(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質マトリックスの少なくとも一部分を浸透媒体で浸透させるステップは、前記浸透媒体を、機械的に前記多孔質マトリックス中を対流させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、水熱液相焼結(HLPS)のための前駆体および輸送方法の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に言及するが、図面中、同種の参照番号は同種の要素を示す。
【0014】
実施形態は、浸透媒体用に選択される前駆体および多孔質マトリックス中に浸透媒体を導入する方法に関する。上述のように、浸透媒体用の前駆体の選択および前駆体を輸送する方法は、HLPSプロセスにおける反応速度と物質輸送との間のバランスの制御に対して重要である。
【0015】
浸透媒体は、第1の前駆体および第2の前駆体を含む。第1の前駆体は溶媒であり、第2の前駆体は反応性種である。
【0016】
溶媒は、未焼結多孔質マトリックス中にあるとき、少なくとも一部、液相を形成することができ、HLPSプロセスの終了時に、様々な物質輸送プロセスによって除去することができる成分である。
【0017】
溶媒は、水性または非水性とすることができる。溶媒は、1つまたは複数の成分を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、溶媒は、水とエタノール、エタノールとトルエン、または、アルキル置換されたイミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオンとハロゲン化物アニオンもしくはトリハロゲノアルミン酸アニオンとを主体とするイオン性液体などの、様々なイオン性液体の混合物とすることができるが、これらに限定されない。プロセッシング装置を簡略化するためには、非湿潤よりも湿潤系が好ましい。
【0018】
溶媒は多孔質マトリックスと化学的に反応性であるべきではないが、溶媒は反応性種と化学的に反応してもよい。溶媒は、バルク流、蒸発、昇華、もしくは洗浄媒体による溶解などの様々な分離法、または当業者に公知の他の任意の好適な分離法によって除去することができる。
【0019】
溶媒の役割は、例えば、水などの溶媒が多孔質マトリックスと反応して金属水和物または金属水酸化物などの溶媒分子を含有する生成物、とりわけ沈殿生成物を形成する、ポルトランドセメントなどの反応系を伴う先行技術とは、対照的である。他の対照的な先行技術には、溶融金属および多孔質マトリックスが、溶融金属元素とマトリックス中のいくつかの成分の両方を含有する反応生成物を形成することを伴う反応が含まれる。よって、かさねて述べるが、本出願では多孔質マトリックスと実質的に反応しない溶媒を利用し、むしろ反応性種が多孔質マトリックスの少なくとも一部分と反応する。
【0020】
反応性種は、固相、液相および気相である純粋な状態(すなわち、その自然状態)の原材料に由来していてもよい。純粋な反応性種の相にかかわらず、反応性種は溶媒中に中性種、アニオン種またはカチオン種として溶解する。例えば、一実施形態では、少なくとも1種の反応性種は、大半が炭酸イオンおよびナトリウムイオンとして水溶媒中に容易に溶解し得るNa
2CO
3などの固体であってもよい。他の実施形態では、少なくとも1種の反応性種は、液相とすることができる。例えば、反応性種は、中性分子として水中に溶解し得るが、高温に加熱したときに荷電種と中性種の両方を形成する、液相のリン酸トリエチルとすることができる。さらなる実施形態では、少なくとも1種の反応性種は、溶媒中に溶解する気体とすることができる。例えば、少なくとも1種の反応性種は二酸化炭素とすることができ、これは室温において中性のCO
2として水中に溶解し得るが、溶媒との反応によって、例えば、H
3O
+種、HCO
3−種、H
2CO
3種およびCO
32−種などの反応性種を作り出すことができる気体である。複雑な多成分系(すなわち、1種を超える反応性種を含む系)の場合、1種を超える反応性種は、溶媒に溶解する固体、液体および気体の組合せから構成され得る。室温および室圧(自然状態とも称される)における純粋状態の反応性種および溶媒の最初の相にかかわらず、浸透媒体は、多孔質マトリックスの細孔(すなわち、格子間空間)中において液相である。より具体的には、溶媒は、溶解した反応性種が多孔質マトリックスと反応する温度において液体である。この温度は、選択される具体的な溶媒および反応性種に応じて変化する。エネルギーを節約し、プロセッシング装置を簡略化してそれによって製造コストを低減するためには、高温よりも低温が好ましい。
【0021】
上述のように、溶媒および少なくとも1種の反応性種の選択は、本発明に関して非常に重要であり、溶媒および反応性種を含む浸透媒体を多孔質マトリックス中に導入して、モノリシック構造またはモノリシック体中に一様なまたは勾配のある微細構造を実現するために使用される方法についても、同様である。
【0022】
一実施形態では、毛管力を使用して浸透媒体を自発的に多孔質マトリックス中に浸透させることができる。この種の濡れは、浸透媒体が非常に低い接触角(例えば、90°未満)を有する場合に生じる。この場合、媒体は細孔を部分的に充填する(部分的に飽和させる)か、または完全に充填する(飽和させる)。浸透は、ある細孔は充填されるが他の細孔は空洞および/または部分的に充填されるような方式で生じることもあり得る。細孔の充填または飽和において勾配を有する浸透された多孔質マトリックスが、後に溶媒飽和雰囲気中での加熱の延長などの複数の手法を介して、毛管流によって一様な多孔質マトリックスに転換され得ることもまた可能である。加えて、濡れは、浸透媒体の接触角が大きい(90°超)の場合、自発的に生じない。これらの場合では、流体は、外圧がかけられない限り多孔質マトリックスに浸透しない。しかし、この手法は、圧力の解放によって浸透媒体を引き抜くことが望ましい場合に有用である。この場合、反応を圧力によって開始または停止することができる。
【0023】
浸透(すわなち、浸透媒体の多孔質マトリックスの少なくとも一部分中への輸送)が細孔中の自発的な毛管流を使用してなされる場合、細孔が充填される(飽和する)とバルク流が止まる。HLPSの間、反応性種は、米国特許第8,114,367号および米国特許出願第12/271,513号に概説される様々な反応により、マトリックスと反応して1種または複数の生成物を形成する。これらの反応の間、少なくとも1種の反応性種は細孔空間内から涸渇し、このため、反応の過程中で補充される必要がある。細孔が浸透媒体で完全に飽和したとき、反応性種は、マトリックスの細孔を通じて多孔質マトリックスの外部にある浸透媒体から輸送されなければならない。静止した流体中では、拡散が輸送を生じさせるプロセスである。よって、細孔内での反応が他のあらゆる物質輸送プロセスと比較して高速である一部のHLPS法については、反応は多孔質マトリックスの厚さが大きく増加することによって制限されるようになり、この場合、マトリックスの外側部分のみが反応性種と大規模に反応するが、多孔質マトリックスの内側領域は不完全に反応するかまたは反応しない。よって、この種の反応は、HLPSプロセスの生成物の濃度(化学組成および/または相組成に関する)が構造の内部に対して外側部分(外部表面領域の近く)においてより高い、勾配のある微細構造の調製に適する。
【0024】
高度に発熱性の反応が浸透媒体の輸送と比較してゆっくりと進行し、マトリックスが断熱性である場合、封入された熱はマトリックスの内部で反応速度を増加させ、マトリックス内部がマトリックス内部より多くの生成物相(すなわち、少なくとも1種の反応性種と多孔質マトリックスの一部分との間の反応の生成物)を含有することを可能にし得る。他のHLPSプロセスに関して、その反応が浸透媒体の物質輸送と比較して中間の速度で等温的に進行する場合、拡散が細孔に反応性種を供給し続ける能力を有する可能性があり、よって、反応度(または生成物濃度)に勾配が観察されない。したがってこの場合、モノリシック構造またはモノリシック体の材料の内部と外部とで、化学組成および/または相組成にほとんど差がない。
【0025】
多くの場合、モノリシック構造体においては、相および組成に関して一様な微細構造が望ましい。さらに、道路または橋などの用途に大きくて厚いモノリシック体が要求される場合などのように、HLPS反応を比較的短い時間枠で行うことも望ましい。この理由により、HLPSプロセスの反応速度と物質輸送とのバランスをとることが望ましい。よって、前駆体選択および浸透媒体を構成する前駆体を導入する方法についての戦略が非常に重要である。
【0026】
前駆体および浸透媒体を導入する方法(すなわち、前駆体を多孔質マトリックスの外部から多孔質マトリックスの格子間空間の少なくとも一部分へ輸送するプロセス)の最善の選択は、少なくとも一部は、最も薄い方向における試料の厚さ、プロセスに許容可能と考えられる時間スケール、ならびに温度、圧力および組成などの、プロセスが商業規模で実行可能であるために必要な熱力学的および動力学的制約の関数である。前駆体選択および導入方法の戦略を、表1にまとめる。
【0027】
多孔質マトリックスをこの表によって示されるように直接浸透させることができ、または表1に記載の浸透シーケンスのいずれかに先立って、多孔質マトリックスを排気してもよい。前駆体として気体を、前駆体として液体を、または前駆体として固体を使用する方法が記載されている。さらに、固体と液体、気体と液体、および気体と固体などの相混合物がいずれも使用できる。これは、前駆体の組合せがマトリックスの細孔中に存することが可能な溶液を生じる限り、まったく可能である。例えば、CO
2などの反応物質は、その純粋な状態では気体だが、水中に拡散すると、溶液種に変換される。このような事象は、多孔質マトリックス中への気体拡散と、その後細孔と遭遇したときの凝結とによって起こり得る。この種の前駆体系は、炭酸塩相からなる微細構造が望ましい場合、適切である。Sr(OH)
2*8H
2Oなどの固相は、100℃超に加熱すると融解し得る。これが液相として多孔質マトリックス中に浸透し、続いて液体水が浸透して、チタニアの多孔質体を高密度化する(すなわち、焼結する)チタン酸ストロンチウムの形成に適する反応性種を形成する。
【0028】
前駆体(溶媒および反応性種)を添加する順序は、材料の反応収率および微細構造に影響し得る。前駆体添加の方法の例を表1(導入の方法)に示す。
【0030】
一部の実施形態では、溶媒および反応性種を予備混合して浸透媒体を形成し、次いで、単一のステップでマトリックス中に導入してもよい。他の実施形態では、複数の浸透シーケンスを採用することが好ましい可能性がある。例えば、溶媒前駆体を最初に導入して、続いて反応性種の浸透を行うことができ、あるいは逆も可能である。
【0031】
浸透媒体は、マトリックスの細孔中において見出される液体であるが、溶媒も反応性種前駆体も、最初は必ずしも同じ相である必要はない。例えば、溶媒前駆体は、水などの蒸気とすることができ、これは、大気圧において100℃以上の温度で気体であり、マトリックスを100℃未満の温度に冷却するか、または細孔サイズ範囲内(100nm未満、多孔質材料はそのサイズによっていくつかの種類に分類される。IUPACの記述法によれば(J. Rouquerolら、Pure & Appl. Chem、66 (1994) 1739〜1758を参照)、ミクロ多孔質材料は2nm未満の細孔直径を有し、メソ多孔質材料は2nmから50nmの間の細孔直径を有し、マクロ多孔質材料は50nm超の細孔直径を有し、したがって、本発明者らが定義するKelvin細孔サイズは、マクロ多孔質レジームの最低値から始まりメソ多孔質レジームおよびミクロ多孔質レジームへと続く。)の細孔サイズを有する多孔質マトリックスの使用を選択することで、表面エネルギーを利用することによって、熱的に液体へと凝結させることができる。細孔が大きい場合、気体種が熱的に凝結もしくはKelvin細孔凝結できないほど温度が上昇する場合、または少量の浸透溶液が非常に厚い構造(例えば、12インチの厚さ)を通り抜ける必要がある場合、またはここでは論じられない、浸透溶液を構成する液体または蒸気を構造中に導入することができない他の理由で、潮解性化合物を使用して細孔中に液体を形成することが望ましい可能性がある。このような化合物の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、硝酸マグネシウム、硝酸鉄および水酸化カリウムが含まれるが、これらに限定されない。この場合、水などの蒸気は、細孔中の潮解性の固相を液体に変換することができ、細孔中で生成物相の結晶成長が進行し得る。これは、液体浸透および液体拡散がHLPSによって沈殿する生成物の量を制限する場合に、特に有用である。この場合、代替的に、気体拡散を使用して種をさらに長い距離にわたって輸送して、マトリックスの細孔の内部でHLPSに必要とされる浸透媒体を形成することができる。
【0032】
上記で示した潮解性固体の例は、どのようにして添加剤が反応速度を加速させることができるか、またはどのようにしてHLPSプロセスを多孔質マトリックス全体にわたってより一様にできるかについての一例にすぎない。
【0033】
重要なのは、溶媒の使用により、一連の他の加工添加剤を使用して、様々な形でHLPSプロセスを促進させることができる点を認識することである。
【0034】
結晶成長添加剤は、結晶の形態および大きさに影響を与える。炭酸カルシウムの結晶成長についての例には、Pb
2+、Mn
2+、Mg
2+、Co
2+、Fe
2+、Ni
2+などの不純物カチオン、およびNO
3−、SO
42−、PO
43−、クエン酸塩、アリールアルキルスルホン酸塩などのアニオンが含まれるが、これらに限定されない。硫酸バリウムの結晶成長についての例には、クエン酸塩およびコハク酸ジヘキシルナトリウムならびに非イオン性種アルキルアリールポリエーテルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。一般に、溶媒混合物を使用して形態を制御することができ、この場合、極性の水を、ケトン、アルコールおよびエーテルなどの極性の水溶液と混合することができる。あるいは、灯油、トルエンなどの非極性溶媒、およびさらにはCO
2、SF
6などの液化ガスおよびその他の物質を組み合わせて、結晶の大きさおよび形態を変化させることができる。
【0035】
添加剤を結合剤として使用して、多孔質マトリックスに強度を与えることができる。例には、クレー無機結合剤および微結晶性セルロース有機結合剤などのコロイド粒子が含まれる。分子結合剤には、ゴム、リグニン抽出物、ならびにポリマー、例えば、ポロビニルアルコールおよびポリ塩化ビニルが含まれるポリビニル結合剤、ポリスチレン、ポリアクリル酸、パラフィンワックス、ならびにデンプン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系結合剤、ならびにポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれる。可溶性結合剤には、可溶性ケイ酸塩、金属有機ケイ酸塩、有機金属ケイ素、シリコーン、可溶性リン酸塩および可溶性アルミン酸塩が含まれる。
【0036】
存在する他の添加剤には、ダイ壁または内部粒子の摩擦を緩和するための、内部または外部潤滑剤、例えば、パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸またはオレイン酸などのカルボン酸、ポリグリコール、フルオロポリマーならびにさらにはタルク、グラファイトおよび窒化ホウ素などの無機固体が含まれ得る。使用される液体は流体潤滑剤として使用され、これには、中でも、シリコーン、鉱油、石油蒸留物、合成油、水性エマルションが含まれ得る。
【0037】
界面活性剤を使用して、多孔質マトリックスの形成を制御し、水熱液相焼結中における浸透溶液の接触角を抑えることができる。例には、エトキシル化ノニルフェノールもしくはエトキシル化トリデシルアルコールなどの非イオン性界面活性剤、ステアリン酸ナトリウムもしくはジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、またはポリエチレンイミドもしくはドデシルトリメチルアンモニウムクロリドが含まれるカチオン性界面活性剤が含まれる。
【0038】
多孔質マトリックスの加工および水熱液相焼結のための溶媒には、水、炭化水素、アルコール、ハロゲン化炭素、エーテル、アミン、ケトン、アセトニトリル、炭酸プロピレンおよび他の炭酸エステル溶媒、DMSO、ホルムアミドなどのアミドならびにすべてのイオン性液体が含まれるが、これらに限定されない。溶媒を別の溶媒系(溶液中の支配的な溶媒種)への添加剤として使用して、様々な機能を果たすことができ、その機能には、浸透溶液をより低粘度にすること、水熱反応を触媒すること、反応熱力学を変更すること、および、ゾル−ゲルケイ酸塩の乾燥において見られるものなどの亀裂状欠陥を防ぐために、乾燥が高速化または低速化するように多孔質マトリックスの乾燥動力学を促進することが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
解膠剤(分散剤)および凝集剤(凝固剤)を使用して、分散液、ペースト、可塑体またはスラリーを、それぞれ安定または不安定にすることができる。凝集を誘発する添加剤には、電解質(例えば、KNO
3)、pH制御剤(例えば、HNO
3、KOH)が含まれる。界面活性剤(例えば、上記を参照)、立体安定化剤(例えば、ステアリルアルコール)および静電立体安定化剤(例えば、ポリメタクリル酸ナトリウム)、ナノ粒子ハロー(例えば、コロイド状シリカ)、および非常に短い界面活性剤種を使用するVold層(Vold layer)を使用して、反応媒体の温度、組成および圧力に応じて凝集または脱凝集を誘発することができる。
【0040】
可塑剤は、処理中に多孔質マトリックスに亀裂が生じないように、結合剤の脆性を低減するために使用される。グリコール(例えば、エチレングリコール)およびフタル酸エステル(例えば、フタル酸ジブチル)が典型的に採用される。
【0041】
発泡/消泡剤は、多孔性を作り出すか、または多孔質マトリックス中の細孔を除去するために使用される。一般的な消泡剤には、フルオロカーボン、ジメチルジシリコーン、高分子量アルコール、グリコールおよびステアリン酸アルミニウムまたはステアリン酸カルシウムが含まれる。発泡剤の例には、トール油、アルキル硫酸ナトリウムおよびプロピレングリコールが含まれる。
【0042】
添加剤が生物学的に不活性でない場合、例えば、これに限定されないが、多糖類で作製された結合剤の場合、殺菌剤または殺真菌剤などの保存剤が有用である。結合剤がこのようなものである場合、これらに限定されないが、次亜塩素酸塩、フェノール類、硫酸銅および硝酸銀などの保存剤添加剤である。
【0043】
上記の添加剤を組み込んでHLPSプロセスを改善することができ、これらはその純粋状態の固体、液体または気体とすることができるが、溶媒相中に可溶であるか、または浸透媒体の組込の前に可溶性もしくは不溶性成分としてマトリックスと共処理されて、多孔質マトリックスを形成する。上記の例の他にも、他の多数の添加剤が存在し、例えば、これらに限されないが、(1)核生成触媒、(2)核生成阻害剤、(3)水軟化剤などの溶媒調節剤、(5)非湿潤剤、(6)一般的なまたは特許によって保護されたセメント添加剤またはコンクリート添加剤、(7)建設業において一般的に使用される添加剤、(9)結晶成長促進剤(触媒)、(10)結晶成長を低速化する添加剤、(11)pH緩衝剤、(12)イオン強度調整剤、(13)浸透溶液の粘度を増加または減少させるレオロジー制御剤、(14)水熱反応速度触媒、(15)静電安定化剤、立体安定化剤、静電立体安定化剤、多価電解質およびVold層分散剤、(16)マトリックス中のある特定の化合物が反応するのを防止するためのキャッピング剤、(17)カップリング剤および他の表面吸着性種、(18)酸pH調節剤または塩基pH調節剤、(19)加熱、加圧、減圧、別の種との反応、またはここに列挙されていない任意のプロセッシングの変化に曝されたときに、気体、液体または固体を生成する添加剤、(20)上記の機能のうちのいずれかを果たすことができると共に、溶媒、反応性種または多孔質マトリックス、および強度増強、密度制御、電気抵抗、光透過率などの特定の機能性を付与する添加剤をもたらす役割を果たす、生物学的成分または合成成分が存在する。
【0044】
他の実施形態では、表1に示されるように、潮解性固体が使用されてもよい。潮解性固体は、多孔質マトリックスと予備混合されてもよい。次いで、溶媒の予備混合物および少なくとも1種の反応性種を、潮解性固体−多孔質マトリックスに導入することができる。溶媒を潮解性固体と接触させることができ、次いで、溶媒および潮解性固体は、接触後に液相となる。予備混合物中の溶媒および少なくとも1種の反応性種は、共に気相とすることも、共に液相とすることもできる。他の実施形態では、溶媒は液体であってもよく、少なくとも1種の反応性種は予備混合物中で気相であってもよく、逆であってもよい。
【0045】
例えば、一実施形態では、気体−水蒸気流を多孔質マトリックス中の潮解性塩上に通して、多孔質マトリックスの格子間空間中に液相の浸透媒体を生成することができる。例えば、高湿な気体−水蒸気流は、CO
2の溶解およびイオン化のための溶媒として働くことができる。
【0046】
潮解性であり、塩の表面上の高湿な空気の流れから液体溶液を形成するのに適することが知られている、数多くの塩が存在する。適切な塩の選択は、空気中の湿度レベルに依存する。これらの塩は、非常に低い相対湿度において作用する。
【0047】
例えば、Mg(NO
3)
2は、低い水分活性(0.05〜1%RH)において液体溶液を形成することができる。本発明者らの知識では、平衡時、湿潤空気がMg(NO
3)
2を溶液に変換すると、このとき、水溶液中のMg塩のモル分率は0.35となる。水(液体)溶液とは、溶液が65モル%の水と35mol%のMg塩とを含有することを意味する。この組成は、RHが1%以下の場合でも生じ得る。しかし、より高い値は、単位時間当たりより大きな質量の水を送達する。温度が室温であり、RHが50%であり、多孔質マトリックス成分が1立方フィートであると仮定すると、細孔は、0.35のMg(NO
3)
2および0.65のH
2Oの最終組成(混合物の規則を使用して溶液密度を見積もる)を有する溶液によって、50体積%(DPS=50%)が部分的に充填され得る。多孔度が40%であり、細孔が単分散であると仮定すると、湿潤空気は構造中に侵入し、この組成が選択される場合、細孔中のMg(NO
3)
2塩は徐々に液化する。まず、細孔体積の50%を充填することができる値に一致する硝酸Mgの重量パーセントを精選する。0.35mol分率の硝酸Mgを含有する溶液があるとする(混合物の規則を使用して溶液の密度を見積もる)。乾湿計計算により、10.4m
3/hにおける3hの空気流量は、0.35のMg(NO
3)
2という水中の最終モル分率を有する水溶液を作製するのに十分な水を送達することができることが示される。この時点で、より多くの気流を継続して、マグネシウム塩濃度を希釈して、DPS値を50%を超えて増加させることができる(DPS、細孔飽和度、J. Reed (Principles of Ceramic Processing、John Wiley and Sons、1991)の定義による)。このような選択肢は、反応速度および反応する多孔質マトリックスの割合(形成される生成物の量)を制御するために有用であり得る。あるいは、相対湿度を1%以下に低下させることができるが、この溶液組成は低湿度の気体流と平衡化するために、細孔中の溶液体積は一定になる。よって、この例は、気相の水を送達し、潮解性塩を使用して水を細孔中で凝結させることによって、いかにして液体水の使用を回避できるかを示している。マグネシウム塩が徐々にますます多くの水蒸気を細孔中に捕捉するにつれ、液相がバルク細孔相中に一様に形成するため、この例はまた、溶液組成に勾配を生む毛管力を有することなく、各細孔中の流体の体積をいかにして精確に制御できるかを示している。同様の計算を60℃または90℃などのより高温において行うことができ、潮解の引き金となる組成と共に、浸透溶液の体積および使用される空気の水蒸気保持容量を計算することができる。
【0048】
CaCl
2またはさらにはNaClなどの他の塩を使用することができる。これらの塩は、溶液形成を活性化するために、Mg(NO
3)
2よりも高い相対湿度を必要とする。NaClは75%の相対湿度を必要とし、CaCl
2溶液は20%の最小相対湿度を必要とする。これらの特定の塩はまた、CaCl
2・2H
2OまたはNaClなどの不溶性化合物を形成するため、溶液組成がより限定される。
【0049】
潮解性塩添加剤を共処理することができ、この場合、塩は打設用スリップのための結合剤相として二重の役割を果たす。例えば、打設工程の間、塩は水中に溶解して、多孔質マトリックスに亀裂の入ることの多い乾燥ステップの間に、多孔質マトリックスに引張強度などの好ましい機械的特性を付与することができる。このような塩添加剤に対して、他の二重またはさらに多重の役割を想到することができる。乾燥中、塩は粒子の表面上に沈殿し得る。あるいは、一部の実施形態では、潮解性塩を、水と潮解性塩の両方を収容することのできる多孔度の、バーミキュライトなどの媒質中に組み込むことができる。この化合物は、相対湿度が系を活性化して液化および膨張させ、CO
2の吸収およびイオン化のための大量の溶液を作り出す特定の温度になるまで、相対的に不溶性の相であることができる。
【0050】
あるいは、潮解性塩を無水条件で処理し、骨材または砂などの他の成分と乾燥混合することのできる多孔質マトリックスの結合剤成分と、共造粒することができる。この混合物を多孔質マトリックス(セラミック素地)に乾燥圧縮することができると共に、この混合物は、相対湿度および温度の変化によって、細孔中に溶液を形成することができる。
【0051】
潮解性塩のもう1つの大きな利点は、添加する塩の量であり、選択された相対湿度によって添加する溶液の体積が決まる。これは、溶液の体積が塩溶液の平衡組成によって決まるためである。
図6は、Mg(NO
3)
2の潮解曲線を示す。0.05の水分活性または5%の相対湿度において、この塩は、水中の約0.35というMg(NO
3)
2のモル分率に一致する水分および塩の組成が実現するまで、固体であり続ける。
【0052】
他の実施形態では、浸透媒体は、自発的に多孔質マトリックスを濡らすバルク溶液として送達される。この溶液を送達するための多くの選択肢が存在する。第1に、多孔質マトリックスを液体中に浸漬することができる。第2に、浸透溶液を多孔質マトリックス上に噴霧することができる。静止している系において、多孔質マトリックスの細孔体積よりも大きいある体積の浸透溶液が存在するとき、拡散が、反応性種を細孔部位へと送達することによって反応を伝播する。この手法は、本発明を実施するための最も低速なやり方である。
【0053】
あるいは、様々な方法によって流体を多孔質マトリックス中に流すことができる。例えば、流体を機械的に多孔質マトリックス中に対流させることができる。加圧流、乾燥、電気浸透流、磁気浸透流、毛管現象、ならびに温度および化学勾配駆動流などの方法は、すべて多孔質体中に液体浸透媒体を流すために使用できる方法である。一部の場合では、溶媒および反応性種を2ステップで導入してもよい。例えば、鉱物の炭酸化では、マトリックスの一方の側に真空を作り出し、浸透水を他方の側とすることによって、多孔質マトリックス中に水を引き込む(プリングとしても知られる)ことができる。第2のステップでは、CO
2などの気体を加圧して、水で飽和した(DPS、細孔飽和度、J. Reed (Principles of Ceramic Processing、John Wiley and Sons、1991)の定義による)マトリックス中に流すことで、水を保有する細孔を、粒子の表面上に残存する水の膜以外にまったく含まない状態にすることができる。次いでその後、この膜はCO
2のイオン化媒体として作用して、鉱物との炭酸化反応の進行を可能にする。この種のプロセスは、プッシュ−プル反応、または単にプッシュ−プルという通称で呼ばれる。拡散プロセスに依存するのとは対照的に、この動的な流れによって、新しい反応物質が多孔質マトリックスの近くに存在することが可能となる。この手法は、マトリックスの細孔サイズ分布が、反応性種を拡散プロセスよりも速く供給する、適度に高い流量の流体の通過を許すものである限りにおいて適切であり、供給速度が生成物形成の反応速度と等しいかまたはそれを上回る場合に最適である。加えて、浸透媒体の貫流は、液体媒体が気体媒体よりも3桁大きい速度で熱を伝達するため、高度に発熱的な反応に対してとりわけ有用である。これは特に、厚く、揮発性成分に由来する、モノリシック構造を破損させ得る大きな内圧を発生させ得る熱が内部で発生する可能性のあるモノリシック構造に適する。
【0054】
流体では、拡散が生じなければならない厚さが、根二乗平均変位の計算によって見積もることのできる拡散距離よりも大きい場合、拡散プロセスがプロセスを律速する。例えば、対流のない流体の場合、室温および大気圧における水中でのイオンの拡散は、約0.19cmである。材料の厚さがこの長さスケールを上回る、多くの用途が存在する。これらの場合、当業者に公知の任意の好適な手段による、流体の機械的な対流が必要である。別の代替手段は、溶媒または反応性種を気体種として導入することである。これがなされる場合、拡散距離は9cmまで増加する。さらなる実施形態では、超臨界条件を用いて、液体と気体の間に介在する輸送速度を実現することができる。
【0055】
鉱物ケイ酸塩炭酸化反応が速やかに進行するためには、気体補助HLPS、または言い換えれば、気体補助水熱液相高密度化(g−rHLPD)(
図1)を考える。g−rHLPDでは部分的に浸透された細孔空間を利用して、これにより、気体拡散によって多孔質プレフォームを迅速に浸透させ、細孔中の薄い界面溶媒膜を、溶解したCO
2で飽和させることが可能となる。CO
2系種は純水中での溶解度が低い(25℃、1atmで1.5g/L)。よって、顕著な炭酸塩変換を可能にするためには、かなりの量のCO
2が多孔質プレフォーム全体に、連続的に供給および分配されなければならない。気相拡散の利用により、液相中での同一の時間における可溶性CO
2の拡散の拡散距離に対して、100倍増の拡散距離がもたらされる。この部分的に浸透された状態により、ある一定の期間で高い炭酸化度まで反応を進行させることが可能になる。例えば、部分的に浸透された状態では、47.5±2.7mol%というCaSiO
3のCaCO
3およびSiO
2への変換が、90℃の温度および2.36atmの圧力において、約19hで実現できる。細孔が水で完全に充填されていることを除いてまったく同じ反応条件を維持した場合、結果として、3.8±0.5mol%という実質的により低い炭酸塩化変換となる。
【0056】
g−rHLPDに適した装置は、開気孔率が周期的にまたはプロセス全体にわたって維持されるように、液体水の多孔質素地(未反応)への往復輸送を可能にするように設計された、オートクレーブである。多くの場合、浸透溶液の輸送に注意を払うことによって反応性の増強が得られるので、反応の加圧は必要とされず、これにより、オートクレーブの必要性が排除され、その結果、従来の容器またはさらにはテントを使用してHLPSを実施することができる。食品用蒸し器などの簡単なオートクレーブを使用しての上記の可能性は、水蒸気をオートクレーブの加熱された底部からより低温の蓋へと還流させ、水を試料上に滴下することによって実現される。蓋に備え付けられたファンは、水およびCO
2種の分配を一様化する。この研究は公開されている研究とは異なっており、公開されている研究においては、(1)反応(例えば、この場合は炭酸化)の前と最中の両方での、多孔質プレフォーム全体にわたる、多孔質体の細孔飽和度(DPS)に対する水濃度の選択、および(2)水が多孔質体にどのように送達されるかについての方法に対して、注意が払われていなかった。代わりに、先行技術では、多孔質プレフォームの沈殿中に任意の量の残留水を使用しており、DPSの重要性を認識しておらず、CO
2および水蒸気を収容したオートクレーブ内で後処理を実施しており、DPS値を100%未満の値に維持する、反応中の最適な水送達法を明らかにすることがなかった。水濃度の制御およびLTS中における多孔質プレフォーム中への送達のその方法は、炭酸化動力学に顕著に影響を与える。この点ならびに反応性および反応収率を向上させる(高い割合で反応する)条件を見出すためにDPS概念を実践するという構想を実証するために、試料を、ミクロ多孔質Gore−Tex(商標)層から作製された容器中で反応させた。Gore−Tex(商標)は、水飽和雰囲気中において水蒸気種が試料を出入りすることのみを可能にし、ここでは、CO
2活性が、2.36atmの圧力および90℃の温度において一定となる。水のプールを試料の下に設置して、雰囲気を飽和させ、反応時間の全体にわたって反応に水蒸気を共存させる。このように、水蒸気の平衡化によって多孔質マトリックス中の選択された水含有量は一定となり、多孔質マトリックス中で蒸発は生じない。代わりに、多孔質マトリックスは、毛管流を使用して、質量損失を伴わずにマトリックス中の水を一様に再分配する。19hの反応では、[DPSが0vol%から60vol%へと増加するとき]炭酸化度は31.3mol%からこの値を超えて49.6mol%の最大レベルまで変化し、DPSが80%へと増加するとき、炭酸化度は35.6mol%に落ち込み、DPSが100%であるとき、3.8mol%に落ち込む。これらのデータは、細孔中の最適な量の液体水が炭酸とカルシウム種の両方のイオン化にとって必須であるために、それによって反応の収率および速度が加速されることを実証している。しかし、浸透溶液レベルは、CO
2ガスが、水相である細孔境界において多孔質マトリックス固体/液体境界へ溶解および拡散する前に、気体拡散によって多孔質マトリックス中に拡散できるように、十分に低い必要がある。これはすべて
図1において概略的に示されている。
【0057】
図1 g−rHLPDプロセスの概略:A−乾燥多孔質CaSiO
3プレフォーム;B−部分湿潤CaSiO
3プレフォーム;C−最終的な高密度化モノリシック固体。ステップ1〜4は、個々の細孔中で生じる炭酸化−高密度化プロセスを表す:ステップ1−CO
2を有する部分湿潤細孔;ステップ2−CO
2の拡散、溶解および解離;ステップ3−水素イオンによるCaSiO
3の溶解;ステップ4−固体の沈殿。ステップ4の完了後、様々な動力学的因子(例えば、厚いSiO
2反応層)がプロセスを減速するまで、このプロセスがステップ2〜4に続いて連続的に起こる。
【0058】
再び
図1を参照すると、粒度分布は単分散である一方、多くの実際の場合では、粒度は多分散であり、粒子のパッキングは、パッキング立体配置が各階層レベルで繰り返されるかまたは各レベルで変化する階層構造を含め、広範な構成をとることができる。パッキング構造が長距離秩序、短距離秩序を有し得ることも、また、長さスケールが小さいにせよ、中間にせよ、大きいにせよ、あらゆる長さスケールにおいてランダムレベルの秩序をとることもできることも、想到される。あるいは、短距離秩序は小さい長さスケールでのみ持続し、中間および大きい長さスケールではランダムであってもよい。粒子を小さい長さスケールでランダム秩序スケールによってパッキングすることも可能であるが、このとき、これらのランダム秩序の領域は、大きい長さスケールで周期的に分布し得る。これらの例から、粒子を多くの様々な立体配置でパッキングすることができ、その並び方がほぼ無限大であることは明確である。したがって、すべての可能性を定義する意図はない。並び方がほぼ無限大であることを認めると、パッキング密度が、大きい長さスケール、中間の長さスケールおよび小さい長さスケールで繰り返す秩序立った階層パッキングをともない、小さい値から99vol%までの高い値に変動し得ることが想到される。あるいは、パッキング構造が、多孔質マトリックス中に粒子または無機ポリマーのフラクタルまたは樹枝状パッキングを有する、エアロゲルの特性を示す場合、パッキング密度は0.04vol%まで低くなり得る。
【0059】
パッキング密度が広い範囲にわたって変動し得ることを考えると、99vol%パッキングの細孔を飽和させるために必要な水の量は非常に少量であり、一方、0.04vol%での細孔を飽和させるために必要な量は非常に大量である。よって、気相と水との間および水と固相との間の迅速な反応を可能にする開気孔率を維持することが要求される場合、高速な反応を可能にする最適な水の量はそれぞれの系について異なると、当業者は想到する。
【0060】
系の多孔性の量を知ることは有用であるが、必要とされる水の量は、細孔のサイズ、細孔の形状、細孔の屈曲度、および細孔のいずれかが偶発的に閉気孔になるか否かにも依存する。閉気孔は、多孔質マトリックスのかなりの部分を溶解させるその後の反応によって開気孔に変化しない限り、浸透溶液に対する反応部位を生じない。加えて、上記の議論では、多孔質構造は一様であると仮定している。しかし、細孔構造が一様でない場合、最適な水の濃度は、水で飽和した不均一構造の領域に依存する。とはいえ、多分散細孔を有する系を考慮すると、浸透溶液が、小さい細孔を、より大きい細孔が部分的に充填された状態を維持しつつ、完全に充填することができると想到される。このような状況は、開気孔が充填された細孔と適度に近接しているという条件に限り、許される。近傍の正確な距離は、その距離が温度、圧力ならびに気体、浸透溶液および多孔質マトリックスの組成に依存するため、精確には定義できない。
【0061】
上記の議論は、多孔度を説明し得るやり方が無数に存在するため、反応速度を最適化するために必要な水(例えば、溶媒)の精確な量を特定することは不可能であることを証明している。よって、最適な水濃度は、パッキング密度が95vol%のときは1vol%(DPS=20%)となり得るが、パッキング密度が62vol%のときは24vol%(DPS=63%)になり得る。正しい多孔度を予測する方法は、多孔度、細孔サイズ分布、細孔形状、屈曲度、マトリックス中における開気孔の閉気孔に対する割合、および反応している物体のあらゆる長さスケールにおける種々の型または細孔の一様性に関する詳細な情報を用いることで可能となると想到される。したがって、本発明の重要な側面は、気体が多孔質構造中を対流または拡散し、溶媒に溶解して溶媒と反応し、その後多孔質マトリックスと反応することが重要である場合はいつでも、最適な水濃度は、非常に広い範囲の水濃度にわたって実際に変化し得るという認識である。
【0062】
本発明のもう1つの重要な点は、本明細書において述べたように、水を多孔質マトリックス中に分配するための様々なやり方が存在すると認識することである。例えば、完全に飽和した多孔質成形体が水で飽和している場合、乾燥を使用して開気孔を作り出すことができる。しかし、この構造における細孔は、多孔質マトリックスの外表面から内部塊へと進むにつれ、異なるDPS値を有する。外表面では、細孔は水を含有していないが、構造の内側へと移動すると、細孔は部分的に充填されており、さらに構造内へと移動すると、細孔は完全に充填されている。この構造は明らかにDPS値の大きな勾配を有しており、よって、この構造における反応速度は、勾配DPS構造が静的であり続けると仮定すると、構造の外側から構造の内側に向かって変化する。しかし、乾燥ステップを即座に停止し、多孔質マトリックスからの水の損失が停止するように相対湿度を平衡値に調整すると、毛管現象が充填された細孔の中身を部分的に充填された細孔内へと移すように駆動し、部分的に充填された細孔は空の細孔を部分的に充填し、全体の構造ははるかにより一様な水の分布を有することになる。このような状況は、一様な系ではすべての細孔が利用しやすいためにより多くの反応部位が利用可能であるので、非一様な系は一様な系ほど速くは反応しないという状況である。このように、この例は、多孔質マトリックス中の水の分配がいかに等しく重要であるかを示している。したがって、浸透溶液の成分(溶媒、反応性種)の添加法に加え、最適な水濃度もまた、多孔質構造が均一または不均一のいずれに維持されるかに依存する。よって、最適な水濃度が特定されなければならないいかなる状況においても、均一性についての記述は、なぜある特定の水濃度によって最速の反応速度が生じるのか、ならびに、高密度化反応を実施する度ごとにまさに同一の条件一式をどのようにして再現するかについて理解を進める上で、重要である。溶媒、または言い換えれば水の分配が一様でない状況では、アニーリングなどのプロセスを実施して水を再分配することができるという指摘も、重要である。水の場合、これは制御された湿度環境中で行うのが最善であり、これにより、水は試料から蒸発しない。代わりに、水は単に開気孔中を流れて、マトリックス中の種々の細孔間で流体の毛管力をバランスさせる。
【0063】
図2〜4は、気相としてのCO
2および細孔構造中に液体水を伴う炭酸化反応が、所与のCaSiO
3結合剤の炭酸化度を最大化する最適なDPS値をどのように示すかについての3つの例である。
【0064】
図2中のデータは、以下の方法によって収集された。
【0065】
g−rHLPDに適した装置は、開気孔率が周期的にまたはプロセス全体にわたって維持されるように、液体水の多孔質素地(未反応)への往復輸送を可能にするように設計された、オートクレーブである。多くの場合、浸透溶液の輸送に注意を払うことによって反応性の増強が得られるので、反応の加圧は必要とされず、これにより、オートクレーブの必要性が排除され、その結果、従来の容器またはさらにはテントを使用してHLPSを実施できる。食品用蒸し器などの簡単なオートクレーブを使用しての上記の可能性は、オートクレーブの加熱された底部からより低温の蓋へと水蒸気を還流させ、水を試料上に滴下することによって実現される。蓋に備え付けられたファンは、水およびCO
2種の分配を一様化する。
【0066】
g−rHLPDでは部分的に浸透された細孔空間を利用して、これにより気体拡散によって多孔質プレフォームを迅速に浸透させ、細孔中の薄い液体界面溶媒膜を、溶解したCO
2で飽和させることが可能となる。CO
2系種は純水中での溶解度が低い(25℃、1atmで1.5g/L)。よって、顕著な炭酸塩変換を可能にするためには、かなりの量のCO
2が多孔質プレフォーム全体に連続的に供給および分配されなければならない。気相拡散の利用により、液相中での同一の時間における可溶性CO
2の拡散の拡散距離に対して、100倍増の拡散距離がもたらされる。約1.88g/ccのバルク密度を有するウォラストナイト多孔質マトリックスを、湿式加圧によって調製した。このマトリックスに部分的に浸透させることにより、ある一定の期間で高い炭酸化度まで反応を進行させることができる。例えば、部分的に浸透された状態では、47.5±2.7mol%というCaSiO
3のCaCO
3およびSiO
2への変換が、90℃の温度および2.36atmの圧力において、約19hで実現できる。細孔が水で完全に充填されていることを除いてまったく同じ反応条件を維持した場合、結果として、3.8±0.5mol%という実質的により低い炭酸塩化変換となる。
【0067】
この点ならびに反応性および反応収率を向上させる(高い割合で反応する)条件を見出すためにDPS概念を実施するという構想を実証するために、試料をミクロ多孔質Gore−Tex(商標)層から作製された容器中で反応させた。Gore−Tex(商標)は、水飽和雰囲気中において水蒸気種が試料を出入りすることのみを可能にし、ここでは、CO
2活性が2.36atmの圧力および90℃の温度において一定となる。水のプールを試料の下に添加して、雰囲気を飽和させ、反応時間の全体にわたって反応に水蒸気を共存させる。このように、水蒸気の平衡化によって多孔質マトリックス中の選択された水含有量は一定となり、多孔質マトリックス中で蒸発は生じない。代わりに、多孔質マトリックスは、毛管流を使用して質量損失を伴わずにマトリックス中の水を一様に再分配する。湿式加圧法を使用して、1.83〜1.86g/ccのバルク密度を有する多孔質マトリックスを調製した。19hの反応では、[DPSが0vol%から60vol%へと増加するとき]炭酸化度は31.3mol%からこの値を超えて49.6mol%の最大レベルまで変化し、DPSが80%へと増加するとき、炭酸化度は35.6mol%に落ち込み、DPSが100%であるとき、3.8mol%に落ち込む。これらのデータが
図2にプロットされている。これらのデータは、60vol%のDPSにおいて細孔中の液体水溶媒の最適な量が、19hプロセスにおける反応収率を最大化することを実証している。
【0068】
さらに、
図3はCarmel Quartz組成物(8×8×1.5”の振動打設物、90℃、20PSIGで反応させた)を表し、
図4は1−2−3組成物(8×8×2”の試料サイズ、90℃、20PSIG、約90%RH(約90%相対湿度)で反応させた)を表す。これらのグラフのそれぞれにおいて、試料サイズ、形状、反応性ウォラストナイト、反応時間、反応温度、相対湿度および反応器の設計がすべて異なるという点において、系は互いに異なっていたが、それでもなお各系は、物質輸送および反応速度が最適化されて、形成される炭酸塩の量を最大化する最適な濃度を、その系自体の内では一貫して示していた。最適なDPS値は、20から60vol%までで変動した。これらの場合では、すべての多孔質マトリックスが約60%の相対密度を有している。したがって、多孔質マトリックスが著しくより高密度またはより低密度であったならば、細孔サイズおよび屈曲度が同じであると仮定すると、この値の範囲はさらにより大きくなり得る。細孔サイズおよび屈曲度が異なっていれば、値はさらに広範囲にわたって変動する可能性がある。したがって、炭酸化度および炭酸化速度を最適化する際に重要となるステップは、所与のいかなる水送達法についても最適なDPS値が存在することを認識することである。この値を知っていると、反応時間の長さを最小化するための理想的な条件を決定することが可能になると共に、水熱液相焼結反応によってより多くの結合相を結晶化させることが可能になる。
【0069】
多孔質マトリックス全体に圧力勾配をかけることによって気体種が機械的に対流させられる場合、本発明はさらに改善され得る。気体が反応性種である場合、溶媒流体で充填された細孔は、細孔から流出して、細孔上に、反応性種気体を吸収することができる溶媒の膜を残す。あるいは、部分的に充填された細孔は、気体が細孔中を流れることを可能にし、このとき、溶媒は中を流れる気体の一部分を吸収する。
【0070】
好ましい手法では、低コストのプロセスの開発を可能とするために、低温および低圧を利用するべきである。したがって、大きな割合の生成物が所望される反応に対して、細孔中にごく少量の溶媒を保持して反応性種の気体拡散を容易にするプロセスは、静止流体を利用するプロセスよりも好ましい。気体前駆体が利用できない場合、浸透流体を、機械的に多孔質マトリックス中を迅速に対流させる方法は、実行可能な代替的手法である。
【0071】
反応物質および溶媒種を細孔に効果的に輸送することができる、多くの装置設計が存在する。これらの設計の一部は、フィルタープレス、噴霧チャンバー、オートクレーブおよびスチーマーなどの従来の反応器設備を含む。
【実施例1】
【0072】
1)外部、水蒸気による輸送
1.1 混合
11.117kgのNYAD400、20.39kgの石工工事用砂、16.76kgの1/4”骨材、および16.76kgの#67骨材を別々のバケツに集めた(なお、略号「”」はインチを、「’」はフィートを示す。)。次いで、4.9kgの脱イオン水、55mlのGlenium、および8gのウェランガムを予備混合することによって、バッチ水を調製した。#67骨材および1/4”骨材をMarshall towコンクリートミキサー内にロードし、バッチ水溶液のうちのおよそ1/4を骨材上に注いだ。ミキサーを始動し、最大速度で1分間作動させた。ミキサーを作動させながら、石工工事用砂を注ぎ入れた。さらなる1分間の混合後、ミキサーを作動させながら、NYAD400を直接ミキサー中に添加した。ミキサーをさらに1分間作動させ、次いで、ミキサーを作動させながら、残りのバッチ水を混合物中に直接添加した。次いで、バッチを2分間混合し、ミキサーを停止した。ミキサーの側面をパテナイフで掻き取って付着した材料を除去した。再びミキサーを始動し、さらに3分間最高速度で作動させた。ミキサーを停止させ、混合物を5ガロンバケツに注ぎ入れた。
【0073】
1.2 打設
1’×1’×6”の型枠を、WD−40を布切れに噴霧して清浄な型枠下部の内部表面を拭くことによって潤滑した。卓上の秤を使用して、型枠の重量を記録した。潤滑した型枠をVibco振動台上に置いた。混合物を、こて、スコップを用いてまたは手でバケツから取り出し、型枠を内部の約1/4まで充填した。次いで、型枠を約1分間または混合物が打設物を形成するまで、60%の出力で振動させた。この工程を、縁まで完全に打設物になるまで繰り返した。試料の最終重量を記録した後、空気乾燥するための場所で終夜保管した。
【0074】
1.3 乾燥
試料を終夜空気乾燥する。24hrの空気乾燥後、試料を90℃のオーブンに入れた。90℃で24hr後、試料を取り出して脱型した。試料をオーブン中に戻して、反応前にさらに48hr完全に乾燥させた。
【0075】
1.4 反応
試料を硬化(反応)させるために使用したオートクレーブは、直径7フィート、長さ12フィートを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを15分で−14psigまで排気した。オートクレーブを147.5℃の加熱したCO
2ガスおよび蒸気で充填し直して試料にさらなる熱を与え、試料のローディングおよび気体の膨張の間に生じた熱損失を補った。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。合計圧力が10psigに達したときに、CO
2を遮断した。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。系を45minから1hrの間平衡化させ(合計psiは約16psigに到達)、次いで、加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。試料を19時間硬化させた。
【0076】
反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は35%であった。
【実施例2】
【0077】
外部、部分的湿潤
2.1 混合
300.6gのNYAD400および601.1gのASTM砂を、材料を別々のプラスチック容器に秤量することによって集めた。ビーカーを89.46gの脱イオン水(DI)で満たした。DI水をHobart NSUミキサーのミキシングボウル中に注いだ。NYAD400をミキシングボウル中の水に直接投入した。ミキシングボウルをミキサー内にロードし、混合羽根を挿入した。次いで、NYAD400および水を低速(#1設定)で30秒間混合した。30秒後、30秒の時間にわたって、ミキサーを作動させながらASTM砂をミキサーボウルに注ぎ入れた。ミキサーを停止させ、速度#2に切り替えた。バッチを30秒間混合する。ミキサーを停止させ、ミキシングボウルをゴム製のへらで掻き落としてボウルの側面から付着した材料すべてを除いた。Glenium7500をピペットで直接混合物の上に添加した。混合を速度#2で1分間継続した。ミキシングボウルをミキサーから取り外し、打設所に運んだ。
【0078】
2.2 打設
50ミリメートル立方体型枠を、WD−40を布切れに噴霧して清浄な型枠下部の内部表面を拭くことによって潤滑した。潤滑した型枠をVibco振動台上に置いた。混合物を手でミキシングボウルから取り出し、1個の50mm立方体型枠を形成している立方体3つを内部の約2分の1まで充填した。立方体型枠を、約2分間または混合物が打設物を形成して表面が滑らかに見えるようになるまで、60%の出力で振動させた。この工程を、打設物がわずかに溢れるまで繰り返した。こての鋭い刃を鋸の動きで使用して、立方体形状の打設物スラリーを型枠の縁と水平にした。
【0079】
2.3 反応
打設後、2”×2”立方体である試料を最初に110℃の乾燥オーブン中で完全に乾燥させた。乾燥後、これらを室温に冷却した。これらを冷却したら、試料を、6つの面すべてから均等に脱塩素水で濡らした。試料を60℃の予備加熱したオートクレーブ内にロードした。試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径12インチ、長さ20インチを有する、ステンレス鋼製水平ユニットである。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを5分で−13psigまで排気した。オートクレーブを水タンクで平衡化して水蒸気をオートクレーブ内に入れた。次いで、CO
2ガスを合計0psigに達するまで添加した。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを3600RPMで始動した。オートクレーブの温度を60℃に設定し、63℃の水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。試料を20hr、この状態の系で硬化させた。
【0080】
反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、110℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は57%であった。
【0081】
2.4 試験
モルタル立方体の寸法は2”である。型枠の厳密に平坦な表面と接触していた試験片の面に、荷重をかけた。Gilson MC−300PRをメカニカルテスターとして使用した。試験の荷重速度を5〜100psi/sの範囲に調整した。圧縮強度は10338psiであった。
【実施例3】
【0082】
3)外部、オートクレーブ内での噴霧による:
3.1 混合
89.610kgのNycor100ウォラストナイト(NYCO Minerals Willsboro NY)、120.4kgのドロマイト質石灰岩DF1000(Specialty Minerals、Canaan、CT)、64.87kgのNYAD400ウォラストナイト(NYCO Minerals Willsboro NY)、および4.18kgのMultifex−MM沈殿炭酸カルシウム(Specialty Minerals、Canaan、CT)をLancaster K4ミキサー中に添加した。すべての固体成分をミキサーに添加した後、蓋を閉じ、電源を入れ、ミキサーのパン、プラウおよびローターを始動した。ローターを順方向で1700rpmに設定し、2分間ブレンドした。予備混合した脱イオン水(25.66kg)およびacumer 9400(Rohm Haas)(259g)の溶液のうちの半分を混合プラットホーム底部の水タンク中にロードした。2minの乾燥混合が完了したら、ローターのモーターを停止させ、逆方向に切り替えた。ローターのモーターを再始動し、1700rpmに達したときに、acumer溶液を混合物中に添加した。1分間待った後、この工程を繰り返して残りのacumer溶液を添加した。ミキサーを3.5分間作動させ、顆粒を容器内に移した。
【0083】
3.2 打設
内部寸法5’×2’×1”を有するアルミニウム製ハニカム型枠を、WD−40で拭くことによって潤滑した。5’×2’の寸法を有する1片のFibatape Crackstopメッシュを切断した。潤滑した型枠をVibco振動台の上に置き、クランプで台上に固定した。型枠を途中まで顆粒で満たし、約5から10分、スラリーが形成するまで最大振動数で振動させた。顆粒の第2の層を型枠中に添加し、再び振動させた。打設物が完全に形成された後、切断しておいたメッシュをスラリーの表面上に置き、表面になでつけた。試料を90℃に予備加熱されたオーブン中で完全に乾燥させ、試料の乾燥重量を測定した。
【0084】
3.3 反応
試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径7フィート、長さ12フィートを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを15分で−14psigまで排気した。オートクレーブを147.5℃の加熱したCO
2ガスおよび蒸気で充填し直して試料にさらなる熱を与え、試料のローディングおよび気体の膨張の間に生じた熱損失を補った。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。合計圧力が10psigに達したときに、CO
2を遮断した。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。系を45minから1hrの間平衡化させ(合計psiは約16psigに到達)、次いで、加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。1つの試料につき2つの噴霧ノズルを使用し、50ミクロン未満の液滴サイズで、100psiにおいて1分当たり0.036ガロンの割合で、90℃の熱水を試料に1/2時間噴霧した。CO
2の設定点を10psigに減じた。試料を12.5時間硬化させた。反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は50%であった。
【実施例4】
【0085】
4)界面活性剤を含有する水溶液による外部部分的湿潤
4.1 混合
50.650kgのNYCO 400ウォラストナイト(NYCO Minerals Willsboro NY)、86.95kgのCarmel quartz(粉砕石英、Kafka Granite)、64.19kgの石工工事用砂(North Brunswick Construction Materials、NJ)をLancaster K4ミキサー中に添加した。
【0086】
すべての固体成分をミキサーに添加した後、蓋を閉じ、電源を入れ、ミキサーのパン、プラウおよびローターを始動した。ローターを順方向で1700rpmに設定し、2分間ブレンドした。予備混合した脱イオン水(25.66kg)およびacumer9400(Rohm Haas)(259g)および30gのウェランガム(Walen gum)の溶液のうちの半分を混合プラットホーム底部の水タンク中にロードした。2minの乾燥混合が完了したら、ローターのモーターを停止させ、逆方向に切り替えた。ローターのモーターを再始動し、1700rpmに達したときに、acumer溶液を混合物中に添加した。1分間待った後、この工程を繰り返して残りのacumer溶液を添加した。ミキサーを3.5分間作動させ、顆粒を容器内に移した。
【0087】
4.2 打設
内部寸法8”×8”×1”を有するTeflon被覆型枠をWD−40で拭くことによって潤滑した。潤滑した型枠をVibco振動台の上に置き、クランプで台上に固定した。型枠を途中まで顆粒で満たし、約5から10分、スラリーが形成するまで最大振動数で振動させた。顆粒の第2の層を試料厚さが3/4”に達するまで型枠中に添加し、再び振動させた。試料を90℃に予備加熱されたオーブン中で完全に乾燥させ、試料の乾燥重量を測定した。
【0088】
4.3 反応
反応前に試料を完全に乾燥させた。乾燥後、これらを室温に冷却した。これらを冷却したら、第1の組の試料を1.5wt%のAkzo Nobel Ethylan 1008SA溶液で濡らし、第2の組の試料を1.5wt%のAkzo Nobel TD100溶液で濡らした。溶液対試料比は4.75wt%であった。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径12インチ、長さ20インチを有する、ステンレス鋼製水平ユニットである。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを5分で−13psigまで排気した。オートクレーブを水タンクで平衡化して水蒸気をオートクレーブ内に入れた。次いで、CO
2ガスを合計0psigに達するまで添加した。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。試料を19hr、この状態の系で硬化させた。
【0089】
反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、110℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。第1の組の試料の反応進行度は75%であり、第2の組では72%であった。
【実施例5】
【0090】
5)内部、部分乾燥
5.1 混合
11.117kgのNYAD400、20.39kgの石工工事用砂、16.76kgの1/4”骨材、および16.76kgの#67骨材を別々のバケツに集めた。次いで、4.9kgの脱イオン水、55mlのGlenium、および8gのウェランガムを予備混合することによって、バッチ水を調製し、#67骨材および1/4”骨材をMarshalltowコンクリートミキサー内にロードし、バッチ水溶液のうちのおよそ1/4を骨材上に注いだ。ミキサーを始動し、最大速度で1分間作動させた。ミキサーを作動させながら、石工工事用砂を注ぎ入れた。さらなる1分間の混合後、ミキサーを作動させながら、NYAD400を直接ミキサー中に添加した。ミキサーをさらに1分間作動させ、次いで、ミキサーを作動させながら、残りのバッチ水を混合物中に直接添加した。次いで、バッチを2分間混合し、ミキサーを停止した。ミキサーの側面をパテナイフで掻き取って付着した材料を除去した。ミキサーを再び始動し、最高速度でさらに3分間作動させた。ミキサーを停止させ、混合物を5ガロンバケツに注ぎ入れた。
【0091】
5.2 打設
1’×1’×6”の型枠を、WD−40を布切れに噴霧して清浄な型枠下部の内部表面を拭くことによって潤滑した。卓上の秤を使用して、型枠の重量を記録した。潤滑した型枠をVibco振動台上に置いた。混合物を、こて、スコップを用いてまたは手でバケツから取り出し、型枠を内部の約1/4まで充填した。次いで、型枠を約1分間または混合物が打設物を形成するまで、60%の出力で振動させた。この工程を、縁まで完全に打設物になるまで繰り返した。空気乾燥するための場所で終夜保管する前に、試料の最終重量を記録した。
【0092】
5.3 乾燥
試料を終夜空気乾燥する。24hrの空気乾燥後、試料を90℃のオーブンに入れた。90℃で24hr後、試料を取り出して脱型した。試料をオーブン中に戻して、試料を2.2wt%の残留水となるまで乾燥させた。
【0093】
5.4 反応
試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径7フィート、長さ12フィートを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを再び147.5℃の加熱したCO
2ガスおよび蒸気で充填し直して試料にさらなる熱を与え、試料のローディングおよび気体の膨張の間に生じた熱損失を補った。オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。合計圧力が10psigに達したときに、CO
2を遮断した。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。系を45minから1hrの間平衡化させ(合計psiは約16psigに到達)、次いで、加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。試料を19時間硬化させた。
【0094】
反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は53%であった。
【実施例6】
【0095】
6)内部、湿式加圧
6.1 混合
1.871kgのNYAD400、7.412kgの砂、および2.470kgの1/4”骨材を別々の容器に集めた。すべての乾燥材料をK−labミキサーのパン内にロードした。ミキサーヘッドを下げ、次いで、20rpmの混合パン速度で2分間電源を入れた。2分後、816gの水道水を混合物に添加し、ミキサーをさらに4分間作動させた。
【0096】
6.2 打設
ペーバー混合物を、材料で溢れた6つの「空洞」中にロードした。プラスチック製スクーパーを使用して材料をミキサーパンから持ち上げて空洞中へ落とした。混合物を空洞中に注いだ後、ヘッドを下げ、それ以上動かせなくなるまで材料に押しつけた。次に、8秒間振動を入れた。
【0097】
6.3 反応
試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径7フィート、長さ12フィートを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。成形直後に、ペーバーを60℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、底部および頂部の流出口を容器内雰囲気に開放して、オートクレーブを75℃に予備加熱したCO
2で5分間パージした。バルブを閉じてCO
2圧を0.5PSIGに調節する。次いで、75℃に予備加熱した水を反応器の底部全体で再循環させて水蒸気圧を系内に発生させることで、系内の高い相対湿度を保持した。水蒸気圧の発生後、容器を数回パージして圧力を0.5PSIGに維持する。60℃で熱平衡に達し、圧力が安定化し、CO
2分圧の調節のみによって圧力を0.5PSIGに調節したら、気体濃度は、CO
2が約83.7%で、H
2O蒸気が16.3%となる。試料をこれらの条件下で19時間保持した後、これらを取り出して100℃および0.7%RHの産業用排気オーブン中で2日間乾燥させる。反応進行度を、混合した最初の乾燥粉末と比較した重量増加に基づいて計算したところ、これらの手順についての反応の平均は58%である。
【0098】
6.4 試験
Gilson MC−300PRをメカニカルテスターとして使用した。試験の荷重速度を5〜100psi/sの範囲に調整した。圧縮強度は10174psiであった。
【実施例7】
【0099】
7)吸湿性溶液を用いた打設
7.1 混合
11.117kgのNYAD400、20.39kgの石工工事用砂、16.76kgの1/4”骨材、および16.76kgの#67骨材を別々のバケツに集めた。次いで、4.9kgの脱イオン水、55mlのGlenium、および8gのウェランガムを予備混合することによって、バッチ水を調製した。#67骨材および1/4”骨材をMarshalltowコンクリートミキサー内にロードし、バッチ水溶液のうちのおよそ1/4を骨材上に注いだ。ミキサーを始動し、最大速度で1分間作動させた。ミキサーを作動させながら、石工工事用砂を注ぎ入れた。さらなる1分間の混合後、ミキサーを作動させながら、NYAD400を直接ミキサー中に添加した。ミキサーをさらに1分間作動させ、次いで、ミキサーを作動させながら、残りのバッチ水を混合物中に直接添加した。次いで、バッチを2分間混合し、ミキサーを停止した。ミキサーの側面をパテナイフで掻き取って付着した材料を除去した。再びミキサーを始動し、さらに3分間最高速度で作動させた。ミキサーを停止させ、混合物を5ガロンバケツに注ぎ入れた。
【0100】
7.2 打設
8”×8”×1”の型枠を、WD−40を布切れに噴霧して清浄な型枠下部の内部表面を拭くことによって潤滑した。卓上の秤を使用して、型枠の重量を記録した。潤滑した型枠をVibco振動台上に置いた。混合物を、こて、スコップを用いてまたは手でバケツから取り出し、型枠を内部の約1/4まで充填した。次いで、型枠を約1分間または混合物が打設物を形成するまで、60%の出力で振動させた。この工程を、打設物が3/4”まで充填するまで繰り返した。空気乾燥するための場所で終夜保管する前に、試料の最終重量を記録した。
【0101】
7.3 乾燥
試料を終夜空気乾燥する。24hrの空気乾燥後、試料を90℃のオーブンに入れた。90℃で24hr後、試料を取り出して脱型した。試料をオーブン中に戻して、反応前にさらに48hr完全に乾燥させた。
【0102】
7.4 反応
試料を、15wt%の炭酸ナトリウムおよび15wt%プロピレングリコールを用いて別々に打設した。炭酸ナトリウムは水を保持するために使用される吸湿性の塩であり、プロピレングリコールは低い表面張力および低い蒸気圧を有し、水を保持することをおよび試料中で水を一様な分布に保つことを助ける。試料を90℃で終夜乾燥させる。試料を、試料の合計固体質量の2%の水を添加することで、上面から再度濡らす。試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径7ft、長さ12ftを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを15分で−13psigまで排気した。オートクレーブを120℃の加熱したCO
2ガスおよび蒸気で充填し直して試料にさらなる熱を与え、試料のローディングおよび気体の膨張の間に生じた熱損失を補った。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。試料をこの条件下で合計19時間保持した。反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は、炭酸ナトリウム試料については45%であり、プロピレングリコールについては75%であった。
【0103】
7.5 試験
試料からの各試験片を、試料の厚さに等しい寸法で切断した。試料を乾燥させ、寸法を測定した。試験を、Instron4206メカニカルテスターを使用することによって行った。試験ヘッドの速度は0.5mm/minであった。最大圧縮荷重における圧縮応力を記録した。圧縮強度は、それぞれ5676psiおよび3019psiであった。
【実施例8】
【0104】
8)複数の湿潤および乾燥サイクル
8.1 混合
50.650kgのNYCO400ウォラストナイト(NYCO Minerals Willsboro NY)、86.95kgのCarmel quartz(粉砕石英、Kafka Granite)、64.19kgの石工工事用砂(North Brunswick Construction Materials、NJ)をLancaster K4ミキサー中に添加した。
【0105】
すべての固体成分をミキサーに添加した後、蓋を閉じ、電源を入れ、ミキサーのパン、プラウおよびローターを始動した。ローターを順方向で1700rpmに設定し、2分間ブレンドした。予備混合した脱イオン水(25.66kg)およびacumer9400(Rohm Haas)(259g)および30gのウェランガムの溶液のうちの半分を混合プラットホーム底部の水タンク中にロードした。2minの乾燥混合が完了したら、ローターのモーターを停止させ、逆方向に切り替えた。ローターのモーターを再始動し、1700rpmに達したときに、acumer溶液を混合物中に添加した。1分間待った後、この工程を繰り返して残りのacumer溶液を添加した。ミキサーを3.5分間作動させ、顆粒を容器内に移した。
【0106】
8.2 打設
内部寸法5’×2’×1”を有するアルミニウム製ハニカム型枠を、WD−40で拭くことによって潤滑した。5’×2’の寸法を有する1片のFibatape Crackstopメッシュを切断した。潤滑した型枠をVibco振動台の上に置き、クランプで台上に固定した。型枠を途中まで顆粒で満たし、約5から10分、スラリーが形成するまで最大振動数で振動させた。顆粒の第2の層を型枠中に添加し、再び振動させた。打設物が完全に形成された後、切断しておいたメッシュをスラリーの表面上に置き、表面になでつけた。試料を90℃に予備加熱されたオーブン中で完全に乾燥させ、試料の乾燥重量を測定した。
【0107】
8.3 反応
試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径7フィート、長さ12フィートを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを15分で−14psigまで排気した。オートクレーブを147.5℃の加熱したCO
2ガスおよび蒸気で充填し直して試料にさらなる熱を与え、試料のローディングおよび気体の膨張の間に生じた熱損失を補った。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。合計圧力が10psigに達したときに、CO
2を遮断した。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。系を45minから1hrの間平衡化させ(合計psiは約16psigに到達)、次いで、加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。1つの試料につき2つの噴霧ノズルを使用し、50ミクロン未満の液滴サイズで、100psiにおいて1分当たり0.036ガロンの割合で、90℃の熱水を試料に2から3時間噴霧した。CO
2の設定点を10psigに減じ、冷却装置の電源を入れて試料からの水の除去速度を増加させた。試料を乾燥させながら20時間硬化させた。次いで、湿潤工程を繰り返した。147.5℃の蒸気を再び系に添加し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。系を45minから1hrの間平衡化させ(合計psiは約16psigに到達)、次いで、加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。試料に再び熱水を2から3時間噴霧した。CO
2の設定点を10psigに減じ、冷却装置の電源を入れて試料からの水の除去速度を増加させた。試料を乾燥させながらさらに20時間硬化させた。
【0108】
反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は83%であった。
【0109】
8.4 試験
試料からの各試験片を、試料の厚さに等しい寸法で切断した。試料を乾燥させ、寸法を測定した。試験を、Instron4206メカニカルテスターを使用することによって行った。試験ヘッドの速度は0.5mm/minであった。最大圧縮荷重における圧縮応力を記録した。圧縮強度は、9500psiであった。
【実施例9】
【0110】
9)単一の湿潤および乾燥サイクル
9.1 混合
89.610kgのNycor100ウォラストナイト(NYCO Minerals Willsboro NY)、120.4kgのドロマイト質石灰岩DF1000(Specialty Minerals、Canaan、CT)、64.87kgのNYAD400ウォラストナイト(NYCO Minerals Willsboro NY)、および4.18kgのMultifex−MM沈殿炭酸カルシウム(Specialty Minerals、Canaan、CT)をLancaster K4ミキサー中に添加した。すべての固体成分をミキサーに添加した後、蓋を閉じ、電源を入れ、ミキサーのパン、プラウおよびローターを始動した。ローターを順方向で1700rpmに設定し、2分間ブレンドした。予備混合した脱イオン水(25.66kg)およびacumer9400(Rohm Haas)(259g)の溶液のうちの半分を混合プラットホーム底部の水タンク中にロードした。2minの乾燥混合が完了したら、ローターのモーターを停止させ、逆方向に切り替えた。ローターのモーターを再始動し、1700rpmに達したときに、acumer溶液を混合物中に添加した。1分間待った後、この工程を繰り返して残りのacumer溶液を添加した。ミキサーを3.5分間作動させ、顆粒を容器内に移した。
【0111】
9.2 打設手順:
内部寸法5’×2’×1”を有するアルミニウム製ハニカム型枠を、WD−40で拭くことによって潤滑した。5’×2’の寸法を有する1片のFibatape Crackstopメッシュを切断した。潤滑した型枠をVibco振動台の上に置き、クランプで台上に固定した。型枠を途中まで顆粒で満たし、約5から10分、スラリーが形成するまで最大振動数で振動させた。顆粒の第2の層を型枠中に添加し、再び振動させた。打設物が完全に形成された後、切断しておいたメッシュをスラリーの表面上に置き、表面になでつけた。試料を90℃に予備加熱されたオーブン中で完全に乾燥させ、試料の乾燥重量を測定した。
【0112】
9.3 反応
試料を硬化させるために使用したオートクレーブは、直径7フィート、長さ12フィートを有する、ステンレス鋼製水平間接蒸気ユニットである。試料を90℃に予備加熱したオートクレーブ内にロードした。オートクレーブの扉を閉じた後、オートクレーブを15分で−14psigまで排気した。オートクレーブを147.5℃の加熱したCO
2ガスおよび蒸気で充填し直して試料にさらなる熱を与え、試料のローディングおよび気体の膨張の間に生じた熱損失を補った。オートクレーブ内の圧力が0psigに達したら、オートクレーブのファンを4900RPMで始動した。合計圧力が10psigに達したときに、CO
2を遮断した。オートクレーブの温度を90℃に設定し、95℃の熱水をオートクレーブの底部で循環させて、ユニットを水蒸気で飽和した状態に保った。系を45minから1hrの間平衡化させ(合計psiは約16psigに到達)、次いで、加熱したCO
2ガスのみで充填することによって、オートクレーブの圧力を20psigまで上昇させた。1つの試料につき2つの噴霧ノズルを使用し、50ミクロン未満の液滴サイズで、100psiにおいて1分当たり0.036ガロンの割合で、90℃の熱水を試料に2から3時間噴霧した。CO
2の設定点を10psigに減じ、冷却装置の電源を入れて試料からの水の除去速度を増加させた。試料を乾燥させながら16時間硬化させた。
【0113】
反応した試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃の乾燥オーブン中で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。平均反応進行度は69%であった。
【0114】
9.4 試験
試料からの各試験片を、試料の厚さに等しい寸法で切断した。試料を乾燥させ、寸法を測定した。試験を、Instron4206メカニカルテスターを使用することによって行った。試験ヘッドの速度は0.5mm/minであった。最大圧縮荷重における圧縮応力を記録した。圧縮強度は、13900psiであった。
【実施例10】
【0115】
10)内部チャネルを介した水蒸気
使用した試料は、長さ18インチ、幅4インチ、高さ4インチの、その長さ方向の中心に直径2インチの孔を有する直方体であった。飽和水蒸気を有する60℃のCO
2ガスを、直径2インチの孔を通して6L/minの流量で20hパージした。
【0116】
試料を、さらなる重量損失がなくなるまで、90℃で乾燥させた。反応進行度を、反応中の重量増加に基づいて計算した。反応進行度は40%であった。
【実施例11】
【0117】
11)ΔP、上部から加圧しながら下部から乾燥
11.1 混合
16kgのNYAD400、29.086kgの石工工事用砂、29.086kgの1/4”骨材を別々のバケツに集めた。次いで、5.77kgの脱イオン水、58mlのGlenium、および8gのウェランガムを予備混合することによって、バッチ水を調製した。4分の1インチ骨材をMarshalltowコンクリートミキサー内にロードし、バッチ水溶液のうちのおよそ1/4を骨材上に注いだ。ミキサーを始動し、最大速度で1分間作動させた。ミキサーを作動させながら、石工工事用砂を注ぎ入れた。さらなる1分間の混合後、ミキサーを作動させながら、NYAD400を直接ミキサー中に添加した。ミキサーをさらに1分間作動させ、次いで、ミキサーを作動させながら、残りのバッチ水を混合物中に直接添加した。次いで、バッチを2分間混合し、ミキサーを停止した。ミキサーの側面をパテナイフで掻き取って付着した材料を除去した。ミキサーを再び始動し、最高速度でさらに3分間作動させた。ミキサーを停止させ、混合物を5ガロンバケツに注ぎ入れた。
【0118】
11.2 打設および反応
試料305(6粒子組成)を、100メッシュステンレス鋼スクリーンを有する浸透性強化シートの上に置いた円直径10”のゴム製ガスケット上に載った、直径18”の304ステンレス鋼管中に、高さ1”で打設する。したがって、試料の中心10”の底部は、大気に対して完全に開放されている。管は、頂部から別のステンレス鋼板でガスケット密閉可能である。管を加熱テープで包み、試料上の気体温度が68℃で安定化するまで容器の外殻を加熱する。乾燥CO
2ガス流を3.5PSIG+/−1PSIGで試料の頂部に向けて加圧し、試料の頂部と底部とで圧力差を生じさせる。試料中または試料周囲の流れは、試料の頂部への加圧開始後の出口流を検出することにより、加圧時はほぼ一瞬である。16時間の反応および試料中または試料周囲の乾燥CO
2流の後、試料を取り出した。試料を100℃および0.7%の相対湿度の産業用排気電気オーブン中で4日間乾燥させ、試料から98グラムの残余水を除去した。試料は炭酸化によって質量が430g増加していたが、これは49.5%の炭酸化度に相当する。
【実施例12】
【0119】
12)ΔP、頂部からの加圧
12.1 混合
16kgのNYAD400、29.086kgの石工工事用砂、29.086kgの1/4”骨材を別々のバケツに集めた。次いで、5.77kgの脱イオン水、58mlのGlenium、および8gのウェランガムを予備混合することによって、バッチ水を調製した。4分の1インチ骨材をMarshalltowコンクリートミキサー内にロードし、バッチ水溶液のうちのおよそ1/4を骨材上に注いだ。ミキサーを始動し、最大速度で1分間作動させた。ミキサーを作動させながら、石工工事用砂を注ぎ入れた。さらなる1分間の混合後、ミキサーを作動させながら、NYAD400を直接ミキサー中に添加した。ミキサーをさらに1分間作動させ、次いで、ミキサーを作動させながら、残りのバッチ水を混合物中に直接添加した。次いで、バッチを2分間混合し、ミキサーを停止した。ミキサーの側面をパテナイフで掻き取って付着した材料を除去した。ミキサーを再び始動し、最高速度でさらに3分間作動させた。ミキサーを停止させ、混合物を5ガロンバケツに注ぎ入れた。
【0120】
12.2 打設および反応
試料292−プッシュプルを、100メッシュステンレス鋼スクリーンを有する浸透性強化シートの上に置いた円直径10”のゴム製ガスケット上に載った、直径18”の304ステンレス鋼管中に打設した。したがって、試料の中心10”の底部は、密閉されておらず、流れを制限し湿度を保持し得る3/16”開口部を介して大気と接続する、容器下の密閉チャンバーに露出している。管は、頂部から別のステンレス鋼板でガスケット密閉可能である。管を加熱テープで包み、試料上の気体温度が60℃で安定化するまで容器の外殻を加熱する。乾燥CO
2ガス流を12PSIG+/−3PSIGで試料の頂部に向けて加圧し、試料の頂部と底部とで圧力差を生じさせる。この条件下で2日後、気体の出口流が、試料の下の浸透スクリーンの下にある1/4”出口から検出できる。総日数11日の反応、および試料中または試料周囲の乾燥CO
2流の後、試料を取り出したところ、赤外線銃を使用した固体の平均温度は68℃であった。試料を100℃および0.7%の相対湿度の産業用排気電気オーブン中で8日間乾燥させ、試料から2.17kgの残余水を除去した。試料は炭酸化によって質量が4.556kg増加していたが、これは88%の炭酸化度に相当する。
【0121】
12.3 試験
円筒の寸法は直径4”、長さ8”であった。試験用の円筒を、両端を平行に研磨するかまたは必要であれば頂部を切り取ることによって調製した。50〜70デュロネオプレンパッドを使用して、試料に非接着キャップを被せた。両端が研磨された試料の場合、被験試料にキャップを被せなかった。Gilson MC−300PRメカニカルテスターを使用して、28〜42psi/sの荷重速度で試料を試験した。圧縮強度は、9936psiであった。
【0122】
図2のデータを収集する実験についての全般的な実験の詳細:
実験の手順および結果
原材料
すべての実験を、市販のCaSiO
3粉末(NYAD400、NYCO Minerals Inc.、Willsboro、NY)をそのまま使用して実施した。表2は、フラウンホーファー回折(Mastersizer2000、Malvern Instruments、Ltd.、Westborough、MA)で測定された、粒度分布データおよびHeピクノメトリー(AccuPyc1330、Micromeritics Instrument Corporation、Norcross、GA)で測定された見かけ粉末密度を示す。粒度測定のため、粉末の約1wt%懸濁液数滴をMastersizer内に添加した。ウォラストナイト粉末に対して使用された屈折率は、1.63(S1)であった。見かけ粉末密度測定のため、100℃で約30min間乾燥させた約4.5gの粉末を3.5cm
3の金属製カップ中で使用した。それぞれの特性決定のため、3回の実験を1組で実施した。表3は、X線蛍光(XRF)分析(波長分散型X線蛍光分析装置、Bruker AXS Inc.、Madison、WI)によって分析したCaSiO
3粉末の化学組成をまとめたものである。XRF分析用の個々の試料は、20%パラフィン(Sigma−Aldrich Co.LLC、Milwaukee、WI)と混合した粉末を、約274MPaの圧縮応力を5min間かけることにより約37mmの成形体に圧縮することによって調製した。本研究で得られたすべての粉末特性決定データは、NYCO Minerals Inc.によって与えられるデータと一致する。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
試料作製
素地成形
本研究では、20試料を1組調製した。素地(プレフォーム)を、約29mmのダイ円内径を有するステンレス鋼製ダイ(Carver実験室用プレスモデル2698、Fred S.Carver、Inc.、Menomonee Falls、WI)中でCaSiO
3粉末を湿式加圧することによって調製した。最初に鋼鉄製ダイをスプレー潤滑剤(WD−40、WD−40 Company、San Diego、CA)で潤滑し、次いで振動台(Syntron J−1a、FMC Technologies、Homer City、PA)上に置いた。CaSiO
3粉末(約8.5g)を鋼鉄製ダイ中に添加し、その後、脱イオン水(Milli−Q Biocel system、EMDMillipore、Billerica、MA)をプラスチック製ボトルから型枠内に、水が粉末を飽和するまで噴霧した。振動台にあるコントローラーの中設定を使用して、型枠全体を約5s間振動させた。この工程を3サイクル繰り返した。次いで、これらの湿潤粉末を、約90MPaの圧縮応力で約10sの保持時間で加圧し、次いで、負荷軽減の間、圧縮応力を徐々に取り除いた(このサイクルを2回繰り返した)。内側のパンチと外側のダイ壁との間で、冷間圧縮の間に構造中の過剰な水が漏れ出てきた。典型的に、加圧された試料は約15wt%の水を保持していた。加圧された未焼結試料を鋼鉄製型枠から脱型した。次いで、加圧された試料を、100℃の対流乾燥オーブン中(Lindberg Blue M、Thermo Fisher Scientific Inc.、Dubuque、IA)で約12h間乾燥させた。乾燥後の質量(m
dry)(表4)および寸法(軸および直径)を記録した。本文中では、寸法変化(軸および直径)を百分率として報告し(表4)、正の値は収縮を示す。
【0126】
g−rHLPD反応
乾燥させた試料を、特注のオートクレーブ殺菌装置(モデル75X、All American Electric Sterilizer、Manitowoc、WI)中で90℃、1.36atm(CO
2ゲージ圧)においてg−rHLPDによって19h間反応させた。まず、4Lの脱イオン水をオートクレーブ中に添加し(充填された水はオートクレーブ内の高さ約52mmを占有した)、次いで、ステンレス鋼製ステージ(高さ約72mm)を反応器に入れた。試料を、水と試料との間が直接接触しないようにステージ上に置いた。約230gのドライアイス(Dry Ice Corp.、Old Tappan、NJ)を反応器中に添加して、空気を反応器から追い出した。2〜3min後にCO
2ガスが反応チャンバー全体を覆ったとき、反応器チャンバーを閉じた。蓋を閉じてスチーマーを密封した後、オートクレーブをCO
2(完全乾燥グレード、Airgas Inc.、Piscataway、NJ)で3回パージし、次いで加熱を開始した。ゲージ圧が1.36atmまで上昇し温度が90℃に達したときを、反応時間とみなした。約19hの反応後、試料を100℃の対流乾燥オーブン中で約12h間完全に乾燥させた。最終重量(m
HLPS)(表3)および寸法を各試料について記録した。表4は、乾燥およびg−rHLPDプロセスそれぞれの後における試料のパーセント寸法変化を示す。
【0127】
GoreTex(商標)実験のため、最初に、ピペットで水を試料上に滴下することによって、様々な細孔飽和度(0、20、40、60、80、100vol%)を有するプレフォームを調製した。その後、成形体をGoreTex(商標)で覆われた30メッシュ篩(Dual Manufacturing Co. Inc.、 Franklin Park、IL)に入れ、先の節で記載したように、反応器中で90℃および2.36atmで反応させた。
【0128】
【表4】
【0129】
物理的特性決定
g−rHLPD前のバルク密度(ρ
gbd)とg−rHLPD後のバルク密度(ρ
rbd)とを質量対体積比から計算した。試料の体積を、前に測定した円筒形試料の寸法から計算した。反応した試料のHg圧入ポロシメトリー(AutoPore IV 9400、Micromeritics Instrument Corporation、Norcross GA)を実施して、反応した試料のバルク密度(ρ
rbd(Hg))、見かけ密度(ρ
rad(Hg))、開気孔率、および細孔サイズ分布を測定した。Heピクノメトリー(AccuPyc 1330、Micromeritics Instrument Corporation、Norcross、GA)によって、反応した試料の見かけ密度(ρ
rad(He))(3つの読み値の平均)も測定した。Hgポロシメトリー研究とHeピクノメトリー研究の両方のため、反応した試料を、乳鉢および乳棒を使用することによってより小さな断片(約3〜5mmの断片)へと破壊した。Heピクノメトリー(ρ
r(He))による相対密度とHg圧入ポロシメトリーによる相対密度(ρ
r(Hg))とを、S1.5AおよびS1.5Bを使用して計算した。
【0130】
【数1】
【0131】
【数2】
【0132】
理論密度(ρ
rtd(Th))を、混合物の規則(S1.5C)を使用して計算した。
【0133】
【数3】
式中、MW
CaSiO3、MW
SiO2、およびMW
CaCO3は、それぞれ、CaSiO
3、SiO
2、およびCaCO
3の分子量である。ρ
CaSiO3、ρ
SiO2、およびρ
CaCO3は、それぞれ、CaSiO
3(2.89g/cm
3)、アモルファスSiO
2(2.20g/cm
3)、およびCaCO
3(アラゴナイト(2.95g/cm
3)とカルサイト(2.71g/cm
3)との共混合物)の密度である。反応させた生成物(例えば、CCS1)中のカルサイトとアラゴナイトの相対質量分率(α)は、リートベルト分析から見積もった(表6)。次いで、混合物中の平均ρ
CaCO3を、混合物の規則を使用することによってαから計算した。λ
W(mol%)は、重量変化測定値から得られる試料CCS1の炭酸化度である(詳細はS1.5節および表7にて記載される)。
【0134】
相対理論密度(ρ
r(Th))を、方程式S1.5Dを使用することによって計算した。
【0135】
【数4】
【0136】
すべての測定から得られた結果を表5に示す。ρ
r(He)(約80.66)とρ
r(Th)(約80.07)の類似した値は、構造中に閉気孔が実質的に存在しないことを示す。反応した試料(CCS1)についてのHgポロシメトリーによる細孔サイズ分布データを、
図S1に示す。
【0137】
【表5】
【0138】
Hgポロシメトリーによって測定されたCCS1の細孔サイズ分布を
図6に示す。
【0139】
構造および熱分析
Bruker D4回折計(Bruker AXS Inc.、Madison、WI)を使用して、45kVおよび40mAにおける、10〜90°2θにわたる角度範囲、0.0157°のステップ幅、および1ステップ当たり500sの露光時間によるCu放射により、XRD分析を実施した。CaSiO
3粉末と反応した試料の両方における結晶相の定量化を、ICSD(無機結晶構造データベース、FIZ Karlsruhe、Eggenstein_Leopoldschafen、Germany)データベースによる構造モデルを備えた、Jade9.3.2ソフトウェアを使用することによって、リートベルト法を介して行った。手作業でフィッティングしたバックグラウンドでピアソンVII関数を使用することによって、プロファイルのフィッティングを行った。格子パラメータ、ピークプロファイル(Cagliattiモデル)および等方的熱パラメータを精密化した。これらの測定は、H&M Analytical Services、Inc.(Allentown、NJ)によって行われた。
【0140】
図S2は、CaSiO
3粉末および反応した試料(CCS1)から得られたXRDデータを示す。リートベルト法による相組成の定量化測定値を表6に示す。すべての観測されたピークは、CaSiO
3(PDF04−011−2265)およびCaCO
3相(アラゴナイト(PDF04−013−9616))およびカルサイト(PDF97−004−0113))にインデックス化できる。
【0141】
【表6】
【0142】
ウォラストナイトおよび反応したCCS1試料のXRDパターンを
図7に示す。
【0143】
熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)を、TGA−DSC(Q600 SDT、TA Instruments Ltd.、New Castle、 DE)により、窒素雰囲気(99.5%純度、Parker Balston窒素生成器、N2−14、RJM Sales、Scotch Plains、NJ)中、100ml/minの流量で、10℃/minの加熱速度で1000℃まで加熱して実施した。TGA実験中、反応した試料の分解中に発生した気体を、Thermo Scientific TGA−IRインターフェースと連結されたNicoletフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)(Nicolet FT−IR 6700、Thermo Fisher Scientific Inc.、West Palm Beach、FL)によって検出した。FT−IRのスキャン速度は、0.5cm
−1のスペクトル分解能で16スキャンであった。TGA/DSC測定中、赤外スペクトルを63sごとに自動的に収集した。約62mgの試料を各試験のために使用した。
図S3(a)は、反応した試料(CCS1)の加熱中に発生した気体の3D FT−IRプロファイルを示す。低温(200℃未満)におけるバンド(1100〜2200cm
−1、3000cm
−1超)から約0.6wt%濃度の水蒸気が観測されたが、一方で、CO
2ガス(2240〜2450cm
−1、580〜730cm
−1、3550〜3800cm
−1)は200℃を超えてから支配的となり、このことはg−rHLPDプロセス中に炭酸塩相が形成されることを示しており、XRDの結果と一致する(表6および
図S2)。
図S3(b)は、対応するTGA−DSCプロットである。
図S3(a)と比較することにより、このプロットは主に4つのレジーム(i)40〜200℃−物理的吸着水の除去、(ii)200〜800℃−CaCO
3の分解、(iii)800〜840℃−CaSiO
3形成の開始およびCaCO
3分解の継続、ならびに(iv)840〜1000℃−CaSiO
3形成(重量変化なし)に分割することができる。
【0144】
N
2雰囲気中、10℃/minの加熱速度における、40から1000℃の間の波数(x軸)対強度(z軸)対時間(y軸)の3Dプロット(挿入図は、時間対温度のプロファイルを示す)を
図8に示し、CCS1のTGA−DSCを
図9に示す。
【0145】
炭酸化度(λ)
炭酸化度は、g−rHLPD後に炭酸化されたCaSiO
3のモル百分率として定義される。すべてが反応中に形成された炭酸カルシウムの形成に由来すると仮定して、g−rHLPD前後の正味の重量変化を使用して炭酸化度(λ
W)(方程式S1.1)を計算した。
【0146】
【数5】
式中、MW
CaSiO3およびMW
CO2は、それぞれ、CaSiO
3およびCO
2の分子量である。
【0147】
TGAの結果からも炭酸化度(λ
TGA)を見積もった。3つの試料(約20〜30mg)1組を、反応した試料(CCS1)の外側領域(外周から3mm未満)および内側領域(中心から3mm未満)から注意深く採取した。W
CO2をTGA(Q5000 IR、TA Instruments Ltd.、New Castle、DE)によって測定し、方程式1.4によって分析して内側部分および外側部分のλ
TGAを計算した(表7)。試料中のCO
2のwt%(W
CO2)を150から1000℃の間における重量損失から測定した。反応S1.2およびS1.3は、g−rHLPD中のCaSiO
3の炭酸化および加熱中のCaCO
3の分解を示す。炭酸化度(λ
TGA)を、方程式S1.4A〜Dによって計算した。
CaSiO
3(s)+CO
2(g)=CaCO
3(s)+SiO
2(s) (S1.2)
CaCO
3(s)=CaO
(s)+CO
2(g) (S1.3)
【0148】
【数6】
【0149】
【数7】
【0150】
【数8】
【0151】
【数9】
式中、M
re−CaSiO3は、反応したCaSiO
3のモルであり、M
un−CaSiO3は、反応していないCaSiO
3のモルである。M
CO2は、試料中に隔離されたCO
2のモルである。M
CaOは、M
re−CaSiO3中に残存するCaOのモルであり、M
SiO2は、M
re−CaSiO3中に残存するSiO
2のモルであり、MW
CaOおよびMW
SiO2は、CaOおよびSiO
2の分子量である。
【0152】
また、カルシウム測定器(Eijkelkamp、品番08.53、Agrisearch Equipment、USA)において容積法を使用することによって、10個の試料の平均から炭酸化度(λ
calcimetry)も決定した。試料中に存在する炭酸塩を、試料に塩酸を添加することによってCO
2に変換した。放出されたCO
2の圧力の結果、ビュレット中の水の水位が上昇した。測定された水位差を使用してCO
2の放出量を測定し、これから炭酸塩含有量が計算できる。炭酸化度(λ
calcimetry)を、方程式S1.4E〜Gによって計算した。
【0153】
【数10】
【0154】
【数11】
【0155】
【数12】
【0156】
【表7】
【0157】
本発明の様々な実施形態を上記で記載してきたが、これらは例としてのみ提示されたものであり、限定ではないことが理解されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がそこにおいて可能であることは、当業者には明らかであると考えられる。よって、本発明の広さおよび範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物に従うことによってのみ規定されるべきである。本明細書において論じられているすべての特許および出版物は、その全体がそれらへの参照によって組み込まれる。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
〔1〕
多孔質マトリックスからモノリシックセラミック体を生成する方法であって、
格子間空間を有する多孔質マトリックスを準備するステップと、
溶媒および少なくとも1種の反応性種を含む浸透媒体を準備するステップであって、前記溶媒は多孔質マトリックスと化学的に反応性でない不活性媒体である、ステップと、
前記多孔質マトリックスの前記格子間空間の少なくとも一部分を前記浸透媒体で浸透させるステップと
を含み、
前記溶媒は、前記多孔質マトリックスの格子間空間の一部分中にあるとき、液相であり、
前記浸透媒体は、前記多孔質マトリックス中を流れ、
前記少なくとも1種の反応性種は、前記多孔質マトリックスの前記格子間空間の一部分中にあるとき、前記多孔質マトリックスの前記一部分と反応して生成物を形成し、前記生成物は、格子間空間の少なくとも一部分を充填する、方法。
〔2〕
前記溶媒および少なくとも1種の反応性種は気相である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕
前記溶媒および少なくとも1種の反応性種は液相である、〔1〕に記載の方法。
〔4〕
前記溶媒は液相であり、前記少なくとも1種の反応性種が気相である、〔1〕に記載の方法。
〔5〕
格子間空間を有する前記多孔質マトリックスを形成するステップであって、前記多孔質マトリックスは潮解性固体をさらに含む、ステップをさらに含む、〔1〕に記載の方法。
〔6〕
前記浸透媒体は機械的に多孔質マトリックス中を対流させられる、〔1〕に記載の方法。
〔7〕
前記機械的に対流させられることは、加圧流、毛管電気浸透流、磁気浸透流、ならびに温度および化学勾配駆動流のうちの1つを含む、〔6〕に記載の方法。
〔8〕
前記モノリシックセラミック体は
、15%か
ら70%までの細孔飽和度値を有する、〔1〕に記載の方法。
〔9〕
前記細孔飽和度値
は50%である、〔8〕に記載の方法。
〔10〕
多孔質マトリックスからモノリシック体を形成する方法であって、
格子間空間を有する多孔質マトリックスを準備するステップと、
潮解性固体を前記多孔質マトリックスの前記格子間空間の少なくとも一部分中に導入するステップと、
前記多孔質マトリックスの少なくとも一部分を浸透媒体で浸透させるステップであって、前記浸透媒体は溶媒および少なくとも1種の反応性種を含み、前記溶媒は多孔質マトリックスと化学的に反応性でない不活性媒体であり、前記溶媒は潮解性固体と接触する、ステップと
を含み、
前記少なくとも1種の反応性種は、前記多孔質マトリックスの前記格子間空間の一部分中にあるとき、前記多孔質マトリックスの一部分と反応して生成物を形成し、前記生成物は前記格子間空間の少なくとも一部分を充填する、方法。
〔11〕
前記溶媒および少なくとも1種の反応性種は気相である、〔10〕に記載の方法。
〔12〕
前記溶媒および少なくとも1種の反応性種は液相である、〔10〕に記載の方法。
〔13〕
前記溶媒は液相であり、前記少なくとも1種の反応性種は気相である、〔10〕に記載の方法。
〔14〕
前記多孔質マトリックスの少なくとも一部分を浸透媒体で浸透させるステップは、前記浸透媒体を、機械的に前記多孔質マトリックス中を対流させることをさらに含む、〔10〕に記載の方法。
〔15〕
前記機械的に対流させることは、加圧流、電気浸透流、磁気浸透流、または温度および化学勾配駆動流のうちの1つを含む、〔14〕に記載の方法。
〔16〕
前記モノリシックセラミック体は
、15%か
ら70%までの細孔飽和度値を有する、〔10〕に記載の方法。
〔17〕
前記細孔飽和度値
は50%である、〔16〕に記載の方法。
〔18〕
前記溶媒が前記潮解性固体と接触した後、前記溶媒および前記潮解性固体は液相である、〔10〕に記載の方法。