特許第6567170号(P6567170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567170
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】自動化された自動車の位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G01C21/28
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-508667(P2018-508667)
(86)(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公表番号】特表2018-529945(P2018-529945A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2016064103
(87)【国際公開番号】WO2017028994
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年2月16日
(31)【優先権主張番号】102015215699.0
(32)【優先日】2015年8月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン スクーピン
(72)【発明者】
【氏名】マークス ランゲンベルク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ツァウン
(72)【発明者】
【氏名】ハノ ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ ミヒャエル クノル
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス クライノフスキ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ジェラルディ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル パーゲル
(72)【発明者】
【氏名】エムレ チャカール
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン マルクス
(72)【発明者】
【氏名】イザベラ ヒンターライトナー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ミーレンツ
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−305079(JP,A)
【文献】 特開2012−85202(JP,A)
【文献】 特開平10−185600(JP,A)
【文献】 特開2012−221291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を長手方向及び横方向でガイドする自動車の自動走行又は自律走行のために自動化された自動車の位置特定方法において、
・前記自動化された自動車の動作中に、前記自動化された自動車に対して達成すべき位置特定精度を予め設定し、前記自動車から、規定された位置について位置特定リファレンスデータが、規定された前記達成すべき位置特定精度と共に要求され、当該位置特定リファレンスデータを前記自動化された自動車へ伝達するステップと、
・前記自動化された自動車の周辺環境データを、前記自動化された自動車のセンサ装置(10)によって捕捉し、前記捕捉した周辺環境データを位置情報と結合するステップと、
・前記位置特定リファレンスデータと前記捕捉した周辺環境データとを用いて、前記自動化された自動車の位置を特定し、達成されている位置特定精度を求めるステップと、
・前記達成すべき位置特定精度を考慮して前記位置特定リファレンスデータを最適化して伝達するために、前記達成されている位置特定精度を通知するステップと、
を含む、
自動化された自動車の位置特定方法。
【請求項2】
前記自動化された自動車へ伝達する前記位置特定リファレンスデータの種類及び/又は量を、前記達成されている位置特定精度と前記達成すべき位置特定精度とに依存させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自動化された自動車の外部に配置されたサーバ装置(40)によって、前記位置特定リファレンスデータを前記自動化された自動車へ伝達する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
予め設定された前記位置特定精度を達成するために、位置特定リファレンスデータのデータセットを供給するにあたり、周辺環境条件を考慮する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
予め設定された前記位置特定精度を達成するために、位置特定リファレンスデータのデータセットを供給するにあたり、前記センサ装置(10)の特性を考慮する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記位置特定リファレンスデータを作成装置(30)によって作成し、前記サーバ装置(40)のために供給する、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動化された自動車の前記達成されている位置特定精度が高い場合には、規定どおりに分量を低減して前記位置特定リファレンスデータを前記自動化された自動車へ伝達する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記自動化された自動車の前記達成されている位置特定精度が低い場合には、規定どおりに分量を増加して前記位置特定リファレンスデータを前記自動化された自動車へ伝達する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記位置特定リファレンスデータを少なくとも部分的に、前記自動車に配置された作成装置(30)を用いて作成する、
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記位置情報と結合した前記周辺環境データを前記サーバ装置(40)へ伝達する、
請求項3又は6に記載の方法。
【請求項11】
自動車を長手方向及び横方向でガイドする自動車の自動走行又は自律走行のために自動化された自動車の位置特定システム(100)であって、
・自動車の周囲環境データを捕捉するセンサ装置(10)及び前記自動車の所在地点を捕捉する所在地点捕捉装置と、
・前記自動車の位置を特定しかつ前記自動車の位置特定精度を求める位置特定装置(20)と、
を備えている、自動化された自動車の位置特定システム(100)において、
当該システム(100)は、
・第1のインタフェース(S1)であって、当該第1のインタフェース(S1)を介して、規定された位置について位置特定リファレンスデータを、規定された達成されるべき位置特定精度と共に要求可能であり、かつ、当該位置特定リファレンスデータを前記自動化された自動車へ伝達可能である、第1のインタフェース(S1)と、
・第2のインタフェース(S2)であって、当該第2のインタフェース(S2)を介して、前記達成されるべき位置特定精度を考慮して前記位置特定リファレンスデータを最適化するために、達成されている位置特定精度を通知可能である、第2のインタフェース(S2)と、
を備えている、
自動化された自動車の位置特定システム(100)。
【請求項12】
コンピュータプログラムが、コンピュータにおいて実行されるときに、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコードを備えている、
コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能データ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動化された自動車の位置特定方法に関する。本発明はさらに、自動化された自動車の位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
高精度の車両位置特定方法は、公知である。斯かる方法すべてに共通するのは、それらの方法は、位置特定のためにリファレンスデータ(位置特定リファレンスデータ又はランドマークデータ)を必要とすることである。そのようなリファレンスデータは、一般にローカルのセンサ機構により捕捉され、ローカルで車両において収集され(自立型収集)、又は、バックエンドコネクションを介してサーバに伝達され、そこにおいて集中的に収集される(集合型収集)。後者のアプローチによって得られる利点は、データが集合的に集約されて収集され、それらのデータを複数の車両から成る車両集団が使用できることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
本発明の課題は、自動化された自動車の位置を特定するための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば上記の課題は、以下のステップを含む自動化された自動車の位置特定方法によって解決される。即ち、この方法は、
・自動化された自動車の動作中に、自動化された自動車に対して達成すべき位置特定精度を予め設定し、自動車から、規定された位置について位置特定リファレンスデータが、規定された達成すべき位置特定精度と共に要求され、位置特定リファレンスデータを自動化された自動車へ伝達するステップと、
・自動化された自動車の周辺環境データを、自動化された自動車のセンサ装置によって捕捉し、捕捉した周辺環境データを位置情報と結合するステップと、
・位置特定リファレンスデータと捕捉した周辺環境データとを用いて、自動化された自動車の位置を特定し、達成されている位置特定精度を求めるステップと、
・達成すべき位置特定精度を考慮して位置特定リファレンスデータを最適化して伝達するために、達成されている位置特定精度を通知するステップと、
を含む。
【0005】
第2の態様によれば上記の課題は、以下の構成を含む自動化された自動車の位置特定システムによって解決される。即ち、このシステムは、
・自動車の周囲環境データを捕捉するセンサ装置及び自動車の所在地点を捕捉する所在地点捕捉装置と、
・自動車の位置を特定しかつ自動車の位置特定精度を求める位置特定装置と、
・第1のインタフェースと、
・第2のインタフェースと、
を備え、
第1のインタフェースを介して、規定された位置について位置特定リファレンスデータを、規定された達成されるべき位置特定精度と共に要求可能であり、かつ、位置特定リファレンスデータを自動化された自動車へ伝達可能であり、
第2のインタフェースを介して、達成されるべき位置特定精度を考慮して位置特定リファレンスデータを最適化するために、達成されている位置特定精度を通知可能である。
【0006】
これにより、現在得られている位置特定リファレンスデータによって達成された位置特定精度に関して、自動化された自動車からフィードバックが通知される、ということが達成される。結果として、これによれば、要求された位置特定品質に応じて、それ相応の位置特定リファレンスデータを自動車へ伝達することができる。
【0007】
その結果、このことによって、車両と外部のサーバ装置との間における位置特定リファレンスデータのワイヤレス伝送を、位置確認精度又は位置特定精度に関して、自動化された車両の機能の必要とされる要求に応じて、最適化することができる。この場合、自動車の達成されるべき位置特定精度のために、実際にやはり必要とされる位置特定リファレンスデータだけが伝送される。有利には、高度に自動化された自動車又は高度に自律型の自動車のために特に、これを適用することができる。このような態様によれば、位置特定の望ましい精度が充足過剰又は充足不足とはならず、それによって、位置特定システムに対する技術的要求を最適化することができる。
【0008】
さらにこれによって、以下のことも実現可能である。即ち、現在得られている位置特定リファレンスデータによっても位置特定精度が達成されないケースにおいては、自動化された自動車の機能を非アクティブ状態にすることができる。
【0009】
従属請求項には、本発明に係る方法の有利な実施形態が記載されている。
【0010】
本発明に係る方法の1つの有利な実施形態によれば、自動化された自動車へ伝達する位置特定リファレンスデータの種類及び/又は量を、達成されている位置特定精度と達成すべき位置特定精度とに依存させるように構成されている。これによって、例えば、考慮することができることは、達成された位置特定精度と達成すべき位置特定精度とに応じて、自動化された車両の自己位置特定にあたって現在要求されている位置特定精度が生じるように、位置特定リファレンスデータの適切なデータセットを提供する、ということである。
【0011】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、自動化された自動車の外部に配置されたサーバ装置によって、位置特定リファレンスデータを自動化された自動車へ伝達するように構成されている。これによって、自動化された自動車に対する位置特定リファレンスデータについて、高度の最新性と大きな記憶装置容量とが支援される。
【0012】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、予め設定された位置特定精度を達成するために、位置特定リファレンスデータのデータセットを供給するにあたり、周辺環境条件を考慮するように構成されている。このような態様によれば、ある1つのセンサはそれぞれ異なる周囲環境条件のもとでは一般にそれぞれ異なる性能を有する、という状況を考慮することができる。要求された位置特定精度に対し、通常、例えば、夜間には日中よりも多くの位置特定リファレンスデータが必要とされ、それによって位置特定リファレンスデータのためのデータ伝送レートが最適化されるようになる。
【0013】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、予め設定された位置特定精度を達成するために、位置特定リファレンスデータのデータセットを供給するにあたり、センサ装置の特性を考慮するように構成されている。このような態様によれば、技術的にそれぞれ異なる複数のセンサを用いることができる。通常、要求された位置特定精度又は位置特定品質に対して、例えば、性能のよいセンサは、より僅かなデータしか必要とせず、性能のよくないセンサは、より多くのデータを必要とする。
【0014】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、位置特定リファレンスデータを作成装置によって作成し、サーバ装置のために供給するように構成されている。このような態様によれば、位置特定リファレンスデータの一種の「データプール」が形成され、あとで用いるためにサーバ装置のために供給することができる。
【0015】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、求められた位置特定品質が高い場合(即ち、例えば、要求された位置特定精度が自動化された車両において過剰に充足されている場合)には、規定どおりに分量を低減して位置特定リファレンスデータを自動化された自動車へ伝達するように構成されている。この場合、要求された位置特定品質を達成するためには、それまでよりも僅かな位置特定リファレンスデータしか必要とせず、従って、有利には、伝達されるべき位置特定リファレンスデータの個数又は量を低減することができる。
【0016】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、自動化された自動車の達成された位置特定精度が低い場合(即ち、例えば、要求された位置特定精度が自動化された車両において達成されていない場合)には、規定どおりに分量を増加して位置特定リファレンスデータを自動化された自動車へ伝達するように構成されている。この場合、要求された位置特定品質を達成するためには、それまでよりも多い位置特定リファレンスデータが必要とされ、従って、有利には、伝達されるべき位置特定リファレンスデータの個数又は量が増加される。
【0017】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、位置情報と結合された周辺環境データをサーバ装置へ伝達するように構成されている。このようにすることで、位置特定リファレンスデータの高度な最新性が支援される。伝達されたデータに基づき作成装置によって、位置特定リファレンスデータの作成又は抽出を実施することができる。
【0018】
本発明に係る方法のさらに別の有利な実施形態によれば、位置特定リファレンスデータを少なくとも部分的に、自動車に配置された作成装置によって作成するように構成されている。このようにすれば、位置特定リファレンスデータの作成を部分的に自動車に移行させることができ、それによってランドマークデータのための主作成装置の負荷軽減が実現され、さらに一般的には、周囲環境データをサーバ装置へ伝達する際のデータ容量の低減が達成される。
【0019】
次に、2つの図面を参照してさらに別の特徴及び利点を挙げながら、本発明について詳細に説明する。なお、ここで説明するすべての特徴又は図示されている特徴は、それら自体が単独で、又は、任意の組み合わせで、本発明の対象を成すものであり、このことは、各請求項に要約されたそれらの特徴の記載内容又は各請求項の従属関係に左右されるものではなく、また、明細書又は図面におけるそれらの特徴の表現又は描き方に左右されるものではない。しかも、各図面は、本発明による原理を明確に示すことを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るシステムの1つの実施形態を示す基本構成図である。
図2】本発明に係る方法の1つの実施形態を示す基本フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の説明
自動車を長手方向及び横方向で完全にガイドする自動車の自動走行もしく自律走行のためには、周囲環境内において約10cmの桁で高度な自動車位置特定精度が必要とされる。このようにすることで、自動車は、例えば、交通信号機手前の停止線に正確に近づくことができるようになる。
【0022】
これに対して、車両の運転者に対し、例えば、まもなく右折してください、といったことを伝達する運転者情報のためのアシストシステムについては、位置特定品質がこれよりも低く形成されていればよい。ここで「低い位置特定品質」とは、約5m乃至約10mの桁の位置特定品質であると解することができる。
【0023】
位置特定リファレンス又は位置特定リファレンスデータの一例としてみなせるのは、自動車が前を通過する周辺環境内の物体である。自動車のカメラは、その物体(例えば交通標識)を、規定された記録頻度、例えば50ms間隔で何度も捕捉し、それによって、この交通標識が周辺環境データとして複数の画像に存在することになる。捕捉されたこれら複数の画像から、作成アルゴリズムを用いて単一の位置特定リファレンスデータが交通標識の形態で作成される。この場合、作成された位置特定リファレンスデータ若しくはランドマークデータがどの程度の確率で捕捉された物体を表すものであるのか、又は、捕捉された物体が規定された位置に存在しているということがシステムにとってどの程度確実なことであるのか、についても求めることができる。
【0024】
さらに別の作成ステップによって、例えば、物体の前を通過するたびにその物体を認識する率を、対応する位置特定リファレンスデータの作成に関与させることができる。また、通常はこのような作成の枠組みの中で、位置精度又は位置特定リファレンスデータの空間的存在についての情報が改善される。
【0025】
自立型の作成(即ち、中央のデータベースとは接続されていない自動車単独の作成)と対比して、集合的に作成されるデータベースの使用(即ち、中央のデータベースと接続された複数の自動車による作成)によってユーザにもたらされる利点として、特に以下の点を挙げることができる:
・かなり大きいデータベースに基づくことから、収集されたデータの精度が高まる。
・作成されたデータによってカバーされる位置が広がる。
・作成されたデータの最新性が高まる。
【0026】
高精度の位置特定のために位置特定リファレンスデータを供給するにあたり難関となるのは、サーバとクライアントとの間でそれ相応のデータをできるかぎりリアルタイムに伝送することである。なぜならば、位置特定に必要とされるデータ量は一般的に極めて多く、例えば、約500MByte/kmの領域にあるからである。
【0027】
また、一般的にはデータが持続的にダウンロードされることから、サーバと自動化された自動車との間のワイヤレス通信インタフェースが、ボトルネックとなる可能性もある。この場合、自動化された車両の機能に応じて種々の要求が存在するが、完全に自律型の車両は、データのリアルタイム伝送に関して最も高い要求を有する。自動車のできるかぎり正確な位置確認又は位置特定のためには、リアルタイムで伝送されるデータが必要とされる。
【0028】
従って、目指すべきことは、予め設定された位置特定精度又は位置特定品質を実現するために、必要不可欠な量の位置特定リファレンスデータだけを使用する、ということである。
【0029】
ランドマークデータは、自動車の周辺環境から得られるパターンデータ若しくはリファレンスデータであって、それらのデータには位置情報が追加されており、又は、それらのデータは位置情報と結合されている。良好なランドマークデータとは、ランドマークデータの局所的存在の把握に関して、高い再認識値と高い位置精度とを有するデータである。その際、高い再認識値によって、自動車の「よりロバストな」位置確認又は位置特定が支援される。
【0030】
高精度の位置特定のための慣用のランドマークデータ作成方法は、捕捉可能な考え得るすべてのランドマークデータを、ランドマークデータの作成に使用している。この場合、作成されたすべてのランドマークデータが、位置特定のためにも使用される。
【0031】
このような慣用のアプローチの欠点は、必要不可欠な量よりも場合によってはかなり多くのランドマークデータが処理されて、位置特定に使用される、ということである。このことによって、不必要に多くのデータトラヒックが生じる可能性があり、そのように多くのデータトラヒックは、技術的に多大な手間をかけることによってしか管理できず、従って、著しくコストがかかってしまうおそれがある。
【0032】
よって、ここで提案するのは、ランドマークデータの伝送又は作成にあたり、そのつど実際に達成される位置特定精度を考慮する、というアプローチである。これによれば、現在の位置特定精度の達成に必要とされる程度のランドマークデータだけを伝送又は作成するという手法で、ランドマークデータの処理における一種の調節が支援される。例えば、現在の位置特定精度が低すぎるならば、以降はその周辺環境状況に対しては、より多くの好ましくはロバストなランドマークデータが、自動化された自動車に伝達されるようになる。
【0033】
これに対し、現在の位置特定リファレンスデータによって、要求された位置特定精度よりも高い精度が達成されているならば、その結果として、位置特定のために以降はその周辺環境状況に対しては、要求された位置特定精度が生じるまで、伝達されるランドマークデータの個数が低減されることになる。
【0034】
有利には、このような態様によって達成できるのは、位置特定精度に対し同様の要求を有する同じ所在地点に位置する以降の自動車に対しては特に、必要不可欠な量のランドマークデータだけが常に、自動化された自動車へ位置特定のために伝達される、ということである。
【0035】
ここで考えられるのは、必要とされるランドマークデータの分量を決定するにあたり、以下の依存関係を考慮することである:
・自動車において使用されるセンサ機構。使用されるセンサ機構は、ランドマークデータの捕捉性能に影響を及ぼす可能性がある。このことは、例えば、様々なセンサ技術の技術的性能がそれぞれ異なることに起因する可能性がある。
・現在の周辺環境条件。例えば、雨、夜、霧等がランドマークデータの捕捉性能に影響を及ぼす可能性がある。なぜならばセンサ機構は通常、それぞれ異なる周辺環境条件のもとでそれぞれ異なる性能を有するからである。この場合、正確な位置特定のために夜間は、一般的に日中よりも多くのランドマークデータが必要とされ、日中はたいてい、位置特定のために少量のロバストなランドマークデータがあれば十分である。
【0036】
図1には、自動化された自動車の位置を特定するための本発明に係るシステム100の構成要素が概略的に示されている。システム100は、自動化された自動車のセンサ装置10を含み、好ましくはビデオセンサ、レーダセンサ等を含み、この装置は周辺環境を捕捉し、その際に自動車の周辺環境データの検出を実施する。この目的でセンサ装置10は特に、ポイントクラウド、ラインフィーチャ等の形態の画像データを捕捉する。ここで挙げたデータには、例えば、木、街路照明灯、建物等のようなセマンティックな特徴も含めることができる。
【0037】
自動車の所定の基本位置特定を実施できるようにする目的で、自動化された自動車にはさらに、例えばGPSシステムなどの形態の所在地点捕捉装置(図示せず)が設けられている。このようにして自動車に対し、例えば約10mといった精度で大雑把な基本位置特定を提供することができる。
【0038】
自動化された自動車の位置特定、及び、要求された位置特定精度又は予め設定された位置特定精度に基づく自動車の位置特定精度又は位置特定品質の検出は、自動車に配置された位置特定装置20によって実施される。位置特定品質の検出には、以下のデータを関与させることができる。即ち、位置特定リファレンスデータの位置精度及び/又は量、センサ装置10による現在の車両周辺環境内の位置特定リファレンス(例えば、周辺環境内の交通標識、物体等)の一義的な識別の度合い。このような態様によれば、位置特定装置20は、自動車の所在地点の検出又は推定、及び、現在の位置特定リファレンスデータに基づく所在地点推定の対応する推定精度を実現することができる。
【0039】
しかも推定された所在地点に対し、どの程度正確に求められた所在地点であるのかを規定する確実度値を求めることができる。これによって、固有の位置特定精度がもたらされる。中庸の位置特定精度又は位置特定品質を、例えば約1mの桁にあるものとすることができ、低い位置特定品質を例えば約10mの桁、高い位置特定品質を例えば約10cmの桁にあるものとすることができる。
【0040】
外部のサーバ装置40の近くに作成装置30が配置されており、この作成装置30は、センサ装置10により捕捉された周辺環境データから位置特定リファレンスデータを作成するために、又は、上述のデータから位置特定リファレンスデータを抽出するために、設けられている。但し、別の選択肢として作成装置30を、自動化された自動車40内に配置することもできる(図示せず)。位置特定リファレンスデータを作成するにあたり、一般的には位置特定装置20から供給される現在の位置特定精度が共に考慮される。
【0041】
求められた位置特定精度の値は、システム100の第2のインタフェースS2を介して、サーバ装置40へ通知される。その結果、このことにより達成可能であるのは、例えば、要求された位置特定精度又は予め設定された位置特定精度の「充足過剰」などによって、高い位置特定精度が生じている場合には、自動化された自動車への第1のインタフェースS1を介した位置特定リファレンスデータの伝達が低減される、ということである。さらにこのことにより実現可能であるのは、例えば、要求された位置特定品質の「充足不足」などによって、低い位置特定品質が生じている場合には、予め設定された位置特定精度を達成する目的で、より多くの量の位置特定リファレンスデータが第1のインタフェースS1を介して自動車へ伝達される、ということである。
【0042】
その結果、この態様によれば、外部のサーバ装置40と自動化された自動車との間のワイヤレスデータ通信を、最適化して駆動することができる。
【0043】
位置情報と結合された周辺環境データを、第2のインタフェースS2を介してリアルタイムで又は時間的に遅れて、外部のサーバ装置40へ伝達することができる。
【0044】
好ましくは第1のインタフェースS1を介して、さらに別の選択肢として又はこれに加えて、車両は第2のインタフェースS2を介してランドマークデータを要求することができ、例えば、そのために以下のパラメータを設けておくことができる:
・ランドマークデータが要求される位置、
・周辺環境条件(昼/夜、雪、雨等)、
・センサの特性(センサの形式等)、
・要求される位置特定精度。
【0045】
さらに、外部のサーバ装置40から自動車へ伝達されるランドマークデータを、第1のインタフェースS1を介してリアルタイムに供給することができ、及び/又は、その自動車に向けてプリフェッチ(英語: pre-fetch)し、相応の要求があったときに継続的にダウンロードすることができる。
【0046】
従って、システム100のインタフェースS1,S2は、データ伝送容量が制約されたデータのボトルネックを成しており、それらは、例えば、自動化された自動車の移動無線インタフェース又はWLANインタフェースとして構築されている可能性がある。
【0047】
位置情報と結合された周辺環境データ10又は位置特定精度の値をサーバ装置40へ伝達する際に、現在の周辺環境状況も(例えば、少なくとも現在地、これに加え夜、雨、霧等のような現在の周辺環境条件も)、さらにオプションとして付加的に、センサ装置10の現在の性能についても、サーバ装置40へ伝達することができる。これによれば、例えば、雨、霧、降雪等のような悪天候の状況において、自己位置特定のためのセンサ装置10が、晴天時とは異なるデータ又は画像を供給可能である、ということを考慮することができる。
【0048】
センサ装置10は、分解能、記録精度、ディテール忠実度等に関して、それぞれ異なる特性を有する可能性がある。ランドマークデータ作成の依存関係を、センサ装置10の性能にも依存させることができ、これによって、低性能のセンサ機構を備えた自動車は通常、正確な位置特定のために、高性能のセンサ機構を備えた自動車よりもかなり多くのランドマークデータを必要とする、ということを考慮することができる。
【0049】
その結果、このことによって、要求された位置特定精度を現在の精度が下回ったケース(「精度不足の位置特定」)においては、より多くの位置特定リファレンスデータが、サーバ装置40から伝送され、オプションとして作成装置30によっても作成される、ということが支援される。このようにすることで、同じ所在地点に位置する以降の自動化された自動車について、位置特定精度に対し同様の要求であれば、改善された位置特定精度を可能にする位置特定リファレンスデータを供給することができる。
【0050】
様々な位置において要求された位置特定品質のために、どの程度の量又はどのような種類の位置特定リファレンスデータが必要とされるのか、についてサーバ装置40は把握している。このため、サーバ装置40は、自動車に対しその自動車が必要としているランドマークデータを常に正確に供給することができる。これによって、サーバ装置40から自動車への最適化されたデータ伝送が支援される。
【0051】
これに対し、要求された位置特定精度を現在の精度が上回っている場合(「精度過剰の位置特定」)には、現在の周辺環境状況に関してサーバ装置40は、分量を低減してランドマークデータを伝送する、又は、ランドマークデータをまったく伝送しない。
【0052】
結果的にこのことが意味するのは、求められた位置特定品質が高いケースにおいては、位置特定リファレンスデータのデータ伝送レートが低減されるのに対し、求められた位置特定品質が低いケースにおいては、位置特定リファレンスデータの伝送レートが高められる、ということである。
【0053】
位置特定装置20及び作成装置30の技術的な実装を、好ましくはソフトウェアとして実現することができ、このようにすれば、それらの装置の機能的特徴の容易な更新及び変更が支援される。別の選択肢として、位置特定装置20をハードウェアとして実装することもでき、例えば、ASIC(英語: application-specific integrated circuit)又はFPGA(英語: field programmable gate array)として実装することもできる。
【0054】
図示されていない1つの変形実施形態によれば、サーバ装置40がシステム100内に、つまりは自動化された自動車に、配置されているように構成することができる。有利には、このケースにおいて支援されることは、自動車内部のデータベースへ伝送すべきデータ量が最適化され、それによって、このデータベースをより効率的に設計することができる、ということである。本発明に係る方法の実際の例を、以下のようにして実現することができる。
【0055】
自動化された自動車又は自律型の自動車は、自身のセンサ装置10によって走行中に周辺環境データを捕捉し、それらのデータを、所在地点検出装置から到来した位置情報と結合する(この場合、所在地点検出装置を、例えばGPSセンサの形態でセンサ装置10の構成部分とすることができる)。例えば、内部又は外部のサーバ装置40から供給可能であって自動車において現在得られているランドマークデータを用い、かつ、センサ装置10により現在捕捉されている周辺環境データを用いて、自動化された自動車の位置特定が実施され、要求された位置特定精度に関してこの自動車の位置特定品質が求められる。第2のインタフェースS2を介して、求められた位置特定精度がサーバ装置40へ伝達される。
【0056】
位置特定にあたっては、例えば三角測量を用いることができ、これによれば、自動車に対し相対的に物体がいかなる距離のところに存在しているのかについても、センサ装置10が特定可能である、という点を活用することができる。
【0057】
さらに、センサ装置10により捕捉されて位置情報と結合された周辺環境データが、第2のインタフェースS2を介してサーバ装置40へ伝達され、これによって作成装置30は、ランドマークデータの作成、更新及び/又は改善のために、それらのデータを使用できるようになる。
【0058】
精度過剰の位置特定が達成されており、それによって、要求された位置特定精度が充足過剰であるケースにおいては、求められた位置特定品質の度合いに応じて、サーバ装置40により第1のインタフェースS1を介して伝送されるランドマークデータが低減され、又は、作成装置30により作成されるランドマークデータが低減される。
【0059】
これに対して、達成された位置特定品質が低いケースにおいては、即ち、要求された位置特定品質が充足されなければ、求められた位置特定品質に応じてサーバ装置40により第1のインタフェースS1を介して、分量を増加してランドマークデータが自動車へ伝送される。
【0060】
さらに、このような態様によれば、現在得られているランドマークデータによっても要求された位置特定品質を達成できないケースにおいては、現在達成可能な精度よりも高い位置特定品質を必要とする自動化された自動車における機能を、少なくとも部分的に非アクティブ状態にすることができる。例えば、その理由として挙げることができるのは、現在該当する周辺環境状況において、例えば、十分な個数の表面構造物が存在しない周辺環境などにおいて、装置が十分な個数のランドマークデータを形成することができない、ということなどである。
【0061】
これによって、自動車の運転者に対し、自動化された自動車の特別な機能に関して、位置特定をもはや十分には行えず、従って、上述の機能がまもなく遮断される、ということを通知することができる。
【0062】
位置情報と結合されて伝達された現在の周辺環境データのほかにも、サーバ装置40にまだ格納されている以前にすでに伝達された周辺環境データを、及び/又は、サーバ装置40にすでに格納されている従前の位置特定リファレンスデータを、位置特定リファレンスデータの作成に関与させることができる。
【0063】
図2には、本発明に係る方法の基本的な流れが概略的に示されている。
【0064】
ステップ200において、動作中、自動化された自動車に対し位置特定精度を予め設定し、その際、自動車は、規定された位置について位置特定リファレンスデータを、規定された達成すべき位置特定精度と共に要求し、それらの位置特定リファレンスデータを自動化された自動車へ伝達する。
【0065】
ステップ210において、自動化された自動車の周辺環境データを、自動化された自動車のセンサ装置によって捕捉し、捕捉した周辺環境データを位置情報と結合する。
【0066】
ステップ220において、位置特定リファレンスデータと、捕捉された周辺環境データとを用いて、自動化された自動車の位置を特定し、その際、達成されている位置特定精度を求める。
【0067】
ステップ230において、達成すべき位置特定精度を考慮して位置特定リファレンスデータを最適化する目的で、達成されている位置特定精度を通知する。
【0068】
有利にはこのような態様によって、自動化された自動車内部の位置特定システムの効率的な動作が支援される。有利にはこの方法を、自己位置特定を行うどのような車両にも適用することができ、例えば、ロボティクス分野の自動化された車両にも適用することができる。
【0069】
当業者であれば、本発明の核となる着想から逸脱することなく、本発明の特徴を適切な態様で変形するであろうし、及び/又は、互いに組み合わせるであろう。
図1
図2