(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(a)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は(a)成分として、前記一般式(i)で示される化合物〔以下、(a−i)成分という〕、前記一般式(ii)で示される化合物〔以下、(a−ii)成分という〕、及び前記一般式(iii)で示される化合物〔以下、(a−iii)成分という〕の3つの4級アンモニウム塩を含有する。
【0015】
前記一般式(i)、(ii)及び(iii)で示される式中、R
1は、柔軟効果の観点から、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
R
2は、柔軟基剤合成効率の観点から、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0016】
R
3は、柔軟効果及び抗菌効果の観点から、それぞれ独立に、炭素数13以上21以下の飽和炭化水素基及び炭素数13以上21以下の不飽和炭化水素基から選ばれる1種以上の炭化水素基であり、好ましくは炭素数15以上19以下の飽和炭化水素基及び炭素数15以上19以下の不飽和炭化水素基から選ばれる1種以上の炭化水素基である。
【0017】
X
−は陰イオン基であり、ハロゲンイオン、好ましくは塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンから選ばれる陰イオンがより好ましく、メチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンがより好ましい。
【0018】
(a)成分において、(a−i)/[(a−i)+(a−ii)+(a−iii)]の質量比は、抗菌効果の観点から、0.05以上であり、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.12以上であり、そして、0.40以下であり、好ましくは0.35以下であり、より好ましくは0.30以下である。
【0019】
(a)成分において、(a−ii)/[(a−i)+(a−ii)+(a−iii)]の質量比は、柔軟効果及び抗菌効果の観点から、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.45以上であり、そして、好ましくは0.90以下である。
【0020】
(a)成分は、抗菌効果の観点から、炭化水素基R
3の不飽和率が10質量%以上80質量%以下である。ここで言う不飽和率とは、(a)成分のR
3COOをR
3COOHとしたとき、全R
3COOH中の、R
3が不飽和炭化水素基であるR
3COOHの割合を意味する。不飽和率は、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、そして、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0021】
なお、本発明では、(a)成分についての不飽和率は、脂肪酸をメチルエステル化したものをGC等を用いた周知方法を用いて測定することができる。不飽和率は全脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の質量比率とする。不飽和率は合成時に用いる脂肪酸又は脂肪酸エステルの脂肪酸部分の構造に基づくものであってもよい。
【0022】
本発明の液体柔軟剤組成物の調製にあたっては、(a)成分として、(a−i)成分、(a−ii)成分及び(a−iii)成分を本発明の条件で含有する混合物を用いることが好ましい。例えば、炭素数1以上3以下、更に炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基を有するトリアルカノールアミン、好ましくはトリエタノールアミンと、脂肪酸との脱水エステル化反応又は前記アミンと脂肪酸低級アルコールエステルとのエステル交換反応により、エステルアミンを製造し、続いてアルキル化剤により4級化反応を行うことで調製される反応生成物を(a)成分を含む成分として使用することができる。その際、脂肪酸として炭素数又は不飽和度の異なる脂肪酸の混合物〔R
3COOH(R
3は前記の通り。)の混合物〕又は脂肪酸低級アルコールエステルとして脂肪酸部分の炭素数又は不飽和度の異なる脂肪酸低級アルコールエステルの混合物〔R
3COOR’(R
3は前記の通り。R’は好ましくはメチル基又はエチル基である。)の混合物〕を用いることで、(a)成分の条件を満たす反応生成物を製造することができる。
【0023】
具体的に用いることが好ましい脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はリノール酸あるいはこれらの混合物から選ばれる脂肪酸であるか、もしくは、パーム油、大豆油又はオリーブ油由来の組成を持つ脂肪酸が好ましい
【0024】
前記トリアルカノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸低級アルコールエステルとを用いる製法では、反応生成物中の(a−i)成分、(a−ii)成分及び(a−iii)成分の組成は、前記トリアルカノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸低級アルコールエステルとの反応比率や反応温度及び反応時間により調整することができる。本発明では、(a)成分を含有する反応生成物を、トリエタノールアミンと脂肪酸とで脱水エステル化反応を行い、続いてジメチル硫酸又はジエチル硫酸により4級化する方法で製造することが好ましい。
【0025】
前記トリアルカノールアミンと脂肪酸とのエステル化反応は公知の方法を用いることができる。前記トリアルカノールアミン、好ましくはトリエタノールアミンと脂肪酸とを、(脂肪酸の全モル数)/(トリアルカノールアミンのモル数)の比率(以下、アシル化度という)が、好ましくは1.55以上、より好ましくは1.60以上、そして、好ましくは2.05以下、より好ましくは2.00以下となるように反応させる。このような制限された比率で反応させることで、(a)成分における(a−i)成分、(a−ii)成分及び(a−iii)成分の質量比を満たす反応生成物が得やすくなる。
【0026】
本発明において(a)成分の製造に用いる脂肪酸は、抗菌効果の観点から、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はリノール酸あるいはこれらの混合物から選ばれる脂肪酸であるか、もしくは、パーム油、大豆油又はオリーブ油由来の組成を持つ脂肪酸が好ましい。(a)成分は、R
3として、炭素数13以上、好ましくは15以上、そして、21以下、好ましくは19以下の飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基から選ばれる複数の基を有する。
【0027】
(a)成分の製造に用いる脂肪酸又は脂肪酸混合物の酸価は、組成物の液性の点で、好ましくは180mgKOH/g以上、より好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは240mgKOH/g以下、より好ましくは210mgKOH/g以下である。
【0028】
本発明の液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は、1質量%以上25質量%以下である。洗濯1回当たりの使用量を少なくできる点から、(a)成分の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましく8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0029】
<(b)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(b)成分として、前記一般式(iv)で示される化合物を含有する。
【0030】
前記一般式(iv)で示される式中、R
6は、抗菌効果の観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が5以上、好ましくは7以上、そして、19以下、好ましくは17以下である。
【0031】
R
7は、炭素数1以上6以下のアルキレン基又は−(O−R
10)
n−である。R
7がアルキレン基である場合の炭素数は、抗菌効果の観点から、好ましくは2以上3以下である。R
7が−(O−R
10)
n−である場合、R
10は炭素数2以上3以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、nは平均付加モル数を表し、好ましくは1以上10以下、より好ましくは5以下の数である。
【0032】
Tは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、又はフェニレン基である。
mは、0又は1の数である。
【0033】
R
8は、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基である。
R
9は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基又はフェネチル基である。
【0034】
Z
−は、陰イオン基であり、好ましくはハロゲンイオン、脂肪酸イオン及び炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンから選ばれる陰イオン基である。
【0035】
本発明の(b)成分としては、長鎖アルキル基の炭素数が好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下であって、窒素原子に結合する残りの基が、独立して炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基であるモノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキルアンモニウム塩、好ましくは、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩又はアルキルジメチルエチルアンモニウム塩であって、長鎖アルキル基が炭素数10又は12の直鎖アルキル基であって当該アルキル基の窒素原子と結合する炭素原子が第1炭素原子であるモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩又はモノ長鎖アルキルジメチルエチルアンモニウム塩を挙げることができる。
また、本発明の(b)成分としては、長鎖アルキル基の炭素数が好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下である長鎖アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、又は長鎖アルキル基の炭素数が好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下である長鎖アルキルフェネチルジメチルアンモニウム塩を挙げることができる。
(b)成分の対イオンである陰イオン基は、好ましくは塩化物イオン、メチル硫酸エステルイオン、エチル硫酸エステルイオンであり、より好ましくは塩化物イオンである。
(b)成分としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム及び塩化ラウリルベンジルジメチルアンモニウムから選ばれる1種以上が好ましい。
【0036】
本発明の液体柔軟剤組成物中の(b)成分の含有量は、0.2質量%以上4質量%以下である。(a)成分の分解抑制の観点から、あるいは抗菌効果及び風合いの観点から、(b)成分の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0037】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(a)成分と(b)成分の質量比(a)成分/(b)成分が、抗菌性能及び溶液安定性の観点から、好ましくは3以上15以下である。(a)成分/(b)成分の質量比は、より好ましくは3.5以上、更により好ましくは4以上であり、そして、より好ましくは13以下、更により好ましくは12以下である。
【0038】
<(c)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物には(c)成分として、前記一般式(v)の化合物を含有する。
前記一般式(v)で示される式中、R
12は、抗菌効果の観点から炭素数8以上、好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基である。Fは、炭素数2以上3以下のアルキレン基、すなわち、エチレン基、又はプロピレン基であり、好ましくは炭素数2のアルキレン基、すなわち、エチレン基である。qは平均付加モル数を表し、3以上、好ましくは4以上、そして、7以下、好ましくは6以下の数である。
【0039】
(c)成分を構成しているアルキレンオキシ基の付加モル数の異なる化合物のうち、アルキレンオキシ基FOが付加していない化合物、すなわち(c)成分を構成している前記一般式(v)で示される化合物のアルキレンオキシ基FOの平均付加モル数qを付加モル数q’と書き換えた場合にq’が0である化合物の含有量が、抗菌効果の観点から、(c)成分中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、保存安定性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。q’が0の化合物は、脂肪族アルコールである。
【0040】
本発明の液体柔軟剤組成物中の(c)成分の含有量は、0.1質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、そして、8.0質量%以下、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0041】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(b)成分と(c)成分の質量比(b)成分/(c)成分が、抗菌性能及び溶液安定性の観点から、好ましくは0.3以上40以下である。(b)成分/(c)成分の質量比は、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上であり、そして、より好ましくは38以下、更に好ましくは35以下である。
【0042】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(a)成分と(c)成分の質量比(a)成分/(c)成分が、抗菌性能及び溶液安定性の観点から、好ましくは3以上15以下である。(a)成分/(c)成分の質量比は、より好ましくは3.5以上、更により好ましくは3.7以上であり、そして、より好ましくは13以下、更により好ましくは12以下である。
【0043】
〔任意成分〕
本発明の液体柔軟剤組成物は、任意成分として、(c)成分とはアルキレンオキシ基の付加モル数が異なる非イオン性界面活性剤〔以下、(d)成分という〕、キレート剤〔以下、(e)成分という〕、及び香料組成物〔以下、(f)成分という〕、水溶性有機溶剤〔以下、(g)成分という〕から選ばれる1種以上の成分を含有することが好ましい。
また、本発明の液体柔軟剤組成物は、任意成分として、無機電解質、油剤、酸化防止剤、染料、防腐剤、シリコーン化合物、ポリマー化合物、(a)成分の安定化に好適なpHに調整するためのpH調整剤を含有することが出来る。
【0044】
<(d)成分>
更に本発明の液体柔軟剤組成物には、保存安定性の観点から、(d)成分として、下記式(vi)で示される、(c)成分とはエチレンオキシ基の平均付加モル数が異なる、非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
R
13−O−(C
2H
4O)
s−H (vi)
〔式中、R
13は、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。sは、平均付加モル数であって、10以上、好ましくは12以上、そして、50以下、好ましくは40以下の数である。〕
【0045】
(d)成分の非イオン界面活性剤の組成物中の含有量は0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の液体柔軟剤組成物が(d)成分を含有する場合、(c)成分の含有量と(d)成分の含有量との質量比である(d)/(c)は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.35以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下、更により好ましくは1以下である。
【0047】
<(e)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、水中の銅や鉄などの金属イオンやアルカリ土類金属イオンを捕捉するために、(e)成分として、キレート剤を含有することが好ましい。
【0048】
本発明において用いられるキレート剤は、水中の銅や鉄などの金属イオンやアルカリ土類金属イオンを捕捉する目的以外に、本発明の液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させるためや柔軟剤組成物の変色や染料の褪色を抑制するためにも用いられる。
【0049】
(e)成分としては、例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、更にはエチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、クエン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましく、トリロンM(登録商標)とし市販されているメチルグリシン二酢酸が更により好ましい。メチルグリシン二酢酸はトリロンMリキッド(商標名)とし市販されている。これらのキレート剤は、後述するpH調整剤としての役割を果たす場合もある。
【0050】
(e)成分のキレート剤の組成物中の含有量は0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、そして、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0051】
<(f)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、組成物自体の賦香のためのみならず、繊維製品への賦香目的のために香料組成物を含有することが好ましい。
本発明において用いられる香料組成物は、柔軟剤組成物に対して消費者に高い嗜好性を与えるために用いられる。嗜好性とは、高揚感や鎮静感、爽快感、など単に心地良い感情を与える効果だけではなく、汗臭やタバコ臭、生乾き臭など不快な臭いを防臭する効果、冷涼作用や温熱作用、催眠作用、催淫作用、抗うつ作用、抗菌作用、ダイエット作用など機能的な効果についても含み得る。香料成分としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料、特表平10−507793号公報記載の香料を使用することができる。
【0052】
香りの質や強度、柔軟剤系での安定性などの点から、適宜香料成分を選択して用いる。
以下、本発明に配合できる、香料成分として用いられる化合物を、香料分野で示される分類に分けて挙げると次の通りになる。テルペン化合物系香料成分として、リモネン、p−サイメン、α−ピネン、β−ピネン、β−カリオフィレンが挙げられ、アルコール化合物系香料成分として、シス−3−ヘキセノール、トランス−2−ヘキセノール、メチルトリメチルシクロペンテニルブテノール、ジヒドロミルセノール、l−メントール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロゲラニオール、ジメチルベンジルカルビノール、β−フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シンナミックアルコール、アニスアルコール、ファルネソール、ネロリドール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、o,t−ブチルシクロヘキサノール、p,t−ブチルシクロヘキサノール、サンダルマイソールコア(2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)(花王(株)製)、バグダノール(IFF社製)、ジャバノール(ジボダン社製)が挙げられ、エステル化合物系香料成分として、酢酸ベンジル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸リナリル、酢酸ネリル、酢酸o,t−ブチルシクロヘキシル、酢酸p,t−ブチルシクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸テトラヒドロゲラニル、酢酸テルペニル、酢酸イソボルニル、酢酸l−メンチル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、酢酸スチラリル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸ヘキシル、酢酸シンナミル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸シトロネリル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸アリル、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、酪酸イソアミル、酪酸アミル、酪酸アリル、イソ酪酸フェノキシエチル、イソ酪酸ゲラニル、イソ吉草酸ゲラニル、カプロン酸エチル、カプロン酸アリル、エナント酸エチル、エナント酸アリル、オクタン酸エチル、アンスラニル酸メチル、安息香酸シス−3−ヘキセニル、安息香酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸2−フェニルエチル、メチルジヒドロジャスモネート、クマリン、γ−オクタラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−デカラクトン、γ−ノナラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、シクロペンタデカノリド、シクロペンタデセノリド(ハバノライド、フィルメニッヒ社製)、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、11−オキサ−16−ヘキサデカノリド(ムスクR−1、ジボダン社製)、10−オキサ−16−ヘキサデカノリド(オキサリド、高砂香料工業社製)、12−オキサヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート(ムスクC−14)が挙げられ、アルデヒド化合物系香料成分として、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、10−ウンデセナール、ドデカナール、シトラール、シトロネラール、アニスアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、マイラックアルデヒド、リリアール、リラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、ヘリオナールが挙げられ、ケトン化合物類として、フロラロゾン、l−カルボン、メントン、シスジャスモン、ゲラニルアセトンが挙げられ、更にはダマスコン類、ダマセノン類、α−ダイナスコン、イオノン類、メチルイオノン類、β−メチルナフチルケトン、イソEスーパー、ラズベリーケトン、マルトール、エチルマルトール、カシュメラン(IFF社製)、5−シクロヘキセデセノン−1−オン(ムスクTM−II)が香料として知られており、またエーテル化合物系香料成分として、アネトール、オイゲノール、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、1,8−シネオール、セドリルメチルエーテル、アンブロキサン(3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン)、エトキシメチルシクロドデシルエーテル(ボアサンブレンフォルテ、花王(株)製)、含窒素化合物系香料成分として、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、インドール、アセチルセドレン、アントラニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチル、オーランチオール、ペオニル(ジボダン社製)等を挙げることが出来る。
【0053】
この中でもエステル化合物系香料成分は、組成物の保存安定性の観点から(f)成分の香料組成物中に30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましい。
【0054】
(f)成分の香料組成物には、香りの持続性、残香性を目的として、香料をマイクロカプセル化して配合してもよい。香料のマイクロカプセルは、芯物質の香料を壁材で包んだ球状物質であり、その役割は芯物質の香料を保護し、カプセルに物理的な力が加わった際にカプセルの壁が破れて芯物質の香料を放出するものである。
【0055】
また、香りの持続性、残香性を目的として、ケイ酸と、香料として用いられるアルコール(以下、「アルコール性香料」という。)とのエステル、例えば、特開2009−256818号公報の一般式(1)で表される化合物などを用いることができる。アルコール性香料としては、下記i)〜iii)のアルコールが挙げられる。
【0056】
i)logPが1以上5以下の脂肪族アルコール
具体的には、シス−3−へキセノール(1.4)、ゲラニオール(2.8)、ネロール(2.8)、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール(3.0)、メントール(3.2)、シトロネロール(3.3)、ロジノール(3.3)、9−デセノール(3.5)、テトラヒドロリナロール(3.5)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、4−メチル−3−デセン−5−オール(3.7)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)等が挙げられる。ここで、( )内は、logP値〔以下のii)とiii)についても同様〕である。
【0057】
ii)logPが1以上5以下の芳香族アルコール
具体的には、アニスアルコール(1.0)、ラズベリーケトン(1.1)、フェニルエチルアルコール(1.2)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、ジメチルベンジルカルビノール(3.0)、フェニルエチルメチルエチルカルビノール(3.0)、3−メチル−5−フェニルペンタノール(3.2)、チモール(3.4)等が挙げられる。
【0058】
iii)logPが1以上5以下の、飽和又は不飽和の環式アルコール
具体的には、p−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、o−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、l−メントール(3.2)、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール(3.3)、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)エタノール(3.6)、サンタロール(3.9)、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(3.9)ベチベロール(4.2)等が挙げられる。
【0059】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告されており、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"等で計算することができる。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと共に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。
【0060】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch,P.G.Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値を、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。
【0061】
<(g)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、組成物の安定性や粘度の観点から、(g)成分として、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。(g)成分としては、柔軟剤に配合することが知られている水溶性の有機溶剤が挙げられる。(g)成分について「水溶性有機溶剤」とは100gの20℃の脱イオン水に対して20g以上溶解することをいう。(g)成分としては、具体的には、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、エタノール等を挙げることができる。好ましくはエチレングリコール及びエタノールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤である。液体柔軟剤組成物の粘度が高い場合や相安定性を調整したいときは水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。エタノール等の有機溶剤は(a)成分合成時のキャリーオーバーとして含まれる場合がある。本発明の液体柔軟剤組成物は殆ど水溶性有機溶剤を含まない場合でも安定性に優れることから、(g)成分を極力低減させることができ、溶剤の揮発に安定性の問題を抑制することができる。(g)成分の組成物中の含有量は、例えば(a)成分のキャリーオーバー濃度以下であってもよく、例えば、好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更により好ましくは1質量%以下であってもよい。
【0062】
<その他の任意成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、無機電解質を含有してもよい。無機電解質は、20℃の水100gに5g以上、溶解するものが好ましい。
無機電解質は、柔軟剤組成物を使用に適した粘度に調整するのに好ましく用いられる。例えば、陽イオンが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる物質のイオンであり、陰イオンが、ハロゲン化合物及び硫酸塩から選ばれる物質のイオンである無機塩が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。ハロゲン化合物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、が挙げられる。
無機電解質は、具体的には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、及び硫酸マグネシウムから選ばれる1種以上の無機電解質が挙げられる。
【0063】
なお本発明の液体柔軟剤組成物では、無機電解質を実質含有しない場合であっても十分な安定性を得ることができる。
【0064】
本発明の液体柔軟剤組成物は、油剤を含有することができる。油剤は、繊維製品に更に優れた柔軟性能を付与するために用いられ、また(a)成分の加水分解抑制にも効果を有する。例えば、炭素数14以上の炭化水素や脂肪族アルコールが挙げられ、好ましくはオクタデカン、流動パラフィン、ステアリルアルコール等が挙げられる。また、多価アルコールと脂肪酸のエステル化物等が挙げられ、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。柔軟性能向上の点から、脂肪酸の種類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、及びその混合物が好ましい。保存安定性を高めるためには炭素数12以上22以下の脂肪酸と炭素数6以上22以下の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられ、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、及びステアリン酸ステアリル等を用いることが好ましい。油剤を含有する場合は、組成物中の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0065】
本発明の液体柔軟剤組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、例えば、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤である。分子内にフェノール基を有する酸化防止剤は、香料の臭いの変化を抑制する為に用いられる。酸化防止剤を香料と併用すると、臭いの変化を抑制できるが、酸化を受けたフェノール基を有する酸化防止剤が着色されることで、柔軟剤組成物の変色が促進されることから、酸化防止剤の配合量は、酸化の影響を受けやすい香料成分とその含有量とともに、十分に確認した上で使用される。
入手の容易性の点から、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。変色抑制の点から、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤は(a)成分などの他の基材の保存安定性のために配合されていることがあり(a)成分を配合することで、本発明の液体柔軟剤組成物に混入することもある。酸化防止剤を含有する場合は、組成物中の含有量は、0.005質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0066】
本発明の液体柔軟剤組成物には、美観のため、或いは基材由来の色や着色のマスキングのための染料を含有してもよい。染料は、柔軟剤組成物に対して消費者に高い嗜好性を与えるために用いられる。例えば、カラーインデックス酸性赤色染料、カラーインデックス酸性黄色染料及びカラーインデックス酸性青色染料から選ばれる1種又は2種以上の染料である。
カラーインデックス酸性赤色染料の具体例としては、C.I.Acid Red 18C.I.Acid Red 27、C.I.Acid Red52、C.I.Acid Red 82、C.I.Acid Red114、C.I.Acid Red 138、C.I.AcidRed 186が挙げられる。
カラーインデックス酸性黄色染料の具体例としては、C.I.Acid Yellow 1 、C.I.Acid Yellow 7、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Yellow 141が挙げられる。
カラーインデックス酸性青色染料の具体例としては、C.I.Acid Blue 5、C.I.Acid Blue 9、C.I.Acid Blue 74が挙げられる。
【0067】
なお、本発明では、これら以外の染料を使用することもできる。それらの染料としては、アルコキシル化アントラキノン高分子着色剤、アルコキシル化トリフェニルメタン高分子着色剤、アルコキシル化チオフェン高分子着色剤があげられる。
【0068】
染料はキレート剤と併用することで、香料又は香料及び酸化防止剤を含有する柔軟剤組成物の変色を抑制することが出来る。変色抑制の点で、カラーインデックス酸性赤色染料、及びカラーインデックス酸性黄色染料から選ばれる1種又は2種以上の染料が好ましい。染料を含有する場合は、染料の性質にもよるが、組成物中の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0069】
本発明において用いられる防腐剤は、柔軟剤組成物に防腐性を与えるために用いられる。例えば、ビグアニド系化合物、イソチアゾリン系化合物、イソチアゾリノン系化合物が挙げられる。具体例としては、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが挙げられ、それぞれ市販品として、「プロキセルIB(登録商標)」、「ケーソンCG(登録商標)」、「プロキセルBDN(登録商標)」を用いることもできる。
本発明の柔軟剤組成物は防腐剤を含有することが好ましく、含有する場合は0.001質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0070】
本発明には場合により、或いは繊維製品への触感に新たな印象を加えるためにシリコーン化合物を含有することができる。シリコーン化合物は、繊維製品に更に優れた柔軟性能を付与するために用いられる。例えば、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。柔軟効果の観点から、中でもジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。シリコーン化合物を含有する場合は0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0071】
本発明には重合性モノマーを重合してなる構成単位を有する、ポリマー化合物(シリコーン以外のポリマー化合物)を含有することができる。ポリマー化合物は、柔軟剤組成物の粘度調整や、柔軟剤仕上げ時の残存洗剤成分を捕捉するために用いられる。具体例としては、カチオン性ポリマーとして、特に制限されるものではないが、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、又はジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等をモノマーとして重合し、それらを酸により中和した酸中和物、若しくは4級化剤により4級化した4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0072】
カチオン性ポリマーの中和に用いる酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸などの有機酸が挙げられる。
カチオン性ポリマーの4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等のアルキル硫酸一般的なアルキル化剤が挙げられる。
ポリマーとしては、ホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー等、制限されるものではない。ポリマー化合物はカチオン性ポリマーが好ましい。
ポリマー化合物を含有する場合、含有量は、組成物中、0.005質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0073】
本発明の液体柔軟剤組成物のpHは、(a)成分の加水分解安定性の点から、25℃で、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って25℃において測定する。
【0074】
本発明の液体柔軟剤組成物のpHの調整に用いられるpH調整剤は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、プロピオン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クロトン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、ポリアクリル酸等の有機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン等の無機塩基、もしくは有機塩基が挙げられる。pH調整剤は、液体柔軟剤組成物のpHが後述する範囲となるように用いられるのが好ましい。
【0075】
本発明の液体柔軟剤組成物の残部は、水である。すなわち、本発明の液体柔軟剤組成物は、水を含有する。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水などを用いることができる。
【0076】
本発明の液体柔軟剤組成物は、乳濁状態であってよい。本発明において、乳濁状態の液体柔軟剤組成物とは、配合成分が液体柔軟剤組成物中で可視光を散乱する程度の大きな粒子を形成することで、可視光を散乱し、目視上濁った状態の液体柔軟剤組成物を表す。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れた際に、紫外可視分光光度計を用いて測定された、試料の可視光線透過率(波長660nm)が25%未満である液体柔軟剤組成物を表す。
【0077】
本発明の液体柔軟剤組成物は、衣料、寝具、布帛、その他の布製品などの繊維製品用として好適である。
【0078】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(a)成分と、(b)成分と、(c)成分と、任意に(d)成分、(e)成分、(f)成分、及び(g)成分から選ばれる成分と、必要により更なる他の任意成分と、水とを混合して製造することができる。(a)成分、(b)成分及び(c)成分の原料物質は、それぞれ、液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量が1質量%以上25質量%以下、(b)成分の含有量が0.2質量%以上4質量%以下、(c)成分の含有量が0.1質量%以上8質量%以下となるように用いられる。また、(d)成分などの任意成分も、好ましくは前記した含有量や質量比となるように用いられる。
【0079】
<柔軟化処理方法>
本発明の液体柔軟剤組成物は、繊維製品に柔軟効果を付与すると共に、好ましくは木綿又は木綿を含む繊維製品の抗菌性を付与するために用いられる。
処理方法としては、水を媒体として繊維製品に接触させる方法が好ましく、具体的には、乾燥時の繊維製品1.0kgに対して、本発明の液体柔軟剤組成物を5ml以上40ml以下分散させた水分散液を接触させることで、抗菌効果を得ることができる。この場合、繊維製品は水道水で十分に漬かるだけの量が必要であり、例えば浴比〔繊維製品(kg)/処理液(L)〕として5以上60以下として使用される。本発明の液体柔軟剤組成物を水で希釈した分散液のpHは6.0以上8.0以下であることが好ましい。
乾燥した衣料に本発明の液体柔軟剤組成物を水で希釈した分散液に浸けてもよく、洗濯工程の濯ぎ時の仕上工程で添加してもよい。その場合は脱水して乾燥することで、本発明の抗菌効果が付与された繊維製品を得ることができる。したがって、本発明の液体柔軟剤組成物は、更に詳細に用途を限定する場合、本発明の目的から細菌増殖抑制防止剤組成物である。
【実施例】
【0080】
〔(a)成分〕
(a−1):下記合成例1で得られた第4級アンモニウム塩混合物
【0081】
<合成例1:(a−1)の合成>
下記の組成からなる脂肪酸混合物(R
3COOHの混合物)と、トリエタノールアミンとを、反応モル比1.65/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で、脱水縮合反応させて、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアミンを主成分とする縮合物を得た。
次に、この縮合物のアミン価を測定し、該縮合物に対してジメチル硫酸を0.96当量用い、4級化を行ない、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートを主成分とし、エタノールを10質量%含有する第4級アンモニウム塩混合物を得た(以下、(a−1)という。)。前記調製手順や反応条件は、特開2010−209493号公報の合成例2に従って行った。
【0082】
(a−1)を製造するための反応に用いた脂肪酸混合物の組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:27質量%
炭素数18で、不飽和基を2つ有する脂肪酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体の質量比は85/15(
1H-NMRによる、積分比)である。
(a−1)の不飽和率は30質量%であった。
【0083】
(a−1)が含む(a)成分の第4級アンモニウム塩中、(a−i)成分の割合は20質量%、(a−ii)成分の割合は40質量%、(a-iii)成分の割合は11質量%であった。従って、(a−1)は、(a−i)/[(a−i)+(a−ii)+(a−iii)]=0.28、(a−ii)/[(a−i)+(a−ii)+(a−iii)]=0.56であった。
【0084】
なお(a−i)、(a−ii)及び(a−iii)の割合はHPLCを用い下記条件により測定した。
<HPLC条件>
カラム:Inertsil NH2 5μm(4.6×250mm) 室温
移動相:0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)のヘキサン溶液:メタノール:THF(テトラヒドロフラン)=85:10:5
流速:0.8mL(0−10分)−1.2mL(10−55分)−0.8mL(55−60分)
注入:20μL
検出:CAD
【0085】
また、(a−1)は、(a−i)成分、(a−ii)成分、(a−iii)成分、エタノール以外に、4級化されなかった3級アミンのジエステル構造体を2質量%、同じく3級アミンのトリエステル構造体を10質量%、脂肪酸を2質量%、微量のトリエタノールアミン及びその4級化物等を含んでいた。
【0086】
なお、液体柔軟剤組成物の調製にあたり、(a−1)は、(a−i)、(a−ii)、(a−iii)、脂肪酸、エタノール及びその他微量成分を含む混合物として配合されるが、表中の(a−1)の質量%は、(a−i)、(a−ii)及び(a−iii)に基づく質量%(すなわち、(a)成分としての質量%)を示し、その他の成分の量は、イオン交換水の残部に加えた。
【0087】
〔(b)成分〕
(b−1):塩化ベンザルコニウム〔アルキル(C
12−16)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド(サニゾールB−50(花王(株))〕
(b−2):塩化ラウリルトリメチルアンモニウム
【0088】
〔(c)成分〕
(c−1):非イオン界面活性剤(オキシエチレン基の平均付加モル数が4モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテル。なおラウリルアルコールの含有比率は8質量%である。)
【0089】
〔(d)成分〕
(d−1):非イオン界面活性剤(オキシエチレン基の平均付加モル数が21モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテル。なおラウリルアルコールの含有比率は0質量%である。)
【0090】
〔(e)成分〕
(e−1):メチルグリシン二酢酸3Na(トリロンMリキッド(登録商標)、BASFジャパン(株))(有効分のメチルグリシン二酢酸3Naが表2の値となるように用いた。)
【0091】
〔(f)成分〕
(f−1):表1に示される香料組成物f1
【0092】
【表1】
【0093】
〔その他の成分〕
(g−1):油剤(パルミチン酸イソプロピル)
(h−1):1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(プロキセルBDN(登録商標)(アーチ・ケミカル・ジャパン(株)製))
【0094】
<乳濁状態の液体柔軟剤組成物の製造方法>
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、乳濁状態の液体柔軟剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。
300mLビーカーに、乳濁状態の液体柔軟剤組成物のでき上がり質量が200gとなるのに必要な量の90質量%相当量のイオン交換水と、(e)成分、(h−1)を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。これらの成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて下記の攪拌羽根を用いて攪拌した。
60±2℃の温度に調温した上記成分を含むイオン交換水を、直径が5mmの攪拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根(羽根の数:3枚、羽根の長辺/短辺:3cm/1.5cm、羽根の設置:回転面に対して45度の角度)で撹拌(300r/m)しながら、65℃で(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(g)成分とともに、加熱溶解させた(a)成分を3分間掛けて投入した。投入終了後に15分間撹拌した。
その後撹拌しながら5℃のウォーターバスを用いて、内容物の温度が30±2℃になるまで冷却した。
(f)成分を投入し5分間攪拌した。出来上がり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間攪拌した。塩酸水溶液でpHを最終調整した。
【0095】
表2に記載の衣料用液体柔軟剤組成物を用い、以下の方法で、衣料に対する抗菌性の付与効果を評価した。結果を表2に示す。なお比較例6はゲル化したため、抗菌性の付与効果の評価を行わなかった。また実施例に記載の液体柔軟剤組成物は、繊維製品に対して柔軟性を付与するものであった。
【0096】
〔衣料の抗菌性の評価方法〕
(1)試験布の作製
6cm×6cmの木綿平織布(谷頭商店より購入した綿布2003布)を、表2に記載の各液体柔軟剤成物にて処理し、抗菌試験に供する試験布を作製した。水は、100℃で120分間煮沸滅菌した脱イオン水に硬度成分を5DH°(Ca/Mg=7/3、質量比)になるように加え、アルカリ度が80mg/Lになるように炭酸水素ナトリウムを加え、塩酸でpHを7に調整した水を用いた。
調整した水600gを撹拌式洗浄力試験機(ターゴトメーター 上島製作所製 MS−8212)に注水し、表2の液体柔軟剤組成物を0.14g投入し、15秒撹拌する。撹拌後、6cm×6cmの木綿平織布を12g投入し、85rpmにて5分間撹拌処理した。撹拌後、二層式洗濯機(HITACHI PS−H35L)で2分脱水し、恒温室(23℃40%)にて12時間平干し乾燥させた。
【0097】
(2)抗菌効果
モラクセラ・オスロエンシスに対する抗菌効果を評価した。菌は、衣料から単離したMoraxella osloensis 41を使用した。
液体柔軟剤成物で処理した試験布0.4gと処理していない試験布0.4gに、それぞれ、菌液(初発菌数1.0×10
9CFU/mL)を0.2mL植菌し、37℃にて18時間静置培養を行った。20mLのLP希釈液(日本製薬(株)製)を加えて超音波を10分間照射し、菌の抽出を行った。抽出液の段階希釈を行い、SCD−LP寒天培地(日本製薬(株)製)にて混釈後、37℃にて静置培養(1日)を行い、得られたコロニー数を計測し、柔軟剤処理していない試験布から得られる生菌数の常用対数値から、各実施例又は比較例の生菌数の常用対数値を引いたもの(対数値)を抗菌活性値とした。この評価では、抗菌活性値が、2.0以上が合格であり、抗菌活性値は高いほど抗菌効果が高いことを意味する。
【0098】
【表2】
【0099】
〔菌由来の悪臭を抑制する効果〕
表2の実施例8と比較例1の液体柔軟剤組成物で処理した布に、表皮ブドウ球菌と基質を添加し、適切な温湿度条件で培養後、発生した悪臭成分の官能評価を行った。菌は、Staphylococcus.epi NBRC150518を使用した。
実施例8と比較例1の液体柔軟剤組成物を用いて、前記〔衣料の抗菌性の評価方法〕の「(1)試験布の作製」と同じ方法で試験布を作製した。作製した試験布0.1gに、L−ロイシン(和光純薬工業株式会社製 特級試薬)の1質量%水溶液を0.1ml滴下した。乾燥後、菌液(初発菌数1.0×10
9CFU/mL)を0.1ml植菌し、37℃にて48時間静置培養を行った。培養後、1N塩酸(和光純薬工業株式会社製)を0.1ml滴下した。滴下後、心身ともに健康であり、臭気判定訓練を受けた熟練者3名によって、処理布を嗅ぎ比べた。結果、3人とも実施例8で処理した処理布が、比較例1で処理した処理布と比較して、明確に悪臭の強さが低いことを確認した。