特許第6567388号(P6567388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567388
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】タイヤ装着システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G01M17/02
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-206087(P2015-206087)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-78616(P2017-78616A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】井上 勇
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 孝修
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−205393(JP,A)
【文献】 特開平08−166310(JP,A)
【文献】 特開2007−078624(JP,A)
【文献】 特開昭52−069351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
G01M 1/00 − 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ試験装置のスピンドルへのタイヤの装着に用いられるタイヤ装着システムであって、
先端がタイヤのセンターボアに嵌挿された状態で、当該タイヤを支持するアームと、
タイヤが載置される可動床と、
前記可動床を水平な二軸方向に移動する床移動機構と、
前記アームを移動するアーム移動機構と、
前記アームの先端に当該先端から突出した形態で設けられた前記アームよりも径の小さい、アームの軸と垂直な少なくとも3方向について当該方向にある物体までの距離を検出する検出センサと、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記タイヤ取付位置にあるアームの先端と、センターボアとが対向するように前記可動床上にタイヤが載置された状態で、タイヤ取付を指示されたときに、
前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記タイヤが前記アームの先端に近づく方向に、前記距離センサが、前記タイヤのセンターボアの内周面までの前記アームの軸と垂直な少なくとも3方向についての距離を検出可能な位置まで移動した上で、
前記距離センサが検出した前記タイヤのセンターボアの内周面までの前記アームの軸と垂直な少なくとも3方向についての距離に基づいて、前記アームと前記タイヤのセンターボアとが同軸化するように、前記アーム移動機構を制御して前記アームを昇降させると共に、前記床移動機構を制御して前記可動床を前記アームの軸と垂直かつ水平な方向に移動した後に、
前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記アームの先端と軸と平行に、前記タイヤが前記アームに近づく方向に移動し、前記アームの先端を前記タイヤのセンターボアに嵌挿し、
前記アーム移動機構を制御して、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿されたアームを当該アームの先端が前記スピンドルの先端に当接、または、近接するように移動することを特徴とするタイヤ装着システム。
【請求項2】
請求項1記載のタイヤ装着システムであって、
前記制御手段は、距離センサが前記検出したタイヤのセンターボアの内周面までの前記アームの軸と垂直な少なくとも3方向についての距離に基づいて前記センターボアの半径Rと前記アームの半径rの差R-rを調整距離として求め、
前記アーム移動機構を制御して、前記アームの先端の軸が前記スピンドル軸より前記調整距離上方となる位置において、当該アームの先端が前記スピンドルの先端に当接、または、近接するように、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿されたアームを移動することを特徴とするタイヤ装着システム。
【請求項3】
タイヤ試験装置のスピンドルへのタイヤの装着に用いられるタイヤ装着システムであって、
先端がタイヤのセンターボアに嵌挿された状態で、当該タイヤを支持するアームと、
タイヤが載置される可動床と、
前記可動床を水平な二軸方向に移動する床移動機構と、
前記アームを移動するアーム移動機構と、
前記アームに対して固定された、前記アームの周辺にある物体までの、少なくとも3方向についての当該アームからの距離を検出する検出センサと、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記タイヤ取付位置にあるアームの先端と、センターボアとが対向するように前記可動床上にタイヤが載置された状態で、タイヤ取付を指示されたときに、
前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記タイヤが前記アームの先端に近づく方向に、前記距離センサが、前記タイヤのホイールの内周面までの前記少なくとも3方向についての距離を検出可能な位置まで移動した上で、
前記距離センサが検出した前記タイヤのホイールの内周面までの前記少なくとも3方向についての距離に基づいて、前記アームと前記ホイールとが同軸化するように、前記アーム移動機構を制御して前記アームを昇降させると共に、前記床移動機構を制御して前記可動床を前記アームの軸と垂直かつ水平な方向に移動した後に、
前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記アームの先端と軸と平行に、前記タイヤが前記アームに近づく方向に移動し、前記アームの先端を前記タイヤのセンターボアに嵌挿し、
前記アーム移動機構を制御して、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿されたアームを当該アームの先端が前記スピンドルの先端に当接、または、近接するように移動することを特徴とするタイヤ装着システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のタイヤ装着システムであって、
前記可動床よりも低い位置に配置された収容室を有し、
前記アーム移動機構は、前記アームを当該アームが前記収容室に収容される位置まで移動可能であり、
前記床移動機構は、前記可動床を当該可動床で前記収容室を覆う位置まで移動可能であることを特徴とするタイヤ装着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験装置へのタイヤの装着に用いられるタイヤ装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ試験装置へのタイヤの装着に用いられるタイヤ装着装置としては、順次ヒンジで水平方向に揺動可能に連結した3つのリンクよりなるアームと、アームの根元を水平方向に揺動可能に支持する基部を上下に昇降する昇降装置とを備えたタイヤ装着装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、このタイヤ装着装置は、アームの一番先端側のリンクの先端の円筒部をタイヤのセンターボアに挿入することによりアームの先端にタイヤを支持する。また、中央のリンクは、長手方向に伸縮可能に構成されている。
【0004】
そして、このタイヤ装着装置を用いたタイヤの装着は、タイヤのセンターボアがタイヤ試験装置のスピンドルと対向し、かつ、アーム先端のリンクと中央のリンクとがまっすぐに並んだ状態となるように、アームの昇降とアームの各リンクの揺動を操作した上で、中央のリンクを伸ばすことにより、タイヤのセンターボアに挿入している円筒部の先端をスピンドルに近接させ、その状態でタイヤをスピンドルに押し込むことにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-205393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなアームの先端をタイヤのセンターボアに挿入することによりタイヤをアームで支持するタイヤ装着装置によれば、タイヤのセンターボアとアームを同軸上に正しく位置合わせした上で、アームの先端をタイヤのセンターボアに挿入する煩雑な作業が必要となる。また、アームの先端を伸張等して当該先端をタイヤのセンターボアに挿入する機構を備えていない場合には、重量物であるタイヤを動かしてアームの先端をセンターボアに嵌挿する作業が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、アームの先端をタイヤのセンターボアに嵌挿することによりタイヤをアームで支持するタイヤ装着装置において、アームの先端のタイヤのセンターボアへの挿入作業を容易化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題達成のために、本発明は、タイヤ試験装置のスピンドルへのタイヤの装着に用いられるタイヤ装着システムに、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿された状態で、当該タイヤを支持するアームと、タイヤが載置される可動床と、前記可動床を水平な二軸方向に移動する床移動機構と、前記アームを移動するアーム移動機構と、前記アームの先端に当該先端から突出した形態で設けられた前記アームよりも径の小さい、アームの軸と垂直な少なくとも3方向について当該方向にある物体までの距離を検出する検出センサと、制御手段とを備えたものである。ここで、前記制御手段は、前記タイヤ取付位置にあるアームの先端と、センターボアとが対向するように前記可動床上にタイヤが載置された状態で、タイヤ取付を指示されたときに、前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記タイヤが前記アームの先端に近づく方向に、前記距離センサが、前記タイヤのセンターボアの内周面までの前記アームの軸と垂直な少なくとも3方向についての距離を検出可能な位置まで移動した上で、前記距離センサが検出した前記タイヤのセンターボアの内周面までの前記アームの軸と垂直な少なくとも3方向についての距離に基づいて、前記アームと前記タイヤのセンターボアとが同軸化するように、前記アーム移動機構を制御して前記アームを昇降させると共に、前記床移動機構を制御して前記可動床を前記アームの軸と垂直かつ水平な方向に移動した後に、前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記アームの先端と軸と平行に、前記タイヤが前記アームに近づく方向に移動し、前記アームの先端を前記タイヤのセンターボアに嵌挿し、前記床移動機構を制御して、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿されたアームを当該アームの先端が前記スピンドルの先端に当接、または、近接するように移動する。
【0009】
このようなタイヤ装着システムによれば、作業者は、タイヤ取付位置にあるアームの先端と、センターボアとが対向するように可動床上にタイヤを載置するだけで、アームの先端をタイヤのセンターボアに嵌挿することができる。
【0010】
ここで、このようなタイヤ装着システムは、前記制御手段において、距離センサが前記検出したタイヤのセンターボアの内周面までの前記アームの軸と垂直な少なくとも3方向についての距離に基づいて前記センターボアの半径Rと前記アームの半径rの差R-rを調整距離として求め、前記アーム移動機構を制御して、前記アームの先端の軸が前記スピンドル軸より前記調整距離上方となる位置において、当該アームの先端が前記スピンドルの先端に当接、または、近接するように、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿されたアームを移動するように構成してもよい。
【0011】
このようにすることにより、タイヤのセンターボアの径がアームの径よりも大きい場合でも、タイヤの軸とスピンドルの軸が同軸となるように、アームの先端をスピンドルの先端に当接、または、近接させることができる。
タイヤ試験装置のスピンドルへのタイヤの装着に用いられるタイヤ装着システムに、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿された状態で、当該タイヤを支持するアームと、タイヤが載置される可動床と、前記可動床を水平な二軸方向に移動する床移動機構と、前記アームを移動するアーム移動機構と、前記アームに対して固定された、前記アームの周辺にある物体までの、少なくとも3方向についての当該アームからの距離を検出する検出センサと、制御手段とを備えたものである。ここで、前記制御手段は、前記タイヤ取付位置にあるアームの先端と、センターボアとが対向するように前記可動床上にタイヤが載置された状態で、タイヤ取付を指示されたときに、前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記タイヤが前記アームの先端に近づく方向に、前記距離センサが、前記タイヤのホイールの内周面までの前記少なくとも3方向についての距離を検出可能な位置まで移動した上で、前記距離センサが検出した前記タイヤのホイールの内周面までの前記少なくとも3方向についての距離に基づいて、前記アームと前記ホイールとが同軸化するように、前記アーム移動機構を制御して前記アームを昇降させると共に、前記床移動機構を制御して前記可動床を前記アームの軸と垂直かつ水平な方向に移動した後に、前記床移動機構を制御して、前記可動床を、前記アームの先端と軸と平行に、前記タイヤが前記アームに近づく方向に移動し、前記アームの先端を前記タイヤのセンターボアに嵌挿し、前記床移動機構を制御して、先端がタイヤのセンターボアに嵌挿されたアームを当該アームの先端が前記スピンドルの先端に当接、または、近接するように移動する。
このようなタイヤ装着システムによっても、作業者は、タイヤ取付位置にあるアームの先端と、センターボアとが対向するように可動床上にタイヤを載置するだけで、アームの先端をタイヤのセンターボアに嵌挿することができる。
【0012】
ここで、以上のようなタイヤ装着システムに前記可動床よりも低い位置に配置された収容室を設け、前記アーム移動機構を、前記アームを当該アームが前記収容室に収容される位置まで移動可能とし、前記床移動機構を、前記可動床を当該可動床で前記収容室を覆う位置まで移動可能とすることにより、非使用時にアームを床下に収容するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、アームの先端をタイヤのセンターボアに挿入することによりタイヤをアームで支持するタイヤ装着装置において、アームの先端のタイヤのセンターボアへの挿入作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るタイヤ装着装置の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るタイヤ装着装置の動作を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るタイヤ装着装置の可動床に関わる構成を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るタイヤ装着装置の動作を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るタイヤ装着装置の動作を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るアームへのタイヤの取付動作を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るスピンドルへのタイヤ装着の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係るタイヤ試験装置の外観を示す。
図示するようにタイヤ試験装置は大別してローラ室1と、ローラ室1の左右に配置された2つのタイヤ室2と、各タイヤ室2の前方の床に設けられた可動床機構3とから構成される。
【0016】
図1bのタイヤ室2の扉を開いたようすで示すように、各タイヤ室2には、タイヤ装着装置4と、タイヤ100を装着するためのスピンドル5とが設けられている。
また、ローラ室1にはローラ10が配置されており、ローラ10の周面の右側の一部は右のタイヤ室2に露出し、ローラ10の周面の左側の一部は左のタイヤ室2に露出している。
【0017】
また、各スピンドル5にはスピンドル5を回転駆動するモータやスピンドル5に加わるトルクを計測するトルク計が連結されている。また、ローラ10には、ローラ10を回転駆動するモータやローラ10に加わるトルクを計測するトルク計が連結されている。また、タイヤ試験装置は、スピンドル5を左右に移動して、タイヤ100をローラ10の周面に押しつけたり、タイヤ100をローラ10から分離する移動機構も備えている。
【0018】
そして、このようなタイヤ試験装置において、タイヤ100の試験は、たとえば、各タイヤ室2のスピンドル5に装着、固定したタイヤ100を、ローラ室1に配置されたローラ10の周面に当接させて押しつけた状態で、各モータでローラ10やタイヤ100の回転を制御しながら、各トルク計で各トルクを計測することにより行われる。
【0019】
以下、タイヤ室2内に設置されるタイヤ装着装置4について左のタイヤ室2のタイヤ装着装置4を例にとり説明する。
図2に、タイヤ装着装置4の構成を示す。
図2a1に左のタイヤ室2に配置されるタイヤ装着装置4の外観を、図2a2に図2a1の水平切断面Aによるタイヤ装着装置断面を、図2a3に図2a1の垂直切断面Bによるタイヤ装着装置断面を示す。
【0020】
図示するように、タイヤ装着装置4は、モータ41、モータ41によって上下方向を回転軸方向として回転駆動される上下に延びたボールネジ42、昇降部43、上下方向を軸方向とする中空円筒形状のガイドパイプ44より構成される。
【0021】
ここで、図2a4に示すように、昇降部43は、ボールネジ42に螺合したボールネジナット431、環状の外部リング432、ボールネジナット431と外部リング432を連結するブリッジ部433、外部リング432に連結されたアーム434を一体化した部材である。また、アーム434は、外部リング432から水平に延びるアーム434であり、上下方向から見て「く」の字状に曲がった形状を有している。また、アーム434の先端付近には、径方向に突出した、タイヤ抜け落ち防止用のバネ4341が、ある程度の力を加えられたときにアーム434内に引き込むように設けられている。また、アーム434の先端の中央部には軸方向に突出した距離センサ部4342が設けられている。
【0022】
そして、ボールネジ42とボールネジナット431は、ボールネジナット431がガイドパイプ44に遊挿された形態で、ガイドパイプ44の内側にガイドパイプ44と同軸状に配置されており、外部リング432は、外部リング432にガイドパイプ44が遊挿された形態で、ガイドパイプ44の外側にガイドパイプ44と同軸状に配置されており、アーム434は、外部リング432からガイドパイプ44の軸と直交する方向に水平に延びている。また、アーム434は、上下方向から見て「く」の字状に上から見て反時計回り方向に曲がった形状を有している。
【0023】
次に、ガイドパイプ44には、ブリッジ部433が挿通したガイドスリット441が設けられており、ブリッジ部433はガイドスリット441を通って水平にボールネジナット431と外部リング432を連結している。
【0024】
ここで、ガイドパイプ44のガイドスリット441は、図2a5に示すように、上下方向に長く延びる上下スリット部分4411と、周方向に延びる回転用スリット部分4412と、上下方向に短く延びる調整用上下スリット部分4413よりなる。そして、回転用スリット部分4412は上から見て反時計回り方向に、上下スリット部分4411の上端の位置から延びており、調整用上下スリット部分4413は、回転用スリット部分4412の上から見て反時計回り方向側端を下端として上下に延びている。なお、回転用スリット部分4412の周方向の長さは、アーム434がボールネジ42の回転軸を中心として約90度回転する弧を成す長さとなっている。
【0025】
なお、ガイドパイプ44のガイドスリット441は、周方向に中心角にして180度分、離れた位置に二つ設けられている。すなわち、図2a1に示したガイドスリット441の他に、当該ガイドスリット441を、ガイドパイプ44の軸を回転軸として180度回転させたものと等しいガイドスリット441が、もう一つ設けられている。
【0026】
次に、アーム434の先端の中央部に軸方向に突出させて設けた距離センサ部4342は、図2a6に示すように、アーム434の軸方向と垂直な4方向について、当該方向にある物体までの距離を検出する4つのセンサ43421が設けられている。ここで、アーム434の軸方向と垂直な4方向とは、上下方向と、アーム434の軸方向と上下方向との双方に垂直な方向である。すなわち、アーム434の軸方向が左右方向であるときには、アーム434の軸方向と垂直な4方向は上下方向と前後方向となる。
【0027】
したがって、このような距離センサ部4342は、図2a7に示すように、距離センサ部4342が円管の内側に円管の軸と平行に挿入された状態で、距離センサ部4342から見て上記4方向のそれぞれの円管の内周面までの距離センサ部4342からの距離を測定することができる。
【0028】
さて、このようなタイヤ装着装置4において、ボールネジ42とボールネジナット431のネジは、ボールネジナット431の回転が抑止されているときに、ボールネジ42を正回転(上から見て時計回り方向の回転)させたときボールネジナット431が上方向に移動し、ボールネジ42を逆回転(上から見て反時計回り方向の回転)させたときボールネジナット431が下方向に移動し、ボールネジナット431の上方向への移動が抑止されているときに、ボールネジ42を正回転させたときボールネジナット431が上から見て反時計回り方向に回転し、ボールネジナット431の下方向への移動が抑止されているときに、ボールネジ42を逆回転させたときボールネジナット431が上から見て時計回り方向に回転するように設定されている。
【0029】
したがって、図3a1に示すように昇降部43のブリッジ部433がガイドスリット441の上下スリット部分4411の上端より下に挿入されている状態にあるときに、モータ41でボールネジ42を正回転させると、図3a2に示すようにボールネジナット431の回転がブリッジ部433と上下スリット部分4411の当接により抑止されるので、ボールネジナット431は上方向に移動し、これに伴い昇降部43の全体が上方向に移動する。
【0030】
また、昇降部43のブリッジ部433がガイドスリット441の上下スリット部分4411の下端より上に挿入されている状態にあるときに、モータ41でボールネジ42を逆回転させると、ボールネジナット431は下方向に移動し、これに伴い昇降部43の全体が下方向に移動する。
【0031】
次に、図3b1に示すように、昇降部43のブリッジ部433がガイドスリット441の上下スリット部分4411の上端、または、回転用スリット部分4412に挿入されている状態にあるときに、モータ41でボールネジ42を正回転させると、ボールネジナット431の上方向の移動がブリッジ部433と上下スリット部分4411の上端と回転用スリット部分4412の当接により抑止されており、かつ、図3b2の回転用スリット部分4412を通る水平な切断面による断面に示すように回転用スリット部分4412の範囲内において回転は抑止されていないので、上下スリット部分4411の上端と回転用スリット部分4412の範囲内において、ボールネジナット431は、上から見て反時計回り方向に回転し、これに伴い昇降部43の全体が上から見て反時計回り方向に回転する。
【0032】
また、昇降部43のブリッジ部433がガイドスリット441の回転用スリット部分4412に挿入されている状態にあるときに、モータ41でボールネジ42を逆回転させると、ボールネジナット431の下方向の移動がブリッジ部433と回転用スリット部分4412の当接により抑止されており、かつ、回転用スリット部分4412の範囲内において回転は抑止されていないので、回転用スリット部分4412の範囲内において、ボールネジナット431は上から時計回り方向に回転し、これに伴い昇降部43の全体が上から見て時計回り方向に回転する。
【0033】
また、図3c1に示すように、昇降部43のブリッジ部433がガイドスリット441の調整用上下スリット部分4413の上端より下に挿入されている状態にあるときに、モータ41でボールネジ42を正回転させると、図3c2に示すようにボールネジナット431の回転がブリッジ部433と調整用上下スリット部分4413の当接により抑止されるので、ボールネジナット431は上方向に移動し、これに伴い昇降部43の全体が上方向に移動する。
【0034】
また、昇降部43のブリッジ部433がガイドスリット441の調整用上下スリット部分4413の、調整用上下スリット部分4413の下端より上の位置に挿入されている状態にあるときに、モータ41でボールネジ42を逆回転させると、ボールネジナット431は下方向に移動し、これに伴い昇降部43の全体が下方向に移動する。
【0035】
次に、各タイヤ室2の前方の床に設けた可動床機構3について説明する。
図4aに正面から見た可動床機構3の構成を、図4bに上方から見た可動床機構3の構成を、図4cに側方から見た可動床機構3の構成を示す。
図示するように、タイヤ装着装置4のガイドパイプ44の下端は、タイヤ試験装置の前方の床下となる高さまで達しており、タイヤ試験装置の前方の床下には、アーム収容用の収容室601が設けられている。
【0036】
そして、可動床機構3は、可動床301と、可動床301を前後左右に移動する移動機構とを有し、移動機構は、可動床301を前後に移動する前後移動機構と、可動床301を左右に移動する左右移動機構とよりなる。
【0037】
そして、前後移動機構は、可動床301の前後左右を囲むように配置されたフレーム311と、フレーム311の間を前後に連結する、可動床301を前後方向に移動可能に支持する前後ポール312と、前後ポール312に支持された可動床301を前後に移動する前後移動ボールネジ機構313とよりなる。また、左右移動機構は、前後移動機構のフレーム311を左右に移動可能に支持する左右ポール321と、左右ポール321に支持されたフレーム311を左右に移動する左右移動ボールネジ機構322とよりなる。
【0038】
ここで、このような移動機構は、左右移動機構によって、収容室601を覆う位置と収容室601を露出させる位置との間で可動床301を左右に移動することができる。また、前後移動機構によって、可動床301を所定の範囲内において前後に移動することができる。
【0039】
以下、このようなタイヤ試験装置におけるタイヤ装着の動作について説明する。
ここで、タイヤ装着装置4は、距離センサ部4342が検出している4方向の距離が入力する制御部を備え、制御部は、タイヤ装着装置4のモータ41と、可動床機構3の左右移動ボールネジ機構322と前後移動ボールネジ機構313を介して、以下のようにタイヤ装着の動作を制御する。また、タイヤ装着装置4にはボールネジ42の回転を検出するロータリエンコーダが設けられており、昇降部43の位置はボールネジ42の回転量に対して一義的に定まる。そして、制御部はロータリエンコーダで検出したボールネジ42の回転量よりアーム434の高さ、回転角を検出する。
【0040】
さて、タイヤ装着装置4を未使用のときには、図5a1の正面図と図5a2の上面図に示すように、昇降部43は最下端の位置にあり、アーム434は収容室601内に収容され、収容室601は可動床301で覆われている。
【0041】
次に、この状態で、作業者から装着処理の開始を指示されたならば、制御部は、左右移動ボールネジ機構322を制御して、図5b1、b2に示すように可動床301を右方に移動し収容室601を露出させる。
【0042】
そして、モータ41を正回転させ、アーム434を、図5c1、c2に示すように、可動床301の高さから、予め設定されているタイヤ100の半径分高い位置まで上昇させ、モータ41の回転を停止する。
そして、この状態で、作業者は、タイヤ100をアーム434とおよそ同軸となるように、タイヤ100のセンタボアをアーム434に対向させて、可動床301の上の所定位置に設置し、処理再開を制御部に指示する。
処理再開を支持された制御部は、左右移動ボールネジ機構322を制御して、タイヤ100のセンターボアへのアーム434の先端の距離センサ部4342の挿入が検出されるまで可動床301を左に移動する。ここで、センターボアへの距離センサ部4342の挿入の検出は、距離センサ部4342で検出した4方向(上下前後)の距離が所定距離(たとえば、センターボアの半径にマージンを加えた距離)以下となったときに、センターボアへの距離センサ部4342の挿入されたと判定することにより行う。
【0043】
すなわち、制御部は、図7aに示すように可動床301上にタイヤ100が載せ置かれた状態で処理再開を指示されたならば、可動床301を左に移動し、図7b1、b2に示すようにアーム434の先端の距離センサ部4342をセンターボアに挿入する。
【0044】
そして、センターボアへの距離センサ部4342の挿入が検出されたならば、制御部は、可動床301の移動を停止する。
次に、制御部は、距離センサ部4342が検出している上下の距離の差に応じて、タイヤ装着装置4のモータ41を制御して、当該上下の距離の差が0となるようにアーム434を昇降する。また、制御部は、距離センサ部4342が検出している前後の距離の差に応じて、前後移動ボールネジ機構313を制御して、当該前後の距離の差が0となるように可動ステージを前後に移動する。
【0045】
すなわち、制御部は、図7b1、b2に示すようにアーム434の先端の距離センサ部4342がセンターボアに挿入された状態で、図5d1、d2に示すように、アーム434の昇降と可動床301の前後方向の移動を行って、アーム434とタイヤ100のセンターボアとを、両者が同軸となるように配置する。
【0046】
また、このとき、制御部は、距離センサ部4342が検出した4方向の距離に基づいて、タイヤ100のセンターボアの直径を算出し、タイヤ100のセンターボアの直径Rbとアーム434の直径Rrを算出し、センターボアの半径とアーム434の半径の差(Rb-Rr)/2を上下調整量として記憶する。なお、上下調整量が負となった場合、センターボアにアーム434が入らないので、制御部は、当該時点で処理を停止しエラーを通知する。
【0047】
そして、次に、アーム434とタイヤ100のセンターボアとが同軸となったならば、左右移動ボールネジ機構322を制御して、可動床301を左に移動し、図6a1、a2、図7cに示すように、タイヤ100のセンターボアをアーム434の先端に嵌め込むことによりアーム434にタイヤ100を装着し、可動床301の移動を停止する。
【0048】
そして、次に、制御部は、モータ41を正回転させる。
すると、アーム434は、ブリッジ部433が上下スリット部分4411にガイドされて上昇していき、図6b1、b2に示すようにブリッジ部433が上下スリット部分4411の上端まで上昇したならば、引き続いて、図6c、c2に示すように、回転用スリット部分4412によるブリッジ部433のガイドの作用により上方より見て反時計回り方向に回転する。
【0049】
ここで、ガイドパイプ44のガイドスリット441は、ブリッジ部上下スリット部分にガイドされて上端まで上昇したときのアーム434の先端の中心の高さが、タイヤ室2に設置されているスピンドル5の中心高さと等しくなり、ブリッジ部433が回転用スリット部分4412でガイドされて反時計回り方向に最大回転量回転したときに、アーム434の先端がスピンドル5に当接する位置となるように設定している。
【0050】
ここで、図8aに示すようにスピンドル5は、円筒形状の本体部51と、本体部51の先端の底の中央部から突出した小径の円筒形状のセンタ軸52とを有している。ここで、本体部51、センタ軸52は同軸に設けられている。
【0051】
また、センタ軸52は円管状の部材であり、センタ軸52の裾には、本体部51に近づくほど径が大きくなるテーパ53が形成されている。
このような構成において、図6c1、c2に示したようにアーム434が回転すると、図8a1、a2、a3に示すように、アーム434の先端が回転しながらセンタ軸52に接近していき、距離センサ部4342がセンタ軸52の内側に挿入された形態で、アーム434の先端とセンタ軸52とが同軸状に当接する。
【0052】
さて、制御部は、昇降部43が図6c1、c2に示すように、ブリッジ部433が最大回転量回転し、アーム434の先端がスピンドル5に当接する位置まで回転したならば、記憶してある上下調整量が0であれば、モータ41を停止し、装着処理を終了する。一方、記憶してある上下調整量が0でなければ、モータ41をさらに正回転させ、上述した上下調整量に等しい量、アーム434を上昇させ、タイヤ100のセンターボアの軸を、スピンドル5の軸に同軸化した上で、装着処理を終了する。
【0053】
ここで、上下調整量が0でない場合とは、図8b1に示すようにタイヤ100のセンターボアの直径がアーム434の直径より大きい場合である。そして、この場合、センターボアの半径とアーム434の半径の差分、アーム434を上昇することにより図8b2に示すように、タイヤ100のセンターボアの軸を、スピンドル5の軸に同軸化することができる。
【0054】
さて、次に、アーム434の先端がスピンドル5に同軸状に当接した状態となったならば、作業者は、図6d1、d2、図8a4、図8b3に示すように、スピンドル5方向にタイヤ100を押し込んでスピンドル5にタイヤ100を装着した上で、タイヤ100をボルトでスピンドル5に固定する。なお、図8a4はタイヤ100のセンターボアの直径がアーム434の直径に等しい場合を、図8b3はタイヤ100のセンターボアの直径がアーム434の直径より大きい場合を示している。
【0055】
なお、図6d1、d2、図8a4、図8b3に示すように、スピンドル5方向にタイヤ100を押し込む際に、タイヤ100のホイールのセンターボアのタイヤ内側の開口部に設けられたテーパ形状と、センタ軸52の裾のテーパ53との当接によって、タイヤ100はスピンドル5と同軸となるようにスピンドル5に押し込まれる。
【0056】
さて、作業者は以上のようにしてタイヤ100をスピンドル5に固定したならば、制御部に収容処理の開始を指示する。
収容処理の開始を指示された制御部は、可動床301を右に移動して収容室601を露出させると共に、モータ41を逆回転させる。すると、モータ41の逆回転開始時にブリッジ部433が上下スリット部分4413にあるときには、アーム434は、調整用上下スリット部分4413によるガイドの作用により下降した後、回転用スリット部分4412によるブリッジ部433のガイドの作用により上方より見て時計回り方向に回転し、その後、引き続いて、上下スリット部分4411によるブリッジ部433のガイドの作用により、上下スリット部分4411の下端にブリッジ部433が位置する高さまで下降する。一方、モータ41の逆回転開始時にブリッジ部433が回転用スリット部分4412にあるときには、アーム434は、そのまま、回転用スリット部分4412によるブリッジ部433のガイドの作用により上方より見て時計回り方向に回転し、その後、引き続いて、上下スリット部分4411によるブリッジ部433のガイドの作用により、上下スリット部分4411の下端にブリッジ部433が位置する高さまで下降する。
【0057】
次に、上下スリット部分4411の下端にブリッジ部433が位置する高さまで下降し、アーム434が収容室601に収容されたならば、制御部は、モータ41の回転を停止し可動床301を左に移動し、可動床301で収容室601を覆う。
【0058】
以上、タイヤ装着の動作について説明した。
なお、このタイヤ装着装置4で、スピンドル5からのタイヤ100の取り外しを行う場合の動作は、以上のタイヤ装着の動作と反対の動作となる。
なお、ここまで、タイヤ装着装置4の構成や動作について、左のタイヤ室2に配置されるタイヤ装着装置4を例にとり説明してきたが、右のタイヤ室2に配置されるタイヤ装着装置4の構成や動作は、以上の左のタイヤ室2に配置されるタイヤ装着装置4の説明の、上下方向から見た回転方向や周方向が逆方向となる点を除き、左のタイヤ室2に配置されるタイヤ装着装置成や動作と同様となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、作業者は、制御部によってタイヤ100の半径に一致する可動床301上の高さまで上昇させられたアーム434の先端と、センターボアとが対向するように可動床301上にタイヤ100を載置するだけで、アーム434の先端をタイヤ100のセンターボアに嵌挿し、アーム434にタイヤ100を支持させることができる。
【0060】
ここで、以上のタイヤ装着装置4では、アーム434を、アーム434の先端とセンタ軸52とが当接する位置まで回転させたが、タイヤ装着装置4は、アーム434の先端とセンタ軸52とが近接する位置までのみアーム434を回転させるものとしてもよい。
【0061】
また、以上の実施形態では、距離センサ部4342を、図2a6に示すように、アーム434の軸方向と垂直な4方向について、当該方向にある物体までの距離を検出する4つのセンサ43421を設けたものとしたが、距離センサ部4342は、アーム434の軸方向と垂直な3以上の任意数の方向について、当該方向にある物体までの距離を検出するセンサ43421を設けたものとしてもよい。少なくも3方向についてタイヤ100のセンタボアの内遊面までの距離が求まれば、タイヤ100のセンタボアの内周の円は、3方向の各々について検出した距離、当該距離を検出方向にセンサ43421から離れた3つ点を結ぶ三角形に外接する円として求めることができる。
また、以上の実施形態では、距離センサ部4342で検出したタイヤ100のセンターボアまでの距離を用いて、アーム434とセンターボアとの同軸化を実現したが、これは、アーム434の先端に、タイヤ100のホイールの内周面までの少なくとも3方向の距離を検出する距離センサを設け、距離センサで検出したホイール内周面までの距離を用いて、アーム434とセンターボアとの同軸化を実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…ローラ室、2…タイヤ室、3…可動床機構、4…タイヤ装着装置、5…スピンドル、10…ローラ、41…モータ、42…ボールネジ、43…昇降部、44…ガイドパイプ、51…本体部、52…センタ軸、53…テーパ、100…タイヤ、301…可動床、311…フレーム、312…前後ポール、313…前後移動ボールネジ機構、321…左右ポール、322…左右移動ボールネジ機構、431…ボールネジナット、432…外部リング、433…ブリッジ部、434…アーム、441…ガイドスリット、601…収容室、4341…バネ、4342…距離センサ部、4411…上下スリット部分、4412…回転用スリット部分、4413…調整用上下スリット部分、43421…センサ。
図1
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