(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。実施形態に係る回転電機は、回転軸方向に沿って磁路を形成する横方向磁束型回転電機(トランスバーサル・フラックス・モータ)である。以下の実施形態では、同一の構成要素に同一の参照符号を付して、重ねての説明を適宜省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る回転電機1を概略的に示す斜視図であり、
図2は、回転電機1の分解断面斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、回転電機1は、回転軸z回りに回転することができるように軸受21a、21bにより支持されたロータ2と、所定の空隙を持ってロータ2の外周面に対向して設けられたステータ3と、を備える。ロータ2は、回転軸zを中心とする略円筒形状を有する。ステータ3は、回転軸zと同軸の略円筒形状を有し、ロータ2を取り囲むように設けられている。
【0011】
回転電機1は、3つの基本ユニット4が回転軸方向(回転軸zの方向)に沿って配設された3段式(3相)の回転電機である。ここでは、
図2に示すように、3つの基本ユニット4をU相、V相、W相とラベル付けする。各相の基本ユニット4は、回転子5及び電機子7を含む。基本ユニット4の数は、設計条件に応じて定まるものであって、2以上の任意の整数である。基本ユニット4の数を変更することによって、回転電機1の出力を容易に調整することができる。
【0012】
ロータ2は、回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の回転子5と、これらの回転子5に挿嵌されるシャフト20と、を含む。回転子5はシャフト20に固定され、シャフト20は回転自在に軸受21a、21bにより支持されている。
図2には、回転子5の詳細構造は図示されていない。各相の回転子5は、回転子鉄心及び永久磁石を含む。回転子5の外周部には、回転方向にN極とS極が交互に配置されるようにして複数の(例えば48個の)磁極が設けられている。
【0013】
ステータ3は、軸受21a、21bを備えた軸受ホルダ6a、6bと、軸受ホルダ6a、6b間に回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の電機子7と、を含む。各相の電機子7は、所定の空隙を持って、対応する回転子5に対向配置される。
【0014】
図3Aは、ステータ3の一部を分解した状態で示す分解斜視図であり、
図3Bは、ステータ3の一部をより細かく分解した状態で示す分解斜視図である。
図3A及び
図3Bでは、軸受ホルダ6a、6bの図示を省略している。
【0015】
図3Aに示されるように、各相の電機子7は、固定子鉄心Lと、固定子鉄心Rと、固定子鉄心L及び固定子鉄心Rの外側に設けられ、固定子鉄心L及び固定子鉄心Rに磁気的に連結された固定子鉄心9と、固定子鉄心Lと固定子鉄心Rとの間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心L、固定子鉄心R、固定子鉄心9、及び電機子コイル10は、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心L及び固定子鉄心Rは回転軸方向に対向している。固定子鉄心9はU相、V相、W相の電機子7に共通の部材である。固定子鉄心9の内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。
【0016】
U相、V相、W相の電機子7は、相間スペーサ14を介して連結されている。具体的には、U相の固定子鉄心RとV相の固定子鉄心Lとの間に相間スペーサ14が配置され、V相の固定子鉄心RとW相の固定子鉄心Lとの間に相間スペーサ14が配置されている。
図3Bに示されるように、相間スペーサ14の外周部には、回転軸方向に延在するキー溝15が設けられている。
【0017】
図3Aに示されるように、固定子鉄心Lは、段スキューを形成するために、複数の(本実施形態では2つの)部材に分割されている。同様に、固定子鉄心Rは、段スキューを形成するために、複数の(本実施形態では2つの)部材に分割されている。固定子鉄心Lの分割数は、固定子鉄心Rの分割数と同じであってもよく、異なっていてもよい。固定子鉄心Lは、回転方向に相対的な位相角を持って固定子鉄心L1と固定子鉄心L2を連結した段スキュー構造を有する。すなわち、固定子鉄心L1は、回転方向に所定の角度だけ相対的にずらして固定子鉄心L2に連結されている。同様に、固定子鉄心Rは、回転方向に相対的な位相角を持って固定子鉄心R1と固定子鉄心R2を連結した段スキュー構造を有する。すなわち、固定子鉄心R1は、回転方向に所定の角度だけ相対的にずらして固定子鉄心R2に連結されている。段スキューを設けることは、トルクリップル低減に有効である。
【0018】
ここでは、U相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2を固定子鉄心UL1、UL2、UR1、UR2と表記し、V相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2を固定子鉄心VL1、VL2、VR1、VR2と表記し、W相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2を固定子鉄心WL1、WL2、WR1、WR2と表記することもある。
【0019】
固定子鉄心L1、L2、R1、R2は同一形状(同一構造)を有する。ここでは、代表として固定子鉄心L1について説明する。固定子鉄心L1は、
図4に示すように、円環部と、円環部の内周面から中心方向に突出し且つ等間隔に配置された複数の突出部と、を含む。突出部は磁極8に対応する。すなわち、複数の磁極8が固定子鉄心L1の内周部に回転方向に沿って等間隔に設けられている。なお、磁極8は不等間隔に配置されていてもよい。固定子鉄心L1の外周部には、回転軸方向に延びる複数のキー溝12が設けられている。本実施形態では、キー溝12は、U相、V相、及びW相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2の相対的な回転方向位相角を設定するために使用される。
図4に示される例では、磁極8の数は24であり、キー溝12の数は6である。ここでは、磁極8を備えた固定子鉄心(例えば固定子鉄心L1)をティース部と称し、固定子鉄心9を外装部と称することもある。
【0020】
固定子鉄心L1、L2、R1、R2のキー溝12及び相間スペーサ14のキー溝15と固定子鉄心9のキー溝11とにより形成される空間にキー部品13が嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心L1、L2、R1、R2及び相間スペーサ14は、固定子鉄心9に対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心9の内側に配置される。
【0021】
回転電機1においては、U相、V相、W相の電機子コイル10に3相交流電流を印加することにより、ロータ2が回転する。具体的には、U相、V相、W相の電機子コイル10に3相交流電流が印加されると、回転子5から固定子鉄心L、固定子鉄心9、固定子鉄心Rを経由して回転子5に至る磁路又は回転子5から固定子鉄心R、固定子鉄心9、固定子鉄心Lを経由して回転子5に至る経路を磁路とする閉ループ磁束が基本ユニット4それぞれに発生し、磁束と回転子5の永久磁石との磁気的作用によってロータ2が回転軸z回りに回転する。
【0022】
回転電機1は3相モータであるので、U相を基準にしてV相及びW相それぞれに電気角で120deg、240degの位相角、機械角で5deg、10degの回転方向位相角を与えることが必要である。
図5は、回転電機1における回転方向位相角の設定例を示す。
図5に示される回転方向位相角は、U相の固定子鉄心UL1を基準にした相対的な回転方向位相角に対応する。また、各固定子鉄心に付された参照符号を用いてその固定子鉄心の回転方向位相角を表している。例えば、UL1=0は、固定子鉄心UL1の回転方向位相角が0degであることを示す。
【0023】
図5に示されるように、U相に関しては、UL1=UR1=0であり、UL2=UR2=1.25である。V相に関しては、VL1=VR1=5であり、VL2=VR2=6.25である。固定子鉄心VL1を基準にすると、固定子鉄心VR1の回転方向位相角は0degであり、固定子鉄心VL2、VR2の回転方向位相角は1.25degである。W相に関しては、WL1=WR1=10であり、WL2=WR2=11.25である。固定子鉄心WL1を基準にすると、固定子鉄心WR1の回転方向位相角は0degであり、固定子鉄心WL2、WR2の回転方向位相角は1.25degである。
【0024】
図6を参照して、固定子鉄心L1、L2、R1、R2の外周部においてキー溝12を設ける位置について説明する。前述したように固定子鉄心L1、L2、R1、R2は同一形状に形成されるので、ここでは、代表として固定子鉄心L1について説明する。
【0025】
図6は、固定子鉄心L1を概略的に示す正面図である。
図6に示されるように、固定子鉄心L1は24個の磁極8を備え、固定子鉄心L1の外周部の位置A〜Fに6つのキー溝12が形成されている。位置A〜Fは次のように設定される。矢印で示される基準位置に位置Aを設定する。基準位置から181.25deg回転した位置に位置Dを設定する。すなわち、位置Dは、基準位置から180deg回転した位置からさらに1.25deg回転した位置である。ここでいう回転は、図
6における反時計回りの回転を示す。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Aのキー溝12を基準にした位置Dのキー溝12の相対的な回転方向位相角は1.25degである。
【0026】
基準位置から65deg回転した位置に位置Bを設定する。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Aのキー溝12を基準にした位置Bのキー溝12の相対的な回転方向位相角は5degである。
位置Bから181.25deg回転した位置に位置Eを設定する。すなわち、位置Eは、位置Bから180deg回転した位置からさらに1.25deg回転した位置である。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Bのキー溝12を基準にした位置Eのキー溝12の相対的な回転方向位相角は1.25degである。つまり、位置Aのキー溝12を基準にした位置Eのキー溝12の相対的な回転方向位相角は6.25degである。
【0027】
基準位置から130deg回転した位置に位置Cを設定する。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Aのキー溝12に対する位置Cのキー溝12の相対的な回転方向位相角は10degである。
位置Cから181.25deg回転した位置に位置Fを設定する。すなわち、位置Fは、位置Cから180deg回転した位置からさらに1.25deg回転した位置である。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Cのキー溝12を基準にした位置Fのキー溝12の相対的な回転方向位相角は1.25degである。つまり、位置Aのキー溝12を基準にした位置Fのキー溝12の相対的な回転方向位相角は11.25degである。
【0028】
このように、位置Aのキー溝12を基準として位置B〜Fのキー溝12を組み合わせることにより、1.25deg、5deg、6.25deg、10deg、11.25degの回転方向位相角を設定することができる。従って、位置A〜Fのキー溝12を備えた固定子鉄心を用いることにより、
図5に示される6種類の回転方向位相角に対応することができる。
【0029】
図7A、7B、7C、7Dは、固定子鉄心9に取り付けられた状態でのU相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2の配置を示し、
図8A、8B、8C、8Dは、固定子鉄心9に取り付けられた状態でのV相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2の配置を示し、
図9A、9B、9C、9Dは、固定子鉄心9に取り付けられた状態でのW相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2の配置を示している。
図7Aから
図9Dに示される矢印は基準位置を示す。
【0030】
図7Aに示されるように、固定子鉄心UL1は、位置Aのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。すなわち、固定子鉄心UL1の位置Aのキー溝12と固定子鉄心9のキー溝11とにより形成される空間にキー部品13が嵌め込まれている。
図7Bに示されるように、固定子鉄心UL2は、位置Dのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図7Cに示されるように、固定子鉄心UR1は、位置Aのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図7Dに示されるように、固定子鉄心UR2は、位置Dのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図8Aに示されるように、固定子鉄心VL1は、位置Bのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図8Bに示されるように、固定子鉄心VL2は、位置Eのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図8Cに示されるように、固定子鉄心VR1は、位置Bのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図8Dに示されるように、固定子鉄心VR2は、位置Eのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図9Aに示されるように、固定子鉄心WL1は、位置Cのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図9Bに示されるように、固定子鉄心WL2は、位置Fのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図9Cに示されるように、固定子鉄心WR1は、位置Cのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
図9Dに示されるように、固定子鉄心WR2は、位置Fのキー溝12を用いて固定子鉄心9に対して位置決めされる。
【0031】
以上のように、第1の実施形態に係る回転電機1によれば、U相、V相、W相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2はすべて1種類の固定子鉄心に共通化される。これにより、固定子鉄心L1、L2、R1、R2は、1種類のプレス用金型を用いて型抜き加工で一括成形することができる。その結果、作製に必要なプレス用金型の種類を最小限に抑えることができ、製造コストを削減することができる。
【0032】
なお、
図5に示した回転方向位相角は、回転電機1において固定子鉄心(ティース部)が24個の磁極を備える場合における設定例である。固定子鉄心の回転方向位相角は、
図5に示した設定例に限定されるものではなく、極数で定まる設計要件である。例えば、固定子鉄心が20個の磁極を備える場合は、U相を基準にしてV相及びW相それぞれに電気角で120deg、240degの位相角、機械角で6deg、12degの回転方向位相角が与えられる。また、段スキューを形成する回転方向位相角は、U相の固定子鉄心UL1を基準にして、UL2=UR2=1.5、UR1=0である。V相に関しては、U相の固定子鉄心UL1を基準にして、VL1=VR1=6、VL2=LR2=7.5である。固定子鉄心VL1を基準とした場合は、固定子鉄心VL2、LR2の回転方向位相角は1.5degである。W相に関しては、WL1=WR1=12、WL2=WR2=13.5である。固定子鉄心WL1を基準とした場合は、固定子鉄心WL2、WR2の回転方向位相角は1.5degである。以下の実施形態においても同様であり、極数に応じて定まる回転方向位相角は実際の機器設計において適宜変更されて使用されるものである。極数は、設計対象の機器に求められるトルクや回転数などの各種仕様値に基づいて、設計者が定めるものである。
【0033】
(第2の実施形態)
図10から
図12を参照して第2の実施形態を説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同じ部分についての説明を適宜省略する。
【0034】
図10は、第2の実施形態に係る回転電機100を概略的に示す斜視図であり、
図11は、回転電機100を分解した状態で示す分解断面斜視図である。
図10及び
図11に示されるように、回転電機100は、回転軸z回りに回転することができるように軸受21a、21bにより支持されたロータ2と、所定の空隙を持ってロータ2の外周面に対向して設けられたステータ3と、を備える。
【0035】
回転電機100は、3つの基本ユニット4が回転軸方向に沿って配設された3段式(3相)の回転電機である。各相の基本ユニット4は、回転子5及び電機子107を含む。ロータ2は、回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の回転子5と、これらの回転子5に挿嵌されるシャフト20と、を含む。ステータ3は、軸受21a、21bを備えた軸受ホルダ6a、6bと、軸受ホルダ6a、6b間に回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の電機子107と、を含む。各相の電機子107は、所定の空隙を持って、対応する回転子5に対向配置される。
【0036】
図12は、ステータ3の一部を分解した状態で示す分解斜視図である。
図12では、軸受ホルダ6a、6bの図示を省略している。
図12に示されるように、U相、V相、W相の電機子107は、相間スペーサ14を介して連結されている。
【0037】
U相の電機子107は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心UL1、UL2、UR1、UR2と、固定子鉄心UL1、UL2、UR1、UR2の外側に設けられ、固定子鉄心UL1、UL2、UR1、UR2に磁気的に連結された固定子鉄心109aと、固定子鉄心UL2と固定子鉄心UR1との間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心109aは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心109aの内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。固定子鉄心UL1、UL2、UR1、UR2のキー溝12と固定子鉄心109aのキー溝11とにより形成される空間にキー部品113aが嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心UL1、UL2、UR1、UR2は、固定子鉄心109aに対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心109aの内側に配置される。
【0038】
V相の電機子107は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心VL1、VL2、VR1、VR2と、固定子鉄心VL1、VL2、VR1、VR2の外側に設けられ、固定子鉄心VL1、VL2、VR1、VR2に磁気的に連結された固定子鉄心109bと、固定子鉄心VL2と固定子鉄心VR1との間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心109bは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心109bの内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。固定子鉄心VL1、VL2、VR1、VR2のキー溝12と固定子鉄心109bのキー溝11とにより形成される空間にキー部品113bが嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心VL1、VL2、VR1、VR2は、固定子鉄心109bに対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心109bの内側に配置される。
【0039】
W相の電機子107は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心WL1、WL2、WR1、WR2と、固定子鉄心WL1、WL2、WR1、WR2の外側に設けられ、固定子鉄心WL1、WL2、WR1、WR2に磁気的に連結された固定子鉄心109cと、固定子鉄心WL2と固定子鉄心WR1との間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心109cは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心109cの内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。固定子鉄心WL1、WL2、WR1、WR2のキー溝12と固定子鉄心109cのキー溝11とにより形成される空間にキー部品113cが嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心WL1、WL2、WR1、WR2は、固定子鉄心109cに対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心109cの内側に配置される。
【0040】
このように、第2の実施形態では、固定子鉄心109a、109b、109c及びキー部品113a、113b、113cはU相、V相、W相それぞれのために設けられている。第2の実施形態に係る固定子鉄心109a、109b、109c及びキー部品113a、113b、113cは、第1の実施形態に係る固定子鉄心9及びキー部品13(
図3A)をU相、V相、W相のために3分割したものに相当する。それにより、相ごとに電機子107の組み立てを行うことができる。
【0041】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比べて部品点数が増加するものの、大型の回転電機における製造性、組立作業性を向上させることができる。その結果、製造コストを削減することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図13から
図15Bを参照して第3の実施形態に係る回転電機を説明する。第3の実施形態において、第1の実施形態と同じ部分についての説明を適宜省略する。
【0043】
図13は、第3の実施形態に係る回転電機に含まれるステータ3の一部を概略的に示す分解斜視図である。本実施形態に係る回転電機は、3つの基本ユニットが回転軸方向に沿って配設された3段式(3相)の回転電機である。
図13に示されるように、各相の基本ユニットは、回転子(図示せず)及び電機子207を含む。ステータ3は、回転子を含むロータ(図示せず)を回転自在に支持する軸受を備えた軸受ホルダ(図示せず)と、軸受ホルダ間に回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の電機子207と、を含む。各相の電機子207は、所定の空隙を持って、対応する回転子に対向配置される。
【0044】
各相の電機子207は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aと、固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aの外側に設けられ、固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aに磁気的に連結された固定子鉄心9と、固定子鉄心L2aと固定子鉄心R1aとの間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aはこの順番で回転軸方向に配置されている。固定子鉄心L1aは、回転方向に所定の角度だけ相対的にずらして固定子鉄心L2aに連結されている。固定子鉄心R1aは、回転方向に所定の角度だけ相対的にずらして固定子鉄心R2aに連結されている。本実施形態では、固定子鉄心9はU相、V相、W相に共通の部材である。固定子鉄心9の内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。
【0045】
U相、V相、W相の電機子207は、相間スペーサ14を介して連結されている。U相の固定子鉄心R2aとV相の固定子鉄心L1aとの間に相間スペーサ14が配置され、V相の固定子鉄心R2aとW相の固定子鉄心L1aとの間に相間スペーサ14が配置されている。相間スペーサ14の外周部には、回転軸方向に延在するキー溝15が設けられている。
【0046】
固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aのキー溝12及び相間スペーサ14のキー溝15と固定子鉄心9のキー溝11とにより形成される空間にキー部品13が嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2a及び相間スペーサ14は、固定子鉄心9に対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心9の内側に配置される。
【0047】
ここでは、U相の固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aを固定子鉄心UL1a、UL2a、UR1a、UR2aと表記し、V相の固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aを固定子鉄心VL1a、VL2a、VR1a、VR2aと表記し、W相の固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aを固定子鉄心WL1a、WL2a、WR1a、WR2aと表記することもある。
【0048】
図14は、本実施形態に係る回転電機における回転方向位相角の設定例を示している。
図14に示される回転方向位相角は、固定子鉄心UL1aを基準にした相対的な回転方向位相角に対応する。また、各固定子鉄心に付された参照符号を用いてその固定子鉄心の回転方向位相角を表している。例えば、UL1a=0は、U相の固定子鉄心UL1aの回転方向位相角が0degであることを示す。
【0049】
図14に示されるように、U相に関しては、UL1a=0、UR1a=UL2a=1.25、UR2a=2.5である。V相に関しては、VL1a=5、VR1a=VL2a=6.25、VR2a=7.5である。固定子鉄心VL1aを基準にすると、固定子鉄心VL2a、VR1aの回転方向位相角は1.25degであり、固定子鉄心VR2aの回転方向位相角は2.5degである。W相に関しては、WL1a=10であり、WR1a=WL2a=11.25、WR2a=12.5である。固定子鉄心WL1aを基準にすると、固定子鉄心WL2a、WR1aの回転方向位相角は1.25degであり、WR2aの回転方向位相角は2.5degである。このように、本実施形態に係る回転電機は、9種類の回転方向位相角を備える。
【0050】
図15A及び
図15Bを参照して、固定子鉄心の外周部においてキー溝12を設ける位置について説明する。固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aは同一形状を有するので、ここでは、代表として固定子鉄心L1aについて説明する。
【0051】
図15A及び
図15Bは、固定子鉄心L1aを概略的に示す斜視図及び正面図である。
図15A及び
図15Bに示されるように、固定子鉄心L1aの内周部に24個の磁極8が設けられ、固定子鉄心L1aの外周部の位置A〜Iに9つのキー溝12が形成されている。位置A〜Iは次のように設定される。基準位置に位置Bを設定する。基準位置から118.75deg回転した位置に位置Aを設定する。すなわち、位置Aは、位置Bから
120deg回転した位置から逆方向に1.25deg回転した位置である。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Aのキー溝12を基準にした位置Bのキー溝12の相対的な回転方向位相角は1.25degである。
【0052】
位置Bから241.25deg回転した位置に位置Cを設定する。すなわち、位置Cは、位置Bから180deg回転した位置から61.25(=60+1.25)deg回転した位置である。24個の磁極8が等間隔に設けられる場合、位置Aのキー溝12を基準にした位置Bのキー溝12の相対的な回転方向位相角は2.5degである。
【0053】
位置Aから5deg回転した位置に位置Dを設定し、位置Aから10deg回転した位置に位置Gを設定する。位置Bから5deg回転した位置に位置Eを設定し、位置Bから10deg回転した位置に位置Hを設定する。位置Cから5deg回転した位置に位置Fを設定し、位置Cから10deg回転した位置に位置Iを設定する。
【0054】
このように、位置Aのキー溝12を基準として位置B〜Iのキー溝12を組み合わせることにより、1.25deg、2.5deg、5deg、6.25deg、7.5deg、10deg、11.25deg、12.5degの回転方向位相角を設定することができる。従って、位置A〜Iのキー溝12を備えた固定子鉄心を用いることにより、
図14に示される9種類の回転方向位相角に対応することができる。
【0055】
以上のように、第3の実施形態に係る回転電機によれば、U相、V相、W相の固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aは1種類の固定子鉄心に共通化される。1種類の固定子鉄心で計9種類の異なる回転方向位相角に対応した段スキューを形成することができるので、第1及び第2の実施形態に比べてさらにトルクリップルを低減することができる。さらに、固定子鉄心L1a、L2a、R1a、R2aは、1種類のプレス用金型を用いて型抜き加工で一括成形することができる。その結果、製造コストを削減することができる。
【0056】
(第4の実施形態)
図16から
図18Cを参照して第4の実施形態に係る回転電機を説明する。第4の実施形態において、第1及び第2の実施形態と同じ部分についての説明を適宜省略する。
【0057】
図16は、第4の実施形態に係る回転電機に設けられるステータ3の一部を概略的に示す分解斜視図である。本実施形態に係る回転電機は、3つの基本ユニットが回転軸方向に沿って配設された3段式(3相)の回転電機である。
図16に示されるように、各相の基本ユニットは、回転子(図示せず)及び電機子307を含む。ステータ3は、回転子を含むロータ(図示せず)を回転自在に支持する軸受を備えた軸受ホルダ(図示せず)と、軸受ホルダ間に回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の電機子307と、を含む。各相の電機子307は、所定の空隙を持って、対応する回転子5に対向配置される。U相、V相、W相の電機子307は、相間スペーサ14を介して連結されている。
【0058】
U相の電機子307は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bと、固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bの外側に設けられ、固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bに磁気的に連結された固定子鉄心309aと、固定子鉄心UL2bと固定子鉄心UR1bとの間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2b及び固定子鉄心309aは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bはこの順番で回転軸方向に配置されている。固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bの外周部には、回転軸方向に延在するキー溝12が設けられている。固定子鉄心309aの内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bのキー溝12と固定子鉄心309aのキー溝11とにより形成される空間にキー部品313aが嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心UL1b、UL2b、UR1b、UR2bは、固定子鉄心309aに対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心309aの内側に配置される。
【0059】
V相の電機子307は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bと、固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bの外側に設けられ、固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bに磁気的に連結された固定子鉄心309bと、固定子鉄心VL2bと固定子鉄心VR1bとの間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2b及び固定子鉄心309bは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bはこの順番で回転軸方向に配置されている。固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bの外周部には、回転軸方向に延在するキー溝12が設けられている。固定子鉄心309bの内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bのキー溝12と固定子鉄心309bのキー溝11とにより形成される空間にキー部品313bが嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心VL1b、VL2b、VR1b、VR2bは、固定子鉄心309bに対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心309bの内側に配置される。
【0060】
W相の電機子307は、複数の磁極8を備えた固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bと、固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bの外側に設けられ、固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bに磁気的に連結された固定子鉄心309cと、固定子鉄心WL2bと固定子鉄心WR1bとの間に設けられた電機子コイル10と、を含む。固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2b及び固定子鉄心309cは、回転軸zを中心とする円環状に形成されている。固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bはこの順番で回転軸方向に配置されている。固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bの外周部には、回転軸方向に延在するキー溝12が設けられている。固定子鉄心309cの内周部には、回転軸方向に延在するキー溝11が設けられている。固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bのキー溝12と固定子鉄心309cのキー溝11とにより形成される空間にキー部品313cが嵌め込まれている。それにより、固定子鉄心WL1b、WL2b、WR1b、WR2bは、固定子鉄心309cに対して回転方向の位置決めがなされ、嵌合状態で固定子鉄心309cの内側に配置される。
【0061】
このように、本実施形態では、固定子鉄心309a、309b、309c及びキー部品313a、313b、313cはU相、V相、W相それぞれのために設けられている。それにより、相ごとに電機子307の組み立てを行うことができる。
【0062】
本実施形態では、U相、V相、W相の電機子307の回転方向位相角(U相、V相、W相間の回転方向位相角差)は、これらの電機子307の配置により設定される。このため、本実施形態では、キー溝12は、各相の固定子鉄心L1、L2、R1、R2の相対的な回転方向位相角を設定するために使用される。固定子鉄心309bは、固定子鉄心309bのキー溝11が固定子鉄心309aのキー溝11を基準にして5degの相対的な回転方向位相角を持つように、図示しない固定方法により固定子鉄心309aに連結される。さらに、固定子鉄心309cは、固定子鉄心309cのキー溝11が固定子鉄心309bのキー溝11を基準にして5degの相対的な回転方向位相角を持つように、図示しない固定方法により固定子鉄心309bに連結される。すなわち、固定子鉄心309cのキー溝11は、固定子鉄心309aのキー溝11を基準にして10degの相対的な回転方向位相角を持つ。
【0063】
図17は、正面方向から見た、U相、V相、W相の電機子307の配置を示している。
図17では、固定子鉄心309a、309b、309cの図示を省略している。
図17に示されるように、キー部品313a、313b、313cは、キー部品313b、313cがキー部品313aを基準にして回転方向に5deg、10degの相対的な回転方向位相角を持つようにして配置されている。
【0064】
図18A、
図18B、
図18Cを参照して、固定子鉄心L1b、L2b、R1b、R2bの外周部においてキー溝12を設ける位置について説明する。固定子鉄心L1b、L2b、R1b、R2bは同一形状を有するので、ここでは、代表して固定子鉄心L1bについて説明する。
【0065】
図18A、
図18B、
図18Cは、固定子鉄心L1bを示す斜視図、正面図、背面図である。
図18Aに示される固定子鉄心L1bは、
図18B及び
図18Cに示されるように、24個の磁極8を備え、固定子鉄心L1bの外周部の位置A、Bに2つのキー溝12が形成されている。位置A、Bは次のように設定される。基準位置に位置Aを設定する。
図18Bにおいて反時計回りに位置Aから178.75deg回転した位置に位置Bを設定する。
【0066】
図18Bの正面図では、位置Bは、位置Aから180deg回転した位置から逆方向に1.25deg回転した位置である。位置Aのキー溝12を基準にした位置Bのキー溝12の相対的な回転方向位相角は−1.25degである。
図18Cの背面図では、位置Bは、位置Aから180deg回転した位置からさらに1.25deg回転した位置である。位置Aのキー溝12を基準にした位置Bのキー溝12の相対的な回転方向位相角は+1.25degである。正面図配置及び背面図配置を組み合わせて用いることにより、0deg、1.25deg、2.5degの3種類の回転方向位相角を設定することができる。
【0067】
以上のように、第4の実施形態に係る回転電機によれば、固定子鉄心309a、309b、309cの回転方向位相角及び固定子鉄心L1b、L2b、R1b、R2bの回転方向位相角を組み合わせることにより、
図14に示される回転方向位相角を実現することができる。そのため、第4の実施形態では、第1及び第2の実施形態に比べてさらにトルクリップルを低減することができる。また、第1から第3の実施形態よりもキー溝12の数が少ない。従って、磁気特性に与えるキー溝12の影響を低く抑えることができるので、第4の実施形態は、低トルクリップルが求められる高性能回転電機への適用に有効である。
【0068】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第4の実施形態の変形例である。第5の実施形態において、第4の実施形態と同じ部分についての説明を適宜省略する。
【0069】
図19は、第5の実施形態に係る回転電機に含まれるステータ3の一部を概略的に示す分解斜視図である。本実施形態に係る回転電機は、3つの基本ユニットが回転軸方向に沿って配設された3段式(3相)の回転電機である。
図19に示されるように、各相の基本ユニットは、回転子(図示せず)及び電機子407を含む。ステータ3は、回転子を含むロータ(図示せず)を回転自在に支持する軸受を備えた軸受ホルダ(図示せず)と、軸受ホルダ間に回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の電機子407と、を含む。各電機子407は、所定の空隙を持って、対応する回転子5に対向配置される。U相、V相、W相の電機子407は、相間スペーサ14を介して連結されている。
【0070】
固定子鉄心Lは、段スキューを形成するように配置された固定子鉄心L1c、L2c、L3cを含み、固定子鉄心Rは、段スキューを形成するように配置された固定子鉄心R1c、R2c、R3cを含む。固定子鉄心L1c、L2c、L3c、R1c、R2c、R3cは同一形状を有する。
【0071】
ここでは、U相の固定子鉄心L1c、L2c、L3c、R1c、R2c、R3cを固定子鉄心UL1c、UL2c、UL3c、UR1c、UR2c、UR3cと表記し、V相の固定子鉄心L1c、L2c、L3c、R1c、R2c、R3cを固定子鉄心VL1c、VL2c、VL3c、VR1c、VR2c、VR3cと表記し、W相の固定子鉄心L1c、L2c、L3c、R1c、R2c、R3cを固定子鉄心WL1c、WL2c、WL3c、WR1c、WR2c、WR3cと表記することもある。
【0072】
図20は、本実施形態に係る回転電機における回転方向位相角の設定例を示している。
図20に示される回転方向位相角は、固定子鉄心UL1cを基準にした相対的な回転方向位相角に対応する。
図20に示されるように、U相に関しては、UL1c=0、UL2c=0.83、UL3c=1.67、UR1c=1.25、UR2c=2.08、UR3c=2.92である。V相に関しては、VL1c=5、VL2c=5.83、VL3c=6.67、VR1c=6.25、VR2c=7.08、VR3c=7.92である。固定子鉄心VL1cを基準にすると、固定子鉄心VL2c、VL3c、VR1c、VR2c、VR3cの回転方向位相角は、0.83deg、1.67deg、1.25deg、2.08deg、2.92degである。W相に関しては、WL1c=10、WL2c=10.83、WL3c=11.67、WR1c=11.25、WR2c=12.08、WR3c=12.92である。固定子鉄心WL1cを基準にすると、固定子鉄心WL2c、WL3c、WR1c、WR2c、WR3cの回転方向位相角は、0.83deg、1.67deg、1.25deg、2.08deg、2.92degである。このように、本実施形態に係る回転電機は、計18種類の回転方向位相角を備える。
【0073】
本実施形態では、第4の実施形態と同様にして、固定子鉄心309a、309b、309cが回転軸方向に連結固定される。具体的には、固定子鉄心309bは、固定子鉄心309bのキー溝11が固定子鉄心309aのキー溝11を基準にして5degの相対的な回転方向位相角を持つように、図示しない固定方法により固定子鉄心309aに連結される。さらに、固定子鉄心309cは、固定子鉄心309cのキー溝11が固定子鉄心309bのキー溝11を基準にして5degの相対的な回転方向位相角を持つように、図示しない固定方法により固定子鉄心309bに連結される。すなわち、固定子鉄心309cのキー溝11は、固定子鉄心309aのキー溝11を基準にして10degの相対的な回転方向位相角を持つ。
【0074】
図21A、
図21Bを参照して、固定子鉄心L1c、L2c、L3c、R1c、R2c、R3cの外周部においてキー溝12を設ける位置について説明する。固定子鉄心L2c、L3c、R1c、R2c、R3cは、固定子鉄心L1cと同一形状を有するので、ここでは、代表して固定子鉄心L1cについて説明する。
【0075】
図21A及び
図21Bは、固定子鉄心L1cを示す斜視図及び正面図である。
図21A及び
図21Bに示されるように、固定子鉄心L1cの外周部に24個の磁極8が設けられ、固定子鉄心L1cの外周部の位置A〜Fに6つのキー溝12が形成されている。位置A〜Fは次のように設定される。基準位置に位置Aを設定する。位置Aから60.83(=60+0.83)deg回転した位置に位置Bを設定する。位置Aのキー溝12を基準にした位置Bのキー溝12の相対的な回転方向位相角は0.83degである。位置Aから121.67(=120+1.67)deg回転した位置に位置Cを設定する。位置Aのキー溝12を基準にした位置Cのキー溝12の相対的な回転方向位相角は1.67degである。位置Aから181.25(=180+1.25)deg回転した位置に位置Dを設定する。位置Aのキー溝12を基準にした位置Dのキー溝12の相対的な回転方向位相角は1.25degである。位置Aから242.08(=180+60+2.08)deg回転した位置に位置Eを設定する。位置Aのキー溝12を基準にした位置Eのキー溝12の相対的な回転方向位相角は2.08degである。位置Aから302.92(=180+120+2.92)deg回転した位置に位置Fを設定する。位置Aのキー溝12を基準にした位置Fのキー溝12の相対的な回転方向位相角は2.92degである。
【0076】
以上のように、第5の実施形態に係る回転電機によれば、固定子鉄心309a、309b、309cの3種類の回転方向位相角と固定子鉄心L1c、L2c、L3c、R1c、R2c、R3cによる6種類の回転方向位相角を組み合わせることにより、
図20に示される18種類の回転方向位相角を実現することができる。このため、第1から第4の実施形態に比べてさらにトルクリップルを低減することができる。第5の実施形態は、低トルクリップルが求められる高性能回転電機への適用に有効である。
【0077】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、第4の実施形態の変形例である。第6の実施形態において、第4の実施形態と同じ部分についての説明を適宜省略する。
【0078】
図22は、第6の実施形態に係る回転電機に含まれるステータ3の一部を概略的に示す分解斜視図である。本実施形態に係る回転電機は、3つの基本ユニットが回転軸方向に沿って配設された3段式(3相)の回転電機である。
図22に示されるように、各相の基本ユニットは、回転子(図示せず)及び電機子507を含む。ステータ3は、回転子を含むロータ(図示せず)を回転自在に支持する軸受を備えた軸受ホルダ(図示せず)と、軸受ホルダ間に回転軸方向に沿って設けられたU相、V相、W相の電機子507と、を含む。各相の電機子507は、所定の空隙を持って、対応する回転子に対向配置される。
【0079】
各相の電機子507は、固定子鉄心Lと、固定子鉄心Rと、固定子鉄心L及び固定子鉄心Rの外側に設けられ、固定子鉄心L及び固定子鉄心Rに磁気的に連結された固定子鉄心309a、309b、309cと、固定子鉄心Lと固定子鉄心Rとの間に設けられた電機子コイル10と、を含む。本実施形態は、固定子鉄心L、Rが分割されていない(段スキューを設けない)点で上述した第1から第5の実施形態と異なる。
【0080】
固定子鉄心L、Rは、同一形状を有するので、ここでは、代表して固定子鉄心Lについて説明する。
図23A及び
図23Bは、本実施形態に係る固定子鉄心Lを示す斜視図及び正面図である。固定子鉄心Lの外周部には、回転軸方向に延在する1つのキー溝12が設けられている。本実施形態では、固定子鉄心ULを基準にして、UL=UR=0、VL=VR=5、WL=WR=10である。キー部品313a、313b、313cを用いて固定子鉄心309a、309b、309cの回転方向位相角を設定することができる。
【0081】
以上のように、第6の実施形態に係る回転電機によれば、段スキューを設けないことにより、第1から第5の実施形態と比べて部品点数が少なく、組立作業性が高い。その結果、製造コストの削減に効果的である。第6の実施形態は、トルクリップルが許容可能な低コスト回転電機への適用に有効である。
【0082】
上述した実施形態のうちの少なくとも1つによれば、ティース部(例えば、
図22に示される固定子鉄心L)及び外装部(例えば、
図22に示される固定子鉄心309a)に位置決め部としてのキー溝を設け、これらのキー溝にキー部品を嵌め込むことによりティース部の相対的な回転方向位相角を成す。これにより、部品(ティース部)の共通化を図ることが可能となる。その結果、製作に必要なプレス用金型の種類を最小限に抑えることができ、製造コストを削減することができる。
【0083】
なお、外装部に対してティース部を位置決めする方法は、上述した例に限定されない。
図24Aから
図24Lを参照して位置決め方法の例を説明する。
図24A、
図24B、
図24D、
図24Eでは、固定子鉄心L及び固定子鉄心9に回転軸方向に延在するキー溝(凹部ともいう)が形成され、キー部品13を用いて位置決めがなされる。
図24Aは、上述した実施形態において採用した位置決め方法である。キー部品13は四角形の断面を有する部材である。キー部品13の断面形状は、
図24Bに示されるように円形であってもよく、
図24Dに示されるように三角形であってもよく、
図24Eに示されるように菱形であってもよい。
【0084】
図24Cは、外装部9に設けた貫通孔に半径方向からピン19を挿入してピン19をティース部Lの凹部に嵌め込む位置決め方法を示している。
図24Fは、ティース部Lに設けられたカット面と外装部9に設けられたカット面とによる位置決め方法を示している。
図24Gから
図24Lは、凸部とこの凸部に係合する凹部とを用いた位置決め方法例を示している。
図24Gは、ティース部Lに回転軸方向に延在する凸部が形成され、外装部9に回転軸方向に延在する凹部が形成されている。例えば、凸部及び凹部の断面形状は矩形状である。凸部及び凹部の断面形状は、
図24Iに示されるように半円形であってもよく、
図24Lに示されるように略台形であってもよい。ティース部Lに複数の凸部が設けられる場合、外装部9に複数の凹部を設ける必要がある。
図24Hは、ティース部Lに回転軸方向に延在する凹部が形成され、外装部9に回転軸方向に延在する凸部が形成されている。例えば、凸部及び凹部の断面形状は矩形状である。凸部及び凹部の断面形状は、
図24Jに示されるように半円形であってもよく、
図24Kに示されるように略台形であってもよい。
【0085】
以上のように、回転方向位相角の位置決め構造は、キー、ピン、凹部、凸部、カット面などを用いて構成することができる。実際の機器設計において適宜、最適な構成を選択することができる。
【0086】
なお、実施形態に係る回転電機は、回転子が電機子の内側に位置するインナーロータである例に限らず、回転子が電機子の外側に位置するアウターロータであってもよい。
【0087】
以下の第7から第9の実施形態では、実施形態に係る回転電機の利用例を説明する。
【0088】
(第7の実施形態)
図25は、第7の実施形態に係る電動車両600を概略的に示している。電動車両600は、第1から第6の実施形態で説明した回転電機のいずれか又はその変形を備える。
図25に示される例では、電動車両600は、第1の実施形態に係る回転電機1を備える。電動車両600は、いわゆるハイブリッド車(HEV;hybrid electric vehicle)である。電動車両600の車体601は、2つの前輪602及び2つの後輪620によって支持されている。前輪602は、駆動シャフト603、ディファレンシャルギア604及び駆動シャフト605を介して回転電機1に接続されている。駆動シャフト605は、回転電機1のロータ2(
図25には図示されていない。)と連結されている。ロータ2は、回転電機1の両側に配置された軸受606によって回転自在に支持されている。なお、軸受606は、回転電機1の軸受21a、21bと共通化してもよく、別に設けても良い。電動車両600は、エンジン607をさらに備え、エンジン607は、連結シャフト608を介してロータ101と連結されている。これにより、エンジン607のトルク及び回転電機1のトルクは、ともに前輪602に伝達され、車体601を駆動する駆動力となる。
【0089】
図26は、回転電機1を含む電動車両600の一部を拡大して詳細に示している。
図26に示されるように、回転電機1の電機子コイル10には、バッテリ609を電源として動作する制御装置610の出力U、V及びWの動力線がそれぞれ結ばれている。回転電機1の電機子コイル10には、互いに120度の位相差を持った三相電流が制御装置610から印加される。制御装置610は、車体601が走行状態から停止状態となる時の回生エネルギーを回収する場合には、回転電機1が発電機として働くように制御する。
【0090】
電動車両は、
図26に示されるようなハイブリッド車に限らず、電気自動車(EV:electric vehicle)であってもよい。
【0091】
(第8の実施形態)
図27は、第8の実施形態に係る風力発電装置700を概略的に示している。風力発電装置700は、第1から第6の実施形態で説明した回転電機のいずれか又はその変形を備える。
図27に示される例では、風力発電装置700は、第1の実施形態に係る回転電機1を備える。風力発電装置700のブレード701は風力によって回転し、回転シャフト702を介して増速機703にトルクが伝達される。増速機703の出力トルクは、回転シャフト704及び軸継手705を介して回転電機1のロータ2(
図27には図示されない)に伝達され、回転電機1によって発電される。発生した電力は、変圧器706及び系統保護装置707を介して電力系統708に供給される。
【0092】
増速機703及び回転電機1を含む回転系要部は、ナセル709と呼ばれる機械室に収容されている。ナセル709は、効率良く風力を得ることができる高さにブレード701が位置するように、タワー710によって支持されている。タワー710は、陸上又は洋上の浮体に設けられた基台711に固定されている。
【0093】
なお、実施形態に係る回転電機は、風力発電装置に用いる例に限らず、例えば水力発電装置を始めとする発電装置全般に用いることができる。
【0094】
(第9の実施形態)
図28は、第9の実施形態に係るロープ式のエレベータ装置800を概略的に示している。エレベータ装置800は、第1から第6の実施形態で説明した回転電機のいずれか又はその変形を備える。
図28に示される例では、エレベータ装置800は、第1の実施形態に係る回転電機1を備える。
【0095】
エレベータ装置800は、巻上機801、かご802、釣合い錘803及びロープ804を備え、昇降路807内に配置されている。巻上機801は、回転電機1及び綱車を含む。ロープ804は、かご802の滑車805、巻上機801、及び釣合い錘803の滑車806に巻き掛けられ、ロープ804の一端が建物などの所定の位置Aに固定され、ロープ804の他端が建物などの所定の位置Bに固定されている。図示しない制御部によって巻上機801が作動されると、回転電機1の発生トルクによって綱車が回転する。巻上機801は、綱車とロープ804との間の摩擦力を利用してロープ804を巻き上げる又は巻き下げることで、かご802を上昇又は下降することができる。
【0096】
なお、第7から第9の実施形態では、実施形態に係る回転電機を電動車両、発電装置及びエレベータ装置に適用した例を説明したが、実施形態に係る回転電機は、電動車両、発電装置及びエレベータ装置に限らず、他の装置にも適用することができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。