(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有率が20重量%未満であり、前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有率が、20重量%以上である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
走査透過型電子顕微鏡によって前記第1の担体粒子と前記第2の担体粒子とを観察した場合に、前記第2の担体粒子の投影面積の、前記第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)が、0.050以上0.100以下の範囲である、請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
走査透過型電子顕微鏡によって測定される、前記第1の担体粒子及び前記第2の担体粒子の平均粒径が、それぞれ0.50〜100μm及び0.50〜5μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
前記担体粒子が、セリアジルコニア固溶体であり;前記担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物であり;かつ前記触媒貴金属の塩が、硝酸塩又は硫酸塩である、請求項13に記載の方法。
前記担体粒子に含有されている希土類元素の総和物質量に対する、前記有機カルボン酸の物質量比[mol/mol−Ln]が、0.5以上3.5以下である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ロジウムの触媒活性を高い状態に維持できる、新規な排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施態様としては、以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
第1の担体粒子、第2の担体粒子、並びに前記第1及び第2の担体粒子に担持されている貴金属触媒粒子を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記第1の担体粒子が、セリア、ジルコニア、及びセリア以外の希土類酸化物を含有し、
前記第2の担体粒子が、セリア以外の希土類酸化物を含有し、セリア及びジルコニアを含有してもよく、
前記第1の担体粒子のセリア及びジルコニアの合計の含有率が、前記第2の担体粒子のセリア及びジルコニアの合計の含有率よりも高く、
前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有率が、前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有率よりも高く、
前記第1の担体粒子のセリア含有率が、45重量%以下であり、かつ
貴金属触媒粒子が、ロジウム粒子を含む、排ガス浄化用触媒。
《態様2》
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有率が20重量%未満であり、前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有率が、20重量%以上である、態様1に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様3》
走査透過型電子顕微鏡によって前記第1の担体粒子と前記第2の担体粒子とを観察した場合に、前記第2の担体粒子の投影面積の、前記第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)が、0.050以上0.100以下の範囲である、態様2に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様4》
前記第1の担体粒子及び前記第2の担体粒子が、セリア以外の希土類酸化物を含有するセリアジルコニア固溶体であり、かつ
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物及び前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物である、
態様1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様5》
前記第1の担体粒子が、50〜95重量%のジルコニア、3.0重量%以上のセリア、及び1.0以上20重量%未満のセリア以外の希土類酸化物を含有し、かつ
前記第2の担体粒子が、0.0〜40重量%のジルコニア、0.0〜40重量%のセリア、及び20〜60重量%のセリア以外の希土類酸化物を含有している、
態様1〜4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様6》
前記第1の担体粒子が、50〜75重量%のジルコニア、20〜40重量%のセリア、及び1.0以上20重量%未満のセリア以外の希土類酸化物を含有し、かつ
前記第2の担体粒子が、0.0〜40重量%のジルコニア、25〜40重量%のセリア、及び20〜60重量%のセリア以外の希土類酸化物を含有している、態様5に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様7》
走査透過型電子顕微鏡によって測定される、前記第1の担体粒子及び前記第2の担体粒子の平均粒径が、それぞれ0.50〜100μm及び0.50〜5μmである、態様1〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様8》
前記貴金属触媒粒子が、さらに白金粒子及び/又はパラジウム粒子を含む、態様1〜7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様9》
走査透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によって元素マッピングを行ったときに、前記ロジウム粒子の位置と前記第2の担体粒子の位置とが相関係数65.0%以上で一致しており、ここで前記相関係数は以下の式で計算される、態様1〜8のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒:
【数1】
(ここで、x
iは位置iにおける貴金属元素の特性X線強度であり、x
avは貴金属元素の特性X線強度の平均値であり、y
iは位置iにおける希土類金属元素の特性X線強度であり、y
avは希土類金属元素の特性X線強度の平均値である)。
《態様10》
態様1〜9のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒を含む触媒層と、基材とを具備する排ガス浄化装置。
《態様11》
前記触媒層が、最表面の少なくとも一部を構成する上層及び下層を含み、前記上層が前記排ガス浄化用触媒を含む、態様10に記載の排ガス浄化装置。
《態様12》
態様1〜9のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒を含む基材を具備する、排ガス浄化装置。
《態様13》
以下を含む、排ガス浄化用触媒の製造方法:
セリア、ジルコニア、及びセリア以外の希土類酸化物を含有している担体粒子の水系分散体、ロジウムを含む触媒貴金属の塩を含有する水溶液、及び有機カルボン酸を混合して、前記担体粒子に触媒貴金属を担持し、それによって未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程;
前記未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を、乾燥させ、そして焼成する工程。
《態様14》
前記担体粒子が、セリアジルコニア固溶体であり;前記担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物であり;かつ前記触媒貴金属の塩が、硝酸塩又は硫酸塩である、態様13に記載の方法。
《態様15》
前記有機カルボン酸が、分子量300以下の有機カルボン酸である、態様13又は14に記載の方法。
《態様16》
前記担体粒子に含有されている希土類元素の総和物質量に対する、前記有機カルボン酸の物質量比[mol/mol−Ln]が、0.5以上3.5以下である、態様13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロジウムの触媒活性を高い状態に維持できる、新規な排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《排ガス浄化用触媒》
本発明の排ガス浄化用触媒は、第1の担体粒子、第2の担体粒子、並びに第1及び第2の担体粒子に担持されている貴金属触媒粒子を有する。第1の担体粒子は、セリア、ジルコニア、及びセリア以外の希土類酸化物を含有し、第2の担体粒子は、セリア以外の希土類酸化物を含有し、セリア及びジルコニアを含有してもよい。第1の担体粒子のセリア及びジルコニアの合計の含有率は、第2の担体粒子のセリア及びジルコニアの合計の含有率よりも高く、かつ第2の担体粒子のセリア以外の希土類酸化物の含有率は、第1の担体粒子のセリア以外の希土類酸化物の含有率よりも高い。ここで、第1の担体粒子のセリア含有率は、45重量%以下であり、かつ貴金属触媒粒子は、ロジウム粒子を含む。
【0014】
なお、本明細書中で、「触媒」とは、特記しない限り、貴金属触媒粒子を担持している担体粒子を意味しており、これらは焼成されていてもよく、未焼成のままであってもよい。
【0015】
従来技術においては、金属酸化物担体表面に希土類富化領域を与えて、希土類富化領域においてロジウム粒子の移動及びシンタリングを抑制し、かつロジウム粒子の酸化を防止することによって、触媒活性を高い状態に維持している。また、セリアジルコニア固溶体とロジウムとを組み合わせて用いる際には、ロジウムの還元状態を維持するために、セリア含有率を低くしていた。それに対して、本発明においては、通常の金属酸化物担体と共に、希土類酸化物の含有率が高い第2の担体を併用することによって、さらにロジウムにさらに高い活性を与えることができた。理論に拘束されないが、本発明では、ロジウムが、希土類酸化物の含有率が高い第2の担体に、集中的に担持されることによって、触媒活性をさらに高くすることができたものであると考えられる。
【0016】
このような本発明の触媒によれば、セリアとジルコニアとを含む担体を用いた場合に、従来技術よりも高いセリア含有率の担体を用いることができる。高いセリア含有率の担体は、高い酸素吸蔵放出性能を有するため、本発明の触媒において高いセリア含有率の担体を用いた場合には、特に、再始動時のNOx低減と高SV(高空間速度)でのNOx低減とを両立させることができる。すなわち、空燃比がリーンからリッチに移行するアイドルストップ後及び燃料カット後の再始動NOxの排出量と、吸入空気量が多い高SV時のNOx排出量との大幅な低減は、両者がトレードオフの関係にあるため困難である。しかしながら、これらの両方の低減は、高いセリア含有率の担体を用いることによって、本発明において達成可能となった。
【0017】
図1(a)は、従来の排ガス浄化用触媒の概念図であり、
図1(b)は、本発明の排ガス浄化用触媒の概念図である。
図1(a)において、排ガス浄化触媒(10)は、金属酸化物担体粒子(1)及びロジウム粒子(3)を有し、金属酸化物粒子(1)には、希土類富化領域(1a)が存在している。
図1(b)において、排ガス浄化触媒(10)は、セリア及びジルコニアを含む第1の担体粒子(1)、希土類酸化物の含有率が高い第2の担体粒子(2)及びロジウム粒子(3)を有し、ロジウム粒子(3)は、その多くが第2の担体粒子(2)に担持されている。
【0018】
(担体粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒には、ロジウム粒子の担体として、少なくとも第1の担体粒子と第2の担体粒子とを用いる。第1の担体粒子及び第2の担体粒子以外の第3の担体粒子をさらに用いることもできる。
【0019】
例えば、第1の担体粒子を、セリア以外の希土類酸化物の含有率が20重量%未満である粒子と定義し、第2の担体粒子を、セリア以外の希土類酸化物の含有率が、20重量%以上である粒子と定義し、そして走査透過型電子顕微鏡によって第1の担体粒子及び第2の担体粒子を観察した場合に、本発明の排ガス浄化用触媒に含まれる第2の担体粒子の投影面積の、第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)は、0.005以上、0.01以上、0.03以上、0.05以上、又は0.06以上であってもよく、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下、又は0.08以下であってもよい。このような範囲であれば、ロジウム粒子を第2の担体粒子に集中的に担持させ、かつロジウム粒子のシンタリング等を実質的に防ぐことができ、NOx浄化温度の上昇を防げる傾向にある。なお、上記の第1の担体粒子と第2の担体粒子の定義が変更された場合でも、上記の投影面積比は、同じ範囲とすることができる。
【0020】
(担体粒子−第1の担体粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる第1の担体粒子は、セリア、ジルコニア、及びセリア以外の希土類酸化物を含有する。
【0021】
例えば、第1の担体粒子を、セリア以外の希土類酸化物の含有率が20重量%未満である粒子と定義し、第2の担体粒子を、セリア以外の希土類酸化物の含有率が、20重量%以上である粒子と定義した場合、第1の担体粒子の平均粒径は、0.50μm以上、1.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、8.0μm以上、又は10.0μm以上であってもよく、100μm以下、80μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。上記の第1の担体粒子と第2の担体粒子の定義が変更された場合でも、第1の担体粒子の平均粒径は、同じ範囲とすることができる。
【0022】
ここで、平均粒径の測定は、日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osiras及びその装置に付随しているエネルギー分散型X線分析装置によって行う。すなわち、この装置で20,000倍の測定倍率によって映し出された画面において、等価直径が0.10μm以上である粒子の中から、エネルギー分散型X線分析によって、第1の担体粒子を見つけ出す。そして、それらの粒子の等価直径を粒子の投影面積から計算する。この作業を任意の20画面において行い、その全ての平均値を、第1の担体粒子の平均粒径と認定する。ここで、粒子の等価直径とは、粒子の外周長さと等しい外周長さを有する正円の直径をいう。
【0023】
第1の担体粒子は、セリア及びジルコニアを含有し、その含有率は、第1の担体粒子の重量に対して、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上であってもよく、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下であってもよい。
【0024】
第1の担体粒子のセリア及びセリア以外の希土類酸化物の合計の含有率は、第1の担体粒子の重量に対して、5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上であってもよく、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下であってもよい。
【0025】
第1の担体粒子のセリアの含有率は、5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、20重量%超又は、25重量%以上又は30重量%以上であってもよく、50重量%以下、50重量%未満45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下であってもよい。さらに、セリア以外の希土類酸化物の含有率は、1.0重量%以上、3.0重量%以上、5.0重量%以上、又は7.0重量%以上であってもよく、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、20重量%未満、15重量%以下、又は10重量%以下であってもよい。
【0026】
第1の担体粒子は、好ましくはセリアジルコニア固溶体を含有することが好ましい。この場合、第1の担体粒子のジルコニアの含有率は、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上であってもよく、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下でもよい。また、この場合、第1の担体粒子のセリアの含有率は、3.0重量%以上、5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上であってもよく、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下でもよい。ここで、これらの含有率は、元素分析から計算して求めることができる。
【0027】
第1の担体粒子の希土類酸化物としては、希土類元素のうちの原子番号が若く、且つ4f電子軌道に空きがある又は空きが多いイオンを形成する元素、例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)及びサマリウム(Sm)からなる群より選択される希土類元素の酸化物を挙げることができる。
【0028】
第1の担体粒子は、上記以外の成分を含有していてもよく、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、酸化バリウム、酸化ストロンチウム等を含有していてもよい。
【0029】
第1の担体粒子は、上記の特許文献等に記載された公知の方法によって製造することができる。
【0030】
(担体粒子−第2の担体粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる第2の担体粒子は、セリア以外の希土類酸化物を含有し、そしてセリア及びジルコニアを含有してもよい。ここで、第2の担体粒子のセリア及びジルコニアの含有率は、第1の担体粒子のセリア及びジルコニアの含有率よりも低く、かつ第2の担体粒子のセリア以外の希土類酸化物の含有率は、第1の担体粒子のセリア以外の希土類酸化物の含有率よりも高い。これにより、ロジウム粒子を第2の担体粒子に集中的に担持させることができる。
【0031】
例えば、第1の担体粒子を、セリア以外の希土類酸化物の含有率が20重量%未満である粒子と定義し、第2の担体粒子を、セリア以外の希土類酸化物の含有率が、20重量%以上である粒子と定義した場合、第2の担体粒子の平均粒径は、0.50μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、又は3.0μm以上であってもよく、50μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は5.0μm以下であってもよい。このような範囲であれば、ロジウム粒子を第2の担体粒子に集中的に担持させ、かつロジウム粒子のシンタリング等を実質的に防ぐことができ、NOx浄化温度の上昇を防げる傾向にある。上記の第1の担体粒子と第2の担体粒子の定義が変更された場合でも、第2の担体粒子の平均粒径は、同じ範囲とすることができる。この平均粒径は、上記の第1の担体粒子の平均粒径と同一の方法によって測定される。
【0032】
第2の担体粒子は、セリア以外の希土類酸化物を含有し、その含有率は、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、又は30重量%以上であってもよく、100重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下であってもよい。第2の担体粒子がセリア及びジルコニアを含有する場合、その含有率は、第2の担体粒子の重量に対して、1.0重量%以上、2.0重量%以上、3.0重量%以上、5.0重量%以上、10重量%以上、又は15重量%以上であってもよく、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、又は25重量%以下であってもよい。
【0033】
セリア及びセリア以外の希土類酸化物の合計の含有率は、第2の担体粒子の重量に対して、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、又は80重量%以上であってもよく、99重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、又は90重量%以下であってもよい。
【0034】
第2の担体粒子がセリアを含有する場合、その含有率は、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、又は40重量%以上であってもよく、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下であってもよい。
【0035】
第2の担体粒子の希土類酸化物としては、第1の担体粒子に含有される希土類酸化物と同種のものを用いることができる。
【0036】
第2の担体粒子は、第1の担体粒子と同様に、上記以外の成分を含有していてもよく、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、酸化バリウム、酸化ストロンチウム等を含有していてもよい。
【0037】
第2の担体粒子は、上記の特許文献等に記載された公知の方法によって製造することができる。ただし、第2の担体粒子は、下記に詳細に示すように、担体粒子を、有機カルボン酸溶液に投入し、担体粒子から溶出させて得ることが好ましい。
【0038】
(貴金属触媒粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒では、貴金属触媒粒子としては、ロジウム粒子が用いられる。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、ロジウム粒子以外の貴金属触媒粒子を含んでいてもよく、そのような粒子としては、特に白金属粒子を挙げることができ、より好ましくは白金粒子及び/又はパラジウム粒子を挙げることができる。
【0039】
ロジウム粒子は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒径の微粒子であることが好ましい。典型的には、ロジウム粒子の平均粒径は、TEM観察によって求められる等価直径の平均値として、1〜20nm程度であってもよく、10nm以下、7nm以下又は5nm以下であってもよい。
【0040】
ロジウム粒子は、第1の担体粒子及び第2の担体粒子の合計100質量部に対して、合計で0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、又は1.0質量部以上で担持されていてもよく、10質量部以下、5質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下で担持されていてもよい。
【0041】
全ての貴金属触媒粒子に対するロジウム粒子の含有率は、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であってもよく、100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、又は20重量%以下であってもよい。
【0042】
本発明の排ガス浄化用触媒で用いられるロジウム粒子は、上記の第2の担体粒子に主に担持されていることが好ましい。すなわち、上記の走査透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によって元素マッピングを行った場合に、ロジウム粒子の位置と第2の担体粒子の位置とが、相関係数65.0%以上、70.0%以上、又は75.0%以上で一致していることが好ましい。ここで、相関係数は、次のようにして計算される:
【数2】
(ここで、x
iは位置iにおける貴金属元素の特性X線強度であり、x
avは貴金属元素の特性X線強度の平均値であり、y
iは位置iにおける希土類金属元素の特性X線強度であり、y
avは希土類金属元素の特性X線強度の平均値である)。
【0043】
このような測定は、日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osiras及び、その装置に付随しているエネルギー分散型X線分析によって行った。
具体的には、この走査透過型電子顕微鏡で測定した20,000倍の複数の画像中で、ロジウム粒子iの重心点分析を実施し、その重心点位置でのロジウム粒子iのロジウムのスペクトル強度値と、その重心点位置でのセリウム以外の希土類元素のスペクトル強度値とを測定し、上記の計算を行う。ここで、セリウム以外の希土類元素が複数種ある場合には、それらの強度の加算を行う。なお、「スペクトル強度平均値」とは、同一視野、異なる視野で視認可能なロジウム粒子に含まれるロジウム又は第2の担体に含まれるセリウム以外の希土類元素の全ての特性X線強度の平均値をいう。上記の計算を行う場合には、第2の担体及びロジウム粒子をそれぞれ300個以上用いることが好ましい。
【0044】
上記の相関係数は、触媒の焼成前後で実質的に変化しないことが通常であり、好ましくは変化しない。
【0045】
《排ガス浄化装置》
本発明の1つの実施態様において、排ガス浄化装置は、上述の排ガス浄化用触媒を含む触媒層及び触媒層を有する基材を具備する。本発明の他の1つの実施態様においては、排ガス浄化装置は、排ガス浄化用触媒を含む基材を具備する。排ガス浄化用触媒は、下記の本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒であってもよい。
【0046】
触媒層は、複数の層であってもよい。また、触媒層が複数の層である場合、その少なくとも1つの層に上述の排ガス浄化用触媒が含有されていればよい。ただし、排ガス浄化装置の表面層となる層に、上述の排ガス浄化用触媒が含有されていることが好ましい。触媒層の1つの層に上述の排ガス浄化用触媒が含有されていない場合、その触媒層は、上述の排ガス浄化用触媒の構成要素として記載した要素を含む触媒、例えば上述の排ガス浄化用触媒の第2の担体粒子を含まない触媒が用いられてもよい。
【0047】
触媒層が複数の層からなる場合には、触媒層は、最表面の少なくとも一部を構成する上層、及び基材上の下層を有していてもよい。触媒層は、上層と下層との間に、さらに中間層を有していてもよい。本発明の排ガス浄化装置の上層と基材との間に位置する層であり、複数の層から形成されていてもよい。下層は、上記の排ガス浄化用触媒を含んでもよく、上記の排ガス浄化用触媒の構成要素として記載した要素を含む触媒、例えば上記の排ガス浄化用触媒の第2の担体粒子を含まない触媒を含有していてもよい。
【0048】
触媒層は、上記の排ガス浄化用触媒と他の成分との混合物から形成されていてもよい。ここで使用される他の成分としては、例えば、アルミナ、CZ、ゼオライト等、及びこれらの混合物等を挙げることができる。これらに貴金属が担持された公知の排ガス浄化用触媒を、他の成分として用いてもよい。触媒層を、触媒担体粒子を壁面に含む基材、例えば特開2015−85241号公報に記載のような基材上に形成してもよい。
【0049】
基材としては、排気ガス浄化装置において一般的に使用されているストレートフロー型又はウォールフロー型のハニカム型基材等を挙げることができる。基材の材質も特に限定されず、例えば、セラミック、炭化ケイ素、金属等の基材を挙げることができる。
【0050】
図2は、本発明の排ガス浄化装置の1つの層構成の概念図であり、この排ガス浄化装置(100)は、表面に露出している上層(20)及び下層(30)を基材(40)上に有する。
【0051】
他の成分の製造、該他の成分と本発明の排ガス浄化用触媒との混合、及び上記基材上への触媒層の形成は、それぞれ、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を加えた方法により、実施することができる。
【0052】
排ガス浄化用触媒が基材中に含まれる場合には、触媒担体粒子を壁面に含む基材、例えば特開2015−85241号公報に記載のような基材を用いることができる。この場合、排ガス浄化用触媒を、基材を製造する際に使用する他の無機粒子と混合して用いて排ガス浄化装置を得てもよい。
【0053】
以上のようにして製造される本発明の排ガス浄化装置は、貴金属の排ガス浄化活性が高く、かつこれを高い状態のまま維持することができるから、例えば自動車用の排ガス浄化用触媒として、好適に使用することができる。
【0054】
《排ガス浄化用触媒の製造方法》
排ガス浄化用触媒を製造する本発明の方法は、セリア、ジルコニア、及びセリア以外の希土類酸化物を含有している担体粒子の水系分散体、ロジウムの塩を含む水溶液、及び有機カルボン酸を混合して、担体粒子にロジウムを担持し、それによって未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程;及び未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を、乾燥させ、そして焼成する工程を含む。
【0055】
この方法によれば、有機カルボン酸によって担体粒子から希土類酸化物が溶出して、希土類酸化物が富化した第2の担体粒子と、セリア及びジルコニア、特にジルコニアが富化した第1の担体粒子とが得られる。この場合、ロジウムは、希土類酸化物が富化した第2の担体粒子に主に担持され、これにより触媒である貴金属のシンタリング及び酸化を防止することができるため、ロジウムの触媒活性を高い状態に維持できる好適な排ガス浄化用触媒を得ることができる。出発物質である担体粒子が、セリアジルコニア固溶体を含む場合には、固溶していない希土類酸化物が有機カルボン酸によって溶出しやすいため、このような態様は特に好ましい。
【0056】
さらに、驚くべきことに、この方法によって得られた排ガス浄化触媒のロジウム粒子は、有機カルボン酸を添加しない従来の方法と比較して、小径化されることが分かった。理論に拘束されないが、これは、有機カルボン酸添加後に、有機カルボン酸希土が形成され、有機カルボン酸希土にロジウムが選択的に吸着し、焼成後に希土類とロジウムと間の相互作用によって、ロジウムが固定化される為であると考えられる。ロジウム粒子の粒径が小さいと、単位重量当りの貴金属触媒粒子の表面積が大きくなり、触媒の反応点が増えるため、非常に有利である。
【0057】
排ガス浄化用触媒を製造する本発明の方法によれば、特に本発明の排ガス浄化用触媒を製造することができる。したがって、本発明の方法で用いる担体粒子の粒径、担体粒子のジルコニア、セリア、及びセリア以外の希土類酸化物の添加量、セリア以外の希土類酸化物の種類及び添加量、貴金属の種類及び添加量等については、上記の本発明の排ガス浄化用触媒の記載を参照して選択することができる。
【0058】
例えば、未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程においては、担体粒子に含まれる固溶していない希土類成分の量に対して、過不足なく反応する量(反応当量点)の有機カルボン酸を水系溶液に溶解させる。そして、有機カルボン酸の水溶液に、ロジウムの塩を混合し、そして有機カルボン酸及びロジウムを含有する水溶液を、担体粒子が分散している分散液と混合する。
【0059】
本発明の方法において用いられる有機カルボン酸の量は、担体粒子に含有されている希土類元素の総和物質量[mol−Ln]に対し、添加する有機カルボン酸の物質量比[mol/mol−Ln]で表わすことができる。好ましい物質量比[mol/mol−Ln]は、0.5以上、1.0以上、又は1.5以上であり、3.5以下、3.0以下、又は2.5以下であってもよい。このような範囲であれば、担体粒子のセリア及びジルコニアが溶解しづらく、かつ希土類酸化物は溶解しやすくなるため、第2の担体粒子を生成しやすい。
【0060】
ここで、担体粒子としては、上記の本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる第1の担体粒子と同じ組成を有していてもよい。
【0061】
ロジウムの塩の他に、貴金属の塩を追加して使用することができる。このような塩としては、強酸塩を挙げることができ、特に硝酸塩又は硫酸塩を挙げることができる。また、追加で使用できる貴金属としては、白金及び/又はパラジウムを挙げることができる。
【0062】
有機カルボン酸としては、好ましくは分子量300以下の有機カルボン酸を挙げることができ、例えばC
1〜C
20の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、オキソカルボン酸等を挙げることができる。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等を挙げることができる。
【0063】
有機カルボン酸の添加量は、担体粒子に含まれる希土類成分、好ましくは固溶していない希土類成分のモル量に対して過不足なく反応するモル量(反応当量点)の0.50倍以上、1.0倍以上、又は2.0倍以上であってもよく、5.0倍以下、4.5倍以下、4.0倍以下、又は3.5倍以下であってもよい。
【0064】
未焼成の排ガス浄化用触媒を得た後、これを含む水系分散体を乾燥させ、そして焼成する。乾燥温度は、例えば150℃以上、200℃以上、250℃以上であってもよく、400℃以下、350℃以下、又は300℃以下であってもよい。乾燥時間は、16時間以上、12時間以上、又は8時間以上であってもよく、24時間以下又は20時間以下であってもよい。また、焼成温度は、例えば500℃以上、550℃以上、又は600℃以上であってもよく、1000℃以下、800℃以下、又は700℃以下であってもよい。焼成時間は、30分以上、1時間以上、2時間以上、又は4時間以上であってもよく、12時間以下、10時間以下、又は8時間以下であってもよい。
【0065】
このようにして得られた排ガス浄化用触媒をさらに粉砕して、担体粒子の粒径を、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の担体粒子の粒径の範囲にすることができる。
【実施例】
【0066】
A.各種の排ガス浄化用触媒の参考的試験
《サンプル調製》
〈実施例1〉
担体粒子に含まれるセリウム以外の希土類の総和に対して、過不足なく反応する物質量の酢酸をイオン交換水に溶解させ、酢酸水溶液を調製した。次いで、酢酸溶液に、ロジウム量が担体粒子の0.50重量%となるように、硝酸ロジウム溶液を投入し、酢酸及び酢酸ロジウムを含有する水溶液を得た。この水溶液と、担体粒子をイオン交換水に分散させた分散液とを混合した。これを撹拌し、250℃で8時間乾燥し、500℃で1時間焼成し、粉砕することによって、実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0067】
〈実施例2〜4及び比較例1〜3〉
酢酸の代わりに他の有機カルボン酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の排ガス浄化用触媒を得た。また、有機カルボン酸の代わりに他の酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1及び2の排ガス浄化用触媒を得た。さらに、酢酸を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表1に示す。
【0068】
〈実施例5〜6及び比較例4〜5〉
担体粒子及び貴金属の塩の種類を実施例2から変更して、実施例5〜6の排ガス浄化用触媒を得た。また、有機カルボン酸を使用しなかったこと以外は、実施例5及び6と同様にして、それぞれ比較例4及び5の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表2に示す。
【0069】
〈実施例7〜15〉
実施例4から担体粒子の組成を変更し、また有機カルボン酸の添加量を変更することによって、実施例7〜15の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表3に示す。
【0070】
〈実施例16〜19及び比較例6〜9〉
実施例1で用いた担体粒子の種類等を変更して、実施例16〜19及び比較例6〜9の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表4に示す。
【0071】
〈耐久試験後の排ガス浄化用触媒〉
上記のようにして得られた排ガス浄化用触媒を、流通式の耐久試験装置に配置した。そして、試験装置内温度を1000℃にし、窒素ガスに酸素を1%添加したリーンガスと、窒素ガスに一酸化炭素を2%加えたリッチガスとを、500mL/分の流量で、2分周期で交互に10時間流通させた。その後の排ガス浄化用触媒を、耐久試験後の排ガス浄化用触媒として評価した。
【0072】
〈排ガス浄化装置の作製〉
上記のようにして得られた排ガス浄化触媒とアルミナ粉末とを質量混合比1:1で混合し、固形分が30重量%となるように純水に分散させてスラリーを得た。このスラリーを、モノリスハニカム基材(容積0.35L)に、貴金属量が0.25g/Lとなるようにコートした。コートしたモノリスハニカム基材を250℃で10分乾燥し、次に500℃で20分焼成することによって、排ガス浄化装置を得た。
【0073】
〈耐久試験後の排ガス浄化装置〉
上記のようにして得られた排ガス浄化装置を、流通式の耐久試験装置に配置した。そして、試験装置内温度を1000℃にし、窒素ガスに酸素を1%添加したリーンガスと、窒素ガスに一酸化炭素を2%加えたリッチガスとを、500mL/分の流量で、2分周期で交互に10時間流通させた。その後の排ガス浄化装置を、耐久試験後の排ガス浄化装置として評価した。
【0074】
《評価方法》
〈第2担体の平均粒径及び存在比〉
排ガス浄化用触媒の担体粒子の平均粒径の測定を、日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osiras及びその装置に付随しているエネルギー分散型X線分析装置によって行った。
【0075】
具体的には、まずこの装置で20,000倍の測定倍率によって映し出された画面において、等価直径が0.10μm以上である粒子の中から、エネルギー分散型X線分析によって、ジルコニアを50重量%〜95重量%で、かつセリア及びセリア以外の希土類酸化物を5.0〜50重量%で含有する粒子を見つけ出し、これを第1の担体粒子と認定した。そして、それらの粒子の等価直径を粒子の投影面積から計算した。この作業を任意の20画面において行い、その全ての平均値を、第1の担体粒子の平均粒径とした。
【0076】
さらに、等価直径が0.10μm以上である粒子の中から、ジルコニアを1.0〜40重量%で、かつセリア及びセリア以外の希土類酸化物を60重量%〜99重量%で含有する粒子を見つけ出し、これを第2の担体粒子と認定した。そして、それらの粒子の等価直径を粒子の投影面積から計算した。この作業を任意の20画面において行い、その全ての平均値を、第2の担体粒子の平均粒径とした。
【0077】
さらに、各排ガス浄化用触媒について、第2の担体粒子の投影面積の、第1及び第2の担体粒子の投影面積に対する投影面積比(第2の担体粒子の面積/第1及び第2の担体粒子の面積)を計算し、これを第2の担体粒子の存在比とした。
【0078】
〈触媒位置の相関係数〉
日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osirasを用いてエネルギー分散型X線分析を行い、希土類元素と貴金属ロジウムの元素マッピング像を得た。担体粒子の希土類元素の位置と、ロジウムの位置とを比較し、相関係数が65.0%以上で一致していた場合には、第2の担体上に担持されており、相関係数が65.0%未満であった場合には、担体上に担持されていないと定義した。
【0079】
〈触媒粒子の粒径変化〉
上記の耐久試験後の排ガス浄化用触媒を、X線回折装置によって分析し、貴金属触媒粒子の粒径を解析した。ロジウムは2θ=41.1°;パラジウムは2θ=40.1°;そして白金は2θ=39.8°の回折ピークの半値幅を用いて、シェラーの式から粒径を算出した。この結果から、実施例1〜4及び7〜19並びに比較例1〜2及び6〜9については、有機カルボン酸を添加していない比較例3を基準として、有機カルボン酸の添加によって貴金属粒径が何%変化したかを算出した。実施例5及び6については、それぞれ比較例4及び5を基準として、貴金属粒径が何%変化したかを算出した。ただし、ここでは、表1中で「−」は粒径の減少を意味し、「+」は粒径の肥大を意味している。
【0080】
〈50%NO
x浄化温度〉
耐久試験後の排ガス浄化装置を、常圧固定床式流通反応装置に配置し、ストイキ相当のモデルガスを流通させながら100℃〜500℃まで12℃/分の速度で消音し、その間のNO
x浄化率を連続的に測定した。排ガスが50%浄化された時の温度を、各サンプルについて調べた。
【0081】
〈STEM−EDX画像>
実施例3及び比較例3について、走査透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による元素マッピングを撮影した。
【0082】
《結果》
上記のようにして評価した結果を表1〜表4に示す。また、実施例3及び比較例3のSTEM−EDX画像を
図2に示す。
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
表1から理解できるように、有機カルボン酸を用いた場合(実施例1〜4)に、適切な平均粒径を有する第2の担体が容易に得られた。比較例1及び2を見ると、第2の担体粒子自体は生成していることが分かるが非常に粒径が小さく、この場合には相関係数から判断できるように、触媒粒子が第2の担体粒子に実質的に担持されていなかった。これは、第2の担体粒子が小さすぎるために、第1の担体粒子にも貴金属触媒粒子が担持されて、そこで貴金属触媒粒子がシンタリングを起こしたためと考えられる。
【0087】
また、有機カルボン酸を用いた場合(実施例1〜4)には、耐久後に貴金属触媒粒子が小径化したことが分かる。有機カルボン酸の代わりにベンゼンスルホン酸及び硝酸を用いた場合(比較例1及び2)には、酸を用いていない場合(比較例3)に比べて、貴金属触媒粒子が肥大化していた、さらに、実施例1〜4の場合には、50%NO
x浄化温度が非常に低い温度となった。
【0088】
表2及び表4から理解できるように、このような傾向は、出発担体粒子の組成及び貴金属の種類を変更した場合であっても、同様であった。
【0089】
表3を見ると、有機カルボン酸の添加量を増やすと、第2担体の粒径が大きくなることが分かる。ただし、貴金属触媒粒子については、有機カルボン酸の量を増やしていくと、小径化しなくなることが分かる。それに対応して、50%NO
x浄化温度も変化した。
【0090】
図2の比較例3の排ガス浄化触媒の元素マッピングを見ると、各元素の存在率の分布は、一様であることが分かる。それに対して、実施例3の元素マッピングを見ると、ジルコニウム(Zr)の存在率が低くなっている場所で、セリウム(Ce)及びネオジム(Nd)の存在率が非常に高くなっており、その場所が第2の担体粒子であることが分かる。また、第2の担体粒子の位置において、ロジウム(Rh)の存在率が高くなっており、貴金属触媒粒子が第2の担体粒子に集中的に担持されていることが分かる。
【0091】
B.本発明の排ガス浄化装置の試験
《触媒の調製》
〈触媒A〉
担体粒子に含まれるセリウム以外の希土類の総和に対して、過不足なく反応する物質量の2倍のシュウ酸をイオン交換水に溶解させ、シュウ酸溶液を調製した。次いで、シュウ酸溶液に、硝酸ロジウム溶液を投入し、シュウ酸及び硝酸ロジウムを含有する水溶液を得た。20重量%のセリア;70重量%のジルコニア;及び10重量%のセリア以外の希土類酸化物を含有する担体粒子をイオン交換水に分散させた分散液と、シュウ酸及び硝酸ロジウムを含有する水溶液とを混合した。これを撹拌し、110℃で8時間乾燥し、500℃で1時間焼成し、粉砕することによって、排ガス浄化用触媒Aを得た。
【0092】
〈触媒B〉
40重量%のセリア;50重量%のジルコニア;及び10重量%のセリア以外の希土類酸化物を含有する担体粒子を用いたこと以外は触媒Aと同様にして、排ガス浄化用触媒Bを得た。
【0093】
〈触媒C〉
50重量%のセリア;40重量%のジルコニア;及び10重量%のセリア以外の希土類酸化物を含有する担体粒子を用いたこと以外は触媒Aと同様にして、排ガス浄化用触媒Cを得た。
【0094】
〈触媒D〉
シュウ酸を用いなかったこと以外は触媒Aと同様にして、排ガス浄化用触媒Dを得た。
【0095】
〈触媒E〉
シュウ酸を用いなかったこと以外は触媒Bと同様にして、排ガス浄化用触媒Eを得た。
【0096】
〈触媒F〉
シュウ酸を用いなかったこと以外は触媒Cと同様にして、排ガス浄化用触媒Fを得た。
【0097】
《排ガス浄化装置の調製》
〈実施例20〉
40gのアルミナ、硝酸Pd(Pd量で0.1g)、40gの上記のセリアジルコニア酸化物(セリア含有率40重量%)、及び100gのイオン交換水を混合したスラリーを、セラミック製ハニカム基材(スクエアセル、2.5mil/900cpsi φ93×L105)にコートした。これを、250℃で1時間乾燥させ、500℃で1時間焼成し、下層を有する基材を得た。次に、10gのアルミナ、30gの触媒A、及び100gのイオン交換水を混合したスラリーを、下層上にコートして、同様に焼成することで、中間層を形成した。30gのアルミナ、硝酸Pd(Pd量で1.0g)、50g上記の触媒A、及び100gのイオン交換水を混合したスラリーを、中間層上にコートした。そして、これを同様に焼成することで、上層を形成した実施例20の排ガス浄化装置を得た。この排ガス浄化装置は、下層に16g(40g×0.4)、中間層に6g(30g×0.2)、及び上層に10g(50g×0.2)のセリア量(OSC量)を有していた。
【0098】
〈実施例21〉
上層を形成する際に用いた触媒Aを触媒Eに変更したこと以外は実施例20と同様にして、実施例21の排ガス浄化装置を得た。
【0099】
〈実施例22〉
上層を形成する際に用いた触媒Aを触媒Bに変更したこと以外は実施例20と同様にして、実施例22の排ガス浄化装置を得た。
【0100】
〈実施例23〉
中間層を形成する際に用いた触媒Aを触媒Bに変更したこと及び上層を形成する際に用いた触媒Aを触媒Dに変更したこと以外は実施例20と同様にして、実施例23の排ガス浄化装置を得た。
【0101】
〈比較例10〉
中間層及び上層を形成する際に用いた触媒Aを触媒Dに変更したこと以外は実施例20と同様にして、比較例10の排ガス浄化装置を得た。
【0102】
〈比較例11〉
上層を形成する際に用いた触媒Dを触媒Eに変更したこと以外は比較例10と同様にして、比較例11の排ガス浄化装置を得た。
【0103】
〈比較例12〉
上層を形成する際に用いた触媒Dを触媒Fに変更したこと以外は比較例10と同様にして、比較例12の排ガス浄化装置を得た。
【0104】
〈比較例13〉
中間層を形成する際に用いた触媒Dを触媒Eに変更したこと以外は比較例10と同様にして、比較例13の排ガス浄化装置を得た。
【0105】
〈参考例1〉
上層を形成する際に用いた触媒Aを触媒Cに変更したこと以外は実施例20と同様にして、参考例1の排ガス浄化装置を得た。
【0106】
〈耐久試験後の排ガス浄化装置〉
上記の実施例20〜23、比較例10〜13、及び参考例1の排ガス浄化装置を、エンジンに装着して、触媒床温度950℃で50時間の耐久処理を行った。
【0107】
《評価方法》
〈第2担体の存在比〉
触媒A〜Fの第2担体の存在比を、上記の実験Aと同様にして評価した。
【0108】
〈触媒位置の相関係数〉
触媒位置の相関係数を、上記の実験Aと同様にして評価した。
【0109】
〈排ガス浄化性能〉
耐久処理後の各排ガス浄化装置を、排気量0.7Lのエンジンを有する実車両に装着し、JC08Cモード法及びJC08Hモード法に準拠して、走行距離1キロ当たりのNOx排出量を測定した。ここでは、燃料カット、アイドリングストップ後に空燃比がストイキに復帰した直後から3秒間に排出されるNOx排出量を、再始動NOx排出量として評価した。また、JC08HOTモード11山目に排出されるNOx排出量を、高SVNOx排出量として評価した。さらに、JC08HOTモード走行時に排出されるNOx排出量も評価した。
【0110】
《結果》
上記のようにして評価した結果を表5に示す。
【0111】
【表5】
【0112】
実施例20と比較例10とを比較すると、実施例20では第2の担体が存在しており、再始動NOx排出量が大きく低減できている。実施例20と実施例21とを比較すると、実施例20では上層に担体が存在しているために、再始動NOx排出量が実施例21よりも低いが、実施例21では上層の触媒中のセリア比が高く、高SVのNOx排出量を低くすることができている。比較例11〜13は、セリア比の高い触媒を用いているため、高SVのNOx排出量が低くなっているが、再始動NOx排出量は高くなっている。
【0113】
実施例21〜23は、セリア比が高い触媒及び/又は第2の担体が存在している触媒を使用しているため、再始動NOx排出量、高SVのNOx排出量、及びJC08HOTモードのNOx排出量を低くすることができている。参考例1では、上層で第2の担体が存在し、セリア比がさらに高い触媒を使用しており、高SVのNOx排出量は非常に低くなっているものの、再始動NOx排出量及びJC08HOTモードのNOx排出量が比較的高くなった。