特許第6567519号(P6567519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567519
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190819BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20190819BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20190819BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 B
   C08L101/12
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250G
【請求項の数】8
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-530363(P2016-530363)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公表番号】特表2016-534551(P2016-534551A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2014001803
(87)【国際公開番号】WO2015014429
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】13003772.4
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506427679
【氏名又は名称】メルク、パテント、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】パン、ジュンユウ
(72)【発明者】
【氏名】フランク、エゴン、マイヤー
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−098619(JP,A)
【文献】 特表2008−505239(JP,A)
【文献】 特開2011−001553(JP,A)
【文献】 特表2012−528208(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0156576(US,A1)
【文献】 特開2013−142139(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0176718(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/133465(WO,A1)
【文献】 特開2008−277506(JP,A)
【文献】 特開2001−052867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/60
H01L 51/30
H01L 51/05
C08L 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アノード、
b)カソード、
c)少なくとも1つの発光体を含んでなり、アノードとカソードとの間に配置されている、少なくとも1つの発光層、および
d)少なくとも1つの、電子伝導性もしくは主に電子伝導性を有する材料を含んでなり、少なくとも1つの発光層とカソードとの間に配置されている、少なくとも1つの電子輸送層、
を具備してなり、
発光層の少なくとも1つが正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーを含んでなり、
前記少なくとも1つの発光体が、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーに、繰り返し単位として組み込まれており、
前記発光体が、燐光発光性の化合物から選択され、
前記正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーが、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリンならびにそれらの異性体および誘導体から選択される少なくとも1つの繰返し単位を含み、かつ
電子輸送層中の少なくとも1つの、電子伝導性もしくは主に電子伝導性を有する材料が、電子輸送層中のポリマーに、繰返し単位として組み込まれ、かつイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン、トリアリールボランならびにそれらの異性体および誘導体から選択されることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記発光体が燐光発光性の金属錯体であり、金属がIr、Ru、Os、Eu、Au、Pt、Cu、Zn、Mo、W、Rh、PdおよびAgから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
繰返しアミン単位が次の式(18)〜(20)から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(式中、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、置換もしくは非置換の、芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、シリル、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、およびヒドロキシ基から選択され、
rは、0、1、2、3または4であり、かつ
sは、0、1、2、3、4または5である)
【請求項4】
前記正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーが、該ポリマーの骨格を形成する構造単位も付加的に有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記ポリマーの骨格を形成する付加的な構造単位が、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランおよびそれらの誘導体から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーが、共役ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーが、非共役もしくは部分共役ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記非共役もしくは部分共役ポリマーが、次の式(32)および(33)から選択されるインデノフルオレン構造単位を含むことを特徴とする、請求項7に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
(式中、
XおよびYは、独立して、H、F、C1〜40−アルキル基、C2〜40−アルケニル基、C2〜40−アルキニル基、置換されていてもよいC6〜40−アリール基、および置換されていてもよい5〜25員のヘテロアリール基から選択される。)
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、発光層中に正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーを含んでなるエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
最も広い意味でエレクトロニクス業界に貢献することができる、多数の異なる用途において、有機半導体を機能性材料として使用することは、しばらく前から現実に行なわれており、または近い将来に期待されている。
【0003】
例えば、感光性有機材料(例えば、フタロシアニン)および有機電荷輸送材料(例えば、トリアリールアミン系の正孔トランスポーター)が既に数年前からコピー機に使用されている。
【0004】
特定の半導体有機化合物のあるもの(その一部は可視スペクトル領域の光を発光することができる)は、既に市販の素子、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用されている。
【0005】
その個々の構成要素、有機発光ダイオード(OLED)は、非常に広い用途範囲を有する。OLEDは既に用途が見出されており、例えば以下のものである。
−モノクロもしくは多色ディスプレイ素子用の、白色もしくは着色バックライト(例えば、電卓、携帯電話およびその他の携帯用途に)、
−大面積ディスプレイ(例えば、交通標識もしくはポスターとして)、
−色や形の様々な照明要素、
−携帯用の、モノクロもしくはフルカラーパッシブマトリックスディスプレイ(例えば、携帯電話、PDAおよびカムコーダー用)、
−様々な異なる用途のための、フルカラー、大面積かつ高解像度のアクティブマトリックスディスプレイ(例えば、携帯電話、PDA、ラップトップ型パソコンおよびテレビ用)。
【0006】
これらの用途の一部における開発は、既に非常に進んでいる。それにもかかわらず、技術的な改善のための大きい必要性が依然として存在している。
【0007】
OLEDの動作寿命は、一般に依然として比較的低い。特に、フルカラー用途(フルカラーディスプレイ、すなわち、セグメンテーションを持っていないが、全面にすべての色を表すことができるディスプレイ)の場合、これは、個々の色が経年化する際の速度が異なる原因となる。この結果は、ディスプレイの実際の寿命の終了(これは、一般に初期輝度の50%までの低下により定義される。)の前であっても、顕著な白色点のシフトがあり、ディスプレイ中の表示の演色が非常に悪くなるということである。この問題を避けるために、一部のディスプレイユーザーは、当該寿命を70%もしくは90%寿命(初期輝度が初期値の70%もしくは90%まで低下)として定義する。しかしながら、このことは寿命が一層短いということにつながる。
【0008】
OLEDの効率は許容されているが、当然のこととして依然、ここでもまた、特に携帯用途に対して、改善が望まれている。
【0009】
三原色の全てからなるOLED、特にブロードバンド白色発光OLED、のカラーコーディネートは、依然として多くの用途に対して充分ではない。特に、良好なカラーコーディネートと高効率との組み合わせはまだ改善を必要としている。
【0010】
上記の理由から、OLEDの製造における改善が必要とされている。
【0011】
有機エレクトロルミネッセンス素子の一般的な構造は、例えば、US4,539,507およびEP1202358Aに記載されている。通常、有機エレクトロルミネッセンス素子は、真空法または各種印刷法、特に、例えば、インクジェット印刷のような溶液ベースの印刷法、もしくは例えば、熱転写印刷、LITI(レーザ熱転写)のような溶媒を用いない印刷法により、重ねて塗布されるいくつかの層からなる。
【0012】
主として溶液から、すなわち可溶性材料を用いて加工された一般的なOLEDは次の層を有する:
−担体プレートまたは基板、これは、好ましくはガラス製もしくはプラスチック製である;
−透明アノード、これは、好ましくは、酸化インジウムスズ(「ITO」)からなる;
−少なくとも1つの正孔注入層(「HIL」)、これは、例えば、正孔伝導特性を持つ導電性ポリマー、例えば、ポリアニリン(PANI)もしくはポリチオフェン誘導体(PEDOT等)を基本とする;
−必要に応じて、中間層(「IL」)もしくは正孔輸送層(「HTL」)、これは、例えば、トリアリールアミン単位を含むポリマーを基本とする(WO2004/084260A);
−少なくとも1つの発光層(「EML」)、この層は、上記または下記の層と部分的に相互作用し;EMLは、好ましくは、蛍光発色性の色素、例えば、Ν、Ν’−ジフェニルキナクリドン(QA)、または燐光発色性の色素、例えば、トリス(フェニルピリジル)イリジウム(Ir(PPy))、もしくはトリス(2−ベンゾチオフェニルピリジル)イリジウム(Ir(BTP))、およびドープされたマトリックス材料、例えば、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)を含む。EMLはまた、ポリマー、ポリマーの混合物、ポリマーと低分子化合物との混合物または異なる低分子化合物の混合物からなっていてもよい;
‐必要に応じて、正孔ブロック層(「HBL」)、ここで、この層は、後記のETLもしくはEIL層と部分的に組み合わされていてもよく;HBLは、好ましくは、低いHOMOを有し、正孔の輸送を阻止する物質、例えば、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10‐フェナントロリンもしくはバソキュプロイン)またはビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)を含んでなる;
‐必要に応じて、電子輸送層(「ETL」)、これは、例えば、アルミニウムトリス−8−ヒドロキシキノキサリネート(AlQ)からなる;
‐必要に応じて、電子注入層(「EIL」)、これは、上記のEML、ETLもしくはHBL層と部分的に組み合わされていてもよく、それぞれカソードの小さい部分は特別に処理されるか、もしくは特別に成膜されており、ここでこのEIL層は、高誘電率を有する材料からなる薄膜、例えば、LiF、LiO、BaF、MgOもしくはNaFの層であってもよい;
‐カソード、ここで、好ましくは、金属、金属の組み合わせまたは低仕事関数の金属合金、例えば、Ca、Ba、Cs、Mg、Al、InもしくはMg/Agが使用される。
【0013】
HBL、ETLおよび/またはEIL層のような個々の層は、必要に応じて、溶液から塗布するよりも、減圧下での真空蒸着によって作成することもでき、いわゆるハイブリッド素子が製造される。
【0014】
このような素子の寿命は、水および/または空気の存在下で大幅に短縮されうるため、素子全体が適切に(用途に応じて)構造化され、接触・接続され、最後に通例のようにまた密封される。同じことは、トップエミッションと呼ばれ、光がカソードから発光される、いわゆる、逆構造にも適用される。逆OLEDの場合、アノードは、例えば、Al/Ni/NiOから、もしくはAl/Pt/PtOから、または5eVより大きい仕事関数をもつ、他の金属/金属酸化物の組合せから形成される。金属または金属合金は、非常に薄く塗布され、従って透明であるが、カソードは、これまで記してきたのと同じ材料から形成される。層の厚さは、好ましくは50nm未満、より好ましくは30nm未満、最も好ましくは10nm未満であり、発光される光の一部は常に結果として吸収される。さらなる透明な材料、例えば、ITOまたはIZO(「酸化インジウム亜鉛」)は、またこの透明なカソードに適用することもできる。
【0015】
従来のOLEDは、少なくとも以下の層構造を持っている:
アノード/正孔注入層/発光層/カソード。このタイプの構造の場合、正孔と電子が再結合し、これにより放射線の発生が発光層で起こる。正孔は、発光分子に加えて、一般的に少なくとも1つの主に電子伝導性の材料を含んでなる発光層に移動し、その中で電子により発光分子の励起と再結合する。今日OLEDに使用されるポリマーのほとんどは、正孔よりも電子に対して一層高い移動度を有する(Friend等による、Nature、434巻、194頁参照)。
【0016】
主に正孔伝導性の共役エレクトロルミネセンスポリマー材料は、今日まで開示されておらず、今日まで発光層に使用されてもいない。これらの材料の発光層における使用は、層形成の簡易な方法だけでなく、可能な選択肢において決定的な改善を提供し、かつ、新規なOLEDの構築を可能にするであろう。
【0017】
WO2008/034758Aは、燐光発色性の発光体と正孔伝導性材料とを含む発光層を含んでなる、比較的寿命の長いOLEDを開示する。電子伝導性層が発光層とカソードとの間に配置される。この文献は、主に、小さな有機分子からなる正孔伝導性材料を記載する。正孔伝導性ポリマーもまた開示されているが、ポリビニルカルバゾール、PEDOTもしくはPANIのみが開示されている。PEDOTおよびPANIは、十分な正孔伝導性を得るためにプロトン酸がドープされなければならない材料である。このような材料は、プロトンの存在が発光を妨げるか、あるいは少なくとも発光に大きな悪影響を与えるので、発光層には適していない。ポリビニルカルバゾールは、伝導性を付与するカルバゾール基が側鎖に配置されている、飽和された炭化水素主鎖を有するポリマーである。このような導電性ポリマーは、限られた安定性を有するにすぎない。
【0018】
WO2006/076092Aは、励起子ブロック層を有する燐光発光性のOLEDを開示する。この中で使用される発光層は、発光材料に加えて、正孔伝導性材料および電子伝導性材料を含んでなる。開示されている唯一の発光層は、小さい有機分子から形成されている。また、主に正孔伝導性を有する発光層は開示されておらず、主に電子伝導特性を有する発光層のみが開示されている。
【0019】
WO2005/112147Aは、改善された寿命を有する有機発光ダイオードを開示する。これは、カソードと発光層との間および/またはアノードと発光層との間の、アリールボラン共重合体の層の存在によって得られる。発光ダイオードの構造の、または発光層もしくは更なる層の配置に関しての詳細は開示されていない。
【0020】
今や驚くべきことに、ドーパントとしてプロトン酸を含まない主に正孔伝導性のポリマーを含んでなる発光層と、主に電子伝導性の材料を含み、カソードと発光層との間に配置される電子伝導層との組み合わせによって、顕著に改善された寿命を有するOLEDが得られることが見出された。この構造の結果、電子/正孔対が正孔伝導性の発光層中で再結合し、その中に存在する発光分子の発光を誘発する。
【0021】
本発明によれば、このような層の対を2つ以上組み合わせることもできる。
【0022】
従って、本発明の目的は、高い光収率と共に長い寿命を有し、今までに使用されたことのない発光層の使用を可能にする、エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、電子‐正孔対の再結合により放射を誘発され得る、新規な発光材料を提供することにある。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、長寿命と高い光収率によって特徴付けられる、簡単な構造を有するエレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【0025】
さらに、本発明に係る素子は、製造が容易で、広帯域の発光が可能で、かつ高い放射効率を有していなければならない。
【0026】
従って、本発明は、
a)アノード、
b)カソード、
c)少なくとも1つの発光体を含んでなり、アノードとカソードとの間に配置されている、少なくとも1つの発光層、および
d)少なくとも1つの、電子伝導性もしくは主に電子伝導性を有する材料を含んでなり、少なくとも1つの発光層とカソードとの間に配置されている、少なくとも1つの電子輸送層、
を具備してなり、
発光層の少なくとも1つが正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーを含んでなることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0027】
本出願の文脈において、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーは、排他的に正孔を、あるいは正孔と電子の両方を伝導することができるポリマーを意味するものと理解される。しかしながら、このポリマー中の正孔の移動度は、電子の移動度よりも少なくとも1桁、好ましくは少なくとも2桁、そしてより好ましくは少なくとも3桁、高くなければならない。
【0028】
25℃で主に正孔伝導性を有する、本発明において用いられるポリマーの正孔移動度は、電界強度510V/mで飛行時間法により測定して、好ましくは少なくとも10ー4cm/Vsecである。この電界強度は、80nmの膜厚と4VのOLEDに相当する。
【0029】
主に正孔伝導性を有する、本発明で使用されるポリマーが、電子を伝導することもできる場合、25℃での電子移動度が電界強度510V/mで飛行時間法により測定して、好ましくは最大で10ー5cm/Vsecである。
【0030】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子はもちろん、他の電界強度、例えば、10〜1010V/mの範囲の電界強度、であっても動作することができる。
【0031】
ポリマー中の自由電荷キャリアの移動度は、当業者に公知の種々の方法で測定できる。本出願の目的のためには、飛行時間法が使用される(参照:「ゼログラフィー用有機感光体」Paul M.Borsenberger、1998、Marcel Dekker)。
【0032】
本出願の文脈において、電子伝導性もしくは主に電子伝導性を有する材料は、排他的に電子を、あるいは正孔と電子の両方を伝導することができる材料を意味するものと理解される。しかしながら、この材料中の電子の移動度は、正孔の移動度よりも少なくとも1桁、好ましくは少なくとも2桁、そしてより好ましくは少なくとも3桁高くなければならない。これらの材料は、低分子有機化合物、ポリマーまたはポリマーと低分子有機化合物との混合物であってもよく、好ましくはポリマーである。しかしながら、異なるポリマーの混合物および/または異なる低分子有機化合物の混合物を使用することもできる。さらに、正孔伝導性構造単位と電子伝導性構造単位の両方を有する共重合体を使用することができる。
【0033】
原則として、当業者に公知の任意の発光体が本発明の素子の発光層中における発光体として使用できる。
【0034】
好ましい態様では、発光体は、繰り返し単位としてポリマー中に、より好ましくは、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマー中に、組み込まれる。
【0035】
さらに好ましい態様では、発光体は、低分子、ポリマー、オリゴマー、デンドリマーもしくはそれらの混合物でありうるマトリックス材料中に混合される。
【0036】
好ましいのは、蛍光発光性および燐光発光性の化合物から選択された少なくとも1つの発光体を含んでなる発光層である。
【0037】
ここで、「発光体単位」または「発光体」という用語は、励起子を受けてまたは励起子の形成により発光を伴う放射崩壊が起こる単位または化合物に関する。
【0038】
発光体には2つの種類がある:蛍光発光性と燐光発光性の発光体である。「蛍光発光性発光体」という用語は、励起一重項状態からその基底状態への放射遷移を起こす材料もしくは化合物に関する。「燐光発光性発光体」という用語は、本発明において用いられているように、遷移金属を含む、発光性の材料もしくは化合物に関する。これらは、一般的に、発光がスピン禁制遷移、例えば、励起三重項および/または五重項からの遷移により起こる材料を含む。
【0039】
量子力学によれば、高スピン多重度を有する励起状態、例えば励起三重項状態から基底状態への遷移は禁止されている。しかしながら、重原子、例えば、イリジウム、オスミウム、白金またはユーロピウムの存在が、強いスピン軌道結合を確実にする。すなわち、励起した一重項および三重項が混合され、それにより、三重項が一定の一重項の特性を取得し、そして、一重項‐三重項混合物が非放射事象よりも速い放射崩壊の速度につながるとき、輝度は効率的であり得る。このタイプの発光は、バルド等によりNature395巻、151−154頁(1998)に報告されているように、金属錯体を用いて得ることができる。
【0040】
特に好ましいのは、蛍光発光性発光体から選択された発光体である。
【0041】
蛍光発光性発光体の多くの例はすでに公表されており、例えば、JP2913116BおよびWO2001/021729A1に開示されているような、例えばスチリールアミン誘導体、および例えば、WO2008/006449およびWO2007/140847Aに開示されているような、インデノフルオレン誘導体である。
【0042】
蛍光発光性発光体は、好ましくは、ポリ芳香族化合物(例えば、9,10−ジ(2−ナフチルアントラセン)およびその他のアントラセン誘導体)、テトラセン誘導体、キサンテン、ペリレン(例えば、2,5,8,11‐テトラ‐t‐ブチルペリレン)、フェニレン(例えば、4,4’‐(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)‐1,1’‐ビフェニル)、フルオレン、アリールピレン(US2006/0222886)、アリーレンビニレン(US5121029、US5130603)、ルブレン誘導体、クマリン、ローダミン、キナクリドン(例えば、Ν,Ν’‐ジメチルキナクリドン(DMQA))、ジシアノメチレンピラン(例えば、4‐(ジシアノエチレン)‐6‐(4‐ジメチルアミノスチリル‐2‐メチル)−4H‐ピラン(DCM))、チオピラン、ポリメチン、ピリリウムおよびチアピリリウム塩、ペリフランテン、インデノペリレン、ビス(アジニル)イミン−ホウ素化合物(US2007/0092753A1)、ビス(アジニル)メタン化合物、およびカルボスチリル化合物である。
【0043】
さらに好ましい蛍光発光性発光体は、CH Chen等の「有機エレクトロルミネッセンス材料の最近の開発」(Macromol.Symp.125巻、(1997)、1〜48頁)および「分子有機エレクトロルミネッセンス材料と素子の最近の進歩」(Mat.Sci.およびEng.R、39巻(2002)、143〜222頁)に記載されている。
【0044】
さらに好ましい蛍光発光性発光体は、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル、およびアリールアミンの類から選択される。
【0045】
モノスチリルアミンは、置換もしくは無置換の、1つのスチリル基と少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと理解される。ジスチリルアミンは、置換もしくは非置換の、2つのスチリル基と少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと理解される。トリスチリルアミンは、置換もしくは無置換の、3つのスチリル基と少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと理解される。テトラスチリルアミンは、置換もしくは無置換の、4つのスチリル基と少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと理解される。スチリル基は、より好ましくは、さらに置換されていてもよいスチルベンである。対応するホスフィンおよびエーテルは、アミンと同様に定義される。本出願の目的のために、アリールアミンもしくは芳香族アミンは、置換もしくは無置換の、窒素に直接結合された、3つの芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を含む化合物を意味するものと理解される。これらの芳香族もしくはヘテロ芳香族環系の少なくとも1つは、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環系であることが好ましい。これらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレナミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセナミンおよび芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンは、1つのジアリールアミノ基が、好ましくは9位で、アントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと理解される。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基が、好ましくは9、10位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと理解される。芳香族の、ピレナミン、ピレンジアミン、クリセナミンおよびクリセンジアミンはそれと同様に定義され、ここでピレン中のジアリールアミノ基は、好ましくは1位もしくは1、6位で結合する。
【0046】
さらに好ましい蛍光発光性発光体は、インデノフルオレンアミンおよびインデノフルオレンジアミン(例えば、WO2006/122630による)、ベンゾインデノフルオレンアミンおよびベンゾインデノフルオレンジアミン、(例えば、WO2008/006449による)およびジベンゾインデノフルオレンアミンおよびジベンゾインデノフルオレンジアミン、(例えば、WO2007/140847による)から選択される。
【0047】
スチリルアミンの類からの発光体の例は、置換もしくは非置換トリスチルベンアミン、またはWO2006/000388、WO2006/058737、WO2006/000389、WO2007/065549およびWO2007/115610に記載されているドーパントである。ジスチリルベンゼンおよびジスチリルビフェニル誘導体は、US5121029に記載されている。更なるスチリルアミン類は、US2007/0122656A1に見られる。
【0048】
特に好ましいスチリルアミン発光体およびトリアリールアミン発光体は、US7250532B2、DE102005058557A1、CN1583691A、JP08053397A、US6251531B1およびUS2006/210830Aに開示されているような、式(1)〜(6)で表される化合物である。
【化1】
【0049】
さらに好ましい蛍光発光性発光体は、例えば、EP1957606A1およびUS2008/0113101A1に開示されているような、トリアリールアミンの群から選択される。
【0050】
さらに好ましい蛍光発光性発光体は、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、ペリフランテン、インデンペリレン、フェナントレン、ペリレン(US2007/0252517A1)、ピレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(US4769292、US6020078、US2007/0252517A1)、ピラン、オキサゾン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピラジン、桂皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドンおよびキナクリドン(US2007/0252517A1)の誘導体から選択される。
【0051】
アントラセン化合物の中で、9,10−置換アントラセン、例えば、9,10−ジフェニルアントラセンおよび9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセンが特に好ましい。1,4−ビス(9’‐エチニルアントラセニル)ベンゼンも好ましいドーパントである。
【0052】
特に好ましいのは、青色蛍光発光性、緑色蛍光発光性および黄色蛍光発光性の発光体の群から選択される、発光層中の1つの発光体である。
【0053】
特に好ましいのは同様に、赤色蛍光発光性の発光体の群から選択される、発光層中の1つの発光体である。特に好ましい赤色蛍光発光性の発光体は、例えばUS2007/0104977A1に開示されているような、例えば式(7)で表されるペリレン誘導体の群から選択される。
【化2】
【0054】
特に好ましいのは同様に、燐光発光性発光体の群から選択される、発光層中の発光体である。
【0055】
燐光発光性発光体の例は、WO00/070655、WO01/041512、WO02/002714、WO02/015645、EP1191613、EP1191612、EP1191614およびWO2005/033244に開示されている。
【0056】
一般に、従来技術で用いられているような、また、有機エレクトロルミネッセンスの分野の当業者に知られているような、すべての燐光発光性錯体が好適であり、当業者は、発明的技法を要せずに、更なる燐光発光性錯体を使用することができよう。
【0057】
燐光発光性発光体は、好ましくは、式M(L)で表される金属錯体であってもよい(式中、Mは金属原子であり、Lは、出現毎に独立して、1つもしくは2つ以上の位置を介してMに結合しているか、もしくは配位している有機配位子であり、およびzは、1以上の整数、好ましくは1、2、3、4、5もしくは6であり、ならびにこれらの基は、必要に応じて、1つ以上の、好ましくは1つ、2つ、もしくは3つの位置を介して、好ましくは配位子Lを介してポリマーと結合している。)
【0058】
Mは、好ましくは遷移金属から選択される金属原子であり、好ましくは、VIII族の遷移金属、ランタニドまたはアクチニドから、より好ましくは、Rh、Os、Ir、Pt、Pd、Au、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Re、Cu、Zn、W、Mo、Pd、AgおよびRuから、そして最も好ましくは、Os、Ir、Ru、Rh、Re、Pd、およびPtから選択される。Mはまた、Znであってもよい。
【0059】
好ましい配位子は、2‐フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、または2−フェニルキノリン誘導体である。これらの化合物は各々、例えば、青色用の、フッ素もしくはトリフルオロメチル置換基で置換されていてもよい。副配位子は、好ましくは、アセチルアセトネートまたはピクリン酸である。
【0060】
適切な錯体で特に好ましいのは、例えば、US2007/0087219A1に開示されているような、式(8)で表される、四座配位子を有するPtもしくはPd錯体(この式中、R〜R14およびZ〜Zは、US2007/0087219A1に定義されたとおりである)、拡大した環系を有するPt−ポルフィリン錯体(US2009/0061681A1)、およびIr錯体である。該Ir錯体は、例えば、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン−Pt(II)、テトラフェニル−Pt(II)−テトラベンゾポルフィリン(US2009/0061681A1)、シス−ビス(2−フェニルピリジナート‐N,C2’)Pt(II)、シス−ビス(2−(2’‐チエニル)ピリジナート‐N,C3’)Pt(II)、シス−ビス(2−(2’‐チエニル)キノリナート‐N,C5’)Pt(II)、(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナート‐N,C2’)Pt(II)アセチルアセトネートまたはトリス(2−フェニルピリジナート‐N,C2’)Ir(III)(Ir(ppy)、緑色)、ビス(2−フェニルピリジナート‐N,C2)Ir(III)アセチルアセトネート(Ir(ppy)アセチルアセトネート、緑色、US2001/0053462A1、Baldo、Thompson等によるNature、403巻、(2000)、750〜753頁)、ビス(1−フェニルイソイソキノリナート‐N,C2’)(2−フェニルピリジナート‐N,C2’)Ir(III)、ビス(2−フェニルピリジナート‐N,C2’)(1−フェニルイソキノリナート‐N,C2’)Ir(III)、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナート‐N,C3’)Ir(III)アセチルアセトネート、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナート‐N,C2’)Ir(III)ピコリナート(Firpic、青色)、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナート‐N,C2’)Ir(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート、トリス(2−(ビフェニル−3−イル)−4−tert−ブチルピリジン)Ir(III)、(ppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、(45ooppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、2‐フェニルピリジン−Ir錯体の誘導体、例えば、Ir(III)ビス(2−フェニルキノリル‐N,C2’)アセチルアセトネート(PQIr)、トリス(2−フェニルイソキノリナート‐N,C)Ir(III)(赤色)、ビス(2−(2’−ベンゾ[4,5‐a]チエニル)ピリジナート‐N,C3)Irアセチルアセトネート([Btp2lr(acac)]、赤色、Adachi等によるAppl.Phys.Lett.78巻(2001)、1622〜1624頁)である。
【化3】
【0061】
同様に、三価のランタニド錯体、例えば、Tb3+およびEu3+(J.Kido等によるAppl.Phys.Lett.65巻(1994)、2124頁、Kido等によるChem.Lett.657巻,1990、US2007/0252517A1)、またはマレオニトリルジチオレートを有するPt(II)、Ir(I)、Rh(I)の燐光発色性錯体(Johnson等、JACS、105巻、1983、1795頁)、Re(I)‐トリカルボニルジイミン錯体(特に、Wrighton、JACS、96巻、1974、998頁)、シアノ配位子およびビピリジルもしくはフェナントロリン配位子を有するOs(II)錯体(Ma等、Synth.Metals、94巻、1998、245頁)またはAlqも好適である。
【0062】
さらに、三座配位子を有する燐光発光性発光体が、US6824895およびUS7029766に記載されている。赤色発光の燐光発色性錯体がUS6835469及びUS6830828に開示されている。
【0063】
さらに、特に好ましい燐光発光性発光体は、次の式(9)および(10)で表される化合物、および、例えば、US2001/0053462A1およびWO2007/095118A1に記載されている更なる化合物である。
【化4】
【0064】
更なる誘導体が、US7378162B2、US6835469B2およびJP2003/253145Aに記載されている。
【0065】
特に好ましいのは、有機金属錯体の群から選択される、発光層中の発光体である。
【0066】
本明細書で述べた金属錯体に加えて、本発明に係る好適な金属錯体は、遷移金属、希土類元素、ランタニドおよびアクチニドから選択される。金属は、好ましくは、Ir、Ru、Os、Eu、Au、Pt、Cu、Zn、Mo、W、Rh、PdおよびAgから選択される。
【0067】
発光層に使用される、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマー中の発光体構造単位の割合は、好ましくは0.01〜20モル%の範囲で、より好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、さらに一層好ましくは1〜8モル%の範囲内で、特別には1〜5モル%の範囲である。
【0068】
発光層に使用される共重合体の正孔伝導性は同様に、適切な構造単位を選択することによって得られる。正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーは、好ましくはポリマー骨格を構成する少なくとも1つの繰り返し単位を有する、正孔輸送材料(HTM)の群から選択される、少なくとも1つの繰り返し単位を含む。
【0069】
本発明に従い、当業者に公知の任意のHTMが正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマー中の繰り返し単位として使用できる。このようなHTMは、好ましくは、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリン、ならびにそれらの異性体および誘導体から選択される。HTMは、より好ましくは、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニンおよびポルフィリンから選択される。
【0070】
好適な繰り返しHTM単位は、フェニレンジアミン誘導体(US3615404)、アリールアミン誘導体(US3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP−A−56−46234)、多環式芳香族化合物(EP1009041)、ポリアリールアルカン誘導体(US3615402)、フルオレノン誘導体(JP−A−54−110837)、ヒドラゾン誘導体(US3717462)、スチルベン誘導体(JP−A−61−210363)、シラザン誘導体(US4950950)、ポリシラン(JP−A−2−204996)、アニリン共重合体(JP−A−2−282263)、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリピロール、ポリアニリン、および更なる共重合体、ポルフィリン化合物(JP−A−63−2956965)、芳香族ジメチリデン系化合物、カルバゾール化合物(例えばCDBP、CBP、mCP)、芳香族第三級アミンおよびスチリルアミン化合物)(US4127412)、ならびにトリアリールアミン単量体(US3180730)である。好ましくは、トリアリールアミノ基がポリマー中に存在する。
【0071】
少なくとも2つの第三級アミン単位を含む芳香族第三級アミン(US4720432およびUS5061569)が好ましく、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)(US5061569)またはMTDATA(JP−A−4−308688)、N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニル)ジアミノビフェニレン(TBDB)、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン(TAPPP)、1,4−ビス[2−[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル(TTB)、TPD、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’’’−ジアミノ−1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’−クオーターフェニルであり、また同様に、カルバゾール単位を含む第三級アミンが好ましく、例えば、4(9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ベンゼンアミン(TCTA)である。同様に、好ましいのは、US2007/0092755A1によるヘキサアザトリフェニレン化合物である。
【0072】
特に好ましいのは、下記の式(11)〜(16)で表されるトリアリールアミンであり、これらは置換されていてもよい。この種の化合物は、例えば、EP1162193A1、EP650955A1、Synth.Metals1997、91(1〜3)巻、209頁、DE19646119A1、WO2006/122630A1、EP1860097A1、EP1834945A1、JP08/053397A、US6251531B1およびWO2009/041635に開示されている。
【化5】
【0073】
さらに好ましいHTM単位は、例えば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール−p−フェニレンジアミン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフラン誘導体であり、さらに加えてO−、S−またはN−含有複素環である。
【0074】
非常に好ましいのは、次の式(17)で表される繰り返しHTM単位である。
【化6】
(式中、
Arは、同一であるか異なり、異なる繰り返し単位においては独立して、単結合または任意に置換された単環式もしくは多環式のアリール基であり、
Arは、同一であるか異なり、異なる繰り返し単位においては独立して、任意に置換された単環式もしくは多環式のアリール基であり、
Arは、同一であるか異なり、異なる繰り返し単位においては独立して、任意に置換された単環式もしくは多環式のアリール基であり、そして
mは、1、2または3である。)
【0075】
式(17)で表される繰り返し単位は、好ましくは、次の式(18)〜(20)から選択される。
【化7】
(式中、
Rは、出現毎に同一でも異なっていてもよく、H、置換あるいは非置換の、芳香族もしくは複素芳香族基、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、シリル、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基およびヒドロキシル基から選択され、
rは、1、2、3または4であり、かつ
sは、0、1、2、3、4または5である。)
【0076】
さらに好ましい態様において、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーは、次の式(21)で表される、少なくとも1つの繰り返し単位を含む。
【化8】
(式中、
およびTは、互いに独立して、チオフェン、セレノフェン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、アニリン(これらはいずれも任意にRで置換される)から選択され、
は、出現毎に互いに独立して、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、SCN、C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、SH、SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意に置換されたシリル、または、1〜40個のC原子を有し、かつ任意に置換され、また任意に1個以上のヘテロ原子を含む、カルビルもしくはヒドロカルビルから選択され、
ArおよびArは、互いに独立して、単環式もしくは多環式の、アリールもしくはヘテロアリール(これらは、任意に置換されており、また、隣接するチオフェンもしくはセレノフェン基の一方あるいは両方に2,3−位で任意に縮合している)であり、
cとeは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、ここで、1<c+e≦6を満たし、かつ
dとfは、互いに独立して、0、1、2、3または4である。)
【0077】
基TおよびTは、好ましくは、次のものから選択される。
【化9】
(式中、
とRは、式(18)〜(20)におけるRと同じ定義であるとみなし得る)。
【0078】
式(21)で表される好ましい単位は、次の式からなる群から選択される。
【化10】
(式中、
は、式(18)〜(20)におけるRと同じ定義であるとみなし得る)。
【0079】
発光層に使用される、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマー中のHTM構造単位の割合は、好ましくは10〜99モル%の範囲で、より好ましくは20〜80モル%の範囲で、そして最も好ましくは30〜60モル%の範囲である。
【0080】
正孔伝導性の構造単位に加えて、発光層に用いられるポリマーは、好ましくは、ポリマーの骨格を形成する更なる構造単位を有する。
【0081】
好ましくは、ポリマー骨格を形成する構造単位は、6〜40個のC原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族構造を含む。これらは、例えば、4,5−ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10−テトラヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体(例えば、US5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に記載される)、9,9’−スピロビフルオレン誘導体(例えば、WO2003/020790A1に記載される)、9,10−フェナントレン誘導体(例えば、WO2005/104264A1に記載される)、9,10−ジヒドロフェナントレン誘導体(例えば、WO2005/014689A2に記載される)、5,7−ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体およびシス−,トランス−インデノフルオレン誘導体(例えば、WO2004/041901A1およびWO2004/113412A2に記載される)、およびビナフチレン誘導体(例えば、WO2006/063852A1に記載される)、ならびに加えて、例えば、WO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1、WO2005/033174A1、WO2003/099901A1およびDE102006003710に記載される単位である。
【0082】
特に好ましい、ポリマー骨格を形成する構造要素は、例えば、US5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に記載されているようなフルオレン誘導体;例えば、WO2003/020790A1に記載されているようなスピロビフルオレン誘導体;例えば、WO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1に記載されているようなベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレンおよびベンゾチオフェンならびにそれらの誘導体から選択される。
【0083】
非常に特に好ましい、ポリマー骨格を形成する構造要素は、次の式(22)で表される単位である。
【化11】
(式中、
A、BおよびB’は、互いに独立して、また、出現毎に互いに独立して、2価の基であり、好ましくは、−CR−、−NR−、−PR−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CS−、−CSe−、−P(=O)R−、−P(=S)R−および−SiR−から選ばれ、
およびRは、互いに独立して、同一であるか異なり、H、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、SCN、C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意に置換されたシリル、または、1〜40個のC原子を含み、かつ任意に置換され、また任意に1個以上のヘテロ原子を含む、カルビルもしくはヒドロカルビルから選ばれ、RおよびR基は、それらが連結するフルオレン部分と共にスピロ基を任意に形成し、
Xは、ハロゲンであり、
とR00は、互いに独立して、Hまたは、任意に1個以上のヘテロ原子を含む、任意に置換されたカルビルもしくはヒドロカルビル基であり、
gは、それぞれ独立して、0または1であり、同じ副単位中のそれぞれ対応するhは、0および1の他方であり、
mは、1以上の整数であり、
ArとArは、互いに独立して、単環式もしくは多環式の、アリールもしくはヘテロアリールであり、これらは任意に置換されており、インデノフルオレン基の7,8−位もしくは8,9−位で任意に縮合しており、そして
aとbは、互いに独立して、0または1である。)
【0084】
基とR基が、それらが連結するフルオレン基と共にスピロ基を形成する場合、その構造は、好ましくは、スピロビフルオレンである。
【0085】
式(22)で表される構造単位は、好ましくは、次の式(23)〜(27)から選択される。
【化12】
(式中、
は、式(22)で定義される通りであり、rは、0、1、2、3または4であり、Rは、Rの定義の一つであるとみなし得る。)
【0086】
好ましくは、Rは、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NR00、任意に置換されたシリル、4〜40個、好ましくは、6〜20個のC原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基、または、1〜20個、好ましくは、1〜12個のC原子を有する直鎖、分岐もしくは環状の、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシであり、ここで、1個以上のH原子は、任意に、FまたはClで置き替えられ、また、R、R00およびXは、上記で定義したとおりである。
【0087】
特に好ましい、式(22)で表される構造単位は、次の式(28)〜(31)から選択される。
【化13】
(式中、
Lは、H、ハロゲン、または1〜12個のC原子を有する、直鎖もしくは分岐の、任意にフッ素化されたアルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくは、H、F、メチル、i−プロピル、t−ブチル、n−ペントキシまたはトリフルオロメチルであり、そして
L’は、1〜12個のC原子を有する、直鎖もしくは分岐の、任意にフッ素化されたアルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくは、n−オクチルまたはn−オクチルオキシである。
【0088】
本発明の好ましい態様において、発光層中のポリマーは、少なくとも1つの発光構造単位、少なくとも1つの正孔輸送単位および少なくとも1つの、ポリマー骨格を形成する構造単位を有する共役ポリマーである。
【0089】
本明細書中で、「共役ポリマー」とは、主鎖に、spハイブリダイゼーションおよび/または任意にspハイブリダイゼーションを有するC原子を主として持つポリマー(ここで、C原子の一部はヘテロ原子で置き換えられていることができる)を意味するものと理解される。これの最も単純なケースは、炭素単結合と二重結合(または三重結合)を交互に有する主鎖、またはフェニレンラジカルで構成される主鎖を含む。この文脈において「主として」は、発生する欠陥により、主鎖での共役が妨げられているポリマーも含まれることを意味する。共役ポリマーは、主鎖にヘテロ原子を含有する単位を有することができ、例えば、共役が部分的にN、O、PまたはS原子を介している、アリールアミン、アリールホスフィン、もしくは複素環、または共役が部分的に金属原子を介している有機金属錯体である。従って、共役ポリマーは、最も広い意味で理解されるべきである。これらは、例えば、ランダムポリマー、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーであり得る。
【0090】
非常に特に好ましい、ポリマー骨格を形成する構造単位は、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランおよびそれらの誘導体から選択される。
【0091】
正孔輸送単位を含む共役ポリマーの例は、WO2007/131582A1およびWO2008/009343A1に開示されている。
【0092】
金属錯体を含む共役ポリマーおよびそれらの合成法は、EP1138746B1およびDE102004032527A1に開示されている。
【0093】
本発明のさらに好ましい態様では、発光層中のポリマーは、非共役もしくは部分共役ポリマーである。
【0094】
より好ましくは、中間層中の非共役もしくは部分共役ポリマーは、非共役ポリマー骨格構造単位を含む。
【0095】
この非共役ポリマー構造単位は、好ましくは、例えばWO2010/136110A1に開示されているような、次の式(32)および(33)で表されるインデノフルオレン構造単位から選択される。
【化14】
(式中、
XおよびYは、互いに独立して、H、F、C1〜40−アルキル基、C2〜40−アルケニル基、C2〜40−アルキニル基、任意に置換されたC6−40−アリール基および任意に置換された、5〜25員のヘテロアリール基からなる群から選択される)
【0096】
さらに好ましい非共役ポリマー骨格構造単位は、例えばWO2010/136111A1に開示されているような、次の式(34a)〜(37d)で表される、フルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレンおよびインデノフルオレン誘導体から選択される。
【化15】
(式中、
R1〜R4は、式(32)および(33)におけるXおよびYと同じ定義であるとみなし得る。)
【0097】
発光層に使用される、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマー中でポリマー骨格を形成する構造単位の割合は、好ましくは10〜99モル%の範囲で、より好ましくは20〜80モル%の範囲で、そして最も好ましくは30〜60モル%の範囲である。
【0098】
本発明の電子素子は、電子伝導性もしくは主に電子伝導性を持つ電子輸送層(ETL)を有する。この特性は、適切な電子輸送材料をETL層で適切な濃度で使用することにより得られる。
【0099】
本発明によれば、当業者に知られている任意の電子輸送材料(ETM)は、低分子化合物として、または好ましくは、電子輸送層のポリマー中の繰り返し単位として使用することができる。適当なETMは、好ましくは、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン、トリアリールボラン、ならびにそれらの異性体および誘導体である。
【0100】
好適なETM構造単位は、8−ヒドロキシキノリン(例えば、Liq、Alq、Gaq、Mgq、Znq、Inq、Zrq)の金属キレート、Balq、4−アザフェナントレン−5−オル/Be錯体(US5529853A、例えば、式7)、ブタジエン誘導体(US4356429)、ヘテロ環蛍光増白剤(US4539507)、ベンズアゾール(例えば、1,3,5−トリス(2−N−フェニルベンゾイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)(US5766779、式8)、1,3,5−トリアジン誘導体(例えば、US6229012B1、US6225467B1、DE10312675A1、WO98/04007A1およびUS6352791B1)、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロビフルオレン、デンドリマー、テトラセン(例えば、ルブレン誘導体)、1,10−フェナントロリン誘導体(JP2003/115387、JP2004/311184、JP2001/267080、WO2002/043449)、シルアシルシクロペンタジエン誘導体(EP1480280、EP1478032、EP1469533)、ピリジン誘導体(JP2004/200162コダック)、フェナントロリン(例えば、BCPおよびBphen)、およびビフェニルもしくは他の芳香族基を介して結合した多くのフェナントロリン(US2007/0252517A1)またはアントラセンに結合したフェナントロリン(US2007/0122656A1、例えば、式9および10)、1,3,4−オキサジアゾール(例えば、式11)、トリアゾール(例えば、式12)、トリアリールボラン、ベンゾイミダゾール誘導体およびその他のN−ヘテロ環化合物(US2007/0273272A1参照)、シルアシルシクロペンタジエン誘導体、ボラン誘導体、Ga−オキシノイド錯体である。
【0101】
好ましいETM構造単位は、例えば、WO2004/093207A2およびWO2004/013080A1に開示されているような、C=X基(ここで、Xは、O、SまたはSe、好ましくはOである)を有する、式(38)で表される単位から選択される。
【化16】
【0102】
より好ましくは、式(38)で表される構造単位は、式(38a)、(38b)および(38c)で表される、フルオレンケトン、スピロビフルオレンケトンまたはイインデノフルオレンケトンを有する。
【化17】
(式中、
RおよびR1〜8は、それぞれ互いに独立して、水素原子、環に6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族環式炭化水素基、5〜50個の環原子を有する置換もしくは無置換の芳香族複素環基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアルキル基、環に3〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアルコキシ基、環に6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアラルキル基、環に5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアリールオキシ基、環に5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアリールチオ基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基である。RとR、RとR、RとR、RとRの各ペアの1つ以上は、必要に応じて環系を形成し、そして
rは、0、1、2、3または4である。)
【0103】
さらに好ましいETMの構造単位は、例えば、US2007/0104977A1に開示されているような、式(39)で表される、イミダゾール誘導体およびベンゾイミダゾール誘導体からなる群から選択される。
【化18】
(式中、
Rは、水素原子、置換基を有していてもよいC6〜60−アリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよいC1〜20−アルキル基、または置換基を有していてもよいC1〜20−アルコキシ基であり、
mは、0〜4の整数であり、
は、置換基を有していてもよいC6〜60−アリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよいC1〜20−アルキル基、または置換基を有していてもよいC1〜20−アルコキシ基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよいC6〜60−アリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよいC1〜20−アルキル基、または置換基を有していてもよいC1〜20−アルコキシ基であり、そして
Lは、置換基を有していてもよいC6〜60−アリーレン基、置換基を有していてもよいピリジニレン基、置換基を有していてもよいキノリニレン基、または置換基を有してもよいフルオレニレン基、そして
Arは、置換基を有していてもよいC6〜60−アリール基、置換基を有していてもよいピリジニル基、または置換基を有していてもよいキノリニル基である。)
【0104】
さらに、例えば、US2008/0193796A1に開示されているような、(1−もしくは2−ナフチル、および4−もしくは3−ビフェニルで置換された)2,9,10−置換アントラセンまたは2つのアントラセン単位を含む分子が好ましい。
【0105】
さらに好ましい態様では、ETM材料は、次の式(40)〜(45)で表されるヘテロ芳香族環系から選択される。
【化19】
【0106】
例えば、US6878469B2、US2006/147747AおよびEP1551206A1に開示されているような、式(46)〜(48)で表されるアントラセンベンゾイミダゾール誘導体が特に好ましい。
【化20】
【0107】
電子輸送層に特に好ましく用いられる共重合体は、ベンゾフェノン−、トリアジン−、イミダゾール−、もしくはベンゾイミダゾール‐誘導体、または置換されていてもよいペリレン単位から派生する、電子伝導性を有する構造単位を含む。これらの例は、ベンゾフェノン単位、アリールトリアジン単位、ベンゾイミダゾール単位およびジアリールペリレン単位である。
【0108】
次の式(49)〜(52)で表される構造単位から選択される、電子伝導性を有する構造単位もしくは化合物を使用することが、特に好ましい。
【化21】
(式中、
〜Rは、式(38)におけるRと同じ定義であるとみなし得る。)
【0109】
電子伝導性もしくは主に電子伝導性を有する電子輸送層中のポリマーにおける、電子伝導性を有する材料の割合または電子伝導性を有する構造単位の割合は、好ましくは10〜99モル%の範囲で、より好ましくは20〜80モル%の範囲で、そして最も好ましくは30〜60モル%の範囲である。
【0110】
好ましい態様では、電子伝導性材料は、構造単位としてポリマー中に組み込まれており、従って、電子伝導性ポリマーである。
【0111】
好ましくは、電子伝導性ポリマーは、発光層中のポリマーに関連して上述のように、ポリマー骨格構造単位から選択される少なくとも1つの更なる構造単位を有する。
【0112】
電子伝導性ポリマー中の、少なくとも1つのポリマー骨格の構造単位の割合は、好ましくは10〜99モル%の範囲で、より好ましくは20〜80モル%の範囲で、そして最も好ましくは30〜60モル%の範囲である。
【0113】
非常に特に好ましい、電子伝導性ポリマー中のポリマー骨格を形成する構造単位は、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、ジベンゾチオフェンおよびジベンゾフラン、ならびにそれらの誘導体から選択される。
【0114】
好ましい態様では、電子伝導性ポリマーは、共役ポリマーである。特に好ましい、共役ポリマーのポリマー骨格構造単位は、式(23)〜(31)で表される上記の構造単位から選択される。
【0115】
本発明のさらに好ましい態様では、電子伝導性ポリマーは、非共役または部分共役ポリマーである。特に好ましい、非共役または部分共役ポリマーのポリマー骨格構造単位は、式(32)〜(37d)で表される上記の構造単位から選択される。
【0116】
さらに好ましい態様では、電子伝導層は、上述のように、排他的に低分子の電子輸送材料を含んでなる。
【0117】
さらに好ましい態様では、電子伝導層は、少なくとも1つの低分子量の電子輸送材料とポリマーとの混合物を含んでなる。このポリマーのポリマー骨格構造単位の特に好ましいのは、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレンおよびジヒドロフェナントレン、ならびにそれらの誘導体から選択される。さらに、このポリマーは、上述のように電子伝導性繰り返し単位も有していることができる。
【0118】
電子伝導性構造単位を含むポリマーおよび対応する合成の例は、例えば、US2003/0170490A1において、電子伝導性構造単位としてトリアジン単位に対して開示されている。
【0119】
本願はさらに、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性のポリマーと少なくとも1種の溶媒を含む調合物を提供する。
【0120】
本発明の電子素子は、更なる層を付加的に具備してなることもでき、それは、正孔注入層、発光層、電子ブロック層、正孔ブロック層、励起子発生層および、特に、電子注入層から選択することができる。
【0121】
好ましくは、本発明に係る発光層の少なくとも1つは、溶液から塗布される。
【0122】
特に好ましい態様では、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の、少なくとも1つの発光層と少なくとも1つの電子輸送層の両層は、溶液から塗布される。
【0123】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様は、以下に述べる構造を有し、これは、トップエミッション型ディスプレイに特に有利である。
−基板、これは通常、ガラスもしくはプラスチックからなり、またはAM−ディスプレイの背面であり、
−カソード、これは通常、金属、金属の組み合せもしくは低仕事関数を有する金属合金の組み合わせが使用され、例えば、Ca、Ba、Cs、Mg、Al、In、またはMg/Agであり、
−必要に応じて、電子注入層、ここで、この層は後記のHBL層および/またはETL層と必要に応じて組み合わされており、
−少なくとも1つの電子輸送層(ETL)、これは第一に電子を輸送し、第二に正孔をブロックすることが意図されており、
−少なくとも1つの発光層、これは上記の材料(EML)からなり、
−必要に応じて、正孔注入層(HIL)、そして
−透明アノード、これは通常、酸化インジウムスズ(「ITO」)からなる。
【0124】
好ましい態様では、空気中で安定なカソードが、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子に用いられる。このような空気中で安定なカソードは、Hague等によりAdv.Mater.2007、19巻、683−687頁に報告されているようなTiO、Brandley等によりAdv.Mater.DOI:10.1002/adma.200802594に報告されているようなZrO、またはBolink等によりAdv.Mater.2009、21巻、79〜82頁に報告されているようなZnOである。
【0125】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の少なくとも1つの発光層に関連して既に上述したように、本出願はさらに、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するエレクトロルミネッセンスポリマーを提供する。
【0126】
好ましくは、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有するポリマーは、少なくとも1つの正孔輸送構造単位と少なくとも1つの発光構造単位とを有し、ここで、少なくとも1つの正孔輸送構造単位と少なくとも1つ発光構造単位とは、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の少なくとも1つの発光層のための発光性ポリマーに関連して既に上述した構造単位から選択することができる。
【0127】
より好ましくは、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明に係る材料は、既に上述したポリマー骨格構造単位から選択することのできる、少なくとも1つのポリマー骨格構造単位を付加的に有する。
【0128】
非常に特に好ましくは、ポリマー骨格を形成する構造単位は、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランおよびそれらの誘導体から選択される。
【0129】
最も好ましくは、正孔輸送構造単位は、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、および式(18)〜(21)で表される上記の構造単位から選択される。
【0130】
正孔輸送ポリマーの例は、WO2007/131582A1およびWO2008/009343Aに開示されている。
【0131】
金属錯体を含むポリマーおよびその合成法の例は、EP1138746B1およびDE102004032527A1に開示されている。
【0132】
さらに好ましい態様では、本発明に係るポリマーは、非共役もしくは部分共役ポリマーである。
【0133】
特に好ましい、本発明に係る、非共役もしくは部分共役ポリマーは、非共役のポリマー骨格構造単位を含む。
【0134】
非共役のポリマー骨格構造単位は、好ましくは、式(32)および(33)で表される上記のインデノフルオレン構造単位から選択される。
【0135】
さらに好ましい非共役ポリマー骨格構造単位は、上記のフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレンおよび式(34a)〜(37d)で表されるインデノフルオレン誘導体から選択される。
【0136】
正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマー中でポリマー骨格構造単位の割合は、好ましくは10〜99モル%の範囲で、より好ましくは20〜80モル%の範囲で、そして最も好ましくは30〜60モル%の範囲である。
【0137】
正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマー中で正孔輸送構造単位の割合は、好ましくは10〜99モル%の範囲で、より好ましくは20〜80モル%の範囲で、そして最も好ましくは30〜60モル%の範囲である。
【0138】
正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマー中で発光性構造単位の割合は、好ましくは0.01〜20モル%の範囲で、より好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、そして最も好ましくは1〜5モル%の範囲である。
【0139】
上述のように、本出願は、また、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマーを少なくとも1つ含んでなる混合物を提供する。
【0140】
本出願はさらに、上記のように、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマーを少なくとも1つと少なくとも1種の溶媒とを含んでなる調合物を提供する。
【0141】
好ましい態様では、調合物は均一な溶液であり、すなわち、唯一の均一相が存在する。
【0142】
さらなる態様では、調合物は、エマルジョンであり、すなわち、連続相と不連続相の両方が存在する。
【0143】
好ましくは、少なくとも1種の溶媒は、有機溶媒の群から選択される。より好ましくは、有機溶媒は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、モルホリン、トルエン、o‐キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラリン、デカリン、インダンおよびそれらの混合物から選択される。
【0144】
調合物中の、本発明に係るポリマーの濃度は、好ましくは0.001〜50重量%の範囲で、より好ましくは0.01〜20重量%の範囲で、一層より好ましくは0.1〜10重量%の範囲で、そして特別には0.1〜5重量%の範囲である。必要に応じて、調合物は、例えば、WO2005/055248A1に記載されているように、レオロジー特性を調整することができるように、少なくとも1つの結合剤を付加的に含んでなることもできる。
【0145】
本出願はまた、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマーの、または正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマーを含んでなる混合物の、電子素子における使用を提供する。
【0146】
本出願は同様に、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマーを含んでなる電子素子を提供する。
【0147】
電子素子は、好ましくは、2、3、4、5または6つの電極を有する。
【0148】
特に好ましい態様では、電子素子は、2つの電極:1つのアノードと1つのカソードを有する。
【0149】
本発明に係る電子素子は、光を放出する、光を収集する、または光を検出するために使用することができる。従って、本出願は、光を放出する(フォトダイオード)、光を収集する(太陽電池)および/または光を検出する(センサー)各電子素子を提供する。
【0150】
好ましくは、電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、有機発光電気化学電池、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機レーザーダイオード(O−laser)、有機集積回路(O−IC)、RFID(無線周波数識別)タグ、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性の基板もしくはパターン、光伝導体、電子写真素子、有機発光トランジスタ(OLET)、有機スピントロニクス素子および有機プラズモン発光素子(OPED)から選択される。
【0151】
Koller等によりNature Photonics、2008、2巻、684〜687頁に記載されているような、有機プラズモン発光素子(OPED)は、電極の少なくとも1つが発光層の表面プラズモンと相互作用を持つことができなければならない点を除いて、OLEDと同じである。好ましくは、OPEDは、ナノダイヤモンドイドまたは正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明に係るポリマーを含んでなる。
【0152】
電子写真素子は、基板、電極および該電極上の電荷輸送層、さらに必要に応じて電極と電荷輸送層の間に電荷発生層を含んでなる。この素子および可能なバリエーションならびにそれらに使用される材料に関する詳細については、適切な文献が参照される(Paul M.Borsenberger&D.S.Weiss編集による「ゼログラフィー用有機感光体」、Marcel Dekker,Inc.(1998))。好ましくは、そのような素子は、ナノダイヤモンドイドまたは正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明のポリマーを、より好ましくは電荷輸送層中に、含んでなる。
【0153】
好ましい有機スピントロニクス素子は、Z.H.Xiong等によりNature、2004、427巻、821頁に記載されているように、いわゆる「スピンバルブ」素子であって、2つの強磁性電極およびこの2つの強磁性電極の間の、少なくとも1つの有機層を含んでなり、ここで、有機層の少なくとも1つは、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明に係るポリマーである。強磁性電極は、Co、Ni、Feもしくはそれらの合金、またはReMnOもしくはCrOからなり、ここで、Reは、希土類元素である。
【0154】
有機発光電気化学電池(OLEC)は、Pei&HeegerによりScience 1995、269巻、1086〜1088頁に最初に記載されたように、2つの電極およびその中間に電解質と蛍光種の混合物もしくはブレンドを含む。好ましくは、そのような素子中には、ナノダイヤモンドイドまたは正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する、本発明に係るポリマーが用いられる。
【0155】
色素増感太陽電池(DSSC)とも呼ばれる色素太陽電池は、O‘Regan&GraetzelによりNature 1991、353巻、737〜740頁に最初に記載されたように、作用電極、二酸化チタン(TiO)のナノ多孔性薄層、感光性色素の薄層、電解質および対電極を含む。液体電解質は、例えば、Nature 1998、395巻、583〜585頁に記載されるように、固体の正孔輸送層で置き換えることができる。
【0156】
より好ましくは、本発明の電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)である。
【0157】
OLEDは、通常、次の層構造を持っている。
−必要に応じて、第一の基板、
−アノード、
−必要に応じて、正孔注入層(HIL)、
−必要に応じて、正孔輸送層(HTL)および/または電子ブロック層(EBL)、
−活性層、これは電気的または光学的刺激により励起子を生成し、
−必要に応じて、電子輸送層(ETL)および/または正孔ブロック層(HBL)、
−必要に応じて、電子注入層(EIL)、
−必要に応じて、少なくとも1つのナノダイヤモンドイドと必要に応じて少なくとも1つの有機機能性材料を含む層、
−カソード、そして
−必要に応じて、第二の基板。
【0158】
上記層構造の配列順は、図示されている。他の層配列も可能である。上記構成中の活性層によって、異なる電子素子を得ることもできる。
【0159】
第一の好ましい態様では、活性層において、アノードとカソードとの間の電圧印加による電気励起が、放射減衰により発光する励起子を生成する。これは、発光素子である。
【0160】
更なる態様では、活性層において、光吸収が励起子を発生させ、かつ自由電荷輸送が励起子の解離により生成される。これは、光電池または太陽電池である。
【0161】
以下の実施例は、本発明を限定することなく詳細に説明することを意図している。特に、各実施例の基本を形成する、規定の化合物に対して、ここに記載される特徴、特性および利点は、反対のことがどこかで述べられていない限り、詳細には言及されていないが特許請求項の保護範囲でカバーされる他の化合物にも適用される。
【0162】
実施例
A)ポリマーの調整
WO03/048225に記載されているように、次の二つのポリマーが、スズキカップリングにより調製される。
【0163】
実施例1:
ポリマー1は、本質的に正孔輸送特性を有し、かつ、以下の組成を有する共重合体である。
【化22】
【0164】
実施例2:
ポリマー2は、本質的に電子輸送特性を有し、かつ、以下の組成を有する共重合体である。
【化23】
【0165】
B)OLEDの製造
比較例3:
OLED1の製造
OLED1は、ポリマー1が発光層中で発光体として使用されている、1層素子である。次のようにOLED1が製造される。
1)スピンコート法により酸化インジウムスズで被覆されたガラス基板上への、厚さ80nmのPEDOT層(バイトロンP AI 4083)の成膜。
2)スピンコーティングによる、1重量%のポリマー濃度を有するトルエン溶液からの、厚さ60nmのポリマー1層の成膜。
3)不活性ガス下、10分間、180℃での素子の焼成。
4)真空蒸着による、発光層上へのカソード(8nmBa/150nmAg)の成膜。
5)素子の封止。
【0166】
実施例4:
OLED2の製造
OLED2は、ポリマー1が発光層中で発光体として使用され、かつポリマー2が電子輸送層中で電子輸送材料として使用されている、2層素子である。次のようにOLED2が製造される。
1)スピンコート法により酸化インジウムスズで被覆されたガラス基板上への、厚さ80nmのPEDOT層(バイトロンP AI 4083)の成膜。
2)スピンコーティングによる、1重量%のポリマー濃度を有するトルエン溶液からの、厚さ20nmのポリマー1層の成膜。
3)不活性ガス下、60分間、180℃での素子の焼成。
4)スピンコーティングによる、1重量%のポリマー濃度を有するトルエン溶液からの、厚さ60nmのポリマー2層の成膜。
5)不活性ガス下、10分間、180℃での素子の焼成。
6)真空蒸着による、発光層上へのカソード(8nmBa/150nmAg)の成膜。
7)素子の封止。
【0167】
比較例5:
OLED3の製造
OLED3は、ポリマー2が発光層中で発光体として使用されている、1層素子である。OLED3を製造するための製造工程は、工程2においてポリマー1の代わりに、ポリマー2が使用されていることを除き、OLED1の製造ためのものと同じである。
【0168】
製造されたOLED素子、OLED1とOLED3は、図2に示された構造を有し、そして本発明に係るOLED素子、OLED2は、図1に示された構造を有している。
【0169】
C)OLEDの特性評価
図3は、3つのOLED1〜3のELスペクトルを示している。図3で示されるように、OLED1とOLED2のスペクトルはほぼ同じであり、このことは、当該2つのOLEDにおける発光が主に正孔伝導性のポリマーP1に由来していることを示している。
【0170】
製造した3つのOLED3の特性が表1に要約されている。表1に示すように、1層素子であるOLED1および3と比較して、主に正孔伝導性のポリマー1の発光層中での使用および主に電子伝導性のポリマー2の電子輸送層中での使用が、すべての測定された特性における顕著な改善をもたらしている。3つのOLEDの基本的な特性は、図4〜7に付加的に示されている。
【0171】
図4に示すように、OLED1の「正孔電流」は非常に高い、すなわち、正孔が予め電子と再結合することなくカソードに到達する。このため、このOLEDの効率は非常に低く、従って、寿命の判定が不可能である。
【0172】
上記の結果が示しているように、驚くべきことに、正孔伝導性もしくは主に正孔伝導性を有する本発明に係るポリマーを用いて、優れた特性を有するエレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
【0173】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0174】
図1】ETLを有するOLED
図2】単層OLED
図3】OLED1〜3のELスペクトル
図4】OLED1〜3のVI曲線
図5】OLED1〜3のVL曲線
図6】OLED2および3の効率対輝度
図7】OLED2および3の寿命曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7