(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの少なくとも起動および停止を含む予め定める動作を制御する制御手段と、前記手術室内を撮像する撮像手段とをさらに含み、
前記制御手段は、前記撮像手段によって撮像された画像に基づいて、前記予め定める動作に対する指令を入力するための画像認識入力部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空調設備。
【背景技術】
【0002】
手術室を清浄環境に維持するため、手術室内に清浄化した適温の空気を供給する空調設備が用いられる。手術室の空調設備は、日本医療福祉施設協会規格の「病院設備の設計管理指針HEAS−02−2004」に適合するように設計される。前記指針によれば、「一般手術室は、室内の空気清浄度や温度及び湿度に留意するとともに、周囲の諸室より陽圧を維持しなければならない」とされる。
【0003】
図10に、従来の手術室101の空調設備110を示す。このような空調設備110は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0004】
手術室101は、床102、天井103、壁104によって囲まれた空間であり、床102のほぼ中央に手術台105が設けられている。図面には、手術台105上に患者106が仰向けに配置され、手術台105周囲の術者107,108,109によって、患者106の手術が行われている状態を示している。
【0005】
図10に示す従来の空調設備110は、天井103から手術台105の周囲に向かって空気を吹き出す空調系統130を備える。空調系統130は、吹出口131を有するフィルタボックス132と、壁104に近接させて室外に設置され、吸込口133が壁104の下部に配設された空調機134と、この空調機134とフィルタボックス132とを接続するダクト135とを備える。フィルタボックス132内には、空気中の微粒子捕捉用のフィルタ139が吹出口131の近傍に設けられ、吹出口131には、たとえばパンチングメタルから成るカバーが装着される。空調機134は、送風機136および冷却コイル138を内蔵する。
【0006】
空調系統130は、空調機134の送風機136を駆動して吸込口133から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を冷却コイル138で冷却し、冷却後に、ダクト135を通じ、フィルタボックス132へ供給し、吹出口131から手術台105の周囲へ向けて吹き出させる。その際、空気中に含まれる塵埃、細菌、ウィルスなどをフィルタ139によって捕捉し、除去して清浄空気とする。
【0007】
前記空調設備110は、吹出口131から空気を吹き出し、壁104の第2吸込口133から空気を吸い込むので、天井103から床102に向かって降下し、床102に沿って壁104へ向かう空気流が形成される。手術中に発生し空気中に飛散する塵埃や粒子などは、吹出口131から吹き出される下向きの空気流によって床102へ向かって押し流されたのち、上方へ飛散することなく壁104まで搬送され、吸込口133から室外へ吸い出される。
【0008】
前記従来の空調設備110は、空調系統130の吹出口131から清浄化した空気を吹き出させることによって、手術台105の周囲を清浄な環境に保つことができる効果を発揮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の空調設備110は、天井103に設置されたフィルタボックス132から空気を手術台105およびその周囲へ向かって吹き出し、空調機134が、壁104の下部に配設した吸込口133から空気を吸い込む構成であるから、手術室101における空気の主な流れは、天井103から、床102へ向かい、床102に沿って壁104に至るものである。このため、天井103と壁104との境界部140の近傍領域は、空気があまり流動しない停滞領域となる。停滞領域の空気中に含まれる塵埃や細菌などの微粒子は、除去されずに手術室101内に長期間留まる可能性がある。したがって、前記従来の空調設備110は、手術室101内に空気の停滞領域が存在するから、手術室1の清浄度を高めるのが難しいという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、天井と壁との境界部近傍の空気を吸引し、吸引した空気をフィルタユニットへ送給することによって、手術室の清浄度を高めることができる空調設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、壁と天井と床とによって規定され、天井
の各辺と壁との境界部に沿って天井における壁の近傍に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井
の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁の
各入隅部に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、床上に設置される第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材と、
一端部が吸気部材の排気口に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含むことを特徴とする空調設備である。
【0013】
また本発明は、壁と天井と床とによって規定され、天井
の各辺と壁との境界部に沿って壁における天井の近傍に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井
の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁の
各入隅部に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、床上に設置される第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材と、
一端部が吸気部材の排気口に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含むことを特徴とする空調設備である。
【0014】
また本発明は、前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの少なくとも起動および停止を含む予め定める動作を制御する制御手段をさらに含み、前記制御手段が、接触によって前記予め定める動作に対する指令を入力するためのタッチパネル入力部を備えることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの予め定める動作を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段が、音声によって前記予め定める動作に対する指令を入力するための音声認識入力部を備えることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの少なくとも起動および停止を含む予め定める動作を制御する制御手段と、前記手術室内を撮像する撮像手段とをさらに含み、前記制御手段が、前記撮像手段によって撮像された画像に基づいて、前記予め定める動作に対する指令を入力するための画像認識入力部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空調設備によれば、
天井の中央に設置されたフィルタユニットが、第1吹出口から手術台へ向かって空気を吹き出す。第1吹出口から吹き出される空気は、フィルタによって清浄化された空気であるから、手術台の周囲を清浄な状態に保持することができる。第1吹出口から手術台へ向かって吹き出された空気は、手術台の下方へ降下したのち、床に沿って壁へ向かって流動する。
壁の各入隅部に設置された空調ユニットが、手術台から床に沿って流れてくる空気を第2吸込口から吸引し、第2吹出口から第1ダクトへ排出する。空調ユニットは、空気が第2吸込口から第2吹出口まで流れる間に、空気の温度が予め定める温度となるように、温度調節手段によって空気を昇温または冷却する。温度調節され、第2吹出口から吹き出された空気は、第1ダクトを通じて、フィルタユニットの第1吸込口に至る。フィルタユニットは、空気を第1吸込口から吸引し、フィルタを通過させて清浄化し、第1吹出口から吹き出す。このように、フィルタユニットと空調ユニットとの間で空気を循環させる間に、空気を清浄化するとともに、空気の温度を調節する。
【0018】
本発明の空調設備は、手術室の室外に中空の吸気部材を配置し、天井
の各辺と壁との境界部に沿って、天井における壁の近傍または壁における天井の近傍に設けた貫通孔に臨むように吸気部材の吸気口を配設し、吸気部材の排気口に第2ダクトの一端部を接続するとともに、第2ダクトの他端部を第1筐体に接続し、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、該空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる構成としたので、空調設備を運転して第1送風機を駆動させると、第1筐体に発生する空気を吸引する吸引力が、第2ダクトの他端部を通じて、吸気部材に作用する。その結果、吸気部材が、天井と壁との境界部近傍の空気を、天井または壁の貫通孔を通じて、吸気口から吸引し、排気口から第2ダクトへ排出し、第2ダクトを通じて、第1筐体内の空気の流れに混入させる。混入された空気は、フィルタユニットのフィルタで清浄化処理されたのち、第1吹出口から手術室内へ吹き出される。このように、本発明によれば、従来の空調設備では清浄化するのが困難であった手術室の天井
の各辺と壁との境界部近傍の空気を、確実に清浄化することができるので、手術室の清浄度を高めることができる。よって本発明の空調設備は、高い清浄度が要求されるクラス100の手術室への適用が可能である。
【0019】
第2ダクトの他端部に生じさせる吸引力は、第1筐体内の空気の流れによって発生する吸引力を利用するものであるから、吸気部材で空気を吸引するために送風機などの新たな負圧源を用意する必要がなく、低コストで、天井と壁との境界部近傍の空気を吸引する手段を提供することができる。また、第2ダクトの他端部に生じさせる吸引力は、フィルタユニットの第1送風機によって発生する吸引力を利用するから、第2ダクトの他端部に強い吸引力を発生させることが可能である。
【0020】
また本発明によれば、フィルタユニットおよび空調ユニットの動作を制御する制御手段が、接触によって動作指令を入力できるタッチパネル入力部を備えるので、空調設備に対する動作指令の入力を容易に行える。
【0021】
また本発明によれば、フィルタユニットおよび空調ユニットの動作を制御する制御手段が、音声によって動作指令を入力できる音声認識入力部を備えるので、操作者は、入力部に触れることなく、言葉を発声することによって、空調設備に対し動作指令を入力することができる。
【0022】
また本発明によれば、フィルタユニットおよび空調ユニットの動作を制御する制御手段が、画像認識によって動作指令を入力できる画像認識入力部を備えるので、操作者は、入力部に触れることなく、身体の動きによって、空調設備に対し動作指令を入力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る空調設備10の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空調設備10を適用した手術室1の一部を、透視図法で示す図、
図2は、本発明の第1の実施形態に係る空調設備10を適用した手術室1を、天井3を省略して示す平面図、
図3は、本発明の一実施形態に係る空調設備10を適用した手術室1を、天井3を省略して示す平面図、
図4Aは吸気部材41の一例を示す斜視図、
図4Bは吸気部材47の一例を示す斜視図、
図5(A)はフィルタユニット20の平面図、
図5(B)はフィルタユニット20の正面図、
図5(C)はフィルタユニット20の底面図、
図5(D)はフィルタユニット20の側面図、
図6(A)は空調ユニット30の正面図、
図6(B)は空調ユニット30の側面図である。
【0025】
手術室1は、床2、天井3、壁4によって規定される空間であり、床2のほぼ中央に手術台5が設置されている。手術室1は、床2と天井3との間に、隣接する壁4によって形成される入隅部6を有している。本例の手術室1のように、平面視形状が長方形の場合、4箇所に入隅部6が形成される。手術室1は、平面視形状が五角形または六角形に形成される場合もあり、そのような場合、入隅部6の形成個数は5または6となる。
【0026】
空調設備10は、手術室1に適温の清浄空気を供給して、手術室1を清浄環境に保つものである。本実施形態の空調設備10は、手術室1の天井3に設置され、天井3から手術台5へ向けて清浄空気を供給するフィルタユニット20と、手術室1の壁4に設置され、手術室1の空気を吸い込む空調ユニット30と、フィルタユニット20と空調ユニット30とを接続する第1ダクトD1と、天井3の裏面側における天井3と壁4との境界部8の近傍に配置される吸気部材41と、吸気部材41とフィルタユニット20とを接続する第2ダクトD2と、フィルタユニット20および空調ユニット30の動作を制御する制御手段Rとを含んで構成される。制御手段Rの入力部Sは、壁4に配設される。
【0027】
本例では、室外に配置した吸気部材41によって手術室1内の空気を吸引するため、手術室1の天井3における壁4の近傍に、天井3と壁4との境界部8に沿って延びる細長い長方形状の貫通孔9が設けられる。貫通孔9は、円形のものを、境界部8に沿って複数形成してもよい。
【0028】
本例では、4台のフィルタユニット20と4台の空調ユニット30とが用いられる。4台のフィルタユニット20は、手術台5の直上となる天井3の中央部に集合させて配置される。4台の空調ユニット30は、手術室1の4つの入隅部6の床2上にそれぞれ設置される。なお本例では、各入隅部6に壁パネル7を配置し、この壁パネル7の裏面側に空調ユニット30を配設する構造としている。
【0029】
フィルタユニット20は、直方体状の第1筐体21と、第1筐体21内に設けられる第1送風機24と、第1吹出口23を覆うフィルタ25とを含む。第1筐体21は、上面21aが天井3の裏面側へ突出するように天井3に取り付けられ、側面21bに第1吸込口22および補助吸込口26が配設され、底面21cに手術台5に臨む第1吹出口23が配設される。第1吸込口22および補助吸込口26に、塵埃などを吸引するのを防止するためのフィルタを装着してもよい。第1吸込口22および補助吸込口26は、それぞれ異なる側面21bに配設してもよく、両方を上面21aに配設してもよく、一方を上面21aに他方を側面21bに配設してもよい。第1筐体21内の第1送風機24を駆動することによって、第1吸込口22および補助吸込口26の両方に、吸引力が発生する。また本例では、第1筐体21の底面21cのほぼ半分の領域を、第1吹出口23としている。第1吹出口23には、たとえばパンチングメタルなどから成るカバー23aを装着するのが好ましい。
【0030】
第1送風機24は、第1吸込口22から空気を吸引し、吸引した空気を第1吹出口23へ排出するものである。第1送風機24の種類は、特に限定されないが、手術室1の容積に基づいて、送風能力が選定される。
【0031】
フィルタ25は、第1送風機24から送られる空気中の塵埃などの微粒子、細菌、ウィルスなどの不純物を捕捉して除去するための高性能フィルタであって、たとえばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタが用いられる。
【0032】
空調ユニット30は、手術室1の各入隅部6または入隅部6に近接する位置において、床2上に設置されるものである。空調ユニット30は、ほぼ直方体状の第2筐体31を有し、第2筐体31の内部に、第2送風機34と、温度調節手段35と、ヒータ36とが設けられている。第2筐体31は、正面31aの下部に、手術台5に臨むように第2吸込口32が配設され、上面31bに第2吹出口33が配設される。第2吸込口32には、塵埃などを吸引するのを防止するためのフィルタが装着される。
【0033】
第2送風機34は、第2吸込口32から空気を吸引し、吸引した空気を第2吹出口33へ排出するものである。第2送風機34の種類は、特に限定されないが、手術室1の容積に基づいて、送風能力が選定される。
【0034】
温度調節手段35は、第2筐体31内を、第2吸込口32から第2吹出口33へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節するものである。
図4には、第2送風機34を空気の流路の下流側に、温度調節手段35を空気の流路の上流側に配置した例を示すが、第2送風機34を流路の上流側に配置し、温度調節手段35を下流側に配置することも可能である。
【0035】
ヒータ36は、第2送風機34の下流側に配設され、必要に応じ、空気を第2吹出口33から吹き出させる直前に加熱するものである。ヒータ36は、空調設備10の設置状況に応じ、省略してもよい。
【0036】
空調ユニット30には、空調ユニット30との間で熱交換媒体の循環を行って熱交換を行うための室外機40が接続される。室外機40は、手術室1の外側に設置される。本例では2台の室外機40を用い、1台の室外機40に、2台の空調ユニット30を接続する構成としている。室外機40を1台だけとし、1台の室外機40に4台すべての空調ユニット30を接続することも可能であるが、万一、手術中に室外機40が故障する場合を考慮して、2台以上の室外機40を使用するのが望ましい。
【0037】
第1ダクトD1は、フィルタユニット20と空調ユニット30とを接続するものであって、一端部が前記空調ユニット30の第2吹出口33に接続され、他端部がフィルタユニット20の第1吸込口22に接続される。
【0038】
吸気部材41は、手術室1の室外に配置され、天井3の貫通孔9から、天井3と壁4との境界部8近傍の空気を吸引するためのものである。
【0039】
本例の吸気部材41は、
図4Aに示すように、境界部8に沿って延びる、断面U字形のノズルであり、天井3の貫通孔9に臨む側に、長さおよび幅が、貫通孔9の長さおよび幅よりも大きい長方形状の吸気口42が設けられ、他方の側に排気口43が設けられている。なお排気口43は、背面に突設した接続管部44の先端部に設けてもよい。本例では、吸気部材41が、天井3裏において、吸気口42で貫通孔9を隙間なく覆うように配設されている。
【0040】
図4Bに示すように、吸気口48と排気口49とを有する吸気部材47と、第2ダクトD2とを一体に成形することもできる。このように、吸気部材47の形態は、様々に変更することが可能である。
【0041】
本例では、第2ダクトD2は、一端部が吸気部材41の排気口43に接続され、他端部がフィルタユニット20の第1筐体21の補助吸込口26に接続される。第1送風機24を駆動することによって、第1筐体21内に、空気の流れ方向に、外部から内部へ空気を吸い込む吸引力が生じ、これによって、第2ダクトD2の他端部に吸引力が生じるように構成されている。
【0042】
本例の空調設備10は、以下のように動作する。制御手段Rの入力部Sから起動指令を入力することによって、フィルタユニット20および空調ユニット30の運転を開始させる。
図1に示すように、フィルタユニット20は、第1送風機24が駆動されることによって、第1筐体21内の空気を、フィルタ25を通過させて、第1吹出口23から手術台5へ向けて吹き出させる(F1)。第1吹出口23から吹き出された空気は、床2に沿って壁4へ向かって流動する(F2)。
【0043】
空調ユニット30は、制御手段Rの起動指令によって、第2送風機34が駆動され、床2近傍の空気を第2吸込口32から第2筐体31内に吸引し、吸引した空気を、第1ダクトD1へ排出する。第2吸込口32は、手術台5に臨むように配設されているから、手術台5の方から流動してくる空気を主として吸引する。第2吹出口33から吹き出された空気は、第1ダクトD1内を、フィルタユニット20まで流動する。
【0044】
第2筐体31内に吸引された空気は、第2吸込口32から第2吹出口33まで流動する間に、温度調節手段35によって、予め指定された温度となるように昇温または冷却される。空調ユニット30は、室外機40との間で熱交換媒体を循環させることによって、温度調節手段35の昇温動作または冷却動作が維持される。
【0045】
第1ダクトD1内をフィルタユニット20まで流れた空気は、第1吸込口22から、第1筐体21内に吸引され、フィルタ25を通過させて、第1吹出口23から手術台5へ向けて吹き出される。
【0046】
本例の空調設備10は、室外に配置される吸気部材41とフィルタユニット20とが、天井3の裏面側において、第2ダクトD2によって接続される。すなわち、第2ダクトD2は、一端部が吸気部材41の排気口43に接続され、他端部が第1筐体21の補助吸込口26に接続される。
【0047】
本例では、フィルタユニット20の第1筐体21の側面21bに、第1吹出口23に隣接させて、第2ダクトD2の他端部を接続させる補助吸込口26が設けられる。空調設備10は、第1筐体21内の第1送風機24を駆動することによって、第1吸込口22および補助吸込口26の両方に、第1筐体21内の空気の流れによって、該空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じ、これによって第2ダクトD2の他端部に吸引力が発生するように構成されている。
【0048】
空調設備10の運転を開始して、フィルタユニット20の第1送風機24を駆動すると、第1筐体の第1吸込口22および補助吸込口26に吸引力が発生する。これによって、補助吸込口26に接続された第2ダクトD2の他端部に吸引力が発生し、その結果、吸気部材41内が負圧になって、吸気口42から、天井3の貫通孔3を通じて、天井3と壁4との境界部8近傍の空気を吸引する。吸気部材41が吸引した空気は、排気口43から排
出され、第2ダクトD2を通じて、第1筐体21内に流入し、第1ダクトD1から供給される空気とともに、フィルタ25を通過して、手術台5に向かって吹き出される。
【0049】
空調ユニット30が吸引する空気、および、吸気部材41が吸引する空気には、塵埃や細菌などの微粒子が混入している可能性がある。この空気は、第1ダクトD1を通じてフィルタユニット20へ送給され、フィルタユニット20において、フィルタ25を通過させることによって微粒子が捕捉される。よって、清浄化された状態の空気のみが手術台5へ向けて排出されるから、手術台5の周囲を常に清浄な状態に維持することができる。
【0050】
本実施形態の空調設備10は、天井3と壁4との境界部8近傍の空気を吸気部材41で吸引して、これをフィルタユニット20を通過させて清浄化するから、手術室1内に空気の停滞領域が形成されるのが解消されるので、手術室1の清浄度を高めることができる効果が発揮される。
【0051】
なお本例では、
図2に示すように、手術室1の4箇所の各入隅部6に配設した空調ユニット30と、天井3の中央に配設した4台のフィルタユニット20との間で空気の循環を行うとともに、天井3の4辺の境界部8近傍に吸気部材41を配設したので、手術室1の広範囲の空気を効率よく循環流動させて、清浄化を確実に行うことができる。
【0052】
図7は、本発明に係る空調設備10の単線結線図、
図8は、本発明に係る空調設備10の動作を制御する制御手段Rの入力部Sの一例を示す正面図である。
図7に示すように、フィルタユニット20および空調ユニット30は、電圧調整器60を介して直列に接続されて組み合わされた4組が設けられ、各組は空調ユニット30どうしが電気的に接続され、また、いずれか1つの空調ユニット30に、制御手段Rが、インターフェース回路50を介して接続され、この空調ユニット30を介して、他の3組のフィルタユニット20および空調ユニット30を連動させて制御する構成となっている。制御手段Rは、マイクロコンピュータを用いることによって実現される。
【0053】
室外機40は、2つの空調ユニット30に対し、1つを共有させる。なお、電圧調整器60とは、電源環境が相違しても、フィルタユニット20に印加される電圧を、予め定める電圧に調整するためのものである。またリモコン(バックアップ用)70は、制御手段Rが故障した場合に備えるものである。
【0054】
制御手段Rによって空調設備10の動作を制御する項目は、空調設備10の起動および停止、空気温度、運転時間、風量などが挙げられる。制御手段Rが、空調設備10の運転開始時間や運転終了時間を設定するタイマー機能を有してもよい。
【0055】
図8に示すように、制御手段Rは、入力部Sに手術の術式を選択するボタン80が設けられるとともに、術式の種類に対応する空調設備10の最適な運転スケジュールを記憶させておき、手術に際し、術式をボタン80で選択すると、術式に応じた最適な運転スケジュールで、空調設備10が運転されるように設定することも可能である。運転スケジュールの内容としては、経過時間に応じて空気の温度や風速を変化させる制御などが挙げられる。
【0056】
さらに、入力部Sに登録ボタン81を設け、登録ボタン81を押すと、手術中に入力部Sに入力された過去の指令情報に基づいて、空調設備10の運転状況を再現する機能や、入力された指令情報に基づいて、術者ごとに最適な運転スケジュールを設定する学習機能を備えてもよい。
【0057】
図9(A)は、制御手段Rの入力部Sの初期画面を示す正面図,
図9(B)は運転スケ
ジュールを記憶させるときの入力部Sの表示画面を示す正面図、
図9(C)は記憶させた運転スケジュールを再現させるときの入力部Sの表示画面を示す正面図である。
【0058】
図9に示す制御手段Rの入力部Sは、タッチパネルを設けた液晶などの表示画面を備え、表示画面の表面に触れることによって予め定める動作に対する指令を入力できるタッチパネル入力部に構成されたものである。タッチパネル入力部に触れるだけで動作指令を入力できるから、手術中に術者が空調設備10の操作を行える。このような制御手段Rの入力部Sは、壁4に設置されるもの以外に、タブレット端末を利用することが可能である。
【0059】
本実施形態では、
図9(A)に示すように、入力部Sの初期画面には、整形(整形外科)、心外(心臓外科)、外科、脳外(脳外科)など予め定められた術式を選択する術式選択ボタン80a〜80dと、後述する学習によって記憶された運転スケジュールを再現するための再生ボタンA81a、再生ボタンB81bと、運転スケジュールの記憶・再生画面を呼び出すためのメモリボタン82とが表示される。なお選択ボタン80a〜80dおよび再生ボタン81a、81bに対応させる術式および運転スケジュールは、後で変更可能としてもよい。たとえば、整形ボタン80aの表示を、パターンCに対応する「C」の表示に変更するなど、ユーザーの要望に応じたボタン表示に変更可能としてもよい。
【0060】
図9(B)は、
図9(A)のメモリボタン82をタッチしたときに表示されるメモリ設定画面を示すものである。メモリ設定画面は、空調設備10の運転、制御を手動で行ったときの運転スケジュールを記憶するためのものであり、運転スケジュールを記憶するメモリ設定画面を選択するメモリ設定タグ83と、記憶した運転スケジュールを再現するメモリ再生画面を選択するためのメモリ再生タグ84と、運転スケジュールの記憶動作を開始させる記憶運転スタートボタン85と、記憶運転を停止させる記憶運転ストップボタン86と、記憶した運転スケジュールを術式パターンに対応させて登録する登録パターン選択ボタン87と、記憶された術式パターンにおける時間経過にともなう温度変化をグラフ化して表示するパターン表示部88とが表示される。登録パターン選択ボタン87は、右端の矢印に触れると、術式の種類名がプルダウンメニューによって表示される。
【0061】
図9(C)は、
図9(B)のメモリ再生タグ84に触れたときに表示されるメモリ再生画面を示すものである。メモリ再生画面は、記憶させた空調設備10の運転スケジュールを再現するためのものであり、メモリ設定タグ83と、メモリ再生タグ84と、記憶した運転スケジュールのうちから再現する術式パターンを選択するパターン選択ボタン89と、選択した術式パターンの時間経過にともなう温度変化とをグラフ化して表示するパターン表示部90と、選択した術式パターンの再現を指令する実行ボタン91と、動作の停止を指令するキャンセルボタン92と、動作の一時停止を指令する一時停止ボタン93とが表示される。パターン選択ボタン89は、右端の矢印に触れると、登録されている術式パターンがプルダウンメニューによって表示される。
【0062】
本例では、
図9(A)の入力部Sの初期画面において、メモリボタン82に触れて、
図9(B)のメモリ設定画面を表示させ、記憶運転スタートボタン85に触れて、運転スケジュールの記憶を開始させる。これにより、制御装置Rは、手術中において、術者または補助者によって入力部Sに動作指令が入力されて制御された空調装置10の運転スケジュールを記憶する。
【0063】
制御装置Rが記憶した運転スケジュール基づく時間経過に伴う温度変化の様子は、パターン表示部88にグラフとして表示される。使用者は、表示されている運転スケジュールを確認して、これを、登録パターン選択ボタン87で選択した術式または登録名A,Bに対応させて登録する。
【0064】
手術の際に、制御部Rに記憶させた運転スケジュールを再現するときは、
図9(A)の選択ボタン80a〜80dまたは再生ボタン81a,81bに触れるか、または
図9(B)のメモリ設定画面において、メモリ再生タグ84に触れて、メモリ再生画面を表示させる。そして、パターン選択ボタン89から、実施しようとする手術に術式に応じた運転スケジュールの登録パターンを選択する。選択した登録パターンの時間経過に伴う温度変化の様子は、パターン表示部90にグラフ表示される。使用者は、グラフ表示された登録パターンの内容を確認した後、実行ボタン91に触れる。これによって、選択された登録パターンの運転スケジュールで、空調設備10の運転が実行される。
【0065】
本例によれば、術式の種類や術者の要望に応じた空調設備10の運転を、過去の運転例に基づいて再現できるから、最適な運転スケジュールとなるように空調設備10を制御して、手術室1に、良好な空調環境を実現できる効果が発揮される。
【0066】
制御手段Rは、他の実施形態が考えられる。制御手段Rがマイクロフォンなどの音声入力手段を備えるものとし、入力部Sを、音声によって予め定める動作に対する指令を入力できる音声認識入力部とすれば、入力部Sに触れることなく空調設備10の動作指令を与えることができるから、手術中の術者でも、空調設備10を制御することが可能になる。
【0067】
そのほか、制御手段Rがカメラなどの撮像手段を備えるものとし、入力部Sを、画像認識によって予め定める動作に対する指令を入力できる画像認識入力部として、入力部Sに触れることなく、空調設備10を制御可能とすることもできる。さらに、制御手段Rの操作者にマーカや位置センサを取り付け、入力部Sを、操作者の動作に応じたマーカや位置センサの変位に基づいて指令を入力するジェスチャ入力部とする態様も考えられる。
【0068】
本発明の実施形態は、前述のほか、様々な応用が可能である。吸気部材41の吸気口42を望ませる貫通孔は、壁4における天井3の近傍に設けてもよい。空調ユニット30に加湿器を組み込んでもよい。手術室1を周囲よりも陽圧に保つため、外気を取り込むための外気導入ダクトを、たとえばフィルタユニット20に接続してもよい。さらに空調ユニット30は、手術室1の各入隅部6に配設するほか、各壁4の中央部に配設してもよい。