特許第6567428号(P6567428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567428
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】局所用組成物及びこれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20190819BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20190819BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20190819BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   A61K33/00
   A61K31/655
   A61K47/24
   A61K9/06
   A61P17/00
   A61P17/10
   A61P31/04
【請求項の数】7
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2015-560366(P2015-560366)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-510036(P2016-510036A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】US2014019536
(87)【国際公開番号】WO2014134502
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】61/770,615
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513146114
【氏名又は名称】ノヴァン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ドクシー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】サーブーニー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】クグロス,エレフテリオス
(72)【発明者】
【氏名】スタスコ,ネイサン
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−534468(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/022652(WO,A1)
【文献】 特表2009−523584(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/006608(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/073998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 33/00
A61K 31/00
A61K 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲルの重量に対して約1%から約30%までの量で存在する少なくとも1つの多価アルコールと、
前記ヒドロゲルの重量に対して約0.1%から約5%までの量で存在する少なくとも1つの増粘剤と、
少なくとも1つの緩衝化剤と、及び
水とを含む、pHが3から6.5の範囲を有する前記ヒドロゲルと、並びに、
共縮合されたシロキサンネットワークの形態を含むジアゼニウムジオレート修飾されたポリシロキサン分子と、
無水アルコールゲルの重量に対して0.5%から30%までの量で存在する第2の増粘剤と、
無水アルコールゲルの重量に対して50%から90%までの量で存在する前記少なくとも1つのアルコールと、及び
無水アルコールゲルの重量に対して2%から20%までの量で存在する前記少なくとも1つの保湿剤とを含む、前記無水アルコールゲルと
を備えるキット。
【請求項2】
前記ヒドロゲルと前記無水アルコールゲルとが別々に保存されている、請求項に記載のキット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの増粘剤がセルロースエーテルである、請求項に記載のキット。
【請求項4】
前記第2の増粘剤がヒドロキシプロピルセルロースであり、前記少なくとも1つのアルコールがエタノール、若しくはイソプロパノールであり、及び前記少なくとも1つの保湿剤がヘキシレングリコールである、請求項に記載のキット。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアルコールがイソプロパノールであり、及び前記無水アルコールゲルがシクロメチコンをさらに含む、請求項に記載のキット。
【請求項6】
前記第1の増粘剤が、カルボキシポリメチレンを含み、前記少なくとも1つの多価アルコールがグリセリンであり、及び前記少なくとも1つの緩衝化剤が乳酸である、請求項に記載のキット。
【請求項7】
前記第1の増粘剤が、カルボキシメチルセルロースを含み、前記少なくとも1つの多価アルコールがグリセリンであり、及び前記少なくとも1つの緩衝化剤がリン酸カリウムである、請求項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2013年2月28日に出願された米国特許仮出願第61/770,615号の利益及び優先権を主張するものであり、同文献の開示内容は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。
【0002】
本発明は、一般的には、組成物及びこれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚障害は、多様な医薬組成物を用いて局所的に治療することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、局所用組成物及びこの局所用組成物を使用する方法を提供することにより、当技術分野におけるこれまでの欠点に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、第1の増粘剤(viscosity increasing agent:粘度増加剤)、少なくとも1つの多価アルコール、少なくとも1つの緩衝化剤(buffering agent:緩衝剤)、少なくとも1つの防腐剤(preservative:保存剤)、第2の増粘剤、少なくとも1つの有機溶媒、少なくとも1つの保湿剤(humectant:湿潤剤)、少なくとも1つの医薬品有効成分及び水を含み、約3から約11までのpHに緩衝化(buffer:中和)されている組成物を含む。いくつかの実施形態において、組成物のpHは、約3から約8までであり得る。本組成物は、美容的にエレガントな(cosmetically elegant)ものであり得る。
【0006】
本発明の第2の態様は、組成物の重量に対して約1%から約30%までの量で存在する少なくとも1つの多価アルコール、組成物の重量に対して約0.1%から約5%までの量で存在する少なくとも1つの増粘剤、組成物の重量に対して約70%から約99%までの量で存在する水、組成物の重量に対して約0.01%から約2%までの量で存在する少なくとも1つの緩衝化剤、及び組成物の重量に対して約0.01%から約1%までの量で存在する少なくとも1つの防腐剤を含み、約3から約8までのpHに緩衝化されている組成物を含む。本組成物は、美容的にエレガントなものであり得る。
【0007】
本発明のさらなる一態様は、組成物の重量に対して約1%から約30%までの量で存在する少なくとも1つの多価アルコール、組成物の重量に対して約0.1%から約5%までの量で存在する少なくとも1つの増粘剤、及び組成物の重量に対して約70%から約99%までの量で存在する水を含む第1の組成物と、無水物である第2の組成物とを備えるキットを含む。本組成物は、美容的にエレガントなものであり得る。
【0008】
本発明の別の態様は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分(nitric oxide−releasing active pharmaceutical ingredient)を含有する局所用無水ゲルからの一酸化窒素の放出を増大させる方法であって、該局所用無水ゲルを、約4から約6までのpHを有する本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)と接触させて、複合組成物(combined composition:混ぜ合わさった組成物)にすることを含む方法を含む。いくつかの実施形態において、この複合組成物は、対象の皮膚に施用され得る。この複合組成物は、美容的にエレガントなものであり得る。一酸化窒素放出性医薬品有効成分は、ジアゼニウムジオレート修飾された巨大分子であり得る。
【0009】
本発明のさらなる一態様は、水分に敏感な医薬品有効成分を含む局所用無水ゲルと、該局所用無水ゲルのpHを低減させるための手段を含む本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)とを含む、医薬組成物を含む。水分に敏感な医薬品有効成分は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分であり得、一酸化窒素放出性医薬品有効成分は、ジアゼニウムジオレート修飾されたポリシロキサン分子であり得る。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明の組成物を対象の皮膚に局所施用することを含む、尋常性座瘡を治療する方法を含む。治療有効量の組成物が施用され得る。
【0011】
本発明のさらなる一態様は、対象における炎症性及び/又は非炎症性病変を低減させる方法であって、本発明の組成物を対象の皮膚に局所施用することを含む方法を含む。治療有効量の組成物が施用され得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を、組成物の重量に対して約0.5%から約10%までの量で含むことができる。本組成物は、一酸化窒素を、組成物の重量に対して約0.05%から約3%までの量で貯蔵及び/又は放出することができる。本方法は、定められた期間にわたり、本発明の組成物をそれと同じ長さの期間にわたって施用しなかった対象に比して、炎症性及び/又は非炎症性病変を約10%以上低減させることができる。いくつかの実施形態において、本方法は、上記と同じ期間にわたって、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む組成物を施用しなかった対象に比して、対象における炎症性及び/又は非炎症性病変を低減させることができる。対象は、12週間以内又はそれより早く、いくつかの実施形態においては8週間以内又はそれより早く、さらなる実施形態においては4週間以内又はそれより早く、炎症性及び/又は非炎症性病変の低減を実感することができる。
【0012】
本発明の別の態様は、対象におけるアクネ菌数を低減させる方法であって、本発明の組成物を対象の皮膚に局所施用することを含む方法を含む。治療有効量の組成物が施用され得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を、組成物の重量に対して約0.5%から約10%までの量で含むことができる。本組成物は、一酸化窒素を、組成物の重量に対して約0.05%から約3%までの量で貯蔵及び/又は放出することができる。本方法は、定められた期間にわたり、本発明の組成物をそれと同じ長さの期間にわたって施用しなかった対象に比して、アクネ菌数を約10%以上減少させることができる。いくつかの実施形態において、本方法は、上記と同じ期間にわたって、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む組成物を施用しなかった対象に比して、対象におけるアクネ菌数を低減させることができる。対象は、12週間以内又はそれより早く、いくつかの実施形態においては8週間以内又はそれより早く、さらなる実施形態においては4週間以内又はそれより早く、アクネ菌数の低減を実感することができる。
【0013】
次に、前述したもの及びその他のものを含めた本発明の態様を、本明細書に記載するその他の実施形態に関して、より詳細に記載する。本発明は種々の形態で実施できるものであり本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない、ということは理解されるべきである。むしろ、これらの実施形態を提供することで、本開示は、詳細にわたる完全なものとなるであろうし、本発明の範囲を当業者に対して十分に伝達するものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度(strength)、ヒドロゲルのpH、及び、ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの比率が混和物(admixture:混合物)のpHに及ぼす効果を示すグラフである。
図2】緩衝化されていないヒドロゲル(pH4)又は緩衝化されている(0.1%クエン酸)ヒドロゲル(pH4)と混和した際のNitricil(商標)NVN1局所用ゲルについてインビトロ(in vitro)でのpHを決定したグラフである。
図3】緩衝化されていないpH4のヒドロゲル又は緩衝化されているpH4のヒドロゲルと8%w/w Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルとの混和物について皮膚表面でのpHを決定したグラフである。
図4】Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度及びヒドロゲルの比率がCmaxに及ぼす効果を示すグラフである。
図5】Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度及びヒドロゲルの比率が一酸化窒素(NO)の累積放出量に及ぼす効果を示すグラフである。
図6】緩衝化されていないヒドロゲルのpH及び比率が、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度と関連して混和物のpHに及ぼす効果を示すグラフである。
図7】2% Nitricil(商標)NVN1ゲル製剤について、時間の経過に伴うインビトロでの一酸化窒素放出プロファイルを示すグラフである。
図8】2%、6%及び12%のNitricil(商標)NVN1ゲル製剤について、pH4のヒドロゲルと混合した際における、時間の経過に伴うインビトロでの一酸化窒素放出プロファイルを示すグラフである。
図9】共分散分析(ANCOVA)に基づく、時間の経過に伴うアクネ菌数(log/cm)の変化を示すグラフである。
図10】プロトコルに従った集団における非炎症性病変について、時間の経過に伴う低減百分率の平均値(mean percentage reduction)を示すグラフである。
図11】プロトコルに従った集団における炎症性病変について、時間の経過に伴う低減百分率の平均値を示すグラフである。
図12】ヒドロゲルを含有しない2% Nitricil(商標)NVN1ゲル、及び、ヒドロゲルを含有する1% Nitricil(商標)NVN1ゲル(ゲル対ヒドロゲルの比率は1:1であった)について、一酸化窒素の累積放出量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、以下に本発明をより詳細に記載する。但し、本発明は種々の形態で実施し得るものであり、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態を提供することで、本開示は、詳細にわたる完全なものとなるであろうし、本発明の範囲を当業者に対して十分に伝達するものとなろう。
【0016】
本明細書において本発明の説明に使用する術語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としたものであり、本発明の限定を意図したものではない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈によりそうでないことが明確に示されていない限り、複数形も同様に含まれるものとする。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書において使用するすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般に使用される辞書で定義されている用語などは、本出願の文脈及び関連分野におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義しない限り、理想化された又は過度に形式張った意味合いで解釈されるべきではないということは理解されよう。本明細書において本発明の説明に使用する術語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としたものであり、本発明の限定を意図したものではない。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献はすべて、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。術語に矛盾がある場合には、本明細書が優先する。
【0018】
さらに、本明細書において使用する場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうち1つ又は複数のありとあらゆる可能な組合せを、並びに、代替的な形で解釈される際(「又は」)は組合せがないことを指し、且つ包含する。
【0019】
文脈によりそうでないことが示されていない限り、本明細書に記載する本発明の多様な特徴は任意の組合せで使用できる、ということが明確に意図されている。さらに、本発明は、本発明のいくつかの実施形態においては、本明細書に記載する任意の特徴又は複数の特徴の組合せを排除又は除外できることも企図している。例を挙げると、本明細書に、ある複合体(complex)は成分A、B及びCを含むと書かれていれば、A、B若しくはC又はこれらの組合せのいずれも除外し特許請求の対象外とすることができることが明確に意図されている。
【0020】
本明細書において使用する場合、移行句「〜から本質的に成る」(及び文法的な変形)は、挙げられている材料又はステップ「及び、今回特許請求する発明の基本的且つ新規の特徴(複数可)に物質的に影響を及ぼさない材料又はステップ」を包含すると解釈されたい。In re Herz,537 F.2d 549,551−52,190 U.S.P.Q.461,463(CCPA 1976)(強調は原文のまま)を参照のこと。MPEP §2111.03も参照のこと。したがって、用語「〜から本質的に成る」は、本明細書において使用する場合、「〜を含む」と同等であると解釈されるべきではない。
【0021】
用語「約」には、測定可能な値、例えば量又は濃度などに言及する際に本明細書において使用する場合、明記された値だけでなく、明記された値の±20%まで、限定されるものではないが、例えば、明記された値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、又はさらには±0.1%の変動値にも言及する意図が込められている。例えば、「約X」(ここで、Xは測定可能な値である)には、X、並びに、Xの±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又はさらには±0.1%の変動値を含めるという意図が込められている。測定可能な値について、本明細書に記載される範囲には、任意のその他の範囲及び/又はそれらの範囲内の個々の値が含まれ得る。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明では、局所用組成物が提供される。本発明の組成物は、少なくとも2つの部分を備えることができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、第1の組成物を含む第1の部分と、第2の組成物を含む第2の部分とを備える。本発明の組成物の第2の部分は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分(NO放出性API)を含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、第1の組成物を含む第1の部分を備えることができ、第1の組成物は、ヒドロゲルの形態であり得る。「ヒドロゲル」は、本明細書において使用する場合、ゲルマトリックスと水とを含む親水性ゲルを指す。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、少なくとも1つの多価アルコール、少なくとも1つの増粘剤及び水を含む。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、本発明の第1の組成物及び第2の組成物を含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成る。ここで、第1の組成物と第2の組成物は、これらを一緒に混合し及び/又は合わせて本発明の組成物とすることができるように、互いに相溶性(compatible)である。本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、「複合組成物」と呼ぶことがある。さらなる態様において、複合組成物は、対象の皮膚への局所施用に適したものであり得る。
【0024】
本発明の第1の組成物中に存在することができる例示的な多価アルコールとしては、限定されるものではないが、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンタル(neopental)グリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、アラビトール、エリトリトール、HSH、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、トレイトール、リビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、グリセロール、限定されるものではないが例えば、無水グリセロールを含む。
【0025】
多価アルコールは、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量の約1%から約30%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で、限定されるものではないが、例えば、第1の組成物の重量の約1%から約20%まで、約1%から約10%まで、又は約5%から約15%までの量で、存在することができる。いくつかの実施形態において、多価アルコールは、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%又は30%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在することができる。
【0026】
本発明の第1の組成物中に存在することができる例示的な増粘剤としては、限定されるものではないが、カルボキシポリメチレン;ポリアクリル酸ポリマー、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリル酸、及びこれらの混合物;ヒドロキシアルキルセルロースポリマーなどのセルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒルドキシエチル(hyrdoxyethyl)セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの混合物;メタクリレート;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidone);架橋ポリビニルピロリドン;ポリビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルアルコール;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;ポリビニルアルキルエーテル−マレイン酸コポリマー;カルボキシビニルポリマー;多糖;ガム、例えば、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタム(xantham)ガム、アカシアガム、アラビアガム、グアー(guar)ガム、プルラン、寒天、キチン、キトサン、ペクチン、カラヤガム、ゼイン、ホルデイン、グリアジン、ローカストビーンガム、トラガカンタ(tragacantha)、及びこれらの混合物;タンパク質、例えば、コラーゲン、乳清タンパク質分離物、カゼイン、乳タンパク質、ダイズタンパク質、ゼラチン、及びこれらの混合物;デンプン、例えば、マルトデキストリン、アミロース(amylose)、高アミロースデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、米デンプン、タピオカデンプン、エンドウデンプン、サツマイモデンプン、オオムギデンプン、コムギデンプン、ワキシートウモロコシデンプン、加工デンプン(例えば、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン)、デキストリン、レバン、エルシナン、グルテン、及びこれらの混合物;ベントナイト;ステアリン酸カルシウム;カラトニア;コロイド状二酸化ケイ素;デキストリン;ヒプロメロース(hypromellose);ポリカルボフィル(polycarbophil);カオリン;サポナイト(saponite);ソルビタンエステル;スクロース;ゴマ油;トラガント;アルギン酸カリウム;ポビドン;デンプングリコール酸ナトリウム;リン脂質;及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、カルボキシポリメチレン、限定されるものではないが例えば、Wickliffe、OhioのLubrizol Corporationから商品名Carbopol(登録商標)で市販されているものを含む。本発明の第1の組成物中に存在することができる例示的なCarbopol(登録商標)ポリマーとしては、限定されるものではないが、Carbopol(登録商標)974P NFポリマー、例えば、タイプA、タイプB及び/又はタイプCホモポリマー;Carbopol(登録商標)Ultrez 10、20、21 NFポリマー;Carbopol(登録商標)971P NFポリマー;Carbopol(登録商標)980ホモポリマー タイプCポリマー、Carbopol(登録商標)980 NFポリマー、Carpobol(登録商標)980Pポリマー、Carbopol(登録商標)ETD 2020 NFポリマー、Carbopol(登録商標)71G NFポリマー、Carbopol(登録商標)981P NFポリマー、Carbopol(登録商標)970P NFポリマー、Carbopol(登録商標)981P NFポリマー、Carbopol(登録商標)5984P NFポリマー、Carbopol(登録商標)934P NFポリマー、Carbopol(登録商標)940P NFポリマー、Carbopol(登録商標)941P NFポリマー、Carbopol(登録商標)13242 NFポリマー、Carbopol(登録商標)AA−1 USP NFポリマー、Carbopol(登録商標)TR1 NFポリマー、Carbopol(登録商標)TR2 NFポリマー、Lubrizol Aqua CCポリマー及びSF−2ポリマー、並びにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物中に存在する増粘剤は、酸性基、限定されるものではないが例えばカルボン酸基を含むポリマーであり得る。ポリマーの酸性基は、本発明の第1の組成物中で部分的に中和(neutralize)され得る。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物中に存在する増粘剤は、カルボキシポリメチレンであり得る。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物中に存在するカルボキシポリメチレンは、部分的に中和され得る。本発明の第1の組成物は、カルボキシポリメチレンを含むことができ、約3から約7まで、約3.5から約6.5まで、約3.5から約6まで、又は約4から約6までのpHを有することができる。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、カルボキシポリメチレンを含むことができ、約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5又は7のpHを有することができる。
【0029】
増粘剤は、本発明の第1の組成物中に存在することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも2つの増粘剤を含むことができ、これらの増粘剤は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、第1の増粘剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量の約0.01%から約5%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第1の組成物の重量の約0.05%から約3%まで、又は約0.1%から約1.5%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、第1の増粘剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量の約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%若しくは5%、又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在する。
【0030】
水は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量の約70%から約99%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第1の組成物の重量の約75%から約95%まで、又は約80%から約90%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、水は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量の約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在する。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、第1の組成物の重量に対して約1%から約30%までの量で存在する少なくとも1つの多価アルコール、第1の組成物の重量に対して約0.1%から約5%までの量で存在する少なくとも1つの増粘剤、第1の組成物の重量に対して約70%から約99%までの量で存在する水を含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成る。いくつかの実施形態において、増粘剤は、カルボキシポリメチレンであり得る。第1の組成物は、ヒドロゲルであり得る。
【0032】
本発明の第1の組成物は、防腐剤を含むことができる。防腐剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約1%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約0.1%まで、約0.05%から約1%まで、又は約0.1%から約1%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、防腐剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量に対して約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%若しくは1%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在する。本発明の第1の組成物中に存在することができる例示的な防腐剤としては、限定されるものではないが、ソルビン酸、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルクロロイソチアゾリノン、メトールイソチアゾリノン(metholisothiazolinone)、ジアゾリジニル尿素、クロロブタノール、トリクロサン、塩化ベンゼトニウム、p−ヒドロキシベンゾエート、クロルヘキシジン、ジグルコネート、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、アルコール、塩化ベンザルコニウム、ホウ酸、ブロノポール、ブチルパラベン、ブチレンカルシウムアセテート(butylene calcium acetate)、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、二酸化炭素、カチオン性防腐剤、及びベントナイト、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クエン酸一水和物、クレゾール、ジメチルエーテル、エチルパラベン、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、イソプロピルアルコール、乳酸、モノチオグリセロール、ペンテト酸、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、キシリトール、二酸化硫黄、二酸化炭素、並びにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0033】
本発明の第1の組成物は、中和剤を含むことができる。中和剤は、所望のpH、限定されるものではないが例えば、約3から約11まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、約3から約8まで、約4から約7まで、又は約6から約7まで、又は約6から11までのpHをもたらすのに十分な量で、本発明の第1の組成物中に存在することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、中和剤は、第1の組成物中に、第1の組成物を約3から約8までの間のpHにするのに十分な量で存在することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、中和剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物と第2の部分(例えば、第2の組成物)とを合わせた時点で、並びに/又は、第1の組成物及び/若しくは第1の組成物と第2の部分とを含む組成物を対象の皮膚に投与した時点で本発明の組成物を所望のpHにするのに十分な量で、存在することができる。中和剤は、本発明の第1の組成物中に、本発明の組成物(例えば、第1の組成物と第2の組成物とを含む組成物)を所望のpH、限定されるものではないが例えば、約3から約11まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値のpHにするのに十分な量で存在することができる。
【0036】
本発明の組成物のpHは、本発明の組成物の第1の部分と第2の部分とを接触させ、複合させ及び/又は混合してから定常状態でpHが得られた時点で決定することができる。代替的に、又は加えて、本発明の組成物のpHは、定められた期間の経過後に、限定されるものではないが例えば、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分又はそれを超える期間の経過後に、決定することができる。本発明の組成物のpHは、本発明の組成物の第1の部分と第2の部分とを接触させ、複合させ及び/又は混合してからインビトロにて測定することができる。代替的に、又は加えて、本発明の組成物のpHは、対象に投与してから測定することができ、例を挙げれば例えば、本発明の組成物を対象の皮膚に投与した後に皮膚表面でのpHを測定することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、中和剤は、本発明の第1の組成物及び/又は組成物のpHを調整する。本発明のいくつかの実施形態において、中和剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物が約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5若しくは8又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値のpHを有するのに十分な量で存在する。本発明のいくつかの実施形態において、中和剤は、本発明の組成物中に、組成物が約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5若しくは11又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値のpHを有するのに十分な量で存在する。
【0038】
本発明の第1の組成物中に存在することができる例示的な中和剤としては、限定されるものではないが、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びこれらの混合物;酸、例えば、塩酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、酢酸、及びこれらの混合物;炭酸ナトリウム;トロラミン;トロメタミン;アミノメチルプロパノール;トリイソプロパノールアミン;アミノメチルプロパノール;テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン;EDTA四ナトリウム;スットシドA(suttocide A);並びにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0039】
中和剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約1%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約0.1%まで、約0.05%から約1%まで、又は約0.1%から約1%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、中和剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量に対して約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%若しくは1%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在することができる。
【0040】
本発明の第1の組成物は、緩衝化されていないものでも緩衝化されているものでもよい。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、緩衝化されていないものであってよい。他の実施形態では、本発明の第1の組成物は、緩衝化されているものであってよい。本発明の第1の組成物中に存在することができる例示的な緩衝剤としては、限定されるものではないが、酢酸/酢酸塩緩衝剤;塩酸/リン酸塩緩衝剤;シトロホスフェート緩衝剤(citro−phosphate buffer);リン酸塩緩衝剤;クエン酸/クエン酸塩緩衝剤;乳酸緩衝剤;酒石酸緩衝剤;リンゴ酸緩衝剤;グリシン/HCl緩衝剤;生理食塩水緩衝剤、例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、トリス−HCl、NaCl、Tween緩衝生理食塩水(TNT)、リン酸塩緩衝生理食塩水、Triton X−100(PBT)及びこれらの混合物;カコジル酸塩(cacodylate)緩衝剤;バルビタール(barbital)緩衝剤;トリス緩衝剤;並びにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、緩衝化剤を含むことができる。例示的な緩衝化剤としては、限定されるものではないが、クエン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、コハク酸、リンゴ酸、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。緩衝化剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約2%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約0.1%まで、約0.05%から約1%まで、約0.1%から約0.5%まで、又は約0.1%から約2%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、緩衝化剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物の重量に対して約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%若しくは2%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在する。
【0042】
いくつかの実施形態において、緩衝剤及び/又は緩衝化剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物が約3から約8まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、約3から約6まで、約3から約5まで、約4から約7まで、約5から約7まで、若しくは約6から約7までのpHを有するのに十分な量で存在する。本発明のいくつかの実施形態において、緩衝剤及び/又は緩衝化剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物が約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5若しくは8又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値のpHを有するのに十分な量で存在することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、緩衝剤及び/又は緩衝化剤は、本発明の第1の組成物中に、第1の組成物と第2の部分(例えば、第2の組成物)とを含む本発明の組成物に所望のpHをもたらすのに十分な量で存在することができる。例えば、本発明の組成物は、第2の組成物と、緩衝剤及び/又は緩衝化剤を含む第1の組成物とを含むことができる。ここで、緩衝剤及び/又は緩衝化剤は、本発明の組成物を約3から約11まで、限定されるものではないが例えば、約3から約8まで、約7から約11まで、約8から約10まで、約3から約5まで、約4から約7まで、約5から約7まで、又は約6から約7までのpHにするのに十分な量で存在する。本発明のいくつかの実施形態において、緩衝剤及び/又は緩衝化剤は、本発明の第1の組成物中に、組成物が約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5若しくは11又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値のpHを有するのに十分な量で存在することができる。いくつかの実施形態において、緩衝剤及び/又は緩衝化剤は、第1の組成物と第2の部分とを含む本発明の組成物を対象の皮膚に投与した時点で所望のpHをもたらすのに十分な量で、本発明の第1の組成物中に存在することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、緩衝剤、緩衝化剤及び/又は中和剤は、本発明の第1の組成物中に、本発明の組成物及び/又は本発明の第1の組成物を所望のpHにするのに十分な量で存在することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、第1の組成物の重量に対して約1%から約30%までの量で存在する少なくとも1つの多価アルコール、第1の組成物の重量に対して約0.1%から約5%までの量で存在する少なくとも1つの増粘剤、第1の組成物の重量に対して約70%から約99%までの量で存在する水、及び第1の組成物の重量に対して約0.01%から約1%までの量の少なくとも1つの防腐剤を含む。第1の組成物は、約3から約8まで、約3から約6まで、又は約6から約8までの範囲のpHを有するように緩衝化されていてもよい。第1の組成物は、ヒドロゲルであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、第1の組成物の重量に対して約1%から約30%までの量の多価アルコール、第1の組成物の重量に対して約0.01%から約5%までの量の増粘剤、第1の組成物の重量に対して約70%から約99%までの量の水、任意で、第1の組成物の重量に対して約0.001%から約2%までの量の緩衝化剤、任意で、第1の組成物の重量に対して約0.001%から約1%までの量の防腐剤、及び任意で、第1の組成物の重量に対して約0.001%から約1%までの量の中和剤を含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成ることができる。第1の組成物は、約3から約5まで、又は約5から約7までの範囲のpHを有することができる。いくつかの実施形態において、第1の組成物中に存在する増粘剤は、カルボキシポリメチレンであり得る。いくつかの実施形態において、第1の組成物は、美容的にエレガントなものであり得る。第1の組成物は、ヒドロゲルであり得る。
【0047】
当業者には本開示に照らせば認識されるであろうが、本発明の第1の組成物の特性は、それと同じ及び/又は似た特性を本発明の組成物に付与する及び/又はもたらすことができる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、第1の組成物及び/又は本発明の組成物に抗菌活性をもたらすのに十分な量で存在する防腐剤を含むことができる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物及び/又は組成物は、抗菌性(antimicrobial)であり得る。
【0048】
本発明の組成物及び/又は第1の組成物は、約5,000cPから約25,000cPまでの範囲又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、約5,000cPから約20,000cPまで、又は約7,000cPから約15,000cPまでの粘度を有することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び/又は第1の組成物は、約5,000、5,500、6,000、6,500、7,000、7,500、8,000、8,500、9,000、9,500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、20,500、21,000、21,500、22,000、22,500、23,000、23,500、24,000、24,500若しくは25,000cP又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の粘度を有することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本発明の組成物の第2の部分と混合すること及び/又は複合することを可能にする粘度を有する本発明の第1の組成物を含むことができる。例えば、本発明の第1の組成物は、人間の手の中で及び/又は対象の皮膚の上で本発明の組成物の第2の部分と混合する及び/又は複合するのに適した及び/又は十分な粘度を有することができる。第1の組成物の粘度が低すぎると、混合する及び/又は複合する前に対象の皮膚から流れ落ちる可能性がある。第1の組成物の粘度が高すぎると、本発明の組成物の第2の部分と混合することが困難になる可能性があり、並びに/又は、複合組成物を対象の皮膚の上に広げる及び/若しくは施用することが困難になる可能性がある。
【0050】
本発明の組成物及び/又は第1の組成物は、医薬品有効成分(API)を含むことができる。任意の適当なAPI又は複数のAPIの組合せが、本発明の組成物及び/又は第1の組成物中に含まれていてもよい。APIの例としては、限定されるものではないが、抗菌剤、抗座瘡剤、抗炎症剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、消毒剤、免疫抑制薬、抗出血剤、血管拡張薬、創傷治癒剤、抗バイオフィルム剤、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。例示的なAPIとしては、限定されるものではないが、国際公開第2013/006608号に記載されているものが挙げられ、同文献は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、APIを含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、一酸化窒素(NO)放出性APIを含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は少なくとも1つのAPIを含むことができるが、第1の組成物は、NO放出性APIを含まなくてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、APIを含むことができる。第1の組成物中のAPIは、水分に敏感なAPIであってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物はAPI(例えば、水分に敏感なAPI)を含み、本発明の組成物の第2の部分及び/又は第2の組成物は第2のAPIを含み、このとき、第1の組成物中のAPIと、第2の部分及び/又は第2の組成物中の第2のAPIとは、本発明の組成物中で化学的に相溶及び/又は安定でなくてもよい。例えば、第1の組成物中のAPIと、第2の部分及び/又は第2の組成物中の第2のAPIとは、本発明の組成物中に一緒に貯蔵されている時点では、化学的に相溶及び/又は安定でなくてもよい。
【0053】
本発明の第1の組成物は、1つ又は複数の、限定されるものではないが例えば2つ、3つ、4つ又はそれを超える組成物と共に使用する及び/又は複合するのに適したものであってよく、そのような1つ又は複数の組成物は、同じ及び/又は異なるものであってよい。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、1つ又は複数の医薬組成物と共に使用する及び/又は複合するのに適したものであり得る。本発明の第1の組成物は、薬物送達系及び/又は薬物放出系として使用することができる。例えば、本発明の第1の組成物は、本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)と第2の組成物とが接触した時点で、第2の組成物中のAPIの放出をモジュレート(modulate:調節)するように構成され得る。代替的に、又は加えて、本発明の第1の組成物は、本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)と第2の組成物とが接触した時点で、第2の組成物のpHをモジュレートするように構成され得る。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、一酸化窒素(NO)放出性APIを含む第2の組成物のpH、及び/又は、第2の組成物中のNO放出性APIからの一酸化窒素の放出をモジュレートするように構成され得る。
【0054】
「モジュレートする(modulate)」、「モジュレートすること(modulating)」、「モジュレーション(modulation)」、及びこれらの文法的変化形は、本明細書において使用する場合、第2の組成物のpH及び/又は第2の組成物中のAPIの放出を、本発明の第1の組成物の非存在下における第2の組成物のpH及び/又は第2の組成物中のAPIの放出に比して、増大させる又は低減させることを指す。本明細書において使用する場合、用語「増大する(increase)」、「増大(する)(increases)」、「増大した(increased)」、「増大させること(increasing)」及び同様の用語は、pH及び/又は放出量が、本発明の第1の組成物の非存在下におけるpH及び/又は放出量に比して、少なくとも約5%、10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%、500%又はそれを超えて高くなることを示している。本明細書において使用する場合、用語「低減する(reduce)」、「低減する(reduces)」、「低減した(reduced)」、「低減(reducing)」及び同様の用語は、pH及び/又は放出量が、本発明の第1の組成物の非存在下におけるpH及び/又は放出量に比して、少なくとも約5%、10%、25%、35%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又はそれを超えて低くなることを指す。
【0055】
「接触(させる)」は、本明細書において本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)と第2の部分及び/又は第2の組成物に関して使用する場合、第1の組成物中の少なくとも1つの成分を第2の部分及び/又は第2の組成物に直接的及び/又は間接的に曝露させることを指す。第1の組成物と第2の部分及び/又は第2の組成物との接触は、任意の手段によって、限定されるものではないが例えば、混合すること、撹拌すること、ブレンドすること、分散させること、すりつぶすこと、均質化(homogenize)すること、複合すること、同じ部位又は領域に施用することなどによって遂行することができ、また、いくつかの実施形態においては、接触させることで、本発明の複合組成物を任意に形成することができる。例えば、第1の組成物は、第2の組成物と直接接触させてもよく、その手段は、限定されるものではないが例えば、対象への局所施用の前、途中及び/又は後に、第1の組成物と第2の組成物とを混合及び/又は複合して本発明の複合組成物を形成することによる。第1の組成物と第2の組成物との直接的な接触は、第2の組成物を対象に1回若しくは複数回重ねて施用し、次いで、第1の組成物を対象に1回若しくは複数回重ねて施用すること又はその逆の手段で本発明の複合組成物を形成することによって、生じさせてもよい。間接的な接触は、第2の組成物を対象に施用し、次いで、基材、限定されるものではないが例えば、布、包帯、ガーゼなどを介して第1の組成物を対象に施用すること又はその逆の手段で本発明の複合組成物を任意に形成することによって、生じさせてもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の第1の組成物と第2の組成物とを接触させた時点で、本発明の第1の組成物は、第2の組成物中に存在するAPI、限定されるものではないが例えばNO放出性APIの放出をモジュレートするように構成され得る。いくつかの実施形態においては、本発明の第1の組成物中に存在する水及び/又はプロトン(複数可)が、第2の組成物と接触して、第2の組成物中に存在するAPI、限定されるものではないが例えばNO放出性APIの放出をモジュレートすることができる。代替的に、又は加えて、いくつかの実施形態においては、本発明の第1の組成物を第2の組成物と接触させることで第2の組成物のpHをモジュレートし、それにより、第2の組成物中に存在するAPI、限定されるものではないが例えばNO放出性APIの放出をモジュレートすることができる。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、水及び/又はプロトン(複数可)を第2の組成物に供給するように構成される、及び/又は、第2の組成物のpHをモジュレートするように構成される。
【0057】
本発明の発明者らは、本発明の実施形態が、驚くべきことに、NO放出性APIを含む組成物から放出される一酸化窒素の量を有意に増大させることができる、及び/又は、NO放出性APIを含む組成物から一酸化窒素を連続放出させることができる、ということを見出した。例えば、このことは、本発明の第1の組成物を含まない組成物(すなわち、2% Nitricil(商標)NVN1ゲル)と本発明の第1の組成物を含む本発明の組成物(すなわち、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル)とを比較している図12からわかる。2% Nitricil(商標)NVN1ゲルと、NO放出性APIを含んでいる1% Nitricil(商標)NVN1ゲルの部分は、同じ量のNO放出性APIを含有していた。図12は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、2% Nitricil(商標)NVN1ゲルとの比較で、一酸化窒素の放出量が有意に多かったこと、さらに、ある期間にわたって一酸化窒素の連続放出をもたらしたことを実証するものである。
【0058】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本発明の第1の組成物とNO放出性APIとを含む本発明の組成物は、本発明の組成物から一酸化窒素を大量放出させる及び/又は本発明の組成物から一酸化窒素を連続的に放出させることができるプロトン供与系をもたらし得るのではないかと考えられる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、プロトン供与系は、本発明の組成物(例えば、本明細書に記載するとおりの、本発明の第1の組成物と第2の組成物とを含む組成物)及び/又は本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)によって形成され得る酸である可能性がある。本発明の組成物は、NO放出性API中のNO供与体にプロトンを与える及び/又はプロトンがNO放出性API中のNO供与体に極めて近接することを可能にすることにより、一酸化窒素の放出を可能にすることができる。本発明の組成物は、長期間にわたってプロトンを与える及び/又はプロトンがNO供与体に近接することを可能にすることで、約1時間又はそれを超える時間、限定されるものではないが例えば、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間又はそれを超える時間にわたってNOを連続放出させることができる。
【0059】
プロトン供与系は、本発明の第1の組成物によりもたらされ得る。例えば、プロトン供与系は、酸性ポリマー、限定されるものではないが例えばカルボキシポリメチレンを含む本発明の第1の組成物によりもたらされ得る。ここで、酸性ポリマーは部分的に中和されており、第1の組成物は、約3から約8まで又はその中の任意の範囲、限定されるものではないが例えば、約3から約6まで、約3から約6まで、又は約5から約7までのpHを有する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、部分的に中和された酸性ポリマーは、コイル状構造を有するポリマーゲルマトリックスを第1の組成物にもたらすことができる。ポリマーゲルマトリックスのコイル状構造は、プロトンが本発明の組成物中のNO供与体に近接しているときにはプロトンを与える及び/又は供与することができ、また、このコイル状構造は、一部のプロトン(例えば、内側のプロトン)を、組成物中のNO供与体と反応しないように保護することができる。ポリマーゲルマトリックスのコイルがほどけるのに伴い(例えば、組成物のpHがより塩基性になっていく及び/又はポリマーゲルマトリックスが中和されていくのに伴い)、さらなるプロトン(例えば、保護されていたプロトン)がNO供与体に近接することができ、これにより、組成物から一酸化窒素をより長い期間にわたって放出させること、及び/又は、組成物から放出される一酸化窒素の量を多くすることができる。
【0060】
特定の実施形態において、本発明の第1の組成物は、第1の組成物と第2の組成物とが接触された及び/又は対象の皮膚に施用された際に、第2の組成物及び/又は複合組成物(すなわち、本発明の組成物)のpHが、約11未満(less that)、いくつかの実施形態においては約10未満、いくつかの実施形態においては約8.5未満、さらなる実施形態においては約7未満、またさらなる実施形態においては約6から約8の間になるように、第2の組成物のpHをモジュレートする。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明の複合組成物のpHは、複合組成物が対象の皮膚に施用された時点で変化する。特定の実施形態において、本発明の複合組成物のpHは、複合組成物が対象の皮膚に施用された時点で皮膚の緩衝能(buffering capacity)により低減する。いくつかの実施形態において、本発明の複合組成物を対象の皮膚に施用した後の複合組成物のpHは、第1の組成物を伴わずに皮膚に施用された第2の組成物のpHを下回る。第2の組成物中のAPIの放出動態がpHにより変化する実施形態においては、皮膚の緩衝能を利用して、複合した後及び施用する前における複合組成物の安定性を改善しながら放出をモジュレートすることができる。つまり、例えば、一酸化窒素放出性巨大分子を含んでいる第2の組成物のpHは、混合する前は10超であり、混合した後は9であり、皮膚に施用した後は8である、ということが可能である。pHが低減するごとに、巨大分子からの一酸化窒素の放出は増大され得る。したがって、変化するpH及び皮膚の緩衝能を活かせば、本発明の複合組成物にかける作業時間(例えば、混合及び施用する時間)を増やすことが可能になり得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、第2の組成物を含むことができ、この第2の組成物は、無水組成物であり得る。「無水(の)」は、本明細書において使用する場合、調製中の時点では第2の組成物への直接的な水の付加がないことを意味する。しかし、当業者であれば、水は、第2の組成物の調製中、保存中及び/又は使用中のどの時点でも、第2の組成物により及び/又は第2の組成物中の1つ又は複数の原料により物理的及び/又は化学的に吸収され得る(すなわち、第2の組成物への間接的な水の付加)ということを認識するであろう。いくつかの実施形態において、用語「無水(の)」は、第2の組成物の含水量が第2の組成物の重量に対して5%未満又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値であることを意味する。第2の組成物の含水量は、第2の組成物の重量に対して5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1若しくは0.5%未満又はその中の任意の範囲であってよい。含水量は、当業者に公知の方法、限定されるものではないが例えばカール・フィッシャー滴定により測定することができる。いくつかの実施形態においては、第2の組成物と接触した時点で、本発明の組成物は第2の組成物に水を付加し、及び/又は、第2の組成物は本発明の組成物から水を吸収する。
【0063】
本発明の第1の組成物と接触させて使用及び/又は配置(place)することができる例示的な第2の組成物としては、限定されるものではないが、国際公開第2013/006608号に記載されているものが挙げられ、同文献は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。本発明の組成物(例えば、本発明の複合組成物)を形成するために本発明の第1の組成物と接触させて使用及び/又は配置することができる例示的な第2の組成物は、第2の組成物の重量に対して約0.5%から約30%までの量で第2の組成物中に存在する少なくとも1つの増粘剤、第2の組成物の重量に対して約50%から約90までの量で第2の組成物中に存在する少なくとも1つの有機溶媒、及び第2の組成物の重量に対して約2%から約20%までの量で第2の組成物中に存在する少なくとも1つの保湿剤を含む、無水組成物を含むことができる。第2の組成物は、少なくとも1つの撥水化剤(water repelling agent)、別名撥水剤(water repellant)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、第2の組成物は、表11に記載されている組成物を含むことができる。
【0064】
第2の組成物に使用するための例示的な増粘剤としては、限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロースとアクリル酸とのコポリマー、N−ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリ(エチレングリコール))、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルアセテート)、セルロース、誘導体化されたセルロース、アルギネート、これらのコポリマー及びこれらのブレンドが挙げられる。第2の組成物のための粘性剤(viscosity agent)の具体例は、ヒドロキシプロピルセルロース、例えば、Klucel(登録商標)ヒドロキシプロピルセルロース(例:Klucel(登録商標)MF Pharmグレード)である。増粘剤は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約0.1%から約30%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第2の組成物の重量に対して約0.5%から約20%まで、約1%から約10%まで、又は約1%から約5%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、増粘剤は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約0.1%、0.25%、0.5%、0.75%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%若しくは30%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在することができる。
【0065】
第2の組成物に使用するための例示的な有機溶媒としては、限定されるものではないが、アセトン、メチルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、酢酸エチル、ジメチルイソソルビド、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はこれらの混合物が挙げられる。本発明のいくつかの実施形態において、第2の組成物中の有機溶媒は、エタノール及び/又はイソプロピルアルコールであり得る。有機溶媒は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約50%から約90%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第2の組成物の重量に対して約60%から約90%まで、約70%から約90%まで、又は約75%から約85%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%若しくは90%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在することができる。
【0066】
第2の組成物に使用するための例示的な保湿剤としては、限定されるものではないが、グリコール、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル;グリセロール;糖ポリオール、例えば、ソルビトール、キシリトール及びマルチトール;ポリオール、例えば、ポリデキストロース;キラヤ、尿素、並びにこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態において、第2の組成物中の保湿剤は、アルキレングリコール、例えばヘキシレングリコールなどを含むことができる。保湿剤は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約2%から約20%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第2の組成物の重量に対して約2%から約15%まで、約5%から約15%まで、又は約15%から約20%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、保湿剤は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在することができる。
【0067】
第2の組成物に使用するための例示的な撥水剤としては、限定されるものではないが、シリコーン、例えば、シクロメチコン、ジメチコン、シメチコン、C26〜28アルキルジメチコン、C26〜28アルキルメチコン、ポリフェニルシスキオキサン(polyphenylsesquioxane)、トリメチルシロキシシリケート、並びに、シクロペンタシロキサン及びジメチコン/ビニルトリメチルシロキシシリケートのクロスポリマー、並びにこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態において、第2の組成物は、シクロメチコンを含むことができる。撥水剤は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約0.5%から約15%まで又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、第2の組成物の重量に対して約0.5%から約10%まで、約1%から約5%まで、又は約2%から約5%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、撥水剤は、第2の組成物中に、第2の組成物の重量に対して約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%若しくは15%又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値の量で存在することができる。
【0068】
したがって、本発明の組成物は、少なくとも1つの多価アルコール、第1の増粘剤、少なくとも1つの防腐剤、少なくとも1つの緩衝化剤、水、第2の増粘剤、少なくとも1つの有機溶媒、少なくとも1つの保湿剤、及び、任意で撥水化剤を含むことができる。
【0069】
本発明の組成物(例えば、本発明の第1の組成物及び第2の組成物)は、約3から約11まで、限定されるものではないが例えば、約3から約9.5まで、又は約3から約8までのpHに緩衝化されていてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、9.5以上のpHを有することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1つのAPI、限定されるものではないが例えば一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む第2の組成物を含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は第2の組成物を含み、ここで、第2の組成物は、水分に敏感なAPIを含む。第2の組成物は、水分に敏感なAPIを安定に貯蔵することができる。いくつかの実施形態において、水分に敏感なAPIは、NO放出性API、限定されるものではないが例えばジアゼニウムジオレート修飾された巨大分子を含むことができる。
【0071】
「一酸化窒素放出性医薬品有効成分」及び「NO放出性API」は、本明細書において使用する場合、対象の皮膚に一酸化窒素をもたらす化合物又は他の組成物を指すが、気体の一酸化窒素ではない。いくつかの実施形態において、NO放出性APIには一酸化窒素放出性化合物が含まれ、これを本明細書では以後「NO放出性化合物」と呼ぶ。NO放出性化合物は、少なくとも1つのNO供与体を含んでおり、このNO供与体は、一定の条件下で一酸化窒素を放出することができる官能基である。いくつかの実施形態において、NO放出性化合物の少なくとも1つのNO供与体は、本発明の組成物と接触した時点でNOを放出する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、NO放出性化合物から放出されるNOの量及び/又はNO放出性化合物から放出されるNOの速度をモジュレートする。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、NO放出性化合物から放出されるNOの量及び/又はNO放出性化合物から放出されるNOの速度を増大させる。
【0072】
任意の適当なNO放出性化合物を使用することができる。いくつかの実施形態において、NO放出性化合物としては、NO供与基を含んでいる小分子化合物が挙げられる。「小分子化合物」は、本明細書において使用する場合、分子量が500ダルトン未満である化合物と定義され、これには有機及び/又は無機小分子化合物が含まれる。いくつかの実施形態において、NO放出性化合物としては、NO供与基を含んでいる巨大分子が挙げられる。「巨大分子」は、本明細書においては、分子量が500ダルトン以上である任意の化合物と定義される。任意の適当な巨大分子を使用することができ、その例としては、架橋している又は架橋していないポリマー、デンドリマー、金属化合物、有機金属化合物、無機系化合物、及び他の巨大分子付着物(macromolecular scaffold)などが挙げられる。いくつかの実施形態において、巨大分子は、公称径(nominal diameter)が約0.1nmから約100μmまでの範囲であり、2つ以上の巨大分子が凝集して構成されていてもよい。これにより、巨大分子構造は、NO供与基でさらに修飾される。
【0073】
いくつかの実施形態において、NO放出性化合物は、NO供与体としてジアゼニウムジオレート官能基を含んでいる。ジアゼニウムジオレート官能基は、一定の条件下で、例えば水に曝露された時点で、一酸化窒素を生成することができる。別の例として、いくつかの実施形態では、NO放出性化合物は、NO供与体としてニトロソチオール官能基を含んでいる。NO供与体は、一定の条件下で、例えば光に曝露された時点で、一酸化窒素を生成することができる。他のNO供与基の例としては、ニトロソアミン、ヒドロキシルニトロソアミン、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシ尿素が挙げられる。NO供与体及び/又はNO放出性化合物の任意の適当な組合せを、本明細書に記載の第2の組成物中で使用することもできる。加えて、NO供与体は、共有結合的及び/又は非共有結合的な相互作用を介して小分子又は巨大分子の中又は上に組み込まれてもよい。
【0074】
NO放出性巨大分子は、米国特許出願公開第2009/0214618号に記載されているものなどのNO放出性粒子の形態であってもよく、同文献の開示内容は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。NO放出性化合物のその他の非限定的な例としては、米国特許出願公開第2006/0269620号又は同第2010/0331968号に記載のNO放出性ゼオライト;米国特許出願公開第2010/0239512号又は同第2011/0052650号に記載のNO放出性の金属有機構造体(MOF);PCT/US2012/052350、発明の名称「Tunable Nitric Oxide−Releasing Macromolecules Having Multiple Nitric Oxide Donor Structures」に記載のNO放出性の多重供与体化合物(multi−donor compound);米国出願公開第2009/0214618号に記載のNO放出性のデンドリマー又は金属構造体;米国出願公開第2011/0086234号に記載の一酸化窒素放出性コーティング;及び米国出願公開第2010/0098733号に記載の化合物が挙げられる。この段落に記載する参考文献のそれぞれの開示内容は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。加えて、NO放出性巨大分子は、2012年1月20日に出願されたPCT/US2012/022048、発明の名称「Temperature Controlled Sol−Gel Co−Condensation」の記載に従って作製することができ、同文献の開示内容は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。
【0075】
一例であるが、本発明のいくつかの実施形態において、一酸化窒素放出性医薬品有効成分としては、NOが担持された沈降(precipitate)シリカを挙げることができる。NOが担持された沈降シリカは、一酸化窒素供与体で修飾されたシランモノマーから、共縮合(co−condense)されたシロキサンネットワークの形態になることができる。本発明の一実施形態において、一酸化窒素供与体は、N−ジアゼニウムジオレートであり得る。本発明のいくつかの実施形態において、一酸化窒素放出性医薬品有効成分は、ジアゼニウムジオレート(例えば、N−ジアゼニウムジオレート)を含む共縮合されたシロキサンネットワークを含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、一酸化窒素供与体は、プレチャージング法(pre−charging method)によりアミノアルコキシシランから形成することができ、共縮合されたシロキサンネットワークは、アルコキシシランとアミノアルコキシシランとを含んでいるシラン混合物を縮合させることにより合成して、一酸化窒素供与体で修飾された共縮合されたシロキサンネットワークの形態にすることができる。本明細書において使用する場合、「プレチャージング法」は、アミノアルコキシシランが、アルコキシシランとの共縮合に先立ち一酸化窒素で「前処理」されている又は「プレチャージ」されていることを意味する。いくつかの実施形態において、一酸化窒素のプレチャージングは、化学的な方法によって遂行することができる。別の実施形態においては、「プレチャージング」法は、NO供与体でより高密度に官能化された共縮合されたシロキサンネットワーク及び材料を創出するために使用してもよい。本発明のいくつかの実施形態において、一酸化窒素放出性医薬品有効成分は、アルコキシシランと、ジアゼニウムジオレート(例えば、N−ジアゼニウムジオレート)でアミン置換されている少なくとも1つのアミノアルコキシシランとを含むシラン混合物を縮合させることにより合成された共縮合されたシリカネットワークを含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成ることができる。
【0077】
共縮合されたシロキサンネットワークは、均一な粒径のシリカ粒子、さまざまな粒径のシリカ粒子の集まり、非晶質シリカ、フュームドシリカ、ナノ結晶シリカ、セラミックシリカ、コロイド状シリカ、シリカコーティング、シリカフィルム、有機修飾シリカ、メソ多孔性シリカ、シリカゲル、生体活性ガラス、又は任意の適当な形態若しくは状態のシリカであってよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、アルコキシシランは、式Si(OR)4(式中、Rはアルキル基である)を有するテトラアルコキシシランである。R基は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、テトラアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)又はテトラエチルオルトシリケート(TEOS)として選択される。いくつかの実施形態において、アミノアルコキシシランは、次式:R”−(NH−R’)n−Si(OR)3(式中、Rはアルキル基であり、R’は、アルキレン、分岐アルキレン又はアラルキレンであり、nは1又は2であり、R”は、アルキル、シクロアルキル、アリール及びアルキルアミンから成る群から選択される)を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、アミノアルコキシシランは、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AHAP3)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3)、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(DET3)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン(AEMP3)、[3−(メチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(MAP3)、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(n−BAP3)、t−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(t−BAP3)、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン(EAiB3)、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(PAP3)及びN−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン(cHAP3)から選択することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、アミノアルコキシシランは、次式:NH[R’−Si(OR)3]2(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンである)を有する。いくつかの実施形態において、アミノアルコキシシランは、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン及びビス−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンから選択することができる。
【0081】
いくつかの実施形態においては、本明細書において先に記載のとおり、アミノアルコキシシランはNO放出のためにプレチャージされ、アミノ基はジアゼニウムジオレートで置換されている。したがって、いくつかの実施形態においては、アミノアルコキシシランは、次式:R”−N(NONO−X+)−R’−Si(OR)3(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレン又はアラルキレンであり、R”はアルキル又はアルキルアミンであり、X+は、Na+、K+及びLi+から成る群から選択されるカチオンである)を有する。
【0082】
シロキサンネットワークの組成(例えば、アミノアルコキシシランの量又は化学組成)及び一酸化窒素チャージング条件(例えば、溶媒及び塩基)は、一酸化窒素放出の量及び持続期間を最適化するために変化させることができる。したがって、いくつかの実施形態においては、シリカ粒子の組成を変更することで、シリカ粒子からのNO放出量の半減期を調節することができる。
【0083】
別の実施形態においては、アミノアルコキシシランのアミノ基はジアゼニウムジオレートで置換されており、この場合のアミノアルコキシシランは、式:R”−N(NONO−X+)−R’−Si(OR)3(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレン又はアラルキレンであり、R”はアルキル又はアルキルアミンであり、X+は、Na+及びK+から成る群から選択されるカチオンである)を有する。
【0084】
いくつかの実施形態において、NO放出性APIは、ジアゼニウムジオレート化された(diazeniumdiolated)アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3)とテトラメチルオルトシリケート(TMOS)とを含む共縮合されたシリカネットワーク、及び/又は、ジアゼニウムジオレート化されたアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3)とテトラエチルオルトシリケート(TEOS)とを含む共縮合されたシリカネットワークを含むことができる。いくつかの実施形態において、NO放出性APIは、ジアゼニウムジオレート化されたメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAP3)とテトラメチルオルトシリケート(TMOS)とを含む共縮合されたシリカネットワーク、及び/又は、ジアゼニウムジオレート化されたメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAP3)とテトラエチルオルトシリケート(TEOS)とを含む共縮合されたシリカネットワークを含むことができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態において、NO放出性APIの粒径は、約20nmから約20μmまで又はその中の任意の範囲、限定されるものではないが例えば、約100nmから約20μmまで、若しくは約1μmから約20μmまでの範囲であってよい。粒径は、毒性を最小化させる若しくは防止するために、並びに/又は、上皮(若しくは、損なわれた真皮)を通して且つ血管中に浸透させるために調整することができる。特定の実施形態において、粒径は、20μm未満又はその中の任意の範囲の平均粒径前後に分布しており、そのような粒径であれば、粒子を毛包(follicle)に入り込ませることが可能になる。いくつかの実施形態において、NO放出性APIは、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1μmの平均粒径前後に分布している粒径を有することができる。さらなる実施形態において、NO放出性APIは、10μm未満又はその中の任意の範囲、限定されるものではないが例えば、約2μmから約10μmまで、若しくは約4μmから約8μmまでの平均粒径前後に分布している粒径を有することができる。他の実施形態においては、粒径は、20μm超又はその中の任意の範囲の平均粒径前後に分布していてよく、そのような粒径であれば、粒子が毛包に入り込まないようにすることができる。またさらなる実施形態では、平均粒径が2つ以上の平均粒径前後に分布している粒子の混合物が提供され得る。NO放出性APIは、微粉化させる(例えば、ボールミル及び/又はジェットミルにかける)ことができる。所望の粒径及び/又は微粒子化をもたらすための方法としては、限定されるものではないが、米国特許出願公開第2013/0310533号に記載されているものが挙げられ、同文献は、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部となすものとする。
【0086】
一酸化窒素放出性医薬品有効成分は、本発明の組成物中に、組成物の重量に対して約0.5%から約10%まで、限定されるものではないが例えば、約1%から約8%まで、又は約2%から約6%までの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、一酸化窒素放出性医薬品有効成分は、本発明の組成物中に、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%の量で存在することができる。本発明の組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効組成物(nitric oxide−releasing active pharmaceutical composition)を含むことができ、一酸化窒素を、組成物の重量に対して約0.05%から約3%まで、限定されるものではないが例えば、約0.15%から約2%まで、約0.15%から約1%まで、約0.3%から約1.2%までの量で貯蔵及び/又は放出することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、一酸化窒素放出性有効医薬品(active pharmaceutical)を含むことができ、一酸化窒素を、約0.15%、0.3%、0.6%、0.9%、1%、1.2%、1.5%、1.75%、2%、2.25%、2.5%、2.75%又は3%の量で貯蔵及び/又は放出することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、組成物(例えば、NO放出性APIを含む第2の組成物)から放出されるNOの量を、本発明の第1の組成物の非存在下において同じ期間にわたって該組成物から放出されたNOの量に比して増大させることができる。いくつかの実施形態において、本発明の第1の組成物は、第1の組成物とNO放出性APIとを含む本発明の組成物から放出されるNOの量を、本発明の第1の組成物の非存在下において同じ期間にわたって放出されたNOの量に比して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90若しくはそれを超えて又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値分だけ増大させることができる。したがって、本発明の組成物(例えば、本発明の第1の組成物とNO放出性APIを含む第2の組成物とを含む組成物)は、本発明の第1の組成物の非存在下で(例えば、第2の組成物のみで)同じ期間にわたって放出されたNOの量より約1.5倍から約100倍多いNO又はその中の任意の範囲及び/若しくは個々の値、限定されるものではないが例えば、約2倍から10倍多いNO、又は、約5倍から約50倍多いNOを放出することができる。
【0088】
例えば、本発明の組成物がNO放出に及ぼし得る効果は、図7及び図8からわかる。図7は、表1に記載されているとおりの処方を有する2% Nitricil(商標)NVN1ゲルを用いた場合の、時間の経過に伴うインビトロでの一酸化窒素放出プロファイルを示すものである。図8は、表1に記載されているとおりの処方を有する2% Nitricil(商標)NVN1ゲル並びに6%及び12%のNitricil(商標)NVN1ゲルについて、表2に記載されているとおりの処方を有するpH4の本発明の第1の組成物と1:3の比率(ゲル:第1の組成物)で混合した際における、時間の経過に伴うインビトロでの一酸化窒素放出プロファイルを示すものである。図7及び図8からわかるように、2% Nitricil(商標)NVN1ゲルを用いた場合のNO累積放出量は、本発明の第1の組成物と接触することで増大した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
本発明の組成物は、本明細書に記載の本発明の第1の組成物及び第2の組成物を含むことができる。当業者には認識されるであろうが、本発明の組成物中の個々の成分の量又は濃度は、組成物中に存在する第1の組成物及び第2の組成物の量(例えば、組成物中に存在する第1の組成物と第2の組成物との比率)によって変動し得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における本発明の第1の組成物の第2の組成物に対する比率は、約5:1以下、さらなる実施形態においては約4:1以下、約3:1以下、約2:1以下、約1:1以下、約0.5:1以下、又は約0.2:1以下であり得る。特定の実施形態において、この比率は、約3:1であり得る。さらなる実施形態において、この比率は、約1:1であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物の重量に対して約1%から約10%までの量の多価アルコール、組成物の重量に対して約0.01%から約3%までの量の第1の増粘剤、組成物の重量に対して約30%から約50%までの量の水、組成物の重量に対して約0.01%から約10%までの量の第2の増粘剤、組成物の重量に対して約30%から約50%までの量の有機溶媒、組成物の重量に対して約2%から約10%までの量で第2の組成物中に存在する保湿剤、組成物の重量に対して約0.1%から約10%までの量の撥水化剤、組成物の重量に対して約0.5%から約10%までの量のNO放出性API、任意で、組成物の重量に対して約0.001%から約1%までの量の緩衝化剤、任意で、組成物の重量に対して約0.001%から約1%までの量の防腐剤、及び任意で中和剤を含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成ることができる。中和剤は、約3から約8までのpHを組成物の第1の部分にもたらすのに十分な量で存在することができる。本組成物は、約11未満、限定されるものではないが例えば、約9.5未満、約7未満又は約6未満のpHを有することができる。第1の増粘剤と第2の増粘剤とは、同じであってもよい及び/又は異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、第1の増粘剤はカルボキシポリメチレンであり得、第2の増粘剤は、セルロース、限定されるものではないが例えばヒドロキシプロピルセルロースであり得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、美容的にエレガントなものであり得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物の重量に対して約2%から約7%までの量の多価アルコール、組成物の重量に対して約0.1%から約1%までの量の第1の増粘剤、組成物の重量に対して約40%から約45%までの量の水、組成物の重量に対して約0.1%から約1%までの量の第2の増粘剤、組成物の重量に対して約35%から約45%までの量の有機溶媒、組成物の重量に対して約2%から約7%までの量で第2の組成物中に存在する保湿剤、組成物の重量に対して約0.1%から約5%までの量の撥水化剤、組成物の重量に対して約0.5%から約10%までの量のNO放出性API、任意で、組成物の重量に対して約0.01%から約0.2%までの量の緩衝化剤、任意で、組成物の重量に対して約0.01%から約0.3%までの量の防腐剤及び任意で中和剤を含む又はこれらから本質的に成る又はこれらから成ることができる。中和剤(the neutralizing)は、約4又は約6のpHを組成物の第1の部分にもたらすのに十分な量で存在することができる。本組成物は、約11未満、限定されるものではないが例えば、約9.5未満、約7未満又は約6未満のpHを有することができる。第1の増粘剤と第2の増粘剤とは、同じであってもよい及び/又は異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、第1の増粘剤はカルボキシポリメチレンであってよく、第2の増粘剤は、セルロース、限定されるものではないが例えばヒドロキシプロピルセルロースであってよい。いくつかの実施形態において、本組成物は、美容的にエレガントなものであり得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、表13に記載されているとおりの組成物を含むことができる。
【0094】
本発明の組成物は、少なくとも2つの異なる増粘剤を含むことができる。一方の増粘剤は、本発明の組成物の第1の部分中に存在することができ、他方の増粘剤は、組成物の第2の部分中に存在することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、カルボキシポリメチレン及びセルロース、限定されるものではないが例えばヒドロキシプロピルセルロースを含む。カルボキシポリメチレンは本発明の第1の組成物中に存在することができ、セルロースは第2の組成物中に存在することができ、これらが合わされて本発明の組成物を形成してもよい。少なくとも2つの異なる増粘剤を含む本発明の組成物は、API、限定されるものではないが例えば微粒子状API及び/又は不溶性API(例えば、水性及び/又は水分不溶性の(moisture insoluble)API、例えば過酸化ベンゾイルなど)を含む、美容的にエレガントな組成物となり得る。
【0095】
本発明の組成物は、API、限定されるものではないが例えば微粒子状API及び/又は不溶性APIを懸濁させるのに適した構造をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、API、限定されるものではないが例えば微粒子状API及び/又は不溶性APIをカプセル化することができる。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つの増粘剤中でAPIをカプセル化することができる及び/又はAPIのカプセル化に適した構造をもたらすことができる。本発明の組成物は、組成物中のAPIの凝集化(agglomeration:集塊化)を防止する及び/又は低減することができる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本発明の第1の組成物は、APIを懸濁させる及び/又はカプセル化するための手段、並びに/又は、組成物中のAPIの凝集化を防止する及び/若しくは低減させるための手段をもたらすことができる。例えば、本発明の第1の組成物は、本発明の組成物におけるAPIを懸濁化及び/又はカプセル化するのに適した、並びに/又は、本発明の組成物中のAPIの凝集化を防止する及び/若しくは低減させるのに適した構造(例えば、ゲルマトリックス)をもたらすことができる。
【0096】
本発明の組成物は、API、カルボキシポリメチレン及びセルロースを含むことができ、美容的にエレガントな組成物であり得る。本組成物は、ザラついていないものであり得、及び/又は、本発明の組成物の非存在下におけるAPIに比して、ザラつきが低減しているものであり得る。本組成物は、ベタついて(すなわち、粘ついて)いないものであり得、及び/又は、本発明の組成物の非存在下におけるAPIに比して、ベタつき(すなわち、粘つき)が低減しているものであり得る。本組成物は、ゴワつき(すなわち、硬度)が低減及び/又は増大しているものであり得、及び/又は、本発明の組成物の非存在下におけるAPIに比して均質性が増大しているものであり得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、APIを含むことができ、美容的にエレガントな均質な組成物であり得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本発明の第1の組成物は、美容的にエレガントな均質な組成物とするための手段をもたらすことができる。例えば、本発明の第1の組成物は、美容的にエレガントな均質な組成物とするのに適した構造(例えば、ゲルマトリックス)をもたらすことができる。
【0097】
本発明の組成物の第1の部分及び/又は第1の組成物と、本発明の組成物の第2の部分及び/又は第2の組成物は、本発明の組成物を配合するプロセス中に接触させる(例えば、混合する、撹拌する、ブレンドする、均質化するなど)ことができる。次いで、本発明の組成物は、第1の部分及び/又は第1の組成物と、第2の部分及び/又は第2の組成物が複合された状態で(例えば、同一の容器及び/又はコンテナーの中で)保存することができる。
【0098】
本発明の組成物は、製剤化することが難しいAPI、限定されるものではないが例えば、局所用組成物として製剤化することが難しいAPIを含むことができる。例えば、APIは、微粒子状API、不溶性API(例えば、水及び/若しくは水分不溶性のAPI)、熱的に不安定なAPI、並びに/又は光に敏感なAPIであってもよい。
【0099】
本発明の実施形態によれば、本発明の組成物に2つの分かれた部分を用意することにより、改善された組成物を提供することができる。少なくとも2つの部分を備える本発明の組成物は、API(例えば、製剤化することが難しいAPI)を1つの部分の中に用意しておき、後で第2の部分と合わせることで、美容的にエレガントな組成物を調製することができ、並びに/又は、本発明の組成物の1つの部分を用いて及び/若しくは本発明の組成物の非存在下で形成された組成物の形態で調製された同じAPIに比して、より安定なAPIを含む組成物を調製することを可能にすることができる。APIは、本発明の組成物の非存在下における活性に比してより大きな活性を有することができることから、より安定であることができ、及び/又は、APIは、本発明の組成物の非存在下で保存した場合に比してより長い期間にわたり保存され得る。いくつかの実施形態において、API(例えば、製剤化することが難しいAPI)を含む本発明の組成物は、本発明の組成物の非存在下における組成物中のAPIに比して、より美容的にエレガントな組成物となり得る。例えば、微粒子状API及び/又は不溶性APIを含む本発明の組成物は、ザラつきのより少ない組成物、ひいてはより美容的にエレガントな組成物となり得る。
【0100】
本発明の実施形態によれば、キットを提供することができる。いくつかの実施形態において、本発明のキットは、本明細書に記載の本発明の第1の組成物及び第2の組成物を備えることができる。第1の組成物は、ヒドロゲルであり得る。第1の組成物は、第1の組成物の重量に対して約1%から約30%までの量で存在する少なくとも1つの多価アルコール、第1の組成物の重量に対して約0.1%から約5%までの量で存在する少なくとも1つの増粘剤、及び第1の組成物の重量に対して約70%から約99%までの量で存在する水を含むことができる。第2の組成物は、API、限定されるものではないが例えばNO放出性APIを含むことができる。いくつかの実施形態において、第2の組成物は、第2の組成物の重量に対して約0.5%から約30%までの量で第2の組成物中に存在する少なくとも1つの増粘剤、第2の組成物の重量に対して約50%から約90までの量で第2の組成物中に存在する少なくとも1つの有機溶媒、及び第2の組成物の重量に対して約2%から約20%までの量で第2の組成物中に存在する少なくとも1つの保湿剤を含むことができる。特定の実施形態において、第2の組成物は、国際出願公開第2013/006608号に記載の、一酸化窒素放出性ポリシロキサン巨大分子を含有する無水アルコールゲルを含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明のキットは、水性組成物と、有機組成物と、該水性組成物及び/又は該有機組成物中で安定及び/又は可溶性であり得るAPIとを備える。本発明のキットは、分注(dispensing)の時点で及び/若しくは対象への施用に際して、2つの組成物を混合するように構成することができ、並びに/又は、APIの性能及び/若しくは活性が、組成物のうち一方及び/若しくは複合組成物の非存在下におけるAPIの性能及び/若しくは活性に比して向上している、複合組成物をもたらすように構成することができる。
【0102】
本発明のキットは、本発明の第1の組成物と第2の組成物とを別々に保存することができる。いくつかの実施形態において、本発明のキットは、第1の組成物と第2の組成物とを、限定されるものではないが例えば、対象に施用する前に組成物を混合することにより、接触させることができる。
【0103】
本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)と第2の組成物は、混ぜ合わせてから対象の皮膚に施用され得る。他の実施形態においては、第2の組成物を対象の皮膚に施用することができ、次いで、第1の組成物を第2の組成物の上から施用することができる。又はその逆でもよい。いくつかの実施形態において、対象に施用することができる第1の組成物の第2の組成物に対する比率は、約5:1以下、さらなる実施形態においては約4:1以下、約3:1以下、約2:1以下、又は約1:1であり得る。特定の実施形態において、この比率は、約3:1であり得る。さらなる実施形態において、この比率は、約1:1であり得る。
【0104】
対象の皮膚への施用時点及び/又は施用中に複合させる第1の組成物と第2の組成物を提供することにより、組成物同士が混ぜ合わされた状態でキットの中で保存された場合よりも、本発明のキットの貯蔵寿命を長くさせることができる。例えば、APIを第2の組成物の形態で製剤化及び担持することにより、貯蔵寿命の長い安定な製品とすることができる。したがって、例えば、第2の組成物のpH及び含水量を調整し、水で活性化されるAPIの放出を低減する又は最小化させることにより、室温で安定な組成物とすることができる。次いで第1の組成物を第2の組成物と複合することで、複合することにより得られるpHを調整し、APIを活性化させるための水を供給することができる。第2の組成物をさまざまな比率で第1の組成物と複合することで、複合組成物について所望の放出、pH及び/又は用量を実現することができる。そのようなアプローチにより、より複雑でコストのかかる第2の組成物の生産、次いで、第2の組成物と混合される相手である第1の組成物の組成及び/又は量により規定される特定の製品の生産に利用するための単一の製造工程が可能になり得る。
【0105】
本開示に照らせば当業者には理解されるであろうが、本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)は、医薬組成物のpHを調整するための手段、並びに、医薬組成物のAPIを活性化させるための手段をもたらすことができる。特定の実施形態において、本発明の第1の組成物は、ジアゼニウムジオレート修飾された共縮合されたポリシロキサン巨大分子を含む無水医薬組成物のpHを低減させるための手段をもたらすことができる。さらなる実施形態において、本発明の第1の組成物は、ジアゼニウムジオレート修飾された共縮合されたポリシロキサン巨大分子を含む無水医薬組成物から一酸化窒素を放出するための手段をもたらすことができる。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、本発明の組成物(例えば、本明細書に記載の本発明の第1の組成物及び第2の組成物)並びに/又は本発明の第1の組成物(例えば、本発明のヒドロゲル)を対象の皮膚に投与することを含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び/又は第1の組成物は、局所投与することができる。組成物は、少なくとも1つのAPI、限定されるものではないが例えば一酸化窒素放出性医薬品有効成分;第2の増粘剤;少なくとも1つの有機溶媒;少なくとも1つの保湿剤;少なくとも1つの多価アルコール;第1の増粘剤;少なくとも1つの防腐剤及び水を含むことができる。本発明の方法は、本発明の組成物の投与の前及び/又は投与中に混和物を形成することを含むことができる。混和物は、少なくとも1つのAPI、限定されるものではないが例えば一酸化窒素放出性医薬品有効成分;第2の増粘剤;少なくとも1つの有機溶媒及び少なくとも1つの保湿剤を含む組成物と、少なくとも1つの多価アルコール;第1の増粘剤;少なくとも1つの防腐剤及び水を含む組成物とを混合すること又は合わせることにより調製することができる。
【0107】
本発明の方法は、本発明の第1の組成物を、第2の組成物と複合した及び/又は混和させた状態で対象の皮膚に局所施用することを含むことができる。第2の組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含むことができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、治療有効量の本発明の組成物を対象の皮膚に送達することを含む。本明細書において使用する場合、用語「治療有効量」は、対象において治療上有用な応答を引き出す本発明の組成物の量を指す。当業者であれば、治療効果は、何らかの利益が対象にもたらされる限り、完全及び治癒的なものである必要はないことを理解するであろう。いくつかの実施形態において、治療有効量の本発明の組成物には、治療有効量の本組成物の成分、限定されるものではないが例えば、医薬品有効成分(例えば、一酸化窒素放出性API)を送達することが含まれ得る。したがって、治療有効量の一酸化窒素は、本発明の組成物により送達する及び/又は投与することができる。
【0109】
本発明は、獣医学的応用と医学的応用の両方において用途がある。本発明の方法の実施形態を用いて治療されるのに適した対象としては、限定されるものではないが、鳥類及び哺乳動物対象が挙げられる。本発明の哺乳動物としては、限定されるものではないが、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウシ、ヤギ、ウマ科の動物、ヒツジ、ブタ、齧歯動物(例えば、ラット及びマウス)、ウサギ、霊長動物(例えば、類人猿及びヒト)、非ヒト霊長動物(例えば、サル、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ)など、並びに、子宮内にいる哺乳動物が挙げられる。本発明により治療される必要のある哺乳動物対象であればすべて適している。ヒト対象は、両性とも、また、いずれの発達段階(すなわち、新生児、乳幼児、若年、青年、成人)にある者でも、本発明により治療され得る。本発明のいくつかの実施形態において、対象は哺乳動物であり、いくつかの実施形態において、対象はヒトである。ヒト対象には、胎児期、新生児期、乳幼児期、若年期、青年期、成人期及び老人期の対象並びに妊娠している対象を含め、あらゆる年齢の男女両方が含まれる。本発明の特定の実施形態において、対象は、青年期及び/又は成人期のヒトである。
【0110】
本発明による例証的な鳥類としては、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ガチョウ、ウズラ、キジ、走鳥類(例えば、ダチョウ)並びに飼育されている鳥(例えば、オウム及びカナリア)、並びに卵内にいる鳥が挙げられる。
【0111】
本発明の方法は、動物対象、とりわけ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜及びウマなどの哺乳動物対象に対して、獣医学的目的で、並びに/又は、薬物スクリーニング及び薬物開発の目的で、行うこともできる。
【0112】
本発明の特定の実施形態において、対象は、本発明の方法を「必要としている」、例えば、対象は、本発明の方法を用いて治療することができる疾患若しくは障害があると診断されている、及び/又は、そのような疾患若しくは障害のリスクがある、及び/又は、そのような疾患若しくは障害を有していると考えられている。いくつかの実施形態において、対象は、皮膚障害、限定されるものではないが例えば、座瘡、アンドロゲン性脱毛症、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、白癬感染症、カンジダ感染症、細菌感染症、尋常性疣贅及び/又は乾癬を有する。本発明のいくつかの実施形態において、対象は、炎症性の皮膚病態又は障害及び/又は感染症(例えば、膿痂疹、リーシュマニア症等)を有する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、尋常性座瘡を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物及び/又は方法は、対象におけるアクネ菌数、炎症性病変及び/又は非炎症性病変を低減することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び/又は方法は、NO放出性APIとアルコール添加剤とを含む組成物の局所投与に適した任意の疾患、障害及び/又は病態、限定されるものではないが例えば、脱毛症(例えば、アンドロゲン性脱毛症)及び/又は疣贅(例えば、尋常性疣贅、足底疣贅、扁平疣贅、糸状疣贅、生殖器疣贅、モザイク疣贅及び/又は爪周囲疣贅)を治療するために使用することができる。
【0113】
「〜を治療する」「〜を治療すること」「〜の治療」(及びこれらの文法的変化形)は、本明細書において使用する場合、対象に利益を賦与するあらゆるタイプの治療を指し、対象の病態の重症度が低減される、少なくとも部分的に改善される若しくは向上すること、並びに/又は、少なくとも1つの臨床症状のいくらかの緩和、軽減若しくは低下が達成されること、並びに/又は、疾患、障害及び/若しくは病態の進行に遅延が認められることを意味することができる。特定の実施形態においては、皮膚障害(例えば、座瘡)の重症度は、対象において、本発明の方法を用いない場合の皮膚障害の重症度に比して低減され得る。他の実施形態においては、本発明の方法は、感染症を予防及び/又は治療することができる。
【0114】
本発明の組成物は、対象の皮膚の任意の部位に局所施用することができる。しかし、いくつかの実施形態においては、対象の顔面が、本明細書に記載されている方法により治療される。さらに、いくつかの実施形態においては、対象の胴部が、本明細書に記載されている方法により治療される。いくつかの実施形態において、対象の手(複数可)、手指(複数可)、足(複数可)、足指(複数可)及び/又は生殖器(複数可)が、本明細書に記載されている方法により治療される。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態によれば、尋常性座瘡を治療する方法であって、本発明の組成物を対象の皮膚に局所施用することを含む方法が提供され得る。治療有効量の本組成物が施用され得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を、組成物の重量に対して約0.5%から約10%まで、限定されるものではないが例えば、約1%から約8%まで、又は約2%から約6%までの量で含むことができる。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%の量で含むことができる。本組成物は、一酸化窒素を、組成物の重量に対して約0.05%から約3%まで、限定されるものではないが例えば、約0.15%から約2%、約0.15%から約1%、約0.3%から約1.2%の量で貯蔵及び/又は放出することができる。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素を、約0.15%、0.3%、0.6%、0.9%、1%、1.2%、1.5%、1.75%、2%、2.25%、2.5%、2.75%又は3%の量で貯蔵及び/又は放出することができる。
【0116】
本発明のさらなる実施形態によれば、対象における炎症性及び/又は非炎症性病変を低減させる方法であって、本発明の組成物を対象の皮膚に局所施用することを含む方法が提供され得る。治療有効量の組成物が施用され得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を、組成物の重量に対して約0.5%から約10%まで、限定されるものではないが例えば、約1%から約8%まで、又は約2%から約6%までの量で含むことができる。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%の量で含むことができる。本組成物は、一酸化窒素を、組成物の重量に対して約0.05%から約3%まで、限定されるものではないが例えば、約0.15%から約2%まで、約0.15%から約1%まで、約0.3%から約1.2%までの量で貯蔵及び/又は放出することができる。いくつかの実施形態において、本組成物は、一酸化窒素を、約0.15%、0.3%、0.6%、0.9%、1%、1.2%、1.5%、1.75%、2%、2.25%、2.5%、2.75%又は3%の量で貯蔵及び/又は放出することができる。
【0117】
炎症性及び/又は非炎症性病変を低減させる方法は、本発明の複合組成物を局所施用することを含むことができる。いくつかの実施形態において、本方法は、炎症性及び/又は非炎症性病変を、定められた期間にわたり、本発明の組成物をそれと同じ長さの期間にわたって施用しなかった対象に比して、約10%以上、限定されるものではないが例えば、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超えて、低減させることができる。いくつかの実施形態において、本方法は、対象における炎症性及び/又は非炎症性病変を、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む組成物を同じ期間にわたって施用しなかった対象に比して、低減させることができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、対象における炎症性及び/又は非炎症性病変を低減させる方法であって、本発明の第1の組成物を対象の皮膚に局所施用することを含む方法が提供され得る。第1の組成物は、API、限定されるものではないが例えばNO放出性APIを含まなくてもよい。治療有効量の第1の組成物が施用され得る。本発明の第1の組成物を局所施用することを含む炎症性及び/又は非炎症性病変を低減させる方法は、炎症性及び/又は非炎症性病変を、定められた期間にわたり、本発明の第1の組成物をそれと同じ長さの期間にわたって施用しなかった対象に比して、約10%以上、限定されるものではないが例えば、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超えて、低減させることができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む本発明の組成物を局所施用することを含むことができ、この方法は、炎症性及び/又は非炎症性病変を、定められた期間にわたり、一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含んでいない実質的に同じ組成物を施用した対象に比して、約10%以上、限定されるものではないが例えば、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超えて、低減させることができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、対象は、炎症性及び/又は非炎症性病変を、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、5週間以内、6週間以内、7週間以内、8週間以内、9週間以内、10週間以内、11週間以内、12週間以内、13週間以内、又はそれを超える週以内に低減させることができる。いくつかの実施形態において、本方法は、対象の皮膚における炎症性及び/又は非炎症性病変を、12週間以内又はそれより早く、いくつかの実施形態においては、8週間以内又はそれより早く、さらなる実施形態においては4週間以内又はそれより早く、低減させることができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本発明の組成物を投与される及び/又は局所施用する対象におけるアクネ菌数を減少させることができる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、アクネ菌数を、定められた期間にわたり、本発明の組成物をそれと同じ長さの期間にわたって施用しなかった対象に比して、約10%以上、限定されるものではないが例えば、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超えて、低減させることができる。いくつかの実施形態において、本方法は、対象におけるアクネ菌数を、同じ期間にわたって一酸化窒素放出性医薬品有効成分を含む組成物を施用しなかった対象に比して低減させることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、アクネ菌数の低減は、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、5週間以内、6週間以内、7週間以内、8週間以内、9週間以内、10週間以内、11週間以内、12週間以内、13週間以内、又はそれを超える週以内に生じさせることができる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、対象の皮膚におけるアクネ菌数を、12週間以内又はそれより早く、いくつかの実施形態においては8週間以内又はそれより早く、さらなる実施形態においては4週間以内又はそれより早く、低減させることができる。
【実施例】
【0123】
本発明を、以下の非限定的な実験例において、より詳細に説明する。
【0124】
[実験例1]
pH値の範囲が3から7までの間である緩衝化されていないヒドロゲル製剤(hydrogel formulation)を開発した。カルボマーであるCarbopol(登録商標)974Pのレベルを変化させて、pH6のヒドロゲル製剤をいくつか製造し、粘稠性及びゲルレオロジーに及ぼす効果を調査した。ソルビン酸、安息香酸(benzoic)及びパラベンなどの防腐剤が、緩衝化されていないヒドロゲルのレオロジー及び粘稠性に及ぼす効果も調査した。製造したヒドロゲル製剤は、イソプロピルアルコール(IPA)を含みNitricil(商標)NVN1の濃度を変化させたNitricil(商標)NVN1局所用ゲル製剤を用いての混和物のpH値の測定(実験例2)及びインビトロでの一酸化窒素(NO)放出動態の確認(実験例3)に使用した。Carpobol(登録商標)980Pを使用した0.1%w/wクエン酸入りの緩衝化されているpH4のヒドロゲル、及び、Carbopol(登録商標)ETD 2020NFポリマーを使用した0.2%w/w 0.1Mリン酸塩緩衝剤入りの緩衝化されているpH6のヒドロゲルも調合した。
【0125】
表3及び表4に示す全ての製剤について、米国薬局方(USP)グレードの水と無水グリセロールを用い、0.5L又は2Lのガラスビーカーいずれかの中で、周囲温度にてIKAオーバーヘッドミキサーを用いて混合した。ソルビン酸、安息香酸、並びにメチル及びプロピルパラベンなどの防腐剤を含有するヒドロゲル製剤の場合は、防腐剤をこのグリセロール水溶液に添加し、完全に溶解するように、ホットプレートを用いて70℃まで加熱した。一旦溶解したら、溶液を周囲温度まで冷却した。各実験における次のステップとして、IKA T−18ミキサーを3〜4のスピードで20〜30秒間使用し、オーバーヘッド撹拌とホモジナイゼーションとの組合せを用いて絶えずかき混ぜながら、Carbopol(登録商標)ポリマーをビーカーにゆっくり移した。20分後に清澄な溶液が形成され、ポリマーが完全に溶解したことが示された。継続してかき混ぜながら、中和されていない混合物のpHを最初に測定してから、中和剤としてトロラミンを十分な量(QS)で使用してpHを所望の値に調整し、ヒドロゲルの粘度を高めた。最後に、所望のpHが一旦得られたら、最終的な量の水を添加して、所望の目標のバッチサイズに到達させた。バッチロット112331については、マスキング剤として二酸化チタンをヒドロゲル中に導入した。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
アニオン性のCarbopol(登録商標)ポリマー974Pを含有する中和されていない混合物のpHは、ポリマー濃度によって、防腐剤使用の有無にかかわらずおよそ2.75〜3であった。pH3のヒドロゲルの粘度は、ごく小量のトロラミンを添加してpHを3単位に調整した場合には非常に低く、このため、増粘効果は認められないことがわかった。Carbopol(登録商標)974Pポリマーを完全に中和させるには、トロラミンを用いて6又は7にpHを調整することが必要であった。しかし、結果として得られた緩衝化されていないヒドロゲルの粘度は、pH6及び7の時に非常に高かった。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、分注することが目的であれば、Carbopol(登録商標)974Pポリマーの濃度を、1%w/wから0.3〜0.5%w/wまで低減させて、pH6及び7のときの粘度を低下させる必要があるかもしれない。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、Carbopol(登録商標)974Pポリマーを0.3%w/w未満の濃度で使用すると、粘稠性の十分でないヒドロゲルが得られる結果となる可能性があり、施用時に皮膚の表面から流れ落ちる可能性がある。
【0129】
pH4の緩衝化されていないヒドロゲルは、0.5%w/wのCarbopol(登録商標)を用いて調合すると、流動させてポンプから分注するのに適しているというだけでなく施用時に皮膚の表面から流れ落ちないという点でも適している粘稠性及びレオロジー特性を有することができる。表5は、表4に記載の防腐剤(複数可)を含有する緩衝化されていないpH4及びpH5の数種のヒドロゲルの粘度測定値を示すものである。
【0130】
【表5】
【0131】
防腐剤を使用したpH4のヒドロゲルの粘度は、7000〜12500cPの範囲であった。防腐剤の添加は、pH、ひいては、トロラミンを用いた中和(増粘)プロセスに影響した。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものでもないが、防腐剤の存在、及び、防腐剤の多様な濃度を考慮して、Carbopol(登録商標)ポリマーのレベルを調整し、それにより、塩基での中和後に一貫した粘度が得られるようにする必要があるかもしれない。防腐剤を使用した緩衝化されていないヒドロゲルのpHを5に増大させると、粘度はおよそ20000cPに顕著に増大した。
【0132】
Carbopol(登録商標)974Pポリマーと共に、緩衝化用のいくつかの酸、例えばクエン酸、酒石酸及び乳酸などを、pH4の段階で緩衝化させるために使用したが、ヒドロゲルは即時に分解して水になっていった。Carbopol(登録商標)ETD2020、NFポリマーは、1〜3%w/wの濃度の緩衝化剤と共に使用するには適さないことがわかった。
【0133】
USP水+無水グリセロール中の0.2%w/wのCarbopol(登録商標)ETD2020 NFポリマーを用いて、リン酸塩で緩衝化されているpH6のヒドロゲルを製造した。pHが6単位であるヒドロゲルを緩衝化するために、リン酸カリウム緩衝剤の0.1Mのストック(stock)を0.2%w/wで添加した。このヒドロゲルを、IPAと多様な濃度のNitricil(商標)NVN1を含有するNitricil(商標)NVN1局所用ゲルと共に用いて、インビトロでの混和物のpHを決定した(実験例2)。リン酸塩で緩衝化されているpH6のヒドロゲルは、0.2%w/wから8%w/wまでの範囲のいくつかの異なるNitricil(商標)NVN1濃度では、pHを0.5単位分低減させる効果を有した。
【0134】
0.1%w/w安息香酸及び0.1%ソルビン酸を1%w/w Carbopol(登録商標)ポリマー980Pと共に含有する、クエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを、0.5kgの規模でうまく(successfully)配合した。緩衝化されているクエン酸ヒドロゲル(buffered citric acid hydrogel)の組成を表6にリスト化する。この緩衝化されているヒドロゲル(バッチロット:126335)を測定したところ、粘度は7285cPであった。製造した、クエン酸で緩衝化されているヒドロゲルは、インビトロでの一酸化窒素放出プロファイルの確認(実験例3)を含め、インビトロ及び皮膚表面でのpHを決定する(実験例2)ために使用した。
【0135】
【表6】
【0136】
一定範囲のpH値をカバーするヒドロゲル製剤を調合した。調合した最初のヒドロゲルは、緩衝化されておらず、防腐剤を使用して、また、防腐剤を使用せずに、配合したものであった。安息香酸、ソルビン酸及びパラベンなどの防腐剤を使用した。パラベンは、Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルと反応することがわかった。ヒドロゲルのpHは、添加するトロラミン(中和剤)の量を変化させることにより調整した。pH及び粘度を増大させるために、添加する中和剤の量を増大させた。pH6及び7では、防腐剤を使用せずに形成した緩衝化されていないヒドロゲルの粘度は高かった。ヒドロゲルの粘度を低減させるために、Carbopol(登録商標)ポリマー濃度を低減させた。防腐剤の添加も、最初のpHに影響した。ポリマー及び中和剤の量を調整して、それにより、所望のpHに到達するようにし、また、皮膚の表面からの流れ落ちに関する問題を生じさせるほどには低くなく、且つ、製品の流動性及び2室式分注器(dual chamber dispensing device)からのポンピングに関する問題を生じさせるほどには高くない粘度を得られるようにした。Carpobol(登録商標)974P及びETD2020ポリマーを、緩衝剤であるクエン酸、乳酸及び酒石酸と共に用いて、緩衝化されているpH4のヒドロゲルを製造することを試みたが、この場合は、pHの急激な変化によりポリマーが分解して水になる結果となった。
【0137】
ホモポリマータイプCであり鎖がより長いポリマーであるCarbopol(登録商標)980Pに替えることにより、ソルビン酸及び安息香酸を使用した、0.1%w/wクエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを、うまく調合した。0.1Mリン酸塩緩衝剤を0.2%w/wで用いて緩衝化したpH6のヒドロゲルも、Carbopol(登録商標)ETD2020ポリマーを用いてうまく調合した。
【0138】
[実験例2]
一連の実験を実施して、IPAを含有し0.2〜12%w/wの範囲の異なる濃度のNitricil(商標)NVN1を有するNitricil(商標)NVN1局所用ゲルと、4から6までの範囲のpHを有する緩衝化されていないヒドロゲル製剤及び緩衝化されたヒドロゲル製剤とを、異なるヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの比率を1:1から3:1までの範囲(ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル)で合わせた最終混和物のpHを決定した。ヒドロゲルのpH、ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルの混合比及びNitricil(商標)NVN1の濃度が最終混和物のpHに及ぼす効果を調査した。この実験の目的は、6から8までの間の範囲の最終混和物のpHを得ることができるかどうかを決定することであった。
【0139】
インビトロでのpH混和測定(pH admixture measurement)についてはすべて、およそ1g量のNitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルを、1mLプラスチック注射器を用いるかアルミニウム管から直接分注するかのいずれかにより風袋既知(tared)の秤量ボート(weigh boat)の中に分注した。およそ1g量を一旦分注したら、秤量ボートの風袋重量を再度量った。次いで、1から3gまでの範囲の所定量のヒドロゲルを、1mL注射器を用いて秤量ボートの中に分注した。次いで、この混和物を、単一の定常状態でpH測定値が記録されるまで、pHプローブ(Beckman Φ350 pHメーター)を用いて混合した。分注はすべて、重量ベースで行った。
【0140】
表7に示すように、リン酸塩で緩衝化されているpH6のヒドロゲル、緩衝化されていないpH4のヒドロゲル及び緩衝化されていないpH6のヒドロゲルを使用して混和物のpH値を決定した。
【0141】
【表7】
【0142】
図1は、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度、ヒドロゲルのpH、及びヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルの比率が混和物のpHに及ぼす効果を示すものである。混和物のpHの結果は、最終混和物において8というpHを実現するためには、Nitricil(商標)NVN1が6%w/w以下のNitricil(商標)NVN1局所用ゲルであれば、pH4のヒドロゲルと、1:1又は3:1いずれの比率で組み合わせても使用することができる、ということを実証している。Nitricil(商標)NVN1の濃度が8%w/w以上の場合は、Nitricil(商標)NVN1の強い緩衝化特性(strong buffering property)が、評価したヒドロゲルのpH及び比率の全てについて、混和物のpHに大きく影響し始める。Nitricil(商標)NVN1の濃度が4%w/w超の場合は、pH4及びpH6のヒドロゲルいずれと混合した際も、著しい発泡(一酸化窒素の放出を示している)が観察された。このことは、pH6のヒドロゲルを使用した場合には、混和物のpHが8を超える高い値であっても観察された。Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルとpH6の緩衝化されているヒドロゲルとを1:3の比率で用いると、Nitricil(商標)NVN1の濃度が2%w/wまでのNitricil(商標)NVN1局所用ゲルの場合は、混和の結果もたらされるpHをpH8未満で維持させることができた。リン酸塩を用いてpH6でヒドロゲルを緩衝化すると、ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルの混合比が1:1の場合も1:3の場合も、最終混和物のpHの低減が促進された。
【0143】
さらなる実験により、pH4及びpH5に調整したヒドロゲル製剤に防腐剤(例えば、パラベン、ソルビン酸及び安息香酸)を0.1%から0.2%w/wまでの間の範囲の濃度で添加する効果を調査した。濃度が2%w/w及び8%w/wのNitricil(商標)NVN1局所用ゲルについて、混和物のpHを測定した。
【0144】
表8は、2%w/wのNitricil(商標)NVN1を使用した場合と8%w/wのNitricil(商標)NVN1を使用した場合の両方について、混和物のpH値を示すものである。表8に示す結果は、2%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルとpH4のヒドロゲルとを1:1の比率で使用すると、防腐剤使用の場合も不使用の場合も、結果的な混和物のpHは6から7までの間となったことを示している。
【0145】
【表8】
【0146】
メチルパラベン及びプロピルパラベンを防腐剤として使用したところ、混和物は褐変(turn brown)した。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものでもないが、このことは、分解産物(複数可)が形成されたことを示すものであった可能性がある。pH5のヒドロゲルを異なる防腐剤と共に使用すると、混和物のpHは、約7までわずかに増大しただけであった。
【0147】
8%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルを、緩衝化されているpH4のヒドロゲルと共に使用した場合と緩衝化されていないpH4のヒドロゲルと共に使用した場合の両方についての、混和物の皮膚表面でのpHも測定した。緩衝化されているpH4のヒドロゲルは、Carbopol(登録商標)980P NFポリマーを0.1%w/wクエン酸と共に含有していた。クエン酸で緩衝化されているpH4の調合したヒドロゲルにおいては、防腐剤として0.1%w/wの安息香酸及びソルビン酸も使用した。
【0148】
緩衝化されていないpH4のヒドロゲル(Carbopol(登録商標)974P)、及び、0.1%w/wクエン酸を使用した緩衝化されているpH4のヒドロゲル(Carbopol(登録商標)980P)を、1:1の比率で用いた場合のインビトロでのpH混和測定をさらに行って、表8に示す実験結果から得られた知見を確認した。図2は、6%w/w及び8%w/wの濃度のNitricil(商標)NVN1を、緩衝化されていないpH4のヒドロゲルと共に使用した場合、混和物のpHは10前後で、以前の結果と同程度であることを示している。0.1%w/wクエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを使用すると、一定範囲のNitricil(商標)NVN1濃度にわたって混和物のpHを低減させる効果がある。
【0149】
インビトロでの皮膚表面のpHの決定調査も実施した。図3は、皮膚は5から6までの間の範囲のpHを有しており、ある程度の緩衝能力(buffering capability)を発揮することを示している。緩衝化されていないpH4のヒドロゲルを8%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルと混合して施用したところ、皮膚のpHは9をわずかに下回った。pHは、30分を超えて一定であった。しかし、0.1%w/wのクエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを8%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルと共に使用した(0.1%w/wの安息香酸及び0.1%w/wのソルビン酸を防腐剤として含んでいた)場合には、皮膚表面のpHは7.5前後であった。
【0150】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むものでもないが、この実験は、pH4の緩衝化されているヒドロゲル及び緩衝化されていないヒドロゲルを、1:1及び3:1の比率で用いると、Nitricil(商標)NVN1の濃度が0.2%w/wから4%w/wまでの間の範囲である場合、最終混和物のpHを5から8までの間で維持することができることを実証するものである。pH4の緩衝化されていないヒドロゲルを3:1の比率で用いると、Nitricil(商標)NVN1濃度が8%w/wまでである場合、混和物のpHを8単位未満で維持することが可能である。緩衝化されているpH6のヒドロゲルを用いると、Nitricil(商標)NVN1濃度が2%w/w以下である場合、該pHを8未満で維持することが可能である。混和物のpH値を8未満で維持するために、濃度が1%w/w以下のNitricil(商標)NVN1を緩衝化されていないpH6のヒドロゲルと共に使用してもよい。ヒドロゲル中での防腐剤の使用が混和物のpHに及ぼす効果は、まったく乃至ほとんどない。pH4のヒドロゲルは、緩衝化されていないものも緩衝化されているものも、1:1の比率で使用すると、pH値は8単位より高くなった。しかし、皮膚に施用されると、皮膚がいくらか緩衝能を発揮することから、表面でのpH測定値は低減する。皮膚表面での混和物のpHが8単位未満になるようにするには、0.1%w/wクエン酸で緩衝化されており安息香酸及びソルビン酸を0.1%w/w含有するpH4のヒドロゲルを使用することができる。しかし、緩衝化されていないpH4のヒドロゲルを用いたところ、インビトロ試験の結果得られたpHが10単位であったのに対し、皮膚表面のpH値は8.5超であった。
【0151】
[実験例3]
インビトロでの放出試験は、単チャンネルと多チャンネル両方の一酸化窒素分析器を用いて実施した。Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルサンプル及びヒドロゲルサンプルの計量には、化学天秤を用いた。およそ50mgのNitricil(商標)NVN1局所用ゲルサンプル及び約50mg又は約150mgいずれかのヒドロゲルサンプルを、サンプル同士を接触させないようにして、予めカットされた単一の秤量ボートに移した。2つのサンプルをおよそ5秒間混合し、次いで直ちに、37℃にて維持されたクリーンな乾燥した50mL NO測定用セルの中に配置した。複合したNitricil(商標)NVN1局所用ゲルサンプル/ヒドロゲルサンプルからの一酸化窒素のリアルタイムでのインビトロ放出量は、次に挙げる機器パラメーターを用いて決定した。
1.湿り窒素流速:112〜115ml/分
2.サンプル温度:37℃
3.検出:化学発光による一酸化窒素
4.データ取得周波数:1Hz、不規則で連続的な交周波(irregular sequential alternating)
5.継続時間:NO放出速度が線形的に低下している時間(8時間以内)
6.取得用ソフトウェア:NovanWare v1.05。
十億分率(PPB)単位のNOからモル単位の一酸化窒素への換算は、ヨウ化カリウム溶液中の既知量の亜硝酸ナトリウムから発生した一酸化窒素を測定してPPBからモルへの換算係数を得ることによって達成された。多チャンネル操作の結果で得られたリアルタイムでの一酸化窒素放出データに隙間があれば、線形補間プログラムを用いることにより埋めた。一酸化窒素が枯渇して測定されなかったサンプルがあった場合には、放出がゼロの部分に直前の約5000秒間の放出データの線形外挿を実施した。次いで、リアルタイムの一酸化窒素放出データを積分して、総(total)一酸化窒素の集積曲線(total nitric oxide accumulation curve)を得た。一酸化窒素放出パラメーター、例えば、Cmax(すなわち、放出されたNOの最高濃度)、Tmax(すなわち、Cmaxに達した時間)、一酸化窒素の累積放出量(すなわち、単位時間当たりのデータ点すべての総和)、及び、総放出量の半分までの到達時間(Time to Half of Total Released)(T50)(すなわち、NO累積量の50%が放出された時間)を、一酸化窒素のリアルタイム放出曲線及び累計放出曲線の両方から計算した。前述の計算はすべて、特注のデータ処理ソフトウェア(NovanWare v1.05)で自動的に実施された。
【0152】
インビトロ放出試験の結果を、混和物のそれぞれのpHと共に下記の表9にまとめる。
【0153】
【表9】
【0154】
図4は、各混合物のCmaxが、混合物の比率、ヒドロゲルのpH及びNVN1の濃度によりどのように影響を受けるかを示すものである。全体的に、pH4のヒドロゲルについては、NVN1濃度の増大に伴いCmaxは増大した。この効果は、Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲル対ヒドロゲルを1:3で含有する混合物の場合に、より顕著である。図5は、Nitricil(商標)NVN1濃度の増大に伴い一酸化窒素の累積放出量が増大することを示すものである。
【0155】
いずれのNitricil(商標)NVN1濃度においても、pH4のヒドロゲルを含有する混合物は全般的に、pH6のヒドロゲルを用いた場合と比較して、その一酸化窒素正味担持量(payload)をより高いCmaxでより多く放出し(図4)、半減期が短い。この効果は、1:3の比率でpH4のヒドロゲルを含有する混合物を、1:1及び1:3の比率でpH6のヒドロゲルを含有する混合物と対比させた場合に、より顕著である。図6は、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度に関連して、緩衝化されていないヒドロゲルのpH及び比率が混和物のpHに及ぼす効果を示すものである。防腐剤を使用したpH4の緩衝化されたクエン酸ヒドロゲルを使用して、さらなるインビトロ試験を実施した。測定は、3回同じように繰り返した。混和物は、15秒間混合してから測定セルの中に入れた。インビトロでの一酸化窒素放出テストの結果を表10に示す。
【0156】
【表10】
【0157】
[実験例4]
第1相、反復投与、単一施設、観察者盲検(observer−blind)、ランダム化、並行群、安全性及び皮膚耐性(tolerability)試験を、60名の健康な志願者を対象に実施した。本試験の目的は、多数の濃度のNitricil(商標)NVN1の安全性及び皮膚耐性を評価することであった。
【0158】
本試験への組入れにあたっての診断及び主要な組入れ基準は、18歳以上の健康な男女志願者であり、ウッド灯(wood‘s lamp)下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光(high degree of fluorescence)によって実証される顔面におけるアクネ菌数が高値である者、とした。
【0159】
スクリーニング/ベースライン(0週目)の来院時点でエントリー基準を満たしていた被験者をランダム化し、2% Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル、8% Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル又は局所用ゲルビヒクルに1:1:1:1の比率で割り付けた(表11)。被験者は平日に1日1回再来院して、割り当てられた試験治療薬(treatment)を監督下で施用した。およそ0.5gを、洗顔後、眼及び口を避けて顔全体(全体表面積(TBSA)の3〜4%)にムラなく施用した。土曜日及び日曜日には、被験者は、1日1回、自宅にて試験治療薬を(非監督下で)施用した。およそ0.5g用量を、1日1回、4週間にわたり局所施用した。
【0160】
【表11】
【0161】
アセスメント(assessment)には、皮膚耐性、血液化学的検査及び血液学的検査、メトヘモグロビン分析、理学的検査、尿妊娠検査(UPT)、有害事象収集、及び、血圧を含むバイタルサインの収集が含まれた。額中央部に由来するプロピオノバクテリウム(Propionobacterium)・アクネス(アクネ菌)培養物を、ベースライン、2週目及び4週目時に収集した。志願者は、ベースライン後の評価のために2週目及び4週目/早期終了(ET、Early Termination)時に再来院した。
【0162】
耐性及び安全性アセスメントには、皮膚耐性評価、有害事象(AE)、メトヘモグロビン測定値、バイタルサインを含む理学的検査、並びに臨床検査[血液化学的検査、血液学的検査及び尿妊娠検査(UPT)]が含まれた。
【0163】
アクネ菌培養物を、ベースライン(BL)、2週目及び4週目時に、スワブ法(swab technique)により額中央部から回収した(Williamson 1965)。
【0164】
これは、予備的研究であり、統計的有意性には力点を置いて(powered for)いなかった。統計処理はすべて、特に明記しない限り、SAS(登録商標)を用いて実施することにした。統計的有意性を帰無仮説(null hypothesis)の両側検定(two−tailed test)に基づいて検討したところ、p値は0.05以下であった。安全性解析は、安全性解析対象集団(safety population)を用いて実施した。
【0165】
各皮膚耐性尺度(cutaneous tolerability scale)は、治療群別及び来院時点別に、カテゴリー毎(categorically)且つ継続的に要約した。カテゴリー毎の要約では、ベースライン後のアセスメントそれぞれについて、修正を加えたリジット(modified ridit)を用いたコクラン−マンテル−ヘンツェル(Cochran−Mantel−Haenszel)検定を実施した。
【0166】
血液化学検査及び血液学的検査の値は、ベースライン時、並びに2週目及び4週目/ET時に個々に報告された。加えて、ベースラインからの変化は、2週目及び4週目/ET時に報告された。臨床検査値(Labs)は、SI単位で報告された。
【0167】
メトヘモグロビンは、治療群別及び来院時点別に、カテゴリー毎且つ継続的に要約した。加えて、治療群別及び来院時点別に、箱ひげ図(boxplot)を示した。箱ひげ図には、平均値、中央値、最小値、最大値、第1及び第3四分位値を表示し、観測されたデータ点すべてを箱ひげ図上に重ね合わせて、外れ値があれば容易に可視化されるようにした。
【0168】
試験期間中に発現したすべてのAEを記録し、Medical Dictionary for Regulatory Authorities(MedDRA)用語集に基づいて分類した。ベースラインの日以降、治験来院の最終日までに発現した、報告されたすべてのAEを、要約及び解析に含めた。事象が試験薬(study drug)の投与の前に発現した場合には、その事象は既往歴と判断し、そのようにリスト化及び要約した。
【0169】
有害事象の要約には、少なくとも1つのAEを報告した被験者の人数及び百分率、並びに、重症度別、重篤度別及び試験医薬(study medication)との因果関係別の事象報告件数を含めた。有害事象の要約は、MEDDRAバージョン15.1に基づく器官別大分類(SOC)及び基本語(PT)でも示した。被験者は、SOC及びPTの各項目下に1回のみカウントした。
【0170】
有害事象のSOC及びPTは、重症度別及び治験薬製品(investigational product)との因果関係別に要約した。重症度別の要約では、被験者は、特定のSOC又はPTについて、最も重症度の高い項目に1回のみカウントした。重症度は、軽度、中等度、重度、又は生命を脅かす、として収集した。治験薬製品との因果関係別の要約では、被験者は、特定のSOC又はPTについては、最も因果関係の深い項目下に1回のみカウントした。因果関係は、「明らかに関連あり(definite)」、「おそらく関連あり(probable)」、「関連があるかもしれない(possible)」、「関連がありそうにない(unlikely)」、「関連なし(unrelated)」、又は「該当せず(not applicable)」として収集した。因果関係の要約では、「明らかに関連あり」、「おそらく関連あり」及び「関連があるかもしれない」を因果関係ありと判断し、「関連がありそうにない」、「関連なし」及び「該当せず」を因果関係なしと判断した。
【0171】
試験期間中に記されたAEに関するすべての情報は、被験者別、治験責任医師が記した詳細記述(detailing verbatim)別、基本語別、器官別大分類別、発現日別、消失日別、重症度別、重篤度別、及び治験薬製品との因果関係別にリスト化した。AEの発現は、ランダム化された治験薬製品の初回投与日との関連で(日数で)も示した。被験者の治験薬製品使用中止に至る有害事象の要約も提供した。
【0172】
アクネ菌数:
定量的細菌学的検査のための培養物を、ベースライン時、並びに2週目及び4週目/ET時に額から得た。サンプルは、Williamson及びKligmanの手法の変法(modification)に従って入手し、7日間培養した(Williamson、1965)。アクネ菌のコロニー形成単位(cfu)を、10cfuから100cfuまでの間で含有する希釈物においてカウントした。アクネ菌の総密度を計算し、1cm当たりのlog10cfuとして報告した。
【0173】
アクネ菌の記述統計、ベースラインからの変化、及びベースラインからの変化率(%)は、平均値、中央値、標準偏差、最小値、最大値及び95%信頼区間を用いて要約した。2週目及び4週目時におけるベースラインからの低減率(%)は、次式:
【数1】
(式中、X=最初のLog値であり、Y=最後のLog値である)
を用いて計算した。
【0174】
安全性及び耐性:
本試験において、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルは、安全且つ耐性良好であることが実証された。Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群及びビヒクルゲル治療群の被験者の大半は、治療期間中に、紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛を経験しなかった。「なし」以外のスコアは全般的に軽度であったが、中等度の紅斑を報告した被験者が1名いた。
【0175】
Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群のうち12名の被験者からは合計17件のAEが報告され、ビヒクルゲル治療群のうち4名の被験者(27%)からは4件のAEが報告された。報告されたAEのうち最も頻度の高いものは、鼻うっ血及び頭痛であった。すべてのAEは、重症度は軽度又は中等度であり、治験責任医師により、試験医薬とは無関係であり試験医薬に関しては何も行動する必要はないと判断された。すべてのAEは、試験終了時点で消散した。いずれのAEも重篤ではなかった。
【0176】
Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群については、メトヘモグロビンレベルは、平均して、ベースライン時に0.77〜0.91%、2週目時に0.73〜0.97%、4週目時に0.67〜0.85%であった。ビヒクルゲル治療群については、メトヘモグロビンレベルは、平均して、ベースライン時に0.77%、2週目時に0.91%、4週目時に0.83%であった。本試験中に観測された最も高値のメトヘモグロビン(1.9%)は、ビヒクルゲルで治療した被験者におけるものであった。
【0177】
アクネ菌数:
Nitricil(商標)NVN1で治療した被験者と局所用ゲルビヒクル治療群とを比較して、アクネ菌数に差はみられなかった。ベースラインと4週目との間におけるアクネ菌の平均低減率は、57%(ゲルビヒクル)、58%(2% Nitricil(商標)NVN1)、54%(4% Nitricil(商標)NVN1)、及び63%(8% Nitricil(商標)NVN1)であった。
【0178】
Nitricil(商標)NVN1は、本試験において、安全且つ耐性良好であった。治療群間では、耐性、報告された有害事象、メトヘモグロビン濃度を含む臨床検査の結果、及び、バイタルサインを含む理学的検査に差は認められなかった。2週目時及び4週目時におけるベースラインからのアクネ菌数の低減率(%)には、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群と局所用ゲルビヒクル群との間で差はみられなかった。
【0179】
[実験例5]
本試験は、プロピオノバクテリウム・アクネス数が高値である30名の健康な志願者を対象に実施した、第1相、単一施設、評価者盲検、ランダム化、並行群、安全性及び皮膚耐性試験であった。本試験の目的は、Nitricil(商標)NVN1ゲルの安全性及び皮膚耐性を評価することであった。
【0180】
スクリーニング及びベースラインの来院時点でエントリー基準を満たした被験者をランダム化し、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はビヒクルゲルに2:1の比率で割り付けた(表12)。被験者は1日1回再来院して、割り当てられた試験治療薬を監督下で施用した。およそ1gを、1日2回、眼及び口を避けて顔全体(全体表面積(TBSA)の3〜4%)に施用した。
【0181】
【表12】
【0182】
アセスメントには、皮膚耐性、メトヘモグロビン及びヘモグロビン分析、バイタルサインを含む理学的検査、並びに有害事象収集が含まれた。
【0183】
額中央部に由来するアクネ菌培養物を、ベースライン時及び治療後(1週目及び2週目)に回収した。被験者は、ベースライン後の評価のために1週目及び2週目/早期終了(ET)時に再来院した。
【0184】
診断及び主要な組入れ基準は、18歳以上の健康な男女志願者であり、ウッド灯下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光によって実証される顔面におけるアクネ菌数が高値である者、とした。
【0185】
耐性及び安全性アセスメントには、皮膚耐性評価、有害事象(AE)、ヘモグロビン及びメトヘモグロビン測定値、並びに、バイタルサインを含む理学的検査が含まれた。
【0186】
アクネ菌培養物を、ベースライン(BL)、1週目及び2週目/ET時に、スワブ法により額中央部から収集した(Williamson 1965)。
【0187】
これは、予備的研究であり、統計的有意性には力点を置いていなかった。但し、サンプルサイズは、皮膚耐性アセスメントのいずれにおいても治療群間で平均0.75のスコアの差を検出するだけ十分に大きく、α=0.05での検出力は80%であった。統計処理はすべて、特に明記しない限りSAS(登録商標)を用いて実施した。統計的有意性は、特に明記しない限り、帰無仮説の両側検定に基づいて検討し、p値は0.05以下であった。安全性解析は、安全性解析対象集団を用いて実施した。
【0188】
皮膚耐性アセスメント(紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、灼熱感/刺痛)は、1週目及び2週目に各スコアカテゴリー(score category)についての各評価を行った際に、頻度数及び百分率を用いて要約した。スコア分布の治療群間差の比較は、順序付けられたスコアのためのMODRIDITオプションを用いたコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)カイ二乗(chi−square)検定を用いて実施した。
【0189】
総ヘモグロビンが報告され、メトヘモグロビンは、ヘモグロビンに占める百分率として報告された。ヘモグロビン及びメトヘモグロビンは、スクリーニング並びに1週目及び2週目時に治療群別に記述的に要約した。この要約には、n、平均値、中央値、標準偏差、最小値及び最大値が含まれる。加えて、1週目及び2週目時にヘモグロビン及びメトヘモグロビンのベースラインからの変化を要約した。ベースラインのヘモグロビン及びメトヘモグロビンからの変化の治療群間差の比較は、ウィルコクソンの順位和検定を用いて実施した。
【0190】
定量的細菌学的検査のための培養物を、ベースライン時並びに1週目及び2週目時に額から得た。サンプルは、Williamson及びKligmanの手法の変法に従って入手し、7日間培養した(Williamson,B.A.;Kligman,A.M. A new method for the quantitative investigation of cutaneous bacteria. J.Invest.Dermatol.1965,45,498−503)。アクネ菌のコロニー形成単位(cfu)を、10cfuから100cfuまでの間で含有する希釈物においてカウントした。アクネ菌の総密度を計算し、1cm当たりのlog10cfuとして報告した。
【0191】
アクネ菌の記述統計、ベースラインからの変化、及びベースラインからの変化率(%)は、平均値、中央値、標準偏差、最小値、最大値及び95%の信頼区間(confidence interval)を用いて要約した。
【0192】
1週目及び2週目時におけるベースラインからの低減率(%)は、次式:
【数2】
(式中、X=最初のLog値であり、Y=最後のLog値である)
を用いて計算した。
【0193】
本試験において、4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、安全且つ耐性良好であることが実証された。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル治療群及びビヒクルゲル治療群の被験者の大半は、治療期間中に紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛を経験しなかった。
【0194】
本試験において、有害事象は報告されなかった。ベースライン時点と治療終了時点との間で、血圧、脈拍及び理学的検査所見において臨床的に意義のある変化はみられなかった。メトヘモグロビン及びヘモグロビン濃度の比率(%)において臨床的に意義のある変化は認められなかった。
【0195】
1週間の治療後、アクネ菌数の平均対数低減値は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では0.38、対してビヒクルゲル群では0.20であった。2週間後の時点で、4% Nitricil(商標)NVN1ゲルで治療した被験者のアクネ菌数の平均低減値は1cm当たり0.51log10cfu、対してビヒクルゲルで治療した被験者では、1cm当たり0.26log10cfuであった。2週目時点での差は、スチューデントT検定(student’s T−test)を用いるとp=0.04で統計学的に有意であった。事後ANCOVAによっても、4% Nitricil(商標)NVN1ゲルで治療した被験者とビヒクルゲルで治療した被験者とでは、p=0.03でアクネ菌の低減に統計学的に有意な差があることが実証された。
【0196】
4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、本試験において、安全且つ耐性良好であった。アクネ菌数の低減率(%)には、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル治療群とビヒクルゲル治療群との間で統計学的に有意な差が認められた。
【0197】
[実験例6]
本試験の主要な目的は、ベースライン並びに1週目及び2週目/ET時に4% Nitricil(商標)NVN1ゲル(ヒドロゲルを含有する)の皮膚耐性を評価することであった。副次的な目的は、Nitricil(商標)NVN1ゲルの安全性プロファイルを評価することであった。安全性は、群間の有害事象(理学的検査結果及びバイタルサインの臨床的に意義のある変化が含まれる)、ヘモグロビンの変化及びメトヘモグロビンの比率(%)の変化を比較することによりアセスメントした。ベースラインの来院時、1週目及び2週目/ET時に、培養物由来の菌数の変化により決定されたアクネ菌の低減を尺度とする有効性の探索的解析を実施した。
【0198】
試験パネルは、18歳以上の健康な成人男女でありアクネ菌によるコロニー形成がみられる30名の被験者で構成されていた。被験者を慎重にスクリーニングし、併用禁止とされた局所用又は全身用の抗生物質を登録に先立つ4週間以内に使用した者はいないことを確認した。パネリストは、一切の薬用シャンプーを使用しないよう指導を受けた。本試験のために選抜された志願者は、アクネ菌が高レベルで存在することを示す、ウッド灯下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光を示した。ベースライン時のアクネ菌数は、顔面の皮膚1cm当たり少なくとも10,000コロニーであった。
【0199】
すべての被験者が、下記の組入れ/除外基準に合致した。
組入れ基準:
・書面によるインフォームドコンセントフォームに署名済みであること。
・18歳以上の健康な成人男性又は女性志願者であること。
・アクネ菌が高レベルで存在することを示す、ウッド灯下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光を示していること。
・いかなる重大な内臓疾患(例えば、心血管性疾患、肺疾患、腎疾患等)の既往歴及び現病歴もないこと。
・妊娠可能な女性(WOCBP)である場合、ベースライン時に尿妊娠検査(UPT)が陰性であること。
・WOCBPである場合、本試験の実施期間中及び最後の治験来院後30日間は、効果的な避妊法の使用に同意すること。ホルモン系避妊薬服用中の女性は、本試験への参加に先立つ少なくとも3カ月(90日)間にわたって同じ種類の避妊薬を服用していなければならず、本試験中は種類を変更してはならない。ホルモン系避妊薬を過去に使用し中断している者は、本試験の開始に先立つ少なくとも3カ月は使用を中止していなければならない。
・抗菌性の局所用製品(シャンプー、石鹸、座瘡用の調製物等)の使用を控えることに同意すること。
・およそ2週間にわたり、遵守事項を守り、1日1回(月曜日〜金曜日)指示どおりに治験実施施設に来院することができること。
除外基準:
次に挙げる除外基準のいずれかに合致する場合、被験者は登録しなかった:
・乾癬、湿疹等を含め、急性又は慢性の何らかの皮膚障害を呈している。
・何らかの顔用手入れ用品(例えば、化粧品、石鹸、マスク、洗浄料、日焼け止め等)を顔に施用した際の著しい灼熱感又は刺痛の経験歴がある。
・女性被験者のうち、妊娠している者、授乳中の母親である者、又は本試験期間中に妊娠を計画している者。
・男性被験者のうち、本試験期間を通じて、性的禁欲、精子提供の自粛及び/又はバリア(男性用コンドーム)の使用に同意しない者。
・ベースラインの来院直前の90日未満の間にエストロゲン(例えば、Depogen、Depo−Testadiol、Gynogen、Valergen等)若しくは経口避妊薬を使用したことがある、又は、ベースラインに先立つ90日未満の間にエストロゲン若しくは経口避妊薬の使用を中止した、又は、この療法の使用を本試験の治療期間中に開始若しくは中止することを計画している。
・アクネ菌数に影響することが公知である局所用又は全身用の抗生物質、例えば、ミノサイクリン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ドキシサイクリン等を、過去4週間以内に使用していた。
・皮膚表面のアクネ菌レベルに影響する可能性がある他の医薬品(例えば、レチノイド)の、過去6カ月以内の使用。
・ニトログリセリン又は他の一酸化窒素供与薬の併用。
・ベースライン時点で、臨床的に意義のある貧血を有する(その判定は首席治験責任医師による)。
・スクリーニング時のメトヘモグロビン値が2.0%以上である。
・スクリーニング時点で、臨床的に意義のある貧血を有する。その判定は治験責任医師による。
・治験薬製品中の成分のいずれかに対してアレルギーがあることがわかっている。
・併用禁止とされた抗生物質の投与を必要とする併発性の病気を有する。
・被験者を重大なリスクにさらすことになると治験責任医師が考える、又は、本試験の結果を混乱させかねない、又は、本試験への被験者の参加を著しく妨げる可能性のある、何らかの状態又は状況を有する。局所麻酔薬を使用した内視鏡検査を受けている被験者は本試験に登録すべきでなく、内視鏡検査の前に本試験への参加を中止すべきである。臨床的に意義のある貧血を有すると治験責任医師が判定した被験者は、登録すべきではない。
・言葉の問題、精神発達不全又は脳機能障害により治験責任医師とコミュニケーション又は協力することができない。
・登録の30日以内に治験薬(investigational drug)又は治験に用いる器具を使用していた、又は、異なる調査研究に同時参加している。
志願者は、同意の撤回及び本試験への参加の中止をいつでも自由にすることができた。
【0200】
登録に先立ち、適格性について候補者をスクリーニングした。適格性確認を確実に行いインフォームドコンセントへの署名を済ませてから、アクネ菌の定量的なベースラインの測定値を(額において)得た(下記の「定量的細菌学的検査」の項を参照のこと)。
【0201】
治療計画:
治療は2週間行った。毎平日の朝、Skin Study Centerにて技術者による監督下で、志願者は自分の顔を洗い、次いで、被験薬製品(test product)を施用した。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はゲルビヒクル(表12)およそ1gを、眼及び口を避けて顔全体(TBSAの4%)にむらなく施用した。治験薬製品を、2室式ポンプから、ポンプを3回押し下げることにより分注した。分注された材料を素早く(3〜5秒)混ぜ合わせ、眼及び口を避けて、薄くのばして顔に施用した。次いで、治験薬製品を、約30秒間、皮膚にやさしくなじませた。被験者は、試験薬施用後は手を洗った。顔を洗う、被験薬製品を施用する、次いで手を洗う、というこの手順を、夜はパネリストが自宅にて(監督なしで)行った。
【0202】
すべての治療について被験者の日誌に記録した。
【0203】
定量的細菌学的検査:
定量的細菌学的検査のための培養物を、ベースライン(0週目)時並びに1週目及び2週目時に被験部位から得た。サンプルは、Williamson及びKligmanの手法の変法に従って入手した(Williamson,P. and Kligman,A.M.: A new method for the quantitative investigation of cutaneous bacteria. Journal of Investigative Dermatology 45:498−503,1965;Keyworth N.,Millar,M.R., and Holland,K.T.: Swab−Wash Method for Quantitation of Cutaneous Microflora. J.Clin.Microbiology,Vol.28,pp.941−943,1990)。額は、0.1% Triton−X−100をしみ込ませた滅菌済のガーゼで対象領域を30秒間丁寧に拭って表面の残屑及び細菌を除去することにより、表面の細菌を取り除いた。次いで、皮膚にしっかり押し当てた滅菌済のプラスチックテンプレートにより、培養対象とする表面領域(4cm2)の輪郭をとった。滅菌済の、先端が綿のスワブ(以下、「綿棒」)(cotton−tipped swab)を、2mlの洗浄溶液(Bacto Letheen Broth、Difco、Sparks、MD、米国)に浸した。次いで、その領域を綿棒で30秒間こすった。次いで、スワブを先ほどの2mlの洗浄溶液の中に戻し、チューブの側面で絞った。次いで、同じ皮膚領域をさらに30秒間再度こすり、その後、綿棒を先ほどの2mlの洗浄溶液の中に再度戻し、チューブの側面で絞る。次いで、スワブをちぎって先ほどの2mlの洗浄溶液の中に入れた。引き続き、Williamson-Kligmanの方法に記載されているとおりにサンプルを加工した。すなわち、0.05% Tween−80(0.075Mリン酸塩緩衝剤で緩衝化されているもの、pH7.9)を用いて10倍希釈を4回行うことで、洗浄サンプル(wash sample)を段階的に希釈した。マイクロピペッターを用いて、酵母エキス、デキストロース及びシステインを添加したブルセラ寒天培地を含有する寒天プレートの指定された区域に、各希釈物を0.05mLずつ載せた。1皿当たり希釈物5滴とした。各被験者について2枚同じプレートを作製した。プレートは、乾燥させ、BBL Gas Pak Plus嫌気系エンベロープを備えた嫌気性ジャーに入れて、36.5〜37.5℃で7日間、嫌気的にインキュベートした。アクネ菌のコロニー形成単位(cfu)を、10cfuから100cfuまでの間で含有する希釈物においてカウントする。アクネ菌の総密度を計算し、1cm当たりのlog10cfuとして報告した。
【0204】
皮膚耐性アセスメント:
ベースライン、1週目及び2週目時に、治療に先立ち、皮膚科医が皮膚耐性アセスメントを行った。皮膚耐性評価項目は、それらが重度に達しない限り、及び/又は、被験者が本試験への参加を中止する結果とならない限り、AEとして報告しなかった。皮膚耐性アセスメントは、次に挙げる尺度に従って実施した:
紅斑
0:なし。紅斑が存在する徴候は認められない
1:軽度。わずかなピンク色を呈する
2:中等度。明白な発赤
3:重度。顕著な紅斑、色は薄い赤色からくすんだ濃い赤色
落屑
0:なし。落屑は認められない
1:軽度。顔面の限定された領域に存在する、かろうじて知覚できる細かい鱗
2:中等度。顔面の全域に広汎化している細かい鱗
3:顔面の全域に及ぶ落屑及び皮膚剥離
乾燥
0:なし。乾燥は認められない
1:軽度。わずかではあるが明白な荒れ
2:中等度。中等度の荒れ
3:重度。顕著な荒れ
そう痒症
0:なし。痒みは認められない
1:軽度。わずかな痒みはあるがそれほど気にならない
2:中等度。痒みの程度は中等度、いくらか気になる
3:重度。痒みの程度は重度、明らかな不快感があり、睡眠が妨げられることがある
灼熱感/刺痛
0:なし。灼熱感/刺痛は認められない
1:軽度。虫が這うような感覚、灼熱感/刺痛の感覚がわずかにあるが、それほど気にならない
2:中等度。虫が這うような感覚、灼熱感/刺痛の感覚は明らかであり、いくらか気になる
3:重度。明らかな不快感を生じさせる熱くヒリヒリするような感覚があり、睡眠が妨げられることがある
【0205】
臨床検査のアセスメント:
ヘモグロビンは、Masimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーター(pulse co−oximeter)を用いて、ベースライン時並びに1週目及び2週目/ET時に測定した。ヘモグロビンの量(g/dL)は、パルスco−オキシメーターに表示され、CRFに記録された。
【0206】
メトヘモグロビンは、Masimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーターを用いて、ベースライン時並びに1週目及び2週目/ET時に測定した。メトヘモグロビンの比率(%)は、パルスco−オキシメーターに表示され、CRFに記録された。
【0207】
WOCBP全員が、ベースライン時及び最後の評価来院(2週目/ET)時に尿妊娠検査(UPT)を受けた。
【0208】
簡単な理学的検査をベースライン及び2週目/ET時に実施した。
【0209】
収縮期血圧及び拡張期血圧並びに脈拍は、ベースライン並びに1週目及び2週目/ET時に収集した。
【0210】
データ処理:
培養物は100から104まで10倍希釈して平板培養し、これを2組作製した。細菌数は、コロニー形成単位(CFU)が顕著に分散している希釈物から得て、次いでこれを1平方cm当たりの総数に換算した。各プレートについての生データ及び平均値は、別々の列に記入した。並べ替えのテンプレートは、Excel2007表計算ソフトに基づくものであった。各セッションについて並べ替えたデータを表にした。
【0211】
データ解析には、ベースライン時の平均値を治療時のものと比較するための、対応のあるT検定が含まれていた。2つの治療群の平均値の比較には、スチューデントT検定を用いた。有意差ありとなるためには、両側のpが0.05未満である必要がある。
【0212】
本試験のために33名のパネリストをスクリーニングし、合計30名のパネリストを登録した。29名のパネリストが試験完了となった。1名のパネリストが、施用後に発赤を生じたことから本試験への同意を撤回した。有害事象は認められなかった。
【0213】
本試験の過程において、皮膚科医により紅斑及び落屑が認められることはなかった。最低限の乾燥、そう痒症及び灼熱感又は刺痛が、次のとおり記された。
【0214】
4% Nitricil(商標)NVN1ゲル(試験治療薬A)を使用した3名の被験者が、2週目時点で乾燥を報告した。試験治療薬Aを使用した2名の被験者が、1週目時点でそう痒症を報告した。1週目時点で、試験治療薬Aを使用した1名の被験者が灼熱感/刺痛を報告した。
【0215】
本治験においては、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル製剤の皮膚耐性及び全身的な安全性を、1日2回の治療を1週間行った時点及び2週間行った時点で評価した。加えて、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)のインビボ(in−vivo)での低減について、すなわち、尋常性座瘡の炎症に対する菌の関与についての探索的解析を、治療を1週間行った時点及び2週間行った時点で行った。テストパネルは、アクネ菌レベルが10/cm以上である30名の健康な志願者から成っており、そのうち20名は実薬で、10名はビヒクルで治療した。
【0216】
被験剤(test agent)及びそのビヒクルは、耐性が極めて良好であった。刺激の客観的な徴候、及び、そう痒症、灼熱感又は刺痛の主観的な症状は、1週目の来院時に中等度のそう痒症が1名のパネリストに、軽度のそう痒症が別のパネリスト1名に認められた以外は、みられなかった。軽度の灼熱感/刺痛が、1週目時点で1名のパネリストから報告された。軽度の乾燥が、2週目時点で3名のパネリストにみられた。1名のパネリストが1日目に離脱したが、理由は、被験剤により誘発される生理的血管拡張についての懸念であった。このパネリストには刺激の徴候はみられなかった。
【0217】
ベースライン時と治療終了時との間で、血圧、脈拍及び理学的検査所見の臨床的に意義のある変化はみられなかった。メトヘモグロビン及びヘモグロビン濃度の比率(%)に臨床的に意義のある変化は認められなかった。
【0218】
1週間の治療後、平均対数低減値は、実薬群では0.38、対してビヒクル群では0.20であった。2週間後の時点で、実薬の平均低減値は0.51、対してビヒクルでは0.26であった。2週目時点での差は、スチューデントT検定を用いたところ、統計学的に有意であった(p=0.04)。応答は、被験剤ではさまざまであり、2名のパネリストは、2週間の治療後の時点で1log超の低減を示し、他の5名は0.5以上ではあるが1log未満の低減を示した。ビヒクル群では、3名のパネリストが平均低減値未満の値を示した。
【0219】
共分散分析(ANCOVA)によって、1週目時と2週目時とでは、アクネ菌数について統計学的に有意な差があることが実証された(図9)。
【0220】
被験剤及びそのビヒクルは、耐性良好であり、皮膚毒性及び全身毒性の徴候を示さなかった。アクネ菌へのさまざまなインビボでの抗菌作用がみられた。このことは、座瘡療法において有効となり得る。
【0221】
[実験例7]
本試験は、尋常性座瘡を有する被験者において2つの濃度のNitricil(商標)NVN1ゲル及びビヒクルゲルを12週間治療に用いた場合の有効性、安全性及び耐性を比較するための、多施設共同、ランダム化、評価者盲検化、ビヒクル対照、並行群間、三群比較試験であった。本試験のエントリー基準に合致した被験者を登録し、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はビヒクルゲルの局所施用を受けるようにランダム化した(表13)。被験者を、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はビヒクルゲルに1:1:1の比率でランダムに割り付け、1日2回(朝晩)、12週(84日)間にわたって投与するように指導した。試験薬の1回目の施用は、治験実施施設にてベースラインの来院時に行われた。
【0222】
【表13】
【0223】
ベースラインの来院後は、治験来院は、最初の4週間はおよそ2週間毎、次いで次の8週間は4週間毎に行われた。試験期間は、治療期を84日間までとした。
【0224】
有効性アセスメントには、炎症性(丘疹及び膿疱)並びに非炎症性(開放性及び閉鎖性面皰)病変の数、結節及び嚢胞の数、並びに治験責任医師による包括的アセスメント(IGA)が含まれ、これらはベースライン並びに4週目、8週目、及び12週目/早期終了(ET)時に実施した。
【0225】
追加のアセスメントには、写真及び皮脂の収集が含まれた。写真は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に収集した。皮脂は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に、2箇所の治験実施施設にて、Sebutape(登録商標)を用いて登録被験者の額中央部から収集した。
【0226】
耐性及び安全性アセスメントには、皮膚耐性評価、有害事象(AE)収集、血圧及び脈拍数を含む理学的検査、メトヘモグロビン及びヘモグロビン測定、並びに尿妊娠検査(UPT)が含まれた。皮膚耐性アセスメント(紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛)は、ベースラインの来院時及びその後の各来院時に、試験薬の1回目の施用の前及び施用の30分後に評価した。ベースライン以外の来院時に行う皮膚耐性アセスメントは、試験薬施用の少なくとも30分後に実施するようにした。AEの収集は、被験者がインフォームドコンセントに署名を済ませ一切の試験アセスメント(study assessment)を完了してから開始し、最後の治験来院が終了するまで行った。簡単な理学的検査をベースライン(第1回来院/0日目)及び12週目/ET時に実施した。血圧及び脈拍数は、ベースライン時並びに2週目、4週目、8週目及び12週目/ET時の投与前に収集した。メトヘモグロビン及びヘモグロビンは、メトヘモグロビンレベル及びヘモグロビンレベルを分析するMasimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーターを用いて、ベースライン並びに2週目及び12週目/ET時に測定した。メトヘモグロビン値がベースライン時に2.0パーセントを超えている被験者、及び、臨床的に意義のある貧血をベースライン時に有する被験者は、本試験への参加には不適格とした。すべての妊娠可能な女性(WOCBP)はベースライン時にUPTを受けていなくてはならず、結果が陽性であった場合には、その被験者は本試験への参加が認められなかった。WOCBPは、4週目、8週目及び12週目/ET時にもUPTを受けることとした。早期に終了した被験者は、完了前中止(premature discontinuation)の時点で12週目/ET時の評価をすべて完了することが求められた。
【0227】
intent to treat(ITT)集団の被験者数は、ビヒクルゲル群52名、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群51名、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群50名であった。但し、被験者全員が本試験を完了してはおらず、その結果、ビヒクルゲル群で本試験を完了した被験者は45名、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群で本試験を完了した被験者は43名、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群で本試験を完了した被験者は41名であった。
【0228】
本試験には、人種を問わず12歳から40歳まで(12歳及び40歳を含む)の、尋常性座瘡を有する健康な男女を組み込んだ。被験者は、少なくとも20箇所、但し約40箇所以下の炎症性病変(丘疹及び膿疱)、25箇所から70箇所までの非炎症性病変(開放性及び閉鎖性面皰)、2箇所以下の結節を有していなくてはならず、治験責任医師による包括的アセスメント(IGA)が2、3又は4でなければならなかった。
【0229】
1% Nitricil(商標)NVN1ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル及びビヒクルゲルは、およそ1グラムを1日2回(朝夕)顔全体にむらなく施用することにより投与した。活性のあるゲル(A室)とヒドロゲル(B室)とは、施用直前に被験者が2室式ポンプから1:1の比率で同時に分注し混合した。ビヒクルゲル(A室)とヒドロゲル(B室)とは、施用直前に被験者が2室式ポンプから同時に分注し混合した。
【0230】
ベースライン並びに4週目、8週目及び12週目/ET時に、治験責任医師は、額、左右の頬、顎及び鼻を含め、被験者の顔面にある非炎症性病変の総数をカウントした。ベースライン並びに4週目、8週目及び12週目/ET時に、治験責任医師は、額、左右の頬、鼻及び顎を含め、被験者の顔面にある炎症性病変の総数もカウントした。鼻の病変数(炎症性及び非炎症性)並びに結節及び嚢胞の数は別々に報告されたが、解析のために、炎症性病変数には、丘疹、膿疱、及び結節/嚢胞を合わせた数を含めた。
【0231】
IGAは、ベースライン並びに4週目、8週目及び12週目/ET時に実施した。IGAスコアは、尋常性座瘡の全体的な徴候及び症状についての治験責任医師による評価に基づいて決定した。評価は、0(病変が消失している)から4(重度)までの尺度で採点した。
【0232】
写真は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に収集した。
【0233】
皮脂は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に2箇所の治験実施施設にて、Sebutape(登録商標)を用いて登録被験者の額中央部から収集した。
【0234】
治験責任医師は、各治験来院時の評価に加え、治験薬製品の1回目の施用の前及び施用の30分後に被験者の顔面を評価した。ベースライン以外の来院時に行う皮膚耐性アセスメントは、試験薬施用の少なくとも30分後に実施されているものとした。皮膚耐性評価には、紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛)が含まれた。
【0235】
メトヘモグロビン及びヘモグロビンは、メトヘモグロビンレベル及びヘモグロビンレベルを分析するMasimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーターを用いて、ベースライン、2週目及び12週目時に測定した。
【0236】
簡単な理学的検査をベースライン(第1回来院/0日目)及び12週目/ET時に実施した。血圧及び脈拍数は、ベースライン時並びに2週目、4週目、8週目及び12週目/ET時の投与前に収集した。治験責任医師は、予定された治験来院時に毎回、AEの発現について被験者をアセスメントした。
【0237】
主要な有効性評価項目は、12週目における、鼻を含む顔面における非炎症性病変のベースラインからの絶対変化であった。
【0238】
12週目における、鼻を含む顔面における非炎症性病変の絶対変化という主要な評価項目の解析は、治療及び治験実施施設を要因とし、ベースライン時点での病変数を共変量とした共分散分析(ANCOVA)を用いて実施した。用量応答性を決定するために線形回帰も実施した。ここで、傾き(β)は試験治療薬全体(1%及び4%)で推定し、ビヒクルゲルは、回帰においては0%としてラベル付けした。帰無検定(null test)は、β=0であるという帰無仮説に対してβ=0ではないという対立仮説を立てたものとした。βが正数である場合に帰無仮説は棄却され、このことから用量応答性が示された。
【0239】
副次的な有効性評価項目は、12週目における、炎症性病変数のベースラインからの絶対変化、12週目における、鼻を除く顔面の非炎症性病変数のベースラインからの絶対変化、及び12週目時点での二分化されたIGAであった。
【0240】
炎症性病変数には、丘疹、膿疱、及び結節/嚢胞合計数を含めた。
【0241】
12週目時点での炎症性病変数の絶対変化の解析には、鼻を含む非炎症性病変数の変化という主要な有効性解析について概説したものと同じ方法を用いた。
【0242】
12週目における、鼻を除く顔面における絶対的な非炎症性病変数の解析には、鼻を含む顔面における非炎症性病変数の変化という主要な有効性解析について概説したものと同じ方法を用いた。
【0243】
12週目時点での二分化されたIGAスコアは、治療及び治験実施施設を独立因子としたロジスティック回帰モデルを用いて解析した。二分化されたIGAスコアは、ロジスティック回帰の従属変数として、不成功(failure:不奏効)は0、成功(success:達成、奏効)は1として再ラベル付け(relabel)した。成功は、「病変が消失している」(0)又は「ほぼ病変が消失している」(1)のスコアでありベースラインから少なくとも2グレード改善されていること、と定義した。加えて、治験実施施設により層化を行ったコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)検定を用いて治療群を比較した。一対比較は、多重性のコントロールを考慮せずにコンピューター計算した。
【0244】
皮膚耐性アセスメント(紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛)は、各評価時に、頻度数及び百分率として要約した。メトヘモグロビンは、ヘモグロビンに占める百分率として報告された。総ヘモグロビンも報告された。メトヘモグロビン及びヘモグロビンは、ベースライン並びに2週目及び12週目時に治療群別に記述的に要約した。この要約には、サンプルサイズ、平均値、中央値、標準偏差(SD)、最小値及び最大値が含まれた。加えて、2週目及び12週目時点でのメトヘモグロビン及びヘモグロビンのベースラインからの変化を要約した。
【0245】
要約は、報告されたAEの特徴を説明するために示したものであり、少なくとも1つのAEを報告した被験者の人数及び百分率、並びに、重症度別、重篤度別及び試験薬との因果関係別の事象報告件数を含めた。
【0246】
ベースライン、2週目、4週目、8週目及び12週目/ET時の血圧及び脈拍数、並びに、12週目/ET時におけるベースラインからの変化を、平均値、SD、最小値及び最大値を用いて治療群別に要約した。
【0247】
ITT集団に関しては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルにおける絶対的な非炎症性病変数(鼻を含む場合及び除く場合)についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、対応するビヒクルゲルにおける絶対的な非炎症性病変数(鼻を含む場合及び除く場合)についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均より統計学的に有意に大きく低下していたが、線形の用量応答はみられなかった。4% Nitricil(商標)NVN1ゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、ビヒクルゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均より統計学的に有意に大きく低下していたが、1% Nitricil(商標)NVN1ゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、ビヒクルゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均とは統計学的に差はなかった。線形の用量応答がみられた。二分化されたIGAについては治療群間で差はみられなかった。具体的には、
・非炎症性病変(鼻を含む)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−11.8病変、対してビヒクルゲル群では−0.7病変であった(p=0.022)。非炎症性病変(鼻を含む)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−11.1病変、対してビヒクルゲル群では−0.7病変であった(p=0.031)。治療群間では線形の用量応答はみられなかった(p=0.105)。炎症性病変についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−13.8病変、対してビヒクルゲル群では−9.4病変であった(p=0.088)。炎症性病変についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−15.5病変、対してビヒクルゲル群では−9.4病変であった(p=0.018)。治療群間で線形の用量応答がみられた(p=0.033)。
・非炎症性病変(鼻を除く)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−10.9病変、対してビヒクルゲル群では−1.3病変であった(p=0.032)。非炎症性病変(鼻を除く)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−10.6病変、対してビヒクルゲル群では−1.3病変であった(p=0.039)。治療群間では線形の用量応答はみられなかった(p=0.118)。
・1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群については、0.0%(0/51)の被験者、対してビヒクルゲル群については1.9%(1/52)の被験者を、二分化されたIGAの「成功」として特徴付けた(p≧0.317)。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群については、2.0%(1/50)の被験者、対してビヒクルゲル群については1.9%(1/52)の被験者を、二分化されたIGAの「成功」として特徴付けた(p≧0.601)。
【0248】
安全性解析対象集団に関しては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、安全且つ耐性が概ね良好であった。重篤な有害事象は認められず、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、良好な皮膚耐性を示した。メトヘモグロビン及びヘモグロビンの結果の再検討からは、安全性シグナルは見出されなかった。バイタルサインの結果の再検討からは、安全性シグナルは見出されなかった。
【0249】
PP集団に関しては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは両方とも、ビヒクルゲルに比して、時間の経過に伴う非炎症性病変についての低減百分率の平均値を実証した(図10)。図10は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群のどちらの場合もビヒクルゲル群との分岐が4週目時点で生じたことを示している。4週目時点では、ビヒクルゲル群は非炎症性病変についての低減百分率の平均値が6%であったが、これに対して、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は非炎症性病変についての低減百分率の平均値が14%、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は非炎症性病変についての低減百分率の平均値が24%であった。PP集団についての非炎症性病変数を表14に示す。
【0250】
【表14】
【0251】
PP集団においては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルの両方について、ビヒクルゲルに比して、時間の経過に伴う非炎症性病変についての低減百分率の平均値がみられた(図11)。図11は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群のどちらの場合もビヒクルゲル群との分岐が4週目時点で生じたことを示している。4週目時点では、ビヒクルゲル群は炎症性病変についての低減百分率の平均値が14%であったが、これに対して、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は炎症性病変についての低減百分率の平均値が26%、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は炎症性病変についての低減百分率の平均値が31%であった。
【0252】
12週目時点でのPP集団については、炎症性病変の低減率(%)の中央値は、以下のとおりであった:1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では56%、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では66%、ビヒクルゲル群では42%。したがって、PP集団についての炎症性病変の低減率(%)の中央値は、各群とも、PP集団についての炎症性病変の低減率(%)の平均値より高かった。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群については、本試験を完了した41名の患者のうち20名の炎症性病変の低減率は70%を超えていた。PP集団についての炎症性病変数を表15に示す。
【0253】
【表15】
【0254】
ビヒクルゲル群に比して、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、非炎症性及び炎症性病変の数(鼻を含む場合及び除く場合)の低下に有効であり、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、非炎症性病変(鼻を含む場合及び除く場合)並びに炎症性病変の数の低下に有効であった。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、ビヒクルゲル群との比較で統計学的に有意な差を実証し、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、主要評価項目及び副次的評価項目についてビヒクル群と差があった。1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルはどちらも安全且つ耐性良好であり、安全性シグナルは見出されなかった。
【0255】
[実験例8]
座瘡の臨床試験の実施経験を有するAmerican Board of Dermatologyの認定皮膚科医3名が、実験例7に記載した試験に基づいて、治験責任医師による包括的アセスメント(IGA)の事後解析を実施した。この解析の目的は、米国の認可を受けるための臨床試験の実施経験を有する治験責任医師に治療の結果を評価してもらうことであった。実験例7及び実験例8で用いたIGA採点の説明を表16に示す。「成功」の定義は、治療終了時のスコアが「0」(病変が消失している)又は「1」(ほぼ病変が消失している)でありベースラインから最低2グレード変化していることである。
【0256】
【表16】
【0257】
American Board of Dermatology認定皮膚科医3名は、ベースライン及び12週目の両時点における被験者の入手可能な臨床画像について盲検下レビューを実施し、ベースライン及び12週目時に撮影された画像を「採点」した。結果を下記の表17に示す。3名の皮膚科医全員が、Nitricil(商標)NVN1ゲル、とりわけ4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは尋常性座瘡の治療に活性を有すると判定した。
【0258】
【表17】
【0259】
[実験例9]
過酸化ベンゾイルを含む美容的にエレガントな組成物を調製した。各組成物は、2つの部分を含有しており、1つの部分は、カルボキシポリメチレンを含有する過酸化ベンゾイルゲルであり、第2の部分は、セルロースを含有する組成物であった。各部分を、YonWoo製の2×15mLの2室式ポンプの1室に充填した。過酸化ベンゾイルゲル製剤を表18及び表19に示し、2つの過酸化ベンゾイルゲル製剤それぞれと別々に組み合わせるためのセルロース組成物を表20に示す。
【0260】
【表18】
【0261】
【表19】
【0262】
【表20】
【0263】
先の記載は、本発明を例証するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、次に記載する特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲の等価物は、この範囲に含まれるものとする。本明細書において引用する刊行物、特許出願、特許、特許公報、及び他の参考文献はすべて、参照箇所が存在する文及び/又は段落に関連する教示について、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部をなすものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12