特許第6567277号(P6567277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567277
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】接続構造、およびプレキャストブロック
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/02 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   E04B2/02 115B
   E04B2/02 131
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-7794(P2015-7794)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132910(P2016-132910A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正典
【審査官】 村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−320021(JP,A)
【文献】 特開昭56−167041(JP,A)
【文献】 特開昭59−106656(JP,A)
【文献】 特開昭59−041548(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0220539(US,A1)
【文献】 特開2009−144400(JP,A)
【文献】 特開昭54−133729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/02
E04C 1/00
E04C 1/39
E04C 5/18
E04B 1/61
E04B 2/56
E04B 1/16
E04B 1/58
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプレキャストブロックを左右に並べて配置し、両プレキャストブロックの対向する側面のそれぞれから突出した鉄筋同士をカプラーにより接続した接続構造であって、
前記一対のプレキャストブロックのうち、方のプレキャストブロックの前記側面に水平方向の凹部が設けられ、当該凹部から前記鉄筋が突出し、
他方のプレキャストブロックの前記側面が平坦面であり、
前記凹部は、鉛直方向に沿って見たときに、上面が凹部底面から部材外側に向かって上方に傾斜しており、
前記両プレキャストブロックの間に充填材が充填され、
前記凹部は、内壁を全周に有し、
前記凹部から突出する前記鉄筋の突出長さは、前記平坦面から突出する前記鉄筋の突出長さより大きいことを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記一対のプレキャストブロックの上段または下段に、別の一対のプレキャストブロックが配置され、
前記別の一対のプレキャストブロックは、両プレキャストブロックの対向する側面のそれぞれから突出した鉄筋同士をカプラーにより接続し、両プレキャストブロックの間に充填材を充填することで接続され、
上下段の前記プレキャストブロックは、上段のプレキャストブロックの下面から突出した鉄筋を、下段のプレキャストブロックの上面に設けた穴に挿入し、両プレキャストブロックの間および前記穴に充填材を充填して接続されることを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記一対のプレキャストブロックの上段または下段に、別の一対のプレキャストブロックが配置され、
前記別の一対のプレキャストブロックは、両プレキャストブロックの対向する側面のそれぞれから突出した鉄筋同士をカプラーにより接続し、両プレキャストブロックの間に充填材を充填することで接続され、
上下段の前記プレキャストブロックは、上段のプレキャストブロックの下面に設けた埋込式カプラーの内側の穴と、下段のプレキャストブロックの上面に設けた埋込式カプラーの内側の穴に、接続具の両端をそれぞれ挿入し、両プレキャストブロックの間に充填材を充填して接続されることを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項4】
前記一対のプレキャストブロックと、前記別の一対のプレキャストブロックとで、前記鉄筋の径と前記カプラーの長さが異なっており、
前記一対のプレキャストブロックと、前記別の一対のプレキャストブロックとで、前記側面の位置が揃えられていることを特徴とする請求項または請求項に記載の接続構造。
【請求項5】
前記別の一対のプレキャストブロックも、請求項1に記載の接続構造にて接続されており、
前記一対のプレキャストブロックと、前記別の一対のプレキャストブロックとで、前記鉄筋の径が大きく前記カプラーが長い方の前記凹部の深さは、前記鉄筋の径が小さく前記カプラーが短い方の前記凹部の深さより大きいことを特徴とする請求項記載の接続構造。
【請求項6】
左右の側面から鉄筋が突出し、一方の側面の鉄筋に接続用のカプラーが設けられたプレキャストブロックであって、
前記プレキャストブロックの左右の側面のうち一方に、水平方向の凹部が設けられ、当該凹部から前記鉄筋が突出し、
他方の側面は平坦面であり、
前記凹部は、鉛直方向に沿って見たときに、上面が凹部底面から部材外側に向かって上方に傾斜しており、
前記凹部は、内壁を全周に有し、
前記凹部から突出する前記鉄筋の突出長さは、前記平坦面から突出する前記鉄筋の突出長さより大きいことを特徴とするプレキャストブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストブロック同士の接続構造、およびプレキャストブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
壁などの構造体として、プレキャストブロックを接続して用いることがある。プレキャストブロック同士の接続は、例えば機械式継手を用いて行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
機械式継手による接続の例を図14に示す。この例では、図14(a)に示すようにプレキャストブロック100を左右に配置し、両プレキャストブロック100の対向する側面のそれぞれから突出する鉄筋101、103を突き合わせる。そして、一方の鉄筋101に予め取り付けたカプラー102を、図14(b)に示すように鉄筋103に接続し、その後、両プレキャストブロック100間にコンクリートを打設して目地とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−331172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接続対象の鉄筋103の突出長さは、カプラー102の長さL(例えば300〜600mm程度)の1/2程度が必要である。従って、図14(a)に示すように、プレキャストブロック100の間には少なくとも(L+L/2)の距離が必要となり、目地として打設するコンクリートの量が多く、施工に手間が掛かっていた。また、コンクリートの打設量が多くなることにより、水和熱が大きく温度ひびわれの原因となる問題があった。
【0006】
また特許文献1では、プレキャストブロックから鉄筋に加え水平方向の板状部材が突出しており、この板状部材が目地としてコンクリートを打設する際の妨げになる恐れがあった。
【0007】
本発明は、目地の施工が容易にできる接続構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、一対のプレキャストブロックを左右に並べて配置し、両プレキャストブロックの対向する側面のそれぞれから突出した鉄筋同士をカプラーにより接続した接続構造であって、前記一対のプレキャストブロックのうち、方のプレキャストブロックの前記側面に水平方向の凹部が設けられ、当該凹部から前記鉄筋が突出し、他方のプレキャストブロックの前記側面が平坦面であり、前記凹部は、鉛直方向に沿って見たときに、上面が凹部底面から部材外側に向かって上方に傾斜しており、前記両プレキャストブロックの間に充填材が充填され、前記凹部は、内壁を全周に有し、前記凹部から突出する前記鉄筋の突出長さは、前記平坦面から突出する前記鉄筋の突出長さより大きいことを特徴とする接続構造である。
【0009】
本発明の接続構造では、鉄筋がプレキャストブロックの凹部から突出しているので、凹部の深さの分、プレキャストブロック間の距離を小さくでき、目地として用いる充填材の量が減り、温度ひび割れ等も抑制できる。また凹部は、鉛直方向に沿って見たときに、上面が上に向かって傾斜しているので、充填材の充填の妨げにもならない。結果、プレキャストブロック間で目地の施工が容易にできる。
【0010】
また本発明では、例えばモルタル注入式のカプラーを用いる時に、モルタル注入の完了確認が容易にできる。ネジ式のカプラーを用いた接続を行い、この際カプラー内に樹脂等を注入する場合も同様である。
【0011】
さらに、前記一対のプレキャストブロックの上段または下段に、別の一対のプレキャストブロックが配置され、前記別の一対のプレキャストブロックは、両プレキャストブロックの対向する側面のそれぞれから突出した鉄筋同士をカプラーにより接続し、両プレキャストブロックの間に充填材を充填することで接続され、上下段の前記プレキャストブロックは、上段のプレキャストブロックの下面から突出した鉄筋を、下段のプレキャストブロックの上面に設けた穴に挿入し、両プレキャストブロックの間および前記穴に充填材を充填して接続されることが望ましい。
または、前記一対のプレキャストブロックの上段または下段に、別の一対のプレキャストブロックが配置され、前記別の一対のプレキャストブロックは、両プレキャストブロックの対向する側面のそれぞれから突出した鉄筋同士をカプラーにより接続し、両プレキャストブロックの間に充填材を充填することで接続され、上下段の前記プレキャストブロックは、上段のプレキャストブロックの下面に設けた埋込式カプラーの内側の穴と、下段のプレキャストブロックの上面に設けた埋込式カプラーの内側の穴に、接続具の両端をそれぞれ挿入し、両プレキャストブロックの間に充填材を充填して接続されることも望ましい。
このように、ブロックに直接設けた穴やブロックに埋め込んだカプラーの内側の穴などに鉄筋や接続具を挿し込むことにより上下段のプレキャストブロックを接続する場合、プレキャストブロックを左右に移動させることができないので、本発明を用いて左右のプレキャストブロックをカプラーで接続するのが特に有効である。
【0012】
前記一対のプレキャストブロックと、前記別の一対のプレキャストブロックとで、前記鉄筋の径と前記カプラーの長さが異なっており、前記一対のプレキャストブロックと、前記別の一対のプレキャストブロックとで、前記側面の位置が揃えられていることが望ましい。
また、前記別の一対のプレキャストブロックも、第1の発明の接続構造にて接続されており、前記一対のプレキャストブロックと、前記別の一対のプレキャストブロックとで、前記鉄筋の径が大きく前記カプラーが長い方の前記凹部の深さは、前記鉄筋の径が小さく前記カプラーが短い方の前記凹部の深さより大きいことが望ましい。
構造体に加わる力によって、上下のプレキャストブロックで鉄筋の径とカプラーの長さを変化させる場合がある。このような場合でも、本発明では、プレキャストブロックに凹部を設けることで、プレキャストブロック間の距離を小さく保ち、且つ上下のプレキャストブロックの側面の位置を揃えることができる。
【0013】
第2の発明は、左右の側面から鉄筋が突出し、一方の側面の鉄筋に接続用のカプラーが設けられたプレキャストブロックであって、前記プレキャストブロックの左右の側面のうち一方に、水平方向の凹部が設けられ、当該凹部から前記鉄筋が突出し、他方の側面は平坦面であり、前記凹部は、鉛直方向に沿って見たときに、上面が凹部底面から部材外側に向かって上方に傾斜しており、前記凹部は、内壁を全周に有し、前記凹部から突出する前記鉄筋の突出長さは、前記平坦面から突出する前記鉄筋の突出長さより大きいことを特徴とするプレキャストブロックである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、目地の施工が容易にできる接続構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】プレキャストブロック1を示す図
図2】ブロック1の接続を示す図
図3】充填材20の充填を示す図
図4】LNGタンク200を示す図
図5】ブロック1の接続を示す図
図6】上下のブロックを示す図
図7】凹部10a、10b、10cを示す図
図8】プレキャストブロック1aを示す図
図9】プレキャストブロック1bを示す図
図10】プレキャストブロック1cを示す図
図11】プレキャストブロック1dを示す図
図12】プレキャストブロック1eを示す図
図13】プレキャストブロック1fを示す図
図14】プレキャストブロック100の接続を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
(1.プレキャストブロック1)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプレキャストブロック(以下、ブロックということがある)1を示す図である。図1(a)はブロック1を正面から見た図であり、図1(b)はブロック1の右側面を見た図である。
【0019】
本実施形態のブロック1は、矩形板状のコンクリート部材である本体に、鉄筋11、13、14、穴15を設けたものである。
【0020】
本体の右側面には水平方向の凹部10が設けられており、鉄筋11はこの凹部10から突出している。凹部10と鉄筋11は、鉛直方向の複数列(図の例では2列)のそれぞれに沿って間隔を空けて複数設けられる。凹部10の深さは例えば100〜200mm程度である。
【0021】
凹部10の形状は、四角錐の上部を切断して切断面を凹部10の底面としたものになっており、鉛直方向に沿って見たときに、上面が凹部底面から部材外側に向かって上方に傾斜している。下面は凹部底面から部材外側に向かって下方に傾斜している。鉄筋11には接続用のカプラー12が予め取り付けられており、凹部10の底面の幅はカプラー12の外径より大きい。
【0022】
本体の左側面は平坦面であり、カプラー12による接続対象である鉄筋13は、この左側面から突出している。カプラー12の長さがLの場合、鉄筋13の突出長さはL/2程度に定められる。
【0023】
鉄筋14は本体の下面から突出している。穴15は鉄筋14を挿し込むためのもので、本体の上面に設けられる。
【0024】
(2.接続構造30)
図2はブロック1の接続について示す図である。本実施形態では、前記と同様、一対のブロック1を左右に並べて配置し、両ブロック1の対向する側面の鉄筋11、13をカプラー12で接続する。
【0025】
本実施形態では鉄筋11が凹部10に設けられているので、図2(a)に示すように、ブロック1間の距離を、凹部10の深さの分、(L+L/2)より狭くして左右のブロック1を配置できる。
【0026】
その後、図2(b)に示すようにカプラー12を鉄筋11から引き出して鉄筋13に接続する。本実施形態においてカプラー12はモルタル注入式のものであり、カプラー12を鉄筋11から引き出して鉄筋13に外嵌した後、カプラー12内にモルタルを注入する。モルタル注入の完了確認は、鉄筋13側のブロック1の側面に沿ってカプラー12からモルタルが溢れるのを目視して行う。
【0027】
カプラー12による鉄筋11、13の接続後、図3(a)に示すように両ブロック1間に充填材20を充填する。充填材20は例えばコンクリートである。充填材20は下から上へと充填される。凹部10の上面は上向きに傾斜しているので、充填材20が上面の傾斜に沿って矢印Aに示すようにスムーズに流れ、充填が妨げられることがない。こうしてブロック1間の目地が形成され、図3(b)に示すように左右のブロック1による接続構造30が形成される。
【0028】
(3.ブロック1による防液堤2の構築)
次に、ブロック1を用いてPC(プレストレストコンクリート)タンクの防液堤を構築する例を説明する。
【0029】
PCタンクは、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)などの液体を貯留する設備である。図4は、PCタンクとして、LNGを貯留するLNGタンク200の例を示したものである。LNGタンク200は、地盤7中の杭4で支持された底版5上に防液堤2を設け、その内側に鋼板等による内槽3aと外槽3bを設置したものである。LNGは内槽3aにて貯留し、内槽3aと外槽3bの間に断熱材を配置して保冷を行う。
【0030】
防液堤2は、内槽3aが破損した場合にLNGの外部への液漏れを防ぐために設けられ、通常円筒状である。本実施形態では、防液堤2がブロック1を用いて構築される。この場合、ブロック1の本体はタンクの径に応じた円弧状の若干の反りを有する。
【0031】
ブロック1による防液堤2の構築途中を示すのが図5である。この例では、図5(a)、(b)に示すように、新たなブロック1を、下面の鉄筋14を下段のブロック1の上面の穴15に挿入して下段のブロック1の上に配置する。そして、前記と同様、左右に並んだブロック1の鉄筋11、13をカプラー12により接続する。
【0032】
その後、図5(c)に示すように、穴15の内部を含め上下のブロック1間に充填材20を充填するとともに、左右のブロック1間に充填材20を充填する。このように左右のブロック1および上下のブロック1の接続を繰り返すことにより、上下左右のブロック1による接続構造40が形成される。
【0033】
すなわち、接続構造40では、上下段のそれぞれで、左右一対のブロック1がカプラー12による鉄筋11、13の接続と両ブロック1間の充填材20の充填により接続される。また上下段のブロック1が、上段のブロック1の鉄筋14を下段のブロック1の穴15に挿入して穴15及び両ブロック1間に充填材20を充填することにより接続される。
【0034】
こうしてブロック1を防液堤2の周方向に左右に並べるとともに上下段に積層し、隣り合うブロック1間に目地を形成することで、防液堤2が構築される。なお、防液堤2では、LNGの液圧に耐え得る構造とするために周方向および鉛直方向の緊張材(不図示)によるプレストレスが導入される。ブロック1の本体には緊張材を通すためのシース管(不図示)なども設けられる。
【0035】
(4.上下のブロック1の側面)
防液堤2では、上下に渡って目地の幅を一定にし、ブロックの側面の位置を合わせることが施工面や強度等の観点から望ましい。一方、防液堤2に加わる液圧等の力は、防液堤2の高さ位置によって異なっており、これに応じてブロックの接続用の鉄筋の径やカプラーの長さを変化させる場合がある。すなわち、より大きな力が加わる位置では鉄筋の径をより大きくし、より長いカプラーを用いる。
【0036】
ブロック間に最低限必要な距離は前記した通りカプラーの長さLの1.5倍程度に定まるので、上記の場合、ブロック間に最低限必要な距離が高さ位置によって異なることになる。
【0037】
従って、図14のブロック100のように凹部を設けない場合、防液堤2の上下に渡って左右のブロック間の距離を合わせ、ブロックの側面の位置を揃えるためには、カプラーが最も長くなる高さ位置での距離を基準として、その他の高さ位置でも当該距離に合わせる必要があり、目地幅を余分に形成することになる。
【0038】
しかし本実施形態では、ブロック1に凹部10を設けることで、接続用の鉄筋の径が異なりカプラーの長さが異なる場合でも、目地幅を小さくしつつ、ブロックの側面の位置を上下で合わせることができる。
【0039】
この例を示すのが図6であり、図6(a)の例では中層、高層、低層の順で鉄筋の径が大きく、カプラーが長くなっている。図6(a)では、カプラー102が最も短い中層のブロック100間の距離D1を基準として、他の層のブロック1間の距離もD1となるように、凹部10の深さが定められている。なお、カプラー12が最も長い低層におけるブロック1の凹部10の深さは、カプラー12の長さが中程度の高層におけるブロック1の凹部10よりも大きくなっている。
【0040】
図6(b)の例でも、中層、高層、低層の順で鉄筋の径が大きく、カプラーが長くなるが、この例ではカプラー102の長さが中程度となる高層のブロック100間の距離D2を基準として、この距離に合うように、低層のブロック1における凹部10の深さが定められる。
【0041】
図6(c)の例では、高層、中層、低層の順で鉄筋の径が大きく、カプラーも長くなっており、カプラー102が最も短い高層のブロック100間の距離D3を基準として、他の層のブロック1間の距離もD3となるように、凹部10の深さが定められている。カプラー12が最も長い低層におけるブロック1の凹部10の深さは、カプラー12の長さが中程度の中層におけるブロック1の凹部10よりも大きく定められる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、鉄筋11がブロック1の凹部10から突出しているので、凹部10の深さの分、ブロック1間の距離を狭くでき、目地として用いる充填材20の量が減り、温度ひび割れ等も抑制できる。その他、充填材20の充填時の型枠スパンを小さくでき、また凹部10に充填された充填材20によりせん断耐力が向上する利点もある。
【0043】
また、凹部10は、鉛直方向に沿って見たときに、上面が上に向かって傾斜しているので、充填材20の充填時の妨げにもならない。結果、ブロック1間で目地の施工が容易にできる。
【0044】
さらに本実施形態では、穴15に鉄筋14を挿し込むことにより上下段のブロック1を接続するが、この場合ブロック1を左右に移動させることができないので、本実施形態のように左右のブロック1をカプラー12で接続するのが特に有効である。
【0045】
また、防液堤2に加わる力によって上下のブロックで鉄筋の径とカプラーの長さを変化させる場合でも、ブロック1に凹部10を設けることで、ブロック1間の距離を小さく保ち、且つ上下のブロック1の側面の位置を揃えることができる。
【0046】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、本実施形態ではブロック1を用いてLNGタンク200の防液堤2を構築したが、ブロック1は、その他の貯留槽の側壁などの円筒状構造物、あるいはそれ以外の壁体等の構造物にも適用可能である。また、凹部10は本体の右側面に設けたが、これに替えて本体の左側面に設けることも可能である。さらに、カプラー12にはモルタル注入式のものを用いたが、鉄筋11、13と螺合するネジ式のものでもよい。この場合、鉄筋11、13の外周面にネジが設けられ、カプラー12の内側には鉄筋11、13のネジと螺合するネジ孔が設けられる。鉄筋11、13としては、端部をネジ加工した鉄筋のほか、鉄筋の節がネジ状になったネジ節鉄筋も使用可能であり、カプラー12として上記ネジ節鉄筋専用のカプラーを用いることも可能である。鉄筋11、13の接続時には、カプラー12を回転させ鉄筋11から引き出して鉄筋13に外嵌した後、カプラー12内に樹脂等の充填材を注入する。
【0047】
以下、本発明の別の例について第2〜第5の実施形態として説明する。各実施形態は第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。また、第1の実施形態も含め、各実施形態の構成は必要に応じて組み合わせて用いることが可能である。
【0048】
[第2の実施形態]
第2の実施形態として、ブロックの凹部の形状が異なる例について、図7図8を参照して説明する。
【0049】
図7(a)は、凹部10aの底面が、鉛直方向に沿って見た場合に、上下面の傾斜と連続する曲線を有する円弧状となっている例である。また図7(b)は、凹部10bの下面が水平面となっている例である。図7(c)の例では、凹部10cの形状が、円錐の上部を切断して切断面を凹部10cの底面としたものになっている。
【0050】
図8はプレキャストブロック1aを示す図である。図8(a)はブロック1aを正面から見た図であり、図8(b)はブロック1aの右側面を見た図である。この例では、水平方向の凹部が上面を持たず、ブロック1aの上下端部の間を連続する溝10dを形成している。
【0051】
各々の例において、凹部以外の点については第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と同様、左右のブロックを接続する際にブロック間の距離を小さくでき、且つ充填材の充填が妨げられず目地の施工が容易となるなどの効果が得られる。
【0052】
[第3の実施形態]
図9(a)は第3の実施形態のプレキャストブロック1bを示す図である。このブロック1bでは、左右の側面に水平方向の凹部10が設けられており、鉄筋11、13が各凹部10から突出している。
【0053】
このように左右の側面に凹部10を設けることによって、図9(b)に示すように、左右のブロック1bの接続時にブロック1b間の距離をさらに短くできる。ただし、カプラー12にモルタル注入式のものを用いる場合、カプラー12へのモルタル注入の完了時には、矢印Bに示すようにカプラー12から鉄筋13側の凹部10内にモルタルが溢れるので、完了確認を目視で行うことが若干難しい。この点では、第1の実施形態のようにブロック1の鉄筋13側の側面が平坦な方がモルタル注入の完了確認が容易である。前記したようにネジ式のカプラーを用いた接続を行い、この際カプラー内に樹脂等を注入する場合も同様である。
【0054】
[第4の実施形態]
第1の実施形態ではブロック1を用いて防液堤2(壁体)を構築する例について述べたが、本発明のブロックは壁体以外にも適用可能である。第4の実施形態では、床構造に用いるブロックの例について説明する。
【0055】
図10(a)のプレキャストブロック1cは、本体が水平方向の矩形板状であり、一方の側面に第1の実施形態と同様の凹部10と鉄筋11が設けられる。凹部10と鉄筋11は当該側面の幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられる。凹部10と鉄筋11は複数段(図の例では2段)配置される。鉄筋11にはカプラー12が予め取付けられる。
【0056】
本体の反対側の側面では、第1の実施形態と同様の鉄筋13(不図示)が、鉄筋11と対応する位置に設けられる。
【0057】
ブロック1c同士の接続を行うには、例えば、図10(b)の矢印Cに示すようにいずれかのブロック1c(図の例では右側のブロック1c)を鉛直方向に移動させることにより、ブロック1c間の水平距離を必要な目地幅の値に保ちつつ、両ブロック1cの対向する側面の鉄筋11、13の位置を合わせる。以下第1の実施形態と同様の手順により鉄筋11、13をカプラー12により接続し、両ブロック1c間に充填材を充填して目地を形成する。この繰返しにより、床構造の構築が可能である。
【0058】
あるいは、両ブロック1cの対向する側面の鉄筋11、13の位置を合わせる際に、図10(c)の矢印Dに示すように、一方のブロック1c(図の例では右側のブロック1c)を、当該ブロック1cの鉄筋13(不図示)を設けた側面の幅方向に、ブロック1c間の水平距離を必要な目地幅の値に保ちつつスライド移動させてもよい。勿論、他方のブロック1c(図の例では左側のブロック1c)を、当該ブロック1cの鉄筋11を設けた側面の幅方向に、上記と同様にしてスライド移動させることも可能である。
【0059】
図11のプレキャストブロック1dは、前記した溝10dを凹部10の代わりに設けた点で図10(a)のブロック1cと異なる。このブロック1dも、上記と同様にして接続できる。
【0060】
以上説明した第4の実施形態でも、第1の実施形態と同様、左右のブロックを接続する際にブロック間の距離を小さくでき、且つ充填材の充填が妨げられず目地の施工が容易となるなどの効果が得られる。
【0061】
[第5の実施形態]
第1の実施形態では、上下のブロック1の接続時に上段のブロック1を下方に移動させ、本体下面の鉄筋14を下段のブロック1の本体上面の穴15に挿入したが、上下のブロックの接続はこれに限らず、鉛直方向のブロックの移動を伴うものであればよい。第5の実施形態では、上下のブロックの接続の別の例について説明する。
【0062】
図12(a)のプレキャストブロック1eは、本体上面において、直接穴15を形成する代わりに埋込式カプラー16を設けた点で第1の実施形態のブロック1と異なる。埋込式カプラー16は円筒状であり、内側に穴16aを有する。埋込式カプラー16の下端部には鉄筋14の上端が挿入される。
【0063】
上下のブロック1eの接続時は、図12(b)の矢印Eに示すように上段のブロック1eを下方に移動させ、本体下面の鉄筋14を下段のブロック1eの本体上面の埋込式カプラー16の穴16aに挿入する。その後、穴16aに充填材を注入し、両ブロック1e間に目地を形成すればよい。
【0064】
図13(a)のプレキャストブロック1fは、本体上面と本体下面の両方に埋込式カプラー16を設けたものである。本体内には鉄筋17も設けられており、本体上面の埋込式カプラー16の下端部に鉄筋17の上端が挿入され、本体下面の埋込式カプラー16の上端部に鉄筋17の下端が挿入される。この例では、埋込式カプラー16は内側をネジ孔としたネジ式のものとする。
【0065】
上下のブロック1fの接続時は、例えば、図13(b)に示すように両端にネジ18aを設けた接続具18を用いる。上段のブロック1fを矢印Fに示すように下方に移動させ、接続具18の各ネジ18aを、上段のブロック1fの本体下面の埋込式カプラー16と下段のブロック1fの本体上面の埋込式カプラー16にそれぞれ螺合させ、各埋込式カプラー16の穴16aへと挿入する。その後、両ブロック1f間に目地を形成する。
【0066】
ブロック1e、1fのその他の構成は第1の実施形態と略同様であり、左右のブロックの接続はカプラー12等を用いて第1の実施形態と同様に行われる。従って第5の実施形態でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。また第5の実施形態のように埋込式カプラー16の穴16aに鉄筋14や接続具18を挿入して上下のブロックの接続を行う場合も、第1の実施形態と同様ブロックを左右に動かすことができないので、左右のブロックをカプラー12で接続するのが特に有効になる。
【0067】
以上、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、100;プレキャストブロック
2;防液堤
3a;内槽
3b;外槽
4;杭
5;底版
7;地盤
10、10a、10b、10c;凹部
10d;溝
11、13、14、17、101、103;鉄筋
12、102;カプラー
15、16a;穴
16;埋込式カプラー
18;接続具
18a;ネジ
20;充填材
30、40;接続構造
200;LNGタンク
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