(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567162
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20190819BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20190819BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
G01V3/12 C
G01S7/03 244
G01S13/88 200
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-502742(P2018-502742)
(86)(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公表番号】特表2018-529935(P2018-529935A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】KR2016007082
(87)【国際公開番号】WO2017030284
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0114981
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506081530
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミョン チョン
(72)【発明者】
【氏名】パパドプロス、ニコス
【審査官】
多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−145360(JP,A)
【文献】
特表2007−501570(JP,A)
【文献】
特表2002−512376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下物性探査システムにおいて、
探査しようとする地域に対して予め定められた特定地点の地面に設けられて電磁波パルス信号を放射する少なくとも一つの送信アンテナを含んでなる送信アンテナ部;
前記送信アンテナ部の放射信号により形成される電場および磁場信号をそれぞれ測定するための少なくとも一対の電場信号受信アンテナおよび磁場信号受信アンテナを含んでなる受信アンテナ部;
前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部を通して収集された信号に基づいて地下媒質の物性に対する分析を遂行する分析部;および
前記探査システムの全体的な動作を制御する制御部を含んで構成さ
れ、
前記電場信号受信センサと前記磁場信号受信センサを並行して運用
し、
前記送信アンテナを地面に設け、前記送信アンテナで放射する電磁波信号により形成される電場と磁場をそれぞれ別途の前記電場信号受信アンテナと前記磁場信号受信アンテナを通して同一の地点で受信し、
理論モデリングにより得られた単一送信源(source)による電場
と磁場
をそれぞれ以下の数式で示すとき、
(ここで、
は、理論モデリングでの単一電磁波送信源、
は、理論モデリングでの地下物性特性を示すインパルス応答(Impulse response)、
は、理論モデリングでの電場信号受信アンテナの受信関数、
は、理論モデリングでの磁場信号受信アンテナの受信関数を示す。)
前記数式を周波数領域にフーリエ変換(Fourier transform)して以下の数式に変換し、
以下の数式を利用して前記電場と前記磁場の比を求める処理が遂行されるように構成されることで、
応答信号
で送信信号
が消去されることを特徴とする、地下物性探査システム。
【請求項2】
前記送信アンテナ部の前記送信アンテナは、
超広帯域電磁波パルスを放射できるアンテナであれば、いかなるアンテナでも使用可能であることを特徴とする、請求項1に記載の地下物性探査システム。
【請求項3】
前記受信アンテナ部の前記電場信号受信アンテナは、
給電点を基準に2個の伝導性放射体が並んで設けられ、超広帯域パルス信号を受信できる双極子アンテナの形態に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の地下物性探査システム。
【請求項4】
前記受信アンテナ部の前記磁場信号受信アンテナは、
単一伝導性放射体が巻かれた形態に設けられ、超広帯域パルス信号を受信できるループアンテナの形態に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の地下物性探査システム。
【請求項5】
前記地下物性探査システムは、
空気媒質で単一送信アンテナの放射による電場信号および磁場信号をそれぞれの受信アンテナを通して前記送信アンテナと離れた同一の地点でそれぞれ測定し
、空気中で電場と磁場の大きさの比率
が固有インピーダンス(Intrinsic impedance)
と定義されるとき、
以下の数式を利用して、前記固有インピーダンスに基づいて前記受信アンテナ部のそれぞれのアンテナに受信された前記電場信号および前記磁場信号の比率を補正する補正関数(calibration function;
)を求める処理が遂行されるように構成されることで、
前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部のそれぞれのアンテナが真空または空気中で用いられ、前記電場信号および前記磁場信号が得られた時の比率が周波数に関係なく一定の特性を有するように構成されることを特徴とする、請求項
1に記載の地下物性探査システム。
(ここで、
および
は、それぞれ測定により得られた磁場信号受信機および電場信号受信機の受信関数を示す。)
【請求項6】
前記地下物性探査システムは、
空気ではなく他の媒質に対しても同様の方法で前記補正関数を求める処理が遂行されるように構成されることで、
互いに異なる2種類以上の媒質に対する場合でも、前記補正関数を複合的に利用できるように構成されることを特徴とする、請求項5に記載の地下物性探査システム。
【請求項7】
前記地下物性探査システムは、
空気中ではなく地面上に前記送信アンテナを位置させ、前記送信アンテナにより放射される電場信号および磁場信号を前記送信アンテナとは異なる地点の地面上の同一地点に位置したそれぞれの前記電場信号および前記磁場信号受信アンテナを通してそれぞれ測定する処理が遂行されるように構成される、ことを特徴とする、請求項6に記載の地下物性探査システム。
【請求項8】
前記地下物性探査システムは、
前記地面上に前記送信アンテナを設けて前記電場信号および磁場信号を測定時、それぞれの前記受信アンテナの特性が前記補正関数
により補償されると、前記測定による受信機関数の比
が消去されることにより、
以下の数式を利用して、前記測定による地下媒質の物性を求める処理が遂行されるように構成されることを特徴とする、請求項
7に記載の地下物性探査システム。
(ここで、
は、測定により得られた地下媒質の物性システムを示す。)
【請求項9】
地下物性分析方法において、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の地下物性探査システムを用いて地下物性を測定して分析するように構成される、地下物性分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下レーダー探査の原理を利用して地下の物性を分析するための装置および方法に関し、さらに詳細には、電場信号を送受信するダイポール形態のセンサが主に用いられ、磁場信号を送受信するループ、コイル形態のセンサは排除されることで電場反射波を用いた地下映像だけが獲得可能であり、磁場反射波を用いた地下映像は獲得することができなかった従来の技術の地下探査レーダーまたは地盤透過レーダー(Ground−penetrating radar、GPR)を用いたレーダー探査技法の問題点を解決できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性測定方法に関する。
【0002】
また、本発明は、上述したように、電場信号だけを主に受信し、磁場信号受信は排除してきた従来の技術のGPR探査技法の問題点を解決するために、地面の特定地点に位置して電磁波パルス信号を放射する送信アンテナ、および上述の放射信号により形成される電場、および磁場信号をそれぞれ測定する受信アンテナ対を含み、電場信号受信センサと磁場信号受信センサを並行して運用することにより、電場だけでなく磁場の地下反応を同時に測定し、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得できるように構成されることで、既存に比べて地下の物性をさらに正確かつ効果的に糾明できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、一般的に、地下の物性を探査して分析するための技術として、電磁波を送受信して地下の物性を探査するレーダー探査技法と、磁場を利用して地下の物性を探査する電磁誘導探査(Electromagnetic(EM) induction)技法が広く用いられている。
【0004】
さらに詳細には、レーダー探査技法は、地下の物性を探査するために略100MHz〜1GHzの電場信号を送受信する方法であり、これに対して、電磁誘導探査(Electromagnetic(EM) induction)技法は、数kHz以下の磁場信号を送受信して地下の物性を探査する方法である。
【0005】
併せて、近年は、電場信号を送受信して地下の物性を探査する地下探査レーダーまたは地盤透過レーダー(Ground−penetrating radar、GPR)を用いた、いわゆるGPR技法が広く用いられている。
【0006】
ここで、上述したように、GPRを用いて地下探査を遂行するための装置および方法に関する従来の技術の例としては、例えば、先ず、大韓民国登録特許公報第10−1267017号によれば、カート(cart)上に積載されて移動性がよくなるので、作業者の疲労度を減らし、送受信シグナル(signal)損失を最小化するために、カートの下側に指標と密着してアンテナが前、後に取り付けられることで電磁波が空気中に損失されないように構成されるGPR探査装備の信号処理による地下施設物探測システムが提示されている。
【0007】
また、上述したように、GPRを用いて地下探査を遂行するための装置および方法に関する従来の技術の他の例としては、例えば、大韓民国登録特許公報第10−1267016号によれば、超広帯域のパルスを利用してさらに正確な探測が可能であり、各モジュール別インターフェース、現場の探測および装備の移動が簡便になり、4km/Dayの探測速度が可能であるように構成されることで、小型一体化を通して作業効率を向上させ、原価が大幅に節減できるように構成されるGPRシステムを用いた地下施設物探測の信号解析装置が提示されている。
【0008】
併せて、上述したように、GPRを用いて地下探査を遂行するための装置および方法に関する従来の技術のまた他の例としては、例えば、大韓民国登録特許公報第10−1241313号によれば、低周波帯域パルス信号を生成して放射し、舗装道路の下部に形成された地下空洞から反射される応答信号を獲得する低周波レーダーモジュール、高周波帯域パルス信号を生成して放射し、舗装道路の中間層および基層の間と基層および土壌層の間に金属金網で構成された認識子から反射される応答信号を獲得する複数個の高周波レーダーモジュール、および低周波レーダーモジュールで獲得された信号と高周波レーダーモジュールで獲得された信号を表示する映像処理装置を含み、舗装道路の厚さと舗装道路の下に存在する地下空洞を同時に高速で探知できるように構成される地下探査レーダーを用いた舗装道路安全診断システムおよび方法が提示されている。
【0009】
さらに、上述したように、GPRを用いて地下探査を遂行するための装置および方法に関する従来の技術のさらに他の例としては、例えば、大韓民国登録特許公報第10−0365141号によれば、送信および受信アンテナを通して制御装置で発生したパルスを放射させて媒質を通過した後、埋設物体で反射されて戻る信号を受け入れるステップと、受信アンテナから伝送された信号を記録、格納して室内での資料処理のために必要なPCに資料を伝送し、制御装置で信号が記録される最初時間、アナログ(analog)信号である受信信号のデジタルサンプリング間隔、信号が記録される全体時間範囲、スタッキング(stacking)回数等、探査に必要な様々な変数を決定し、決定された変数に適した送受信パルスを発生させて増幅させた後、送信アンテナを通して放射し、サンプリング間隔およびトレース(trace)当たりのサンプリング間隔および個数を決定するステップ、および制御装置で獲得したパルス資料を映像で具現させ、処理されたデータを対象に高解像度の画面を様々な具現色相を適用してより高い分解能の断面図を示すステップを含んで構成されるGPRシステムを用いた地下埋設物探測工法が提示されている。
【0010】
上述したように、従来、GPRを用いた地下探査装置および方法について様々な技術内容が提示されているが、上述したような従来の技術のGPRを用いた探査装置および方法は、下記のような問題点があるものであった。
【0011】
即ち、GPRのようにセンサが放射する構造では、軽くて簡単な形態の放射体であって周波数の変化によって放射パターンの差が少ないダイポール形態のアンテナがループ形態より使用するに有利であることで、従来、一般的に、GPRにおいては、電場信号を送受信するためにダイポール形態のセンサが主に用いられている。
【0012】
これに対して、GPRより低い周波数帯域を使用する電磁誘導探査(EM induction)においては、電磁誘導優勢領域(Induction range)でセンサは波長に対比して非常に小さな構造であることで、ダイポール形態に比べてループ形態が相対的にインピーダンスを合わせるのに有利である理由から磁場信号を送受信するセンサとして、ループ、コイル形態のセンサが主に用いられてきた。
【0013】
即ち、既存のGPR技法においては、上述したように、その特性上、ダイポールセンサを使用することが有利である理由によって電場反射波を用いた地下映像だけを主に獲得してきており、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は、相対的に排除されてきた。
【0014】
しかし、より正確かつ効果的に地下物性を探査して糾明するためには、電場信号による地下映像と、磁場信号による地下映像をいずれも獲得して総合的に分析することが好ましい。
【0015】
従って、上述したように、電場信号だけが用いられ、磁場信号は排除されていた従来の技術のGPR探査技法の問題点を解決するためには、電場信号受信センサと磁場信号受信センサを並行して運用することにより、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得できるように構成される新たな構成の地下物性探査システムおよび方法を提供することが好ましいが、未だそのような要求を全て満たす装置や方法は提供できていない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10−1267017号(2013.05.16.)
【特許文献2】大韓民国登録特許公報第10−1267016号(2013.05.16.)
【特許文献3】大韓民国登録特許公報第10−1241313号(2013.03.04.)
【特許文献4】大韓民国登録特許公報第10−0365141号(2002.12.04.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述したような従来の技術の問題点を解決しようとするものであり、従って、本発明の目的は、電場信号を送受信するダイポール形態のセンサが主に用いられ、磁場信号を送受信するループ、コイル形態のセンサは排除されることで、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR(Ground−penetrating radar)探査技法の問題点を解決するために、電場信号受信センサと磁場信号受信センサを並行して運用することにより、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法を提供しようとすることである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、上述したように、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR探査技法の問題点を解決するために、地面の特定地点に位置して電磁波パルス信号を放射する送信アンテナ、および上述の放射信号により形成される電場、および磁場信号をそれぞれ測定する受信アンテナ対を含んで構成されることで、電場だけでなく磁場の地下反応を同時に測定することにより既存に比べて地下の物性をさらに正確かつ効果的に糾明できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述したような目的を達成するために、本発明によれば、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は排除されてきた従来の技術の地下探査レーダー(Ground−penetrating radar、GPR)技法の問題点を解決するための地下物性探査システムにおいて、探査しようとする地域に対して予め定められた特定地点の地面に設けられて電磁波パルス信号を放射する少なくとも一つの送信アンテナを含んでなる送信アンテナ部;前記送信アンテナ部の放射信号により形成される電場および磁場信号をそれぞれ測定するための少なくとも一対の電場信号受信アンテナおよび磁場信号受信アンテナを含んでなる受信アンテナ部;前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部を通して収集された信号に基づいて地下媒質の物性に対する分析を遂行する分析部;および、前記探査システムの全体的な動作を制御する制御部を含んで構成されることで、前記電場信号受信センサと前記磁場信号受信センサを並行して運用することにより、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得可能で前記地下媒質の物性をさらに正確かつ効果的に分析できるように構成されることを特徴とする地下物性探査システムが提供される。
【0020】
ここで、前記送信アンテナ部の前記送信アンテナは、超広帯域電磁波パルスを放射できるアンテナであれば、いかなるアンテナでも使用可能であることを特徴とする。
【0021】
また、前記受信アンテナ部の前記電場信号受信アンテナは、給電点を基準に2個の伝導性放射体が並んで設けられ、超広帯域パルス信号を受信できる双極子アンテナの形態に構成されることを特徴とする。
【0022】
併せて、前記受信アンテナ部の前記磁場信号受信アンテナは、単一伝導性放射体が巻かれた形態に設けられ、超広帯域パルス信号を受信できるループアンテナの形態に構成されることを特徴とする。
【0023】
さらに、前記地下物性探査システムは、前記送信アンテナを地面に設け、前記送信アンテナで放射する電磁波信号により形成される電場と磁場をそれぞれ別途の前記電場信号受信アンテナと前記磁場信号受信アンテナを通して同一の地点で受信し、理論モデリングにより得られた単一送信源(source)による電場
と磁場
をそれぞれ以下の数式で示すとき、
(ここで、
は、理論モデリングでの単一電磁波送信源、
は、理論モデリングでの地下物性特性を示すインパルス応答(Impulse response)、
は、理論モデリングでの電場信号受信アンテナの受信関数、
は、理論モデリングでの磁場信号受信アンテナの受信関数を示す。)
前記数式を周波数領域にフーリエ変換(Fourier transform)して以下の数式に変換し、
以下の数式を利用して前記電場と前記磁場の比を求める処理が遂行されるように構成されることで、
応答信号
で送信信号
が消去されることにより、測定時、前記送信信号が歪曲されても、完全波形逆算結果は影響を受けなくなり、従来のGPR技法に比べて正確度の高い逆算結果を得ることができるように構成されることを特徴とする。
【0024】
また、前記地下物性探査システムは、空気媒質で単一送信アンテナの放射による電場信号および磁場信号をそれぞれの受信アンテナを通して前記送信アンテナと離れた同一の地点でそれぞれ測定し
、空気中で電場と磁場の大きさの比率
が固有インピーダンス(Intrinsic impedance)
と定義されるとき、以下の数式を利用して、前記固有インピーダンスに基づいて前記受信アンテナ部のそれぞれのアンテナに受信された前記電場信号および前記磁場信号の比率を補正する補正関数(calibration function;
)を求める処理が遂行されるように構成されることで、前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部のそれぞれのアンテナが真空または空気中で用いられ、前記電場信号および前記磁場信号が得られた時の比率が周波数に関係なく一定の特性を有するように構成されることを特徴とする。
(ここで、
および
は、それぞれ測定により得られた磁場信号受信機および電場信号受信機の受信関数を示す。)
併せて、前記地下物性探査システムは、空気ではなく他の媒質に対しても同様の方法で前記補正関数を求める処理が遂行されるように構成されることで、互いに異なる2種類以上の媒質に対する場合でも、前記補正関数を複合的に利用できるように構成されることを特徴とする。
【0025】
さらに、前記地下物性探査システムは、空気中ではなく地面上に前記送信アンテナを位置させ、前記送信アンテナにより放射される電場信号および磁場信号を前記送信アンテナとは異なる地点の地面上の同一地点に位置したそれぞれの前記電場信号および前記磁場信号受信アンテナを通してそれぞれ測定する処理が遂行されるように構成されることで、従来のGPR映像に該当する電場反応に加えて、磁場反応または磁場映像に対する測定データを獲得できるように構成されることを特徴とする。
また、前記地下物性探査システムは、前記地面上に前記送信アンテナを設けて前記電場信号および磁場信号を測定時、それぞれの前記受信アンテナの特性が前記補正関数
により補償されると、前記測定による受信機関数の比
が消去されることにより、以下の数式を利用して、前記測定による地下媒質の物性を求める処理が遂行されるように構成されることを特徴とする。
(ここで、
は、測定により得られた地下媒質の物性システムを示す。)
併せて、本発明によれば、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は排除されてきた従来の技術の地下探査レーダー(Ground−penetrating radar、GPR)技法の問題点を解決するための地下物性分析方法において、前記に記載の地下物性探査システムを用いて地下物性を測定して分析するように構成されることで、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得可能で従来のGPR技法に比べて前記地下媒質の物性をさらに正確かつ効果的に測定して分析できるように構成されることを特徴とする地下物性分析方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明によれば、電場信号受信センサと磁場信号受信センサを並行して運用することにより、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法が提供されることで、電場信号を送受信するダイポール形態のセンサが主に用いられ、磁場信号を送受信するループ、コイル形態のセンサは排除されることで電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR(Ground−penetrating radar)探査技法の問題点を解決することができる。
【0027】
また、本発明によれば、上述したように、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR探査技法の問題点を解決するために、地面の特定地点に位置して電磁波パルス信号を放射する送信アンテナ、および上述の放射信号により形成される電場および磁場信号をそれぞれ測定する受信アンテナ対を含んで構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法が提供されることで、電場だけでなく磁場の地下反応を同時に測定することにより既存に比べて地下の物性をさらに正確かつ効果的に糾明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例に係る地下物性探査システムの全体的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した本発明の実施例に係る地下物性探査システムを用いて地下媒質に対する物性を測定および分析する過程を概略的に示す概念図である。
【
図3】理論的なモデリングにより地下媒質に対する物性を測定および分析する過程を概略的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法の具体的な実施例について説明する。
ここで、以下に説明する内容は、本発明を実施するための一つの実施例であるだけで、本発明は、以下に説明する実施例の内容にのみ限定されるものではないという事実に留意すべきである。
【0030】
また、以下の本発明の実施例についての説明において、従来の技術の内容と同一または類似するか、当業者の水準で容易に理解して実施できると判断される部分に対しては、説明を簡略にするために、その詳細な説明を省略したことに留意すべきである。
即ち、本発明は、後述するように、電場信号を送受信するダイポール形態のセンサが主に用いられ、磁場信号を送受信するループ、コイル形態のセンサは排除されることで電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR(Ground−penetrating radar)探査技法の問題点を解決するために、電場信号受信センサと磁場信号受信センサを並行して運用することにより、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法に関する。
【0031】
併せて、本発明は、後述するように、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR探査技法の問題点を解決するために、地面の特定地点に位置して電磁波パルス信号を放射する送信アンテナ、および上述の放射信号により形成される電場および磁場信号をそれぞれ測定する受信アンテナ対を含んで構成されることで、電場だけでなく磁場の地下反応を同時に測定することにより、既存に比べて地下の物性をさらに正確かつ効果的に糾明できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法に関する。
【0032】
引き続き、図面を参照して、本発明に係る地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法の具体的な内容について説明する。
【0033】
先ず、
図1を参照すると、
図1は、本発明の実施例に係る地下物性探査システムの全体的な構成を概略的に示すブロック図である。
【0034】
図1に示したように、本発明の実施例に係る地下物性探査システム10は、大別して、GPR(Ground−penetrating radar)のような地下レーダー探査の原理を利用して地下物性を分析するために、地面の特定地点に位置して電磁波パルス信号を放射する少なくとも一つの送信アンテナを含んでなる送信アンテナ部11と、上述の送信アンテナ部11の放射信号により形成される電場および磁場信号をそれぞれ測定するための少なくとも一対の電場信号受信アンテナおよび磁場信号受信アンテナを含んでなる受信アンテナ部12と、上述の送信アンテナ部11と受信アンテナ部12を通して収集された信号に基づいて地下媒質の物性に対する分析を遂行する分析部13、および上述の送信アンテナ部11と受信アンテナ部12および探査システム10の全体的な動作を制御する制御部14を含んで構成され得る。
【0035】
ここで、上述の受信アンテナ部12において、電場を測定する電場信号受信アンテナは、給電点を基準に2個の伝導性放射体が並んで構成されている双極子アンテナの形態に構成され得る。
【0036】
また、上述の受信アンテナ部12において、電場を測定する電場信号受信アンテナは、受信信号の解像度を高めるために、アンテナアームの一部分または全体に対してインピーダンスが装荷された形態に構成され得る。
【0037】
併せて、上述の受信アンテナ部12において、磁場を測定する磁場信号受信アンテナは、単一伝導性放射体が巻かれたループアンテナ(Loop antenna)の形態に構成され得る。
【0038】
さらに、上述の受信アンテナ部12において、磁場を測定する磁場信号受信アンテナは、アンテナの単一地点に特定値または複数の区間に対して一定の値を有するインピーダンスで装荷された形態に構成され得る。
【0039】
併せて、上述の送信アンテナ部11において、電磁波パルス信号を放射する送信アンテナは、前記に記載のアンテナのうち一つで構成され得るが、必ずしも上述の構成にのみ限定されるものではなく、その他にも、超広帯域電磁波パルスを放射できるものであれば、いかなるアンテナでも使用可能なものであることに留意すべきである。
さらに、本発明の実施例に係る地下物性探査システム10は、好ましくは、上述の送信アンテナ部11および受信アンテナ部12のそれぞれのアンテナが真空または空気中で用いられ、電場と磁場信号が得られたとき、その比率が周波数に関係なく一定の特性を有するようにするための補正関数(calibration function)を含むように構成され得る。
【0040】
引き続き、上述のようにして構成される本発明の実施例に係る地下物性探査システムを用いて地下媒質に対する物性を測定および分析する具体的な過程について説明する。
【0041】
即ち、
図2を参照すると、
図2は、
図1に示した本発明の実施例に係る地下物性探査システム10を用いて地下媒質に対する物性を測定および分析する過程を概略的に示す概念図である。
【0042】
また、
図3を参照すると、
図3は、理論的なモデリングにより地下媒質に対する物性を測定および分析する過程を概略的に示す概念図である。
【0043】
ここで、
図2において、
は、測定時、送信アンテナを通して放射された送信源信号であり、
は、測定時、電場信号受信アンテナの受信機関数であり、
は、測定時、磁場信号受信アンテナの受信機関数であり、
および
は、送信源信号による電場および磁場(測定値)であり、
および
は、測定により獲得した地下物性システムをそれぞれ意味する。
【0044】
併せて、
図3において、
は、理論モデリングでの送信源信号であってアンテナなしに直接印加され、
は、理論モデリングでの電場信号受信機関数であってアンテナがないので無視され、
は、理論モデリングでの磁場信号受信機関数であってアンテナがないので無視され、
および
は、送信源信号による電場および磁場(理論モデリング値)であり、
および
は、理論モデリングにより獲得した地下物性システムをそれぞれ示す。
【0045】
さらに詳細には、
図2に示したように、本発明の実施例に係る地下物性探査システム10を用いて地下媒質に対する物性を測定および分析する過程は、先ず、送信アンテナを地面に設け、送信アンテナで放射する電磁波信号により形成される電場と磁場をそれぞれ別途の電場信号受信アンテナと磁場信号受信アンテナを通して同一の地点で受信する。
【0046】
このとき、コンボリューション地球モデル(Convolutional earth model)によれば、理論モデリングにより得られた単一送信源(source)による電場と磁場
は、それぞれ以下の[数1]のように示すことができる。
【数1】
ここで、上述の[数1]において、
は、理論モデリングでの単一電磁波送信源、
は、理論モデリングでのインパルス応答(Impulse response)であって地下物性システム特性を示し、
は、理論モデリングでの電場信号受信アンテナの受信関数、
は、理論モデリングでの磁場信号受信アンテナの受信関数である。
【0047】
また、上述の[数1]を周波数領域にフーリエ変換(Fourier transform)すると、以下の[数2]のように変換される。
【数2】
従って、電場と磁場の比を求めると、以下の[数3]のようになって送信源項が消えるようになる。
【数3】
ここで、逆算問題は、地球物理探査の共通した解析目標であって、地下媒質の物性分布に起因する反応を獲得し、これより未知の地下媒質物性分布を求める問題である。
【0048】
この中で、GPR探査資料の完全波形逆算は、測定レーダー探査資料と数値モデリングを通してシミュレーションした理論探査資料間の残差を最小化させる方向に繰り返し計算法により地下媒質の物性(電気伝導度および誘電率)を更新させていきながら地下の物性である電気伝導度と誘電率分布を糾明する技法である。
【0049】
このような完全波形逆算アルゴリズムは、測定資料と理論モデリング資料において全体波形を比較するため、膨大な量の計算とコンピュータ資源が要求される。
【0050】
さらに、完全波形逆算において重要な前提条件は、残差を求める理論モデリング資料と測定資料が互いに同一の送信源を使用した時の結果でなければならないという点である。
【0051】
即ち、言い換えれば、完全波形逆算を適用するためには、地下に実際に放射される送信源の時間領域信号が知られているか、または、正確に予測できなければならない。
【0052】
しかし、GPR応用において、送信源である電磁波パルス信号の印加は、シミュレーションで一般的に特定ポイントでそのまま印加されるのに対し、測定では、パルス信号が送信アンテナに給電された後、アンテナで放射する形態でなされるので、送信アンテナの特性、地表面の電気的特性、そして、送信アンテナと地表面との結合状態等によってパルス信号の歪曲が不可避的である。
【0053】
それゆえ、従来のGPR技法においては、正確な送信源波形の予測が非常に難しく、実際の測定での送信源と理論モデリングでの送信源が一致しないため、必然的に残差の信頼度が低くなる問題がある。
【0054】
しかし、上述したように、本発明の実施例によって電場と磁場間の比率に該当するGPR応答を得た場合、上述の[数3]に示したように、送信信号
が応答信号
で消去されるので、測定をするとき、送信信号が送信アンテナ、地下物性、アンテナと地表面の結合状態等によって歪曲されても、完全波形逆算結果は影響を受けなくなり、正確度の高い逆算結果を得ることができるようになる。
【0055】
このとき、理論モデリングや実際の測定のいずれの場合でも、電場と磁場信号をそれぞれ受信するとき、同一の送信源が同一の送信アンテナに印加されなければならない。
【0056】
引き続き、上述のようにして構成される本発明の実施例に係る地下物性探査システム10を用いた地下物性分析方法の送受信アンテナの運用について説明する。
【0057】
先ず、空気媒質で単一送信アンテナの放射による電場信号
および磁場信号
をそれぞれの受信アンテナを通して送信アンテナと離れた同一の地点で測定する。
【0058】
このとき、空気中で電場と磁場の大きさの比率
は、固有インピーダンス(Intrinsic impedance)として
と定義される。
【0059】
従って、以下の[数4]に示したように、それぞれの受信アンテナに受信された電場および磁場信号の比率を補正する関数(calibration function;
と仮定)を、固有インピーダンスを利用して求めることができる。
【数4】
ここで、上述の[数4]において、
および
は、それぞれ測定による磁場および電場信号受信機の受信関数を示す。
【0060】
また、上述の過程で得られる補正関数(calibration function)は、空気ではなく他の媒質(例えば、水)でも同様の方法で得ることができ、2種類以上の媒質に対する場合でも、得られた補正関数を複合的に利用することができる。
【0061】
ここで、上述の過程は、測定時の過程であり、理論モデリングでは、送信および受信アンテナなしに電場と磁場自体が直接計算されるので、補正関数なしに空気での電場と磁場の大きさの比率
がすぐに
と得られるようになる。
【0062】
併せて、上述の過程とは別に、空気中ではなく地面上に送信アンテナを位置させ、これによる電場信号
および磁場信号
をそれぞれの電場信号および磁場信号受信アンテナを通して送信アンテナとは異なる地点に位置した地面上の同一地点でそれぞれ測定する。
【0063】
これより、地下の2種類の応答、即ち、電場反応(例えば、従来のGPR映像)と、本発明により可能となる磁場反応または映像の測定データを獲得することができる。
【0064】
ここで、地面での測定時、受信アンテナの特性が上述の補正関数
により補償されるならば、上述の[数3]において測定された受信機関数の比
は消去されるので、結局、
は、以下の[数5]に示したように、測定による地下媒質物性システムである
となる。
【数5】
これに対して、理論モデリングでは、送信および受信アンテナなしに電場と磁場自体が直接計算されるので、以下の[数6]に示したように、補正関数なしに理論モデリングを通して得られた
がそのまま理論モデリングによる地下媒質物性システムである
となる。
【数6】
従って、上述のようにして得られた電場と磁場の比率の測定および理論モデリング値間の残差を最小化する方向に繰り返し計算法を遂行することにより、完全波形逆算を遂行して地下物性媒質システムを糾明することができる。
【0065】
以上、上述のようにして、本発明に係る地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法を具現することができる。
【0066】
また、上述のようにして、本発明に係る地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法を具現することにより、本発明によれば、電場信号受信センサと磁場信号受信センサを並行して運用することにより、既存の電場反射波を用いた地下映像だけでなく、磁場反射波を用いた地下映像も獲得できるように構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法が提供されることで、電場信号を送受信するダイポール形態のセンサが主に用いられ、磁場信号を送受信するループ、コイル形態のセンサは排除されることで電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR(Ground−penetrating radar)探査技法の問題点を解決することができる。
【0067】
併せて、本発明によれば、上述したように、電場反射波を用いた地下映像を主に獲得し、磁場反射波を用いた地下映像の獲得は相対的に排除されてきた従来の技術のGPR探査技法の問題点を解決するために、地面の特定地点に位置して電磁波パルス信号を放射する送信アンテナ、および上述の放射信号により形成される電場および磁場信号をそれぞれ測定する受信アンテナ対を含んで構成される地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法が提供されることで、電場だけでなく磁場の地下反応を同時に測定することにより既存に比べて地下の物性をさらに正確かつ効果的に糾明することができる。
【0068】
以上、上述したような本発明の実施例を通して本発明に係る地下物性探査システムおよびそれを用いた地下物性分析方法の詳細な内容について説明したが、本発明は、上述の実施例に記載の内容にのみ限定されるものではなく、従って、本発明は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者により設計上の必要およびその他の多様な要因によって様々な修正、変更、結合および代替等が可能であることは当然であるといえる。
【符号の説明】
【0069】
10:地下物性探査システム
11:送信アンテナ部
12:受信アンテナ部
13:分析部
14:制御部