特許第6567265号(P6567265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567265
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】免震装置および免震方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20190819BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20190819BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20190819BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   F16F15/04 A
   E04H9/02 331A
   F16F15/02 Z
   F16F7/12
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-217146(P2014-217146)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-84845(P2016-84845A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和
(72)【発明者】
【氏名】仲村 岳
(72)【発明者】
【氏名】仁平 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】田上 哲治
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−035139(JP,A)
【文献】 特開平03−288038(JP,A)
【文献】 特許第5315475(JP,B1)
【文献】 特開平03−275873(JP,A)
【文献】 特開平02−129430(JP,A)
【文献】 特開平10−140874(JP,A)
【文献】 特開平05−339910(JP,A)
【文献】 特開2007−297820(JP,A)
【文献】 特開平09−196116(JP,A)
【文献】 特開平02−104834(JP,A)
【文献】 特開平09−242378(JP,A)
【文献】 実開平01−068405(JP,U)
【文献】 特開昭62−125173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16F 7/00− 7/14
E04H 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物と基礎床との間に設置される免震装置において、
前記構造物と所定の間隔を設けて対面する支持プレートと、前記基礎床に固定されるベースプレートと、前記支持プレートと前記ベースプレートとの間に設置され、前記支持プレートおよび前記ベースプレートに固定される弾塑性ダンパーとを備え、
前記弾塑性ダンパーは、互いに摺動する内筒および外筒と、前記内筒内部に設けられた弾塑性部材とを備えていることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記弾塑性部材は、前記支持プレートの下面に取付けられる垂直梁部材と、前記垂直梁部材に連結されるとともに、両端部が前記内筒に取付けられる水平梁部材とからなることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記弾塑性部材は金属、コンクリート、樹脂のいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記弾塑性部材は、前記支持プレートの下面と前記ベースプレートとの間に取付けられる金属製の棒状体であることを特徴とする請求項3に記載の免震装置。
【請求項5】
構造物と基礎床との間に設置される免震装置において、
前記構造物と所定の間隔を設けて対面する支持プレートと、前記基礎床に固定されるベースプレートと、前記支持プレートと前記ベースプレートとの間に設置され、前記支持プレートおよび前記ベースプレートに固定されるダンパーとを備え、
前記ダンパーは、互いに摺動する内筒および外筒と、前記内筒内部に設けられた粘性ダンパーとを備えていることを特徴とする免震装置。
【請求項6】
構造物と基礎床との間に設置され、前記基礎床に設置された積層ゴムによって前記構造物を支持する免震装置において、
前記構造物と所定の間隔を設けて対面する支持プレートと、前記基礎床に固定されるベースプレートと、前記支持プレートと前記ベースプレートとの間に設置され、前記支持プレートおよび前記ベースプレートに固定されるダンパーとを備え、
前記ダンパーは、互いに摺動する内筒および外筒と、前記内筒内部に設けられた油圧ジャッキとを備え、
前記構造物の変位を計測する変位計測計をさらに備え、少なくとも前記変位計測計が、前記積層ゴムが破壊を開始する許容変位を超える変位を検出した場合に、前記油圧ジャッキが前記支持プレートを押し上げて前記支持プレートが前記構造物の下面に押し当てることを特徴とする免震装置。
【請求項7】
前記支持プレートの上面に突起を設けたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の免震装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の免震装置を用いた免震方法であって、
前記弾塑性ダンパーの内筒および外筒の相互摺動および前記内筒内部に設けられた弾塑性部材の塑性変形により前記構造物に対する地震動を吸収することを特徴とする免震方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、構造物の免震装置および免震方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建築物や機器等の構造物の地震対策として免震装置の導入が進められている。一般的に免震装置は構造物への地震加速度の伝達を抑制するため、積層ゴム等のような柔軟な部材と、オイルダンパーなどのような減衰部材とにより構成されているが、このような構成では短周期の変位応答には有効であるが、長周期の大変位応答に対しては免震設計等が困難であるという課題がある。
【0003】
すなわち、想定外の大きな長周期地震動を受けた場合には、免震装置が装備された構造物は設計許容値を超えて積層ゴムなどの部材を破損する可能性がある。
【0004】
例えば、図13図14に示すように、積層ゴム等の弾性体100の破損に対応するために、構造物101と基礎102との間に、弾性体100、構造物101に固定したすべり板103、大変位があった場合にすべり板103に接触する上部支持体104、上部支持体104を弾性的に支持するゴム板等の層構成からなる下部支持体106等を備え、弾性体100が積層面に垂直な方向に縮小する特性を利用して、弾性体100が破損する前に上部支持体104と下部支持体106との弾発、緩衝作用を利用して構造物101を着地させることにより、構造物101の落下による衝撃力を抑制するものが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、図15に示すように、構造物101と基礎102との間に、積層ゴム100の周辺を取り囲むように、滑り面を設けた上部滑り部材104および下部滑り部材106を設け、積層ゴム100が破断した場合、上部滑り部材104および下部滑り部材106が互いに接触して滑るとともに構造物101の自重を支持するものが提案されている(特許文献2)。
【0006】
さらに、図16に示すように、構造物101と基礎102との間に設けた積層ゴム100が破断しないようにするため、積層ゴム100の取り付け面が所定の荷重を受けると積層ゴム100が基礎102に対し滑る構造のものが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−275873号公報
【特許文献2】特開2009−264027号公報
【特許文献3】特開2011−99462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の方法では、下部支持体106がゴム板等からなっているため、構造物101の落下によるエネルギーを弾性変形のエネルギーに変換し、それを振動エネルギーとして構造物101にそのまま戻してしまうため、落下によるエネルギーが吸収、消費されず、構造物101には鉛直方向に衝撃的な振動が生じる問題があった。また、多数配置されている弾性体100が不均一に破壊するなど、構造物101に僅かでも傾きが生じた場合には、傾き角に応じた落下が発生し、衝撃力を吸収することは困難であるという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献2、3に記載の積層ゴム100を滑らせる方法では、左右方向の変位に対しては有効であるが、上下、左右方向の3次元の変位に対しては困難であり、構造物101による衝撃力を吸収できない問題があった。
【0010】
さらに、上記特許文献1〜3の方法では、積層ゴム100の破断時、構造物101の上下挙動によっては、構造物101が上部支持体や上部滑り部材104、あるいは下部支持体や下部滑り部材106等に激しく衝突する恐れがあり、これらの部材104、106や構造物101が破損する恐れがあった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、構造物に対して想定外の大きな長周期地震動を受けた場合、構造物の落下衝撃力を吸収できるとともに、構造物等が破損する恐れのない免震装置および免震方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の実施形態に係る免震装置は、構造物と基礎床との間に設置される免震装置において、前記構造物と所定の間隔を設けて対面する支持プレートと、前記基礎床に固定されるベースプレートと、前記支持プレートと前記ベースプレートとの間に設置され、前記支持プレートおよび前記ベースプレートに固定される弾塑性ダンパーとを備え、前記弾塑性ダンパーは、互いに摺動する内筒および外筒と、前記内筒内部に設けられた弾塑性部材とを備えたものである。
【0013】
また、本発明の実施形態に係る免震方法は、上記免震装置を用いた免震方法であって、弾塑性ダンパーの内筒および外筒の相互摺動および前記内筒内部に設けられた弾塑性部材の塑性変形により構造物に対する地震動を吸収するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の免震装置および免震方法によれば、構造物に対して想定外の大きな長周期地震動を受けた場合、構造物の落下衝撃力を吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る免震装置の断面図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る免震装置を発電機に適用した側面図。
図3】本発明の第1の実施形態に係る免震装置の動作説明(1)側面図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る免震装置の動作説明(2)側面図。
図5】本発明の第1の実施形態に係る免震装置の動作説明(3)側面図。
図6】本発明の第2の実施形態に係る免震装置の断面図。
図7】本発明の第3の実施形態に係る免震装置の断面図。
図8】本発明の第4の実施形態に係る免震装置の断面図。
図9】本発明の第4の実施形態に係る免震装置を発電機に適用した側面図。
図10】本発明の第4の実施形態に係る免震装置の動作フロー説明図。
図11】本発明の第4の実施形態に係る免震装置の動作説明(1)側面図。
図12】本発明の第4の実施形態に係る免震装置の動作説明(2)側面図。
図13】従来例1に係る免震装置の断面図。
図14】従来例1に係る免震装置の拡大断面図。
図15】従来例2に係る免震装置の断面図。
図16】従来例3に係る免震装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る免震装置および免震方法について、図1図5を参照して説明する。
【0017】
(構成)
図1に示すように、免震装置3は支持プレート6、ベースプレート4、弾塑性ダンパー8からなっている。
支持プレート6は構造物下面2と所定の間隔を設けて対面するように設けられている。ベースプレート4は、基礎15上に設置された基礎床1に取付けられている。支持プレート6は構造物下面2と所定の距離を確保し、免震装置3が破壊せずに動作する場合には、互いに接触しないように設けられている。
【0018】
弾塑性ダンパー8は、支持プレート6の下面に取付けられた外筒7、ベースプレート4の上面に取付けられた内筒5、および内筒5内部に設けられた弾塑性部材14からなっている。
【0019】
外筒7および内筒5を設ける位置はそれぞれ支持プレート6、ベースプレート4のいずれか一方で、また両筒5、7の高さは互いに重なり合う高さがあればよく、ここでは内筒5が外筒7より高い寸法としている。また、外筒7の側壁の断面形状は逆三角形としている。
【0020】
弾塑性部材14は、支持プレート6のほぼ中央部下面に取付けられる垂直梁部材10と、一対の補強板11を介して内筒5と垂直梁部材10の下端部に取付けられる水平梁部材9とからなっている。補強板11は内筒5の変形を防止するためのものであるが、これを省略して水平梁部材9を直接内筒5に取付けてもよい。
弾塑性部材14の材質は、弾塑性機能を発揮できるものであればよく、金属、コンクリート、樹脂等が好適である。
【0021】
図2は、免震装置3を構造物12として発電機に適用した例を示すもので、複数の積層ゴム13と複数の免震装置3とが交互に設置されている。
【0022】
(作用)
次に、図3図5により、免震装置3の動作説明をする。
通常時には図3に示すように、構造物下面2は積層ゴム13によって上下方向に支えられ、構造物下面2と免震装置3には所定の間隔が設けられている。
【0023】
想定外の大きな長周期地震動を受けた時、図4に示すように構造物下面2が大きく水平変形(図4の右方向の矢印)して積層ゴム13が破損すると、積層ゴム13は構造物下面2を支えることができなくなり、落下(図4の下方向の矢印)して免震装置3がその落下衝撃と構造物12の自重を支持することとなる。
【0024】
すなわち、巨大な想定外の地震によって積層ゴム13が破壊され、構造物下面2が落下して、支持プレート6に接触して支持プレート6を下方に押し下げる。この時、外筒7は内筒5に対してガイドされて摺動する。
【0025】
支持プレート6は垂直梁部材10を押し下げ、水平梁部材9の中央部を押し下げる。この結果、図5に示すように水平梁部材9に塑性変形が発生し、構造物12の落下エネルギーを吸収、消費することができる。これによって、構造物12が落下しても、鉛直方向に衝撃的な振動が発生することを防ぐことができる。
【0026】
(効果)
以上、本実施形態によれば、積層ゴム13の破損に伴い構造物12の落下が発生しても、落下によるエネルギーを、弾塑性ダンパー8を構成する金属材料からなる弾塑性部材14の塑性変形により吸収、消費するため、構造物12を跳ね返すような振動、挙動を抑止することにより落下衝撃を吸収することができる。
【0027】
また、本実施形態では、内筒5が上下面で接触、着座するように、内筒5の高さを外筒7より高く設定することによって、構造物12の自重を支持し、過大な落下を防止することとしたが、逆に、外筒7の下端がベースプレート4の上面と接触させるように、外筒7の高さを内筒5より高く設定することによって、免震装置3の上下変位を拘束し構造物12の自重を支えることが可能であり、この自重を支える力によって、支持プレート6を構造物下面2に押し当て、構造物12の水平方向の変位に対して摩擦力を作用させることができ、構造物12の水平方向の変位を抑制させる効果がある。
【0028】
弾塑性部材14を設計する場合、免震装置3と構造物下面2との距離や、想定される構造物12の傾斜などから、積層ゴム13が破損する終局状態での構造物12の落下速度、落下エネルギーを計算し、免震装置3の弾塑性ダンパー8の塑性変形エネルギーと余裕をもって釣り合うようにすればよい。
【0029】
弾塑性ダンパー8を構成する弾塑性部材14は、金属の塑性変形を利用したものに限らず、コンクリートを用いてコンクリートの破砕によってエネルギーを吸収する構造としてもよい。この場合、弾塑性部材14は内筒5と外筒7によって封入されているため、コンクリートは落下衝撃を吸収し破砕しても免震装置3の内部に留まって、破損することはなく、構造物12の自重を支持し続けることができる。
【0030】
さらには、上下方向の振動に対しても適用でき、免震装置3の損傷による構造物12の落下衝撃を吸収することが可能となる。
【0031】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る免震装置について、図6を参照して説明する。
【0032】
(構成)
本実施形態は、図6に示すように、弾塑性部材14をステンレス鋼等の棒状体17とした点、内筒5と外筒7の高さをほぼ同じ高さとした点、内筒5と支持プレート6および外筒7とベースプレート4に渡って断面三角形状の複数の補強板11を設けた点、内筒5内部に棒状体17が貫通するとともに、端部が内筒5に固定された連結板16を設けた点以外は第1の実施形態と同様の構成である。棒状体17は金属製の中空、中実の円管状のもの、あるいは角管やハニカム構造として、鉛直荷重による鉛直変位に対して塑性変形する構造とする。また、補強板11は内筒5と支持プレート6および外筒7とベースプレート4との接合強度を向上させるとともに、内筒5、外筒7の変形を防止するためのものであるが、これを省略してもよい。
【0033】
(作用)
本実施形態においても第1の実施形態と同様に、積層ゴム13の破損に伴い構造物下面2が落下して支持プレート6に衝突すると、棒状体17が座屈して塑性変形し、構造物下面2を支えることができ、また、棒状体17は外筒7と内筒5によって封入されているため、棒状体17は落下衝撃を吸収し変形しても内筒5の内部に留まり、構造物12の自重を支え続けることができる。さらに、自重を支える力によって、支持プレート6を構造物下面2に押し当て、構造物12の水平方向の変位に対して摩擦力を作用させることができ、構造物12の水平方向の変位を抑制させることができる。
【0034】
(効果)
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏するほか、内筒5と外筒7の高さをほぼ同じ高さとしているので、内筒5とベースプレート4、および外筒7と支持プレート6とが同時に接触、着座することが可能であり、より強力に構造物12の自重を支持することができる。
【0035】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る免震装置について、図7を参照して説明する。
【0036】
(構成)
本実施形態は図7に示すように、第2の実施形態における弾塑性部材14を構成する棒状体17と支持板16に代えて、シリンダー21とピストンロッド22からなる複数の粘性ダンパー20とした点以外は第2の実施形態と同様の構成である。
【0037】
粘性ダンパー20はシリンダー21の内圧によってピストンロッド22を支持プレート6の下面に押し当て、支持プレート6は構造物下面2と所定の間隔を確保し、免震装置3が定格範囲内で動作する場合には、互いに接触しないように設定されている。
【0038】
(作用)
本実施形態では、構造物下面2が落下して支持プレート6に衝突すると、ピストンロッド22がシリンダー21の内部に押し込まれ、シリンダー21の内部粘性流体の流れによって衝突時のエネルギーが吸収される。またこのとき、ピストンロッド22がシリンダー21の内部の密閉空間に押し込まれることになり、シリンダー21の内部粘性流体が圧縮され体積変動する。このためピストンロッド22をシリンダー21の外部へ押し戻すばね力が発生し、支持プレート6が構造物下面2に押し当てられる。
【0039】
(効果)
以上、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、弾塑性部材14によって積層ゴム13の破損に伴う構造物12の落下衝撃を吸収することができる。また粘性ダンパー20は、上下方向にばね力を発生することができるため、構造物12の自重を支え続けることが可能である。さらに、支持プレート6を構造物下面2に押し当てることによって、構造物12の水平方向の変位に対して摩擦力を作用させることができ、構造物12の水平方向の変位を抑制させることが可能となる。
【0040】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る免震装置について、図8図12を参照して説明する。
【0041】
(構成)
本実施形態は図8に示すように、第3の実施形態における弾塑性部材14を構成する粘性ダンパー20に代えて、油圧ジャッキ23、およびアキュムレータ25等とした点以外は第3の実施形態と同様の構成である。
【0042】
本実施形態において、油圧ジャッキ23はシリンダー21とピストンロッド22からなり、シリンダー21の内部に作動油を送る配管24、油圧を蓄圧するアキュムレータ25、作動油を送り込む蓄圧流出弁26、蓄圧流出弁26の開閉を制御する図示しない制御システム、制御システムへの入力信号となる構造物12の水平変位を計測する変位計測計27を備えている。変位計測計27は構造物12の変位を基礎床1上で計測できるように構成されている。なお、比較的軽量な構造物12に対しては油圧ジャッキ23をエアージャッキまたはエアーバッグにより構成してもよい。
【0043】
(作用)
本実施形態では、図10の制御システムの作動フローに示すように、地震が発生し、構造物12の変位が所定の変位、例えば積層ゴム13が破壊を開始する許容変位を越えたことを変位計測計27の計測信号によって制御システムが判断し、蓄圧流出弁26を開放し、アキュムレータ25内に蓄圧した作動油をシリンダー21の内部に送り込み、ピストンロッド22を押し上げることによって、図11に示すように支持プレート6が構造物下面2に押し当てられる。
【0044】
(効果)
以上、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、弾塑性部材14によって積層ゴム13の破損に伴う構造物12の落下衝撃をシリンダー21の作動油によるクッション効果により吸収することができ、油圧により構造物12の自重を支え続けることが可能である。また、支持プレート6を構造物下面2に押し当てることによって、構造物12の水平方向の変位に対して摩擦力を作用させることができ、構造物12の水平方向の変位を抑制させることが可能となる。
【0045】
また、変位計測計27を構造物下面2の落下検知計(図示せず)として構成し、制御システムへの計測信号として油圧ジャッキ23を作動させてもよい。
【0046】
なお、上記したいずれの実施形態においても図12のように支持プレート6の上面に突起物28を配置することによって、構造物12の水平方向の変位に対してより大きな摩擦力を作用させることができ、構造物12の水平方向の変位をより抑制し、免震の変位を拘束させることが可能となる。
【0047】
以上、本発明を説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者の技術常識を加味して種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…基礎床、2…構造物下面、3…免震装置、4…ベースプレート、5…内筒、6… 支持プレート、7…外筒、8…弾塑性ダンパー、9…水平梁部材、10…垂直梁部材、11…補強板、12…構造物(発電装置)、13…積層ゴム、14…弾塑性部材、15…基礎、16…連結板、17…棒状体、20…粘性ダンパー、21…シリンダー、22…ピストンロッド、23…油圧ジャッキ、24…配管、25…アキュムレータ、26…蓄圧流出弁、27…変位計測計、28…突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16