骨の機能を維持するに必須的である。
【0004】
骨再形成には、大きく2種類の細胞が関与すると知られている。その1つは、骨を生成する造骨細胞(osteoblast)であり、他の1つは、骨を破壊する破骨細胞(osteoclast)である。造骨細胞は、RANKL(receptor activator of nuclear factor−κB ligand)と、その誘導受容体(decoy receptor)であるOPG(osteoprotegerin)を生成する。RANKLが破骨前駆細胞(osteoclast progenitor cells)表面に存在する受容体RANKに結合すると、破骨前駆細胞が破骨細胞に成熟化(maturation)し、骨吸収(bone resorption)が起こる。しかし、OPGがRANKLと結合すると、RANKLとRANK間結合が遮断され、破骨細胞の形成が抑制されて、必要以上の骨吸収が起こらないようになる。古い骨の吸収または破壊は、血液細胞(造血母細胞)から生じる破骨細胞によりなされて、これは、骨に孔をあけて、少ない量のカルシウムが血流に放出されて身体機能を維持するに使用される。一方、骨細胞で生成された造骨細胞は、膠原質で孔を埋めて、カルシウムとリンの沈着物(hydroxyapatite)を覆って、新しい硬い骨をつくって骨格を再建する。骨が破壊され始めて、再び新しい骨に再形成されるまでは、約100日くらいかかる。幼児では、1年内に骨のカルシウムが100%代わるが、成人では、毎年骨格の約10〜30%が上記のような過程を通じて再形成されて、破骨速度と造骨速度が同一でなければ、前のような骨密度を維持することができない。このように重要な骨の均衡が崩れる場合、多様な疾病が引き起こされるが、特に、骨粗しょう症と癌細胞の骨転移(bone metastasis)による骨の損傷に係る疾患が代表的である。
【0005】
骨粗しょう症(osteoporosis)は、多様な原因により骨の質量が減少し、骨組織の微細構造の退化により骨折危険が持続的に増加する疾患で、骨を構成するミネラル(特にカルシウム)と基質が減少した状態であって、骨再形成の均衡が崩れ、破骨作用が造骨作用より増加された状態で発生する。正常的な骨内部は、網目のように緻密な構造をなしているが、骨粗しょう症の場合は、構造間の間隔が広くなって、微細構造が薄くなり、弱い衝撃にも骨が骨折しやすい状態に進行される。骨粗しょう症は、閉経期の始まりと同時に急速な骨損失(年間2〜3%)があらわれて、脊髄の圧迫及び手首骨が骨折する危険が増加する閉経期以後の骨粗しょう症(Postmenopausal osteoporosis)、70歳以上の男女老人に徐々に発生し(年間0.5〜1%)、寛骨(hip bone)と脊髄骨の漸進的な骨損失をもたらす老年期の骨粗しょう症(Senile osteoporosis)、そして年齢に関係なく、疾病(内分泌疾患、胃腸管疾患、悪性腫瘍)や、薬物(副腎皮質ホルモン、抗がん化学療法、甲状腺ホルモン、抗けいれん剤、抗凝固剤、メトトレキサート(methotrexate)、シクロスポリン(cyclosporine)、GnRHなど)、アルコール、喫煙、事故により発生する二次性骨粗しょう症(Secondary osteoporosis)に分類される。
【0006】
上記のような骨粗しょう症及びがん細胞の骨転移により招来される骨の損傷には、フォサマックス(Fosamax, 成分名: alendronate)とアクトネル(Actonel, 成分名: risedronate)のようなビスホスホネート(bisphosphonate)系列の治療剤が利用されている。上記のようなビスホスホネート製剤は、大部分骨を破壊する破骨細胞の機能を弱化して、死滅を誘導し、骨の損失を遅らせるか止める作用をする。しかし、上述の薬は、新しい骨の形成を促進させる作用は有しておらず、最近、ビスホスホネートを服用する患者から、顎骨の壊死(osteonecrosis)、重症心房細動、骨や関節の無力化または筋骨格の痛みが発生する事例が毎年増加している。したがって、骨吸収を抑制することより、骨の形成を促進させる、骨粗しょう症予防及び治療剤の開発に高い関心が集中されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、生物学的に有効な活性を有する優れたペプチドを開発するために鋭意研究した結果、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドが、破骨細胞の分化及び活性を抑制し、骨破壊によって発生する多様な骨疾患に対して優れた予防及び治療効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、破骨細胞の分化及び活性抑制能を有するペプチドを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、骨疾患の予防または治療用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一様態によると、本発明は、配列番号1から配列番号3のアミノ酸配列から構成された群から選択されるアミノ酸配列からなる、破骨細胞分化及び活性抑制能を有するペプチドを提供する。
【0011】
本発明者らは、生物学的に有効な活性を有する優れたペプチドを開発するために鋭意研究した結果、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドが、破骨細胞の分化及び活性を抑制し、骨破壊によって発生する多様な骨疾患に対して優れた予防及び治療効果を有することを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のようである:
(i)本発明の配列番号1から配列番号3のアミノ酸配列から構成された群から選択される1種のアミノ酸配列からなるペプチドは、破骨細胞分化及び活性抑制能を有して、骨破壊に係る骨疾患の予防または治療に非常に有効である。
(ii)本発明のペプチドは、破骨細胞分化に係るTRAP及びカテプシンK(cathepsin K)の発現を減少させて、NF−κBの核内移動を抑制し、究極的に破骨細胞の分化を抑制する。
(iii)本発明は、上述のペプチドを含む骨疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1a】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAPタンパク質の発現程度変化を、TRAP染色を通じて確認した結果である(配列番号1のペプチド)。
【
図1b】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAPタンパク質の発現程度変化を、TRAP染色を通じて確認した結果である(配列番号2のペプチド)。
【
図1c】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAPタンパク質の発現程度変化を、TRAP染色を通じて確認した結果である(配列番号3のペプチド)。
【
図2a】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAP及びカテプシンKのmRNAレベルをRT−PCRを通じて確認した結果である(配列番号1のペプチド)。
【
図2b】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAP及びカテプシンKのmRNAレベルをRT−PCRを通じて確認した結果である(配列番号2のペプチド)。
【
図2c】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAP及びカテプシンKのmRNAレベルをRT−PCRを通じて確認した結果である(配列番号3のペプチド)。
【
図3a】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時促進されるNF−κBの核内移動の変化をウェスタンブロッティングを通じて確認した結果である(配列番号1のペプチド)。
【
図3b】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時促進されるNF−κBの核内移動の変化をウェスタンブロッティングを通じて確認した結果である(配列番号2のペプチド)。
【
図3c】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時促進されるNF−κBの核内移動の変化をウェスタンブロッティングを通じて確認した結果である(配列番号3のペプチド)。
【
図4a】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAPの発現程度を、免疫化学染色を通じて確認した結果である(配列番号1のペプチド)。
【
図4b】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAPの発現程度を、免疫化学染色を通じて確認した結果である(配列番号2のペプチド)。
【
図4c】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるTRAPの発現程度を、免疫化学染色を通じて確認した結果である(配列番号3のペプチド)。
【
図5a】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるカテプシンKの発現程度を、免疫化学染色を通じて確認した結果である(配列番号1のペプチド)。
【
図5b】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるカテプシンKの発現程度を、免疫化学染色を通じて確認した結果である(配列番号2のペプチド)。
【
図5c】本発明のペプチド処理による破骨細胞の分化時発現されるカテプシンKの発現程度を、免疫化学染色を通じて確認した結果である(配列番号3のペプチド)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のペプチドは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を含む。具体的には、本発明のペプチドは、必須的に、配列番号1から配列番号3のアミノ酸配列からなる群から選択される1種のアミノ酸配列から構成されている。
【0015】
本発明のペプチドは、破骨細胞の分化及び活性を効果的に抑制する。
【0016】
関節内で骨破壊は、破骨細胞(osteoclast)が活性化しつつ現れるが、造血母細胞から分化した骨髄性前駆細胞(myeloid precursor)が炎症性環境で破骨細胞に分化する。リウマチ関節内には、たくさんの炎症性サイトカイン及びケモカインが存在して、これらの物質によって、破骨細胞分化に必要な多様な分子の発現が増加し、破骨細胞の形成を誘導するようになる。リウマチ関節炎の治療目標は、骨破壊を抑制し、関節損傷を最小化することが重要であると認識されている。
【0017】
骨髄性前駆細胞が破骨細胞に分化するに必須的な物質としては、前駆細胞表面でRANK(receptor activator of nuclear factorκB)が誘導されて、これに対するリガンドであるRANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)を提供する細胞が結合される、いわゆるRANK−RANKL相互作用が必須的である。これと共に、M−CSF(macrophage colony stimulating factor)も、破骨細胞が成熟して分化するに重要な役割を担当する。破骨細胞分化の主な信号伝達経路としてRANK−RANKL相互作用とM−CSFが必須的であるが、前駆細胞表面にある多様な種類の免疫グロブリン様受容体(Ig−like receptor)を通じて、細胞内信号伝達物質であるDAP12やFcRγに連結されてco−stimulatory signalを提供する。最も中心となる信号伝達経路は、RANKL−RANK相互結合がなされた後、細胞内信号伝達物質であるTRAF6(TNF−receptor−associated factor 6)を介してNF−kB活性化を経て、破骨細胞の形成に必要な遺伝子転写を増加させて達成される。また、M−CSFも、破骨細胞に分化するに必須的な物質と知られており、受容体チロシンキナーゼスーパーファミリーに属するcFMSのような特異受容体に結合後、細胞質内Src−PYK2複合体を構成し、これを通じてNF−κBのような転写調節物質を誘導するか、インテグリンタンパク質を通じて細胞内信号伝達役割を行う。
【0018】
本発明の一具現例によると、本発明のペプチドは、破骨細胞分化に係るTRAP(tartrateresistant alkaline phosphatase)及びカテプシンK(cathepsin K)の発現を減少させて、NF−κBの核内移動を抑制し、結果的に破骨細胞の分化及び活性を抑制する。
【0019】
本明細書において用語‘ペプチド’は、ペプチド結合により、アミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。本発明のペプチドは、当業界に公知された化学的合成方法、特に固相合成技術(solid−phase synthesis techniques; Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149−54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))または液相合成技術(US登録特許第5,516,891号)によって製造できる。
【0020】
本発明の一具現例によると、前記ペプチドのN−またはC−末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基が結合される。
【0021】
上述のアミノ酸の変形は、本発明のペプチドの安定性を大きく改善する作用をする。本明細書において用語‘安定性’は、インビボ安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。上述の保護基は、生体内のタンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する作用をする。
【0022】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の配列番号1から配列番号3のアミノ酸配列から構成された群から選択される1種のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む骨疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0023】
本発明の組成物は、上述の本発明の配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含むため、その共通する内容は、本明細書の過度なる複雑性を避けるために、その記載を省く。
【0024】
下記の実施例で立証されたように、本発明の配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドは、破骨細胞の分化及び活性を抑制するため、骨破壊に係る骨疾患の予防または治療に非常に有効である。
【0025】
本発明の骨疾患予防または治療用組成物は、破骨作用が過度なる場合に発生するあらゆる疾患に使用でき、例えば、骨の損傷、骨粗しょう症、骨軟化症、くる病、線維性骨炎、無形性骨疾患または代謝性骨疾患などに使用できる。
【0026】
本発明の一具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明のペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物で製造できる。
【0027】
本明細書において用語‘薬剤学的有効量’は、上述のペプチドの効能または活性を達成するに十分な量を意味する。
【0028】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0029】
本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口、好ましくは、非経口で投与でき、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などにより投与できる。
【0030】
本発明の薬剤学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方できる。一方、本発明の薬剤学的組成物のある投与量は、1日当たり0.0001〜200μgである。
【0031】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造するか、または多用量容器内に入れて製造できる。ここで剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはゲル(例えば、ハイドロゲル)の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0032】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0033】
合成例1:ペプチド合成
クロロトリチルクロライドレジン(Chloro trityl chloride resin; CTL resin, Nova biochem Cat No. 01−64−0021) 700mgを反応容器に入れて、メチレンクロライド(MC) 10mlを加えて3分間攪拌した。溶液を除去してジメチルホルムアミド(DMF) 10mlを入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン(DCM)溶液を入れて、Fmoc−Arg(Pbf)−OH (Bachem, Swiss) 200mmole及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA) 400mmoleを入れた後、攪拌してよく溶かし、1時間攪拌しながら反応した。反応後、洗浄して、メタノールとDIEA(2:1)をDCMに溶かして10分間反応して、過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去して、DMFを10ml入れて、3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピぺリジン(Piperidine)/DMF) 10mlを反応容器に入れて、10分間常温で攪拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、再び10分間反応を維持した後、溶液を除去し、それぞれ3分間ずつDMFで2回、MCで1回、DMFで1回洗浄し、Arg(Pbf)−CTL Resinを製造した。
【0034】
新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れて、Fmoc−Leu−OH(Bachem, Swiss) 200mmole、HoBt 200mmole及びBop 200mmoleを入れた後、攪拌して、よく溶かした。反応器に400mmole DIEA(N,N−Diisopropylethylamine)を分画で2回にかけて入れた後、全ての固体が溶けるまで少なくとも5分間攪拌した。溶かしたアミノ酸混合溶液を、脱保護されたレジンの入った反応容器に入れて、1時間常温で攪拌しながら反応した。反応液を除去して、DMF溶液で3回5分間ずつ攪拌した後、除去した。反応レジンを少量取って、カイザーテスト(Nihydrin test)を利用して反応程度を点検した。上記と同様に脱保護溶液で2回脱保護反応し、Leu−Arg(Pbf)−CTL Resinを製造した。DMFとMCで十分洗浄し、再びカイザーテストを行った後、上記と同様に下記のアミノ酸付着実験を行った。
【0035】
選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc−Phe, Fmoc−Glu(OtBu), Fmoc−Val, Fmoc−Pro, Fmoc−Ser(tBu)順に連鎖反応を行った。Fmoc−保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応した後、よく洗浄して除去した。無水酢酸とDIEA、HoBt(Hydroxybenzotriazole)を入れて一時間アセチル化を行った後、製造されたペプチジルレジンをDMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥した後、五酸化リン(Phosphorus pentoxide, P2O5)下で真空で減圧し、完全に乾燥した後、脱漏溶液[TFA(Trifluroacetic acid) 95%、蒸留水2.5%、チオアニソール(Thioanisole) 2.5%] 30mlを入れた後、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量の溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のSer−Pro−Val−Glu−Phe−Leu−Argペプチド1(配列番号1)を0.80g合成した(収率: 88.8%)。分子量測定器を利用して測定時、分子量846.7(理論値: 846.9)が得られた。上記のような方法で、Ile−Thr−Leu−Gln−Glu−Ile−Ile−Arg−Thrペプチド2(配列番号2)及びAla−Cys−Ile−His−Thr−Leu−Ser−Leu−Leu−Cysペプチド3(配列番号3)も合成した(収率:それぞれ86.4%、83.2%)。分子量測定器を利用して測定時、分子量1086.3(理論値: 1086.3)及び1073.0(理論値:1073.3)の値がそれぞれ得られた。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1:TRAP染色
破骨細胞の分化時に発現されるTRAPタンパク質の程度を、染色を通じて確認し、ペプチド処理時減少される傾向を観察した。
【0038】
1×10
4細胞/ウェルで48−ウェルプレートにRaw264.7大食細胞をシーディングして、同時に濃度別にペプチドを処理(ペプチド単独または50 ng/ml RANKL同時処理)して、5日間培養して分化を誘導した。Sigma aldrich社のacid phosphatase kitを使用して、TRAP染色を行った。固定バッファーを添加後、30秒間反応し、蒸留水で洗浄した。染色溶液をウェル当たり200μlを入れて、37℃で30分間反応した後、蒸留水で洗浄した。一日間乾燥した後、顕微鏡で観察した。
【0039】
RANKL処理により破骨細胞分化が誘導され、TRAP発現が増加された対照群に比べ、配列番号1乃至3ペプチドを処理した群では、TRAP発現が濃度依存的に減少されたことを観察することができた(
図1a−c)。
【0040】
実施例2:TRAP及びカテプシンK(cathepsin K)に対するRT−PCR
破骨細胞の分化時発現されるTRAP及びカテプシンK(cathepsin K)のmRNA levelを、RT−PCRを通じて確認し、ペプチド処理時減少される傾向を観察した。
【0041】
1×10
4細胞/ウェルの細胞密度で48−ウェルプレートにRaw264.7細胞をシーディングした。50ng/ml RANKLとペプチドを濃度別(10、50μg/ml)に処理して、5日間37℃培養器で培養した。培養完了された細胞回収後、RNA extraction solution(Easy Blue, Intron)処理して、RNAを用意した後、RT premix(Intron)を使用してcDNAを合成した。各標識因子(カテプシンK、TRAP)に対するプライマーとPCR premix(Intron)を使用してPCRを行った。1%アガロースゲルにPCR結果物5μlずつをローディングして、電気泳動した後、Gel−Docでバンドを確認した。RANKL処理により誘導された破骨細胞分化マーカー、TRAP及びカテプシンKの発現が、配列番号1乃至3ペプチド処理により減少されたことを観察した(
図2a〜c)。
【0042】
実施例3:ウェスタンブロットでNF−κBの位置移動分析
破骨細胞の分化時に促進されるNF−κB核内移動を確認するために、核タンパク質を分離して、RANKL処理による核内NF−κBレベル増加を観察した後、ペプチド処理による減少傾向を観察した。
【0043】
5×10
5細胞/ウェルで6−ウェルプレートにマウス大食細胞株Raw264.7大食細胞をシーディングした。一晩中培養後、無血清培地に入れ替え、6時間培養した。RANKL 50ng/mlと素材を濃度別に処理し、30分間培養した。処理完了された細胞から核タンパク質を抽出し、BCA定量後、サンプルを用意して、SDS−PAGEに電気泳動した。ニトロセルロースメンブレインにトランスファーした後、5%スキムミルクを使用して、1時間ブロッキングした。1次抗体の抗−NF−κB p65を1:1,000でブロッキング溶液に希釈し、冷蔵で一晩中培養した。PBSTで15分間3回洗浄後、2次抗体の抗rabbit IgG−HRPを使用して、室温で1時間培養した。PBSTで15分間3回洗浄後、ECL溶液で発色を進行した。
【0044】
RANKL処理により誘導されたNF−κBの核内移動が、配列番号1乃至3のペプチド処理により減少されることを観察した(
図3a〜c)。
【0045】
実施例4:TRAPに対する免疫化学染色
破骨細胞の分化時に発現されるマーカーであるTRAPの発現程度を、蛍光染色を通じてより明確に再確認し、ペプチド処理による発現減少傾向を観察した。
【0046】
2×10
4細胞/ウェルで48−ウェルプレートにRaw264.7大食細胞をシーディングして、同時に素材を濃度別に処理した。分化誘導5日後、細胞に4%パラホルムアルデヒドを入れて、20分間常温で培養して固定した。PBSで3回洗浄後、0.3% Triton X−100(in PBS)を入れて15分間常温で培養した。その後、PBSで3回洗浄した。2% BSA(in PBS)を入れて、1時間常温で培養してブロッキングさせた。1次抗体(TRAP)を2% BSAに1:100で希釈後、常温で2時間培養した。PBSで3回洗浄した後、テキサスレッド−融合2次抗体を2% BSAに1:100で希釈後、常温で1時間培養した。PBSで3回洗浄した後、DAPIが含まれているマウンティング溶液でマウンティングし、翌日蛍光顕微鏡で観察した。
【0047】
RANKL処理により破骨細胞分化が誘導され、TRAP発現が増加された対照群に比べ、配列番号1乃至3のペプチドを処理した群では、TRAP発現が濃度依存的に減少されたことを観察した(
図4a〜c)。
【0048】
実施例5:カテプシンKに対する免疫化学染色
破骨細胞の分化時に発現されるマーカーであるカテプシンKの発現程度を、蛍光染色を通じてより明確に再確認し、ペプチド処理による発現減少傾向を観察した。
【0049】
2×10
4細胞/ウェルで48−ウェルプレートにRaw264.7大食細胞をシーディングして、同時に素材を濃度別に処理した。分化誘導5日後、細胞に4%パラホルムアルデヒドを入れて、20分間常温で培養して固定した。PBSで3回洗浄後、0.3% Triton X−100(in PBS)を入れて15分間常温で培養し、PBSで3回洗浄した。2% BSA(in PBS)を入れて、1時間常温で培養してブロッキングさせた。1次抗体(カテプシンK)を2% BSAに1:100で希釈後、常温で2時間培養した。PBSで3回洗浄した後、FITC−融合2次抗体を2% BSAに1:100で希釈後、常温で1時間培養した。PBSで3回洗浄した後、DAPIが含まれているマウンティング溶液でマウンティングし、翌日蛍光顕微鏡で観察した。
【0050】
RANKL処理により破骨細胞分化が誘導され、カテプシンK発現が増加された対照群に比べ、配列番号1乃至3のペプチドを処理した群では、カテプシンK発現が濃度依存的に減少された(
図5a〜c)。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]