特許第6567508号(P6567508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567508繊維複合体、その使用およびその生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567508
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】繊維複合体、その使用およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/10 20060101AFI20190819BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20190819BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20190819BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C08J5/10CFD
   C08L69/00
   C08L55/02
   C08K5/5399
   C08K5/5313
   C08K5/521
   C08L67/02
   C08K7/02
   B32B5/28 Z
   B32B27/36 102
   B32B27/18 B
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-521286(P2016-521286)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公表番号】特表2016-539204(P2016-539204A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014071300
(87)【国際公開番号】WO2015052114
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年10月6日
(31)【優先権主張番号】13187763.1
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100176083
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 祐子
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、グリム
(72)【発明者】
【氏名】ベラ、タシュナー
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト、ベンツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ヘーンク
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−506706(JP,A)
【文献】 特表2012−513504(JP,A)
【文献】 特開平05−117411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04−5/10
C08J 5/24
B32B 1/00−43/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性物質に基づくマトリックス(8、18)中に埋入されている繊維材料の少なくとも1つの繊維層(4、14、16)を備え、前記マトリックス(8、18)の組成物が
A)60〜95重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0〜15重量部のゴム修飾グラフトポリマー、
C)いずれの場合にも以下に示される組成および量を有する成分C.1、C.2またはC.3のうちの1つ:
C.1)1.0〜14.5重量部の式(X)の少なくとも1つの環状ホスファゼン:
【化1】
[式中、
R基は、同一または異なり、それぞれアミン基、いずれの場合にもハロゲン化されていてもよい、好ましくはフッ素化されていてもよいC−C−アルキル、好ましくは、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル、C−C−アルコキシ、好ましくは、メトキシ、エトキシ、プロポキシもしくはブトキシ、いずれの場合にもアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/もしくはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素で置換されていてもよいC−C−シクロアルキル、いずれの場合にもアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/もしくはハロゲン、好ましくは塩素、臭素、および/もしくはヒドロキシ、好ましくはフェノキシ、ナフチルオキシで置換されていてもよいC−C20−アリールオキシ、いずれの場合にもアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素、好ましくはフェニル−C−C−アルキル、もしくはハロゲン基、好ましくは塩素で置換されていてもよいC−C12−アラルキル、またはOH基であり;
kは、1または1〜10の整数、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜5の数であり、
ここで、三量体(k=1)の割合は成分C.1に基づいて50〜98mol%であり、 C.2)0.1〜30重量部のホスフィン酸の塩、
C.3)1〜25重量部のオリゴマーホスフェート、特に、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、
D)0.1〜20μmの平均粒子サイズd50を有する0〜30重量部のタルク、
E)0.05〜5.00重量部のドリッピング防止剤、
ここで、示された重量部は総て、好ましくは、組成物中の全成分の重量部の合計A+B+C+D+Eが100となるように正規化されている、
を含有する、繊維複合体(42)。
【請求項2】
マトリックスの組成が、
F)15.0重量部以下のビニル(コ)ポリマーまたはポリアルキレンテレフタレート、
G)15.0重量部以下の添加剤
から選択される少なくとも1つの成分をさらに含有し、
ここで、示された重量部は総て、好ましくは、組成物中の全成分の重量部の合計A+B+C+D+E+F+Gが100となるように正規化されている、
請求項1に記載の繊維複合体。
【請求項3】
マトリックスの組成が
C.3)7.0〜16.0重量部のオリゴマーホスフェート
を含有する、請求項1または2に記載の繊維複合体。
【請求項4】
グラフトポリマーBが
B.1)5〜95重量部、好ましくは30〜80重量部の、以下の成分:
B.1.1)50〜95重量部のスチレン、α−メチルスチレン、メチル環置換スチレン、C−C−アルキルメタクリレート、特に、メチルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、特に、メチルアクリレート、これらの化合物の混合物、および
B.1.2)5〜50重量部のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、C−C−アルキルメタクリレート、特に、メチルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、特に、メチルアクリレート、マレイン酸無水物、C−C−アルキル−または−フェニル−N−置換マレイミドまたはこれらの化合物の混合物との混合物を、
B.2)5〜95重量部、好ましくは20〜70重量部の、ブタジエンゴム、アクリレートゴムおよびシリコーン−アクリレートゴムの中から選択されるゴム含有グラフトベース
上に含む、グラフトポリマーを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維複合体。
【請求項5】
繊維層(4、14、16)が一方向繊維層として、織物層もしくはレイドウェブとして、編物、編地もしくはブレードとして、またはタングルファイバーマットもしくは不織布の形態の長繊維として、またはそれらの組合せとして構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維複合体。
【請求項6】
繊維材料が以下の線維種:ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、液晶ポリマー繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維の1以上の繊維を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維複合体。
【請求項7】
繊維複合体の総容量に基づく繊維材料の体積含有量が30〜60容量%の範囲、好ましくは40〜55容量%の範囲である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維複合体。
【請求項8】
繊維複合体が繊維複合体シート(2、12、48)の形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維複合体。
【請求項9】
繊維複合体シート(2、12、48)が0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の繊維複合体。
【請求項10】
繊維複合体または繊維複合体シートが以下の特性:
ISO 5659−2によるDs(4):<300、
ISO 5659−2によるVOF 4:<600、および
ISO 5659−2によるDs(max):<600
を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の繊維複合体。
【請求項11】
鉄道車両、特に、乗客輸送用の鉄道車両向けの構成部品のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維複合体の使用。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維複合体を生産するための方法であって、
重畳層から作製される層構造(36)が、繊維材料の少なくとも1つの繊維層(4、14、16)と、繊維層(4、14、16)の両側に配置された少なくとも1つのポリマーフィルム(30)から構成されるポリマー層とから形成され、かつ
前記層構造(36)が加圧および熱の作用下でプレスされて繊維複合体(42)が形成され、
前記ポリマーフィルム(30)が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維複合体のマトリックスに相当する組成を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性物質に基づくマトリックスに埋入されている繊維材料の少なくとも1つの繊維層を含んでなる繊維複合体に関する。さらに、本発明は、そのような繊維複合体の使用、およびまた繊維複合体を生産するための方法に関する。
【0002】
繊維複合体は、従来技術、例えば、繊維複合体シートとしてのシートフォームにおいて長年知られていた。熱可塑性物質に基づくマトリックスを有する繊維複合体シートは、従来技術では「複合シート」とも呼ばれている。繊維補強のない押出ポリマーシートに比べて、これらの複合シートは、より大きな強度および剛性を備え、さらには金属シートの強度および剛性に近づき、またはこれらを超える場合さえある。
【0003】
複合シートは、匹敵する機械特性を有する金属シートに比べて著しく軽量であることから、複合シートは、従来技術において、機械特性を損なうことなく軽量化を図るために、特に自動車および航空機の構造に使用されている。
【0004】
複合シートを生産するための方法は、例えば、従来技術(例えば、DE2948235C2)から公知である。
【0005】
複合シートおよび繊維複合体の使用においては、一般に、重量および機械的特性だけでなく、特に防火に関しては、安全性の側面が大きな役割を果たす。
【0006】
良好な防火特性を備えた、従って、厚さ≦2mmでV−1以上のUL94分類を有する繊維補強複合は、従来技術から知られている。例えば、JP2005239939Aは、例えば、熱可塑性物質ポリマーマトリックスを有し、かつ、難燃剤としてリン化合物、例えば、赤リンを含有する繊維補強複合体を記載している。
【0007】
各使用分野に応じて、材料は、火災の場合のそれらの挙動に関して種々の法的要件を満たさなければならない。火災の場合の安全性を向上させるために、これらの法的要件は、特に、鉄道車両分野のEN45545規格により、ますます要求度が高くなってきている。なお低い要求防火要件しか満たさない従来技術から知られているいくつかの複合シートはもはやより要求度の高い要件を満たすことはできないことが分かっている。従って、これらの複合シートは、特に、鉄道車両分野の適用には使用できない。
【0008】
熱硬化性樹脂に基づく耐火性繊維複合体は、例えば、DE10 2007 016698A1の従来技術から公知である。
【発明の概要】
【0009】
この従来技術に関して、本発明の目的は、EN45545−2規格の防火要件に関して良好な機械的特性と極めて良好な発煙性を備えた繊維複合体を提供することである。
【0010】
この目的は、本発明によって、熱可塑性物質に基づくマトリックスに埋入されている繊維材料の少なくとも1つの繊維層を備えた繊維複合体により、そのマトリックスの組成が、
A)60〜95重量部、好ましくは65〜90重量部、特に好ましくは70〜86重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0〜15重量部、好ましくは1〜13重量部、特に1〜7重量部のゴム修飾グラフトポリマー、
C)各場合において以下に示される組成および量の成分C.1、C.2またはC.3のうちの1つ、好ましくはC.3:
C.1)1.0〜14.5重量部、好ましくは1.5〜9.0重量部、より好ましくは2.0〜8.0重量部の、構造(X)の少なくとも1つの環状ホスファゼン
【化1】
【0011】
[式中、
R基は、同一または異なり、それぞれアミン基、いずれの場合にもハロゲン化されていてもよい、好ましくはフッ素化されていてもよいC−C−アルキル、好ましくは、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル、C−C−アルコキシ、好ましくは、メトキシ、エトキシ、プロポキシもしくはブトキシ、いずれの場合にもアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/もしくはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素で置換されていてもよいC−C−シクロアルキル、いずれの場合にもアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/もしくはハロゲン、好ましくは塩素、臭素、および/もしくはヒドロキシ、好ましくはフェノキシ、ナフチルオキシで置換されていてもよいC−C20−アリールオキシ、いずれの場合にもアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素、好ましくはフェニル−C−C−アルキル、もしくはハロゲン基、好ましくは塩素で置換されていてもよいC−C12−アラルキル、またはOH基であり;
kは、1または1〜10の整数、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜5の数であり;
三量体(k=1)の割合が成分C.1に基づいて50〜98mol%、好ましくは60〜98mol%、より好ましくは65〜95mol%、いっそうより好ましくは70〜95mol%、特に好ましくは70〜90mol%、極めて特に好ましくは70〜85mol%であり、
C.2)0.1〜30重量部、好ましくは1.0〜15.0重量部、特に好ましくは7.0〜12.0重量部のホスフィン酸の塩、
C.3)0〜25重量部、好ましくは7.0〜25.0重量部、特に好ましくは11〜20.0重量部のオリゴマーホスフェート、特に、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)
D)0.1〜20μmの平均粒子サイズd50を有する0〜30重量部、好ましくは0〜15.0重量部、特に0〜5.0重量部のタルク、
E)0.05〜5.00重量部、好ましくは0.1〜3重量部、特に好ましくは0.1〜1.5重量部、特に0.1〜1重量部のドリッピング防止剤、
ここで、本出願に示された重量部は総て、好ましくは、組成物中の全成分の重量部の合計A+B+C+D+Eが100となるように正規化されている、
を含有する場合に少なくとも部分的に達成される。
【0012】
一般に、マトリックスの組成は、全組成物に基づいて15重量%以下、好ましくは10重量%以下のグラフトポリマーB)を含有する。成分B)は全組成物に基づいて10重量%以下の含量を有し、マトリックスの組成物は、好ましくは、全組成物に基づいて11重量%以下の難燃剤C.3を含有する。マトリックスの組成は、成分C.3として、好ましくは、全組成物に基づいて20重量%まで、特に好ましくは17重量%まで、特に15重量%までの難燃剤を含有する。
【0013】
特に好ましい実施形態では、本組成物は成分A〜Eから完全になり、その組成物は従来の添加剤をさらに含有することができる。
【0014】
よって、好ましい繊維複合体は、ポリエステルを含有しない組成物をマトリックス材料として含有する。
【0015】
好ましい実施形態では、本組成物は、以下の構成要素:
F)0〜15.0重量部、好ましくは2.0〜12.5重量部、より好ましくは3.0〜9.0重量部、特に好ましくは3.0〜6.0重量部のビニル(コ)ポリマーまたはポリアルキレンテレフタレート、
G)0〜15.0重量部、好ましくは0.05〜15.00重量部、好ましくは0.2〜10.0重量部、特に好ましくは0.4〜5.0重量部の添加剤、
をさらに含有することができ、
ここで、示された重量部は総て好ましくは、組成物中の全成分の重量部の合計A+B+C+D+E+F+Gが100となるように正規化されている。
【0016】
好ましい実施形態では、本組成物は、無機難燃剤および難燃剤共力薬、特に、水酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、およびまた酸化ヒ素および酸化アンチモンを含まない。
【0017】
好ましい実施形態は、個々にまたは互いに連結して使用することができる。
【0018】
成分A
本発明の目的で好適な成分Aの芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献から既知であるか、または文献から既知の方法によって製造可能である(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Interscience Publishers, 1964およびまたDE−B1495626、DE−A2232877、DE−A2703376、DE−A2714544、DE−A3000610、DE−A3832396;芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えば、DE−A3007934を参照)。
【0019】
芳香族ポリカーボネートの製造は、ジフェノールを炭酸ハリド、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸ジハリド、好ましくは、ベンゼンジカルボン酸ジハリドと、界面法により、場合により連鎖停止剤、例えば、モノフェノールを用い、場合により三官能性または三官能性を超える分岐剤、例えば、トリフェノールまたはテトラフェノールを用いて反応させることによって行われる。ジフェノールを例えば炭酸ジフェニルと反応させることによる溶融重合法による製造も同様に可能である。
【0020】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを製造するためのジフェノールは好ましくは、式(I)のものであり、
【化2】
式中、
Aは、一重結合、C−C−アルキレン、C−C−アルキリデン、C−C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C−C12−アリーレン(それに、ヘテロ原子を含有していてもよいさらなる芳香環が縮合されていてもよい)または式(II)もしくは(III)
【化3】
の基を表し、
Bは、各場合において、C−C12−アルキル、好ましくは、メチル、ハロゲン、好ましくは、塩素および/または臭素を表し、
指数xは、それぞれ互いに、0、1または2であり、
pは、1または0であり、かつ、
およびRは、各Xに関して個々に選択することができ、互いに独立に水素またはC−C−アルキル、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、
は炭素を表し、かつ、
mは、4〜7、好ましくは4または5の整数を表し、ただし、少なくとも1つの原子X上でRおよびRは両方ともアルキルである。
【0021】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)−C−C−アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C−C−シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシルフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびまた環臭素化および/または環塩素化誘導体である。
【0022】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよびまたその二臭素化および四臭素化または塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。
【0023】
ジフェノールは、個々にまたは任意の混合物として使用することができる。ジフェノールは文献から既知であるか、または文献から既知の方法によって得ることができる。
【0024】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、およびまた長鎖アルキルフェノール、例えば、DE−A2842005に記載の4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]フェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、またはアルキル置換基に合計8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールである。連鎖停止剤の使用量は一般に、使用される各ジフェノールの合計モル数に基づき0.5mol%〜10mol%の範囲である。
【0025】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、15000〜80000g/mol、好ましくは、19000〜32000g/mol、特に好ましくは22000〜30000g/molの平均分子量(重量平均M、ポリカーボネート標準を用いてGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される)を有する。
【0026】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは既知の方法で、好ましくは、使用するジフェノールの合計に基づいて0.05〜2.0mol%の三官能性または三官能性を超える化合物、例えば、3個以上のフェノール基を有するものを組み込むことによって分岐化することができる。直鎖ポリカーボネート、より好ましくは、ビスフェノールAに基づくものを使用することが好ましい。
【0027】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートは両方とも好適である。本発明による成分Aのコポリカーボネートを製造するために、使用するジフェノールの総量に基づき1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基含有ポリジオルガノシロキサンを使用することもできる。これらは既知であり(US3419634A)、文献から既知の方法によって製造することができる。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートも同様に好適であり、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの製造は、例えば、DE−A3334782に記載されている。
【0028】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための芳香族ジカルボン酸ジハリドは好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ビス(4−カルボキシルフェニル)エーテルおよびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0029】
1:20〜20:1の比率のイソフタル酸およびテレフタル酸の二酸二塩化物の混合物が特に好ましい。
【0030】
ポリエステルカーボネートの製造において、炭酸ハリド、好ましくは、ホスゲンは、二官能性酸誘導体として並行して追加使用される。
【0031】
上記のモノフェノールとは別に、芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための可能性のある連鎖停止剤は、そのクロロ炭酸エステルおよびC−C22−アルキル基によりまたはハロゲン原子により置換されてもよい芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、およびまた脂肪族C−C22−モノカルボン酸クロリドである。
【0032】
連鎖停止剤の量は、各場合において、フェノール系連鎖停止剤の場合にはジフェノールのモルに基づき、モノカルボン酸クロリド連鎖停止剤の場合にはジカルボン酸ジクロリドのモルに基づき、0.1〜10.0mol%である。
【0033】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造において、1以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸が付加的に使用可能である。
【0034】
芳香族ポリエステルカーボネートは、既知の方法(これについてはDE−A2940024およびDE−A3007934参照)で直鎖または分岐型のいずれかとすることができ、直鎖ポリエステルカーボネートが好ましい。
【0035】
分岐剤としては、0.01〜1.0mol%(使用するジカルボン酸ジクロリドに基づく)の量の、例えば、三官能性もしくは三官能性を超えるカルボン酸クロリド、例えば、トリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリドまたはピロメリット酸テトラクロリド、または使用するジフェノールに基づいて0.01〜1.0mol%の量の三官能性もしくは三官能性を超えるフェノール、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンを使用することが可能である。フェノール系分岐剤は、最初にジフェノールとともに装填することができ、酸塩化物分岐剤は酸二塩化物とともに導入することができる。
【0036】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートでは、カーボネート構造単位の割合は任意の所望の様式で変更可能である。カーボネート基の割合はエステル基とカーボネート基の合計に基づいて、好ましくは100mol%まで、特に80mol%まで、特に好ましくは50mol%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル基とカーボネート基は両方とも、ブロックの形態またはランダム分布形態で重縮合物中に存在し得る。
【0037】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独でまたは任意の混合物で使用することができる。
【0038】
成分B
グラフトポリマーBは、例えば、ゴム弾性特性を有し、以下のモノマー:クロロプレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、およびアルコール成分に1〜18個の炭素原子を有する(メタ)アクリルエステルのうち少なくとも2つから本質的に得られるグラフトポリマー;すなわち、例えば、"Methoden der Organischen Chemie" (Houben-Weyl), Vol. 14/1, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1961, pp. 393 406およびC.B. Bucknall, "Toughened Plastics", Appl. Science Publishers, London 1977に記載されているポリマーを含んでなる。
【0039】
特に好ましいポリマーBは、例えば、DE−A2035390(=US特許3644574)またはDE−A2248242(=GB特許1409275)またはUllmanns, Enzyklopadie der Technischen Chemie, Vol. 19 (1980), p. 280 ffに記載されているような、例えば、ABSポリマー(エマルションABS、バルクABSおよび懸濁ABS)である。
【0040】
グラフトコポリマーBは、フリーラジカル重合により、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合により、好ましくは乳化重合またはバルク重合により作製される。
【0041】
好ましいポリマーBは部分的に架橋され、20重量%を超える、好ましくは40重量%を超える、特に60重量%を超えるゲル含量(トルエン中で測定)を有する。
【0042】
ゲル含量は、好適な溶媒中、25℃で測定される(M. Hoffmann, H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I and II, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
【0043】
好ましいグラフトポリマーBは、
B.1)5〜95重量部、好ましくは30〜80重量部の、以下の成分
B.1.1)50〜95重量部のスチレン、α−メチルスチレン、メチル環置換スチレン、C−C−アルキルメタクリレート、特に、メチルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、特に、メチルアクリレート、またはこれらの化合物の混合物と、
B.1.2)5〜50重量部のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、C−C−アルキルメタクリレート、特に、メチルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、特に、メチルアクリレート、マレイン酸無水物、C−C−アルキル−もしくは−フェニル−N−置換マレイミドまたはこれらの化合物の混合物
との混合物を
B.2)5〜95重量部、好ましくは20〜70重量部のゴム含有グラフトベース上に含む、グラフトポリマーを含んでなる。
【0044】
グラフトベースは好ましくは、10℃より低いガラス転移温度を有する。
【0045】
ガラス転移温度は、本発明でそうではないことが示されない限り、DIN EN 61006規定に従い、Tの定義を中点温度として(接線法)、保護ガスとして窒素を用い、10K/分の加熱速度で、動的示差熱量測定(DSC)の手段によって測定される。
【0046】
ポリブタジエンゴムに基づくグラフトベースが特に好ましい。
【0047】
好ましいグラフトポリマーBは、例えば、スチレンおよび/またはアクリロニトリルおよび/またはアルキル(メタ)アクリレートがグラフトされた、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレンコポリマー、およびアクリレートゴム;すなわち、DE−A1694173(=US特許3564077)に記載されているタイプのコポリマー;例えば、DE−A2348377(=US特許3919353)に記載されているようなアルキルアクリレートもしくはメタクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンおよび/もしくはアルキルスチレンがグラフトされた、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレンまたはブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ポリイソブテンまたはポリイソプレンである。
【0048】
特に好ましいグラフトポリマーBは、
I.グラフト生成物に基づいて10〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、特に20〜40重量%の少なくとも1種類の(メタ)アクリルエステル、または10〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、特に20〜40重量%の、混合物に基づいて10〜50重量%、好ましくは20〜35重量%のアクリロニトリルまたは(メタ)アクリルエステルと混合物に基づいて50〜90重量%、好ましくは65〜80重量%のスチレンの混合物の、
II.グラフトベースとしてIIに基づいて少なくとも50重量%のブタジエン基を有する、グラフト生成物に基づいて30〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、特に50〜80重量%のブタジエンポリマー上
でのグラフト反応により得ることのできるグラフトポリマーである。
【0049】
本発明によれば、グラフトポリマーとしてのABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)の使用が極めて特に好ましい。
【0050】
このグラフトベースIIのゲル含量は、好ましくは少なくとも70重量%(トルエン中で測定)であり、グラフトポリマーBのグラフト度Gは0.15〜0.55であり、平均粒径d50は0.05〜2μm、好ましくは0.1〜0.6μmである。
【0051】
(メタ)アクリルエステルIは、アクリル酸またはメタクリル酸と1〜18個の炭素原子を有する一価アルコールのエステルである。メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびプロピルメタクリレートがとくに好ましい。
【0052】
グラフトベースIIは、ブタジエン基に加え、IIに基づいて50重量%までの、スチレン、アクリロニトリル、アルコール成分中に1〜4個の炭素原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステル(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、ビニルエステルおよび/またはビニルエーテルなどの他のエチレン不飽和モノマーの基を含んでなり得る。好ましいグラフトベースIIは、純粋なポリブタジエンからなる。
【0053】
グラフトモノマーはグラフト反応中にグラフトベース上に必ずしも完全にグラフトされる必要はないと知られているので、本発明の目的では、グラフトポリマーBは、グラフトベースの存在下でのグラフトモノマーの重合により得られる生成物もまた含む。
【0054】
グラフト度Gは、グラフトモノマー上にグラフトとグラフトベースの重量比であり、無次元である。
【0055】
平均粒子サイズd50は、各場合において粒子の50重量%がそれより上および下に入る直径である。平均粒径は、超遠心測定の手段(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782-796)によって決定することができる。
【0056】
さらに好ましいグラフトポリマーBはまた、例えば、
(a)グラフトベースとしての、Bに基づいて20〜90重量%のアクリレートゴムと
(b)Bに基づいて10〜80重量%の少なくとも1種類の重合可能なエチレン不飽和モノマー、a)の不在下で形成されるそのホモポリマーまたはコポリマーは、グラフトモノマーとして25℃を超えるガラス転移温度を有すると考えられる、
から構成されるグラフトポリマーでもある。
【0057】
アクリレートゴムから構成されるグラフトベースは好ましくは、−20℃より低い、好ましくは−30℃より低いガラス転移温度を有する。
【0058】
ポリマーBのアクリレートゴム(a)は好ましくは、アルキルアクリレートと、場合により、(a)に基づいて40重量%までの他の重合可能なエチレン不飽和モノマーとのポリマーである。好ましい重合可能なアクリルエステルとしては、C−C−アルキルエステル、例えば、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステルおよびこれらのモノマーの混合物が含まれる。
【0059】
架橋を果たすため、2以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを共重合させることができる。架橋モノマーの好ましい例は、3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコールまたは2〜4個のOH基と2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオール、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、多不飽和複素環式化合物、例えば、トリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート、多官能性ビニル化合物、例えば、ジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン、およびまたトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートとのエステルである。好ましい架橋モノマーは、環状モノマーである、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。
【0060】
架橋モノマーの量は好ましくは、グラフトベース(a)に基づいて0.02〜5重量%、特に0.05〜2重量%である。
【0061】
少なくとも3個のエチレン不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、その量をグラフトベース(a)の1重量%未満に制限することが有利である。
【0062】
アクリルエステルに加えて、場合によりグラフトベース(a)を調製するために使用可能な好ましい「他の」重合可能なエチレン不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC−C−アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベース(a)として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有するエマルションポリマーである。
【0063】
さらに好適なグラフトベースは、最初の特許公報DE3704657、DE3704655、DE3631540およびDE3631539に記載されているような、グラフト活性部位と少なくとも40重量%のゲル含量(ジメチルホルムアミド中で測定)を有するシリコーンゴムおよびまたシリコーン−アクリレート複合ゴムである。
【0064】
成分C.1
本発明に従って使用される成分C.1としてのホスファゼンは、式(X)の環状ホスファゼンであり、
【化4】
式中、
R基は、同一または異なり、それぞれ
アミン基、
各場合においてハロゲン化されていてもよい、好ましくはフッ素化された、より好ましくは一ハロゲン化された、C−C−アルキル、好ましくは、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、
−C−アルコキシ、好ましくは、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ、
各場合においてアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素で置換されていてもよいC−C−シクロアルキル、
各場合においてアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは、塩素、臭素、および/またはヒドロキシで置換されていてもよい、C−C20−アリールオキシ、好ましくは、フェノキシ、ナフチルオキシ、
各場合においてアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは、塩素および/または臭素で置換されていてもよい、C−C12−アラルキル、好ましくは、フェニル−C−C−アルキル、または
ハロゲン基、好ましくは、塩素またはフッ素、または
OH基
であり、
kは、1または1〜10の整数、好ましくは、1〜8、特に好ましくは1〜5の数である。
【0065】
プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼンおよびフルオロアルキルホスファゼン、およびまた以下の構造を有するホスファゼンが好ましい。
【化5】
上記化合物において、k=1、2または3。
【0066】
50〜98mol%のk=1(C.1−1)を有するオリゴマーの割合を有するフェノキシホスファゼン(総てのR基=フェノキシ)が特に好ましい。
【化6】
【0067】
例えば反応の不完全な出発材料からの、リン上でハロゲン置換されたホスファゼンの割合は、好ましくは、1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満である。
【0068】
ホスファゼンは、単独でまたは混合物として使用可能である。R基は常に同じであり得るか、または式(Ia)および(Ib)中の2以上の基は異なり得る。ホスファゼンのR基は好ましくは同じである。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、同一のR基を有するホスファゼンだけが使用される。
【0070】
好ましい実施形態では、四量体(k=2)(C.1−2)の割合は、成分C.1に基づいて2〜50mol%、より好ましくは5〜40mol%、いっそうより好ましくは10〜30mol%、特に好ましくは10〜20mol%である。
【0071】
好ましい実施形態では、高次オリゴマーホスファゼン(k=3、4、5、6および7)(C.1−3)の割合は、成分Cに基づいて0〜30mol%、より好ましくは2.5〜25mol%、いっそうより好ましくは5〜20mol%、特に好ましくは6〜15mol%である。
【0072】
好ましい実施形態では、k≧8(C.1−4)を有するオリゴマーの割合は、成分C.1に基づいて0〜2.0mol%、好ましくは0.10〜1.00mol%である。
【0073】
さらに好ましい実施形態では、成分C.1のホスファゼンは、割合に関して上記3つの条件(C.1−2〜C.1−4)の総てを満たす。
【0074】
成分C.1は好ましくは、三量体(k=1)の割合が70〜85mol%、四量体(k=2)の割合が10〜20mol%、より高次のオリゴマーホスファゼン(k=3、4、5、6および7)の割合が6〜15mol%のフェノキシホスファゼン、および成分C.1に基づいて0.1〜1mol%のk≧8を有するホスファゼンオリゴマーである。
【0075】
別の実施形態では、kの加重算術値と定義されるnは、1.10〜1.75、好ましくは1.15〜1.50、より好ましくは1.20〜1.45、特に好ましくは1.20〜1.40の範囲である(範囲境界を含む)。
【0076】
【数1】
【0077】
ホスファゼンおよびその製造は、例えば、EP−A728811、DE−A1961668およびWO97/40092A1に記載されている。
【0078】
個々のブレンドサンプル中のオリゴマー組成物は、化合後も検出可能であり、31P−NMR(化学シフト;三量体のδ:6.5〜10.0ppm;四量体のδ:−10〜13.5ppm;より高次のオリゴマーのδ:−16.5〜−25.0ppm)の手段により定量することができる。
【0079】
成分C.2
本発明の目的では、ホスフィン酸の塩(成分C.2)は、ホスフィン酸と任意の金属陽イオンとの塩である。また、それらの金属陽イオンに関して異なる塩の混合物を使用することもできる。金属陽イオンは、周期表の1族典型元素(アルカリ金属、好ましくはLi、Na、K)、2族典型元素(アルカリ土類金属;好ましくはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、特に好ましくはCa2+)または3族典型元素(ホウ素族の元素;好ましくはAl3+)および/または2族、7族または8族遷移元素(好ましくはZn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+)の金属の陽イオンである。
【0080】
式(IV)のホスフィン酸の塩または塩の混合物を使用することが好ましく、
【化7】
式中、Mm+は、周期表の1族典型元素(アルカリ金属;m=1)、2族典型元素(アルカリ土類金属;m=2)または3族典型元素(m=3)または2族、7族または8族遷移元素(ここでは、mは1〜6、好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2または3である)の金属陽イオンである。
【0081】
式(IV)では、
m=1の場合、金属陽イオンM=Li、Na、K
m=2の場合、金属陽イオンM2+=Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+および
m=3の場合、金属陽イオンM3+=Al3+
特にが好ましく、Ca2+(m=2)およびAl3+(m=3)が最も好ましい。
【0082】
好ましい実施形態では、ホスフィン酸塩(成分C.2)の平均粒子サイズd50は80μm未満、好ましくは60μm未満であり、d50は10μm〜55μmの範囲であることが最も好ましい。平均粒子サイズd50は、各場合において粒子の50重量%がそれより上および下に入る直径である。平均粒子サイズd50が異なる塩の混合物を使用することもできる。
【0083】
ホスフィン酸塩の粒子サイズd50に課せられたこれらの要件はそれぞれ、ホスフィン酸塩の難燃剤効率が高まる技術的効果と関連している。
【0084】
ホスフィン酸塩は、単独でまたは他のリン含有難燃剤と組み合わせて使用することができる。モノマーおよびオリゴマーリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、ホスホネートアミン(phosphonatamine)およびホスファゼンからなる群から選択されるリンを含有難燃剤不含のホスフィン酸塩含有組成物が特に好ましい。これらの他のリン含有難燃剤、例えば、モノマーおよびオリゴマーリン酸エステルおよびホスホン酸エステルは、ホスフィン酸塩に比べて、成形組成物の熱形状安定性を低下させるという欠点を持つ。
【0085】
成分C.3
成分C.3の難燃剤としては、一般式(VIII)のオリゴマーリン酸エステルまたはホスホン酸エステルが使用され、
【化8】
式中、
、R、RおよびRはそれぞれ互いに独立に、各場合においてアルキル、好ましくはC−C−アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素、臭素で置換されていてもよい、ハロゲン化されていてもよいC−C−アルキルまたはC−C−シクロアルキル、C−C20−アリールまたはC−C12−アラルキルであり、
指数nは互いに独立に、0または1であり、
qは、0〜30であり、
Xは、6〜30個の炭素原子を有する単環式もしくは多環式芳香族基、またはOH置換されていてもよく、8個までのエーテル結合を含み得る〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐型脂肪族基である。
【0086】
、R、RおよびRは、互いに独立に、好ましくは、C−C−アルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニル−C−C−アルキルである。芳香族基R、R、RおよびRは、ハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは、塩素、臭素および/またはC−C−アルキルで置換され得る。特に好ましいアリール基はクレジル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル、およびまた対応するその臭素化および塩素化誘導体である。
【0087】
式(VIII)のXは好ましくは、6〜30個の炭素原子を有する単環式または多環式芳香族基である。これは好ましくは、式(I)のジフェノールから誘導される。
【0088】
式(VIII)の指数nは互いに独立にそれぞれ0または1であり、nは1であることが好ましい。
【0089】
qは、0〜30、好ましくは0.3〜20、特に好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6、いっそうより好ましくは1.01〜1.6、極めて特に好ましくは1.05〜1.6、最も好ましくは1.05〜1.2の範囲である。
【0090】
Xは特に好ましくは、
【化9】
またはその塩素化または臭素化誘導体である。特に、Xはレゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。Xは特に好ましくは、ビスフェノールAから誘導される。
【0091】
本発明による成分C.3として、種々のホスフェートの混合物を使用することも可能である。
【0092】
式(VIII)のリン化合物は、特に、レゾルシノール架橋オリゴホスフェートおよびビスフェノールA架橋オリゴホスフェートである。ビスフェノールAから誘導される式(VIII)のオリゴマーリン酸エステルの使用が特に好ましい。
【0093】
式(VIIIa)のビスフェノールAに基づくオリゴホスフェートが最も好ましく、
【化10】
ここで、成分C.3としての式(VIIIa)中のqは1.05〜1.2である。
【0094】
成分C.3のリン化合物は既知であるか(例えば、EP−A0363608、EP−A0640655)、または既知の方法(例えば、Ullmanns Enzyklopadie der technischen Chemie, Vol. 18, p. 301 ff. 1979; Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Vol. 12/1, p. 43; Beilstein Vol. 6, p. 177)により類似の方法で製造することができる。
【0095】
種々のリン化合物の混合物が使用され、オリゴマーリン化合物の場合、示されているq値は平均q値である。平均q値は、好適な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))の手段によるリン化合物(分子量分布)の組成を決定することおよびそれからqの平均値を計算することによって決定することができる。
【0096】
難燃剤は、単独でまたは互いの任意の混合物もしくは他の難燃剤との混合物として使用することができる。しかしながら、使用するC.1、C.2および/またはC.3群の難燃剤とは別のさらなる難燃剤が存在しないことが好ましい。
【0097】
成分D
本発明の目的では、タルクは天然タルクまたは合成生産されるタルクである。
【0098】
純粋なタルクは化学組成3MgO・4SiO・HOを有し、従って、MgO含量は31.9重量%であり、SiO含量は63.4重量%であり、化学結合水の含量は4.8重量%である。それはシート構造を有するケイ酸塩である。
【0099】
天然タルク材料は一般に、マグネシウムが他の元素に一部置き換わることにより、ケイ素が例えばアルミニウムに一部置き換わることにより、かつ/または他の無機物、例えば、ドロマイト、マグネサイトおよびクロライトとともに成長することによって夾雑していることから、上記の理想的組成を持たない。
【0100】
本発明の目的でタルクの特定のタイプは、28〜35重量%、好ましくは30〜33重量%、特に好ましくは30.5〜32重量%のMgO量および55〜65重量%、好ましくは58〜64重量%、特に好ましくは60〜62.5重量%のSiO含量を特徴とする、特に高い純度を有する。タルクの好ましいタイプは、さらに、5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、特に0.7重量%未満のAl含量を有する。
【0101】
この定義に相当する市販のタイプのタルクは、例えば、Luzenac Naintsch Mineralwerke GmbH(グラーツ、オーストリア)からのLuzenac(商標)A3である。
【0102】
本発明によるものではないタルクのタイプは、例えば、Luzenac SE−Standard、Luzenac SE−Super、Luzenac SE−MicroならびにまたLuzenac ST 10、15、20、30および60であり、これらは総てLuzenac Naintsch Mineralwerke GmbHにより市販されている。
【0103】
0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、特に好ましくは1.1〜5μm、極めて特に好ましくは1.15〜2.5μmの平均粒子サイズd50を有する微粉タイプの形状の本発明によるタルクの使用が特に有利である。
【0104】
タルクは、ポリマーとのより良好な適合性を得るために、表面処理、例えばシラン化されていてもよい。成形組成物を処理および製造する目的では、圧縮タルクの使用も有利である。
【0105】
成分E
例えば、成分Bとともに粉末または凝固混合物のいずれかとして、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはPTFE含有組成物、例えば、PTFEとスチレンまたはメチルメタクリレート含有ポリマーとのマスターバッチ、またはコポリマーがドリッピング防止剤として使用される。
【0106】
ドリッピング防止剤として使用されるフッ素化ポリオレフィンは、高分子量および−30℃、一般に100℃を超えるガラス転移温度、好ましくは65〜76重量%、特に70〜76重量%のフッ素含量、0.05〜1000μm、好ましくは0.08〜20μmの平均粒径d50を有する。一般に、フッ素化ポリオレフィンは1.2〜2.3g/cmの密度を有する。好ましいフッ素化ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレン−テトラフルオロエチレンコポリマーである。フッ素化ポリオレフィンは既知である("Vinyl and Related Polymers", Schildknecht, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1962, 484 494頁;"Fluoropolymers", Wall, Wiley-Interscience, John Wiley & Sons, Inc., New York, Volume 13, 1970, 623 654頁; "Modern Plastics Encyclopedia", 1970 1971, Volume 47, No. 10 A, October 1970, McGraw-Hill, Inc., New York, 134および774頁; "Modern Plastics Encyclopedia", 1975 1976, October 1975, Volume 52, No. 10 A, McGraw-Hill, Inc., New York, 27, 28および472頁、ならびにUS特許3671487、3723 373および3838092参照)。
【0107】
それらは、既知の方法、例えば、7〜71kg/cmの圧力および0〜200℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度で、フリーラジカル形成触媒、例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムを使用する水性媒体中でのテトラフルオロエチレンの重合によって製造することができる(さらなる詳細については、例えば、US−A2393967参照)。使用する形態に応じ、これらの材料の密度は1.2〜2.3g/cmの範囲であり得、平均粒子サイズは0.05〜1000μmの範囲であり得る。
【0108】
本発明に従って好ましいフッ素化ポリオレフィンは、0.05〜20μm、好ましくは0.08〜10μmの平均粒径、および1.2〜1.9g/cmの密度を有する。
【0109】
粉末形態で使用可能な好適なフッ素化ポリオレフィンEは、100〜1000μmの平均粒径および2.0g/cm〜2.3g/cmの密度を有するテトラフルオロエチレンポリマーである。好適なテトラフルオロエチレンポリマー粉末は市販品であり、例えばDuPontによりテフロン(商標)の商標で販売されている。
【0110】
特に好ましい難燃性組成物は、任意選択のさらなる添加剤に加えて、成分Eとして、フッ素化ポリオレフィンを0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、特に好ましくは0.3〜1.0重量部を含有する。
【0111】
成分F
成分Fは、1以上の熱可塑性物質ビニル(コ)ポリマーまたはポリアルキレンテレフタレートを含んでなる。
【0112】
好適なビニル(コ)ポリマーFは、ビニル芳香族、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(C−C)−アルキル(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)からなる群からの少なくとも1つのモノマーのポリマーである。特に好適なポリマーは、
F.1 50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部のビニル芳香族および/または環置換ビニル芳香族、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンおよび/または(C−C)−アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートと
F.2 1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部のビニルシアン化物(不飽和ニトリル)、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルおよび/または(C−C)−アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えば、マレイン酸および/または誘導体、例えば、無水物およびイミド、不飽和カルボン酸、例えば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド
の(コ)ポリマーである。
【0113】
ビニル(コ)ポリマーFは、樹脂様、熱可塑性であり、ゴムを含まない。F.1スチレンとF.2アクリロニトリルのコポリマーが特に好ましい。
【0114】
Fの(コ)ポリマーは既知であり、フリーラジカル重合により、特に、乳化重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合によって作製することができる。(コ)ポリマーは好ましくは、15000〜200000g/mol、特に好ましくは100000〜150000g/molの範囲の平均分子量M(重量平均、光散乱または沈降により決定)を有する。
【0115】
特に好ましい実施形態では、Fは、77重量%のスチレンと23重量%の、130000g/molの重量平均分子量Mを有するアクリロニトリルのコポリマーである。
【0116】
同様に、本組成物は、本発明によれば、好適な成分Fとしてポリアルキレンテレフタレートまたは2種類以上の異なるポリアルキレンテレフタレートの混合物を含有し得る。
【0117】
本発明の目的では、ポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸から誘導されるポリアルキレンテレフタレート(またはその反応性誘導体、例えば、ジメチルエステルまたは無水物)、ならびにアルカンジオール、脂環式または芳香脂肪族ジオールおよびそれらの混合物、例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールおよびシクロヘキシルジメタノールに基づき、3個以上の炭素原子を有する本発明によるジオール成分を有するものである。よって、成分Fとしてポリブチレンテレフタレートおよび/またはポリトリメチレンテレフタレート、最も好ましくはポリブチレンテレフタレートを使用することが好ましい。
【0118】
本発明によるポリアルキレンテレフタレートはまた、二酸のモノマーとして5重量%までのイソフタル酸を含有し得る。
【0119】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)および3〜21個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式ジオールから既知の方法によって製造することができる(Kunststoff-Handbuch, Vol. VIII, p. 695 ff, Karl-Hanser-Verlag, Munich 1973)。
【0120】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジオール成分に基づいて少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%の1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオール基を含有する。
【0121】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、20mol%までの、8〜14個の炭素原子を有する他の芳香族ジカルボン酸または4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の基、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸の基を含有し得る。
【0122】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオール基に加え、20mol%までの、3〜12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオールまたは6〜21個の炭素原子を有する脂環式ジオール、例えば、1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールおよび2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、2,2−ビス(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン(DE−A2407674、2407776、2715932)の基を含有し得る。
【0123】
ポリアルキレンテレフタレートは、DE−A1900270およびUS−A3692744に記載のように、比較的少量の3価もしくは4価アルコールまたは3塩基性もしくは4塩基性カルボン酸を組み込むことにより分岐化することができる。好ましい分岐剤の例はトリメシン酸、トリメリト酸、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールである。
【0124】
酸成分に基づいて1mol%以下の分岐剤を使用するのが有利である。
【0125】
テレフタル酸またはその反応性誘導体(例えば、そのジアルキルエステル、例えば、ジメチルテレフタレート)および1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオール(ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート)、ならびにこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物だけから製造されたポリアルキレンテレフタレートが特に好ましい。
【0126】
好ましいポリアルキレンテレフタレートはまた、上記酸成分のうち2つからおよび/または上記アルコール成分のうち少なくとも2つから製造されたコポリエステルを含み、特に好ましいコポリエステルは、ポリ(1,3−プロピレングリコール/1,4−ブタンジオール)テレフタレートである。
【0127】
ポリアルキレンテレフタレートは一般に、各場合において25℃、フェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で測定した場合に約0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gの固有粘度を有する。
【0128】
別の実施形態では、本発明に従って製造されたポリエステルはまた、他のポリエステルおよび/またはさらなるポリマーとの混合物中で使用することもでき、ポリアルキレンテレフタレートと他のポリエステルの混合物を使用することが好ましい。
【0129】
さらなる添加剤G
本組成物は、難燃剤共力剤、潤滑剤および離型剤(例えば、ペンタエチスリチルテトラステアレート)、造核剤、安定剤(例えば、UV/光安定剤、熱安定剤、抗酸化剤、トランスエステル化阻害剤、加水分解阻害剤)、静電気防止剤(例えば、導電性カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブおよび有機静電気防止剤、例えば、ポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有ポリマー)、およびまた染料、色素、増量剤および補強材、特に、ガラス繊維、無機物補強材およびカーボンファイバーなどのさらなる慣例のポリマー添加剤を含有し得る。さらに、本組成物は、無機ホウ素化合物、好ましくは、ホウ酸塩の金属塩、特に、ホウ酸亜鉛を含有し得る。
【0130】
安定剤として、立体障害フェノールおよび亜リン酸塩またはそれらの混合物、例えば、Irganox(著作権)B900(Ciba Speciality Chemicals)を使用することが好ましい。ペンタエリスチルテトラステアレートは離型剤として好ましく使用される。さらに、カーボンブラックは、黒色色素として好ましく添加される(例えば、Black Pearls)。
【0131】
特に好ましい成形組成物は、任意選択のさらなる添加剤に加えて、0.1〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1.0重量部、特に好ましくは0.3〜0.8重量部の離型剤、特に好ましくは、ペンタエリスリチルテトラステアレートを、成分Gとして含んでなる。
【0132】
特に好ましい成形組成物は、任意選択のさらなる添加剤に加え、例えば、立体障害フェノール、亜リン酸塩およびそれらの混合物、特に好ましくは、Irganox(商標)B900からなる群から選択される少なくとも1種類の安定剤を0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.4重量部、特に好ましくは0.06〜0.3重量部の量で成分Gとして含有する。
【0133】
さらに、PTFE(成分E)、ペンタエリスリチルテトラステアレートおよびIrganox B900と成分Cとしてのリンに基づく難燃剤の組合が特に好ましい。
【0134】
本発明による繊維複合体の極めて特に好ましい組成物は、成分A〜Eだけ、および場合により少なくとも1種類の離型剤、特に、ペンタエリスリチルテトラステアレート、および場合により少なくとも1種類の安定剤、特に、フェノール、亜リン酸塩またはそれらの混合物からなる。
【0135】
繊維に含浸させるためのマトリックス材料として使用される本発明による組成物は、鉄道車両における防火に関するEN45545−2に従う発煙性の点で厳しい防火要件を満たす(Ds(4)、VOF 4およびDs(max))繊維複合体を提供することを可能にすることが判明している。
【0136】
よって、本発明の概念はまた、特に、鉄道車両用の構成部品の製造のための発煙性に関するEN45545−2の要件を満たす繊維複合体を生産するための上記組成物の使用も含む。
【0137】
さらに、本発明による繊維複合体から生産された構成部品は、EN45545の要件に従う延焼性(CFE)および熱発生(MARHE)に関して良好な特性を備える。
【0138】
繊維複合体は、繊維材料から構成される少なくとも1つの繊維層を有する。本発明の目的では、このような繊維層は、本質的に平面に配置された繊維により形成されたシート状の層である。繊維は、例えば、繊維を波状に配置するという手段によって繊維の位置を端から端まで互いに連結することができる。さらに、繊維層はまた、繊維を互いに連結するために、一定の割合の樹脂または別の接着剤を含んでなり得る。あるいは、繊維はまた互いに連結できない場合もある。これは相当な力をかけなければ繊維が互いに解離してしまうことを意味する。繊維層はまた、互いに連結された繊維と互いに連結されない繊維の組合せを有することもできる。
【0139】
少なくとも1つの繊維層は、熱可塑性物質に基づくマトリックスに埋入されている。これは繊維層が少なくとも片側、好ましくは両側を熱可塑性物質に取り囲まれていることを意味する。マトリックスの周辺は熱可塑性フォームから構成され、特に、この構成要素の外表または半加工部材は繊維複合体からなる。
【0140】
繊維複合体中の繊維層の数は原則として、いずれの制限も受けない。従って、2つ以上の繊維層を互いの上に配置することも可能である。2つの重畳繊維層は各場合において、それらの両側がマトリックスにより取り囲まれるようにマトリックス内に個々に埋入することができる。さらに、2以上の繊維層はまた、それら全体がマトリックスにより取り囲まれるように、互いの上に直接のせることもできる。この場合、これら2つ以上の繊維層はまた、1つの厚い繊維層と捉えることもできる。
【0141】
繊維複合体の一実施形態では、繊維層は、一方向繊維層として、織物層もしくはレイドウェブとして、編物、編地またはブレードとして、タングルファイバーマットもしくは不織布の形態の長繊維として、またはそれらの組合せとして構成される。実験では、繊維複合体の最良の特性は、一方向繊維層、織物層およびレイドウェブを用いて達成された。
【0142】
繊維材料の繊維(補強繊維)の化学構造は、種々のタイプであり得る。補強繊維は好ましくは、存在する個々の熱可塑性マトリックスよりも高い軟化点または融点を有する。繊維材料の例は、種々のタイプのケイ酸含有および非ケイ酸含有ガラス、炭素、バサルト、ホウ素、炭化ケイ素、金属、金属アロイ、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物およびケイ酸塩などの無機材料、ならびにまた天然および合成ポリマー、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、超高配向ポリオレフィン繊維、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、綿およびセルロースなどの有機材料である。高融点材料、例えば、ガラス、炭素、アラミド、バサルト、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエーテルイミドが好ましい。特に好ましい補強繊維は、ガラス繊維および炭素繊維である。
【0143】
繊維複合体の一実施形態では、繊維複合体の総容量に基づく繊維材料の体積含有量は、30〜60容量%の範囲、好ましくは40〜55容量%の範囲である。
【0144】
繊維複合体の一実施形態では、繊維複合体は、繊維複合体シートの形態である。よって、本開示はまた、上記繊維複合体から本質的になる、特に、繊維複合体シートを提供する。
【0145】
繊維複合体の一実施形態では、繊維複合体シートは、0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmの範囲の厚さを有する。特に良好な火災特性がこれらの厚さで見られている。
【0146】
繊維複合体の一実施形態では、繊維複合体は、以下の特性、特に、繊維複合体が繊維複合体シートの形態である場合には:
ISO 5659−2に従うDs(4):<300、
ISO 5659−2に従うVOF 4:<600、および
ISO 5659−2に従うDs(max):<600。
【0147】
ISO 5659−2に従う発煙性に関するDs(4)、VOF 4、Ds(max)値は、50kW/mの照射強度で添加火炎を用いずに決定される(例参照)。
【0148】
連続繊維で補強された熱可塑性物質半加工部材(複合シート)を生産するためには種々の製造方法を使用することができる。ここで、まず、複合シートが例えば一方向繊維層からなるか、織物層からなる、タングル繊維層からなるかまたはそれらの組合せからなるかに関して基本的な区別を行うことができ、この一方向繊維は、半加工部材(例えば、レイドウェブ)の形状でまたは直接的には純粋な繊維粗糸として複合シートに導入することができる。後者のアプローチの場合、繊維粗糸は一般に、ます、単層で熱可塑性樹脂を含浸させ、次に、プレスして多層系(ラミネート)を形成させ、種々の含浸法が存在する。複合シートが半加工部材(織物層、レイドウェブ、タングル繊維など)から生産される場合には、従来技術も同様に繊維およびマトリックスを一体とするための種々の可能性を開示している。慣例の方法は、例えば、粉体プリプレグまたはフィルムスタッキング法を用いる方法である。フィルムスタッキング法は、上記繊維複合体を生産するために好ましく使用することができる。ここで、フィルムおよび織物層は互いの上に交互にのせ、織物層の単位面積当たりの重量およびフィルム厚は、最終複合シートで例えば50容量%の繊維体積含有量が得られるように調節することができる。
【0149】
上記の目的もまた、本発明によれば、鉄道車両、特に、乗客輸送用の鉄道車両のための構成部品として上記繊維複合体の1つを使用することにより少なくとも部分的に達成される。
【0150】
上記繊維複合体は、鉄道車両にとって重要な火災の場合の特性に関して良好な結果を示すことが判明している。従って、これらの繊維複合体は、鉄道車両における使用に特に好適である。特に、乗客の安全上、およびそのような鉄道車両において使用されている材料が相応に高値を満たさなければならない要求として防火は特に重要であるので、これらの繊維複合体は、乗客輸送用の鉄道車両におして使用するのに好適である。EN45545−2の鉄道規格に規定されている発煙性は、熱可塑性物質にとっては実質的な障害となる。
【0151】
上記繊維複合体が示す発煙性は極めて低く、EN45545−2の発煙性要件を満たすことが判明している。従って、本繊維複合体はまた、これらの要件を満たさなければならない構成部品、例えば、自動車内装の構造部材およびライニング部材(壁、天井内張、ドア、ウィンドウなど)、網棚、運転室、テーブル、防音・断熱材、自動車の外板の垂直面、部分構造の外表、ライトカバー、ライトディフューザーなどにも特に好適である。本発明の繊維複合体はまた、使用材料が耐ノッチ衝撃性、継ぎ目強度、耐火性および表面品質に関して特に要求の厳しい要件を満たさなければならない薄壁成形品(例えば、データ技術ハウジング部品、TVハウジング、ノートブック)を生産するため、また、例えば、家庭用品、モニターもしくはプリンターなどのオフィス器機用のハウジング部品、または建築部門用のカバープレートおよび自動車部門用の部品または電気部門用の部品を生産するために使用することもできる。
【0152】
上記目的はまた、重畳層から構成される層構造が繊維材料の少なくとも1つの繊維層から、および繊維層の両側に配置された少なくとも1つのポリマーフィルムから構成されるポリマー層から形成され、その層構造が加圧および熱の作用下でプレスされて繊維複合体が形成されるという、上記繊維複合体を生産するための方法によって少なくとも部分的に達成され、ここで、このポリマーフィルムは上記繊維複合体のマトリックスに相当する組成物を有する。この方法はまた「フィルムスタッキング」法とも呼ぶことができる。
【0153】
「フィルムスタッキング法」では、重畳層の層構造は、繊維材料から構成される少なくとも1つの繊維層から、および少なくとも1つのポリマーフィルムから構成され、繊維層の両側に配置されたポリマー層から形成される。このために、例えば、1以上の帯状の繊維層およびまた帯状のポリマーフィルムをローリングオフステーションのリールから取り、意図する配置に従って一緒に配置し、層構造を形成することができる。例えば、2つの繊維層と3つのポリマー層を有する層構造を生産することができ、種々の層が互いの上に交互にのせる。
【0154】
この方法では、層構造を加圧および熱の作用下でプレスして繊維複合体を形成する。この工程段階は連続的、半連続的または不連続的に行うことができる。例えば、連続法の場合には、加熱可能なベルトプレスを使用することができ、半連続法では、インターバル加熱プレスを使用することができ、または不連続法では、単純な加熱プレスを使用することができる。連続様式または半連続様式の操作は、不連続法に比べて高いスループットを達成することを可能にする。
【0155】
上記繊維複合体を生産するためのさらなる方法を以下に記載する。
プリプレグ技術に基づいて上記繊維複合体(複合シート)を生産するためには、以下の工程段階を備えた多段階法を使用することができる:
・所望のマトリックス組成を有する1以上の粒状材料を粉砕して粉末とすること、
・前記粉末を篩いにかけること、
・粉末プリプレグを製造すること、
・前記粉末プリプレグをプレスして複合シートを得ること。
【0156】
複合シートのプリプレグという用語は、熱可塑性マトリックス材料を予め含浸させたドレープ可能な半加工繊維部材(例えば、織物層、レイドウェブ、または不織布など)を意味する。
【0157】
粒状材料の粉砕による粉末化は、好適なミルを用いて行う。このために、例えば、ピンミルまたは振動ミルがよく使用される。ミルのタイプによって、このプロセスでは種々の粉砕機構が優位であり得、ポリマーは通常、摩擦または衝撃ストレスによって粉砕される。工業用熱可塑性物質が一般に、繊維補強半加工部材(複合シート)を生産するために使用される。これらの工業用熱可塑性物質(例えば、PA、PP、PC、PET、PEEK、PPS)の多くは、衝撃ストレス下であっても極めて延性の挙動を示し、これにより、粉砕工程中に砕けるのではなく屈曲する、またはさらには熱の発生により溶融しさえし得る材料となる。このようなポリマーは、粉砕中に脆性破壊を受けるように、粉砕工程中に液体窒素またはCOの手段によって−196℃より低い温度まで冷却しなければならない場合がある。この付加的冷却工程は、プロセス全体の高(エネルギー)コストに関連し、経済性を大きく損なう。
【0158】
従来技術の複合シート用の粉末プリプレグを生産するためには、特定の粒子サイズ範囲を有する粉末を使用しなければならない。このために、生産された粉末は、粉砕後の工程で種々の篩いの手段によって分類する。工程収率の観点と加工適性の点の両方から好ましい範囲は200μm〜500μmである。
【0159】
次に、熱可塑性物質は、粉末状で織物繊維層、繊維レイドウェブ、または繊維不織布などに適用され、熱供給によって溶融される。その後の冷却の結果としてポリマーと繊維が接着し、複合体(「プリプレグ」)が巻き取られ、さらに以降の加工を受けることができる。
【0160】
織物繊維層上に散布される粉末の量は、軽量デバイスの手段によって決定される。これが最終的にはその後の複合シートの繊維とマトリックスの比率を決める。典型的な計量用デバイスは、例えば、Schilling−Knobel GmbHからの分散機である。基板または基板の形状もしくはサイズによって、異なるタイプの器機が適している。
【0161】
本発明の複合シートを生産するさらなる可能性の方法は、「UDテープ技術」(DE102011005462B3参照)により提供される。この工程では、繊維材料は、半加工繊維部材(織物層、レイドウェブなど)の形態で使用されず、直接、繊維粗糸として使用される。この工程では、一般に、複数のロービングリールから並行して粗糸を取り、平坦で幅広の繊維テープとなるように一緒に送る。さらに多くのロービングリールを使用すれば、この繊維テープの幅は広くなる。この幅は理論的には自在に設定可能である。これらの繊維テープを一体とし、伸展した後、熱可塑性物質を適用する。超微細粉末の形態か、フィルムとして、または直接、溶融物から繊維テープ上に適用することができる。この工程の目的は、総ての場合において、最終的に、繊維テープに熱可塑性物質を完全に含浸させることである。結果として得られる半加工部材は一般に「UDテープ」と呼ばれる。
【0162】
次の工程で、DE102011090143A1に例として記載されているように、これらの「UDテープ」を一体として、平坦なより幅広のテープを得ることができる。ここで、個々の「UDテープ」は、加熱/加圧区画へ並行して送られ、互いに融合される。次に、これらのテープは任意の配置および数で重畳され、プレスされて厚い一方向複合シートとなる。
【0163】
本発明による繊維複合体は、特に、熱可塑性物質に基づくマトリックス中に埋入された繊維材料から構成される少なくとも1つの一方向繊維層を有する複合体であり、前記マトリックスの組成は、
A)60〜95重量部の芳香族ポリカーボネート、
B)0〜15重量部のゴム修飾グラフトポリマー、
C.3)1〜25重量部のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、
D)0〜30重量部の、0.1〜20μmの平均粒子サイズd50を有するタルク、
E)0.05〜5.00重量部のドリッピング防止剤、
成分G)として、
G.1)0.01〜0.5重量部の熱安定剤および/または
G.2)0.1〜1.5重量部の離型剤
を含有し、
ここで、示された重量部は総て好ましくは、組成物中の全成分の重量部の合計A+B+C+D+E+Gが100となるように正規化されている。
【0164】
マトリックスの組成は、好ましくは、いずれのさらなる成分も含有しない。
【0165】
本発明による繊維複合体は、EN45545−2の発煙性要件を満たす鉄道車両用の構成部品を生産するために使用される。
【0166】
本繊維複合体のさらなる特徴および利点、繊維複合体を生産するためのその使用および方法は、いくつかの実施例の下記説明から導くことができ、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0167】
図1】本発明による複合体の第1の例としての複合シート。
図2】本発明による複合体の第2の例としてのさらなる複合シート。
図3】繊維複合体を生産するための本発明の方法の例。
【0168】
図1は、本発明による複合体の第1の例としての複合シートを側断面図で示す。複合シート2は、熱可塑性物質から構成されるマトリックス8中に埋入されたガラス繊維織物から構成される1以上の重畳繊維層4を含んでなる。
【0169】
図2は、本発明による複合体の第2の例としてのさらなる複合シートを側断面図で示す。複合シート12は、マトリックス中に埋入された1以上の重畳された第1の繊維層14と1以上の重畳された第2の繊維層16を含んでなり、第1および第2の繊維層14、16は、マトリックス材料の層によって互いに分離されている。
【0170】
図3は、繊維複合体を生産するための本発明の方法の例を模式的に示す。この方法では、テープ状の繊維層24を第1のリール22から取り、テープ状のポリマーフィルム30、32を各場合において第2および第3のリール26、28から取る。繊維層24およびポリマーフィルム30、32はガイドローラー34の手段により重畳されて層構造36を形成し、加熱部材38の手段により加熱されるダブルベルトプレス40に送られる。ダブルベルトプレスの代わりに、インターバル加熱プレスを使用することもできる。ダブルベルトプレス40では、層構造36は加圧と熱の作用によってプレスされ、繊維複合体42を形成する。ダブルベルトプレス40の温度は、層構造36のポリマーフィルム30、32が少なくとも部分的に液化し、繊維層24が埋入されているマトリックスを形成するのに十分高いものである。連続テープ44としてダブルベルトプレス40を離れた繊維複合体42は、次に、仕上げデバイス46に送られ、そこでテープ44は例えば切断されて複合シート48となる。
【0171】
複合シートはまた、静止プレスの手段によって生産することもできる。ここでは、フィルムと織物層を互いの上に交互にのせ、複合シートの上側と下側は各場合においてフィルム層により離して仕上げられる。
【実施例】
【0172】
以下の実施例は、マトリックスの組成に関して本発明を説明するために役立つ。
【0173】
成分A1
溶媒としてCHCl中、25℃で測定した場合に相対溶液粘度ηrel=1.28と0.5g/100mlの濃度を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖ポリカーボネート、または重量平均分子量M27500g/mol(標準としてポリカーボネートを用いジクロロメタン中でGPCにより測定)を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖ポリカーボネート。
【0174】
成分A2
溶媒としてCHCl中、25℃で測定した場合に相対溶液粘度ηrel=1.20と0.5g/100mlの濃度を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖ポリカーボネート、または重量平均分子量M20000g/mol(標準としてポリカーボネートを用いジクロロメタン中でGPCにより測定)を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖ポリカーボネート。
【0175】
成分B.1
コア・シェル構造を有し、ABSポリマーに基づいて57重量%の粒状架橋ポリブタジエンゴム(平均粒径d50=0.35μm)の存在下での、ABSポリマーに基づいて43重量%の、27重量%のアクリロニトリルと73重量%のスチレンの混合物の乳化重合により製造された、ABSグラフトポリマー。
【0176】
成分C.3
成分C.3−1
リン含量が8.9重量%の、ビスフェノールAに基づくオリゴホスフェート。
【化11】
【0177】
成分D1
MgO含量が32重量%、SiO含量が61重量%およびAl含量が0.3重量%、および平均粒子サイズd50=1.0μmの、Luzenac/Rio TintからのタルクJetfine 3CA。
【0178】
成分E1:
フッ素化ポリオレフィンのエマルションと、スチレン−アクリロニトリルに基づくコポリマー(SabicからのCycolac INP 449)のエマルションとの凝固混合物。
【0179】
成分G1
潤滑剤/離型剤としてのペンタエリスリチルテトラステアレート
【0180】
成分G2
熱安定剤Irganox(商標)B900(80%のIrgafos(商標)168と20%のIrganox(商標)1076の混合物;BASF AG;Ludwigshafen/Irgafos(商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)/Irganox(商標)1076(2,6−ジ−tert−ブチル−4−(オクタデカンオキシカルボニルエチル)フェノール)。
【0181】
射出成形検査試料の製造および試験:
表2に示される出発材料を化合し、2軸押出機(TSE-25)(Werner und Pfleiderer)にて、225rpmの回転速度および20kg/時のスループットおよび260℃の機械温度でペレットとした。最終ペレットを射出成形機で処理し、適当な検査試料を得た(溶融温度240℃、ツール温度80℃、射出速度40mm/秒)。
【0182】
複合シートの製造を以下に記載する:
表2に示される出発材料を化合し、2軸押出機(TSE−25)(Werner und Pfleiderer)にて、225rpmの回転速度および20kg/時のスループットおよび260℃の機会温度で造粒した。さらなる工程段階で、次にこれらのペレットをスリットダイを備えた単軸押出機の手段により処理してフィルムを得た。これらのフィルムを次に、Servitecからの静止プレスモデルPolystat 200Tにて表1の処理パラメーターを用いてフィルムスタッキング法によりさらに処理し、複合シートを得た。
【0183】
複合シートを生産するために、KG(ハーン、ドイツ)からの、K506 Finishを備えたStyle 3107タイプのガラス繊維織物を使用した。これらの織物は2/2綾織で、単位面積当たりの重量が390g/mである。ここで、フィルムおよび織物層を互いの上に交互にのせ、複合シートの上側と下側は各場合においてフィルム層によって離して仕上げられた。
【0184】
【表1】
【0185】
発煙性Ds(4)、VOF 4、Ds(max)は、ISO5659−2(照射強度:50kW/m、点火火炎無し)に従って測定した。
【0186】
燃焼挙動は、UL94Vに従い、127×12.7×Xmm(X=検査試料の厚さ、すなわち、1または2mm)の寸法のロッドにて測定した。
【0187】
組成および測定の結果を以下の表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2から、実施例B1〜B4の組成物から難燃剤(C3−1)を用いずに作製した射出成形検査試料はタルクおよび/または成分B1が存在したにもかかわらず発煙性要件を満たさないことが見て取れる。さらに、いずれの難燃剤C3−1も含まない実施例B1〜B4の組成物から作製された複合シートも同様に、タルクおよび/または成分B1を添加したにもかかわらず、EN45545−2の発煙性要件、すなわち:
ISO5659−2に従うDs(4):<300、
ISO5659−2に従うVOF 4:<600、および
ISO5659−2に従うDs(max):<600
を満たさない。
【0190】
難燃剤として成分C3−1を含有する組成物から作製した射出成形体(B5〜B8)は、いずれの難燃剤(B1〜B4)も含有しない組成物から作製した射出成形体よりも有意に低い発煙性を持つことが一様に見て取れる。
【0191】
しかしながら、組成B5〜B8から作製した複合シートは、驚くことに発煙性要件を満たす。発煙性は燃焼挙動から推断することができないので、このことは総てさらに驚くべきことである。よって、組成B8から作製した射出成形体は、検査試料厚が1mmであってもUL94−V0の要件を満たすが、対応する複合シート検査試料は、厚さ2mmであってもUL94試験を合格しない。
図1
図2
図3