【実施例】
【0123】
本発明を、以下の非限定的な実験例において、より詳細に説明する。
【0124】
[実験例1]
pH値の範囲が3から7までの間である緩衝化されていないヒドロゲル製剤(hydrogel formulation)を開発した。カルボマーであるCarbopol(登録商標)974Pのレベルを変化させて、pH6のヒドロゲル製剤をいくつか製造し、粘稠性及びゲルレオロジーに及ぼす効果を調査した。ソルビン酸、安息香酸(benzoic)及びパラベンなどの防腐剤が、緩衝化されていないヒドロゲルのレオロジー及び粘稠性に及ぼす効果も調査した。製造したヒドロゲル製剤は、イソプロピルアルコール(IPA)を含みNitricil(商標)NVN1の濃度を変化させたNitricil(商標)NVN1局所用ゲル製剤を用いての混和物のpH値の測定(実験例2)及びインビトロでの一酸化窒素(NO)放出動態の確認(実験例3)に使用した。Carpobol(登録商標)980Pを使用した0.1%w/wクエン酸入りの緩衝化されているpH4のヒドロゲル、及び、Carbopol(登録商標)ETD 2020NFポリマーを使用した0.2%w/w 0.1Mリン酸塩緩衝剤入りの緩衝化されているpH6のヒドロゲルも調合した。
【0125】
表3及び表4に示す全ての製剤について、米国薬局方(USP)グレードの水と無水グリセロールを用い、0.5L又は2Lのガラスビーカーいずれかの中で、周囲温度にてIKAオーバーヘッドミキサーを用いて混合した。ソルビン酸、安息香酸、並びにメチル及びプロピルパラベンなどの防腐剤を含有するヒドロゲル製剤の場合は、防腐剤をこのグリセロール水溶液に添加し、完全に溶解するように、ホットプレートを用いて70℃まで加熱した。一旦溶解したら、溶液を周囲温度まで冷却した。各実験における次のステップとして、IKA T−18ミキサーを3〜4のスピードで20〜30秒間使用し、オーバーヘッド撹拌とホモジナイゼーションとの組合せを用いて絶えずかき混ぜながら、Carbopol(登録商標)ポリマーをビーカーにゆっくり移した。20分後に清澄な溶液が形成され、ポリマーが完全に溶解したことが示された。継続してかき混ぜながら、中和されていない混合物のpHを最初に測定してから、中和剤としてトロラミンを十分な量(QS)で使用してpHを所望の値に調整し、ヒドロゲルの粘度を高めた。最後に、所望のpHが一旦得られたら、最終的な量の水を添加して、所望の目標のバッチサイズに到達させた。バッチロット112331については、マスキング剤として二酸化チタンをヒドロゲル中に導入した。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
アニオン性のCarbopol(登録商標)ポリマー974Pを含有する中和されていない混合物のpHは、ポリマー濃度によって、防腐剤使用の有無にかかわらずおよそ2.75〜3であった。pH3のヒドロゲルの粘度は、ごく小量のトロラミンを添加してpHを3単位に調整した場合には非常に低く、このため、増粘効果は認められないことがわかった。Carbopol(登録商標)974Pポリマーを完全に中和させるには、トロラミンを用いて6又は7にpHを調整することが必要であった。しかし、結果として得られた緩衝化されていないヒドロゲルの粘度は、pH6及び7の時に非常に高かった。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、分注することが目的であれば、Carbopol(登録商標)974Pポリマーの濃度を、1%w/wから0.3〜0.5%w/wまで低減させて、pH6及び7のときの粘度を低下させる必要があるかもしれない。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、Carbopol(登録商標)974Pポリマーを0.3%w/w未満の濃度で使用すると、粘稠性の十分でないヒドロゲルが得られる結果となる可能性があり、施用時に皮膚の表面から流れ落ちる可能性がある。
【0129】
pH4の緩衝化されていないヒドロゲルは、0.5%w/wのCarbopol(登録商標)を用いて調合すると、流動させてポンプから分注するのに適しているというだけでなく施用時に皮膚の表面から流れ落ちないという点でも適している粘稠性及びレオロジー特性を有することができる。表5は、表4に記載の防腐剤(複数可)を含有する緩衝化されていないpH4及びpH5の数種のヒドロゲルの粘度測定値を示すものである。
【0130】
【表5】
【0131】
防腐剤を使用したpH4のヒドロゲルの粘度は、7000〜12500cPの範囲であった。防腐剤の添加は、pH、ひいては、トロラミンを用いた中和(増粘)プロセスに影響した。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものでもないが、防腐剤の存在、及び、防腐剤の多様な濃度を考慮して、Carbopol(登録商標)ポリマーのレベルを調整し、それにより、塩基での中和後に一貫した粘度が得られるようにする必要があるかもしれない。防腐剤を使用した緩衝化されていないヒドロゲルのpHを5に増大させると、粘度はおよそ20000cPに顕著に増大した。
【0132】
Carbopol(登録商標)974Pポリマーと共に、緩衝化用のいくつかの酸、例えばクエン酸、酒石酸及び乳酸などを、pH4の段階で緩衝化させるために使用したが、ヒドロゲルは即時に分解して水になっていった。Carbopol(登録商標)ETD2020、NFポリマーは、1〜3%w/wの濃度の緩衝化剤と共に使用するには適さないことがわかった。
【0133】
USP水+無水グリセロール中の0.2%w/wのCarbopol(登録商標)ETD2020 NFポリマーを用いて、リン酸塩で緩衝化されているpH6のヒドロゲルを製造した。pHが6単位であるヒドロゲルを緩衝化するために、リン酸カリウム緩衝剤の0.1Mのストック(stock)を0.2%w/wで添加した。このヒドロゲルを、IPAと多様な濃度のNitricil(商標)NVN1を含有するNitricil(商標)NVN1局所用ゲルと共に用いて、インビトロでの混和物のpHを決定した(実験例2)。リン酸塩で緩衝化されているpH6のヒドロゲルは、0.2%w/wから8%w/wまでの範囲のいくつかの異なるNitricil(商標)NVN1濃度では、pHを0.5単位分低減させる効果を有した。
【0134】
0.1%w/w安息香酸及び0.1%ソルビン酸を1%w/w Carbopol(登録商標)ポリマー980Pと共に含有する、クエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを、0.5kgの規模でうまく(successfully)配合した。緩衝化されているクエン酸ヒドロゲル(buffered citric acid hydrogel)の組成を表6にリスト化する。この緩衝化されているヒドロゲル(バッチロット:126335)を測定したところ、粘度は7285cPであった。製造した、クエン酸で緩衝化されているヒドロゲルは、インビトロでの一酸化窒素放出プロファイルの確認(実験例3)を含め、インビトロ及び皮膚表面でのpHを決定する(実験例2)ために使用した。
【0135】
【表6】
【0136】
一定範囲のpH値をカバーするヒドロゲル製剤を調合した。調合した最初のヒドロゲルは、緩衝化されておらず、防腐剤を使用して、また、防腐剤を使用せずに、配合したものであった。安息香酸、ソルビン酸及びパラベンなどの防腐剤を使用した。パラベンは、Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルと反応することがわかった。ヒドロゲルのpHは、添加するトロラミン(中和剤)の量を変化させることにより調整した。pH及び粘度を増大させるために、添加する中和剤の量を増大させた。pH6及び7では、防腐剤を使用せずに形成した緩衝化されていないヒドロゲルの粘度は高かった。ヒドロゲルの粘度を低減させるために、Carbopol(登録商標)ポリマー濃度を低減させた。防腐剤の添加も、最初のpHに影響した。ポリマー及び中和剤の量を調整して、それにより、所望のpHに到達するようにし、また、皮膚の表面からの流れ落ちに関する問題を生じさせるほどには低くなく、且つ、製品の流動性及び2室式分注器(dual chamber dispensing device)からのポンピングに関する問題を生じさせるほどには高くない粘度を得られるようにした。Carpobol(登録商標)974P及びETD2020ポリマーを、緩衝剤であるクエン酸、乳酸及び酒石酸と共に用いて、緩衝化されているpH4のヒドロゲルを製造することを試みたが、この場合は、pHの急激な変化によりポリマーが分解して水になる結果となった。
【0137】
ホモポリマータイプCであり鎖がより長いポリマーであるCarbopol(登録商標)980Pに替えることにより、ソルビン酸及び安息香酸を使用した、0.1%w/wクエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを、うまく調合した。0.1Mリン酸塩緩衝剤を0.2%w/wで用いて緩衝化したpH6のヒドロゲルも、Carbopol(登録商標)ETD2020ポリマーを用いてうまく調合した。
【0138】
[実験例2]
一連の実験を実施して、IPAを含有し0.2〜12%w/wの範囲の異なる濃度のNitricil(商標)NVN1を有するNitricil(商標)NVN1局所用ゲルと、4から6までの範囲のpHを有する緩衝化されていないヒドロゲル製剤及び緩衝化されたヒドロゲル製剤とを、異なるヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの比率を1:1から3:1までの範囲(ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル)で合わせた最終混和物のpHを決定した。ヒドロゲルのpH、ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルの混合比及びNitricil(商標)NVN1の濃度が最終混和物のpHに及ぼす効果を調査した。この実験の目的は、6から8までの間の範囲の最終混和物のpHを得ることができるかどうかを決定することであった。
【0139】
インビトロでのpH混和測定(pH admixture measurement)についてはすべて、およそ1g量のNitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルを、1mLプラスチック注射器を用いるかアルミニウム管から直接分注するかのいずれかにより風袋既知(tared)の秤量ボート(weigh boat)の中に分注した。およそ1g量を一旦分注したら、秤量ボートの風袋重量を再度量った。次いで、1から3gまでの範囲の所定量のヒドロゲルを、1mL注射器を用いて秤量ボートの中に分注した。次いで、この混和物を、単一の定常状態でpH測定値が記録されるまで、pHプローブ(Beckman Φ350 pHメーター)を用いて混合した。分注はすべて、重量ベースで行った。
【0140】
表7に示すように、リン酸塩で緩衝化されているpH6のヒドロゲル、緩衝化されていないpH4のヒドロゲル及び緩衝化されていないpH6のヒドロゲルを使用して混和物のpH値を決定した。
【0141】
【表7】
【0142】
図1は、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度、ヒドロゲルのpH、及びヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルの比率が混和物のpHに及ぼす効果を示すものである。混和物のpHの結果は、最終混和物において8というpHを実現するためには、Nitricil(商標)NVN1が6%w/w以下のNitricil(商標)NVN1局所用ゲルであれば、pH4のヒドロゲルと、1:1又は3:1いずれの比率で組み合わせても使用することができる、ということを実証している。Nitricil(商標)NVN1の濃度が8%w/w以上の場合は、Nitricil(商標)NVN1の強い緩衝化特性(strong buffering property)が、評価したヒドロゲルのpH及び比率の全てについて、混和物のpHに大きく影響し始める。Nitricil(商標)NVN1の濃度が4%w/w超の場合は、pH4及びpH6のヒドロゲルいずれと混合した際も、著しい発泡(一酸化窒素の放出を示している)が観察された。このことは、pH6のヒドロゲルを使用した場合には、混和物のpHが8を超える高い値であっても観察された。Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルとpH6の緩衝化されているヒドロゲルとを1:3の比率で用いると、Nitricil(商標)NVN1の濃度が2%w/wまでのNitricil(商標)NVN1局所用ゲルの場合は、混和の結果もたらされるpHをpH8未満で維持させることができた。リン酸塩を用いてpH6でヒドロゲルを緩衝化すると、ヒドロゲル対Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルの混合比が1:1の場合も1:3の場合も、最終混和物のpHの低減が促進された。
【0143】
さらなる実験により、pH4及びpH5に調整したヒドロゲル製剤に防腐剤(例えば、パラベン、ソルビン酸及び安息香酸)を0.1%から0.2%w/wまでの間の範囲の濃度で添加する効果を調査した。濃度が2%w/w及び8%w/wのNitricil(商標)NVN1局所用ゲルについて、混和物のpHを測定した。
【0144】
表8は、2%w/wのNitricil(商標)NVN1を使用した場合と8%w/wのNitricil(商標)NVN1を使用した場合の両方について、混和物のpH値を示すものである。表8に示す結果は、2%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルとpH4のヒドロゲルとを1:1の比率で使用すると、防腐剤使用の場合も不使用の場合も、結果的な混和物のpHは6から7までの間となったことを示している。
【0145】
【表8】
【0146】
メチルパラベン及びプロピルパラベンを防腐剤として使用したところ、混和物は褐変(turn brown)した。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものでもないが、このことは、分解産物(複数可)が形成されたことを示すものであった可能性がある。pH5のヒドロゲルを異なる防腐剤と共に使用すると、混和物のpHは、約7までわずかに増大しただけであった。
【0147】
8%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルを、緩衝化されているpH4のヒドロゲルと共に使用した場合と緩衝化されていないpH4のヒドロゲルと共に使用した場合の両方についての、混和物の皮膚表面でのpHも測定した。緩衝化されているpH4のヒドロゲルは、Carbopol(登録商標)980P NFポリマーを0.1%w/wクエン酸と共に含有していた。クエン酸で緩衝化されているpH4の調合したヒドロゲルにおいては、防腐剤として0.1%w/wの安息香酸及びソルビン酸も使用した。
【0148】
緩衝化されていないpH4のヒドロゲル(Carbopol(登録商標)974P)、及び、0.1%w/wクエン酸を使用した緩衝化されているpH4のヒドロゲル(Carbopol(登録商標)980P)を、1:1の比率で用いた場合のインビトロでのpH混和測定をさらに行って、表8に示す実験結果から得られた知見を確認した。
図2は、6%w/w及び8%w/wの濃度のNitricil(商標)NVN1を、緩衝化されていないpH4のヒドロゲルと共に使用した場合、混和物のpHは10前後で、以前の結果と同程度であることを示している。0.1%w/wクエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを使用すると、一定範囲のNitricil(商標)NVN1濃度にわたって混和物のpHを低減させる効果がある。
【0149】
インビトロでの皮膚表面のpHの決定調査も実施した。
図3は、皮膚は5から6までの間の範囲のpHを有しており、ある程度の緩衝能力(buffering capability)を発揮することを示している。緩衝化されていないpH4のヒドロゲルを8%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルと混合して施用したところ、皮膚のpHは9をわずかに下回った。pHは、30分を超えて一定であった。しかし、0.1%w/wのクエン酸で緩衝化されているpH4のヒドロゲルを8%w/w Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲルと共に使用した(0.1%w/wの安息香酸及び0.1%w/wのソルビン酸を防腐剤として含んでいた)場合には、皮膚表面のpHは7.5前後であった。
【0150】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むものでもないが、この実験は、pH4の緩衝化されているヒドロゲル及び緩衝化されていないヒドロゲルを、1:1及び3:1の比率で用いると、Nitricil(商標)NVN1の濃度が0.2%w/wから4%w/wまでの間の範囲である場合、最終混和物のpHを5から8までの間で維持することができることを実証するものである。pH4の緩衝化されていないヒドロゲルを3:1の比率で用いると、Nitricil(商標)NVN1濃度が8%w/wまでである場合、混和物のpHを8単位未満で維持することが可能である。緩衝化されているpH6のヒドロゲルを用いると、Nitricil(商標)NVN1濃度が2%w/w以下である場合、該pHを8未満で維持することが可能である。混和物のpH値を8未満で維持するために、濃度が1%w/w以下のNitricil(商標)NVN1を緩衝化されていないpH6のヒドロゲルと共に使用してもよい。ヒドロゲル中での防腐剤の使用が混和物のpHに及ぼす効果は、まったく乃至ほとんどない。pH4のヒドロゲルは、緩衝化されていないものも緩衝化されているものも、1:1の比率で使用すると、pH値は8単位より高くなった。しかし、皮膚に施用されると、皮膚がいくらか緩衝能を発揮することから、表面でのpH測定値は低減する。皮膚表面での混和物のpHが8単位未満になるようにするには、0.1%w/wクエン酸で緩衝化されており安息香酸及びソルビン酸を0.1%w/w含有するpH4のヒドロゲルを使用することができる。しかし、緩衝化されていないpH4のヒドロゲルを用いたところ、インビトロ試験の結果得られたpHが10単位であったのに対し、皮膚表面のpH値は8.5超であった。
【0151】
[実験例3]
インビトロでの放出試験は、単チャンネルと多チャンネル両方の一酸化窒素分析器を用いて実施した。Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルサンプル及びヒドロゲルサンプルの計量には、化学天秤を用いた。およそ50mgのNitricil(商標)NVN1局所用ゲルサンプル及び約50mg又は約150mgいずれかのヒドロゲルサンプルを、サンプル同士を接触させないようにして、予めカットされた単一の秤量ボートに移した。2つのサンプルをおよそ5秒間混合し、次いで直ちに、37℃にて維持されたクリーンな乾燥した50mL NO測定用セルの中に配置した。複合したNitricil(商標)NVN1局所用ゲルサンプル/ヒドロゲルサンプルからの一酸化窒素のリアルタイムでのインビトロ放出量は、次に挙げる機器パラメーターを用いて決定した。
1.湿り窒素流速:112〜115ml/分
2.サンプル温度:37℃
3.検出:化学発光による一酸化窒素
4.データ取得周波数:1Hz、不規則で連続的な交周波(irregular sequential alternating)
5.継続時間:NO放出速度が線形的に低下している時間(8時間以内)
6.取得用ソフトウェア:NovanWare v1.05。
十億分率(PPB)単位のNOからモル単位の一酸化窒素への換算は、ヨウ化カリウム溶液中の既知量の亜硝酸ナトリウムから発生した一酸化窒素を測定してPPBからモルへの換算係数を得ることによって達成された。多チャンネル操作の結果で得られたリアルタイムでの一酸化窒素放出データに隙間があれば、線形補間プログラムを用いることにより埋めた。一酸化窒素が枯渇して測定されなかったサンプルがあった場合には、放出がゼロの部分に直前の約5000秒間の放出データの線形外挿を実施した。次いで、リアルタイムの一酸化窒素放出データを積分して、総(total)一酸化窒素の集積曲線(total nitric oxide accumulation curve)を得た。一酸化窒素放出パラメーター、例えば、C
max(すなわち、放出されたNOの最高濃度)、T
max(すなわち、C
maxに達した時間)、一酸化窒素の累積放出量(すなわち、単位時間当たりのデータ点すべての総和)、及び、総放出量の半分までの到達時間(Time to Half of Total Released)(T
50)(すなわち、NO累積量の50%が放出された時間)を、一酸化窒素のリアルタイム放出曲線及び累計放出曲線の両方から計算した。前述の計算はすべて、特注のデータ処理ソフトウェア(NovanWare v1.05)で自動的に実施された。
【0152】
インビトロ放出試験の結果を、混和物のそれぞれのpHと共に下記の表9にまとめる。
【0153】
【表9】
【0154】
図4は、各混合物のC
maxが、混合物の比率、ヒドロゲルのpH及びNVN1の濃度によりどのように影響を受けるかを示すものである。全体的に、pH4のヒドロゲルについては、NVN1濃度の増大に伴いC
maxは増大した。この効果は、Nitricil(商標)NVN1 IPA局所用ゲル対ヒドロゲルを1:3で含有する混合物の場合に、より顕著である。
図5は、Nitricil(商標)NVN1濃度の増大に伴い一酸化窒素の累積放出量が増大することを示すものである。
【0155】
いずれのNitricil(商標)NVN1濃度においても、pH4のヒドロゲルを含有する混合物は全般的に、pH6のヒドロゲルを用いた場合と比較して、その一酸化窒素正味担持量(payload)をより高いC
maxでより多く放出し(
図4)、半減期が短い。この効果は、1:3の比率でpH4のヒドロゲルを含有する混合物を、1:1及び1:3の比率でpH6のヒドロゲルを含有する混合物と対比させた場合に、より顕著である。
図6は、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルの濃度に関連して、緩衝化されていないヒドロゲルのpH及び比率が混和物のpHに及ぼす効果を示すものである。防腐剤を使用したpH4の緩衝化されたクエン酸ヒドロゲルを使用して、さらなるインビトロ試験を実施した。測定は、3回同じように繰り返した。混和物は、15秒間混合してから測定セルの中に入れた。インビトロでの一酸化窒素放出テストの結果を表10に示す。
【0156】
【表10】
【0157】
[実験例4]
第1相、反復投与、単一施設、観察者盲検(observer−blind)、ランダム化、並行群、安全性及び皮膚耐性(tolerability)試験を、60名の健康な志願者を対象に実施した。本試験の目的は、多数の濃度のNitricil(商標)NVN1の安全性及び皮膚耐性を評価することであった。
【0158】
本試験への組入れにあたっての診断及び主要な組入れ基準は、18歳以上の健康な男女志願者であり、ウッド灯(wood‘s lamp)下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光(high degree of fluorescence)によって実証される顔面におけるアクネ菌数が高値である者、とした。
【0159】
スクリーニング/ベースライン(0週目)の来院時点でエントリー基準を満たしていた被験者をランダム化し、2% Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル、8% Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル又は局所用ゲルビヒクルに1:1:1:1の比率で割り付けた(表11)。被験者は平日に1日1回再来院して、割り当てられた試験治療薬(treatment)を監督下で施用した。およそ0.5gを、洗顔後、眼及び口を避けて顔全体(全体表面積(TBSA)の3〜4%)にムラなく施用した。土曜日及び日曜日には、被験者は、1日1回、自宅にて試験治療薬を(非監督下で)施用した。およそ0.5g用量を、1日1回、4週間にわたり局所施用した。
【0160】
【表11】
【0161】
アセスメント(assessment)には、皮膚耐性、血液化学的検査及び血液学的検査、メトヘモグロビン分析、理学的検査、尿妊娠検査(UPT)、有害事象収集、及び、血圧を含むバイタルサインの収集が含まれた。額中央部に由来するプロピオノバクテリウム(Propionobacterium)・アクネス(アクネ菌)培養物を、ベースライン、2週目及び4週目時に収集した。志願者は、ベースライン後の評価のために2週目及び4週目/早期終了(ET、Early Termination)時に再来院した。
【0162】
耐性及び安全性アセスメントには、皮膚耐性評価、有害事象(AE)、メトヘモグロビン測定値、バイタルサインを含む理学的検査、並びに臨床検査[血液化学的検査、血液学的検査及び尿妊娠検査(UPT)]が含まれた。
【0163】
アクネ菌培養物を、ベースライン(BL)、2週目及び4週目時に、スワブ法(swab technique)により額中央部から回収した(Williamson 1965)。
【0164】
これは、予備的研究であり、統計的有意性には力点を置いて(powered for)いなかった。統計処理はすべて、特に明記しない限り、SAS(登録商標)を用いて実施することにした。統計的有意性を帰無仮説(null hypothesis)の両側検定(two−tailed test)に基づいて検討したところ、p値は0.05以下であった。安全性解析は、安全性解析対象集団(safety population)を用いて実施した。
【0165】
各皮膚耐性尺度(cutaneous tolerability scale)は、治療群別及び来院時点別に、カテゴリー毎(categorically)且つ継続的に要約した。カテゴリー毎の要約では、ベースライン後のアセスメントそれぞれについて、修正を加えたリジット(modified ridit)を用いたコクラン−マンテル−ヘンツェル(Cochran−Mantel−Haenszel)検定を実施した。
【0166】
血液化学検査及び血液学的検査の値は、ベースライン時、並びに2週目及び4週目/ET時に個々に報告された。加えて、ベースラインからの変化は、2週目及び4週目/ET時に報告された。臨床検査値(Labs)は、SI単位で報告された。
【0167】
メトヘモグロビンは、治療群別及び来院時点別に、カテゴリー毎且つ継続的に要約した。加えて、治療群別及び来院時点別に、箱ひげ図(boxplot)を示した。箱ひげ図には、平均値、中央値、最小値、最大値、第1及び第3四分位値を表示し、観測されたデータ点すべてを箱ひげ図上に重ね合わせて、外れ値があれば容易に可視化されるようにした。
【0168】
試験期間中に発現したすべてのAEを記録し、Medical Dictionary for Regulatory Authorities(MedDRA)用語集に基づいて分類した。ベースラインの日以降、治験来院の最終日までに発現した、報告されたすべてのAEを、要約及び解析に含めた。事象が試験薬(study drug)の投与の前に発現した場合には、その事象は既往歴と判断し、そのようにリスト化及び要約した。
【0169】
有害事象の要約には、少なくとも1つのAEを報告した被験者の人数及び百分率、並びに、重症度別、重篤度別及び試験医薬(study medication)との因果関係別の事象報告件数を含めた。有害事象の要約は、MEDDRAバージョン15.1に基づく器官別大分類(SOC)及び基本語(PT)でも示した。被験者は、SOC及びPTの各項目下に1回のみカウントした。
【0170】
有害事象のSOC及びPTは、重症度別及び治験薬製品(investigational product)との因果関係別に要約した。重症度別の要約では、被験者は、特定のSOC又はPTについて、最も重症度の高い項目に1回のみカウントした。重症度は、軽度、中等度、重度、又は生命を脅かす、として収集した。治験薬製品との因果関係別の要約では、被験者は、特定のSOC又はPTについては、最も因果関係の深い項目下に1回のみカウントした。因果関係は、「明らかに関連あり(definite)」、「おそらく関連あり(probable)」、「関連があるかもしれない(possible)」、「関連がありそうにない(unlikely)」、「関連なし(unrelated)」、又は「該当せず(not applicable)」として収集した。因果関係の要約では、「明らかに関連あり」、「おそらく関連あり」及び「関連があるかもしれない」を因果関係ありと判断し、「関連がありそうにない」、「関連なし」及び「該当せず」を因果関係なしと判断した。
【0171】
試験期間中に記されたAEに関するすべての情報は、被験者別、治験責任医師が記した詳細記述(detailing verbatim)別、基本語別、器官別大分類別、発現日別、消失日別、重症度別、重篤度別、及び治験薬製品との因果関係別にリスト化した。AEの発現は、ランダム化された治験薬製品の初回投与日との関連で(日数で)も示した。被験者の治験薬製品使用中止に至る有害事象の要約も提供した。
【0172】
アクネ菌数:
定量的細菌学的検査のための培養物を、ベースライン時、並びに2週目及び4週目/ET時に額から得た。サンプルは、Williamson及びKligmanの手法の変法(modification)に従って入手し、7日間培養した(Williamson、1965)。アクネ菌のコロニー形成単位(cfu)を、10cfuから100cfuまでの間で含有する希釈物においてカウントした。アクネ菌の総密度を計算し、1cm
2当たりのlog10cfuとして報告した。
【0173】
アクネ菌の記述統計、ベースラインからの変化、及びベースラインからの変化率(%)は、平均値、中央値、標準偏差、最小値、最大値及び95%信頼区間を用いて要約した。2週目及び4週目時におけるベースラインからの低減率(%)は、次式:
【数1】
(式中、X=最初のLog値であり、Y=最後のLog値である)
を用いて計算した。
【0174】
安全性及び耐性:
本試験において、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲルは、安全且つ耐性良好であることが実証された。Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群及びビヒクルゲル治療群の被験者の大半は、治療期間中に、紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛を経験しなかった。「なし」以外のスコアは全般的に軽度であったが、中等度の紅斑を報告した被験者が1名いた。
【0175】
Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群のうち12名の被験者からは合計17件のAEが報告され、ビヒクルゲル治療群のうち4名の被験者(27%)からは4件のAEが報告された。報告されたAEのうち最も頻度の高いものは、鼻うっ血及び頭痛であった。すべてのAEは、重症度は軽度又は中等度であり、治験責任医師により、試験医薬とは無関係であり試験医薬に関しては何も行動する必要はないと判断された。すべてのAEは、試験終了時点で消散した。いずれのAEも重篤ではなかった。
【0176】
Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群については、メトヘモグロビンレベルは、平均して、ベースライン時に0.77〜0.91%、2週目時に0.73〜0.97%、4週目時に0.67〜0.85%であった。ビヒクルゲル治療群については、メトヘモグロビンレベルは、平均して、ベースライン時に0.77%、2週目時に0.91%、4週目時に0.83%であった。本試験中に観測された最も高値のメトヘモグロビン(1.9%)は、ビヒクルゲルで治療した被験者におけるものであった。
【0177】
アクネ菌数:
Nitricil(商標)NVN1で治療した被験者と局所用ゲルビヒクル治療群とを比較して、アクネ菌数に差はみられなかった。ベースラインと4週目との間におけるアクネ菌の平均低減率は、57%(ゲルビヒクル)、58%(2% Nitricil(商標)NVN1)、54%(4% Nitricil(商標)NVN1)、及び63%(8% Nitricil(商標)NVN1)であった。
【0178】
Nitricil(商標)NVN1は、本試験において、安全且つ耐性良好であった。治療群間では、耐性、報告された有害事象、メトヘモグロビン濃度を含む臨床検査の結果、及び、バイタルサインを含む理学的検査に差は認められなかった。2週目時及び4週目時におけるベースラインからのアクネ菌数の低減率(%)には、Nitricil(商標)NVN1局所用ゲル治療群と局所用ゲルビヒクル群との間で差はみられなかった。
【0179】
[実験例5]
本試験は、プロピオノバクテリウム・アクネス数が高値である30名の健康な志願者を対象に実施した、第1相、単一施設、評価者盲検、ランダム化、並行群、安全性及び皮膚耐性試験であった。本試験の目的は、Nitricil(商標)NVN1ゲルの安全性及び皮膚耐性を評価することであった。
【0180】
スクリーニング及びベースラインの来院時点でエントリー基準を満たした被験者をランダム化し、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はビヒクルゲルに2:1の比率で割り付けた(表12)。被験者は1日1回再来院して、割り当てられた試験治療薬を監督下で施用した。およそ1gを、1日2回、眼及び口を避けて顔全体(全体表面積(TBSA)の3〜4%)に施用した。
【0181】
【表12】
【0182】
アセスメントには、皮膚耐性、メトヘモグロビン及びヘモグロビン分析、バイタルサインを含む理学的検査、並びに有害事象収集が含まれた。
【0183】
額中央部に由来するアクネ菌培養物を、ベースライン時及び治療後(1週目及び2週目)に回収した。被験者は、ベースライン後の評価のために1週目及び2週目/早期終了(ET)時に再来院した。
【0184】
診断及び主要な組入れ基準は、18歳以上の健康な男女志願者であり、ウッド灯下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光によって実証される顔面におけるアクネ菌数が高値である者、とした。
【0185】
耐性及び安全性アセスメントには、皮膚耐性評価、有害事象(AE)、ヘモグロビン及びメトヘモグロビン測定値、並びに、バイタルサインを含む理学的検査が含まれた。
【0186】
アクネ菌培養物を、ベースライン(BL)、1週目及び2週目/ET時に、スワブ法により額中央部から収集した(Williamson 1965)。
【0187】
これは、予備的研究であり、統計的有意性には力点を置いていなかった。但し、サンプルサイズは、皮膚耐性アセスメントのいずれにおいても治療群間で平均0.75のスコアの差を検出するだけ十分に大きく、α=0.05での検出力は80%であった。統計処理はすべて、特に明記しない限りSAS(登録商標)を用いて実施した。統計的有意性は、特に明記しない限り、帰無仮説の両側検定に基づいて検討し、p値は0.05以下であった。安全性解析は、安全性解析対象集団を用いて実施した。
【0188】
皮膚耐性アセスメント(紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、灼熱感/刺痛)は、1週目及び2週目に各スコアカテゴリー(score category)についての各評価を行った際に、頻度数及び百分率を用いて要約した。スコア分布の治療群間差の比較は、順序付けられたスコアのためのMODRIDITオプションを用いたコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)カイ二乗(chi−square)検定を用いて実施した。
【0189】
総ヘモグロビンが報告され、メトヘモグロビンは、ヘモグロビンに占める百分率として報告された。ヘモグロビン及びメトヘモグロビンは、スクリーニング並びに1週目及び2週目時に治療群別に記述的に要約した。この要約には、n、平均値、中央値、標準偏差、最小値及び最大値が含まれる。加えて、1週目及び2週目時にヘモグロビン及びメトヘモグロビンのベースラインからの変化を要約した。ベースラインのヘモグロビン及びメトヘモグロビンからの変化の治療群間差の比較は、ウィルコクソンの順位和検定を用いて実施した。
【0190】
定量的細菌学的検査のための培養物を、ベースライン時並びに1週目及び2週目時に額から得た。サンプルは、Williamson及びKligmanの手法の変法に従って入手し、7日間培養した(Williamson,B.A.;Kligman,A.M. A new method for the quantitative investigation of cutaneous bacteria. J.Invest.Dermatol.1965,45,498−503)。アクネ菌のコロニー形成単位(cfu)を、10cfuから100cfuまでの間で含有する希釈物においてカウントした。アクネ菌の総密度を計算し、1cm
2当たりのlog
10cfuとして報告した。
【0191】
アクネ菌の記述統計、ベースラインからの変化、及びベースラインからの変化率(%)は、平均値、中央値、標準偏差、最小値、最大値及び95%の信頼区間(confidence interval)を用いて要約した。
【0192】
1週目及び2週目時におけるベースラインからの低減率(%)は、次式:
【数2】
(式中、X=最初のLog値であり、Y=最後のLog値である)
を用いて計算した。
【0193】
本試験において、4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、安全且つ耐性良好であることが実証された。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル治療群及びビヒクルゲル治療群の被験者の大半は、治療期間中に紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛を経験しなかった。
【0194】
本試験において、有害事象は報告されなかった。ベースライン時点と治療終了時点との間で、血圧、脈拍及び理学的検査所見において臨床的に意義のある変化はみられなかった。メトヘモグロビン及びヘモグロビン濃度の比率(%)において臨床的に意義のある変化は認められなかった。
【0195】
1週間の治療後、アクネ菌数の平均対数低減値は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では0.38、対してビヒクルゲル群では0.20であった。2週間後の時点で、4% Nitricil(商標)NVN1ゲルで治療した被験者のアクネ菌数の平均低減値は1cm
2当たり0.51log
10cfu、対してビヒクルゲルで治療した被験者では、1cm
2当たり0.26log
10cfuであった。2週目時点での差は、スチューデントT検定(student’s T−test)を用いるとp=0.04で統計学的に有意であった。事後ANCOVAによっても、4% Nitricil(商標)NVN1ゲルで治療した被験者とビヒクルゲルで治療した被験者とでは、p=0.03でアクネ菌の低減に統計学的に有意な差があることが実証された。
【0196】
4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、本試験において、安全且つ耐性良好であった。アクネ菌数の低減率(%)には、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル治療群とビヒクルゲル治療群との間で統計学的に有意な差が認められた。
【0197】
[実験例6]
本試験の主要な目的は、ベースライン並びに1週目及び2週目/ET時に4% Nitricil(商標)NVN1ゲル(ヒドロゲルを含有する)の皮膚耐性を評価することであった。副次的な目的は、Nitricil(商標)NVN1ゲルの安全性プロファイルを評価することであった。安全性は、群間の有害事象(理学的検査結果及びバイタルサインの臨床的に意義のある変化が含まれる)、ヘモグロビンの変化及びメトヘモグロビンの比率(%)の変化を比較することによりアセスメントした。ベースラインの来院時、1週目及び2週目/ET時に、培養物由来の菌数の変化により決定されたアクネ菌の低減を尺度とする有効性の探索的解析を実施した。
【0198】
試験パネルは、18歳以上の健康な成人男女でありアクネ菌によるコロニー形成がみられる30名の被験者で構成されていた。被験者を慎重にスクリーニングし、併用禁止とされた局所用又は全身用の抗生物質を登録に先立つ4週間以内に使用した者はいないことを確認した。パネリストは、一切の薬用シャンプーを使用しないよう指導を受けた。本試験のために選抜された志願者は、アクネ菌が高レベルで存在することを示す、ウッド灯下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光を示した。ベースライン時のアクネ菌数は、顔面の皮膚1cm
2当たり少なくとも10,000コロニーであった。
【0199】
すべての被験者が、下記の組入れ/除外基準に合致した。
組入れ基準:
・書面によるインフォームドコンセントフォームに署名済みであること。
・18歳以上の健康な成人男性又は女性志願者であること。
・アクネ菌が高レベルで存在することを示す、ウッド灯下における顔面の皮膚の高度の蛍光発光を示していること。
・いかなる重大な内臓疾患(例えば、心血管性疾患、肺疾患、腎疾患等)の既往歴及び現病歴もないこと。
・妊娠可能な女性(WOCBP)である場合、ベースライン時に尿妊娠検査(UPT)が陰性であること。
・WOCBPである場合、本試験の実施期間中及び最後の治験来院後30日間は、効果的な避妊法の使用に同意すること。ホルモン系避妊薬服用中の女性は、本試験への参加に先立つ少なくとも3カ月(90日)間にわたって同じ種類の避妊薬を服用していなければならず、本試験中は種類を変更してはならない。ホルモン系避妊薬を過去に使用し中断している者は、本試験の開始に先立つ少なくとも3カ月は使用を中止していなければならない。
・抗菌性の局所用製品(シャンプー、石鹸、座瘡用の調製物等)の使用を控えることに同意すること。
・およそ2週間にわたり、遵守事項を守り、1日1回(月曜日〜金曜日)指示どおりに治験実施施設に来院することができること。
除外基準:
次に挙げる除外基準のいずれかに合致する場合、被験者は登録しなかった:
・乾癬、湿疹等を含め、急性又は慢性の何らかの皮膚障害を呈している。
・何らかの顔用手入れ用品(例えば、化粧品、石鹸、マスク、洗浄料、日焼け止め等)を顔に施用した際の著しい灼熱感又は刺痛の経験歴がある。
・女性被験者のうち、妊娠している者、授乳中の母親である者、又は本試験期間中に妊娠を計画している者。
・男性被験者のうち、本試験期間を通じて、性的禁欲、精子提供の自粛及び/又はバリア(男性用コンドーム)の使用に同意しない者。
・ベースラインの来院直前の90日未満の間にエストロゲン(例えば、Depogen、Depo−Testadiol、Gynogen、Valergen等)若しくは経口避妊薬を使用したことがある、又は、ベースラインに先立つ90日未満の間にエストロゲン若しくは経口避妊薬の使用を中止した、又は、この療法の使用を本試験の治療期間中に開始若しくは中止することを計画している。
・アクネ菌数に影響することが公知である局所用又は全身用の抗生物質、例えば、ミノサイクリン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ドキシサイクリン等を、過去4週間以内に使用していた。
・皮膚表面のアクネ菌レベルに影響する可能性がある他の医薬品(例えば、レチノイド)の、過去6カ月以内の使用。
・ニトログリセリン又は他の一酸化窒素供与薬の併用。
・ベースライン時点で、臨床的に意義のある貧血を有する(その判定は首席治験責任医師による)。
・スクリーニング時のメトヘモグロビン値が2.0%以上である。
・スクリーニング時点で、臨床的に意義のある貧血を有する。その判定は治験責任医師による。
・治験薬製品中の成分のいずれかに対してアレルギーがあることがわかっている。
・併用禁止とされた抗生物質の投与を必要とする併発性の病気を有する。
・被験者を重大なリスクにさらすことになると治験責任医師が考える、又は、本試験の結果を混乱させかねない、又は、本試験への被験者の参加を著しく妨げる可能性のある、何らかの状態又は状況を有する。局所麻酔薬を使用した内視鏡検査を受けている被験者は本試験に登録すべきでなく、内視鏡検査の前に本試験への参加を中止すべきである。臨床的に意義のある貧血を有すると治験責任医師が判定した被験者は、登録すべきではない。
・言葉の問題、精神発達不全又は脳機能障害により治験責任医師とコミュニケーション又は協力することができない。
・登録の30日以内に治験薬(investigational drug)又は治験に用いる器具を使用していた、又は、異なる調査研究に同時参加している。
志願者は、同意の撤回及び本試験への参加の中止をいつでも自由にすることができた。
【0200】
登録に先立ち、適格性について候補者をスクリーニングした。適格性確認を確実に行いインフォームドコンセントへの署名を済ませてから、アクネ菌の定量的なベースラインの測定値を(額において)得た(下記の「定量的細菌学的検査」の項を参照のこと)。
【0201】
治療計画:
治療は2週間行った。毎平日の朝、Skin Study Centerにて技術者による監督下で、志願者は自分の顔を洗い、次いで、被験薬製品(test product)を施用した。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はゲルビヒクル(表12)およそ1gを、眼及び口を避けて顔全体(TBSAの4%)にむらなく施用した。治験薬製品を、2室式ポンプから、ポンプを3回押し下げることにより分注した。分注された材料を素早く(3〜5秒)混ぜ合わせ、眼及び口を避けて、薄くのばして顔に施用した。次いで、治験薬製品を、約30秒間、皮膚にやさしくなじませた。被験者は、試験薬施用後は手を洗った。顔を洗う、被験薬製品を施用する、次いで手を洗う、というこの手順を、夜はパネリストが自宅にて(監督なしで)行った。
【0202】
すべての治療について被験者の日誌に記録した。
【0203】
定量的細菌学的検査:
定量的細菌学的検査のための培養物を、ベースライン(0週目)時並びに1週目及び2週目時に被験部位から得た。サンプルは、Williamson及びKligmanの手法の変法に従って入手した(Williamson,P. and Kligman,A.M.: A new method for the quantitative investigation of cutaneous bacteria. Journal of Investigative Dermatology 45:498−503,1965;Keyworth N.,Millar,M.R., and Holland,K.T.: Swab−Wash Method for Quantitation of Cutaneous Microflora. J.Clin.Microbiology,Vol.28,pp.941−943,1990)。額は、0.1% Triton−X−100をしみ込ませた滅菌済のガーゼで対象領域を30秒間丁寧に拭って表面の残屑及び細菌を除去することにより、表面の細菌を取り除いた。次いで、皮膚にしっかり押し当てた滅菌済のプラスチックテンプレートにより、培養対象とする表面領域(4cm2)の輪郭をとった。滅菌済の、先端が綿のスワブ(以下、「綿棒」)(cotton−tipped swab)を、2mlの洗浄溶液(Bacto Letheen Broth、Difco、Sparks、MD、米国)に浸した。次いで、その領域を綿棒で30秒間こすった。次いで、スワブを先ほどの2mlの洗浄溶液の中に戻し、チューブの側面で絞った。次いで、同じ皮膚領域をさらに30秒間再度こすり、その後、綿棒を先ほどの2mlの洗浄溶液の中に再度戻し、チューブの側面で絞る。次いで、スワブをちぎって先ほどの2mlの洗浄溶液の中に入れた。引き続き、Williamson-Kligmanの方法に記載されているとおりにサンプルを加工した。すなわち、0.05% Tween−80(0.075Mリン酸塩緩衝剤で緩衝化されているもの、pH7.9)を用いて10倍希釈を4回行うことで、洗浄サンプル(wash sample)を段階的に希釈した。マイクロピペッターを用いて、酵母エキス、デキストロース及びシステインを添加したブルセラ寒天培地を含有する寒天プレートの指定された区域に、各希釈物を0.05mLずつ載せた。1皿当たり希釈物5滴とした。各被験者について2枚同じプレートを作製した。プレートは、乾燥させ、BBL Gas Pak Plus嫌気系エンベロープを備えた嫌気性ジャーに入れて、36.5〜37.5℃で7日間、嫌気的にインキュベートした。アクネ菌のコロニー形成単位(cfu)を、10cfuから100cfuまでの間で含有する希釈物においてカウントする。アクネ菌の総密度を計算し、1cm
2当たりのlog
10cfuとして報告した。
【0204】
皮膚耐性アセスメント:
ベースライン、1週目及び2週目時に、治療に先立ち、皮膚科医が皮膚耐性アセスメントを行った。皮膚耐性評価項目は、それらが重度に達しない限り、及び/又は、被験者が本試験への参加を中止する結果とならない限り、AEとして報告しなかった。皮膚耐性アセスメントは、次に挙げる尺度に従って実施した:
紅斑
0:なし。紅斑が存在する徴候は認められない
1:軽度。わずかなピンク色を呈する
2:中等度。明白な発赤
3:重度。顕著な紅斑、色は薄い赤色からくすんだ濃い赤色
落屑
0:なし。落屑は認められない
1:軽度。顔面の限定された領域に存在する、かろうじて知覚できる細かい鱗
2:中等度。顔面の全域に広汎化している細かい鱗
3:顔面の全域に及ぶ落屑及び皮膚剥離
乾燥
0:なし。乾燥は認められない
1:軽度。わずかではあるが明白な荒れ
2:中等度。中等度の荒れ
3:重度。顕著な荒れ
そう痒症
0:なし。痒みは認められない
1:軽度。わずかな痒みはあるがそれほど気にならない
2:中等度。痒みの程度は中等度、いくらか気になる
3:重度。痒みの程度は重度、明らかな不快感があり、睡眠が妨げられることがある
灼熱感/刺痛
0:なし。灼熱感/刺痛は認められない
1:軽度。虫が這うような感覚、灼熱感/刺痛の感覚がわずかにあるが、それほど気にならない
2:中等度。虫が這うような感覚、灼熱感/刺痛の感覚は明らかであり、いくらか気になる
3:重度。明らかな不快感を生じさせる熱くヒリヒリするような感覚があり、睡眠が妨げられることがある
【0205】
臨床検査のアセスメント:
ヘモグロビンは、Masimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーター(pulse co−oximeter)を用いて、ベースライン時並びに1週目及び2週目/ET時に測定した。ヘモグロビンの量(g/dL)は、パルスco−オキシメーターに表示され、CRFに記録された。
【0206】
メトヘモグロビンは、Masimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーターを用いて、ベースライン時並びに1週目及び2週目/ET時に測定した。メトヘモグロビンの比率(%)は、パルスco−オキシメーターに表示され、CRFに記録された。
【0207】
WOCBP全員が、ベースライン時及び最後の評価来院(2週目/ET)時に尿妊娠検査(UPT)を受けた。
【0208】
簡単な理学的検査をベースライン及び2週目/ET時に実施した。
【0209】
収縮期血圧及び拡張期血圧並びに脈拍は、ベースライン並びに1週目及び2週目/ET時に収集した。
【0210】
データ処理:
培養物は100から104まで10倍希釈して平板培養し、これを2組作製した。細菌数は、コロニー形成単位(CFU)が顕著に分散している希釈物から得て、次いでこれを1平方cm当たりの総数に換算した。各プレートについての生データ及び平均値は、別々の列に記入した。並べ替えのテンプレートは、Excel2007表計算ソフトに基づくものであった。各セッションについて並べ替えたデータを表にした。
【0211】
データ解析には、ベースライン時の平均値を治療時のものと比較するための、対応のあるT検定が含まれていた。2つの治療群の平均値の比較には、スチューデントT検定を用いた。有意差ありとなるためには、両側のpが0.05未満である必要がある。
【0212】
本試験のために33名のパネリストをスクリーニングし、合計30名のパネリストを登録した。29名のパネリストが試験完了となった。1名のパネリストが、施用後に発赤を生じたことから本試験への同意を撤回した。有害事象は認められなかった。
【0213】
本試験の過程において、皮膚科医により紅斑及び落屑が認められることはなかった。最低限の乾燥、そう痒症及び灼熱感又は刺痛が、次のとおり記された。
【0214】
4% Nitricil(商標)NVN1ゲル(試験治療薬A)を使用した3名の被験者が、2週目時点で乾燥を報告した。試験治療薬Aを使用した2名の被験者が、1週目時点でそう痒症を報告した。1週目時点で、試験治療薬Aを使用した1名の被験者が灼熱感/刺痛を報告した。
【0215】
本治験においては、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル製剤の皮膚耐性及び全身的な安全性を、1日2回の治療を1週間行った時点及び2週間行った時点で評価した。加えて、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)のインビボ(in−vivo)での低減について、すなわち、尋常性座瘡の炎症に対する菌の関与についての探索的解析を、治療を1週間行った時点及び2週間行った時点で行った。テストパネルは、アクネ菌レベルが10
4/cm
2以上である30名の健康な志願者から成っており、そのうち20名は実薬で、10名はビヒクルで治療した。
【0216】
被験剤(test agent)及びそのビヒクルは、耐性が極めて良好であった。刺激の客観的な徴候、及び、そう痒症、灼熱感又は刺痛の主観的な症状は、1週目の来院時に中等度のそう痒症が1名のパネリストに、軽度のそう痒症が別のパネリスト1名に認められた以外は、みられなかった。軽度の灼熱感/刺痛が、1週目時点で1名のパネリストから報告された。軽度の乾燥が、2週目時点で3名のパネリストにみられた。1名のパネリストが1日目に離脱したが、理由は、被験剤により誘発される生理的血管拡張についての懸念であった。このパネリストには刺激の徴候はみられなかった。
【0217】
ベースライン時と治療終了時との間で、血圧、脈拍及び理学的検査所見の臨床的に意義のある変化はみられなかった。メトヘモグロビン及びヘモグロビン濃度の比率(%)に臨床的に意義のある変化は認められなかった。
【0218】
1週間の治療後、平均対数低減値は、実薬群では0.38、対してビヒクル群では0.20であった。2週間後の時点で、実薬の平均低減値は0.51、対してビヒクルでは0.26であった。2週目時点での差は、スチューデントT検定を用いたところ、統計学的に有意であった(p=0.04)。応答は、被験剤ではさまざまであり、2名のパネリストは、2週間の治療後の時点で1log超の低減を示し、他の5名は0.5以上ではあるが1log未満の低減を示した。ビヒクル群では、3名のパネリストが平均低減値未満の値を示した。
【0219】
共分散分析(ANCOVA)によって、1週目時と2週目時とでは、アクネ菌数について統計学的に有意な差があることが実証された(
図9)。
【0220】
被験剤及びそのビヒクルは、耐性良好であり、皮膚毒性及び全身毒性の徴候を示さなかった。アクネ菌へのさまざまなインビボでの抗菌作用がみられた。このことは、座瘡療法において有効となり得る。
【0221】
[実験例7]
本試験は、尋常性座瘡を有する被験者において2つの濃度のNitricil(商標)NVN1ゲル及びビヒクルゲルを12週間治療に用いた場合の有効性、安全性及び耐性を比較するための、多施設共同、ランダム化、評価者盲検化、ビヒクル対照、並行群間、三群比較試験であった。本試験のエントリー基準に合致した被験者を登録し、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はビヒクルゲルの局所施用を受けるようにランダム化した(表13)。被験者を、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル又はビヒクルゲルに1:1:1の比率でランダムに割り付け、1日2回(朝晩)、12週(84日)間にわたって投与するように指導した。試験薬の1回目の施用は、治験実施施設にてベースラインの来院時に行われた。
【0222】
【表13】
【0223】
ベースラインの来院後は、治験来院は、最初の4週間はおよそ2週間毎、次いで次の8週間は4週間毎に行われた。試験期間は、治療期を84日間までとした。
【0224】
有効性アセスメントには、炎症性(丘疹及び膿疱)並びに非炎症性(開放性及び閉鎖性面皰)病変の数、結節及び嚢胞の数、並びに治験責任医師による包括的アセスメント(IGA)が含まれ、これらはベースライン並びに4週目、8週目、及び12週目/早期終了(ET)時に実施した。
【0225】
追加のアセスメントには、写真及び皮脂の収集が含まれた。写真は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に収集した。皮脂は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に、2箇所の治験実施施設にて、Sebutape(登録商標)を用いて登録被験者の額中央部から収集した。
【0226】
耐性及び安全性アセスメントには、皮膚耐性評価、有害事象(AE)収集、血圧及び脈拍数を含む理学的検査、メトヘモグロビン及びヘモグロビン測定、並びに尿妊娠検査(UPT)が含まれた。皮膚耐性アセスメント(紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛)は、ベースラインの来院時及びその後の各来院時に、試験薬の1回目の施用の前及び施用の30分後に評価した。ベースライン以外の来院時に行う皮膚耐性アセスメントは、試験薬施用の少なくとも30分後に実施するようにした。AEの収集は、被験者がインフォームドコンセントに署名を済ませ一切の試験アセスメント(study assessment)を完了してから開始し、最後の治験来院が終了するまで行った。簡単な理学的検査をベースライン(第1回来院/0日目)及び12週目/ET時に実施した。血圧及び脈拍数は、ベースライン時並びに2週目、4週目、8週目及び12週目/ET時の投与前に収集した。メトヘモグロビン及びヘモグロビンは、メトヘモグロビンレベル及びヘモグロビンレベルを分析するMasimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーターを用いて、ベースライン並びに2週目及び12週目/ET時に測定した。メトヘモグロビン値がベースライン時に2.0パーセントを超えている被験者、及び、臨床的に意義のある貧血をベースライン時に有する被験者は、本試験への参加には不適格とした。すべての妊娠可能な女性(WOCBP)はベースライン時にUPTを受けていなくてはならず、結果が陽性であった場合には、その被験者は本試験への参加が認められなかった。WOCBPは、4週目、8週目及び12週目/ET時にもUPTを受けることとした。早期に終了した被験者は、完了前中止(premature discontinuation)の時点で12週目/ET時の評価をすべて完了することが求められた。
【0227】
intent to treat(ITT)集団の被験者数は、ビヒクルゲル群52名、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群51名、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群50名であった。但し、被験者全員が本試験を完了してはおらず、その結果、ビヒクルゲル群で本試験を完了した被験者は45名、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群で本試験を完了した被験者は43名、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群で本試験を完了した被験者は41名であった。
【0228】
本試験には、人種を問わず12歳から40歳まで(12歳及び40歳を含む)の、尋常性座瘡を有する健康な男女を組み込んだ。被験者は、少なくとも20箇所、但し約40箇所以下の炎症性病変(丘疹及び膿疱)、25箇所から70箇所までの非炎症性病変(開放性及び閉鎖性面皰)、2箇所以下の結節を有していなくてはならず、治験責任医師による包括的アセスメント(IGA)が2、3又は4でなければならなかった。
【0229】
1% Nitricil(商標)NVN1ゲル、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル及びビヒクルゲルは、およそ1グラムを1日2回(朝夕)顔全体にむらなく施用することにより投与した。活性のあるゲル(A室)とヒドロゲル(B室)とは、施用直前に被験者が2室式ポンプから1:1の比率で同時に分注し混合した。ビヒクルゲル(A室)とヒドロゲル(B室)とは、施用直前に被験者が2室式ポンプから同時に分注し混合した。
【0230】
ベースライン並びに4週目、8週目及び12週目/ET時に、治験責任医師は、額、左右の頬、顎及び鼻を含め、被験者の顔面にある非炎症性病変の総数をカウントした。ベースライン並びに4週目、8週目及び12週目/ET時に、治験責任医師は、額、左右の頬、鼻及び顎を含め、被験者の顔面にある炎症性病変の総数もカウントした。鼻の病変数(炎症性及び非炎症性)並びに結節及び嚢胞の数は別々に報告されたが、解析のために、炎症性病変数には、丘疹、膿疱、及び結節/嚢胞を合わせた数を含めた。
【0231】
IGAは、ベースライン並びに4週目、8週目及び12週目/ET時に実施した。IGAスコアは、尋常性座瘡の全体的な徴候及び症状についての治験責任医師による評価に基づいて決定した。評価は、0(病変が消失している)から4(重度)までの尺度で採点した。
【0232】
写真は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に収集した。
【0233】
皮脂は、ベースライン、4週目及び12週目/ET時に2箇所の治験実施施設にて、Sebutape(登録商標)を用いて登録被験者の額中央部から収集した。
【0234】
治験責任医師は、各治験来院時の評価に加え、治験薬製品の1回目の施用の前及び施用の30分後に被験者の顔面を評価した。ベースライン以外の来院時に行う皮膚耐性アセスメントは、試験薬施用の少なくとも30分後に実施されているものとした。皮膚耐性評価には、紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛)が含まれた。
【0235】
メトヘモグロビン及びヘモグロビンは、メトヘモグロビンレベル及びヘモグロビンレベルを分析するMasimo Rainbow(登録商標)SET(登録商標)Rad−57(商標)パルスco−オキシメーターを用いて、ベースライン、2週目及び12週目時に測定した。
【0236】
簡単な理学的検査をベースライン(第1回来院/0日目)及び12週目/ET時に実施した。血圧及び脈拍数は、ベースライン時並びに2週目、4週目、8週目及び12週目/ET時の投与前に収集した。治験責任医師は、予定された治験来院時に毎回、AEの発現について被験者をアセスメントした。
【0237】
主要な有効性評価項目は、12週目における、鼻を含む顔面における非炎症性病変のベースラインからの絶対変化であった。
【0238】
12週目における、鼻を含む顔面における非炎症性病変の絶対変化という主要な評価項目の解析は、治療及び治験実施施設を要因とし、ベースライン時点での病変数を共変量とした共分散分析(ANCOVA)を用いて実施した。用量応答性を決定するために線形回帰も実施した。ここで、傾き(β)は試験治療薬全体(1%及び4%)で推定し、ビヒクルゲルは、回帰においては0%としてラベル付けした。帰無検定(null test)は、β=0であるという帰無仮説に対してβ=0ではないという対立仮説を立てたものとした。βが正数である場合に帰無仮説は棄却され、このことから用量応答性が示された。
【0239】
副次的な有効性評価項目は、12週目における、炎症性病変数のベースラインからの絶対変化、12週目における、鼻を除く顔面の非炎症性病変数のベースラインからの絶対変化、及び12週目時点での二分化されたIGAであった。
【0240】
炎症性病変数には、丘疹、膿疱、及び結節/嚢胞合計数を含めた。
【0241】
12週目時点での炎症性病変数の絶対変化の解析には、鼻を含む非炎症性病変数の変化という主要な有効性解析について概説したものと同じ方法を用いた。
【0242】
12週目における、鼻を除く顔面における絶対的な非炎症性病変数の解析には、鼻を含む顔面における非炎症性病変数の変化という主要な有効性解析について概説したものと同じ方法を用いた。
【0243】
12週目時点での二分化されたIGAスコアは、治療及び治験実施施設を独立因子としたロジスティック回帰モデルを用いて解析した。二分化されたIGAスコアは、ロジスティック回帰の従属変数として、不成功(failure:不奏効)は0、成功(success:達成、奏効)は1として再ラベル付け(relabel)した。成功は、「病変が消失している」(0)又は「ほぼ病変が消失している」(1)のスコアでありベースラインから少なくとも2グレード改善されていること、と定義した。加えて、治験実施施設により層化を行ったコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)検定を用いて治療群を比較した。一対比較は、多重性のコントロールを考慮せずにコンピューター計算した。
【0244】
皮膚耐性アセスメント(紅斑、落屑、乾燥、そう痒症、及び灼熱感/刺痛)は、各評価時に、頻度数及び百分率として要約した。メトヘモグロビンは、ヘモグロビンに占める百分率として報告された。総ヘモグロビンも報告された。メトヘモグロビン及びヘモグロビンは、ベースライン並びに2週目及び12週目時に治療群別に記述的に要約した。この要約には、サンプルサイズ、平均値、中央値、標準偏差(SD)、最小値及び最大値が含まれた。加えて、2週目及び12週目時点でのメトヘモグロビン及びヘモグロビンのベースラインからの変化を要約した。
【0245】
要約は、報告されたAEの特徴を説明するために示したものであり、少なくとも1つのAEを報告した被験者の人数及び百分率、並びに、重症度別、重篤度別及び試験薬との因果関係別の事象報告件数を含めた。
【0246】
ベースライン、2週目、4週目、8週目及び12週目/ET時の血圧及び脈拍数、並びに、12週目/ET時におけるベースラインからの変化を、平均値、SD、最小値及び最大値を用いて治療群別に要約した。
【0247】
ITT集団に関しては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルにおける絶対的な非炎症性病変数(鼻を含む場合及び除く場合)についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、対応するビヒクルゲルにおける絶対的な非炎症性病変数(鼻を含む場合及び除く場合)についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均より統計学的に有意に大きく低下していたが、線形の用量応答はみられなかった。4% Nitricil(商標)NVN1ゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、ビヒクルゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均より統計学的に有意に大きく低下していたが、1% Nitricil(商標)NVN1ゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、ビヒクルゲルにおける絶対的な炎症性病変数についてのベースラインからの変化量の最小二乗平均とは統計学的に差はなかった。線形の用量応答がみられた。二分化されたIGAについては治療群間で差はみられなかった。具体的には、
・非炎症性病変(鼻を含む)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−11.8病変、対してビヒクルゲル群では−0.7病変であった(p=0.022)。非炎症性病変(鼻を含む)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−11.1病変、対してビヒクルゲル群では−0.7病変であった(p=0.031)。治療群間では線形の用量応答はみられなかった(p=0.105)。炎症性病変についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−13.8病変、対してビヒクルゲル群では−9.4病変であった(p=0.088)。炎症性病変についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−15.5病変、対してビヒクルゲル群では−9.4病変であった(p=0.018)。治療群間で線形の用量応答がみられた(p=0.033)。
・非炎症性病変(鼻を除く)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−10.9病変、対してビヒクルゲル群では−1.3病変であった(p=0.032)。非炎症性病変(鼻を除く)についてのベースラインからの絶対変化量の最小二乗平均は、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では−10.6病変、対してビヒクルゲル群では−1.3病変であった(p=0.039)。治療群間では線形の用量応答はみられなかった(p=0.118)。
・1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群については、0.0%(0/51)の被験者、対してビヒクルゲル群については1.9%(1/52)の被験者を、二分化されたIGAの「成功」として特徴付けた(p≧0.317)。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群については、2.0%(1/50)の被験者、対してビヒクルゲル群については1.9%(1/52)の被験者を、二分化されたIGAの「成功」として特徴付けた(p≧0.601)。
【0248】
安全性解析対象集団に関しては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、安全且つ耐性が概ね良好であった。重篤な有害事象は認められず、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは、良好な皮膚耐性を示した。メトヘモグロビン及びヘモグロビンの結果の再検討からは、安全性シグナルは見出されなかった。バイタルサインの結果の再検討からは、安全性シグナルは見出されなかった。
【0249】
PP集団に関しては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは両方とも、ビヒクルゲルに比して、時間の経過に伴う非炎症性病変についての低減百分率の平均値を実証した(
図10)。
図10は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群のどちらの場合もビヒクルゲル群との分岐が4週目時点で生じたことを示している。4週目時点では、ビヒクルゲル群は非炎症性病変についての低減百分率の平均値が6%であったが、これに対して、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は非炎症性病変についての低減百分率の平均値が14%、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は非炎症性病変についての低減百分率の平均値が24%であった。PP集団についての非炎症性病変数を表14に示す。
【0250】
【表14】
【0251】
PP集団においては、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルの両方について、ビヒクルゲルに比して、時間の経過に伴う非炎症性病変についての低減百分率の平均値がみられた(
図11)。
図11は、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群のどちらの場合もビヒクルゲル群との分岐が4週目時点で生じたことを示している。4週目時点では、ビヒクルゲル群は炎症性病変についての低減百分率の平均値が14%であったが、これに対して、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は炎症性病変についての低減百分率の平均値が26%、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は炎症性病変についての低減百分率の平均値が31%であった。
【0252】
12週目時点でのPP集団については、炎症性病変の低減率(%)の中央値は、以下のとおりであった:1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では56%、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群では66%、ビヒクルゲル群では42%。したがって、PP集団についての炎症性病変の低減率(%)の中央値は、各群とも、PP集団についての炎症性病変の低減率(%)の平均値より高かった。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群については、本試験を完了した41名の患者のうち20名の炎症性病変の低減率は70%を超えていた。PP集団についての炎症性病変数を表15に示す。
【0253】
【表15】
【0254】
ビヒクルゲル群に比して、1% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、非炎症性及び炎症性病変の数(鼻を含む場合及び除く場合)の低下に有効であり、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、非炎症性病変(鼻を含む場合及び除く場合)並びに炎症性病変の数の低下に有効であった。4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、ビヒクルゲル群との比較で統計学的に有意な差を実証し、4% Nitricil(商標)NVN1ゲル群は、主要評価項目及び副次的評価項目についてビヒクル群と差があった。1% Nitricil(商標)NVN1ゲル及び4% Nitricil(商標)NVN1ゲルはどちらも安全且つ耐性良好であり、安全性シグナルは見出されなかった。
【0255】
[実験例8]
座瘡の臨床試験の実施経験を有するAmerican Board of Dermatologyの認定皮膚科医3名が、実験例7に記載した試験に基づいて、治験責任医師による包括的アセスメント(IGA)の事後解析を実施した。この解析の目的は、米国の認可を受けるための臨床試験の実施経験を有する治験責任医師に治療の結果を評価してもらうことであった。実験例7及び実験例8で用いたIGA採点の説明を表16に示す。「成功」の定義は、治療終了時のスコアが「0」(病変が消失している)又は「1」(ほぼ病変が消失している)でありベースラインから最低2グレード変化していることである。
【0256】
【表16】
【0257】
American Board of Dermatology認定皮膚科医3名は、ベースライン及び12週目の両時点における被験者の入手可能な臨床画像について盲検下レビューを実施し、ベースライン及び12週目時に撮影された画像を「採点」した。結果を下記の表17に示す。3名の皮膚科医全員が、Nitricil(商標)NVN1ゲル、とりわけ4% Nitricil(商標)NVN1ゲルは尋常性座瘡の治療に活性を有すると判定した。
【0258】
【表17】
【0259】
[実験例9]
過酸化ベンゾイルを含む美容的にエレガントな組成物を調製した。各組成物は、2つの部分を含有しており、1つの部分は、カルボキシポリメチレンを含有する過酸化ベンゾイルゲルであり、第2の部分は、セルロースを含有する組成物であった。各部分を、YonWoo製の2×15mLの2室式ポンプの1室に充填した。過酸化ベンゾイルゲル製剤を表18及び表19に示し、2つの過酸化ベンゾイルゲル製剤それぞれと別々に組み合わせるためのセルロース組成物を表20に示す。
【0260】
【表18】
【0261】
【表19】
【0262】
【表20】
【0263】
先の記載は、本発明を例証するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、次に記載する特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲の等価物は、この範囲に含まれるものとする。本明細書において引用する刊行物、特許出願、特許、特許公報、及び他の参考文献はすべて、参照箇所が存在する文及び/又は段落に関連する教示について、ここに引用することによりその全体を本明細書の一部をなすものとする。