(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567462
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】電子式警音器
(51)【国際特許分類】
G10K 9/122 20060101AFI20190819BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20190819BHJP
G10K 9/12 20060101ALI20190819BHJP
G10K 9/22 20060101ALI20190819BHJP
H04R 1/30 20060101ALI20190819BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20190819BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
G10K9/122 140
H04R17/00
G10K9/12 C
G10K9/22 B
H04R1/30 A
H04R7/04
B60Q5/00 670B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-100022(P2016-100022)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-207633(P2017-207633A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】内村 克則
(72)【発明者】
【氏名】外山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 順二郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 寿彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 芳生
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第2354903(GB,A)
【文献】
米国特許第9179220(US,B2)
【文献】
特開昭61−249097(JP,A)
【文献】
特開2007−316450(JP,A)
【文献】
実開平02−055297(JP,U)
【文献】
特開平07−222284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/12−9/22
H04R 1/30
H04R 7/04
H04R 17/00
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状振動体と、当該振動体を起振する圧電体と、一部に開口が設けられ振動体の前方を覆って当該振動体との間に共鳴空間を形成する共鳴器と、前記共鳴器と前記開口によって連通する緩衝室と、前記緩衝室を経て出力される警報音を、漸次拡径しつつ反転湾曲する通路によって外周側の前方ないし後方へ案内する1又は複数の第1拡声室と、前記第1拡声室によって外周側の後方へ案内された警報音を、さらに外周側の前方へ向けて反射する第2拡声室とを備え、前記共鳴器の前方に内外に位置する内筒体と外筒体を設け、さらにこれら内筒体と外筒体を前方から覆うように円形のカバー体を設けて、前記内筒体および外筒体の筒壁とカバー体によって前記共鳴器の開口を中心に全周に前記緩衝室、前記第1拡声室および前記第2拡声室を形成し、かつ前記カバー体の中心部を前記共鳴器の開口に向けて陥没させて前記中心部の先端と前記共鳴器の開口との間に前記緩衝室を形成するとともに、前記第1拡声室の、前記緩衝室に続く部分を前記中心部の外周に形成したことを特徴とする電子式警音器。
【請求項2】
前記板状振動体の板面外周縁を両面から挟んで支持するとともに、前記振動体の外周端を警音器本体の室壁内面から離して位置させてある請求項1に記載の電子式警音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子式警音器に関し、特に、コンパクトな形状で十分な警報音出力を得ることができる電子式警音器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子式警音器は板状振動体を圧電体で起振して警報音を発生させるもので、従来の電磁式警音器に比してコンパクトかつ寿命も長い等の特徴がある。しかし、振動体から発生する警報音は比較的小さく、通常は共鳴器で警報音を増幅して出力している。さらに特許文献1では、共鳴器の前方に板状ホーンキャップを設けて、出力音の指向性を用途に応じて調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−157886
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、板状のホーンキャップでは未だ共鳴器から出力される警報音を十分な指向性を有して前方へ効率的に出力することは困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、前方へ十分な指向性を有して警報音を出力することができかつコンパクトな電子式警音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、板状振動体(51)と、当該振動体(51)を起振する圧電体(52)と、一部に開口(71)が設けられ振動体(51)の前方を覆って当該振動体(51)との間に共鳴空間(S)を形成する共鳴器(7)と、前記共鳴器(7)と前記開口(71)によって連通する緩衝室(BR)と、前記緩衝室(BR)を経て出力される警報音を、漸次拡径しつつ反転湾曲する通路によって外周側の前方ないし後方へ案内する1又は複数の第1拡声室(MH1)と、前記第1拡声室(MH1)によって外周側の後方へ案内された警報音を、さらに外周側の前方へ向けて反射させる第2拡声室(MH2)とを備え、
前記共鳴器(7)の前方に内外に位置する内筒体(62)と外筒体(63)を設け、さらにこれら内筒体(62)と外筒体(63)を前方から覆うように円形のカバー体(8)を設けて、前記内筒体(62)および外筒体(63)の筒壁とカバー体(8)によって前記共鳴器(7)の開口(71)を中心に全周に前記緩衝室(BR)、前記第1拡声室(MH1)および前記第2拡声室(MH2)を形成し、かつ前記カバー体(8)の中心部を前記共鳴器(7)の開口(71)に向けて陥没させて前記中心部の先端と前記共鳴器(7)の開口(71)との間に前記緩衝室(BR)を形成するとともに、前記第1拡声室(MH1)の、前記緩衝室(BR)に続く部分を前記中心部の外周に形成する。
【0007】
本第1発明において、共鳴器の開口から出力された警報音は1又は複数の第1拡声室とこれに続く第2拡声室のメガホン効果によって共鳴増幅されつつ十分な指向性を有して前方へ効率的に出力される。この場合、メガホン効果を発揮する1又は複数の第1拡声室同士、および第1拡声室と第2拡声室は、反転湾曲する通路によって径方向で直列に連結されているから、警音器本体が前後方向へ大きく突出することはなくコンパクトな形状になる。
また、第1拡声室と第2拡声室を全周に設けているから、警報音を、指向性を持たせてより効率的に前方へ出力することができる。
【0010】
本第2発明では、前記板状振動体(51)の板面外周縁(53)を両面から挟んで支持するとともに、前記振動体(51)の外周端(511)を警音器本体の壁内面(241)から離して位置させてある。
【0011】
本第2発明において、警音器周囲の温度が上昇又は下降して振動体又は警音器本体の壁内面が膨張又は収縮しても、振動体の外周端が警音器本体の壁内面に当接することはないから、振動体の板内に圧縮又は引張応力が生じてその振幅が変化する不具合は生じない。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の電子式警音器によれば、前方へ十分な指向性を有して警報音を出力することができるとともに、警音器本体をコンパクトなものにすることが可能である
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示す電子式警音器の断面図で、
図2のI−I線に沿った断面図である。
【
図4】振動体挟持部の断面図で、
図1のA部の拡大断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態を示す電子式警音器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
(第1実施形態)
図1には電子式警音器の全体断面図を示し、
図2にはその正面図を、
図3にはその側面図をそれぞれ示す。警音器本体は、車両に設置された状態で前後方向(
図1の左右方向)へ開放する円形筒状の金属板ケーシング1を備えている。ケーシング1の筒内には前方へ開放する容器状の樹脂製ホルダ2が保持されており、ホルダ2の底壁上にはこれと平行に、警報信号発生回路やアンプ回路等で構成される警音回路3を設けた回路基板4が配設されている。回路基板4はホルダ2の底壁に立設された複数のスペーサ21に支持されている。ホルダ2の底壁外面には取付用のステー22がボルト結合されている。
【0017】
ホルダ2の開口を閉鎖して上記回路基板4と平行に、以下に述べる圧電体52と共に圧電素子発音体5を構成する金属板製の振動体51が張設されている。振動体51はその外周縁が、ホルダ2の開口縁と、ホルダ2の開口に覆着された樹脂製中間体6の外周縁61との間に挟持されている。挟持部の詳細を
図4に示す。
図4において、振動体51の外周縁53を挟持するホルダ2の段付きに後退した開口縁23はその外周部全周が、上記外周縁53から離れた後、中間体6の外周縁61外周に接する開口立壁24となっている。そして、振動体5の外周端511は立壁24の内面241から間隙dだけ内方に離れて位置している。これにより、警音器周囲の温度が上昇又は下降して振動体51又は立壁24の内面241が膨張又は収縮しても、振動体51の外周端511が警音器本体の壁内面241に当接することはない。これにより、温度の上昇又は下降に伴って振動体51の板内に圧縮又は引張応力が生じてその振幅が変化する不具合が回避される。
【0018】
図1において、振動体51には裏面中心部に円形の圧電体52が貼り合わせてあり、回路基板4からは圧電体52の一方の電極(図示略)と、圧電体52の他方の電極(図示略)へ通じる振動体51とへ、それぞれ出力線(図示略)が延びている。また、回路基板4上の警音回路3は、ケーシング1外に設けられた(
図3)給電コネクタ11に接続されている。
【0019】
上記中間体6は内筒体62と外筒体63を備えている。内筒体62は前方へ開放する相対的に深い容器状に成形されており、その底壁は径方向外方へ延伸して上記外周縁61となっている。そして、外周縁61が振動体51の外周縁を狭圧しつつホルダ2の開口に覆着されて、ここでケーシング1の開口縁によってかしめ固定されている。内筒体62の底壁は筒内へ山形状に屈曲突出して、振動体51との間に共鳴空間Sを形成した共鳴器7を構成している。共鳴器7を構成する上記底壁には頂部に円形の開口71が形成されている。
【0020】
上記内筒体62の周囲は外筒体63で囲まれている。外筒体63は相対的に浅い容器状に形成され、その底壁の開口631が内筒体62の筒壁外周に嵌着されている。すなわち、外筒体63には開口631の周縁三箇所にリブ632が形成されており、これらリブ632を、内筒体62の筒壁外周の周方向三箇所に形成された、筒軸方向へ延びる溝621内に嵌着してある。外筒体63の外周筒壁633は前外方へ拡開しており、全体が反射板となっている。
【0021】
中間体6の前方を覆ってカバー体8が設けられている。カバー体8は外筒体63よりも小径の円形状をなし、その中心部が内筒体62の底壁開口71に向けて大きく陥没するとともに、外周部は略円弧状に湾曲する断面形状をとなっている。そして、カバー体8の外周縁は、内筒体62と外筒体63の両筒壁の中間位置に至っている。カバー体8の外周縁には周方向の三箇所に、内方へ延びるステー部81が突出形成されて、これらステー部81の先端が内筒体62の筒壁外周の溝621内に嵌合している。
【0022】
以上の構造によって、電子式警音器内には、内筒体62とカバー体8との間に、共鳴器7と開口71によって連通する所定容量の緩衝室BR(
図1の鎖線で区画された空間)、緩衝室BRから出力される警報音を、漸次拡径しつつ反転湾曲する通路によって外周側の後方へ案内する第1拡声室MH1、および、外周側の後方へ案内された警報音を、さらに外周側の前方へ向けて反射させる第2拡声室MH2とが全周に形成されている。
【0023】
警音回路3の出力信号が圧電素子発音体5に入力すると、圧電素子発音体5から音出力が発せられる。この音出力は共鳴器7内で警報に適した特定周波数成分が増幅され、増幅された警報音は開口71を経て緩衝室BRから第1拡声室MH1に至る。そして、第1拡声室MH1の漸次拡径しつつ反転湾曲する通路に案内されて径方向外方の後方へ向きを変え、第2拡声室MH2へ入力して当該第2拡声室MH2で径方向外方の前方へ向けて反射出力される。
【0024】
このようにして、共鳴器7から出力された警報音は第1拡声室MH1とこれに続く第2拡声室MH2のメガホン効果によって共鳴増幅されつつ十分な指向性を有して前方へ効率的に出力される。そして、本実施形態では、メガホン効果を発揮する第1拡声室MH1と第2拡声室MH2を、反転湾曲する通路によって径方向で直列するようにしたから、警音器本体が前後方向へ大きく突出することはなくコンパクトな形状になる。
【0025】
(第2実施形態)
上記実施形態では第1拡声室MH1を一つ設けたが、
図5に示すように、第1拡声室MH1を三つ設けて、最下流の第1拡声室MH1に案内されて径方向外方の後方へ向きを変えた警報音を第2拡声室MH2で径方向外方の前方へ向けて反射出力するようにすれば、さらに指向性に優れた音質の良い警報音を得ることができる。本実施形態では警音回路は警音器の本体外に設けられている。なお、
図5中、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付してある。また、第1拡声室MH1は五つ以上の奇数個設けても良く、あるいは偶数個としても良い。
【符号の説明】
【0026】
1…ケーシング、2…ホルダ、3…警音回路、4…回路基板、5…圧電素子発音体、51…振動体、52…圧電体、6…中間体、62…内筒体、63…外筒体、7…共鳴器、71…開口、8…カバー体、BR…緩衝室、MH1…第1拡声室、MH2…第2拡声室、S…共鳴空間。