(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第2の動作の後、前記インクカートリッジを前記決定された前記回動角度または前記回動角度よりも小さな回動角度だけ前記第2の方向に回動させて、前記インクカートリッジを前記初期位置から第2回動位置まで回動させる第3の動作を行い、その後、前記インクカートリッジを前記第1の方向に回動させて、前記インクカートリッジを前記第2回動位置から前記初期位置に戻す第4の動作を行う、請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
前記制御部は、前記回動回数決定部によって決定された前記回動回数分前記インクカートリッジを回動させる動作を、所定の時間間隔で繰り返し行う、請求項3に記載のインクジェット式記録装置。
前記制御部は、所定の印刷停止時間毎に、前記インクヘッドの前記ノズルからインクを吸引する定期ヘッドメンテナンス動作を実行するとともに、前記定期ヘッドメンテナンスを実行する前に、前記回動回数決定部によって決定された前記回動回数分前記インクカートリッジを回動させる動作を行う、請求項3に記載のインクジェット式記録装置。
前記インクジェット式記録装置の電源がオンされたとき、前記制御部は、前記第2回動角度または前記第3回動角度だけ前記インクカートリッジを回動させる、請求項8に記載のインクジェット式記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、第1実施形態に係るインクジェット式記録装置について説明する。第1実施形態に係るインクジェット式記録装置は、記録媒体に印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)10である。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係るプリンタ10の主要部の正面図である。プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行うためのものである。なお、記録媒体5には、普通紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)やポリエステルなどの樹脂材料、アルミニウム、鉄、木材などの各種の材料からなる媒体が含まれる。
【0013】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。後述するインクヘッド20(
図2参照)は左方および右方に移動可能である。記録媒体5は、前方および後方に搬送可能である。本実施形態では、インクヘッド20の移動方向を主走査方向Yといい、記録媒体5の搬送方向を副走査方向Xという。ここでは、主走査方向Yは左右方向に対応し、副走査方向Xは前後方向に対応する。主走査方向Yと副走査方向Xとは直交している。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、本体部12と、本体部12に設けられたプラテン14とを備えている。プラテン14には記録媒体5が配置される。
【0015】
図2に示すように、プリンタ10は、本体部12に設けられたガイドレール13を備えている。ガイドレール13は、左右方向に延びている。ガイドレール13には、キャリッジ22が係合している。キャリッジ22は、キャリッジ移動機構8によって、ガイドレール13に沿って左右方向(主走査方向Y)に往復移動する。キャリッジ移動機構8は、ガイドレール13の左端側および右端側に配置されたプーリ19aおよびプーリ19bを有している。プーリ19aには、キャリッジモータ8aが連結されている。なお、キャリッジモータ8aはプーリ19bに連結されていてもよい。プーリ19aは、キャリッジモータ8aによって駆動される。プーリ19aおよびプーリ19bには、それぞれ無端状のベルト16が巻き掛けられている。キャリッジ22はベルト16に固定されている。プーリ19aおよびプーリ19bが回転してベルト16が走行すると、キャリッジ22が左右方向に移動する。このように、キャリッジ22はガイドレール13に沿って左右方向に移動可能に構成されている。
【0016】
プラテン14には、上下一対のグリッドローラ(図示せず)およびピンチローラ(図示せず)が設けられている。グリッドローラはフィードモータ(図示せず)に連結されている。グリッドローラはフィードモータによって回転駆動される。記録媒体5がグリッドローラとピンチローラとの間に挟まれた状態でグリッドローラが回転すると、記録媒体5は前後方向(副走査方向X)に搬送される。
【0017】
図2に示すように、プリンタ10は、複数の第1インクカートリッジ31と、複数の第2インクカートリッジ32とを備えている。第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32はインクを貯留するタンクである。第1インクカートリッジ31の構成は第2インクカートリッジ32の構成と同じである。即ち、プロセスカラーインクが充填された後述する第2インクパック34を収容する第2インクカートリッジ32を、特色インクが充填された後述する第1インクパック33を収容する第1インクカートリッジ31として用いることができる。第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32は、直方体状に形成されている。
【0018】
図2に示すように、第1インクカートリッジ31は、特色インクが充填された第1インクパック33を収容する。複数の第1インクカートリッジ31W、31M、31Gは、後述する第1収容部24(
図3も参照)に着脱自在に装着されている。複数の第1インクカートリッジ31W、31M、31Gは、後述するインク経路50の一端52に着脱自在に接続されている。インクカートリッジ31Wには、ホワイトインクが充填された第1インクパック33が収容されている。インクカートリッジ31Mには、メタルインクが充填された第1インクパック33が収容されている。インクカートリッジ31Gには、グロスインクが充填された第1インクパック33が収容されている。なお、ホワイトインクおよびメタルインクは、静止時間の継続に伴ってインク成分(顔料の粒子や金属粉等)の沈降が生じる沈降系インクである。グロスインクは、静止時間の継続に関わらずインク成分の沈降が生じない非沈降系インクである。また、第1インクパック33に充填されるインクは上述したものに限定されない。
【0019】
図2に示すように、第2インクカートリッジ32は、プロセスカラーインクが充填された第2インクパック34を収容する。複数の第2インクカートリッジ32C、32M、32Y、32Kは、後述する第2収容部26(
図3も参照)に着脱自在に装着されている。複数の第2インクカートリッジ32C、32M、32Y、32Kは、インク経路50の一端52に着脱自在に接続されている。インクカートリッジ32Cには、シアンインクが充填された第2インクパック34が収容されている。インクカートリッジ32Mには、マゼンタインクが充填された第2インクパック34が収容されている。インクカートリッジ32Yには、イエローインクが充填された第2インクパック34が収容されている。インクカートリッジ32Kには、ブラックインクが充填された第2インクパック34が収容されている。なお、第2インクパック34に充填されるインクは上述したものに限定されない。第2インクパック34は、例えば、ライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアン等のインクを充填してもよい。なお、本実施形態におけるプロセスカラーインクは、静止時間の継続に関わらずインク成分の沈降が生じない非沈降系インクである。
【0020】
図4に示すように、第1インクパック33は、特色インクを収容する本体部33Aと、本体部33A内の特色インクを後述するインク経路50に供給する供給口33Bとを備えている。なお、第2インクパック34は、内部に充填されるインクがプロセスカラーインクである点を除き、第1インクパック33と同様の構成であるためその説明を省略する。
【0021】
図2に示すように、プリンタ10は、各色のインクが貯留された第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32ごとにインク供給システム35を有している。インク供給システム35は、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32に加えて、インクヘッド20と、ダンパー(図示せず)と、インク経路50と、供給ポンプ55とを備えている。インクヘッド20およびダンパー(図示せず)はキャリッジ22に搭載され、左右方向に往復移動する。一方、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32は、キャリッジ22に搭載されておらず、左右方向に往復移動しない。そのため、キャリッジ22が左右方向に移動してもインク経路50が破損しないように、インク経路50の大部分(少なくとも全長の半分以上)は、左右方向に延びた状態で配置されている。本実施形態では、7種類のインクを利用しているため、合計7本のインク経路50が設けられている。インク経路50は、ケーブル類保護案内装置56で覆われている。ケーブル類保護案内装置56とは、例えばケーブルベア(登録商標)である。
【0022】
図2に示すように、インクヘッド20は、特色インクまたはプロセスカラーインクを記録媒体5に吐出する複数のノズル21を備えている。即ち、ノズル21は、沈降系インクまたは非沈降系インクを吐出する。ダンパー(図示せず)は、インクヘッド20に連通し、インクヘッド20に特色インクまたはプロセスカラーインクを補給する役割を担う。また、ダンパーは、インクの圧力変動を緩和する役割を担う。ダンパーによって、インクヘッド20のインク吐出動作が安定化される。
【0023】
図2に示すように、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32とインクヘッド20とは、インク経路50を介して連通している。インク経路50の一端52は、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32の後述する接続部材38の凸部38A(
図5参照)に着脱可能に接続している。インク経路50の他端54は、ダンパー(図示せず)に接続している。インク経路50の他端54は、インクヘッド20に連通している。インク経路50は、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32からインクヘッド20にインクを導く流路を形成している。インク経路50は、柔軟性や可撓性を有し、弾性変形可能なように構成されている。インク経路50の構成は特に限定されないが、本実施形態では樹脂製の変形容易なチューブである。ただし、チューブ以外の材料で構成されていてもよい。インク経路50の一部がチューブによって構成されていてもよい。ここで、
図3に示すように、後述する第1支軸40Aから第1カートリッジホルダー30Aの後端30ARまでの最短距離をLとしたとき、第1インクカートリッジ31に接続されるインク経路50は、1.4Lより長いあそび長を有しているとよい。
【0024】
図2に示すように、供給ポンプ55は、インク経路50に配置されている。供給ポンプ55は、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32からインクヘッド20に向かってインクを供給する(送り出す)ことができる。本実施形態の供給ポンプ55は、チューブポンプであるが、これに限定されない。
【0025】
図2に示すように、プリンタ10は、第1収容部24と、第2収容部26と、フレーム部材28とを備えている。第1収容部24と、第2収容部26と、フレーム部材28とは、本体部12に設けられている。第1収容部24は、複数の第1カートリッジホルダー30Aを含む。第1カートリッジホルダー30Aは、フレーム部材28に回動可能に支持されている。なお、第1カートリッジホルダー30Aがフレーム部材28に回動可能に支持されているには、第1カートリッジホルダー30Aがフレーム部材28に設けられた他の部材を介してフレーム部材28に間接的に回動可能に支持されていることを含む。複数の第1カートリッジホルダー30Aは、相互に固定されている。第1カートリッジホルダー30Aは、後述する第1挿入口30AHを介して挿入された第1インクカートリッジ31を収容する。第2収容部26は、複数の第2カートリッジホルダー30Bを含む。第2カートリッジホルダー30Bは、フレーム部材28に回動不能に支持されている。複数の第2カートリッジホルダー30Bは、相互に固定されている。第2カートリッジホルダー30Bは、後述する第2挿入口30BHを介して挿入された第2インクカートリッジ32を収容する。フレーム部材28は、主走査方向Yに延びる。
図3に示すように、第1カートリッジホルダー30Aは、第2カートリッジホルダー30Bの側方に配置されている。本実施形態では、第1カートリッジホルダー30Aは、第2カートリッジホルダー30Bの左方に配置されているが、右方に配置されていてもよい。
【0026】
第2カートリッジホルダー30Bの構成は第1カートリッジホルダー30Aの構成と同じであるため、以下では第1カートリッジホルダー30Aの説明のみを行う。即ち、第1挿入口30AHと第2挿入口30BHとは、第1挿入口30AHには特色インクを充填した第1インクパック33を収容する第1インクカートリッジ31が挿入され、第2挿入口30BHにはプロセスカラーインクを充填した第2インクパック34を収容する第2インクカートリッジ32が挿入される点で異なるが、両者の構成は同じである。
図4に示すように、第1カートリッジホルダー30Aは、第1インクカートリッジ31を縦置きの状態で収容する。即ち、第1インクカートリッジ31は、第1インクカートリッジ31のうち最も大きな面積を有する幅広面31Aが水平面に対して略垂直に配置されている。本実施形態では、第1カートリッジホルダー30Aは、初期位置F1では、前方に向かうにつれて上方に傾斜している。即ち、第1カートリッジホルダー30Aの前端30AFは、初期位置F1では、第1カートリッジホルダー30Aの後端30ARより上方に位置する。初期位置F1における第1カートリッジホルダー30Aの水平方向に対する傾斜角αは、例えば5°である。これにより、第1カートリッジホルダー30Aに収容された第1インクカートリッジ31は、前方に向かうにつれて上方に傾斜した状態で配置される。
【0027】
図5に示すように、第1カートリッジホルダー30Aは、後壁30AAと、後壁30AAの右端から前方に延びる右壁30ABと、後壁30AAの下端から前方に延びる下壁30ACと、右壁30ABの上端から左方に延びる上壁30ADと、下壁30ACの左端から上方に延びる左壁30AEとを備えている。右壁30ABと、下壁30ACと、上壁30ADと、左壁30AEとによって、第1インクカートリッジ31を前方から後方に向けて挿入するための第1挿入口30AHが形成されている。第1挿入口30AHは、水平方向に開口している。本実施形態において、「水平方向に開口」とは、開口が水平面に対して、前後方向および/または左右方向に0°以上30°以下の範囲内で傾斜した方向を指向していることを含む。第1挿入口30AHは、前方に向けて開口している。第1インクカートリッジ31は、第1挿入口30AHから挿入される。
【0028】
図5に示すように、第1カートリッジホルダー30Aは、接続部材38を備えている。接続部材38は、第1カートリッジホルダー30Aの後壁30AAに設けられている。接続部材38は、インク経路50の一端52(
図2参照)が接続される凸部38Aと、第1インクパック33の供給口33B(
図4参照)に接続される針材38Bとを有している。凸部38Aは、接続部材38の第1部分の一例である。針材38Bは、接続部材38の第2部分の一例である。凸部38Aは、後壁30AAから後方に延びる。凸部38Aは、針材38Bと連通する排出口38C(
図3参照)を備えている。針材38Bは、後壁30AAから前方に延び、内部に流路を有する。第1インクカートリッジ31に収容された第1インクパック33の供給口33Bに針材38Bが突き刺さることによって、第1インクパック33内の特色インクは接続部材38(即ち針材38Bおよび排出口38C)を介してインク経路50に供給される。
【0029】
図3に示すように、複数の第1カートリッジホルダー30Aのうち最も左方に位置する第1カートリッジホルダー30Aには、板状部材30AXが設けられている。板状部材30AXは、第1カートリッジホルダー30Aの右壁30AB(
図5参照)と実質的に同じ形状をしている。
【0030】
図3に示すように、第1収容部24には、回動機構39が設けられている。回動機構39は、沈降系インクが充填された第1インクパック33(
図2参照)を収容する第1インクカートリッジ31(
図2参照)を回動させる。回動機構39は、第1カートリッジホルダー30Aを回動可能に支持する一対の第1支軸40A、40Bと、第1支軸40A、40Bを中心に第1カートリッジホルダー30Aを回動させる第1駆動機構42と、を備えている。第1駆動機構42は、第1モータ43と、第1モータ43に設けられた第1軸44と、第1軸44と第1支軸40Aとに巻き掛けられた無端状のベルト45とを備えている。第1モータ43は、フレーム部材28(
図2参照)に取り付けられている。第1支軸40Aは、複数の第1カートリッジホルダー30Aのうち最も左方に位置する第1カートリッジホルダー30Aに設けられた板状部材30AXに設けられている。第1支軸40Bは、複数の第1カートリッジホルダー30Aのうち最も右方に位置する第1カートリッジホルダー30Aの右壁30AB(
図5参照)に設けられている。第1軸44および第1支軸40A、40Bは、第1インクカートリッジ31が挿入される方向(本実施形態では前後方向)と直交する方向かつ水平方向に延びる。本実施形態では、第1軸44および第1支軸40A、40Bは、左右方向に延びる。第1支軸40Aの軸心と第1支軸40Bの軸心とは一致する。第1支軸40A、40Bは、フレーム部材28に設けられた回動自在に支持する軸受に取り付けられている。第1モータ43を駆動させてベルト45が走行すると、第1カートリッジホルダー30Aは、第1支軸40A、40Bを中心に前後方向(
図3の矢印X1および矢印X2の方向)に回動する。
【0031】
図2に示すように、プリンタ10は、制御装置60を備えている。プリンタ10の全体の動作は、制御装置60によって制御される。制御装置60は、例えば、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置60は、キャリッジモータ8a、インクヘッド20、第1モータ43および供給ポンプ55に接続されている。制御装置60は、キャリッジモータ8aの作動および停止を制御する。制御装置60は、インクヘッド20のノズル21からのインクの吐出を制御する。制御装置60は、供給ポンプ55の作動および停止を制御する。制御装置60は、第1モータ43の作動および停止を制御する。
【0032】
図6に示すように、制御装置60は、記憶部62と、インク撹拌度決定部63と、測定部64と、角度決定部66と、回動回数決定部67と、速度決定部68と、第1制御部71とを備えている。
【0033】
記憶部62は、沈降系インクを収容する第1インクカートリッジ31の静止時間(即ち第1インクパック33の静止時間)Tと第1インクパック33に充填された沈降系インクの沈降(典型的には沈降系インクに含まれる顔料や金属粉等の沈降)の割合S(以下、第1インクパック33に充填された沈降系インクの沈降の割合Sをインク沈降度Sと称する。)との関係を規定した沈降データを記憶する。
図7は、インク沈降度Sと第1インクカートリッジ31の静止時間Tとの関係を示すグラフであり、記憶部62が記憶する沈降データの一例である。なお、
図7中の縦軸はインク沈降度S[%]を表し、横軸は静止時間[hour]を表す。静止時間Tとは、第1インクカートリッジ31(即ち第1インクパック33)が回動していない時間である。
【0034】
記憶部62は、沈降系インクの持つ様々な特性、例えば、顔料や金属粉の凝集性、比重、粘度、温度特性等に関する情報(以下、インク成分情報と称する。)を記憶している。
【0035】
測定部64は、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)の静止時間Tを測定する。測定部64は、第1インクカートリッジ31が回動し終わってから、第1インクカートリッジ31が次に回動し始めるまでの時間を測定する。
【0036】
インク撹拌度決定部63は、第1インクカートリッジ31に対する必要なインク撹拌の度合いであるインク撹拌度SSを決定する。インク撹拌度決定部63は、測定部64によって測定された第1インクカートリッジ31の静止時間Tに基づいて、記憶部62が記憶する沈降データ(
図7参照)からインク沈降度Sの情報を得る。インク撹拌度決定部63は、記憶部62が記憶するインク沈降度Sの情報による沈降データ、第1インクパック33内の沈降系インクの残量、インク成分情報、インクの温度、作業者による撹拌度合いの指定などから、プリンタ10が行うインク撹拌の度合いを示すインク撹拌度SSを得る。第1インクパック33内の沈降系インクの残量の違いで、インクの撹拌動作によるインク沈降度Sの解消の度合いが異なる場合がある。本実施形態に示される直方体状の第1インクカートリッジ31内の第1インクパック33のような形状(
図4参照)である場合、例えばある種類の沈降系インクにおいては、インク残量が少なくなるに従って、沈降が進んだ沈降系インクが印刷品質に問題がない程度までインクの撹拌を行う際に必要となる、残量インク量に対するインク撹拌量(回動角度と速度との積算量)はより大きくなる傾向にある。なお、作業者による撹拌度合いの指定とは、プリンタ10を用いて印刷を行う作業者が、例えば印刷品質の安全率確保を目的として、プリンタ10が指定する以上に十分なインク撹拌を行いたいことがある。この場合に、必要とするインク撹拌の度合いを意図的により強く指定することを含む。
【0037】
記憶部62は、第1インクカートリッジ31のインク撹拌度SSと第1インクカートリッジ31の初期位置F1からの回動角度θとの関係を規定した第1データを記憶する。第1データは、沈降データ、インク残量、インク成分情報、インクの温度、作業者による撹拌度合いの指定などに基づいて事前に作成される。第1データにおいて、インク撹拌度SSが第1の値SS
1未満のときの回動角度θである第1回動角度θ1は、インク撹拌度SSが第1の値SS
1以上のときの回動角度θである第2回動角度θ2より小さい。
図8は、第1インクカートリッジ31の回動角度θと第1インクカートリッジのインク撹拌度SSとの関係を示すグラフであり、記憶部62が記憶する第1データの一例である。なお、
図8中の縦軸は回動角度θ[°]を表し、横軸はインク撹拌度SSを表す。
図8に示す例では、0以上SS
1未満のときの回動角度θは第1回動角度θ1(例えば0°<θ1<90°、好ましくは30°≦θ1<90°)であり、SS
1以上SS
2未満のときの回動角度θは第2回動角度θ2(例えば90°≦θ2<180°)であり、SS
2以上SS
3未満のときの回動角度θは第3回動角度θ3(例えば180°≦θ3<270°)である。なお、回動角度θおよびインク撹拌度SSとの関係は上述したものに限定されない。
【0038】
記憶部62は、第1インクカートリッジ31のインク撹拌度SSと第1インクカートリッジ31の回動回数Nとの関係を規定した第2データを記憶する。第2データは、沈降データ、インク残量、インク成分情報、インク温度、作業者による撹拌度合いの指定などに基づいて事前に作成される。第2データにおいて、インク撹拌度SSが第1の値SS
1未満のときの回動回数Nである第1回動回数N
1は、インク撹拌度SSが第1の値SS
1以上のときの回動回数Nである第2回動回数N
2より小さい。
図9は、第1インクカートリッジ31の回動回数Nと第1インクカートリッジのインク撹拌度SSとの関係を示すグラフであり、記憶部62が記憶する第2データの一例である。なお、
図9中の縦軸は回動回数Nを表し、横軸はインク撹拌度SSを表す。
図9に示す例では、0以上SS
1未満のときの回動回数Nは第1回動回数N
1であり、SS
1以上SS
2未満のときの回動回数Nは第2回動回数N
2(N
2>N
1)であり、SS
2以上SS
3未満のときの回動回数Nは第3回動回数N
3(N
3>N
2)である。なお、回動回数Nおよびインク撹拌度SSとの関係は上述したものに限定されない。
【0039】
記憶部62は、第1インクカートリッジ31のインク撹拌度SSと第1インクカートリッジ31の回動速度Bとの関係を規定した第3データを記憶する。第3データは、沈降データ、インク残量、インク成分情報、インク温度、作業者による撹拌度合いの指定などに基づいて事前に作成される。第3データにおいて、インク撹拌度SSが第1の値SS
1未満のときの回動速度Bである第1回動速度B
1は、インク撹拌度SSが第1の値SS
1以上のときの回動速度Bである第2回動速度B
2より小さい。
図10は、第1インクカートリッジ31の回動速度Bと第1インクカートリッジ31のインク撹拌度SSとの関係を示すグラフであり、記憶部62が記憶する第3データの一例である。なお、
図10中の縦軸は回動速度B[km/h]を表し、横軸はインク撹拌度SSを表す。
図10に示す例では、0以上SS
1未満のときの回動速度Bは第1回動速度B
1であり、SS
1以上SS
2未満のときの回動速度Bは第2回動速度B
2(B
2>B
1)であり、SS
2以上SS
3未満のときの回動速度Bは第3回動速度B
3(B
3>B
2)である。なお、回動速度Bおよびインク撹拌度SSとの関係は上述したものに限定されない。
【0040】
角度決定部66は、インク撹拌度決定部63によって決定されたインク撹拌度SSと第1データとに基づいて、回動角度θを決定する。例えば、インク撹拌度SSが、SS
1より大きくSS
2より小さい場合には、
図8に示す例では、回動角度θはθ2に決定される。
【0041】
回動回数決定部67は、インク撹拌度決定部63によって決定されたインク撹拌度SSと第2データとに基づいて、回動回数Nを決定する。例えば、インク撹拌度SSが、SS
1より大きくSS
2より小さい場合には、
図9に示す例では、回動回数NはN
2に決定される。
【0042】
速度決定部68は、インク撹拌度決定部63によって決定されたインク撹拌度SSと第3データとに基づいて、回動速度Bを決定する。例えば、インク撹拌度SSが、SS
1より大きくSS
2より小さい場合には、
図10に示す例では、回動速度BはB
2に決定される。
【0043】
第1制御部71は、第1駆動機構42の第1モータ43を制御することにより、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させて、第1インクパック33に充填された沈降系インクを撹拌する。第1制御部71は、第1駆動機構42の第1モータ43を制御することにより、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を決定された回動角度θだけ第1の方向(
図3の矢印X1の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを初期位置F1から第1回動位置まで回動させる第1の動作後、第1カートリッジホルダー30Aを第1の方向とは逆方向である第2の方向(
図3の矢印X2の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを第1回動位置から初期位置F1に戻す第2動作を行ってもよい。ここで、
図11に示すように、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)が初期位置F1から第1回動位置F2に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端(本実施形態では前端30AF)は他端(本実施形態では後端30AR)より下方に位置し、かつ、第1カートリッジホルダー30Aが第1回動位置F2から初期位置F1に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端(前端30AF)は他端(後端30AR)より上方に位置する。また、第1制御部71は、プリンタ10の電源がオンされたとき、回動角度θ2または回動角度θ3だけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させてもよい。好ましくは、第1制御部71は、プリンタ10の電源がオンされたとき、最も大きい回動角度だけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させるとよい。なお、第1インクカートリッジ31を回動させるタイミングは、任意に設定することができる。第1制御部71は、回動回数決定部67によって決定された回動回数Nだけ第1カートリッジホルダー30Aを回動させる。第1制御部71は、好ましくは、回動回数決定部67によって決定された回動回数Nだけ第1カートリッジホルダー30Aを回動させる動作を、所定の時間間隔I(例えば1時間〜10時間程度。好ましくは2時間〜4時間程度。)で繰り返し行う。第1制御部71は、所定の印刷停止時間毎に、インクヘッド20のノズル21からインクを吸引する定期ヘッドメンテナンス動作を実行してもよい。この場合、第1制御部71は、上記定期ヘッドメンテナンスを実行する前に、回動回数決定部67によって決定された回動回数Nだけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させる動作を行ってもよい。第1制御部は、速度決定部68によって決定された回動速度Bで第1カートリッジホルダー30Aを回動させる。
【0044】
図11は、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)が初期位置F1から第1回動位置F2まで回動した状態を示す説明図である。初期位置F1では、第1カートリッジホルダー30Aの後端31AR(即ち第1インクカートリッジ31の後端31R)は、第1カートリッジホルダー30Aの前端31AF(即ち第1インクカートリッジ31の前端31F)より下方に位置する。また、初期位置F1では、第1カートリッジホルダー30Aの上面30AYは、第1カートリッジホルダー30Aの下面30AZより上方に位置する。第1カートリッジホルダー30Aが初期位置F1から回動角度θ1(例えば60°)だけ
図11の矢印X1の方向に回動させることによって、第1カートリッジホルダー30Aが第1回動位置F2まで移動する。第1回動位置F2では、カートリッジホルダー30Aの後端31AR(即ち第1インクカートリッジ31の後端31R)は、第1カートリッジホルダー30Aの前端31AF(即ち第1インクカートリッジ31の前端31F)より上方に位置する。これにより、インクパック33の後部の沈降系インクの沈降成分であるインク粒子(以下、沈降粒子と適宜称する。)は、インクパック33の前部へと移動する。そして、第1カートリッジホルダー30Aを第1回動位置F2から回動角度θ1だけ
図11の矢印X2の方向に回動させることによって、第1カートリッジホルダー30Aが初期位置F1まで移動する。これにより、インクパック33の前部の沈降粒子は、インクパック33の後部へと移動する。また、第1制御部71は、初期位置F1から第1回動位置F2まで移動させ、第1回動位置F2から初期位置F1まで移動させるという回動動作を、例えば、回動回数決定部67によって決定された回動回数N
1だけ繰り返し行う。さらに、第1制御部71は、例えば、速度決定部68によって決定された回動速度B
1で第1カートリッジホルダー30Aを回動させる。
【0045】
図12は、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)が初期位置F1から第1回動位置F3まで回動した状態を示す説明図である。第1カートリッジホルダー30Aが初期位置F1から回動角度θ2(例えば120°)だけ
図12の矢印X1の方向に回動させることによって、第1カートリッジホルダー30Aが第1回動位置F3まで移動する。第1回動位置F3では、カートリッジホルダー30Aの後端31AR(即ち第1インクカートリッジ31の後端31R)は、第1カートリッジホルダー30Aの前端31AF(即ち第1インクカートリッジ31の前端31F)より上方に位置する。さらに、第1カートリッジホルダー30Aの上面30AYは、下面30AZより下方に位置する。これにより、インクパック33の後部の沈降粒子は、インクパック33の前部へと移動すると共に、下面30AZから上面30AYへと移動する。そして、第1カートリッジホルダー30Aを第1回動位置F3から回動角度θ2だけ
図12の矢印X2の方向に回動させることによって、第1カートリッジホルダー30Aが初期位置F1まで移動する。これにより、インクパック33の前部の沈降粒子は、インクパック33の後部へと移動すると共に、上面30AYから下面30AZへと移動する。また、第1制御部71は、初期位置F1から第1回動位置F3まで移動させ、第1回動位置F3から初期位置F1まで移動させるという回動動作を、例えば、回動回数決定部67によって決定された回動回数N
2だけ繰り返し行う。さらに、第1制御部71は、例えば、速度決定部68によって決定された回動速度B
2で第1カートリッジホルダー30Aを回動させる。回動角度θ1、回動回数N
1および回動速度B
1に比べて、インクパック33に充填された沈降系インクをよりよく撹拌することができる。
【0046】
図13は、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)が初期位置F1から第1回動位置F4まで回動した状態を示す説明図である。第1カートリッジホルダー30Aが初期位置F1から回動角度θ3(例えば240°)だけ
図13の矢印X1の方向に回動させることによって、第1カートリッジホルダー30Aが回動位置F4まで移動する。これにより、インクパック33内の沈降粒子はインクパック33内を後部から前部、前部から後部の順に移動すると共に、下面30AZから上面30AYへと移動する。そして、第1カートリッジホルダー30Aを第1回動位置F4から回動角度θ3だけ
図13の矢印X2の方向に回動させることによって、第1カートリッジホルダー30Aが初期位置F1まで移動する。これにより、インクパック33内の沈降粒子は、後部から前部、前部から後部の順に移動すると共に、上面30AYから下面30AZへと移動する。また、第1制御部71は、初期位置F1から第1回動位置F4まで移動させ、第1回動位置F4から初期位置F1まで移動させるという回動動作を、例えば、回動回数決定部67によって決定された回動回数N
3だけ繰り返し行う。さらに、第1制御部71は、例えば、速度決定部68によって決定された回動速度B
3で第1カートリッジホルダー30Aを回動させる。回動角度θ2、回動回数N
2および回動速度B
2に比べて、インクパック33に充填された沈降系インクをよりよく撹拌することができる。
【0047】
本実施形態では、
図2に示すように、第1収容部24に設けられた複数の第1カートリッジホルダー30Aには、相互に異なる沈降系インクを収容する第1インクカートリッジ31W、31Mおよび非沈降系インクを収容する第1インクカートリッジ31Gが収容されている。この第1カートリッジホルダー30Aに対して、収容された複数の第1インクカートリッジ31(即ち複数の第1インクパック33)のうちのいずれか一つのインク撹拌度SSに基づいてインク撹拌のための回動動作が行われる。この場合、インク撹拌度決定部63は、最も沈降が発生しやすい沈降系インクのインク撹拌度SSに基づいて、第1カートリッジホルダー30Aのインク撹拌度SSを決定するとよい。
【0048】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、インク撹拌度決定部63は、第1インクカートリッジ31に対するインク撹拌度SSを決定する。そして、角度決定部66は、決定されたインク撹拌度SSと記憶部62に記憶された第1データとに基づいて、第1インクカートリッジの初期位置F1からの回動角度θを決定する。ここで、第1インクパック33が静止状態にあると、第1インクパック33に充填された沈降系インク中の顔料や金属粉等の沈降が進む。沈降の程度やインクの残量や特性によっては、例えば、小さい回動角度θで第1インクパック33を小さく撹拌すれば第1インクパック33中の沈降系インクが良好に分散する場合と、大きい角度で第1インクパック33を大きく撹拌しなければ第1インクパック33中の沈降系インクが良好に分散しない場合とがある。そこでインク撹拌度SSが第1の値SS
1未満のときの回動角度θである第1回動角度θ1は、インク撹拌度SSが第1の値SS
1以上のときの回動角度θである第2回動角度θ2より小さくなるように記憶部62に記憶された第1データにおいて規定されている。第1制御部71は、沈降が比較的進んでいない第1の値SS
1未満のときには、回動角度θが比較的小さい第1回動角度θ1だけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させ、また、沈降が比較的進んでいる第1の値SS
1以上のときには、回動角度θが比較的大きい第2回動角度θ2だけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させる。このように、沈降系インクの沈降の程度やインクの残量や特性に応じて第1インクカートリッジ31の回動角度θを変えることができるため、第1インクカートリッジ31を一律の回動角度θで回動させる場合と比較して、沈降系インクの撹拌に要する時間を短縮することができる。また、第1制御部71は、第1インクカートリッジ31が初期位置F1から第1回動位置F2、F3、F4に回動したとき、第1インクカートリッジ31の前端31Fは後端31Rより下方に位置し、かつ、第1インクカートリッジ31が回動位置F2、F3、F4から初期位置F1に回動したとき、第1インクカートリッジ31の前端31Fは後端31Rより上方に位置するように構成されているため、第1インクパック33内の沈降系インクは良好に撹拌される。
【0049】
本実施形態のプリンタ10によると、回動回数決定部67は、インク撹拌度決定部63によって決定されたインク撹拌度SSと第2データとに基づいて、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)の回動回数Nを決定する。このように、沈降系インクでの沈降の程度やインクの残量や特性に応じて、回動回数Nを最適化することで、第1インクパック33内の沈降系インクは良好に撹拌される。
【0050】
本実施形態のプリンタ10によると、第1制御部71は、回動回数決定部67によって決定された回動回数N分第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させる動作を、所定の時間間隔Iで繰り返し行う。所定の時間間隔Iとは、好ましくは、完全に撹拌された沈降系インクが、静止時間が継続することによりインクの沈降が進行し、インク沈降の程度が、実際の印刷時に画質の低下として印刷品質に悪影響を生じさせ始める時間間隔Imよりも小さい時間間隔である。例えば、Im=6時間であるとすると、時間間隔I=4時間と設定する。この時のインク撹拌動作の態様は、インクの残量や特性に合わせて十分に撹拌がおこなわれるように、回動角度、回動速度、繰り返し撹拌の回数などが第1制御部71により設定される。このように、インク沈降が印刷時に画質の低下として印刷品質に悪影響を生じさせる前に、インク撹拌を定期的に実行することで、印刷時に良好な印刷品質を常に維持することができる。なお、印刷を行わない期間が長期(例えば1週間以上)に及び、インクの静止時間が長時間になることがわかっている場合は、このようなインク撹拌の定期的な実行は行わずに、インク撹拌度SSが高いという設定で、長期のインクの静止時間経過後に、より撹拌量の大きな撹拌を行うように設定してもよい。
【0051】
本実施形態のプリンタ10によると、各インクヘッド20のノズル21の先端であるインク吐出口がインクの増粘や乾燥により目詰まりを起したり、ノズル21付近のインク濃度が変わって印刷品質が低下したりしないように、第1制御部71は、全部または一部のインクヘッド20に対して、所定の印刷停止時間毎にノズル21からインクを吸引する定期ヘッドメンテナンス動作を実行する。第1制御部71は、定期ヘッドメンテナンス動作を実行する前に、回動回数決定部67によって決定された回動回数N分第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させる動作を行ってもよい。これにより、定期ヘッドメンテナンスにおいてインクが吸引される際に、沈降が進んだ沈降系インクが撹拌されない状態のまま第1インクパック33より吐出されて、第1インクパック33の供給口33Bからノズル21にまでの間にインク撹拌が十分にされていない状態の沈降系インクが出てしまい、印刷品質を低下させてしまうことを避けることができる。
【0052】
本実施形態のプリンタ10によると、速度決定部68は、インク撹拌度決定部63によって決定されたインク撹拌度SSと記憶部62に記憶された第3データとに基づいて、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)の回動速度Bを決定する。ここで、第1インクカートリッジ31を回動させる速度が小さいと、第1インクパック33内の沈降系インクの撹拌はゆっくりと時間をかけて行われ、回動速度Bがより速い場合と比較すると、回動角度θが等しければ、第1インクパック33に与えられる沈降系インクの撹拌量(回動角度θと回動速度Bの乗算で得られる総仕事量)は小さくなる。一方、第1インクカートリッジ31を回動させる速度が大きいと、第1インクパック33内の沈降系インクの撹拌は素早く行われ、回動速度Bがより遅い場合と比較すると、回動角度θが等しければ、第1インクパック33に与えられる沈降系インクの撹拌量は大きくなる。そこで、インク撹拌度SSが第1の値SS
1以上のときの回動速度Bである第2回動速度B
2は、インク撹拌度SSが第1の値SS
1未満のときの回動速度Bである第1回動速度B
1より速くなるように記憶部62に記憶された第2データにおいて規定されている。このように、沈降系インクでの沈降の程度やインクの残量や特性に応じて第1インクカートリッジ31の回動速度Bを変えることができるため、第1インクカートリッジ31を一律の回動速度Bで回動させる場合と比較して、沈降系インクの撹拌に要する時間を短縮することができる。
【0053】
本実施形態のプリンタ10は、第1インクカートリッジ31を収容する第1カートリッジホルダー30Aを備え、回動機構39は、第1カートリッジホルダー30Aを回動可能に支持する第1支軸40A、40Bと、第1支軸40A、40Bを中心に第1カートリッジホルダー30Aを回動させる第1駆動機構42と、を備えている。第1制御部71は、第1駆動機構42を制御する。これにより、第1インクカートリッジ31を効率良く回動させることができ、第1インクパック33内の沈降系インクを撹拌することができる。
【0054】
本実施形態のプリンタ10によると、第1回動角度θ1は30°以上90°未満であり、第2回動角度θ2は90°以上180°未満であり、第3回動角度θ3は180°以上270°未満である。このように、沈降系インクでの沈降の程度やインクの残量や特性に応じて第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)の回動角度θを複数設けることができるため、第1インクカートリッジ31を一律の回動角度θで回動させる場合と比較して、特色インクの撹拌に要する時間を短縮することができる。
【0055】
本実施形態のプリンタ10によると、プリンタ10の電源がオンされたとき、第1制御部71は、第2回動角度θ2または第3回動角度θ3だけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させる。仮にプリンタ10の電源がオフのときに測定部64が第1インクカートリッジ31の静止時間Tを測定できないような場合であっても、印刷前に比較的大きな回動角度θ2、θ3で第1インクカートリッジ31を回動させるため、インクパック33内の沈降系インクをより確実に撹拌することができる。
【0056】
<第2実施形態>
図14に示すように、第2実施形態に係る第1収容部24には、回動機構139が設けられている。回動機構139は、沈降系インクが充填された第1インクパック33(
図2参照)を収容する第1インクカートリッジ31(
図2参照)を回動させる。回動機構139は、第1カートリッジホルダー30Aを回動可能に支持する第2支軸140Aと、第2支軸140Aを中心に第1カートリッジホルダー30Aを回動させる第2駆動機構142と、を備えている。第2駆動機構142は、第2モータ143と、第2モータ143に設けられた第2軸144と、第2軸144と第2支軸140Aとに巻き掛けられた無端状のベルト145とを備えている。第2モータ143は、フレーム部材28(
図2参照)に取り付けられている。第2モータ143は、制御装置60(
図2参照)に接続されている。制御装置60は、第2モータ143の作動および停止を制御する。第2支軸140Aは、複数の第1カートリッジホルダー30Aのうち中央に位置する第1カートリッジホルダー30Aの後端30ARに設けられている。なお、第2支軸140Aは、他の第1カートリッジホルダー30Aの後端30ARに設けられていてもよい。第2軸144および第2支軸140Aは、第1インクカートリッジ31が挿入される方向に延びる。本実施形態では、第2軸144および第2支軸140Aは、前後方向に延びる。第2支軸140Aは、フレーム部材28に設けられた回動自在に支持する軸受に取り付けられている。第2モータ143を駆動させてベルト145が走行すると、第1カートリッジホルダー30Aは、第2支軸140Aを中心に左右方向方向(
図14の矢印X3および矢印X4の方向)に回動する。
【0057】
図15に示すように、制御装置60は、記憶部62と、インク撹拌度決定部63と、測定部64と、角度決定部66と、回動回数決定部67と、速度決定部68と、第2制御部72とを備えている。
【0058】
第2制御部72は、第2駆動機構142の第2モータ143を制御することにより、第1カートリッジホルダー30Aを回動させて、第1インクパック33に充填された沈降系インクを撹拌する。第2制御部72は、第2駆動機構142の第2モータ143を制御することにより、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を決定された回動角度θだけ第3の方向(
図14の矢印X3の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを初期位置F1から第1回動位置まで回動させた後、第1カートリッジホルダー30Aを第3の方向とは逆方向である第4の方向(
図14の矢印X4の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを第1回動位置から初期位置F1に戻してもよい。ここで、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)が初期位置F1から第1回動位置に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端(本実施形態では左端または右端)は他端(本実施形態では左端または右端)より下方に位置し、かつ、第1カートリッジホルダー30Aが第1回動位置から初期位置F1に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端は他端より上方に位置する。また、第2制御部72は、プリンタ10の電源がオンされたとき、回動角度θ2または回動角度θ3だけ第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を回動させてもよい。
【0059】
<第3実施形態>
図16に示すように、第3実施形態に係る第1収容部24には、回動機構239が設けられている。回動機構239は、沈降系インクが充填された第1インクパック33(
図2参照)を収容する第1インクカートリッジ31(
図2参照)を回動させる。回動機構239は、第1カートリッジホルダー30Aを回動可能に支持する第1支軸40A、40Bと、第1支軸40A、40Bを中心に第1カートリッジホルダー30Aを回動させる第1駆動機構42と、第1カートリッジホルダー30Aを回動可能に支持する第2支軸140Aと、第2支軸140Aを中心に第1カートリッジホルダー30Aを回動させる第2駆動機構142と、を備えている。
【0060】
図17に示すように、制御装置60は、記憶部62と、インク撹拌度決定部63と、測定部64と、角度決定部66と、回動回数決定部67と、速度決定部68と、第1制御部71と、第2制御部72とを備えている。なお、第3実施形態に係る第2制御部72は、第2実施形態に係る第1制御部71と同じ構成であるため詳細な説明は省略する。
【0061】
<第4実施形態>
図18に示すように、第1制御部71は、第1駆動機構42の第1モータ43を制御することにより、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を決定された回動角度θ1だけ第1の方向(
図18の矢印X1の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを初期位置F1から第1回動位置F2まで回動させる第1の動作後、第1カートリッジホルダー30Aを第1の方向とは逆方向である第2の方向(
図18の矢印X2の方向)に回動角度θ1だけ回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを第1回動位置F2から初期位置F1に戻す第2動作を行い、第2の動作の後、第1カートリッジホルダー30Aを決定された回動角度θ1よりも小さな回動角度θ4だけ第2の方向に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを初期位置F1から第2回動位置F5まで回動させる第3の動作を行い、その後、第1カートリッジホルダー30Aを第1の方向に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを第2回動位置F5から初期位置F1に戻す第4の動作を行う。なお、本実施形態では、回動角度θ4は回動角度θ1より小さいが、回動角度θ4は回動角度θ1と同じであってもよい。
【0062】
本実施形態のプリンタ10によると、第1制御部71は、第2の動作の後、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)を決定された回動角度θ4だけ第2の方向(
図18の矢印X2の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを初期位置F1から第2回動位置F5まで回動させる第3の動作を行い、その後、第1カートリッジホルダー30Aを第1の方向(
図18の矢印X1の方向)に回動させて、第1カートリッジホルダー30Aを第2回動位置F5から初期位置F1に戻す第4の動作を行う。これにより、第1の動作で第1の方向に回動後、第2の動作で初期位置F1まで第2の方向に回動するよりも、これに第3の動作を加えることで、より大きな回動角度θが得られ、第1インクパック33内の沈降系インクは良好に撹拌される。
【0063】
上述した各実施形態では、第1インクカートリッジ31および第2インクカートリッジ32を、それぞれ第1カートリッジホルダー30Aおよび第2カートリッジホルダー30Bに縦置きの状態で収容しているが、横置きの状態で収容してもよい。「横置きの状態」とは、例えば、第1インクカートリッジ31のうち最も大きな面積を有する幅広面31Aが水平面に略平行に配置されている状態である。
【0064】
上述した各実施形態では、第1支軸40A、40Bは左右方向に延び、第2支軸140Aは前後方向に延びていたが、これに限定されない。第1支軸40A、40Bまたは第2支軸140Aは、上下方向に延びていてもよい。
【0065】
上述した各実施形態では、プリンタ10は記録媒体5が配置されるプラテン14を備えているが、これに限定されない。例えば、プリンタ10は、プラテン14に代えて、記録媒体5が配置されかつ少なくとも副走査方向Xに移動可能なテーブルを備えていてもよい。
【0066】
上述した各実施形態では、記憶部62は沈降データを記憶しているが、少なくとも第1データを記憶していれば、沈降データは記憶していなくてもよい。
【0067】
上述した各実施形態では、第1インクカートリッジ31のインク撹拌度SSに対して複数の回動速度Bが設けられていたが、第1インクカートリッジ31の回動速度Bは一定であってもよい。
【0068】
上述した各実施形態では、第1カートリッジホルダー30A(即ち第1インクカートリッジ31)が初期位置F1から第1回動位置F2に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端は他端より下方に位置し、かつ、第1カートリッジホルダー30Aが第1回動位置F2から初期位置F1に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端は他端より上方に位置するがこれに限定されない。例えば、初期位置F1において、第1カートリッジホルダー30Aの一端と他端とが同じ高さに位置する場合、第1カートリッジホルダー30Aが第1回動位置F2から初期位置F1に回動したとき、第1カートリッジホルダー30Aの一端と他端とが同じ高さにしてもよい。
【0069】
上述した実施形態では、グロスインクが充填された第1インクパック33を収容するインクカートリッジ31Gは、フレーム部材28に回動可能に支持された第1カートリッジホルダー30Aに収容されるが、インクカートリッジ31Gを収容する第1カートリッジホルダー30Aは、フレーム部材28に回動不能に支持されていてもよい。
【0070】
上述した各実施形態では、第1カートリッジホルダー30Aは、プリンタ10の本体部12に設けられているが、プリンタ10とは独立して別に設けてもよい。この場合も、第1カートリッジホルダー30Aは、インク経路50を介してインクヘッド20と連通している。さらに、第1カートリッジホルダー30Aは、プリンタ10の制御装置60とは異なる独立した他の制御装置(図示せず)により制御される構成であってもよい。他の制御装置は、制御装置60の第1制御部61と同様の構成を備えている。このような構成とすることで、プリンタ10の電源が長期間、例えば1週間オフであっても、第1カートリッジホルダー30Aに装着された第1インクカートリッジ31の沈降系インクのインク沈降が進まないように、プリンタ10とは独立して撹拌動作を定期的に行うことができる。
【0071】
上述した各実施形態では、ホワイトインクやメタルインクなどの沈降系インクおよびプロセスカラーインクやグロスインクなどの非沈降系インクは、インクパックに充填されてインクカートリッジに収納されていたが、これらはインクボトルに充填されていてもよい。この場合、インクボトルは直接インクボトルホルダーに装着され、インクボトルホルダーを回動させることによって、インクボトルに充填された沈降系インクを撹拌してもよい。
【0072】
上述した各実施形態では、プロセスカラーインクは非沈降系インクとしたが、プロセスカラーインクが水性溶剤による顔料系のインクである場合は沈降系インクであることがある。この場合は、プロセスカラーインクを内蔵する第2インクカートリッジ32を第1カートリッジホルダー30Aに装着し、ホワイトカラーインク、メタルインクと同時に撹拌動作を行うようにするとよい。または、プロセスカラーインクを内蔵する第2インクカートリッジ32を装着する第2カートリッジホルダー30Bを、ホワイトカラーインクやメタルインクを内蔵する第1インクカートリッジ31を装着する第1カートリッジホルダー30Aと同様に撹拌動作可能な機構としてもよい。この時、第1カートリッジホルダー30Aと第2カートリッジホルダー30Bは、装着された沈降系インクの残量や特性や沈降度合いなどに合わせて、それぞれ最適な撹拌動作を行うように設定するとよい。
【0073】
上述した各実施形態では、第1カートリッジホルダー30Aを回動させることによって、第1インクカートリッジ31に収容された第1インクパック33内の沈降系インクを撹拌しているが、これに限定されない。例えば、第1カートリッジホルダー30Aは回動不能であり、第1インクカートリッジ31自体が回動するものであってもよい。