特許第6567416号(P6567416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567416水耕栽培システム、および該水耕栽培システムと発泡スチロール製ハウスとを備えた植物工場
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567416
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】水耕栽培システム、および該水耕栽培システムと発泡スチロール製ハウスとを備えた植物工場
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20190819BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20190819BHJP
   E04B 1/32 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   A01G31/04 A
   A01G9/14 T
   !E04B1/32 101H
【請求項の数】9
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-531728(P2015-531728)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】JP2014004191
(87)【国際公開番号】WO2015022782
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-168614(P2013-168614)
(32)【優先日】2013年8月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-168615(P2013-168615)
(32)【優先日】2013年8月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504054701
【氏名又は名称】有限会社ジャパン通商
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】北川 勝幸
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−034686(JP,A)
【文献】 特開平11−289871(JP,A)
【文献】 特開昭62−087031(JP,A)
【文献】 特開2000−106774(JP,A)
【文献】 特開2002−272282(JP,A)
【文献】 特開平08−140491(JP,A)
【文献】 特開平03−160933(JP,A)
【文献】 特開平11−137107(JP,A)
【文献】 特開昭62−275628(JP,A)
【文献】 特開昭62−055028(JP,A)
【文献】 特開2006−262750(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102257933(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00−31/06
A01G 9/00
A01G 9/14
E04B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に延びる複数の水槽と、
植物を保持し該複数の水槽の上方にまたがって配置された植物保持板と、
該複数の水槽のうち互いに隣接する水槽の間に設けられた少なくとも1つの支持機構であって、該植物保持板を該所定の方向に沿って移動させるための駆動部を備える移動機構を備え、該移動機構は、該水槽の該所定の方向の両端に配置されたプーリーと、該両端のプーリーの間に掛け渡された支持ベルトとを含む、支持機構と
を備える水耕栽培システムであって、
該複数の水槽のそれぞれは該植物の生育に必要な培養液を含むよう構成される
水耕栽培システム。
【請求項2】
前記植物保持板と前記培養液との間に空間が存在する請求項1に記載の水耕栽培システム。
【請求項3】
前記水槽内を前記培養液が流れるように構成された請求項1〜2のいずれか1項に記載の水耕栽培システム。
【請求項4】
前記水槽が、前記培養液の流れに乱れを生じさせるように構成された乱流発生部をさらに有する請求項3に記載の水耕栽培システム。
【請求項5】
前記水槽から前記培養液を排出するための排水部をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の水耕栽培システム。
【請求項6】
前記水槽へ前記培養液を供給するための給水部をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の水耕栽培システム。
【請求項7】
前記水槽は、水槽幅が前記所定の方向に略直交する方向に調節可能であるように構成された請求項1〜6のいずれか1項に記載の水耕栽培システム。
【請求項8】
前記植物の根を切断するための切断部をさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の水耕栽培システム。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の水耕栽培システムと、
該水耕栽培システムを収容する発泡樹脂製ハウスであって、該発泡樹脂製ハウスは、前後方向に延在する半円筒状の周壁を有する、発泡樹脂製ハウス
を備えた植物工場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
古くから植物は露地栽培により栽培されてきた。しかしながら露地栽培は、異常気象による水不足などの天候の影響を受けやすい。そのため近年では、より安定的に植物を計画栽培できる施設栽培が注目されている。例えば特許文献1には、水耕栽培システムにより植物を栽培する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−37664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水耕栽培システムでは、多量の培養液が必要になるため、培養液槽が比較的重くなる。そのため、これを支える筐体に求められる強度が高くなる。また、多量の培養液を循環させるために、ポンプに求められる性能も高くなる。したがって、上述した水耕栽培システムでは、高性能の筐体やポンプ等の設備機器と、多大なスペースとが必要となり、結果的に多大な設備コストが必要となる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、培養液の量を低減しうる水耕栽培システムを提供することにある。本発明はさらに、従来の水耕栽培システムよりも小さなスペースで効率的に水耕栽培を行うことができるシステムを提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様の水耕栽培システムは、
所定の方向に延びる複数の水槽と、
植物を保持し該複数の水槽の上方にまたがって配置された植物保持板と、
を備える水耕栽培システムであって、
該複数の水槽のそれぞれは該植物の生育に必要な培養液を含むように構成された
水耕栽培システムを提供する。
【0007】
本発明のある態様の水耕栽培システムは、第1水槽と、第2水槽と、第1水槽と第2水槽との間に設けられる支持機構と、第1水槽と第2水槽とを跨るようにそれらの上方に配置され支持機構によって所定の方向に移動可能に支持される植物保持板と、を備える。
【0008】
本発明の水耕栽培システムにおいては、所定の方向に延びる複数の水槽が配置され、その上に支持される1つの植物保持板において、水槽に対応した位置に植物が配置される。
したがって、本発明においては、1つの植物保持板の下に複数の水槽が配置されることになり、植物保持板の下には水槽と、隣接する2つの水槽間の空間とが存在する。植物保持板は、下に水槽がある部位にのみ植物を保持する。その結果、植物保持板において植物が保持された領域の下部にのみ培養液が存在することになる。
【0009】
他方、従来の水耕栽培システムでは、1つの大きな水槽に1つ以上の植物保持板がフロートされていた。そのような従来の水耕栽培システムでは、植物を保持する部位であろうとなかろうと、植物保持板全体の下に大きな水槽が存在し、その中に培養液が満たされていた。その結果、植物保持板において植物が保持されていない領域の下部においても培養液が存在した。
【0010】
したがって、本発明の水耕栽培システムは、植物保持板において植物保持領域の下方にのみ水槽および培養液が存在する構成としたことによって、植物の生育に必要な培養液の量を顕著に減らすことができた。これは、例えば水不足の地域などにおいて水耕栽培システムを利用する場合には極めて有利である。また、本発明の水耕栽培システムにおける水槽は従来の水耕栽培システムにおける水槽よりも容量が小さいので、培養液の循環が早くなり、そのため新鮮な培養液を植物に次々と提供することができる。このことによって、植物の育成が促進されかつ病気を防ぐことができる。さらに、全体の培養液の量が減るためそれを支える筐体の強度や培養液循環に関するポンプ等の性能に対して必要とされるレベルが低くなり、コスト低減につながる。
【0011】
本発明はさらに、植物保持板において植物が保持されていない領域の下部の、水槽と水槽との間の空間に、植物保持板の支持機構や移動機構や配管等を配置することもできる。従来は植物保持板の下は全て水槽で占められていたことから、本発明においては植物保持板において植物が保持されていない領域の下部の空間が有効に活用されており、それによって水耕栽培システム全体のスペース低減を達成した。さらに、植物保持板の支持機構を配置することによって、植物保持板に強度が必要とされなくなり、植物保持板を安価で軽量な材料(例えば、発泡スチロール)にすることができる。このことによって、水槽および植物保持板を含む栽培システムが軽量化されるため、簡便な機構でこのシステムを上下に複数段を配置することができる。加えて、水槽と水槽との間の空間を照射源からの光が通ることにより、植物保持板に保持されている植物に対して複数の方向から効率的に光を照射することができる。その結果、栽培される植物の生育性を高めて、生産性を向上させることができる。
【0012】
さらに、複数の水槽の上を植物保持板がまたぐ構成としたことによって、植物保持板と水槽内の培養液との間に空間が生じる。そのため、植物保持板に保持された植物の根が、培養液のみならず空気とも接触する。このように根へ空気が供給されることによって、植物の生育が促進される。これは、培養液を含む大きな水槽に植物保持板をフロートさせる従来の水耕栽培システムでは達成できなかった。
【0013】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
所定の方向に延びる複数の水槽と、
植物を保持し該複数の水槽の上方にまたがって配置された植物保持板と、
を備える水耕栽培システムであって、
該複数の水槽のそれぞれは該植物の生育に必要な培養液を含むよう構成される
水耕栽培システム。
(項目2)
上記植物保持板と上記培養液との間に空間が存在する項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目3)
上記複数の水槽のうち互いに隣接する水槽の間に設けられた少なくとも1つの支持機構をさらに備える項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目4)
上記植物保持板を上記所定の方向に沿って移動させる移動機構をさらに備える項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目5)
上記支持機構が上記移動機構を備える項目4に記載の水耕栽培システム。
(項目6)
上記水槽内を上記培養液が流れるように構成された項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目7)
上記水槽が、上記培養液の流れに乱れを生じさせるように構成された乱流発生部をさらに有する項目6に記載の水耕栽培システム。
(項目8)
上記水槽から上記培養液を排出するための排水部をさらに備える項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目9)
上記水槽へ上記培養液を供給するための給水部をさらに備える項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目10)
上記水槽は、水槽幅が上記所定の方向に略直交する方向に調節可能であるように構成された項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目11)
上記植物の根を切断するための切断部をさらに備える項目1に記載の水耕栽培システム。
(項目12)
項目5に記載の水耕栽培システムと、
該水耕栽培システムを収容する発泡樹脂製ハウスと
を備えた植物工場。
(項目13)
複数の上記水耕栽培システムが垂直方向に配置された項目12に記載の植物工場。
(項目14)
上記発泡樹脂製ハウスはアーチ形屋根を有する項目12に記載の植物工場。
(項目15)
上記発泡樹脂製ハウスは複数の分割片から構成された項目14に記載の植物工場。
(項目16)
上記複数の分割片を上記ハウスの外表面で束縛する束縛手段をさらに備える項目15に記載の植物工場。
(項目17)
上記発泡樹脂製ハウスは複数の上記分割片から構成された分割周壁を備える項目15に記載の植物工場。
(項目18)
上記発泡樹脂製ハウスは複数の上記分割周壁を備える項目17に記載の植物工場。
(項目19)
上記発泡樹脂製ハウスは隣接する2つの上記分割周壁の間に補強部材を有する項目18に記載の植物工場。
(項目20)
上記分割周壁の少なくとも一部はリブを備える項目19に記載の植物工場。
(項目21)
上記リブは上記分割周壁と一体成型されている項目20に記載の植物工場。
(項目22)
上記リブは隣接する2つの上記分割周壁の係合部に存在する項目20に記載の植物工場。
(項目23)
上記リブは上記発泡樹脂製ハウスの内部空間側に突出する項目20に記載の植物工場。
(項目24)
上記発泡樹脂製ハウスは複数の上記分割片から構成された分割屋根を備える項目17に記載の植物工場。
(項目25)
上記分割屋根は一端において庇部分を備える項目24に記載の植物工場。
(項目26)
上記一端は上記分割屋根の最大厚さ部分である項目25に記載の植物工場。
(項目27)
別の構築物をさらに備え、該構築物は上記発泡樹脂製ハウスの内部空間と連通した内部空間を含む項目12に記載の植物工場。
(項目28)
上記構築物がドーム型構築物である項目27に記載の植物工場。
(項目29)
上記発泡樹脂製ハウスが、第1のアーチ形屋根を有する第1の構造体と、第2のアーチ形屋根を有する第2の構造体とを備えたアーチ形建造物であり、該第1の構造体および該第2の構造体は、該第1の構造体と該第2の構造体とを隔てる隔壁の少なくとも一部を共有する項目14に記載の植物工場。
(項目30)
上記第1のアーチ形屋根は第1のアーチ形屋根分割片を含み、
上記第2のアーチ形屋根は第2のアーチ形屋根分割片を含み、
上記隔壁は隔壁脚部分割片を含み、
該第1のアーチ形屋根分割片と該第2のアーチ形屋根分割片と該隔壁脚部分割片とが隔壁上部分割片を介して接合されることによって、該第1の構造体および該第2の構造体は該隔壁の少なくとも一部を共有する項目29に記載の植物工場。
(項目31)
上記アーチ形建造物は第3のアーチ形屋根を有する第3の構造体をさらに備え、上記第2の構造体および該第3の構造体は、該第2の構造体と該第3の構造体とを隔てる隔壁の少なくとも一部を共有する項目29に記載の植物工場。
(項目32)
上記隔壁上部分割片は回動可能に上記隔壁脚部分割片と接合される項目30に記載の植物工場。
(項目33)
上記第1の構造体および上記第2の構造体は斜面上に構築される項目32に記載の植物工場。
(項目34)
上記ハウスにおける第1の分割片は、第1の開口部と該第1の開口部を囲んで外側に突出する第1の凸部とを有し、
上記構築物における第2の分割片は、第2の開口部と該第2の開口部を囲んで外側に突出する第2の凸部とを有し、
該第1の凸部と該第2の凸部とが接合されることによって、該第1の開口部と該第2の開口部とが連通されるように構成される
項目27に記載の植物工場。
(項目35)
上記分割片は補強部材を含む項目15に記載の植物工場。
(項目36)
上記補強部材は貫通孔を有する項目35に記載の植物工場。
(項目37)
上記補強部材は締結部材を有し、上記分割片の該補強部材の該締結部材と他の分割片の補強部材の締結部材との締結によって、該分割片と該他の分割片とが接合される項目35に記載の植物工場。
(項目38)
上記補強部材が、長手方向に延びるウェブと該ウェブから短手方向の一方に向けて突き出した第1のフランジと該ウェブから該第1のフランジとは反対方向に向けて突き出した第2のフランジとを備えた項目35に記載の植物工場。
(項目39)
上記補強部材と交わるように取り付けられたクロス部材を含む項目38に記載の植物工場。
(項目40)
上記発泡樹脂が、上記補強部材と上記クロス部材とを包む項目39に記載の植物工場。
(項目41)
上記分割片は基礎に立設されている項目15に記載の植物工場。
(項目42)
少なくとも1つの上記分割片の基端部は突出部を有し、
上記基礎は凹部を有し、
該突出部は該凹部に嵌合するように構成された
項目41に記載の植物工場。
(項目43)
シート部材と塗布層とをさらに備え、
該シート部材は、接合された2つの分割片の接合部分と、該2つの分割片の上記基礎からの立ち上がり部分と、該基礎の対応部分とを覆うように貼り付けられ、
該塗布層は、該シート部材の少なくとも一部に塗布される
項目42に記載の植物工場。
(項目44)
上記基礎は複数の分割基体を含む項目42に記載の植物工場。
(項目45)
上記基礎は、上記発泡樹脂製ハウスの基部が係合される係合部を有する項目44に記載の植物工場。
(項目46)
上記発泡樹脂製ハウスは連結板をさらに備え、
該連結板は、隣接する2つの分割基体の間、および分割基体と該発泡樹脂製ハウスの基部を連結するように構成された
項目45に記載の植物工場。
(項目47)
上記発泡樹脂製ハウスが、該ハウスの床面を形成する床体をさらに含む項目44に記載の植物工場。
(項目48)
上記床体が複数の分割床体を含む項目47に記載の植物工場。
(項目49)
上記発泡樹脂製ハウスは、
該ハウス内の床面の少なくとも一部の領域内に立設された複数の支柱と、
該支柱によって支持される上部床面と
を備える項目12に記載の植物工場。
(項目50)
上記上部床面は、上記発泡樹脂製ハウスと離間して構成されたことを特徴とする項目49に記載の植物工場。
(項目51)
上記発泡樹脂製ハウスが、外面に配置された発泡樹脂製の加工板をさらに備える項目12に記載の植物工場。
(項目52)
上記加工板が偽石板である項目51に記載の植物工場。
(項目53)
上記偽石板が、上記発泡樹脂製ハウスと接する面に凸部を有する項目52に記載の植物工場。
(項目54)
上記偽石板は、外周の少なくとも一部に薄肉状接合部を有する項目52に記載の植物工場。
(項目55)
上記発泡樹脂製ハウスの外周より大きな外周を有する穴の中に、玉石または球体を地震による揺れを吸収するように配置することによって形成された改良地盤をさらに備え、該発泡樹脂製ハウスは、該改良地盤の上にスライド可能に載置される項目12に記載の植物工場。
(項目56)
上記発泡樹脂は発泡スチロールである項目12に記載の植物工場。
(項目57)
上記発泡スチロール製ハウスは室温調節手段を備える項目56に記載の植物工場。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、培養液の量を低減しうるとともに従来の水耕栽培システムよりも小さなスペースで効率的に水耕栽培を行うことができる水耕栽培システムを提供できる。本発明によれば、さらに、そのような水耕栽培システムを、当該水耕栽培システムを収容するのに適した発泡スチロール製ハウスに収容することによって、どのような温度条件の環境または土地条件の環境にであっても簡便に低コストで構築することのできる植物工場を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係る水耕栽培システムを示す上面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面図である。
図4図1のC−C線断面図である。
図5】第2の実施の形態に係る水耕栽培システムを示す上面図である。
図6】第3の実施の形態に係る水耕栽培システムを示す上面図である。
図7】第4の変形例に係る水耕栽培システムを示す上面図である。
図8】植物保持板の貫通孔にはめ込まれる前の人工培地を示す斜視図である。
図9図9(a)〜(c)は、植物保持板の貫通孔にはめ込まれた状態の人工培地の周辺を拡大して示す拡大図である。
図10図10(a)〜(c)は、人工培地の変形例を示す図である。
図11】植物保持板30の変形例を示す概略図である。
図12】多段式培養システム1000を示す正面図である。
図13】多段式培養システム1000を示す側面図である。
図14】本発明の搬出入機構を備えた培養システムの概略図である。図1(A)は培養システムの側面図であり、図1(B)は培養システムの平面図である。
図15図14の培養システムを図14の矢印X方向から見た正面図である。
図16図16(A)〜(I)は、本発明の搬出入機構により、培養システムに植物保持板を交互に搬入および搬出する手順を示す側面方向の概略図である。
図17図17は水耕栽培システム収容ハウス1の外観を示す斜視図である。
図18図18図17の水耕栽培システム収容ハウス1の分解斜視図である。
図19図19は周方向に3分割された分割周壁の組立状態を示す立面図である。
図20図20図19のIV部拡大図である。
図21図21(a)は分割周壁1100の前後方向の連結状態の1つの実施形態を示す斜視図であり、図21(b)はその連結部の断面図(図20のVI−VI線断面図)である。
図22図22は、分割周壁と分割屋根とから構成される水耕栽培システム収容ハウスの具体的実施形態を示す。
図23図23は、分割屋根が庇を有する具体的実施形態を示す。
図24図24は、本発明の水耕栽培システム収容ハウスを、連結部を介して別の構造物と連結した実施形態を示す。
図25図25は、水耕栽培システム収容ハウスとドーム状構築物との連結の1つの実施形態における連結部の拡大図を示す。
図26図26(a)は、3つのアーチ形構造体を組み合わせた水耕栽培システム収容ハウスの外観図である。図26(b)は、3つのアーチ形構造体を組み合わせた水耕栽培システム収容ハウスの断面図である。
図27図27は、図26の水耕栽培システム収容ハウスを構成する各分割片の斜視図である。
図28図28は、本発明による水耕栽培システム収容ハウスを登り斜面に設置した時の断面図である。
図29図29は、隔壁上部分割片が隔壁脚部分割片に対して回動可能とした構成図である。
図30図30は、隔壁上部分割片の左ウィングと右ウィングが隔壁脚部分割片に対して個別に回動可能とした構成図である。
図31図31は、分割片の据え付け構造の詳細を示す図である。
図32図32(a)は移動式組立基礎の斜視図である。図32(b)は、分割基体3100の1つの実施形態を示す図である。
図33図33は、分割片に補強部材を組み込む様子を示した図である。
図34図34は、メッシュシートと下地材とによる補強の具体的実施形態を示す。
図35図35は、Z字鋼を用いた分割片の具体的実施形態を示す。
図36図36は、二階建ての水耕栽培システム収容ハウスを示す。
図37図37は、本発明の水耕栽培システム収容ハウスの免震構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0018】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきではない。本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行なうことができることは、当業者に明らかである。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1〜4は、第1の実施の形態に係る水耕栽培システム100を示す。図1は、水耕栽培システム100の上面図である。図2図1のB−B線断面図、図3図1のA−A線断面図、図4図1のC−C線断面図である。図1では、水耕栽培システム100の内側の構成を示すため、天板11、人工培地4、および植物2の表示は省略する。
【0020】
水耕栽培システム100は、水耕栽培により野菜や花等の植物2を生育する。植物2は、植物保持板30上で生育する、水耕栽培に適した任意の植物であってよいが、農産物であることが好ましい。農産物としては、光合成をする野菜、花、果物、穀物などが想定される。一方、照射部60を設けない場合には、農産物としては、モヤシや光合成をしないキノコなどが想定される。水耕栽培システムにおいて生育させる植物の具体的種類は、当業者が適切に決定することができる。
水耕栽培システム100は、筐体10と、水槽20a〜20f(以下、総称する場合には「水槽20」と呼ぶ)と、複数の植物保持板30と、支持機構40と、一対の移動機構50a、50b(以下、総称する場合には「移動機構50」と呼ぶ)と、複数の照射部60と、複数の根切カッター70と、を備える。
【0021】
筐体10は、主に水槽20を収容する。筐体10は、天板11と、底板12と、支柱13と、を含む。天板11および底板12は矩形板状の部材であり、その複数の角部にそれぞれ支柱13が取り付けられる。
【0022】
底板12には、長尺状の水槽20が配置される。水槽20は複数存在するため、適宜a、b、cなどを付けて20a、20b、20cなどと表記する。水槽20a〜20fは、短手方向にこの順に並設される。特に、水槽20a〜20fは、それぞれの長手方向が略同一方向を向くよう並設される。水槽20a〜20fはそれぞれ、その長手方向に沿って延びる収容溝21a〜21f(以下、総称する場合には「収容溝21」と呼ぶ)を有する。なお、この収容溝21は水槽20の内面を意味する。水槽20と収容溝21は一体で形成されてもよいし、別個に形成されてもよい。例えば、後述するように、水槽20内に培養液が流れるようにするために、水槽20ごと傾斜させてもよいし水槽20の内面(底面)だけを傾斜させてもよい。このように水槽20の内面だけを傾斜させる場合に、収容溝21を傾斜させるという。収容溝21には培養液3が収容される。以降、水槽20および収容溝21の長手方向に平行な方向をD1方向、水槽20および収容溝21の短手方向に平行な方向をD2方向として説明する。
【0023】
図3から明らかなように、本発明においては、1つの大きな水槽中の培養液上に植物保持板をフロートさせる従来の水耕栽培システムとは異なり、複数の細長い水槽20上に植物保持板を配置するため、植物保持板30と培養液3との間に空間が生じることになる。このため、植物2の根は、培養液3のみならず空気とも十分に接触する。これによって、植物2の根に空気が十分に供給されるため、植物2の生育が促進される。
【0024】
植物保持板30は、貫通孔31を備える板状部材であり、この貫通孔31に、植物2を含む人工培地(栽培床)4が挿入され、保持される。植物保持板30は、水槽20の上方に配置され、支持機構40により支持される。特に、植物保持板30は、水槽20aから水槽20fを跨るようにそれらの上方に配置される。すなわち、1つの植物保持板30の下方には、複数の水槽20が存在する。従来の水耕栽培システムにおいては、1つの大きなプール状水槽の上に、1つまたは複数の植物保持板が配置される構成が採用されていた。
【0025】
収容溝21は、D2方向におけるその幅Wが、生育される植物2の根の大きさに応じた広さとなるよう形成される。例えば幅Wは、植物2の根が収容溝21の両側面に接する広さに決定される。また、例えば幅Wは、植物2の根が収容溝21の各側面との隙間が50mm以下となるよう決定される。いずれにせよ、収容溝21は、その幅Wが比較的狭くなるよう決定される。好ましい実施形態において、収容溝21の幅Wが植物2の生育に合わせて調節することができるように、収容溝21は構成される。当該分野で公知の技術によって、収容溝21の幅Wを調節可能なものにすることができる。具体的には、植物2の生育初期は、根が広がっていないので収容溝21の幅Wは狭くしておき、植物2の生育とともに根も生育して広がってきたら、隣接する2つの水槽の間に存在する別の機構(例えば、隣接する2つの水槽の間に存在する支持機構40や、後述する図7の支持機構440)と接触しない範囲で収容溝21の幅Wを広くすることができる。水槽20の幅に応じて収容溝21の幅が変動される構成としてもよいし、水槽20と収容溝21とは別個に独立して幅が変動される構成としてもよい。
【0026】
水槽20a〜20fそれぞれの長手方向の端部22a〜22f(以下、総称する場合には「端部22」と呼ぶ)側には、給水管80a〜80f(以下、総称する場合には「給水管80」と呼ぶ)が設けられる。給水管80は、ポンプ81がタンク82から汲み出した培養液3を、水槽20に供給する。反対側の端部23a〜23f(以下、総称する場合には「端部23」と呼ぶ)側には開閉可能に構成された排水口24a〜24f(以下、総称する場合には「排水口24」と呼ぶ)が設けられる。水槽20内に供給された培養液3は、この排水口24から排水され、D2方向に延在する受水部83を通ってタンク82に戻る。なお、排水口24の代わりに、吸引ポンプを設け、吸引ポンプで汲み上げることによって培養液3を排水してもよい。
【0027】
水槽20a〜20fの端部23a〜23f側の収容壁25a〜25f(以下、総称する場合には「収容壁25」と呼ぶ)は、取り外し可能に構成されている。これにより、植物保持板30を根切カッター70の方に移動させるときに、植物2の根と収容壁25とが接触するのを避けることができる。なお、植物2の根と収容壁25とが接触しないように収容壁25を退避できればよく、収容壁25は下方にスライド可能に構成されていても、左右または上下に開閉可能に構成されていてもよい。
【0028】
支持機構40は、植物保持板30を水槽20の上方に支持できるような任意の機構であってよい。支持機構40は、植物保持板の端部に配置されて植物保持板を左右から支持してもよいし、隣り合う水槽20の間に配置されて植物保持板を下から支持しても、上から吊り下げてもよい。このような支持機構としては、ローラ、ベルト、支柱、フックなどが挙げられるが、これらに限定されない。図1および2においては、本発明の具体的な実施形態として、支持機構40が水槽20の間に配置されたローラである場合を示した。この具体的な実施形態において、支持機構40は、支持ローラ群41ab、41cd、41efを含む。これらは、水槽20aと水槽20bとの間、水槽20cと水槽20dとの間、水槽20eと水槽20fとの間にそれぞれ配置される。支持ローラ群41ab〜41efは、1つ以上の支持ローラ42をそれぞれ含む。図1および図2では、支持ローラ群41ab〜41efは、D1方向に沿ってほぼ隙間無く配置された多数の支持ローラ42を含む。支持ローラ42は、図示しない支持部材によって筐体10に固定される。特に、支持ローラ42は、その回転軸が、D1方向と略直交し、D2方向と略平行となるよう固定される。支持機構40は、この支持ローラ42によって、植物保持板30を移動可能に支持する。
【0029】
水槽20の間は、上記のように支持機構のような機構を配置して全体のスペースを低減してもよいし、何も配置せずに空間のままにしておいてもよい。水槽20の間に空間が存在することによって、水槽20の間を光が通過することができ、植物2に複数の方向から光が照射されることになる。また、水槽20の間を空間にしておくことによって、水槽20のメンテナンスも容易になる。
【0030】
一対の移動機構50a、50bは、水槽20を挟んでD2方向で対向する。一対の移動機構50a、50bはそれぞれ、複数の駆動ローラ51と、複数の駆動ローラ51を回転駆動する駆動装置52と、を含む。各駆動ローラ51は、回転軸が鉛直方向を向き、外周面が植物保持板30の側面に接するよう設けられる。駆動装置52は、モータ(不図示)の回転をチェーン52aを介して駆動ローラ51に伝達し、これを回転させる。このように、植物保持板30の側面に接した駆動ローラ51が回転することにより、植物保持板30は移動する。なお、移動機構50a、50bは、D2方向における間隔Lを調節可能に構成されてもよい。これにより、設計変更等により植物保持板30のD2方向の長さが変更された場合にも対応できる。
【0031】
天板11には、複数の照射部60が固定される。各照射部60は、水槽20と鉛直方向で対向するよう配置される。つまり、各照射部60は、水槽20上に配置されるべき植物2と鉛直方向で対向するよう配置される。照射部60は光を照射し、植物2はこれを受けて光合成する。なお、光合成しない植物を生育する場合は、照射部60は光を照射しなくてもよい。
【0032】
根切カッター70は、端部23a〜23fそれぞれの近傍であって、端部23に対して端部22とは反対側に設けられる。本実施の形態では、根切カッター70は、周方向に所定の間隔に配置された複数の刃を有する円板状のカッターである。根切カッター70は、モータ(不図示)によって回転軸を中心に回転し、植物保持板30とともに移動されてくる植物2の根を切り落とす。このようにして、植物保持板30に保持されたままの植物2の根を切り落とすことができる。
【0033】
以上のように構成された水耕栽培システム100の動作を説明する。まず、生育段階について説明する。植物2が植えられた人工培地4を植物保持板30の貫通孔31にはめ込む。植物保持板30は、移動機構50によって水槽20上の所望の位置に配置される。給水管80から培養液3を給水するとともに排水口24から排水することにより、収容溝21内に培養液3を循環させる。もちろん、排水口24を閉めて培養液3を収容溝21に溜めてもよい。また、必要に応じて照射部60から植物2に光を照射する。こうして植物2を生育する。
【0034】
次に出荷段階について説明する。まず、給水管80からの培養液3の供給を止め、排水口24から培養液3を排水する。続いて、水槽20の端部23側の収容壁25を取り外し、この状態で、植物保持板30を根切カッター70の方に移動させる。根切カッター70は、植物保持板30ごと移動されてきた植物2の根を切り落とす。根が切り落とされた植物2は、搬送ロボット(不図示)により搬送され、出荷される。
【0035】
本実施の形態に係る水耕栽培システム100によれば、水槽20は、収容溝21の幅Wが比較的狭くなるよう形成される。このため、植物2の生育に必要な培養液3の量を減らすことができる。これは、例えば水不足の地域などにおいて水耕栽培システムを利用する場合には極めて有利である。また、水槽20が細く小さいため、培養液3の循環が早くなる。言い換えると、新鮮な培養液3を次々水槽20に送り込むことができる。そのため、植物2の生育を早めることができる。また、循環が早くなることで水槽20内を清潔に保つことができる。これにより、植物2の病気を防ぐことができる。また、少量の培養液3で足りるため水槽20が軽くなり、これを支える筐体10に求められる強度は比較的低くなる。そのため、筐体10の材料コストを抑えることができる。また、ポンプ81に求められる吸引性能や耐久性能も低くなり、ポンプ81にかかるコストを低減できる。
【0036】
また、本実施の形態に係る水耕栽培システム100によれば、植物保持板30は、支持ローラ群41ab〜41efにより支持される。つまり、植物保持板30は、水槽と水槽の間に設けられた支持機構により支持される。そのため、支持機構から植物保持板30が受ける自重の反力を、D2方向に比較的均等に分散することが可能となる。そのため、植物保持板30に求められる強度は比較的低くなり、植物保持板30を軽量化することができる。その結果、植物保持板30を移動させる移動機構50に求められる駆動性能や耐久性も低くなり、移動機構50のコストを低減できる。
【0037】
また、本実施の形態に係る水耕栽培システム100によれば、植物保持板30は、水槽20a〜20fを跨るように設けられる。これにより、例えば出荷時等に、水槽20a〜20fで生育した植物2を一括して出荷工程に移動させることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る水耕栽培システム100と第2の実施の形態に係る水耕栽培システムの主な違いは、水槽の構成である。
【0039】
図5は、第2の実施の形態に係る水耕栽培システム200を示す。図5は第1の実施形態の説明についての図3に対応する。水耕栽培システム200は、筐体10と、水槽20と、複数の植物保持板30と、支持機構40と、一対の移動機構50a、50bと、複数の照射部60と、複数の根切カッター70と、を備える。
【0040】
水槽120は、その収容溝121の溝底面126が、水平方向に対して角度θだけ傾斜するよう構成される。特に、水槽120は、給水管80が設けられる端部22側から排水口24が設けられる端部23側に向かって下がり傾斜となるよう構成される。本実施の形態では、傾斜調節部129により水槽120を支持し、傾斜調節部129を伸縮することにより溝底面126の傾斜を実現する。なお、D1方向に向かうにつれて底部123の厚みが大きくなるよう水槽120が形成されることにより溝底面126の傾斜が実現されてもよい。上記傾斜は、水槽20が傾斜されることによって実現されてもよいし、水槽20内の収容溝121が傾斜されることによって実現されてもよい。
【0041】
また、水槽120の溝底面126には、複数の突出部180が形成される。突出部180は、例えば、D1方向に沿った断面が三角形状を有する。前述したように収容溝121の溝底面126が傾斜しているため、端部22から端部23に向かう培養液3の流れが生じるところ、突出部180が存在することにより、この培養液3の流れに乱れが発生し得る。また、本発明は水槽20の培養液3の水面に植物保持板30をフロートさせるのではなく、植物保持板30を支持機構40により水槽20の上方に支持する構成であるため、培養液3の水面と植物保持板30との間に空間が存在する。したがって、培養液3において生じた乱れにより、この培養液3の水面と植物保持板30との間の空間に存在する空気が培養液3に取り込まれることになる。これにより、植物2の根が培養液3だけでなく空気にも接し、それによって植物2の生育が促進される。
【0042】
本実施の形態に係る水耕栽培システム200によれば、第1の実施の形態に係る水耕栽培システム100と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本実施の形態に係る水耕栽培システム200によれば、給水側から排水側に向かって下がり傾斜となるため、より容易に培養液3を循環させることができる。また、本実施の形態に係る水耕栽培システム200によれば、大気中の空気を培養液3に取り込むことができる。
【0043】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、水槽が上下に積み上げられた多段式の水耕栽培システムについて説明する。図6は、第3の実施の形態に係る水耕栽培システム300を示す側面図である。水耕栽培システム300は、栽培ユニット390と、収穫包装ユニット392と、を備える。本発明の水耕栽培システムは、水槽20の所定の方向に延びる樋のような形状と、植物保持板の軽量化とによって、システム全体が軽量化されているため、そのようなシステムを複数垂直方向に積み重ねて配置することによって、簡便な機構で多段式の水耕栽培システムとすることができる。
【0044】
栽培ユニット390は、第1栽培棚391a、第2栽培棚391b、第3栽培棚391c、および第4栽培棚391d(以下、総称する場合には「栽培棚391」と呼ぶ)と、タンク82およびポンプ81と、を有する。第1栽培棚391a〜第4栽培棚391dは、この順に下から上に積み上げられている。各栽培棚391は、複数の水槽20と、支持機構(不図示)と、移動機構(不図示)と、照射部60と、を備える。これらは、第1の実施の形態または第2の実施の形態の水槽20、支持機構40、移動機構50、照射部60にそれぞれ対応する。タンク82およびポンプ81は、各栽培棚391に共通して利用される。もちろん、栽培棚391ごとにタンク82およびポンプ81が設けられてもよい。なお、図6では給水管80の表示は省略している。
【0045】
収穫包装ユニット392は栽培ユニット390と隣接して設けられる。特に収穫包装ユニット392は、栽培ユニット390内の水槽20の端部23側(端部22から遠い側)、すなわち排水口(排水口)に近い側に設けられる。収穫包装ユニット392は、搬送装置393と、根切カッター70と、包装機395と、を有する。これらは、この順に端部23から離れるように並ぶ。なお、収穫包装ユニット392は、包装された植物を運ぶコンベアやその他の装置を有していてもよい。搬送装置393は、移載装置394と、昇降装置(不図示)とを備える。昇降装置は、移載装置394を鉛直方向(図のD3方向)に移動させる。移載装置394は、D1方向に植物保持板30を移動可能に構成される。包装機395は植物2を包装する。
【0046】
以上のように構成された水耕栽培システム300の動作を説明する。まず、生育段階について説明する。植物2が植えられた人工培地4を植物保持板30の貫通孔31にはめ込む。植物保持板30は、作業者によって移載装置394に載せられる。昇降装置は、植物保持板30が載った移載装置394をD3方向の所望の位置に移動させる。例えば第2栽培棚391bに植物保持板30を渡す場合は、第2栽培棚391bの支持機構に植物保持板30を載せられる位置に移動させる。移載装置394は、植物保持板30を栽培ユニット301内の栽培棚391に渡す。植物保持板30は、栽培棚391の移動機構によって水槽20上の所望の位置に配置される。そして、第1の実施の形態の場合と同様にして植物2を生育する。
【0047】
次に出荷段階について説明する。まず、給水管からの培養液の供給を止め、排水口から培養液を排水する。続いて、水槽20の端部23側の収容壁25を取り外し、この状態で、植物保持板30を搬送装置393の方に移動させ、移載装置394に載せる。昇降装置は、植物保持板30が載った移載装置394を、包装機395に応じた位置に移動させる。移載装置394は、植物保持板30を包装機395に移動させる。このとき、移載装置394と包装機395との間に設けられた根切カッター70によって、植物2の根が切り落とされる。包装機395は、根が切り落とされた植物2を包装する。
【0048】
本実施の形態に係る水耕栽培システム300によれば、第1の実施の形態に係る水耕栽培システム100と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本実施の形態に係る水耕栽培システム300によれば、植物保持板30の出し入れが1台の搬送装置393により実施される。そのため、搬送装置393に要するコストを抑えることができる。
【0049】
以上、実施の形態に係る水耕栽培システムの構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0050】
(第1の変形例)
第1から第3の実施の形態では、支持機構40が支持ローラ群41ab、41cd、41efを含む場合について説明したがこれに限られず、水槽20bと水槽20cとの間にローラ群41bcを設けてもよく、水槽20dと水槽20eとの間にローラ群41deを設けてもよい。もちろん、支持機構40は、支持ローラ群41ab、41bc、41cd、41de、41efのうちの任意の2つ以上の支持ローラ群を含んでいてもよい。
【0051】
(第2の変形例)
第2の実施の形態では、水槽120の溝底面126が傾斜している場合、すなわち水槽120a〜120fのすべての水槽の溝底面が傾斜している場合について説明したが、これに限られない。1つ以上の任意の水槽の溝底面が傾斜していればよい。
【0052】
(第3の変形例)
第1から第3の実施の形態において、支持機構40と移動機構50とが一体に構成されてもよい。すなわち、支持機構40が移動機構50の機能を有していてもよい。
【0053】
図7は、第5の変形例に係る水耕栽培システム500を示す上面図である。水耕栽培システム500は、支持機構440を備える。また、後述するように支持機構440が移動機構としての機能も有するため、水耕栽培システム500は、第1から第3の実施の形態のような移動機構50を有しない。
【0054】
支持機構440は、ループ状の支持ベルト441ab、441cd、441efと、駆動プーリー442ab、442cd、442efと、従動プーリ443ab、443cd、443efと、モータ444と、シャフト445と、を有する。
【0055】
支持ベルト441ab〜441efはそれぞれ、駆動プーリー442ab〜442efと、従動プーリ443ab〜443efとの間に掛け渡される。植物保持板30は、この支持ベルト441ab〜441efにより支持される。モータ444は、シャフト445を介して駆動プーリー442ab〜442efを回転させる。駆動プーリーが442ab〜442efの回転により支持ベルト441ab〜441efが周運動し、植物保持板30がD1方向に移動する。なお、支持機構440は、ベルトの中間部にテンションをかけつつガイドするプーリーを有していてもよい。
【0056】
本変形によれば、第1から第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本変形によれば、水耕栽培システム500は移動機構50を有しないため、そのD2方向の幅を狭くすることができる。すなわち、水耕栽培システム500に必要なスペースを小さくすることができる。
【0057】
(第4の変形例)
第3の実施の形態において、収穫包装ユニット392は移動可能に構成されてもよい。例えば、収穫包装ユニット302は所定のレール上に配置され、そのレールに沿って収穫包装ユニット392を移動させてもよい。また例えば、収穫包装ユニット302の各装置がタイヤを有し、タイヤにより自由に移動させてもよい。水耕栽培システムが複数の栽培ユニット390を備える場合、このように移動可能に構成された収穫包装ユニット302は、複数の栽培ユニット390の収穫、包装を実施することができる。これにより、必要となる収穫包装ユニット392の数を抑えることができ、水耕栽培システムの設備コストを抑えることができる。
【0058】
(他の変形例)
隣接する2つの水槽間の空間を種々有効に活用することができる。例えば、水槽と水槽との間に、水槽からあふれた培養液を受容し、再循環に回す機構を設けてもよい。または、植物保持板同士が乗り上げるのを防止する機構を設けることもできる。さらに、水槽と水槽との間に空間があることにより、水槽のメンテナンスが容易になる。
【0059】
(人工培地)
人工培地4は、栽培床ともいい、植物2を保持する植物保持部分を有し、かつ植物保持板30の貫通孔31に固定できる任意の部材であってよい。人工培地4は、代表的には、ヤシやココナッツの繊維を加工して固めた植物繊維の加工品や、ウレタンから形成されたスポンジであり得る。ただし、繊維質素材により形成された人工培地は、繊維に沿って剥がれるなど崩れやすく、取り扱いが難しいため、本発明においてはウレタンから形成されたスポンジが特に好ましい。図8は、植物保持板30の貫通孔31にはめ込まれる前の人工培地4を示す斜視図である。1つの実施形態において、人工培地4は、図8に示すように、貫通孔31にはめ込まれる前の状態では、四角柱形状を有する。人工培地4は、貫通孔31にはめ込まれた状態では、弾性変形して貫通孔31に応じた形状をとる。図9(a)〜(c)は、植物保持板30の貫通孔31にはめ込まれた状態の人工培地4の周辺を拡大して示す拡大図である。図9(a)は上方から見た図を示し、図9(b)は下方から見た図を示し、図9(c)は図9(a)、(b)のD−D線断面図を示す。図9(a)、(b)では、人工培地4の構成を示すため、これに保持される植物2の表示は省略する。図9(a)〜(c)に示す例では本発明の人工培地4は略円柱状に弾性変形している。なお、貫通孔31にはめ込まれる前の人工培地4は、円柱状、多角柱状、その他任意の形状を有していてもよい。
【0060】
人工培地4は、上面4aに形成される第1凹部4bと、側面4cに形成される4つの第2凹部4dと、を有する。第1凹部4bは、植物2の少なくとも一部、例えば茎の一部や根の一部を収納する。したがって、第1凹部4bは、収納する茎や根に応じた形状および大きさに形成されればよい。本実施の形態では、第1凹部4bは略円柱状に形成されている。この第1凹部4bにより植物2は保持される。
【0061】
第2凹部4dは、四角柱状の人工培地4の4つの側面4cにそれぞれ1つずつ形成される。特に、第2凹部4dは、各側面4cの一部を切り欠くことにより形成される。人工培地4が貫通孔31にはめ込まれた状態では側面4cは略円筒状を有し、4つの第1凹部4bはこの略円筒状の側面4c上において周方向に等間隔に並ぶ。4つの第2凹部4dは、下面4eから上面4aに向かう方向に延在する。ここでは、第1凹部4bよりも下方の位置まで延在する。
【0062】
人工培地4が貫通孔31にはめ込まれた状態では、第2凹部4dと貫通孔31の内壁31aとによって非貫通孔4fが形成される。なお、第2凹部4dは下面4eから上面4aまで延在してもよく、この場合は第2凹部4dと内壁31aとによって貫通孔が形成される。第2凹部4dの深さは、貫通孔31にはめ込まれると人工培地4が弾性変形することを考慮して、非貫通孔4fが所望の大きさになるよう決定されればよい。
【0063】
このような構成の人工培地4は、植物保持板30の貫通孔31にはめ込まれると、植物保持板30との間に非貫通孔4fが形成される。そのため、植物2の根は、非貫通孔4fまで到達しさえすれば、それ以降は伸びやすくなる。また、本発明の好ましい実施形態によれば、人工培地4はスポンジにより形成されているため、根は、人工培地4内を均一に伸びようとする。言い換えると、根は、第1凹部4bから側面4cに向かって広がるように伸びようとする。したがって、本実施の形態に係る人工培地4によれば、根は比較的広がるように伸び、かつ、伸びやすい。またこれに加え、人工培地4はスポンジにより形成されているため、例えばロックウール等の繊維質素材により形成される人工培地に比べて崩れにくい。
【0064】
なお、例えば人工培地4の各側面4cには、2つ、3つ、またはそれ以上の第2凹部4dが設けられてもよい。
【0065】
図10(a)〜(c)は、人工培地の変形例を示す。図10(a)〜(c)は、植物保持板30の貫通孔31にはめ込まれる前の人工培地204を示す。図10(a)は上方から見た図を示し、図10(b)は下方から見た図を示し、図10(c)は図10(a)、(b)のE−E線断面図を示す。人工培地204は、第1、2の実施の形態の人工培地4と同様に第1凹部4bおよび第2凹部4dを有する。これに加えて人工培地204は、孔204gを有する。この孔204gは下面4eから上面4aに向かう方向に延在する。孔204gは、下面4eに直交する方向に延在しても、下面4eに対して所定角度傾斜する方向に延在してもよい。また、孔204gは非貫通孔であっても貫通孔であってもよい。
【0066】
本変形例によれば、図8および9に示した人工培地4と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本変形例によれば、人工培地204は孔204gを有する分だけさらに根が伸びやすくなる。なお、本変形例では第2凹部4dに加えて孔4gを設ける場合について説明したが、第2凹部4dに代えて孔4gを設けてもよい。
【0067】
(植物保持板)
植物保持板30は、貫通孔31を備える板状の部材であり、この貫通孔31に、植物2を含む人工培地(栽培床)4が挿入され、保持される。植物保持板30は、水槽20の上方に支持され、植物2を保持する貫通孔31を備えることができる任意の材料から構成される得る。植物保持板30は、金属、木材、発泡樹脂などを含む任意の材料から形成され得る。好ましい実施形態において、本発明の植物保持板30は、発泡スチロールにより形成される。植物保持板30の厚さは、その材質や保持される植物2の重さに応じて決定すればよい。
【0068】
植物保持板30は、水槽20の上方に配置され、支持機構40により支持される。特に、植物保持板30は、水槽20aから水槽20fを跨るようにそれらの上方に配置される。植物保持板30は、一方の主表面から他方の主表面に貫通する複数の貫通孔31を有する。貫通孔31は、植物保持板30が水槽20の上方に配置されたときに、収容溝21の鉛直上方に位置するように形成される。特に、貫通孔31は、収容溝21a〜収容溝21fの各収容溝上において、D1方向に1列に並ぶように形成される。図1に示す例では、収容溝21a〜収容溝21fの6つ収容溝に対応して、D1方向に貫通孔31の列が6つ形成されている。
【0069】
各貫通孔31は、内部に植物2を含む人工培地4を受容し、保持することができる任意の形状であってよく、例えば、円柱状、四角柱状、多角柱状、その他のいかなる形状でもよい。図1においては、代表的な実施形態として円形の貫通孔31を示した。各貫通孔31には、植物2が植えられた人工培地4がはめ込まれる。各貫通孔31と人工培地4との嵌合は、必ずしも全体が密着した嵌合でなくてもよく、人工培地2が適所に保持されるという目的を達成することができる形式であればどのようなものであってもよい。したがって、貫通孔31は、人工培地4を介して植物2を保持する保持部として機能する。なお、人工培地4の代わりに、例えばネットを貫通孔31にはめ込んで植物2を保持してもよい。植物2の葉は、植物保持板30の上側に突出する。植物2の根は、植物保持板30の下側に突出して収容溝21内の培養液3と接触する。
【0070】
(多段式栽培システム)
限りある農地を用いて、植物などの農作物の単位面積あたりの収穫量を向上させる技術が切望されてきた。このような技術の1つとして、多段式の栽培棚が知られている。上述のとおり、本発明の水耕栽培システムは軽量であるため、多段式の栽培棚への応用に有利である。
【0071】
しかし、特開2012−217392号などに記載された技術を含む従来の多段式の栽培棚では、各段の上側に設けられた照明のみから光を照射していた。そのため、栽培される農作物に対する光の照射が不十分であるという問題があった。これを解決するためには、複数の方向から光を照射すればよいが、多段式の栽培棚において複数の方向から光を照射することは困難であると考えられてきた。
【0072】
そこで、本発明者らは、本発明の水耕栽培システムにおける植物保持板30の変形例植物保持板35を開発した。植物保持板30の変形例を図11に示す。図11に示す植物保持板35は、貫通孔31に加えて、貫通孔31とは別に光透過領域28を備える。なお、この変形例の植物保持板は、図1〜6に示される水耕栽培システムだけでなく、従来の水耕栽培システムにおけるフロート板として用いてもよい。すなわち、植物保持板35は、水に浮く材料でフロート板として形成されていてもよい。このような植物保持板35の材料として、発泡スチロールを好適に使用することができる。植物保持板35の厚さは、材料や保持される農作物22の重さに応じて決定すればよい。植物保持板35の形状は任意であり、それが用いられる水耕栽培システムに応じて決定すればよい。
【0073】
貫通孔31は、植物保持板35の一方の主表面から他方の主表面に貫通して形成され、植物2を保持する。植物保持板35には、複数の貫通孔31が形成されていることが好ましい。貫通孔31による植物2の保持は、図13を用いて後述する。
【0074】
光透過領域28も、植物保持板35の一方の主表面から他方の主表面に光が透過するように形成され、植物2が保持された場合に、植物2が成長しても少なくとも植物保持板35の下側から植物2に光が照射されるように、貫通孔31に隣接して設けられている。光透過領域28は、植物保持板35の両方の主表面において、表面積の約30%以上を占めることが好ましく、約50%以上を占めることがさらに好ましい。なお、本明細書における「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。光透過領域28が約30%未満の場合には、植物2に照射される光の量が十分でない場合がある。一方、光透過領域28を約50%以上とすることによって、光の照射効率を大幅に高めることができる。水植物保持板35全体の強度が損なわれないのであれば、光透過領域28の表面積はたとえば約80%を占めてもよい。光透過領域28は、光の照射源から照射された光を少なくとも部分的に透過することができればどのような形状または材質で形成されてもよい。図11に示した実施形態では、光透過領域28は貫通穴である。ただし、光透過領域28をガラスや樹脂で作られた貫通していない透明の窓として形成することもできる。
【0075】
複数の光透過領域28を、それぞれの形や位置に応じて光透過領域28a、光透過領域28b、光透過領域28cと呼ぶ場合がある。光透過領域28aは、植物保持板35の長手方向において、隣接する保持部26間に設けられている。光透過領域28bは、植物保持板35の短手方向において、植物保持板35の角の近傍に存在する2つの保持部26間に設けられている。光透過領域28cは、植物保持板35の短手方向において、植物保持板35において角周辺以外の領域に存在する2つの保持部26間に設けられている。
【0076】
図11に示す植物保持板35を用いることにより、植物2に対して複数の方向から効率的に光を照射することができる。その結果、植物の生育性を高めて、生産性を向上させることができる。
【0077】
ここで、図12図13を用いて、植物保持板35を用いた培養システム1000を説明する。図12は、実施の形態に係る植物保持板35を用いた培養システム1000を示す正面図である。図13は、植物保持板35を用いた培養システム1000を示す側面図である。なお、図12では、照射部61、反射板18,19の図示は省略する。
【0078】
培養システム1000は、植物保持板35と、筐体10と、照射部60と、を主に備える。
【0079】
筐体10は、複数の水槽20が所定の間隔にて垂直方向に並べられて形成されている。水槽20は、培養液3を収容する溝状の収容溝21を有する。水耕栽培システム100〜300とは異なり、水耕栽培システム1000においては、筐体10には、対向する内壁面のそれぞれに、複数の凸部14が設けられている。同じ高さに設けられた凸部14に水槽20の両端を載せることによって、複数の水槽20のそれぞれが筐体10に固定されている。また、垂直方向に隣接する1対の水槽40の間には、柱状の照射部16が設けられている。上下方向に光を照射可能とするために、本実施の形態では照射部16に筺体が設けられていないが、筐体を設けてもよい。照射部60に筺体を設ける場合には、その筺体を透明や半透明など、光を透過するものに形成することが好ましい。照射部60の両端は、凸部14の下部においてそれぞれ固定されている。これによって、水槽20と照射部60とが並行している。ここでは、上側3段の栽培棚のみを示すが、水耕栽培システム1000は4段以上の任意の段数の栽培棚を含むシステムであってもよい。
【0080】
再び図12および図13を用いて、培養システム1000の水槽20と植物保持板35との関係を説明する。水槽20の収容溝21には、培養液3と植物保持板35とが収容される。植物保持板35には、植物2がカップ32に収容された状態で保持される。カップ32は、生育段階にかかわらず、植物2が貫通孔31を貫通した状態にて、安定して植物2を保持する。カップ32は、上述の人工培地4であってもよいし、カップ32に人工培地4がはめ込まれてもよい。植物2の葉は、主に植物保持板35の一方の主表面から上側に突出して固定される。一方、植物2の根は、植物保持板35の他方の主表面から下側に突出して培養液3と接触する。培養液3がカップ32の内部に侵入して植物2の根と接触できるようにするため、および光を根に照射可能とするために、カップ32には穴が開けられている。植物2の根は、カップ32に開けられた穴を貫通してカップ32の外へと伸びることも可能である。植物2を保持できさえすれば、この穴は大きい方が望ましい。なお、カップ32を植物保持板35と一体的に形成してもよい。また、カップ32の内部にスポンジなどの人工培地4が設けられていてもよい。
【0081】
次に、植物保持板35に保持された植物2への光の照射について説明する。ここでは、図12および図13に示した3段構造のうち、上段および中段の植物保持板35、植物2、水槽20、照射部60に対して、それぞれ「a」および「b」を付して説明する。
【0082】
1対の水槽20a,20bにおいて、少なくとも上段の水槽20aの底面は光透過性であり、好ましくは半透明または透明であり、より好ましくは透明である。この場合、培養される植物2aが保持された植物保持板35aおよび培養液3が上段の水槽20aに収容された場合に、上段の水槽20aの上側に設けられた照射部60aから照射された光は、主に最も近い植物2aに照射される(図12の破線P)。加えて、水槽20aと水槽20bとの間に設けられた照射部60bから照射された光が、植物2bだけではなく、光透過領域28bを透過して植物2aにも照射される(図1の破線Q)。下側からの光は、主に葉の裏側に照射される。加えて、下側からの光は、植物2の根にも照射される。さらに、下段の植物保持板35bに保持された植物2bに対して、上段に設けられた照射部60aから照射された光が、光透過領域28cを透過して照射される(図1の破線R)。なお、様々な位置に設けられた照射部60から光を照射可能とするために、水槽20は底面に加えて側面も光透過性であることが好ましく、より好ましくは半透明または透明であり、最も好ましくは透明である。特に好ましい実施形態では、すべての水槽20が透明である。水槽20を透明に形成する場合には、ガラスやポリカーボネートなどの材料を用いることが好ましい。また、カップ32も透明に形成することによって、植物2aの根に対する光の照射効率を高めることが好ましい。
【0083】
また、図13に示すように、照射部60bの水平方向の近傍には、反射板18が設けられている。反射板18は、破線S、Tで示すように、照射部16から放出された光の進行方向を植物2の方向に変える。これによって、上段の水槽20aに収容された植物保持板35aに保持された植物2a、または下段の水槽20bに収容された植物保持板35bに保持された植物2bの少なくとも一方に光を照射する。
【0084】
さらに、水槽20の両端近傍には、照射部17が設けられている。照射部17は、植物2に光を側面から照射する。照射部17には、断面を曲面とする反射板19が設けられている。反射板19は、水耕栽培システム1000の外に分散される光を反射させて植物2に照射する。
【0085】
以上、本実施の形態の植物保持板35を用いて多段式の培養を行うことにより、培養される植物2に対して複数の方向から効率的に光を照射することができる。その結果、植物2の生育性を高めて、生産性を向上させることができる。
【0086】
また、植物保持板35の表面積に占める光透過領域28の割合を所定値以上とすること
によって、光の照射効率をさらに高めることができる。また、植物保持板35を水に浮く
材料で形成することによって、植物保持板35の加工性および搬出入の効率を向上させることができる。
【0087】
また、本実施の形態の植物保持板35を用いて培養システム1000を構成することによっても、培養される植物2に対して複数の方向から効率的に光を照射することができる。特に、植物2の葉の表だけではなく、裏や根にも光を照射させることができる。その結果、植物2の生育性を高めて、生産性を向上させることができる。実際に本発明者は、培養システム1000を用いて植物2の葉の表だけではなく裏や根にも光を照射することによって、植物2の生育性が著しく高まることを確認した。加えて、反射板18を用いて照射部60から照射された光を反射させることによって、光の照射効率をさらに高めることができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、植物保持板35が水に浮く材料で形成されているものとしたが、植物保持板35は水に浮かない材料で形成されていてもよい。この場合には、たとえば透明なガラスや樹脂、メッシュなどを用いて、植物保持板35自体を光が透過できるようにすることによっても本発明の目的を達成することができる。これにより、植物2に対する光の照射効率を高めることができる。
【0089】
また、発泡スチロールなどの水に浮く材料を用いて水に浮かぶカップ32を形成するこ
とによって、植物2を水に浮かべてもよい。この場合にも、カップ32には光透過領域28を設けることが好ましい。この場合、たとえば開口部の外周に光透過領域28の設けられたフランジ部を設けることによって、カップ32を全体として帽子の形状に形成してもよい。
【0090】
また、本実施の形態では、植物保持板35が各段の水槽20に1つずつ収容されている場合を示したが、植物保持板35は複数ずつ収容されていてもよい。この場合には、光透過領域28や貫通孔31の配置が異なる複数の植物保持板35を準備すること、照射部16の配置を変えること、または反射板18の配置や形状を変えることの少なくともいずれかによって、植物2に効率的に光が照射されるようにしてもよい。さらに、上述の水耕栽培システム100〜300のように、所定の方向に延びる複数の水槽20の上に植物保持板35が配置されるようにしてもよい。この構成においては、隣り合う2つの水槽間を光が透過することができる上に、さらに上記のような植物保持板35、照射部60、61および反射板18の構成を組み合わせることができるので、植物2には極めて多数の方向から大量の光が照射されることになる。したがって、植物2の生育が特に促進される。
【0091】
以上のとおり、本発明の別の態様は、多段式培養システムである。この培養システムは、上述した植物保持板と、培養液を収容する凹部を有する複数の水槽が垂直方向に並べられた培養棚と、垂直方向に隣接する1対の水槽の間に設けられた照射部と、を備える。1対の水槽において、少なくとも上段の水槽の底面の少なくとも一部は透明であって、培養される植物を保持する植物保持板および培養液が上段の培養槽に収容された場合に、当該植物保持板に保持された植物に対して、上段の水槽および光透過領域を透過して照射部から光が照射されてもよい。本態様の植物保持板を用いて多段式の培養を行うことにより、培養される植物に対して複数の方向から効率的に光を照射することができる。その結果、植物の生育性を高めて、生産性を向上させることができる。
【0092】
また、培養システムにおいて、照射部の近傍には、当該照射部から放出された光の進行方向を植物の方向に変えるための反射板がさらに設けられていてもよい。この態様によると、散乱された光を、上段の培養槽に収容された植物保持板に保持された植物または下段の水槽に収容された植物保持板に保持された植物の少なくとも一方に照射することによって、光の照射効率をさらに高めることができる。
【0093】
(搬出入システム)
上記のような多段式の栽培棚では、段数が増えて棚が高くなるほど、搬出入に労力を要するという問題があった。たとえば特開2012−217392号公報の技術では、栽培棚への植物の搬出入を人力で行なっていた。また、栽培棚の接地面積と同等以上の作業用のスペースを、栽培棚の周囲に確保する必要があった。そのため、単位面積あたりの収穫量に改善の余地があった。
【0094】
したがって、本発明は、多段式の培養システムへの植物の搬出入を容易に行う技術を提供する。
【0095】
本発明のある態様の培養システムは、培養液を収容する複数の水槽が垂直方向に並設された栽培棚と、栽培棚に対して一方の端部近傍に配置され、収容溝に収容された場合に培養液に接し培養される植物が保持された植物保持板を、複数の水槽の少なくとも1つに搬入する搬入装置と、を備える。搬入装置は、各栽培棚において植物保持板が配置されるべき高さまで植物保持板を持ち上げる垂直移動機構と、収容されるべき水槽に収容された複数の植物保持板において、少なくとも1つの植物保持板を一方の端部側から略水平方向に押すことによって、複数の植物保持板を一方の端部とは反対側の他方の端部に向けて当接させてスライドさせる水平移動機構と、を備える。
【0096】
この態様によると、多段式の栽培棚への植物保持板の搬入を容易に行うことができる。
【0097】
また、培養システムは、他方の端部近傍に配置され、他方の端部近傍において水槽に設けられた位置決め部までスライドされた植物保持板を、水槽から搬出する搬出装置をさらに備えてもよい。この場合、搬入装置による搬入と、搬出装置による搬出とが交互に行われてもよい。この態様によると、植物保持板の搬出入を容易に行うことができる。また、この場合には、栽培棚の側面に確保する空間は少なくてよい。そのため、より多くの培養システムを並列して配置することが可能となり、単位面積あたりの植物の生産量を大幅に増大させることができる。
【0098】
また、搬入装置は、垂直方向に並べられた2つ以上の栽培棚のそれぞれに1つ以上の植物保持板を一度に搬入し、搬出装置は、垂直方向に並べられた2つ以上の栽培棚のそれぞれから1つ以上の植物保持板を一度に搬出してもよい。この態様によると、多段式の培養棚への植物保持板の搬出入をより効率化することができる。
【0099】
また、一度に搬出入される栽培棚の数は、垂直方向に並べられた複数の栽培棚の段数の約数であってもよい。この態様によると、無駄なく植物保持板の搬出入をすることができる。
【0100】
また、培養される植物が保持された植物保持板を搬入装置に供給するための搬入用ベルトコンベアをさらに備えてもよい。この態様によると、より効率的に植物保持板を搬入することができる。
【0101】
まず、本実施の形態の培養システム1000’を、図14図16を参照して説明する。なお、図14〜16では、植物保持板を培養液上にフロートさせる多段式水耕栽培システムを用いて本発明の搬出入機構を説明するが、本発明の搬出入機構は、植物保持板を支持機構により水槽の上方に支持する(すなわち、植物保持板と培養液との間に空間が存在する)上記実施形態1〜3の水耕栽培システムにおいても用いることができる。図14は、本発明の搬出入機構を備えた培養システム1000’の概略図であり、図14(A)は培養システム1000’の側面図であり、図14(B)は培養システム1000’の平面図である。図15は、培養システム1000’を図14の矢印X方向から見た正面図である。なお、図14では、図15に示す搬入用ベルトコンベア400の図示は省略している。また、図14(B)では、図14(A)に示した天板340および天板340の背面に設けられた照射部60の図示は省略している。また、図15では、搬入装置100’および搬入用ベルトコンベア400のみを示す。
【0102】
培養システム1000’は、搬入装置100’、搬出装置200’、培養棚300’、搬入用ベルトコンベア400を主に備える。
【0103】
培養棚300’は、溝状の凹部312’を有し互いに略同一形状である複数の培養槽310が、所定の間隔にて垂直方向に並設されて形成されている。凹部312’には、位置決め部314が形成されている。また、凹部312には、水耕栽培用の培養液3が収容される。培養液3は、植物が生育可能な養分が、水に溶解された水溶液である。固定部材320は、複数の培養槽310を垂直方向に並べて固定する。図14では、12個の培養槽310が固定部材320により固定されている場合を示す。固定部材320は、固定部322において、床に固定されている。最下段の培養槽310以外の背面には、照射部60が取り付けられている。照射部60は、培養槽310が垂直方向に並べられた状態にて、1つ下の培養槽310に収容された植物に光を照射する。最上段の培養槽310に対しては、天板340の背面に設けられた照射部60によって、光が照射される。
【0104】
植物保持板30は、上記のとおり、培養される植物2が保持され、凹部312に収容された場合に培養液3に接する。植物保持板30には、培養される植物2を固定するための貫通孔31(図示せず)が開けられている。培養される植物2がこの貫通穴を貫通するように配置されることによって、培養される植物2の根が植物保持板30の下側から培養液3に接触する。これにより、培養される植物2に培養液3を供給することができる。植物保持板30は、凹部312に収容され、内部に植物2を保持する貫通孔31を備えることができる任意の材料から構成され得る。植物保持板30は、金属、木材、発泡樹脂などを含む任意の材料から形成され得る。培養液上に植物保持板30をフロートさせる実施形態においては、植物保持板30は、培養された植物2が保持された状態でも培養液3上で浮かぶようにするために、比重が1未満の材料で形成されていることが好ましい。このような材料として、発泡スチロールを好適に使用することができる。培養される植物2の重さを考慮して、植物保持板30の材料や体積を決定すればよい。
【0105】
また、この植物保持板30は、貫通孔31だけでなく光透過領域28を有する植物保持板35であってもよい。
【0106】
搬入装置100’は、培養棚300’に対して一方の端部近傍に配置され、凹部312に収容された場合に培養液3に接し培養される植物2が保持された植物保持板30を、複数の培養槽310の少なくとも1つに搬入する。搬入装置100は、多段式水耕栽培システムにおいて植物保持板を目的の培養槽まで垂直方向に移動させ、かつ目的の培養槽に達したときに植物保持板を水平に移動させ、培養槽の凹部に植物保持板を投入することができる任意の機構に作られている。図14および15に示す具体的な実施形態においては、搬入装置100’は、移動部110と、垂直用モータ122と、垂直用ローラチェーン130と、水平用モータ140と、水平用ローラチェーン150と、制御部160とを備える。
【0107】
移動部110は、固定部112に取り付けられた複数の保持部114を有する。保持部114は、図15に示すように、2本のアームから形成されている。保持部114は、搬出入時に植物保持板30を保持する。また、保持部114には、図16で説明するように、押部116が設けられている。押部116は、植物保持板30を水平方向に押してスライドさせる。
【0108】
垂直用モータ122は、回転して垂直用ローラチェーン130を動かす。これにより、垂直用モータ122の回転運動が移動部110の垂直方向の移動(昇降)に変換される。水平用モータ140は、回転して水平用ローラチェーン150を動かす。これにより、水平用モータ140の回転運動が移動部110の水平方向(左右方向)の移動に変換される。
【0109】
制御部160は、垂直用モータ122と水平用モータ140の回転を制御することにより、移動部110の垂直方向および水平方向の移動を制御する。また、制御部160は、後述する搬出装置200’に設けられた制御部260と無線または有線で通信することによって、搬入装置100’による植物保持板30の搬入と搬出装置200’による植物保持板30の搬出とを連携させる。また、制御部160は、後述する搬入用ベルトコンベア400から搬入装置100’に植物保持板30を搬入するタイミングを制御する。
【0110】
搬出装置200’は、多段式水耕栽培システムにおいて目的の培養槽に収容された植物保持板を培養槽から取り出し、収穫のために移動させることができる任意の機構であってよい。図14および15に示す具体的な実施形態においては、搬出装置200’は、他方の端部近傍に配置され、他方の端部近傍において培養槽310に設けられた位置決め部314までスライドされた植物保持板30を、培養槽310から搬出する。搬出装置200’は、移動部210と、垂直用モータ220と、垂直用ローラチェーン230と、水平用モータ240と、水平用ローラチェーン250と、制御部260とを備える。
【0111】
移動部210は、固定部212に取り付けられた複数の保持部214を有する。搬出時には、培養後の植物2が裁置された植物保持板30が保持部214によって保持される。
【0112】
垂直用モータ220は、回転して垂直用ローラチェーン230を動かす。これにより、垂直用モータ220の回転運動が移動部210の垂直方向の移動(昇降)に変換される。水平用モータ240は、回転して水平用ローラチェーン250を動かす。これにより、水平用モータ240の回転運動が移動部210の水平方向(左右方向)の移動に変換される。
【0113】
制御部260は、垂直用モータ220と水平用モータ240の回転を制御することにより、移動部210の垂直方向および水平方向の移動を制御する。また、制御部260は、上述した搬入装置100’に設けられた制御部160と無線または有線で通信することによって、搬出装置200’による植物保持板30の搬出を搬入装置100’による植物保持板30の搬入と連携させる。
【0114】
なお、ここでは搬入装置100’と搬出装置200’とを別々の装置として説明したが、同一の装置を用いて両者を構成してもよい。
【0115】
図15に示すように、搬入用ベルトコンベア400は、培養される植物2が保持された植物保持板30を搬入装置100’に供給する。搬入用ベルトコンベア400は、筺体410と、複数の回転床420とを有する。複数の回転床420の高さは、移動部110が下まで降りた状態において、複数の保持部114のいずれかの高さとそれぞれ略同等となるように形成されている。この状態において、回転床420が制御部160によって回転させられることによって、新たな培養器20が保持部114に供給される。
【0116】
次に、本実施の形態の培養システム1000’を用いて、植物保持板30を培養槽310に搬出入する方法を説明する。図16は、実施の形態に係る培養システム1000’に植物保持板30を交互に搬入および搬出する手順を示す側面方向の概略図である。ここでは、垂直移動機構は主に移動部210、垂直用モータ220、垂直用ローラチェーン230によって、水平移動機構は主に保持部214、水平用モータ240、水平用ローラチェーン250によって、それぞれ構成されているものとする。ただし、簡略化するために、垂直移動機構を移動部210、水平移動機構を保持部214とする場合もある。また、搬出装置200’が搬出する植物保持板を植物保持板30a、搬出装置200’が搬出する植物保持板30aに隣接する植物保持板を植物保持板30b、搬入装置100’が搬入する植物保持板を植物保持板30c、搬入装置100’が植物保持板30cの次に搬入する植物保持板を植物保持板30dとして説明する。
【0117】
まず、制御部260は、搬出装置200’の水平移動機構である保持部214を、培養液3中に移動させる(図16(A))。位置決め部314よりも搬出装置200’寄りの位置にて、保持部214が培養液3の中に降ろされる。図16(B)は、保持部214が培養液中に移動した後の状態を示す図である。次に、保持部214が植物保持板30aに向けて水平移動する(図16(C))。保持部214が植物保持板30aを持ち上げ可能な位置まで移動した後、保持部214は植物保持板30aを垂直方向に持ち上げることによって、植物保持板30aを培養液3から取り出す(図16(D))。また、これに連動して、搬入装置100’の水平移動機構である保持部214が植物保持板30cを搬入する。次に、搬出装置200’は取り出した植物保持板30aを搬出する(図16(E))。培養槽310から搬出された植物保持板30aは、移動部210が最も下まで降下した場合に、培養システム1000’から搬出される。また、搬入装置100’の保持部214が植物保持板30cを培養液3中に移動させる。
【0118】
次に、押部116が植物保持板30cを水平方向に押してスライドさせる(図16(F)の矢印)。押部116は、最も搬入装置100’寄りの植物保持板30cを押すことによって、ある凹部312に収容された複数の植物保持板30全体を略水平方向に押す。これによって、1つの培養槽310に収容された植物保持板30が、まとめて反対側の端部に向けて当接させてスライドさせられる。その結果、最も搬出装置200’寄りの植物保持板30bが、位置決め部314に到達するまで、植物保持板30がまとめて移動される(図16(G))。植物保持板30を発泡スチロールなどの比重の軽い材料で形成することによって、複数の植物保持板30を互いに当接させてまとめて容易に移動させることができる。植物保持板30bが搬入装置100’の保持部114により位置決め部314まで移動させられた後、保持部114が水面下に下ろされることによって、植物保持板30cが培養液3上に浮かんだ状態となる(図16(H))。次に、搬入装置100’の保持部114を搬入装置100’に向けて水平に移動させて、植物保持板30cから離す(図16(I))。その後、制御部160は、移動部110を最も下まで下降させた上で、搬入用ベルトコンベア400を動かして保持部114に培養前の植物2が保持された植物保持板30dを載せる。植物保持板30dは、次に培養槽310に供給される。
【0119】
以上の図16(A)〜(I)を繰り返すことによって、培養槽310の植物保持板30を入れ替えることができる。所定の培養期間が経過した後、培養前の植物2が保持された植物保持板30と培養後の植物2が保持された植物保持板30とを入れ替える場合には、培養槽310に収容された植物保持板30の数だけ図16(A)〜(I)の操作を繰り返すことによって、植物保持板30を入れ替えればよい。
【0120】
ここでは、植物保持板30を1つの培養槽310に搬出入する例を示したが、搬入装置100’および搬出装置200’にそれぞれ取り付けられた複数の保持部114および保持部214を用いて、一度に複数の培養槽310に植物保持板30を搬出入することが好ましい。この場合、図14,15に示す培養システム1000’では、まず隣接する3段の培養槽310の入れ替えがすべて終わった後で、次の3段の入れ替えを行う。これにより、搬出入に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0121】
また、この場合には、一度に搬出入される植物保持板30の数、一度に使用される保持部114の数および保持部214の数は、いずれも培養棚300において垂直方向に並べられた複数の培養槽310の数の約数であることが好ましい。たとえば図14では、培養棚300は12段の培養槽310を有する。そのため、一度に2,3,4,6,12段の培養槽310に対して、植物保持板30を搬出入することが好ましい。これにより、無駄なく搬出入を行うことができる。また、保持部114および保持部214の長さをより長くすることによって、1つの培養槽310に対して一度に複数の植物保持板30を搬出入してもよい。
【0122】
また、培養槽310に植物保持板30が満杯でない場合には、搬出装置200’を用いずに搬入装置100’のみを用いて培養槽310に植物保持板30を搬入すればよい。また、図16では植物保持板30の搬出が先に、搬入が後に行われる行われる場合を示した。しかし、植物保持板30の搬入が先に、搬出が後に行われるように培養システム1000’が構成されてもよい。
【0123】
以上、本実施の形態の培養システム1000’によれば、多段式の培養棚300’への植物保持板30の搬出入を容易に行うことができる。また、この場合には、培養棚300’の側面に確保する空間は少なくてよい。そのため、単位面積あたりより多くの培養システム1000’を並列して配置することが可能となるため、単位面積あたりの生物の生産量を大幅に増大させることができる。
【0124】
なお、培養システム1000’において、搬入装置100’と搬出装置200’は両方設けられていることが好ましいが、いずれか一方のみが設けられていてもよい。この場合には、設けられていない装置の役割を人が担ってもよい。これにより、多段式の培養棚300’への植物保持板30の搬入または搬出を容易に行うことができる。
【0125】
また、本実施の形態では、位置決め部314は培養槽310の搬出装置200’側に形成されているが、搬入装置100’側にも形成されていてもよい。これにより、植物保持板30の搬入装置100’側への移動を防止することができる。また、この場合には、培養槽310の搬入装置100’側の端部から搬入装置100’側の位置決め部までの距離が、培養槽310の搬出装置200’側の端部から位置決め部314までの距離と等しくなるように、搬入装置100’側の位置決め部を形成することが好ましい。これにより、培養槽310を向きによらず使用することができる。
【0126】
また、搬入用ベルトコンベア400と同様の構造を有する搬出用ベルトコンベアが、搬出装置200’に対して備え付けられてもよい。この搬出用ベルトコンベアでは、搬出装置200’に隣接して設置された場合に、植物保持板30を搬出する方向に回転床が回転する。これにより、搬出用ベルトコンベアは、培養後の植物2が保持された植物保持板30を、搬出装置200’から搬出することができる。また、搬入装置100’および搬出装置200’の昇降時間を短縮するために、搬入用ベルトコンベア400と搬出用ベルトコンベアをより上段の培養槽310にも設けたり、これらの回転床の数を増やしたりしてもよい。
【0127】
たとえば、本発明の水耕栽培システムを用いて、1ヶ月で生育する植物を栽培した場合には、1ヶ月で単位面積あたり12倍の植物を栽培することができる。本実施の形態の培養システム10では、上述のように培養器20の搬出入が容易である。そのため、1年では単位面積あたりおよそ12×12=144倍の植物を栽培することができる。
【0128】
(水耕栽培システム収容ハウス)
本発明は、新規な水耕栽培システムだけでなく、そのような水耕培養システムとそれを収容するハウスとの組み合わせも提供する。本発明において、水耕栽培システムと、当該システムを収容するハウスとの組み合わせを「植物工場」という。本発明の水耕栽培システムを収容するハウスは、特に限定されないが、好ましくは断熱効果の高いハウスである。断熱効果が高く、かつ外部環境からの一切の影響がないため、室内で温度の季節変動がなく、目的とする植物を一年を通じて安定的に栽培し、収穫することができるからである。
【0129】
1つの実施形態において、本発明の水耕栽培システムを収容するハウスは、断熱性を有する発泡樹脂から製造されたハウスである。本明細書において「発泡樹脂」とは、合成樹脂中に気体を分散させ、発泡状に成形されたものをいう。本発明における合成樹脂は、発泡成形でき、かつ発泡成形品が水耕栽培システムを収容することができるものであればどのような合成樹脂であってもよいが、好ましくは発泡スチロールである。発泡スチロールを構成材とした水耕栽培システム収容ハウスは、従来のビニールハウスとは異なり破損に強く、地震や台風などの災害にも十分に耐え得る。しかも、仮に、地震によってハウス表面にひび割れが生じたり、台風の際に飛散物の衝突によりハウス表面に部分的な変形が生じたとしても、その修復を容易に行うことができる。通常の建築物やガラス温室と比べて、発泡スチロール製ハウスは災害時の倒壊可能性が低く、またハウス表面にガラスを用いていないため、ハウス内に割れたガラスが飛散するといった心配がない。さらに、壁面は十分な厚さがあるため、外側から何らかの衝撃が作用したとしても、その衝撃がハウス内に達することを防ぐことができる。そのため、発泡スチロールハウスは、ビニールハウスのように風で変形したり、ビニールが破れて作物に被害を与えることもない。
【0130】
発泡スチロールは断熱性に優れ、かつ遮光性があるるため、ハウス内で栽培する植物(野菜や果物など)の生育環境、すなわち温度、湿度、光の照射時間等を容易に管理することができる。したがって、水耕栽培において、外部の気候条件に左右されずに一年を通して安定的な植物の栽培および収穫が可能である。また、発泡スチロールはリサイクルも容易である。
【0131】
本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、必要に応じて、ハウス内の温度を調節するための室温調節手段を備える。本発明の好ましい実施形態である発泡スチロール製のハウスでは、発泡スチロールの優れた断熱性および気密性により、他の水耕栽培システム収容ハウス(例えば、従来のビニールハウス等)と比較してハウス内の室温の変動が小さい。そのため、ハウス内の大規模な室温調節が不要となり、室温調節手段に係るコストを削減することができる。
【0132】
さらに、水耕栽培システム収容ハウスを、複数の分割片を組み立てることによって構築される組立式の発泡スチロールハウスとすることにより、植物工場を建築する場合に比べ、短い工期でかつ安価にハウスを完成することができる。本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、照明装置からの照明光を反射する反射材などの設備を備えてもよい。
【0133】
発泡スチロールハウスを構成する分割片は、例えば発泡倍率が約10〜約50倍で厚さ約10〜約50cmの発泡スチロールの成形品である。例えば、積雪が最大で80cm程度になるような高い強度が必要とされる地域にハウスを設置する場合には、強度を確保するためにも、発泡倍率を最大で約20倍、厚さ約20cmの発泡スチロールからなる分割片とすることができる。なお、発泡倍率を大きくすれば厚みが厚くなる。また、積雪を考慮する必要がない地域では、発泡倍率を約20倍より大きくしたり、厚みを約20cm以下に薄くすることもできる。反対に、積雪量が1m以上の地域では、発泡倍率を約20倍以下に小さくして強度を担保するか、厚みを厚くする。この種の発泡スチロールは遮光性に優れ、外部からの光の入射をカットできる。組立式の発泡スチロールハウスの分割片の具体的な形状や、その具体的な組み立て方は、当該分野で公知であり、当業者は適切に選択することができる。
【0134】
分割片を組み立ててハウスを構築する実施形態では、束縛手段により組み立てられた分割片を固定することが好ましい。この束縛手段としては、例えば、タイバンド、ワイヤロープ、ピアノ線、ゴム、ネット、モルタルのような構造物などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、タイバンドを組立式のハウスの周方向に巻き付け、締結して接着した分割片がばらけないようにするのが好ましい。あるいは、タイバンドの代わりに、可撓性のワイヤロープやピアノ線を使用できる。さらには、ハウスにネットを被せてばらけないようにすることもできる。したがって、これらはいずれも分割片の束縛手段として機能する。
【0135】
図17および図18に、本発明の水耕栽培システムを収容する組立式発泡スチロールハウスの一例を示す。図17は水耕栽培システム収容ハウス1の外観を示す斜視図であり、図18はその分解斜視図である。なお、以下では便宜上図示のように前後左右を定義する。
【0136】
図17に示すように水耕栽培システム収容ハウス1は、前後方向に細長い半円筒状の周壁Wと、周壁Wの前後面を塞ぐ略半円板状の前後壁2000とを有し、内部に水耕栽培システムを収容する空間を有する。図17から明らかなように、水耕栽培システム収容ハウス1はアーチ形の屋根を有し、全体はトンネル形状を有する。
【0137】
(分割片)
図18に示すように半円筒状の周壁Wは、複数のアーチ状分割周壁1100を集合して組み立てられる。各分割周壁1100は、それぞれ3つの分割片1100a〜1100cで構成され、分割片1100a〜1100c同士は軸長手方向に接して接合されている。各分割周壁同士は各軸長手方向端面で接して接合されている。
【0138】
本発明において、「接合」とはある部材と他の部材とが接触して固定されていることをいう。本発明においては、接着剤による接着も接合であるし、係合部分同士の係合または嵌合による固定も接合である。
【0139】
前後壁2000は、単一の分割片から構成されていてもよいし、複数の分割片から形成されていてもよい。図18においては、前後壁が単一の分割片から構成される実施形態を示した。複数の分割片を集合して前後壁2000を組み立てることももちろん可能である。周壁および前後壁は基礎3000に収容され、固定される。図18の実施形態においては、基礎3000は、水耕栽培システム収容ハウス1の幅方向に2列づつ配列され、周壁Wの下端を支持する。しかしながら、本発明の水耕栽培システム収容ハウスの基礎はこのような具体的な形状および構成に限定されるものではなく、当業者は適切な基礎を構築することができる。
【0140】
一棟の水耕栽培収容ハウス1の大きさは、収容すべき水耕栽培システムのサイズや、栽培される植物に依存して当業者が適宜決定すればよいが、例えば幅(左右方向長さ)が5〜10m、奥行き(前後方向長さ)が20〜50m、高さが3〜5m程度である。
【0141】
分割片1100a〜1100c,2100は予め工場にて製造され、現場で組み立てられる。分割片1100a〜1100c、2100の大きさは運搬性、組立性を考慮して当業者が適切に決定することができる。分割片1100a〜1100c,2100が発泡スチロール製である好ましい実施形態においては、各分割片の重量が軽いため、運搬作業、組立作業が容易である。分割片2100には予めハウス1への出入口である開口部2200が形成され、開口部2200に開閉可能なドア2300が取り付けられてもよい。
【0142】
図19は周方向に3分割された分割周壁1100の組立状態を示す立面図であり、図20図19のIV部拡大図である。1つの実施形態においては、図20に示すように分割片1100aの上端面に凸部111が形成され、これに対向する分割片1100bの下端面に凹部1120が形成されている。凹部1120には凸部1110が嵌合することによって、分割片1100aと分割片1100bとが接合される。さらに、その状態で分割片1100aと1100bとが接着されて固定されてもよい。分割片1100bと分割片1100cも同様にして接合されている。
【0143】
図21(a)は分割周壁1100の前後方向の連結状態の1つの実施形態を示す斜視図であり、図21(b)はその連結部の断面図(図20のVI−VI線断面図)である。図21に示されるように、本発明においては、互いに隣り合う2つの分割片1100aの間に補強部材が介装されて、ハウス全体の補強をしてもよい。この補強部材としては、ハウスに介装されてハウスを補強することができる当該分野で公知の任意の部材であり、その具体的形状は当業者が組み立てのために適宜決定すればよい。図21に示す実施形態においては、ハウス形状に沿って略半円環状のH鋼5000が介装される。H鋼5000の下端部は、例えば貫通ボルトにより分割片1100aと一体に基礎3000に締結されていてもよい。
【0144】
各分割片1100aの前後方向端面にはそれぞれH鋼5000が嵌合するための凹部1130、1140が形成され、分割片1100a同士がH鋼5000を介して接合されている。分割片1100b同士、および分割片1100c同士もH鋼5000を介して同様に連結されてもよい。これによりH鋼5000がハウス1の補強部材として機能し、水耕栽培システム収容ハウス全体の強度を高めることができる。その結果、分割周壁1100を数十mの長さまで連結してハウス1を組み立てることや、積雪の多い地域にハウス1を組み立てることが強度上可能となる。また、このようにH鋼5000を介装する場合には、H鋼5000が表面に露出することがないため、H鋼5000の錆を予防することができる。
【0145】
ハウス1の強度がそれほど必要ない場合(例えば積雪の心配がない場合)には、図21(c)に示すようにH鋼5000の代わりにプレート5100を介装し、プレート5100を介して分割片1100同士を連結してもよい。
【0146】
本発明の水耕栽培システム収容ハウス1の組立手順の一例を説明する。まず、図18に示すようにハウス1を組み立てる場所に基礎3000を敷設する。次いで、ハウス1の最前部に相当する位置に補強部材(例えばH鋼5000)を立設し、このH鋼5000に各分割片1100a〜1100cの前端の凹部1140をそれぞれ嵌合する。その状態で、H鋼5000の下端部および分割片1100a、1100cの下端部を貫通ボルトを介して基礎30に締結する。この際、分割片1100a〜1100c同士を凹部1120および凸部1110を介して周方向に連結して分割周壁1100を形成する。次いで、この分割周壁1100の後端の凹部1130にH鋼5000を嵌合し、さらにハウス全体が所定の長さになるまで、H鋼5000を介して分割周壁1100の連結作業を繰り返す。
【0147】
ハウス全体が所定の長さになると、左右の基礎3000の間に、必要に応じて発泡マットの敷設、床コンクリートを打設し、コーティング等を施す。さらにハウス1の内表面に反射材を貼付したり、外表面に塗布材を塗布してもよい。次いで、ハウス1内に水耕栽培システム、および必要な部品や製品を搬入した後、ハウス1の前後端部の分割周壁1100にH鋼5000を介して分割片2100を連結する。これによりハウス1の前後面を閉じ、水耕栽培に適した外部から遮蔽された密閉空間を形成する。なお、予め工場で分割片1100a〜1100cの表面に反射材の貼付や、塗布材の塗布を行ってもよい。
【0148】
本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、必要に応じて、風除室、エアシャワー室、着替・準備室、殺菌室、倉庫、および栽培室等を備えてもよい。
【0149】
好ましい実施形態においては、水耕栽培システム収容ハウス1の内表面は底部から頂部にかけて全体が曲面形状をなし、内表面の凹凸箇所が少ないため、ハウス内に埃や雑菌が溜まりにくく、極めて衛生的な室内空間を生み出すことができる。
【0150】
(分割周壁および分割屋根)
別の実施形態において、本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、発泡スチロールを構成材とする分割周壁1100と分割屋根1200とを備える構成であってもよい。図22にハウス1が分割周壁1100と分割屋根1200とから構成される具体的実施形態を示す。図22においては、分割周壁1100は、対向する平板状の分割周壁1100a、1100bおよび1100cを有する。分割屋根1200は、対向する分割周壁の間にそれぞれ略円弧状に架け渡された分割屋根1200a〜1200cを有する。すなわち複数の分割周壁と分割屋根とを集合して水耕栽培システム収容ハウス1が形成される。なお、より多くの分割周壁と分割屋根を集合すれば、個々の発泡スチロール片を大型化することなく、大型のハウス1を形成することができる。
【0151】
図22に示すように、分割周壁1100の係合部および分割屋根1200の係合部はそれぞれ、係合部の肉厚が他の部分よりも厚くなるように突出する。これにより分割周壁同士および分割屋根同士の接着面積が増加し、係合部の強度が増加する。また、この構成によって、係合部がリブ構造となり、係合部だけでなくハウス1全体の強度上昇が達成できる。図22においては、リブRBは分割周壁および分割屋根の係合部において内部空間に向けて突出したリブを有する構成となっているが、係合部の強度増加およびハウス全体の強度増加が達成できればリブは外向きに設けられてもよいし、リブの具体的形状はどのようなものであってもよい。さらに、分割周壁および分割屋根の係合部以外にもリブが設けられてもよい。
【0152】
1つの実施形態において、本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、図23に示すように、分割屋根1200に庇HSを有する。図23(b)には、そのような庇HSを有する分割屋根1200と分割周壁1100との接合面の様子を示す。なお、図23(a)および(b)には天窓TMが設けられているが、このような天窓はあってもなくてもよい。好ましい実施形態においては、図23(a)および(b)に示すように、分割屋根はその厚さが変動しており、庇HS部分において最大厚さとなる。これは庇HS部分における強度を増強するためである。ただし、必ずしも分割屋根1200の形状がそのように限定されるわけではなく、庇HS部分が設けられる端部が最大厚さとならなくてもよい。
【0153】
(別の構築物との連結)
本発明の水耕栽培システム収容ハウス1は、単体でも使用可能であるが、別の構築物と連結して用いることもできる。例えば、アーチ形屋根を有するハウス1を、円筒形状および半球状の別の構築物と連結して用いることもできる。図24は、水耕栽培システム収容ハウス1を、連結部CNを介して別の構造物1’と連結した実施形態を示す。ハウス1と構造物1’とを連結し、内部通路を介して室内空間を連通させれば、種々の形状のスペースを容易に形成することができる。連結部CNには例えばドアを設けてもよい。別の構造物1’は、エアシャワー室、着替・準備室、殺菌室、倉庫などにしてもよい。
【0154】
図25は、水耕栽培システム収容ハウス1とドーム状構築物1’との連結の1つの実施形態における連結部CNの拡大図を示す。この具体的実施例では、ハウス1の分割片1100aに開口部OPとそれを囲んで外側に突出する凸部が設けられ、構築物1’においても同様に分割片1100’aに開口部OPとそれを囲んで外側に突出する凸部が設けられ、その凸部同士の端面が接合されることによって、ハウス1の内部空間と構築物1’の内部空間とが連通される。具体的には、以下のとおりである。
【0155】
連結部CNには上記ドア部PTが設けられ、ドア部PTに面するハウス1の分割周壁1100aは、ドア部PTに向けて先細状に湾曲して成形され、ドア部PTとほぼ同一開口面積の開口部OPが設けられている。分割周壁1100aの端面は、構築物1’のドア部PTを形成する分割周壁1100’aの端面に当接し、両者は隙間なく接合されている。また、ドア部PTの上方および下方においてもハウス1と構築物1’とは隙間なく接合されている。これによりハウス1と構築物1’とが連結部CNを介して連結され、連結部CN内のドア部PTと開口部OPにより通路PAが形成される。その結果、ハウス1と構築物1’とが通路PAを介して互いに連通する。このようにハウス1と構築物1’とを連結することによって、様々なタイプの構築物を有する拡張性の高いハウスを容易に形成することができる。そして、連結部CNがハウス自体の強度を高めることができる。さらに、ハウス1と構築物1’との連結において連結部材が不要となり、部品の点数を削減できるとともに、互いに対向するように設けられた、開口部を囲む凸部の端面同士を接合するだけで構築物同士の連結が可能であるため、施工も容易になる。
【0156】
(連結部を用いない構造体の連結)
上記のように連結部CNを用いることによってアーチ形ハウスを左右方向に多数併設すると、左右方向を結ぶ連結部CNが多数存在することによってスペースに無駄が生じたり組立が複雑になることがある。したがって、本実施形態では、上記のような連結部CNを用いずに、アーチ形屋根を有するアーチ形ハウスを複数連結するための構成を示す。
【0157】
そこで、本発明の1つの実施形態においては、水耕栽培システム収容ハウスは、第1のアーチ形屋根を有する第1の構造体と、第2のアーチ形屋根を有する第2の構造体とを備えたアーチ形建造物であり、この第1の構造体および第2の構造体は、第1の構造体と第2の構造体とを隔てる隔壁の少なくとも一部を共有する構成としてもよい。すなわち、連結部CNを用いずにアーチ形屋根を有する構造体を連結する。
【0158】
具体的には、第1のアーチ形屋根は第1のアーチ形屋根分割片を含み、第2のアーチ形屋根は第2のアーチ形屋根分割片を含み、隔壁は隔壁脚部分割片を含み、第1のアーチ形屋根分割片と第2のアーチ形屋根分割片と隔壁脚部分割片とを隔壁上部分割片を介して接合することによって、第1の構造体および第2の構造体は隔壁の少なくとも一部を共有することになる。
【0159】
そのようなハウスが、第3のアーチ形屋根を有する第3の構造体をさらに備え、第2の構造体および第3の構造体は、第2の構造体と第3の構造体とを隔てる隔壁の少なくとも一部を共有することによって、連結部CNを用いずに次々と構造体を連結することができる。
【0160】
以下に具体的に説明する。図26(a)は、3つのアーチ形構造体1α、1β、1γを組み合わせた水耕栽培システム収容ハウス1の外観図である。アーチ形構造体1αと1βとは隔壁8を共有し、アーチ形構造体1βと1γとが別の隔壁8’を共有する。ハウス1のサイズは、その用途に応じて当業者が適切に決定することができるが、一例として図26(a)においては、外殻半径Rが3850mmとなる分割片を使用し、前後方向に10個の分割片を接合している。この場合、左右方向の幅が約19m、前後方向の幅が約20mとなる。地表面から内側天井までの高さは3650mmである。外殻半径Rが4850mmとなる分割片を使用し、前後方向に13個の分割片を接合した場合、左右方向の幅が約26m、前後方向の幅も約26mとなる。地表面から内側天井までの高さは4650mmである。このようにハウス1の内部には、左右方向と前後方向に長さのある広い空間が形成できる。図26には示していないが、前後方向の前端と後端に壁やドアが設けられてもよい。
【0161】
図26(b)は、図26(a)のハウス1の断面図である。図26(b)に示すように、ハウス1は、最左端と最右端に設けられる側壁分割片5、アーチ形屋根分割片6、隔壁上部分割片7、隔壁上部分割片7の下部に取り付けられる隔壁脚部分割片8から組みたて得る。例えばこのような構成によってアーチ形の屋根を左右方向に延長できるが、例えば側壁分割片とアーチ形屋根分割片は1つの分割片としてもよいし2つ以上の分割片としてもよい。また、隔壁上部分割片を設けてもよいし設けなくてもよい。アーチ形屋根を有する構造体が連なり、かつ隣接する構造体同士が隔壁を共有する構成であれば、どのような分割片から組み立てたものでもよい。
【0162】
例えば3850mmの場合と4850mmの外殻半径Rが存在する場合には、これに対応して2種類の寸法の側壁分割片5、アーチ形屋根分割片6、隔壁上部分割片7、隔壁脚部分割片8を用意すればよい。外殻半径Rは3.5〜5.0mが望ましい。
【0163】
図27は、図26の水耕栽培システム収容ハウス1を構成する各分割片の斜視図であり、(A)は側壁分割片5の斜視図、(B)はアーチ形屋根分割片6の斜視図、(C)は、隔壁上部分割片7の斜視図、(D)は、隔壁脚部分割片8の斜視図である。側壁分割片5は、前接合部5a、上接合部5b、後接合部5cが、他の分割片と接合される。足5dが、地表面もしくは基礎に接する。アーチ形屋根分割片6は、左右方向にアーチ形の屋根であり、前接合部6a、左接合部6b、後接合部6c、右接合部6dが、他の分割片と接合される。隔壁上部分割片7は、前接合部7a、左接合部7b、後接合部7c、右接合部7d、下接合部7eが、他の分割片と接合される。隔壁脚部分割片8は、隔壁上部分割片6の下部を支える脚を有する。この脚に通り抜け孔9を設けてもよい。足8dが、地表面もしくは基礎に接する。隔壁脚部分割片8は、前接合部8a、上接合部8b、後接合部8cが、他の分割片と接合される。なお、側壁分割片5は、ハウス1の左右方向の一端と他端で同じものが使用できる。図27では、一端の側壁分割片5しか示していないが、他端の側壁分割片は、図27(A)に示す側壁分割片5の前接合部5aと後接合部5cを入れ替えた形になる。
【0164】
隔壁上部分割片7は隔壁脚部分割片8と一体となるように形成してもよい。その場合、隔壁上部分割片7の下接合部7eと隔壁脚部分割片8の上接合部8bとの接合工事が省略できる。また、隔壁上部分割片7は、寸法が左右方向に大きくなる場合には、例えば左ウィングまたは右ウィングを切り離し、2つの分割片から構成するようにしてもよい。
【0165】
図28は、本発明による水耕栽培システム収容ハウス1を登り斜面に設置した時の断面図である。この実施形態では、隔壁脚部分割片8は、斜面に対して垂直ではなく、水平方向に対して垂直としている。そのため、引出し円C1に示すように、斜面用の隔壁上部分割片7は、標準の水平な地表面用の隔壁上部分割片7と比較して、左ウィング7lwをより下向きに曲げ、右ウィング7rwをより上向きに曲げている。曲げる角度は、地表面の傾斜角度に基づいて決められる。また、左ウィング7lwの高さh1は、右ウィング7rwの高さh2より低い。このような隔壁上部分割片7を使用することにより、水耕栽培システム収容ハウス1を傾斜面にも設置できる。下り斜面用の隔壁上部分割片7は、登り斜面用の隔壁上部分割片7とは逆になる。傾斜角度が同じであれば、同じ隔壁上部分割片7が使用できる。
【0166】
図29は、隔壁上部分割片7が隔壁脚部分割片8に対して回動可能とした構成図である。隔壁上部分割片7の下接合部7eにはロール7fが設けられ、隔壁脚部分割片8の上接合部8bには半円筒状凹部8eが設けられる。引出し円C1に示すように、隔壁上部分割片7を脚部分割片8に対して水平にして接合することにより、水平な地表面でのハウス1の設置ができる。引出し円C2に示すように、隔壁上部分割片7を隔壁脚部分割片8に対して右上がり状態にして接合することにより、上り斜面でのハウス1の設置ができる。引出し円C3に示すように、隔壁上部分割片7を隔壁脚部分割片8に対して右下がり状態にして接合することにより、下り斜面での組立式建造物の設置ができる。
【0167】
図30は、隔壁上部分割片7の左ウィングと右ウィングが隔壁脚部分割片8に対して個別に回動可能とした構成図である。図29の隔壁上部分割片では左ウィングと右ウィングとが一体で形成されて別個に動くことはできないが、図30に示す構成の隔壁上部分割片では左ウィングと右ウィングとが別個に形成されているので独立して動くことができる。左ウィング7lwと右ウィング7rwの下接合部に、ロール7fおよび7f’が軸方向に互い違いとなるように設けられ、脚部分割片8の上接合部にはロール7fおよび7f’を受ける半円筒状凹部8eが設けられる。この実施形態によれば、左ウィング7lwと右ウィング7rwを個別に回動可能に接合できる。引出し円C1に示すように、左ウィング7lwと右ウィング7rwを隔壁脚部分割片8に対して水平にして接合することにより、水平な地表面での組立式建造物の設置ができる。引出し円C2に示すように、左ウィング7lwを隔壁脚部分割片8に対して水平にして接合し、右ウィング7rwを脚部分割片8に対して右下がり状態にして接合することにより、水平から右方向に下る斜面にも組立式建造物を設置できる。引出し円C3に示すように、左ウィング7lwを脚部分割片8に対して水平にして接合し、右ウィング7rwを脚部分割片8に対して右上がり状態にして接合することにより、水平から右方向に上がる斜面にも水耕栽培システム収容ハウスを設置できる。このように地表面が谷から山に、山から谷に変化するような地表面であっても、これに合わせて水耕栽培システム収容ハウスを設置できる。
【0168】
(水耕栽培システム収容ハウスと基礎)
代表的な実施形態において、本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、基礎(例えば、図18の基礎3000を参照のこと)に固定される。
【0169】
図31は、分割片1100の据え付け構造の詳細を示す図である。ハウスが設置される場所に基礎PDが打設されている。基礎PDは、図示するように、グランド面GLと同じ高さ位置で分割片を支持するハウス支持部OMと、分割片押さえ部DSとを有する。基礎PDはまた、グランド面GLから所定高さ(たとえば360mm)の位置に床面FLを形成する。ハウスの分割片は、基端部に突出部DBを有し、それがこの押さえ部DSと嵌合して、ハウスの位置固定を確実にするとともに、ハウスが上方ないしは内径方向に移動しないように拘束する。突出部DBおよび押さえ部DSの具体的形状は、ハウスの上方または内径方向への移動を妨げるように嵌合し合うものであればどのようなものであってもよい。また、分割片の突出部DBはハウスの基端部に存在するが、本発明において「基端部」とは必ずしも端部である必要はなく、ハウスの基部付近で、ハウスの上方または内径方向への移動を妨げるように押さえ部DSと嵌合することができる位置をいう。突出部DBおよび押さえ部DSの具体的形状および位置は、当業者が適切に決定することができる。図31に示す実施形態においては、分割片押さえ部DSはリング状の凹部であり、このドーム押さえ部DSには、各分割片1100の基端部に設けられたL字状の基部DBが係止されて、ハウスの位置固定を確実にするとともに、ハウスが上方ないしは内径方向に移動しないように拘束する。分割片の突出部DBの外周部にはハウスが外径方向に拡がるのを防止する拘束用部分SMがリング状に全周に設けられ得る。
【0170】
(運搬式組立基礎)
本発明の1つの実施形態において、基礎が運搬式組立基礎である。通常、打設された基礎は運搬することが予定されているものではない。運搬式組立基礎の1つの実施形態を図32に示す。図32(a)は移動式組立基礎の斜視図である。この実施形態において、基礎3000は、複数の分割基体3100から構成される。基体3100上にはハウスの床面となる平面を形成するための床体も配置され得る。図32に示すように、ハウスを分割片から構成するだけでなく、基礎も複数の分割基体を合わせる構成とすることによって、運搬可能な移動式組立基礎および組立式ハウスの提供を実現することができる。なお、図32では理解のために基礎を円環状としたが、このような形状に限定されるものではなく、その上に立設されるハウスの形状に合わせて基礎の形状を決定することができる。
【0171】
図32(b)に、分割基体3100の1つの実施形態を示す。図32(a)に円環状の基礎を示したので、図32(b)の分割基体3100も円弧状となっているが、分割基体3100の形状は基礎3000の形状に合わせて変化し得る。
【0172】
図32(b)において、分割基体3100の内周側には、床体を収容する段部3300が全周にわたって形成されている。分割基体3100の外周側には、基体外方に向かって突出する上下突出部3400A,3400Bが全周にわたって形成され、上下突出部3400A,3400Bの間に係合部として利用される窪み3500が形成されている。したがって、分割基体3100を集合してなる基礎3100上部の内周側には段部3300が全周にわたって形成され、上部の外周側には係止凹部3500が全周にわたって形成される。この窪み3500は、図31における押さえ部DSの機能を果たす。
【0173】
図32(b)に示す実施形態においては、個々の分割基体3100の長手方向の一端面には位置決めのためのカップルガイドピン3600が植設され、他端面にはカップルガイドピン孔(不図示)があけられている。ただし、このようなガイドピンの構成を採らなくても、分割基体3100同士の係合が可能なものであればどのような手段で隣接する分割基体を係合してもよい。隣接する分割基体同士を、カップルガイドピン3600をカップルガイドピン孔に挿入することにより接合し、基礎3100が組み立てられる。
【0174】
好ましい実施形態において、隣接する2つの分割基体3110の接合部の外周面を連結プレート36を介して連結する。なお、図32(b)に示す連結プレート36は、分割基体同士を連結するほか、水耕栽培システム収容ハウス1の分割片1100を例えばボルトにより基礎3000に連結するためにも使用され得る。
【0175】
なお、図32(b)に示すように、分割基体の上面にはインサート3700が埋め込まれ、吊下・施工用に用いられてもよい。
【0176】
分割基体3100を地面の上で相互に固定して基礎3100が形成され、その内側に床体を設けることができる。好ましい実施形態においては、基礎3100の内側に砕石などを所定深さまで充填する。その上にポリエチレンその他の樹脂フィルムを敷く。更にその上にコンクリートを基礎3100の高さまで充填する。コンクリートの表面を平面仕上げして床体が形成される。以上の工程により移動式組立基礎3000が完成する。
【0177】
このように構成した移動式組立基礎3000上に、分割片1100を組み立てることにより、水耕栽培システム収容ハウス1を設置する。すなわち、分割片基端部の突出部DBを窪み3500に嵌合しつつ、分割片1100同士を接合してハウス1を組み立てる。好ましい実施形態において、分割片1100の基部を連結プレート36により基体3000に締結固定してもよい。すなわち、分割片1100が基礎3000に連結プレート36により係止される。組立ドームの外周面に、耐水性、防火性、耐候性などを目的としてコンクリートモルタル、樹脂などを被覆してもよい。
【0178】
この実施形態では、分割基体3100を連結プレート36により基礎300として組み立て、基礎3000に床体を設置するようにした。したがって、連結プレート36によるボルト締結を解くことにより基礎3000を簡単に分解することができる。そのため、基礎およびハウスをどこへでも簡便に移設することができる。また、分割片1100の突出部DBの係止部3500を基礎を構成する分割基体3100の外周面に一体に形成したので、基礎3000の構造を簡素化できる。さらに、分割基体3100を連結する連結プレート36に基部DBを固定するようにしたので、基礎の構成を簡素化でき、施工も簡便になった。
【0179】
上記実施形態において、基礎3000の内側に形成する床体は、上記のように砕石およびコンクリートで形成するのではなく、基礎3000の内周側の段部3300に鋼板等の根太を架け渡し、その上に床板を敷くようにしてもよい。鋼板の根太は、運搬性を考慮した長さとし、それぞれボルト締結して分解可能とするとともに、床体も運搬性を考慮した大きさとし、それぞれ根太にボルト締結して分解可能とすることが好ましい。すなわち、床体も分割し、運搬可能にすることが好ましい。こうすれば、連結プレート36によるボルト締結を解くことにより基礎3000も分解できるから、基礎3000の分解性が向上し、簡単に移設することができる。
【0180】
(水耕栽培システム収容ハウスの補強)
本発明の水耕栽培システム収容ハウスは、種々の方法によって補強されていることが好ましい。
【0181】
例えば、分割片に補強部材を組み込んでもよい。補強部材の材質および形状は、ハウスの形状および用途によって当業者が適切に決定することができる。図33に、分割片に補強部材を組み込む好ましい実施形態を示す。
【0182】
図33に示すように補強部材4000(例えば、鉄骨)を、分割片の発泡成形用金型G1およびG2にセットする。この場合、補強部材4000をメス型G1にセットした後、オス型G2をセットするのが好ましい。図33の実施形態においては、メス型G1は補強部材4000の外周面とほぼ同形状であり、補強部材4000はメス型G1に当接した状態でセットされ、補強部材4000と金型G2の間には隙間ができる。
【0183】
次に、メス型G1とオス型G2の間に原料であるビーズ(予備発泡したもの)を封入し、メス型G1に設けた加熱孔G1a(c−c断面図参照)を介して高圧蒸気を吹き込み、ビーズを加熱する。金型G1およびG2内の高圧蒸気は、オス型G2に設けた図示しない小孔を介して外部に抜ける。これにより金型G1およびG2内でビーズが破裂し、金型G1およびG2の表面形状に沿って発泡スチロールが発泡成形される。この場合、図33のc−c断面図に示すように発泡スチロール4300は補強部材4000の裏側に周り込み、補強部材4000の周囲を覆うため、補強部材4000に発泡スチロール4300が密着状態でからみつき、接着性が高い。この場合、補強部材4000を貫通して加熱孔40aを設け、補強部材4000の裏側、すなわちオス型G2側に直接蒸気を吹き込むようにすることによって、初期段階で補強部材4000の裏側で発泡し、発泡スチロールと補強部材4000の密着性が一層高まる。したがって、本発明の好ましい実施形態においては、補強部材は蒸気を内部に通す貫通孔を備える。
【0184】
その後、蒸気を止めて十分に冷やしてから金型G1およびG2を取り外し、成型体である分割片を取り出す。このようにして形成された分割片では補強部材4000は分割片の外側に位置し、補強部材4000の外周面と発泡スチロール4300の外周面は段差なく形成されている。すなわち、補強部材4000の一つの面がドーム子午線に沿って露出する。この成型された分割片の外表面に、紫外線カットおよび耐水性を目的とした塗料を吹き付けてもよい。
【0185】
好ましい実施形態においては、補強部材4000は、分割片と他の分割片との締結用の締結部材を有する。このような構成にすることによって、分割片と他の分割片との強固な締結が容易に達成されることとなる。例えば、上記のように分割片の成形後に、分割片の外側から補強部材4000の部位に締結部材(例えば、ねじおよびねじ孔)を加工してもよい。
【0186】
以上の工程を工場内で行い、複数の分割片を製造した後にそれらを現場まで搬送し、水耕栽培システム収容ハウス1を組み立てる。
【0187】
(シートおよび塗布層による補強)
図34に、シートと下地材とによる補強の具体的実施形態を例示する。このシートと下地材による補強の実施形態では、組立において隣接する分割片1100同士の接合部分と、分割片の基礎3000からの立ち上がり部分と、基礎の対応部分とを覆うようにシートMS、MSa、MSbを貼り付け、そのシートを含めた箇所に塗布層(例えば下地材)を塗布することにより、2つの分割片の間、および分割片と基礎との間の固定を堅固にすることができる。
【0188】
この実施形態において用いるシートは、上記のように貼付されることによって基礎と分割片との固定を安定させることができる任意のシートであってよい。このシートは好ましくはメッシュシートであり、無機繊維で形成されたメッシュシートがさらに好ましい。無機繊維とは、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などを指す。シートは、張力のある樹脂系の繊維からなるシートであってもよい。シートは網目状に編まれた形態が好ましく、例えば炭素繊維で厚さ0.3〜1mm、6メッシュ(目数が1インチ当たり6個)のものを使用することによって効果が達成できた。12メッシュを超えると目が細かすぎて作業しにくく、6メッシュ以下は目が粗すぎる。これにより、ハウス1における分割片1100の接合部分には、接着剤等による接合に加えて、シート(例えばメッシュシート)の強度や強靱性が作用し、分割片同士を相互に強固に接合することができる。
【0189】
1つの実施形態において、メッシュシートMSが、隣接する分割片1100の接合部分に対し貼り付けられる。これに加えて、図34(a)に示すように、分割片1100の外面と基礎3000の接続部分にもメッシュシートMSaが貼り付けられてもよい。さらに、図34(b)に示すように、分割片1100の内面と基礎3000との接続部分にもメッシュシートMSbが貼り付けられてもよい。すなわち、本発明の水耕栽培システム収容ハウス1の外周側と内周側とにメッシュシートMSa、MSbが貼り付けられてもよい。
【0190】
ハウス1の室外面側の下端部には、図34(a)に示すように、基礎3000の対応部分にメッシュシートMSaが貼り付けられる。メッシュシートMSaは、ハウス1の下端外周側を連続して覆うものであり、横並びとなって隣接した分割片1100および基礎3000にかけて連続的に貼り付けられる。ハウス1の室内面側に対しても同様であり、図34(b)に示すように、分割片1100の内面の下端部と、これに対応した基礎3000の対応部分とにかけてメッシュシートMSbが連続的に貼り付けられる。なお、分割片1100の内面における下端部には、室内側に延びた脚部DSが一体的に形成されており、メッシュシートMSbはこの脚部DSから基礎3000の対応部分にかけて貼り付けられる。なお、好ましい実施形態においては、ハウス1の室内面及び室外面に対しては、さらに下地材が塗布され、この塗布によってメッシュシートMS、MSa及びMSbが隠蔽されるため、外観の低下を防止している。
【0191】
このように分割片1100の接合部分と、分割片1100における基礎3000からの立ち上がり部分及びこれと対応する基礎3000の対応部分とをメッシュシートMS、MSa、MSbによって覆うことにより、ハウス1と基礎3000との結合強度が大きくなるため、基礎3000上に安定してハウス1を立設することができる。
【0192】
なお、分割片同士の接着に用いる接着剤としては、ポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂が使用され、好ましくはこのアクリル樹脂にモルタル粉が混入して分散されていてもよい。アクリル樹脂は、発泡スチロールに対しての接着力が大きく、従って発泡スチロール製の分割片同士を相互に強固に接合することができる。
【0193】
分割片の接着剤として、モルタル粉混入のアクリル樹脂を用いることにより接着剤が弾性を有した強靱性を備えるため、耐震性、耐衝撃性に優れたものとすることができる。このため、地震や振動、衝撃があってもハウス1の接合部分にクラックが入ることがない。また、そのような接着剤は耐水性を有しているため、接合部分からの雨水の浸入を長期間防ぐことができる。
【0194】
シートの貼着後に、下地材をハウス1の室内面及び室外面の全体に所定の厚さで塗布することが一般的である。下地材としては、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維およびモルタル粉を樹脂塗料に分散させたものを使用することができる。樹脂塗料としては、ポリメタクリル酸エステルやポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、その他の樹脂を使用することができる。下地材の成分および厚さは当業者が適切に決定することができるが、一例としては、下地材の厚さは1〜3cmの範囲で所定の厚さとすることができる。
【0195】
下地材の塗布後には、ハウス1の室外面における下地材の面に対して外装塗料を塗布し、室内面における下地材の面に対して内装用の塗料を塗布することが一般的である。外装塗料としては、当該分野で公知の任意の塗料を用いることが可能であるが、撥水性及び紫外線遮断性の塗料が好ましい。このような特性を有する塗料としては、変性シリコーン樹脂塗料、その他の樹脂塗料を選択することができる。内装塗料としては、水耕栽培用の内部空間を形成することができるものであれば任意の塗料を用いることができるが、例えば天然物由来の粘土状塗料が好ましい。天然物由来の粘土状塗料としては、珪藻土または漆喰を選択することができる。珪藻土は耐熱性を有し、タバコ等の軽度な火が接触しても、燃えることがなく安全である。珪藻土18は、ホルムアルデヒドを吸着して除去する作用を有しているため、下地材13や外装塗料である変性シリコーン樹脂塗料17から何らかの作用によってホルムアルデヒドが発生してもこれが室内に留まることを防止することができる。さらに、珪藻土は有害物質を吸着除去するため安全であると共に、脱臭作用を有し、ダニやカビの発生を防止する作用を有している。
【0196】
(発泡樹脂と補強部材との接着の改善)
図35(a)に、分割片における発泡樹脂と補強部材との接着を改善することができる具体的構成を示す。この実施形態においては、分割片の補強部材は、長手方向に延びるウェブとそのウェブから短手方向の一方に向けて突き出した第1のフランジと、そのウェブから第1のフランジとは反対方向に向けて突き出した第2のフランジとを備える。このような補強部材を用いることにより、断面がコ字形の補強部材を用いる場合と比較して樹脂の発泡が均一となり、より安定した分割片の成形が可能になる。断面がコ字形の補強部材は、発泡樹脂原料が蒸気によって発泡し膨張する際に、コ字形の内側の回り込んだ箇所に空隙が残り、樹脂の発泡が不均一な発泡となりやすい。この実施形態における補強部材としては、プラス(+)字状やZ字鋼などを用いることができる。図35には、例としてZ字鋼を用いた分割片の具体的実施形態を示している。図35(a)に示すように、補強部材4000は、長手方向に延びるウェブ4100と、ウェブ4100から短手方向の一方に向けて突き出した第1のフランジ4200と、第1のフランジ4200とは反対方向に向けて突き出した第2のフランジ4300とを備える。図35(a)ではZ字の補強部材を図示したが、必ずしもフランジはウェブの上端および下端から突出する必要はなく、ウェブの任意の場所から、反対方向に突き出ていればよい。補強部材4000は、代表的には、ウェブ4100が垂直となるように短手方向に間隔をあけて配列される。補強部材4000のウェブ4100に複数の孔をあけること、またはアルミニウムなど軽い素材を使用することによって、軽量化を図ってもよい。
【0197】
図35(b)は、補強部材が、それと交わるように取り付けられたクロス部材を含む実施形態を示す。クロス部材4400は、補強部材4000と交わるように取り付けられる。クロス部材と補強部材との取り付けは、溶接またはネジなど当該分野で周知の技術によって行うことができる。補強部材とクロス部材とは、双方が互いに支え合い、補強するように交われば具体的な角度は限定されないが、好ましくは直交される。補強部材4000とクロス部材4400とから構成される骨組みを型に入れ、骨組みを型の底から浮くように設置する。型に分割片1100の原料となるビーズを投入し、高温の蒸気で発泡させ膨張させる。このような一体成型により発泡樹脂製の分割片1100が形成される。図35(b)では、分割片1100は破線で示した。分割片1100は、例として、膨張率を調節することにより、一立方メートル当たりの重量が14kg〜30kgのものにすることができる。圧縮強度は、40kN/m〜120kN/mであり、大きな負荷に耐えることができる。曲げ強度は40kN/m〜120kN/mであり、曲げにも強い。このようにして成形された分割片1100は、軽量で断熱性に優れ加工もしやすい。
【0198】
図35(c)は、補強部材とクロス部材とを含む分割片の平面図である。分割片1100は、補強部材4000とクロス部材4400が内部に組み込まれた矩形板状である。補強部材4000およびクロス部材4400は、発泡樹脂の内部にあるため破線で表示した。分割片1100の寸法は、最終的な水耕栽培システム収容ハウスの大きさや運搬性、施工性を考慮して当業者が適切に決定することができるが、例えば長手方向が約5m、短手方向が約2mである。短手方向の前後の両端面には、それぞれ凹部と凸部が設けられてもよい。この凹部と凸部とは、長手方向に延びて設けられ、互いに係合する形状である。例えば、分割片1100の凹部に、他の分割片の凸部を係合させることにより、分割片を短手方向に延長できる。すなわち、凹部と凸部は分割片1100を短手方向に延長するための結合部として機能する。クロス部材4400は、補強部材と交わってこれを補強することができる任意の形状および材質のものであってよいが、代表的には帯状の平板材である。図35(c)では、長手方向が約5m、短手方向が約2mの分割片1100の長手方向に、1m間隔でクロス部材4300を補強部材4000に取り付けた状態を示した。
【0199】
(二階建て水耕栽培システム収容ハウス)
水耕栽培システム収容ハウス1は、ハウス1内の床面の少なくとも一部の領域内に立設された複数の支柱と、その支柱によって支持される上部床面とを備えてもよい。すなわち、二階建てであってもよい。図36に、二階建ての水耕栽培システム収容ハウスを示す。図36の実施形態では、1階部分の床面201が入口部53の近くの床面201’よりも低く形成されている。床面201に複数の柱203が立設され、柱の上部に2階の上部床面202が形成されている。床面201’から床面202にかけては図示するように螺旋階段などが設けられてもよいし、床面201’から床面201にかけては階段が設けられてもよい。図36においては床面201は床面201’よりも低く形成されているが、床面201と床面201’とは同一平面上であってもよいし、床面201の方が床面201’よりも高く形成されていてもよい。ただし、床面201を床面201’より低く形成することによって、上部床面202上の空間を広く確保することができるので好ましい。
【0200】
好ましい実施形態において、上部床面202およびそれを支える支柱203から構成される内部の構造体は、分割片を組み立てて構成されたハウス1の外部の構造体とは隔離した状態である。内部の構造体と外部の構造体とは、連結されたり、一方の構造体が他方の構造体を支持したりする構造ではない。このようにハウスの構造を簡素にすることにより、組立が容易となり、短時間で組み立てることが可能になる。
【0201】
(ハウス表面の加工板)
別の実施形態において、水耕栽培システム収容ハウス1は、補強および意匠性の目的から加工品を備えてもよい。この加工品は、発泡樹脂製であればどのようなものであってもよいが、好ましくはハウス1を構成する発泡樹脂と同一の発泡樹脂から形成される。ハウスと加工板の材質が同じ発泡樹脂であると、熱収縮により加工板がハウスから剥離することを防止できるからである。また、発泡樹脂製の加工板は従来の偽石板などと比較して軽量であるため、施工が容易であり、かつハウス全体の強度の観点からも好ましい。好ましい実施形態では、加工板は接着の際にハウスと接する面に凸部を有する。この凸部によって、剥離が防止される。この実施形態の加工板は、外周の少なくとも一部に薄肉状接合部を有していてもよい。このような加工板は、複数の加工板が薄肉状接合部を介して連結した状態で成形され、その後薄肉状接合部において切断することによって製造され得る。したがって、薄肉状接合部は、切断のために薄肉に形成される。なお、発泡樹脂の発泡成形において、薄肉状接合部は硬くなりやすいので、予備発泡と発泡成形の二段階の発泡を行うことにより、薄肉状接合部の発泡樹脂が硬くならないようにすることができる。
【0202】
(免震構造)
別の実施形態において、本発明の水耕栽培システム収容ハウス1は、免震構造を備えるてもよい。図37に、本発明の水耕栽培システム収容ハウスの免震構造を示す。図37に示す免震構造によれば、均一の球体が敷き詰められた改良地盤により、球体が地震の横揺れを吸収し、ハウスの揺れを小さくすることができる。また、改良地盤が左右に動いてもハウスの底板と改良地盤との間がスライドするため、ハウスの動きがわずかである。さらに、床下、側壁および天井を全て発泡樹脂で形成し、殻のような閉構造とすることによって、適度なクッション性と強度により地震の衝撃がハウス全体に分散され、ハウス内の人員や保管物への衝撃を小さくすることができる。
【0203】
図37は、本発明の水耕栽培システム1の断面図である。発泡樹脂(例えば、発泡スチロール)の分割片で構成されたハウス1が、球体STで構成された改良地盤GRの上に載置される。この実施形態では、ハウス1は床下、側壁および天井が室内を囲む閉構造であり、改良地盤GRと接触する底部には、底板BPが設けられている。ハウス1を構成する分割片1100の外部を2cm程度の厚さの強化モルタル層MRで覆ってもよい。強化モルタル層MRは、例えば、モルタルに炭素繊維を混ぜて衝撃性やひび割れを防止するとともに、発泡樹脂(例えば、発泡スチロール)との接着性をよくするため、ポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂系の接着剤を混ぜたものとすることができる。
【0204】
底板BPは、改良地盤GRとハウス1とがスライド可能となるように構成され、例えばコンクリート型枠用合板を使用することができる。コンクリート型枠用合板は、コンクリートの形枠に使用され、厚さは約6〜9mmである。底板BPの材料としては、これに限らず樹脂製としてもよい。一般的には、床下FLの上部には、コンクリート層が設けられ、この上に床が設けられる。床の下側は、配線、配管の空間にもなる。
【0205】
ハウス1の外周を覆う範囲の地面に深さ約50cm程度の穴が掘られ、ここに球体STが配置されて改良地盤が形成される。代表的には、この穴に球体STが敷き詰められて改良地盤がGRが形成される。球体STは、地震の際の振動を効果的に吸収できる任意の形状および材質であり得る。球体STは、その上にハウスがスライド可能に載置できるように配置される。球体STは、好ましくは径が約15〜30cmの丸石であり、より好ましくは均一な丸石である。改良地盤GRを構成する球体STとしては、適度な硬さと弾力のある硬質ゴムの球体を用いることもできる。その径は、約10〜30cm程度が好ましい。
【0206】
(他の実施形態)
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明は、小さなスペースで効率的に水耕栽培を行うことができるシステムを提供するため、植物生産に利用可能である。本発明の水耕栽培システムは培養液の量が少ない点に特徴があるため、特に水が少ない砂漠地域での植物生産に有用である。さらに、そのような水耕栽培システムを断熱効果の高い発泡スチロール製ハウスと組み合わせることにより、植物栽培には適さない環境でも大量の植物を産生することができる。
【符号の説明】
【0208】
1 水耕栽培システム収容ハウス
2 植物
3 培養液
4 人工培地
10 筐体
18 反射板
20 水槽
28 光透過領域
30、35 植物保持板
31 貫通孔
40 支持機構
50 移動機構
60 照射部
70 根切カッター
100、200、300、1000、1000’ 水耕栽培システム
100’ 搬入装置
200’ 搬出装置
300’ 培養棚
1100 分割片
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