特許第6567191号(P6567191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567191傾倒セグメント及び傾倒セグメント滑り軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567191
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】傾倒セグメント及び傾倒セグメント滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20190819BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20190819BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   F16C33/20 A
   F16C17/02 Z
   F16C17/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-530969(P2018-530969)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-526598(P2018-526598A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】EP2016071281
(87)【国際公開番号】WO2017042322
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】102015115385.8
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518076285
【氏名又は名称】ミバ・インダストリアル・ベアリングス・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ヘンスラー・ディーター
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ウーヴェ
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−028146(JP,A)
【文献】 特開平05−050519(JP,A)
【文献】 特開平05−329839(JP,A)
【文献】 特表2012−501407(JP,A)
【文献】 特開2012−077764(JP,A)
【文献】 特開2000−356223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント体(13,13’)が、繊維強化された複合材料から形成されている、軸受力を受け止めるためのセグメント体(13,13’)を有する傾倒セグメント滑り軸受(1,1’)用の傾倒セグメント(3,3’)において、
複合材料が、ポリエーテルケトンを含むこと、複合材料が、強化繊維として25〜70%の重量割合を有するカーボン繊維を備えること、及び、カーボン繊維が、セグメント体(13,13’)の摺動面(8,18)に対して輪郭平行の整向を備える布地を構成すること、を特徴とする傾倒セグメント。
【請求項2】
複合材料が、強化繊維として40〜60%の重量割合を有するカーボン繊維を備えること、を特徴とする請求項1に記載の傾倒セグメント。
【請求項3】
複合材料が、強化繊維として45〜55%の重量割合を有するカーボン繊維を備えること、を特徴とする請求項2に記載の傾倒セグメント。
【請求項4】
複合材料が、50%の重量割合を有するカーボン繊維を備えること、を特徴とする請求項3に記載の傾倒セグメント。
【請求項5】
複合材料が、カーボン繊維以外にポリエーテルエーテルケトン又はポリアクリルエーテルケトンを含むこと、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の傾倒セグメント。
【請求項6】
セグメント体(13,13’)が、圧縮によって成形されていること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の傾倒セグメント。
【請求項7】
支持リング(2,2’)に配置された複数の傾倒セグメント(3,3’)を有する傾倒セグメント滑り軸受(1,1’)において、
傾倒セグメント(3,3’)が、請求項1〜6のいずれか1項により形成されていること、を特徴とする傾倒セグメント滑り軸受。
【請求項8】
傾倒セグメント(3)が、ラジアル軸受(4)のラジアル傾倒セグメント(6)として形成され、それぞれ1つの凹の摺動面(8)を備えること、を特徴とする請求項7に記載の傾倒セグメント滑り軸受。
【請求項9】
傾倒セグメント(3’)が、アキシャル軸受(14)のアキシャル傾倒セグメント(16)として形成され、それぞれ1つの平坦な摺動面(18)を備えること、を特徴とする請求項7に記載の傾倒セグメント滑り軸受。
【請求項10】
回転する軸(10)又は軸カラー(10’)の摺動面(8,18)側の軸受け面(9,9’)が、固い保護層を備えること、を特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の傾倒セグメント滑り軸受。
【請求項11】
保護層が、コバルト及びクロムの成分を有するタングステンカーバイドから形成されていること、を特徴とする請求項10に記載の傾倒セグメント滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント体が、繊維強化された複合材料から形成されている、軸受力を受け止めるためのセグメント体を有する傾倒セグメント滑り軸受用の傾倒セグメントに関する。
【0002】
本発明は、更に、支持リングに配置された複数の傾倒セグメントを有する傾倒セグメント滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0003】
欧州特許出願公開第2 653 736号明細書から、セグメント体が、繊維強化された複合材料から形成されている、軸受力を受け止めるためのセグメント体を有する傾倒セグメント滑り軸受用の傾倒セグメントが公知である。この場合、選択的に、セグメント体を、熱可塑性のプラスチック、特にポリエーテルケトン−これは、特にポリエーテルエーテルケトンも含有する−から形成することが提案される。欠点として、公知の繊維強化された複合材料と、熱可塑性のプラスチック、特にポリエーテルケトン又はポリエーテルエーテルケトンのいずれも、十分な強度値及び運転特性を備えないことがわかった。
【0004】
更に、独国特許出願公開第10 2013 210 782号明細書から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)以外に、更に、チタン酸カリウムウィスカー(PTW)及び強化繊維、好ましくは炭素繊維を備える複合材料から形成されたラジアル滑り軸受用の滑りブッシュが公知である。この場合、チタン酸カリウムは、好ましくは化学式KTi13を有する。この場合、強化繊維(炭素繊維/カーボン繊維)は、10〜20%の重量割合を備えるべきである。
【0005】
PTW繊維において欠点であるのは、このPTW繊維が、既に2005年にWHOによってマイクロメートル領域にあるその寸法に基づいて健康を危険にさらすものであると格付けされたことである。その点で、PTW繊維は放棄すべきである。
【0006】
この公知の複合材料の場合も、強度値及び運転特性を、特に傾倒セグメントのセグメント体の形成及びそれらの摺動特性に関して、また健康に有害な成分を顧慮して、改善すべきであることが欠点である。
【0007】
特開2003−028146号公報から、カーボン繊維及びポリエーテルエーテルケトンから成る繊維強化された複合材料から成るコーティングを有するセグメント体を含む、軸受力を受け止めるための傾倒セグメント滑り軸受用の傾倒セグメントが公知である。
【0008】
コーティングによって形成された摺動面を有するセグメント体において欠点であるのは、コーティングが比較的労力を要し、高価であることである。
【0009】
更に、独国特許出願公開第10 2005 009 552号明細書から、そのコーティングが、ポリエーテルケトン(PEK)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むコーティングされた支持箇所を有する滑り軸受又は摩擦軸受が公知である。この場合、ジョーティングは、50容積%までの微粒子充填材料、例えば炭素繊維を含み得る。この場合、層厚さは、10μm〜1000μmの間にあるべきである。
【0010】
ここでも、コーティングが、比較的労力を要し、高価であることが欠点である。コーティングされた本体の場合、本体の強度値は、また及び特にコーティングされた基体の材料の強度値に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 653 736号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2013 210 782号明細書
【特許文献3】特開2003−028146号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2005 009 552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、傾倒セグメント滑り軸受用の公知の傾倒セグメント及び傾倒セグメント滑り軸受を、その強度特性及び運転特性に関して、安価にかつ健康を危険にさらすチタン酸カリウムウィスカー(PTW)を回避して更に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1の上位概念の特徴と関係して、複合材料が、ポリエーテルケトンを含むこと、複合材料が、強化繊維として25〜70%の重量割合を有するカーボン繊維(炭素繊維)を備えること、及び、カーボン繊維が、セグメント体の摺動面に対して輪郭平行の整向を備える布地を構成すること、によって解決される。
【0014】
驚くべきことに、ポリエーテルケトン(PEK)及びカーボン繊維から成る複合材料の場合、カーボン繊維の重量割合が25〜70%である限り、傾倒セグメントは、十分な強度値及び軸受け特性及び特により低い摩耗を備えることがわかった。更に、布地平面に対して直交して、ポリエーテルケトンの有利な摺動特性が特に発揮されることがわかった。従って、これは、摺動面の特性にプラスに作用する。カーボン繊維が布地を構成することにより、一部材のセグメント体全体の強度値が高められる。
【0015】
強化繊維として40〜60%のカーボン繊維の重量割合が、高い強度及び軸受け特性を達成するために好ましいことがわかった。更に好ましくは、45〜55%のカーボン繊維の重量割合が有利であるとわかった。
【0016】
複合材料が、50%のカーボン繊維の重量割合が、傾倒セグメントの強度特性及び軸受け特性のために特に有利であることがわかった。ポリエーテルケトンの代わりに、ポリエーテルエーテルケトン又はポリアクリルエーテルケトンをカーボン繊維内で使用することが、特に有利であることもわかった。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、セグメント体が、圧縮によって成形され、これにより、滑り軸受の良好な強度特性及び運転特性に寄与する比較的高い密度を備える。
【0018】
傾倒セグメント滑り軸受に関する課題は、請求項7の上位概念と関係して、傾倒セグメントが、請求項1〜6のいずれか1項により形成されていること、によって解決される。
【0019】
傾倒セグメントの支持リングが、前記セグメントを備えることにより、傾倒セグメント滑り軸受は、前記特徴及び利点を備える。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、傾倒セグメントが、ラジアル軸受のラジアル傾倒セグメントとして形成され、それぞれ1つの凹の摺動面を備える。また、傾倒セグメントを、アキシャル軸受のアキシャル傾倒セグメントとして形成し、傾倒セグメントが、それぞれ1つの平坦な摺動面を備えること、が可能である。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、摺動面側の軸受け面が、固い保護層−例えばコバルト(Co)及びクロム(Cr)の成分を有するタングステンカーバイドから成る−を備える。タングステンカーバイドから成る保護層により、回転する軸受部分、例えば軸又は軸ディスクの軸受け面は、その運転特性において、特に摩耗に関して改善される。コバルト(Co)及び/又はクロム(Cr)の成分を有するタングステンカーバイド(WC)をベースとするこのような層は、特に高速フレーム溶射(HVOF)によって取り付けることができる。
【0022】
本発明の別の特徴及び利点は、以下の特別な説明及び本発明の好ましい実施形態を模範的に図解した図面からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ラジアル滑り軸受として形成された傾倒セグメント滑り軸受の半分を断面にした正面図
図2】破線で示した軸と、線II−IIに沿って切断した図1の傾倒セグメント滑り軸受の側面図
図3】ラジアル傾倒セグメントとして形成された図1の傾倒セグメントの立体的な拡大図
図4】方向IVから見た図3の傾倒セグメントの正面図
図5】線V−Vに沿って切断した図4の傾倒セグメントの側面図
図6】アキシャル滑り軸受として形成された傾倒セグメント滑り軸受の正面図
図7】アキシャル傾倒セグメントとして形成された図6の傾倒セグメントの拡大図の形態の正面図
図8】方向VIIIから見た図7の傾倒セグメントの側面図
図9】方向IXから見た図8の傾倒セグメントの背面図
図10】方向Xから見た図9の傾倒セグメントの側面図
図11】破線で示した軸カラーと、方向XIから見た図6の傾倒セグメント滑り軸受の側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
傾倒セグメント滑り軸受1は、実質的に1つの支持リング2と複数の傾倒セグメント3から成る。
【0025】
傾倒セグメント滑り軸受1は、ラジアル軸受4として形成され、その支持リング2は、その内面5に、複数(この例では5個)の傾倒セグメント3を備える。相応に、傾倒セグメント3は、ラジアル傾倒セグメント6として形成されている。ラジアル傾倒セグメント6は、支持リング2の内面5側の外面7を備え、ラジアル傾倒セグメント6の外面7の半径は、支持リング2の内面5の半径よりも小さい。外面7とは反対側の内側に、ラジアル傾倒セグメント6は、摺動面8を備える。ラジアル傾倒セグメント6の摺動面8は、回転する軸10の軸受け面9と接触している。
【0026】
ラジアル傾倒セグメント6は、要素11を備え、この要素を介して、ラジアル傾倒セグメントは、ネジ12によって支持リング2に固定されている。要素11により、ラジアル傾倒セグメント6に、傾倒の可能性が与えられる。
【0027】
回転する軸10の軸受け面9は、コバルト(Co)及び/又はクロム(Cr)の成分を有するタングステンカーバイド(WC)をベースとする詳細には図示してない保護層を備えている。
【0028】
図6の実施例は、1つの傾倒セグメント滑り軸受1’、1つの支持リング2’及び複数(この例では8個)の傾倒セグメント3’から成る。傾倒セグメント滑り軸受1’は、アキシャル軸受14として形成され、支持リング2’は、リング状の後壁を備え、この後壁に、ウェブ17を有するアキシャル傾倒セグメント16として形成された傾倒セグメント3’が当接する。アキシャル傾倒セグメント16は、そのウェブ17とは反対側の正面に、平坦な摺動面18を備え、この摺動面は、回転する軸カラー10’の平坦な軸受け面9’に当接する。アキシャル傾倒セグメント16は、横の溝19を備え、これら溝に、アキシャル傾倒セグメント16用の支持部を構成する後壁15に配置された固定要素20が係合する。
【0029】
回転する軸10カラー’の軸受け面9’は、コバルト(Co)及び/又はクロム(Cr)の成分を有するタングステンカーバイド(WC)をベースとする図示してない保護層を備えている。
【0030】
傾倒セグメント3は、要素11及びネジ12なしでセグメント体13を構成する。傾倒セグメント3’は、アキシャル傾倒セグメント16のウェブ17なしでセグメント体13’を構成する。
【0031】
セグメント体13,13’は、カーボン繊維以外にポリエーテルエーテルケトンを含む複合材料から成る。この場合、カーボン繊維は、複合材料の50%の重量割合を備える。この場合、カーボン繊維は、セグメント体13,13’の摺動面8,18に対して輪郭平行な整向を備える布地を構成する。
【0032】
当然、特別な説明で議論され、図に示した実施形態は、本発明の図解の実施例であるに過ぎない。ここでの開示に照らして、当業者には、広範なバリエーションの可能性が提供されている。
【符号の説明】
【0033】
1,1’ 傾倒セグメント滑り軸受
2,2’ 支持リング
3,3’ 傾倒セグメント
4 ラジアル軸受
5 2の内面
6 ラジアル傾倒セグメント
7 6の外面
8 6の摺動面
9 10の軸受け面
9’ 10’の軸受け面
10 軸
10’ 軸カラー
11 6の要素
12 ネジ
13,13’ セグメント体
14 1’のアキシャル軸受
15 14の後壁
16 アキシャル傾倒セグメント
17 16のウェブ
18 16の摺動面
19 16の溝
20 固定要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11