特許第6567443号(P6567443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567443電力制御値算出装置、電力制御値算出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567443
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】電力制御値算出装置、電力制御値算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20190819BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20190819BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190819BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/00 170
   H02J7/00 H
   H01M10/48 P
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-33324(P2016-33324)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-153234(P2017-153234A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下里 康一
(72)【発明者】
【氏名】野坂 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正憲
【審査官】 大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−143867(JP,A)
【文献】 特開2000−069673(JP,A)
【文献】 特開2002−369407(JP,A)
【文献】 特開2016−019368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H01M 10/48
H02J 3/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する制御値算出部、
を備え
前記制御値算出部は、
前記電力負荷において前記ピークカットレベルを超える分の電力量が放電指令最大値による前記蓄電池の放電量よりも大きなピーク時間帯においては、前記ピークカットレベルを、前記ピーク時間帯の電力負荷から前記放電指令最大値を減算した値に変更し、
前記ピーク時間帯のピークカットレベルの値が変更されたことによる蓄電池の余剰の電力量を、前記ピーク時間帯以外の時間帯に配分した電力量を算出し、前記ピーク時間帯以外の前記ピークカットレベルを、配分された前記電力量を減算した値に変更する、
電力制御値算出装置。
【請求項2】
商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する制御値算出部、
を備え、
前記制御値算出部は、算出された前記ピークカットレベルが商用電源の最低受電量よりも低い場合は、前記ピークカットレベルを前記最低受電量とする、
電力制御値算出装置。
【請求項3】
前記制御値算出部は、前記ピークカットレベルが前記蓄電池からの放電又は充電が可能な時間帯における電力負荷の平均の値よりも小さい場合、前記ピークカットレベルを前記平均の値とする、
請求項1又は請求項に記載の電力制御値算出装置。
【請求項4】
前記制御値算出部は、
蓄電池からの放電が可能な時間帯における時系列の電力負荷に対して、電力負荷が高い順に順位を付与する順位付与部と、
前記順位が高い順に電力負荷を選択し、選択された順位以上の電力負荷のそれぞれと、選択された電力負荷よりも1つ低い電力負荷との差分の合計を算出する処理を繰り返し、前記合計が前記蓄電池の容量を超えたときの前記合計と前記蓄電池の容量との差分を、前記合計が前記蓄電池の容量を超えたときに選択されていた順位以上の電力負荷の数に配分し、選択されていた前記順位よりも1つ低い順位の電力負荷に、配分された電力負荷を加えてピークカットレベルの値を算出する算出部と、
を備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電力制御値算出装置。
【請求項5】
電力制御値算出装置が実行する電力制御値算出方法であって、
商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する制御値算出ステップ
前記電力負荷において前記ピークカットレベルを超える分の電力量が放電指令最大値による前記蓄電池の放電量よりも大きなピーク時間帯においては、前記ピークカットレベルを、前記ピーク時間帯の電力負荷から前記放電指令最大値を減算した値に変更する第一変更ステップと、
前記ピーク時間帯のピークカットレベルの値が変更されたことによる蓄電池の余剰の電力量を、前記ピーク時間帯以外の時間帯に配分した電力量を算出し、前記ピーク時間帯以外の前記ピークカットレベルを、配分された前記電力量を減算した値に変更する第二変更ステップと、
を有する電力制御値算出方法。
【請求項6】
電力制御値算出装置が実行する電力制御値算出方法であって、
商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する制御値算出ステップと、
算出された前記ピークカットレベルが商用電源の最低受電量よりも低い場合は、前記ピークカットレベルを前記最低受電量とする変更ステップと、
を有する電力制御値算出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する制御値算出ステップ
前記電力負荷において前記ピークカットレベルを超える分の電力量が放電指令最大値による前記蓄電池の放電量よりも大きなピーク時間帯においては、前記ピークカットレベルを、前記ピーク時間帯の電力負荷から前記放電指令最大値を減算した値に変更する第一変更ステップと、
前記ピーク時間帯のピークカットレベルの値が変更されたことによる蓄電池の余剰の電力量を、前記ピーク時間帯以外の時間帯に配分した電力量を算出し、前記ピーク時間帯以外の前記ピークカットレベルを、配分された前記電力量を減算した値に変更する第二変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する制御値算出ステップと、
算出された前記ピークカットレベルが商用電源の最低受電量よりも低い場合は、前記ピークカットレベルを前記最低受電量とする変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力制御値算出装置、電力制御値算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の導入により、受電電力のピークカットが可能となってきている。ピークカットを行うには、電力使用量が少ない時間帯に蓄電池を充電しておき、電力使用量がピークとなる時間帯に蓄電池を放電する。これにより、電力使用量のピークを低減させることができる。また、安価な深夜電気料金の時間帯に蓄電池を充電し、電気料金の高い昼間に放電させて、電気料金の総額を削減することもできる。
【0003】
ピークカットを行う際は、受電電力の目標値であるピークカットレベルをキープできる十分な容量及び放電能力(電力)を備えた蓄電池が必要である。そのため、ピークカットレベルを適切に設定しないと、蓄電池の導入コストが高くなる場合や、蓄電池の容量及び放電能力(電力)を有効に活用しきれない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−79098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、蓄電池を有効に活用して受電電力のピークカットをするためのピークカットレベルを算出することができる電力制御値算出装置、電力制御値算出方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力制御値算出装置は、制御値算出部を持つ。制御値算出部は、商用電源の受電量の上限であるピークカットレベルの値を、蓄電池からの放電が可能な時間帯の時系列の電力負荷においてピークカットレベルを超える分の電力量が蓄電池の容量を超えないように算出する。前記制御値算出部は、前記電力負荷において前記ピークカットレベルを超える分の電力量が放電指令最大値による前記蓄電池の放電量よりも大きなピーク時間帯においては、前記ピークカットレベルを、前記ピーク時間帯の電力負荷から前記放電指令最大値を減算した値に変更し、前記ピーク時間帯のピークカットレベルの値が変更されたことによる蓄電池の余剰の電力量を、前記ピーク時間帯以外の時間帯に配分した電力量を算出し、前記ピーク時間帯以外の前記ピークカットレベルを、配分された前記電力量を減算した値に変更する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の電力制御システムの構成図。
図2】電力制御値算出装置の構成を示す機能ブロック図。
図3】ピークカットレベルの計算方法を説明するための図。
図4】ピークカットレベルの計算方法を説明するための図。
図5】ピークカットレベルの調整方法を説明するための図。
図6】ピークカットレベルの調整方法を説明するための図。
図7】電力制御値算出装置の動作を示すフロー図。
図8】電力制御画面の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電力制御値算出装置、電力制御値算出方法及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、電力制御システム100の構成図である。電力制御システム100は、電力制御値算出装置1と、電力制御装置2と、受電設備3と、変換器4と、蓄電池5と、機器6と、管理用端末7とを備える。受電設備3と、変換器4と、蓄電池5と、機器6とは、電力制御装置2による電力制御対象を構成する。電力制御値算出装置1は、電力制御装置2が電力制御対象を制御するための制御値を算出する。電力制御装置2は、電力制御値算出装置1が算出した制御値を用いて、受電設備3による商用電源の受電と、蓄電池5の充電及び放電とを制御する。受電設備3は、商用電源を受電し、施設内に供給する。変換器4は、蓄電池5の充電時、受電設備3が受電した電力を交流から直流に変換し、蓄電池5に供給する。また、変換器4は、蓄電池5の放電時、蓄電池5が放電した電力を直流から交流に変換し、機器6に供給する。機器6は、商用電源又は蓄電池5から電力の供給を受け、動作する。管理用端末7は、管理者が使用する端末である。
【0010】
図2は、電力制御値算出装置1の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。同図に示す電力制御値算出装置1は、記憶部11と、受信部12と、予測部13と、制御値算出部14と、出力部15と、画面制御部16とを備える。
【0011】
記憶部11は、各種データを記憶する。記憶部11は、蓄電池5が蓄電可能な最大容量と、蓄電池5の放電時間帯、充電時間帯、充放電時間帯及びリセット時間帯と、蓄電池5に対する放電指令最大値と、商用電源の最低受電量との情報を記憶する。放電時間帯は、蓄電池5が放電のみ可能な時間帯である。充電時間帯は、蓄電池5が充電のみ可能な時間帯である。放充電時間帯は、蓄電池5が放電も充電も可能な時間帯である。リセット時間帯は、蓄電池5が放電も充電も行わない時間帯である。
【0012】
受信部12は、機器6に供給された電力や、蓄電池5が充電又は放電した電力などの各種の計測値を、電力制御対象に備えられた図示しない計測器から受信し、記憶部11に書き込む。予測部13は、記憶部11に記憶される計測値や、外部から取得した各種の情報に基づいて、1日の時系列(例えば、30分ごと、1時間ごとなど)の電力負荷を予測する。電力負荷は、機器6が消費する電力量である。
【0013】
制御値算出部14は、蓄電池5からの放電が可能な時間帯について算出された時系列の電力負荷のそれぞれにおいてピークカットレベルを超える分の電力量の合計が、蓄電池5の容量を超えないように、ピークカットレベルの値を決定する。ピークカットレベルは、ピーク負荷を削減する目標値であるとともに、蓄電池5の充電時に商用電源から受電する上限の電力(受電量制限値)である。ピークカットレベルを超える電力は、蓄電池5からの放電により賄う。制御値算出部14は、順位付与部141と、算出部142とを備える。
【0014】
順位付与部141は、蓄電池5からの放電が可能な時間帯における予測された時系列の電力負荷に対して、電力負荷が高い順に順位を付与する。
算出部142は、順位付与部141が付与した順位が高い順に電力負荷を選択し、選択された電力負荷以上の順位の電力負荷のそれぞれと、選択された電力負荷よりも1つ低い順位の電力負荷との差分の合計を算出する処理を繰り返す。算出部142は、算出した合計が蓄電池5の容量を超えたときのその合計と蓄電池5の容量との差分を、そのときに選択されていた順位以上の電力負荷の数に配分する。算出部142は、算出した合計が蓄電池5の容量を超えたときに選択されていた順位よりも1つ低い順位の電力負荷に、配分した差分を加えて得られる電力負荷に基づき、ピークカットレベルを算出する。
【0015】
出力部15は、商用電源から受電と、蓄電池5の充電及び放電とを制御する電力制御装置2に対して、算出したピークカットレベルを制御値として通知する。電力制御装置2は、受信したピークカットレベルに基づいて、商用電源から受電する電力や、蓄電池5が充電又は給電する電力を制御する。
【0016】
画面制御部16は、電力制御に関する画面を表示させる画面データを生成し、管理用端末7に送信する。管理用端末7は、受信した画面データに基づいて電力制御に関する画面をディスプレイに表示する。
【0017】
図3は、ピークカットレベルの計算方法を説明するための図である。同図では、電力制御値算出装置1の予測部13が予測した1日の時系列の電力負荷のうち、放電が可能な時間帯の電力負荷を高い順にならべている。制御値算出部14は、蓄電池5が満充電状態であることを前提に、電力負荷が高い方から順に、蓄電池5に充電された電力量を割り当てることでピークカットレベルの値を求める。制御値算出部14は、1日の内、ピークカット対象となる電力負荷を、放電可能な時間帯(放)、または、充放電が可能な時間帯(放充)の電力負荷とし、充電のみが可能な時間帯やリセット時間帯の電力負荷はピークカットの対象外とする。
【0018】
順位がi番目(iは1以上の整数)の電力負荷をwと記載する。算出部142は、順位が高い順に電力負荷wを選択する。算出部142は、選択した順位i以上の電力負荷w~wのそれぞれにおいて、順位iの次の順位(i+1)の電力負荷wi+1を超える電力量の合計Dを求め、求めた合計Dが蓄電池5で賄えるか否かを判定する。算出部142は、この判定を繰り返し、蓄電池5の最大容量Cまで負荷に割り当て、ピークカットレベルの値を求める。
【0019】
具体的には、まず、算出部142は、最も高い順位の電力負荷wを選択し、電力負荷wとの差分aを算出する。電力負荷wの時間帯は1つだけであるので、合計D=差分aとなる。算出部142は、差分の合計Dが蓄電池5の最大容量C以下である場合、順位が2番の電力負荷wを選択する。
【0020】
電力負荷wの時間帯は1つだけであるので、算出部142は、電力負荷wと電力負荷wとの差分(a+b)、及び、電力負荷wと電力負荷wとの差分bの合計D(=a+2b)を算出する。算出部142は、差分の合計Dが蓄電池5の最大容量C以下である場合、順位が3番の電力負荷wを選択する。
【0021】
電力負荷wの時間帯は2つある。そこで、算出部142は、電力負荷wと電力負荷wとの差分(a+b+c)、電力負荷wと電力負荷wとの差分(b+c)、及び、電力負荷wと電力負荷wとの差分c×2の合計D(=a+2b+4c)を算出する。算出部142は、差分の合計Dが蓄電池5の最大容量Cと同じである場合、ピークカットラインを電力負荷wとする。
あるいは、差分の合計Dが蓄電池5の最大容量Cを超えた場合、算出部142は、超えた分の電力量(D−C)を現在の順位以上の4つの時間帯に均等配分する。算出部142は、ピークカットラインを、均等配分された電力量を電力負荷wに加算した値とする。
算出部142は、最終的に得られたピークカットラインが表す電力値を、ピークカットレベルとする。
【0022】
図4は、ピークカットレベルを超える電力負荷を蓄電池5から供給できない時間帯がある場合のピークカットレベルの計算方法を説明するための図である。
同図では、図3と同様にピークカットレベルが求められる。しかし、ピークカットレベルを超える電力負荷が、放電指令最大値により蓄電池5から放電される電力で賄える電力量よりも大きい時間帯(以下、「ピーク時間帯」と記載する。)がある。そこで、このピーク時間帯については、そのピーク時間帯の電力負荷の値から放電指令最大値を減算した値をピークカットレベルとする。電力負荷が突出したピーク時間帯があると、他の負荷時間帯での放電が行われなくなる。そこで、算出部142は、ピークカットレベルとして、図3で説明したアルゴリズムに基づく計算結果を採用し、放電指令割り当て時に放電指令最大値による蓄電池5からの放電量をオーバするピーク時間帯については、ピークカットレベルを上記のように放電指令最大値を用いて補正する。さらに、算出部142は、ピークカットレベルを放電指令最大値に補正したことによる余剰分の電力量を、ピーク時間帯以外の時間帯に配分する。算出部142は、ピーク時間帯以外の時間帯のピークカットレベルを、配分した電力量に対応した電力値を減算した値とする。以下では、放電が可能な時間帯の電力負荷を高い順に並べたとき、その電力負荷が予測される時間帯を順に、時間帯T1、T2、…とする。従って、時間帯T1、T2、…の並びは時刻順ではない。
【0023】
例えば、図4において、図3と同様にピークカットレベルを求めた結果は、ピークカットラインL11により表される電力値である。また、負荷時間帯T1の電力負荷wは、ピークカットラインL11との差分が放電指令最大値よりも大きい突出したピーク時間帯の電力負荷である。以下では、このようなピーク時間帯の電力負荷を、ピーク負荷と記載する。負荷時間帯T1においては、放電指令最大値により蓄電池5からの放電を行った場合でも、削減可能な電力量はラインL12を超える分までである。この場合、ラインL11を超える負荷時間帯T1の電力量(a+b+c)から、放電指令最大値による蓄電池5からの放電で賄える電力量を減算した電力量dが残るため、他の負荷を削減しても平準化はできない。
【0024】
平準化の考え方からすると、ラインL11がピークカットラインとなる。しかし、蓄電池5の有効活用を優先し、算出部142は、蓄電容量を電力負荷に割り当てた後、蓄電池5の残蓄電量がある場合は負荷配分を継続して行う。同図の場合、算出部142は、時間帯T1においては蓄電池5からの放電量を放電指令最大値とし、ピークカットラインを、電力負荷wから放電指令最大値を減算したラインL12とする。さらに、算出部142は、電力量dを時間帯T2〜T5の4つの時間帯に分配する。つまり、算出部142は、ラインL11から電力量d/4を減算してラインL13を求め、このラインL13を、ピーク負荷が得られた時間帯T1以外の時間帯のピークカットラインとする。算出部142は、時間帯T1のピークカットレベルをラインL12の電力値とし、時間帯T1以外のピークカットレベルをラインL13の電力値とする。このようにして、算出部142は、蓄電池5の全ての容量を配分して得られるピークカットレベルを採用する。
【0025】
図5は、ピークカットレベルが最低受電量以下となる場合のピークカットレベルの調整方法を説明するための図である。同図では、電力制御値算出装置1の予測部13が予測した1日の電力負荷を時刻順に並べている。
図3と同様にピークカットレベルを求めた結果、蓄電池5の蓄電容量を全て負荷に配分しても残蓄電量が有る場合には、ピークカットレベルの値が「0」となることが想定される。例えば、図3と同様の計算により求めたピークカットレベルが、商用電源の最低受電量(例えば、デフォルトで「20kW」とする)以下の場合、算出部142は、最低受電量をピークカットレベルに採用する。これにより、放電による逆潮を防止する。同図に示すピークカットラインは、最低受電量に対応する。
【0026】
図6は、ピークカットラインが1日の電力負荷の平均以下となる場合のピークカットレベルの調整方法を説明するための図である。同図では、電力制御値算出装置1の予測部13が予測した1日の電力負荷を時刻順に並べている。ラインL21は、図3と同様の計算により蓄電容量をピーク時間帯に割り付けた場合のピークカットラインを示し、ラインL22は、リセット時間帯を除く1日の電力負荷の平均値を示す。
【0027】
算出部142は、リセット時間帯を除く1日の全時間帯の電力負荷の平均を計算する。算出部142は、計算された平均値(ラインL22)が図3と同様の計算により求めたピークカットライン(ラインL21)より高い場合、1日の電力負荷が全体的に低いか、平準化された電力負荷であることが想定される。これは、放電、または、充放電時間帯の電力負荷を元にピークカットラインを算出しているためである。このような場合、ピーク負荷を賄うための十分な充電時間が無いことが想定される。
【0028】
負荷平準化という意味では、ラインL21がピークカットラインになる。しかし、ラインL21をピークカットラインとした場合、充電時間帯が確保できないため、結果として、放電に要する蓄電もできない。これは、平準化を前提とすると、ピークカットラインが充電時の受電量制限ラインとなるためである。
【0029】
算出部142は、ピークカットラインが1日の電力負荷の平均より下回った場合は、図3と同様の計算により求めたピークカットライン(ラインL21)、電力負荷の平均(ラインL22)のいずれの電力値をピークカットレベルに採用するかを、予め登録されている負荷平均適用有無の設定値に従って選択する。
【0030】
負荷平準化を優先する場合、負荷平均適用有が設定される。算出部142は、ピークカットレベルを、電力負荷の平均(=受電量制限値)を表すラインL22の電力値とする。換言すれば、算出部142は、ピークカットレベルが、1日の電力負荷の平均に対応した電力値よりも小さい場合、ピークカットレベルを、その1日の電力負荷の平均に対応した値とする。この場合は、電力負荷が負荷平均より低い時間帯で充電し、電力負荷が負荷平均よりも高い時間帯で放電することが可能になるため、負荷の平準化を図ることができる。ただし、負荷が出ている時間帯以前に平均以下の負荷が存在しない場合、平準化は行えない。
【0031】
負荷配分ピークカットレベルを採用する場合、負荷平均適用なしが設定される。算出部142は、ピークカットレベルをラインL21の電力値とする。ピークカットレベルを計算する対象の時間帯が放電時間帯、もしくは、充放電時間帯であるため、計算結果のピークカットレベルは充電時間帯の負荷より低くなる可能性が高い。その場合、ほとんど充電が出来ず、0:00の残蓄電量を元にピーク負荷を割り振る結果となる。この場合はピークカットが十分できない可能性がある。
上記のいずれの場合も、受電量制限値のデフォルトは、採用したピークカットレベルと同じ値になる。
【0032】
負荷平準化からは外れるが、どちらも受電量制限値補正を行うことで、削減対象負荷を夜間電力時間帯にシフトすることが可能である。
【0033】
なお、予測された電力負荷が異常値である場合は、算出部142は、以下の式(1)によりピークカットレベルを算出するが、ピークカット計画は行わない。
【0034】
ピークカットレベル=契約電力[kW](設定値)×受電制限率(%)×(電力負荷予測の予測単位時間/1時間) …(1)
【0035】
例えば、予測部13が30分毎の電力負荷を予測する場合、式(1)における電力負荷の予測単位時間は0.5となる。
【0036】
なお、負荷予測が異常であり、電力負荷の予測結果が無い、もしくは、予測された電力負荷全てが“0”の場合は、受電電力の削減対象(ピークカット対象)となる電力負荷が無いことになる。この場合、算出部142は、電力負荷の予測値を“0”として諸々の計算を行う。また、算出部142は、ピークカットレベルを上記の式(1)とし、ピークカット計画は行わない。ただし、翌日負荷対応や蓄電池5の充電運用を前提に、蓄電池5の充電計画のみ作成する。
【0037】
また、記憶部11に記憶される充放電時間帯設定情報が、放電時間帯なしを示す場合、意図的に放電を行わないことを意味する。算出部142は、充放電時間帯であれば放電は可能であるが、休日等、意図的に放電をしない日の対応として1日の内、一切「放電」の設定が無い場合、充電計画のみを作成する。この場合、算出部142は、ピークカットレベルを上述した式(1)により算出するが、ピークカット計画は行わない。
【0038】
図7は、電力制御値算出装置1の動作を示すフロー図である。
予測部13は、任意の従来技術によって、1日の時系列(例えば、30分毎)の電力負荷を予測する(ステップS10)。順位付与部141は、蓄電池5からの放電が可能な時間帯における予測された時系列の電力負荷に対して、電力負荷が高い順に順位を付与する(ステップS15)。
【0039】
算出部142は、順位を表す変数iに初期値1を設定する(ステップS20)。算出部142は、ピークカットラインLに順位(i+1)の電力負荷wi+1を設定する(ステップS25)。
【0040】
算出部142は、順位i以上の電力負荷w~wのそれぞれについて、ピークカットラインLを超える電力量を求め、求めた電力量の合計Dを算出する(ステップS30)。算出部142は、合計Dと蓄電池5の蓄電容量Cとを比較する(ステップS35)。算出部142は、合計Dが蓄電池5の蓄電容量Cを超えていないと判断した場合(ステップS35:<)、変数iに1を加算し(ステップS40)、ステップS25からの処理を繰り返す。
【0041】
算出部142は、合計Dが蓄電池5の蓄電容量Cと等しいと判断した場合(ステップS35:=)、ステップS50の処理を行う。
算出部142は、合計Dが蓄電池5の蓄電容量Cを超えたと判断した場合(ステップS35:>)、合計Dから蓄電池5の蓄電容量Cを減算し、不足容量を算出する。算出部142は、不足容量を順位iまでの電力負荷の個数により除算する。算出部142は、ピークカットラインLの値を、除算結果を加算した値に更新し(ステップS45)、ステップS50の処理を行う。
【0042】
算出部142は、放電が可能な時間帯における電力負荷のうち、ピークカットラインLと蓄電池5の放電指令最大値との合計を超えているピーク負荷があるか否かを判断する(ステップS50)。算出部142は、ピーク負荷がないと判断した場合(ステップS50:NO)、ステップS65の処理を行う。
【0043】
算出部142は、ピーク負荷があると判断した場合(ステップS50:YES)、ピーク負荷が得られた時間帯(ピーク時間帯)のピークカットラインLを、その時間帯のピーク電力負荷から放電指令最大値を減算した値とする(ステップS55)。算出部142は、各ピーク時間帯のピーク負荷から、そのピーク時間帯のピークカットラインLを減算した結果を合計した蓄電池残容量を算出する。算出部142は、順位(i+1)までの電力負荷の個数からピーク負荷の個数を減算した数により蓄電池残容量を除算し、蓄電池残容量の配分量を算出する。算出部142は、ピークカットラインLから蓄電池残容量の配分量を減算し、ピーク時間帯以外の時間帯のピークカットラインLとする(ステップS60)。
【0044】
ステップS50でNOと判断した場合又はステップS60の後、算出部142は、ピークカットラインLが最低受電量以上であるか否かを判定する(ステップS65)。算出部142は、ピークカットラインLが最低受電量以上であると判定した場合(ステップS65:YES)、ステップS75の処理を行う。算出部142は、ピークカットラインLが最低受電量より小さいと判定した場合(ステップS65:NO)、ピークカットラインLを最低受電量に変更し(ステップS70)、ステップS75の処理を行う。
【0045】
算出部142は、リセット時間帯を除く、1日の全時間帯の予測の電力負荷の平均を算出する(ステップS75)。算出部142は、ピークカットラインLが電力負荷の平均以上であるか否かを判断する(ステップS80)。算出部142は、ピークカットラインLが電力負荷の平均を超えていると判断した場合(ステップS80:YES)、出力部15は、ピークカットラインLが表す電力値をピークカットの目標値であるピークカットレベルとして電力制御装置2に出力する(ステップS85)。
【0046】
算出部142は、ピークカットラインLが電力負荷の平均を下回ると判断した場合(ステップS80:NO)、負荷平均適用有無の設定値を記憶部11から読み出す。算出部142は、設定値が負荷平均適用なしと判断した場合(ステップS90:なし)、ピークカットラインLが表す電力値をピークカットレベルとして電力制御装置2に出力する(ステップS85)。算出部142は、設定値が負荷平均適用なしであると判断した場合(ステップS90:あり)、ピークカットラインLを電力負荷の平均値に変更する(ステップS95)。出力部15は、ピークカットラインLが表す電力値をピークカットレベルとして電力制御装置2に出力する(ステップS85)。
【0047】
図8は、電力制御画面の表示例を示す図である。同図に示す電力制御画面では、予測の時系列の電力負荷と、実測された電力負荷と、実測された電力負荷のうち商用電源から供給された電力負荷及び蓄電池5により供給された電力負荷とをグラフに表示する。電力制御値算出装置1は、実測の電力負荷を受電設備3に備えられた図示しない計測器から受信し、蓄電池5により供給された電力量を変換器4又は蓄電池5に備えられた図示しない計測器から受信する。さらに、電力制御画面には、ピークカットレベルを表すピークカットラインと、最低受電量とが表示される。
【0048】
蓄電池の容量や日々の負荷を考慮せずに、ピークカットレベルを人手で設定した場合、実際に運用してみないと、ピークカットの目標の達成可否や余剰が出るか否かは分からなかった。その結果、蓄電池の容量を有効活用できていないこともあった。また、日々の負荷予測をしていても、その内どの程度まで蓄電池でピークをカットできるかを判断することは容易ではなく、蓄電池以外での電力削減の要否の判断も困難であった。
【0049】
上述したいずれかの実施形態の電力制御値算出装置によれば、電力負荷の予測値と蓄電池の容量に合わせて、ピークカットレベルを自動的に算出する。これにより、電力制御値算出装置は、蓄電池の容量を有効活用した放電を可能とする制御値を算出する。更には、蓄電池制御装置は、蓄電池によりどの程度ピークカット可能かを示すことによって、消費電力の管理を容易とすることが出来る。例えば、電力削減施策を考える上で、日々の負荷予測に対して蓄電池でどの程度削減できるかが把握できるようになるため、電力の過不足文をどうすればよいかの対応施策を立てやすくなる。
また、蓄電池制御装置は、ピークカットレベルを時間帯毎に変更できるようにすることにより、突出したピーク時間帯がある場合にも、それ以外の時間帯で平準化を行える放電を可能とする。
また、電力負荷が平準化されると共に、更に電力削減を要する際に無理な電力削減を行わなくてよくなるという効果もある。
従って、必要以上に高い蓄電池の容量及び放電能力(電力)を持った蓄電池を導入することなく、電力使用量ピークの低減や、深夜電気料金適用による電気料金の削減が図ることができる。
【0050】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、制御値算出部を持つことにより、蓄電池を有効に活用して受電電力のピークカットをするためのピークカットレベルを算出することができる。
【0051】
上述した実施形態における電力制御値算出装置1の各部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよく、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。電力制御値算出装置1の各部の機能をコンピュータで実現する場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1…電力制御値算出装置、2…電力制御装置、3…受電設備、4…変換器、5…蓄電池、6…機器、7…管理用端末、11…記憶部、12…受信部、13…予測部、14…制御値算出部、15…出力部、16…画面制御部、141…順位付与部、142…算出部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8