(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
積層鉄心はモーターの部品であり、所定の形状に加工された複数の電磁鋼板(加工体)を積み重ね、これらを締結することによって形成される。モーターは積層鉄心からなる回転子(ロータ)及び固定子(ステータ)を備え、固定子にコイルを巻き付ける工程、回転子にシャフトを取り付ける工程などを経て完成する。積層鉄心が採用されたモーターは、従来、冷蔵庫、エアコン、ハードディスクドライブ、電動工具等の駆動源として使用され、近年ではハイブリッドカーの駆動源としても使用されている。
【0003】
積層鉄心を製造する過程において上下方向で隣り合う電磁鋼板同士を締結する手段として、カシメ及び溶接が知られている。これらの締結手段はコスト及び作業効率性の点において優れ、従来より広く採用されている。一方、モーターの高いトルク及び低い鉄損を優先させる場合には、カシメ又は溶接の代わりに、樹脂材料又は接着剤を用いて電磁鋼板同士が締結されることもある。
【0004】
特許文献1は帯状薄板材から打ち抜いた所定枚数の各鉄心を積層状態で結合し、モータコアやトランスコア等の積層鉄心を製造する方法を開示する。特許文献1の
図5には金型から取り出された積層鉄心が図示されている。特許文献1の段落[0016]には「この積層鉄心14は、
図5に示すようにロータ軸孔16の部分は半抜きされた後に押し戻された軸孔用薄板部12によって閉塞されていると共に、当該軸孔用薄板部12に設けられているかしめ結合部17によって上下に隣接する各鉄心21が相互に仮固着されている。」と記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明においては、軸孔用薄板部12の除去に要する力を軽減する手段として軸孔用薄板部12に逃げ孔30,31を設けている。しかし、多数の鉄心が積層された状態にあっては積層体から軸孔用薄板部12(仮カシメ部)を除去する作業を必ずしも容易ではなく、また比較的大きな荷重を積層体に加えることが可能な設備を準備する必要があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、積層鉄心を製造する際、仮カシメ部を十分容易に取り外すことができる積層体及びその製造方法並びに積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、仮カシメを有する複数の加工体が積層され且つ仮カシメによって互いに締結されている積層鉄心用積層体に関する。仮カシメを有する加工体は、開口部と、開口部に設けられており、仮カシメを有する仮カシメ部とを備える。仮カシメ部は、少なくとも3つの頂部を有し且つ当該頂部のうち少なくとも2つの頂部が開口部に対する嵌合部を構成している。
【0009】
上記構成の加工体を備える積層体によれば、積層鉄心を製造する際に仮カシメ部を十分容易に取り外すことができる。本発明においては開口部に対して仮カシメ部の頂部が嵌合している。したがって、特許文献1に記載の発明のようにロータ軸孔16の内周面に対して軸孔用薄板部12の外周面全体が当接する態様と比較して仮カシメ部を十分容易に取り外すことができる。
【0010】
上記加工体の開口部の形状は、複数の角部を有する略多角形状であってもよく、あるいは、円形、楕円形などであってもよい。開口部に設けられる仮カシメ部の頂部の先端は、開口部の輪郭線と一致する位置に形成されていてもよく(
図7参照)、あるいは、開口部の輪郭線よりも内側又は外側に形成されていてもよい(
図8,9参照)。
【0011】
仮カシメ部は、嵌合部を構成する頂部の近傍の側面にくびれ部を有していてもよい(
図7(c)参照)。例えば、くびれ部の深さを適宜設定することで、仮カシメ部の機械的強度を調整することができ、これにより、開口部から仮カシメ部の取り外しやすさを調節することができる。また、仮カシメ部が上記位置にくびれ部を有する構成とすることで、仮カシメ部を打抜き加工によって製造する過程においてバリが生じにくいという利点もある。なお、ここでいう「頂部の近傍」とは頂部の先端から5mm以内の範囲を意味する。
【0012】
開口部に対する仮カシメ部の嵌合強度を求められる強度以上とするとともに、開口部から仮カシメ部を取り外しやすくする観点から、仮カシメ部は、開口部に対する嵌合の強度を調整するための嵌合強度調整部を有してもよい(
図10参照)。
【0013】
本発明は、仮カシメを有する上記積層体から積層鉄心を製造する方法を提供する。すなわち、本発明に係る積層鉄心の製造方法は以下の工程を備える。
(a)仮カシメを有する加工体を被加工板から打ち抜く工程。
(b)複数の加工体を積み重ね、これらを仮カシメによって一体化させる工程。
【0014】
本発明は、上記製造方法によって得た仮カシメを有する積層体から積層鉄心を製造する方法を提供する。すなわち、本発明に係る積層鉄心の製造方法は以下の工程を備える。
(c)上記製造方法によって製造された積層体を樹脂材料、溶接、接着又はこれらを併用して締結する工程。
(d)積層体から仮カシメ部を取り外す工程。
本発明に係る積層鉄心の製造方法によれば、仮カシメ部を積層体から取り外すことで、カシメを有しない積層鉄心を最終的に得ることができる。また、当該製造方法によれば、上記(d)工程において仮カシメ部を十分容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、積層鉄心を製造する際、仮カシメを十分容易に取り外すことができる積層体及びその製造方法並びに積層鉄心の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
(回転子用積層鉄心)
図1及び
図2は本実施形態に係る回転子用の積層鉄心Rの斜視図及び断面図である。積層鉄心Rの形状は略円筒形である。積層鉄心Rは、複数の電磁鋼板MRからなる積層体10と、積層体10の中央部に位置しておりシャフト(不図示)を挿入するための軸孔12と、磁石を挿入するための磁石挿入孔15と、軸孔12と磁石挿入孔15との間に形成された軽量孔18とを備える。なお、
図2には便宜上、計15枚の電磁鋼板MRからなる積層体10を図示したが、電磁鋼板MRの枚数はこれに限定されるものではない。
【0019】
積層鉄心Rは計16個の磁石挿入孔15を有する。隣接する2つの磁石挿入孔15が対をなしており、8対の磁石挿入孔15が積層鉄心Rの外周に沿って等間隔に並んでいる。それぞれの磁石挿入孔15は積層鉄心Rの上面から下面まで延びている。なお、磁石挿入孔15の総数は16個に限定されず、モーターの用途、要求させる性能などに応じて決定すればよい。また、磁石挿入孔15の形状及び位置もモーターの用途、要求させる性能などに応じて決定すればよい。
【0020】
磁石挿入孔15には磁石(不図示)が収容されている。磁石は永久磁石であり、例えばネオジム磁石などの焼結磁石を使用できる。それぞれの磁石挿入孔15に入れる磁石の個数は1つでも2つ以上であってもよい。磁石の種類はモーターの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、焼結磁石の代わりに例えばボンド磁石を使用してもよい。また、積厚方向若しくは幅方向、或いはこれら両方に複数に分割された磁石を使用してもよい。磁石挿入孔15の磁石を入れた後、磁石挿入孔15に樹脂材料16を充填することによって磁石挿入孔15内に磁石を固定することができる。
【0021】
樹脂材料16として、例えば熱硬化性樹脂を使用できる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。樹脂材料16は上下方向で隣り合う電磁鋼板MR同士を接合する。なお、樹脂材料16として熱可塑性樹脂を使用してもよい。樹脂材料16(フラックスバリア部に使用される樹脂材料を除く)は磁性体を含んでもよい。樹脂材料16が磁性体を含む場合、その含有量は5〜90体積%の範囲とすることができる。樹脂材料16における磁性体の含有量が5体積%未満であるとモーターのトルクが低下したり熱膨張率の差に起因するクラックが発生したりする傾向にあり、90体積%を超えると鋼板(加工体)同士が電気的により強固に接続され、これに起因して積層鉄心Rの磁気的特性が低下する傾向にある。
【0022】
積層鉄心Rは、軸孔12と磁石挿入孔15との間に計8個の軽量孔18を有する。軽量孔18の開口形状は略三角形である。8個の軽量孔18は軸孔12の周方向に沿って並んでいる。より具体的には、8個の軽量孔18は積層鉄心Rの中心軸を対称点とする点対称をなすように配置されており且つこの対称点を中心として45°回転させると各軽量孔18の位置が一致するように形成されている。
図2に示すとおり、各軽量孔18は積層鉄心Rの上面から下面までを貫通するように形成されている。なお、軽量孔18は積層鉄心Rを冷却する効果をもたらす場合もある。
【0023】
(仮カシメを有する回転子用積層体)
図3は積層鉄心Rの製造に使用される積層体20の斜視図である。積層体20は、複数枚の加工体WRが積層されたものである。積層体20は、積層鉄心Rにおける軽量孔18に相当する位置に仮カシメ部8を有する。積層体20の磁石挿入孔15内に樹脂材料16を充填する工程、積層体20から仮カシメ部8を取り外す工程などを経ることで上述の積層鉄心Rが製造される。
【0024】
図4は仮カシメ部8が積層してなる仮カシメブロック8Aを模式的に示す縦断面図である。すなわち、
図4は積層体20の径方向の縦断面図であり、
図4の左側が積層体20の内周側(軸孔12側)であり、右側が外周側である。仮カシメ部8は中央部に形成された仮カシメ8aを有する。なお、積層体20の最下層をなす加工体WRには仮カシメ8aの代わりに貫通孔8hが形成されている。これは、積層体20を連続して製造する際、既に製造された積層体20に対して次に製造する積層体20が仮カシメ8aによって締結されないようにするためである。
【0025】
図5は各々の加工体WR(
図4に示す最下層の加工体WRを除く。)が有する仮カシメ部8の構成を示す平面図である。この図に示すとおり、仮カシメ部8の形状は略正三角形であり、仮カシメ部8は3つの頂部8bを有する。これらの頂部8bが開口部22の内周面に嵌合しており、本実施形態においては3つの頂部8bが全て開口部22に対する嵌合部をなしている。本実施形態においては開口部22の形状も略正三角形である。
【0026】
上述のとおり、仮カシメ部8及び開口部22の形状がいずれも略正三角形であるため、
図5に示すとおり、頂部8bを構成する二つの辺8cのなす角度(
図5における角度α)は約60°である。また、開口部22の内周面と仮カシメ部8の辺8cとのなす角度(
図5における角度β)も約60°である。なお、仮カシメ部8の頂部8bが開口部22の内周面に嵌合する態様である限り、これらの角度α,βの範囲は40〜100°であってもよく、30〜120°であってもよい。
【0027】
仮カシメ部8は、開口部22を3つの貫通孔22a,22b,22cに区画するように配置されている。これらの貫通孔22a,22b,22cの形状も略正三角形である。貫通孔22a,22b,22cがそれぞれ有する3つの角部は丸みを帯びている。3つの貫通孔22a,22b,22cのうち、隣接する2つの貫通孔の間に頂部8bがそれぞれ形成されている。言い換えれば、被加工板Wから貫通孔22a,22b,22cを打ち抜く工程を経て頂部8bが形成される(
図7参照)。
【0028】
仮カシメ部8は、嵌合部を構成する頂部8bの近傍の側面にくびれ部8dをそれぞれ有する(
図5及び
図7(c)参照)。くびれ部8dの深さを適宜設定することで、仮カシメ部8の機械的強度を調整することができ、これにより、開口部22から仮カシメ部8の取り外しやすさを調節することができる。また、仮カシメ部8が上記位置にくびれ部8dを有する構成とすることで、仮カシメ部8を打抜き加工によって製造する過程においてミスマッチを設けることができ、バリが生じにくいという利点もある。
【0029】
なお、ここでは仮カシメ部8の中央部に1つの仮カシメ部8を形成する場合を例示したが、仮カシメ8aの位置は中央部に限定されるものではなく、また仮カシメ部8の個数も1つに限定されず、複数の仮カシメ8aを仮カシメ部8に設けてもよい。
【0030】
(打抜き装置)
図6は積層体20を構成する加工体WRを打抜き加工によって製造する打抜き装置の一例を示す概要図である。同図に示す打抜き装置100は、巻重体Cが装着されるアンコイラー110と、巻重体Cから引き出された電磁鋼板(以下「被加工板W」という。)の送り装置130と、被加工板Wに対して打抜き加工を行う順送り金型140と、順送り金型140を動作させるプレス機械120とを備える。
【0031】
アンコイラー110は、巻重体Cを回転自在に保持する。巻重体Cを構成する電磁鋼板の長さは例えば500〜10000mである。巻重体Cを構成する電磁鋼板の厚さは0.1〜0.5mm程度であればよく、積層鉄心Rのより優れた磁気的特性を達成する観点から、0.1〜0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板(被加工板W)の幅は50〜500mm程度であればよい。
【0032】
送り装置130は被加工板Wを上下から挟み込む一対のローラ130a,130bを有する。被加工板Wは、送り装置130を介して順送り金型140へと導入される。順送り金型140は、被加工板Wに対して打抜き加工、半抜き加工などを連続的に実施するためのものである。順送り金型140は、打抜き加工によって得た加工体WRを順次重ね合わせて積層体20を製造する機能と、製造した積層体20を排出する機能とを有する。
【0033】
(回転子用積層鉄心の製造方法)
次に積層鉄心Rの製造方法について説明する。積層鉄心Rの製造方法は、仮カシメ8aによって一体化された積層体20を製造するプロセス(下記(A)及び(B)工程)と、積層体20から積層鉄心Rを製造するプロセス(下記(C)工程及び(D)工程)とを経て製造される。より具体的には、積層鉄心Rの製造方法は以下の工程を備える。
(A)仮カシメ部8を有する加工体WRを順送り金型140において被加工板Wから打ち抜く工程。
(B)複数の加工体WRを積み重ね、これらを仮カシメ8aによって一体化させる工程。
(C)磁石挿入孔15に樹脂材料16を充填することによって積層体20を締結する工程。
(D)仮カシメ部8を積層体20から取り外す工程。
【0034】
(A)工程は仮カシメ8aを有する仮カシメ部8を形成する工程である。(A)工程は、被加工板Wの所定の位置に仮カシメ8aを形成するステップと、被加工板Wから3つの貫通孔22a,22b,22cを打ち抜くステップとを含む。これらのステップはどちらを先に実施してもよい。
図7(a)はこれらのステップを実施した後の被加工板Wの状態を示す平面図である。なお、
図7(a)において3本の破線でつながっている略正三角形は開口部22の輪郭線を示したものである。他の図においても破線を利用し、開口部の輪郭線を示す。
【0035】
(A)工程は、
図7(a)に示す状態の被加工板Wに対して半抜き又は打抜き後のプッシュバックによって3つの頂部8bを形成するステップを更に含む。このステップを実施することで、開口部22に仮カシメ部8を形成することができる。
図7(b)に示す一点鎖線はこのステップで使用するパンチの形状の一例であって頂部8bを形成する部分以外の部分を示したものである。このような形状のパンチを使用することで、上述のくびれ部8dを形成でき且つ仮カシメ部8を形成する過程におけるバリの発生を十分に抑制できる。なお、他の図においても一点鎖線を利用し、仮カシメ部の頂部(嵌合部)を形成するためのパンチの形状を示す。
【0036】
(B)工程において、仮カシメ8aを有する複数の加工体WRを積み重ねるとともにこれらを仮カシメ8aによって一体化させる。なお、加工体WRの板厚偏差の影響を低減する観点から、(B)工程において転積を実施してもよい。
【0037】
(C)工程及び(D)工程に関し、仮カシメ部8を除去しても積層体20がバラバラにならない限り、樹脂材料16による締結前に仮カシメ部8を除去してもよい。例えば、樹脂充填の装置に積層体20を固定した状態とすれば、樹脂材料16の充填前に仮カシメ部8を除去し、その後に磁石挿入孔15に樹脂材料16を充填してもよい。更に、樹脂材料16の充填と同時に仮カシメ部8を除去してもよい。
【0038】
本実施形態に係る積層鉄心の製造方法によれば、仮カシメ部8を積層体20から除去することで、カシメを有しない積層鉄心Rを最終的に得ることができる。また、当該製造方法によれば、上記(d)工程において仮カシメ部8を十分容易に取り外すことができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、
図7(c)に示すように頂部8bの先端が開口部22の輪郭線と一致する位置に形成される場合を例示したが、
図8に示すように、頂部8bの先端が開口部22の輪郭線よりも内側に形成されていてもよい。かかる構成を採用することにより、仮カシメ部8の形成やその除去に起因する応力や歪が製品に影響を与えることをより一層抑制できる。なお、仮カシメ部8を形成する箇所が製品の性能/品質に大きな悪影響を及ぼさない場所であれば、
図9に示すように、頂部8bの先端が開口部22の輪郭線よりも外側(製品側)に形成されていてもよい。
【0040】
上記実施形態においては、仮カシメ部8の本体部に仮カシメ8aのみが形成されている場合を例示したが、開口部22に対する嵌合の強度を調整するための嵌合強度調整部を仮カシメ部8に形成してもよい。例えば、
図10(a)に示すように、仮カシメ部8に開口8eを設けることによって仮カシメ部8の嵌合強度を低くすることができる。これとは逆に
図10(b)に示すように、仮カシメ部8に叩き又はコイニング8fを施すことによって仮カシメ部8の嵌合強度を高くすることができる。
【0041】
上述の開口8eは仮カシメ部8を除去する際に利用してもよい。例えば、この開口8eに棒状のツールを挿入し、このツールを介して仮カシメ部8に対して所定の方向に力を加えてもよい。仮カシメ部8の除去を容易にするための構成は開口に限られず、
図11に示すように仮カシメ部8の本体部の側面に凹み8gを適宜設けてもよい。
【0042】
上記実施形態においては、丸みを帯びた頂部8bを形成する場合を例示したが、頂部8bが開口部22の中心を中心とする円の円弧をなしていてもよい。かかる構成を採用することにより、積層体20の積層方向と直交する方向の力であって仮カシメ部8(仮カシメブロック8A)を回転させる方向の力を加えることによって仮カシメ部8を分離できる(
図12参照)。これを実現するには、
図12(b)に示すように仮カシメ部8の頂部8bが開口部22の中心Cを中心とする円の円弧をなすように形成されればよい。図中に示す二点鎖線の円は開口部22の中心Cを中心とする円を意味する。
【0043】
上記実施形態においては、略正三角形の開口部22に対して上下逆さ向きの略正三角形の仮カシメ部8を形成する場合を例示したが、開口部22及び仮カシメ部8の形状は略三角形に限定されず、また、両者の形状は互いに異なっていてもよい(相似形でなくてもよい)。開口部の形状は、略円形、略楕円形、あるいは、複数の角部を有する略多角形状などであってもよい。また、仮カシメ部は少なくとも3つの頂部を有し且つ当該頂部のうち少なくとも2つの頂部が開口部に対する嵌合部を構成している限り、略正三角形以外の略三角形であってもよく、角部が丸みを帯びた四角形、五角形などの多角形であってもよく、星型であってもよい。
【0044】
図13に示す開口部32は略正五角形であり、この開口部32に略二等辺三角形の仮カシメ部28が形成されている。この場合、上述の(A)工程において、被加工板Wの所定の位置に仮カシメ8aを形成するステップと、被加工板Wから3つの貫通孔32a,32b,32cを打ち抜くステップとを実施すればよい。これらのステップはどちらを先に実施してもよい。
図13(a)はこれらのステップを実施した後の被加工板Wの状態を示す平面図である。なお、
図13(a)において3つの破線でつながっている略五角形は開口部32の輪郭線を示したものである。その後、
図13(a)に示す状態の被加工板Wに対して半抜き又は打抜き後のプッシュバックによって3つの頂部28bを形成するステップを実施すればよい。このステップを実施することで、開口部32に仮カシメ部28を形成することができる。
図13(b)に示す一点鎖線はこのステップで使用するパンチの形状の一例であって頂部28bを形成する部分以外の部分を示したものである。
【0045】
上記実施形態においては、仮カシメ部8の全ての頂部8bが開口部22に対する嵌合部を構成する場合を例示したが、仮カシメ部は少なくとも3つの頂部を有し且つ当該頂部のうち少なくとも2つの頂部が開口部に対する嵌合部を構成していればよい。
図14に示す仮カシメ部38は、3つの頂部38b,38b,38cのうち、2つの頂部38b,38bのみが開口部42に対する嵌合部を構成している。
図14(a)は仮カシメ部38となる部分を残して当該部分の上下に貫通孔42a,42bが形成された状態を示す。その後、
図14(a)に示す状態の被加工板Wに対して半抜き又は打抜き後のプッシュバックを実施することで、開口部42に対して2つの嵌合部(頂部38b,38b)を有する仮カシメ部38が形成される。
【0046】
上記実施形態においては、積層鉄心Rにおける軽量孔18となる開口部22に仮カシメ部8を形成する場合を例示したが仮カシメ部8は製品の性能/品質に大きな悪影響を及ぼさない場所であればいずれの場所に形成してもよい。例えば、固定子用の積層鉄心を製造するための積層体の場合、積層体をボルトで固定するための複数のボルト孔に仮カシメ部8をそれぞれ形成してもよい。なお、積層体の締結状態を十分に維持できる限り、複数のボルト孔の全てに仮カシメ部8を設ける必要はない。例えば、積層鉄心が6つのボルト孔を有する場合、例えば3つのボルト孔に仮カシメ部8を設ければよい。ボルト孔は積層鉄心の周縁部から突出した位置に設けられることがあるため、ボルト耳孔と称される場合もある。ボルト孔の直径は例えば7.0〜10.5mmであり、6.5〜11.0mmであってもよい。なお、ボルトで積層鉄心を十分に締結できる限り、ボルト孔は真円からはずれた略円形や略多角形を呈していてもよい。
【0047】
本実施形態においては、積層体20の磁石挿入孔15に樹脂材料16を充填することによって最終的に締結する場合を例示したが、磁石挿入孔15の他に樹脂を充填するための孔を別途設け、これに樹脂材料16を充填することによって積層体20の締結を補強してもよい。また、樹脂材料16と、他の締結手段(溶接及び接着など)とを併用してもよい。加工体WRのひずみを解消するために焼鈍を実施する場合、焼鈍は適切なタイミングで実施すればよい。例えば、樹脂材料16によって積層体20を一体化させる場合は樹脂材料16の充填に先立って焼鈍を実施すればよいし、溶接を併用する場合には溶接後にも焼鈍を実施してもよい。
【0048】
上記実施形態は、1枚の被加工板Wから加工体WRを打抜き加工する場合を例示したが、複数の被加工板Wを重ね合せて加工体WRを打ち抜くようにしてもよい。この場合、複数の被加工板Wを併用する場合、種類、厚さ及び/又は幅が異なるものを組み合わせて使用してもよい。更に、1つの被加工板Wから加工体WR及び固定子用の加工体の両方を打ち抜いてもよい。