【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によると、本発明の目的のうちの1つ以上は、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することによって実現され、ここで、管状格納ケースパーツは、異なる材料の層から構成されており、管状格納ケースパーツの異なる材料の層は、互いの上にらせん状に巻かれた連続層であることを特徴とし、連続層は、構造材料の第一層および1つまたは2以上の異なる材料から構成される1つ以上の連続した層を含み、ここで、管状ケースパーツの内側壁は、第一層の構造材料によって形成される。
【0013】
管状格納パーツは、異なる材料の連続層から構成され、ここで、「連続」とは、ある材料のストリップまたはウェブが、連続するらせん状に巻かれていることを意味する。しかし、それは、ある材料の各らせんが、別の材料と同じ巻き回数にわたって巻かれていることを必ずしも意味しない。各巻き付けターンに対して異なる材料の「サンドイッチ」を繰り返す代わりに、格納パーツの外側または外側近傍において、1もしくは複数の巻き付けターンに対して「サンドイッチ」の組成を変化させることも可能である。これによって、特定のサイズおよび強度の必要条件を満たす様々なフライホイール格納アセンブリのための格納パーツを製造することが可能となる。
【0014】
本発明において、らせん巻ケースは、特定のフライホイール設計において、破片の飛散エネルギーの処理に必要とされる複数の異なる層の緊密な巻き付けを提供する。層の「サンドイッチ」の緊密な巻き付けのために、管状格納パーツの壁厚を、現行のモノリシックな「中実体から機械加工された」格納ケースよりも薄くすることが可能であり、従ってより軽量となる。同時に、緊密に巻き付けられた層のために、フライホイールの機械的故障時に放出される運動エネルギーを吸収すること、および故障したフライホイールの破砕した破片がそのように形成された管状格納パーツを完全に貫通することを防止するという点におけるその有効性が改善される。
【0015】
本発明の別の態様によると、構造材料の第一層は、鋼鉄ストリップであり、ここで、この鋼鉄は、低合金高強度鋼、ベイナイト鋼 TWIPグレード、および中から高炭素鋼から成る群より選択される。この層の場合、ゲージおよび表面硬度の特性も、フライホイール格納アセンブリに対する必要条件に応じて決定される。この第一層の、またはその他のいずれの鋼鉄層の性能も、例えば靭性または硬度を向上させるための化学処理または加熱処理に基づく表面処理を用いることによって、さらに改善することができる。
【0016】
格納パーツ「サンドイッチ」の1つ以上の連続した層の一部に用いられる鋼鉄は、典型的には、良好な伸びおよび強度特性を有する鋼鉄であり、これによって、前記材料から作製されたケースアセンブリが、破片が内部鋼鉄層を通り抜ける際の変形の結果としての鋼鉄の延びおよび表面エネルギーに起因するエネルギー吸収によって、破壊されたフライホイールの破片の運動エネルギーの一部を吸収する結果となる。
【0017】
最初の耐衝撃表面を提供するのに加えて、鋼鉄材料のらせん状に巻いた第一層または最内層はまた、管状格納パーツを成す繊維およびその他の金属材料によるそれに続くサンドイッチされた順に続く層のための支持層としても用いられる。
【0018】
1つ以上の連続した層は、アルミニウム、アルミニウム合金、繊維材料、および合金鋼から成る材料の群より選択される1つ以上の材料のストリップまたはウェブから作製される。繊維材料は、金属もしくはプラスチック繊維材料、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0019】
繊維材料は、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、鋼鉄繊維を含む。これらの繊維材料を用いて、フライホイール破片の残りの運動エネルギーを、格納パーツ全体によって破片に対して向けられている全360度の層状バリアを破片が通り抜けることができた場合に吸収する「ネット」バリアを提供する。
【0020】
1つ以上の連続した層の金属層は、典型的には、中間層のための複数の薄シートとして提供されてよい高伸び低強度の金属である。別の選択肢として、これらの金属は、順に続く金属層の1つ以上に、格納空間を増加させるための波形金属層として提供されてもよく、その空隙は、これらの層を破片が通過する過程で局所的に発生される熱の結果としてその自然の固体状態から液体状態に変化する際に運動エネルギーを消費することになる適切に選択された有機、無機、または共晶相変化材料によって充填、または部分的に充填されていてよい。
【0021】
本発明の異なる態様によると、繊維材料は、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、および鋼鉄繊維の混合物から成る。なおさらなる態様によると、これらの繊維材料は、管状格納パーツの成形後に加熱硬化を後で行うために、乾式積層されているか(dry layered)、湿式積層されているか(wet-laid up)、またはプリプレグ樹脂中へ埋め込まれている。
【0022】
層は、薄シート金属と繊維材料を交互に含んでいてもよく、ここで、繊維材料は、封じ込めの必要条件に適するように、プリプレグ樹脂中に埋め込まれているか、乾式積層されているか、または連続的に湿式積層されていてよい。
【0023】
本発明の別の態様によると、繊維材料の層内、または繊維材料の異なる層内において、繊維を、異なる配向および互いに対する縦糸横糸の組み合わせであるグループとして備える。この方法により、格納ケースをこれらの繊維層まで貫通したフライホイールの破片を受け止めることができる「ネット様」構造を作り出すことができる。
【0024】
このように形成された第一層および複数の順に続くサンドイッチ層は、2つ以上の完全な巻き付けターンに及んで、らせん巻き管状格納パーツを形成する。
【0025】
本発明はまた、上記の記載に従う管状格納パーツを含むフライホイールのための格納アセンブリも提供し、ここで、格納パーツは、その両側で末端部材に取り付けられる。さらなる態様によると、格納パーツは、軸方向に固定された、またはそれ以外で格納パーツに対して適切な位置に保持された末端部材に刻まれた溝部に保持され、その結果として、爆発イベント時のエネルギーのさらなる消散がもたらされるが、それは、格納パーツをこれらの末端部材に形成された溝部内で「スピン」可能とすることも、またはそうでないようにすることもできるからである。末端部材は、ベアリングも保持することが想定され、それはさらに、フライホイール上のスピンドルと結合され、それによって、フライホイールをその回転軸線上に保持し、さらに、管状ケースを、アセンブリ全体の例えば車両シャシーへの搭載に用いることが可能となる。
【0026】
フライホイールの爆発イベントが発生すると、フライホイールは、単一の、または場合によっては複数の場所で破壊され、続いて大小の両方の破片に破砕し、各々は、回転軸線から高い半径方向および接線方向の速度で飛散する。最悪の場合、フライホイールは、フライホイールの回転軸線に対して接線方向の典型的に高い速度(およそ1000m/s)で移動する2または3つだけの大破片に破壊される。
【0027】
このような破片は、続いて、接線および半径方向の速度成分を有して管状格納パーツの内部層に衝突する。各破片のエネルギーに応じて、このような破片は、方向が変えられるか、またはより可能性高く、格納パーツを構成している第一層および連続した層の1つ以上に次第に貫通する。破片は、典型的には、第一の巻き付けの硬質の内部第一層に、続いて、破片を減速することができ、同時に、より大きい破片は破壊されてより小さい破片となることから、より小さいサイズの破片にも対処する次第に軟質となる層に遭遇する。このようなより小さい破片は、続いて、硬質の巻き付け層に再度遭遇し、破片がエネルギーを次第に減少させながら段階的に各サンドイッチ層を貫通するに従って、このプロセスが繰り返される。破片の封じ込めにこの積層/サンドイッチバリアの手法を用いることにより、破片が、モノリシック/中実材料から形成されたケース管の場合のように単一のクラックをさらに広げるのではなく、各層において新たなクラックを再形成する必要があるように確実にされる。従って、提案されるらせん巻管状格納パーツを用いることにより、吸収されたエネルギーは、モノリシックな鋳造された、または中実体から機械加工された格納ケース内でのフライホイール破壊の場合と比較して、第一層および1つ以上の連続した層において、熱、変形表面エネルギーとして消散される。
【0028】
本発明に従う管状格納パーツを用いることにより、格納壁の仕様も、鋼鉄、アラミド、炭素繊維、およびその他の材料のグレードならびにゲージの仕様を例とする管状格納パーツへと形成されるサンドイッチ層の材料および厚さの選択を通して、ならびにそのようにして形成されるケース上の完全な巻き付けの数(従って、格納パーツの壁厚)の選択を通して、特定の型のフライホイールに対して破砕を封じ込めるために必要とされる直径、性能、質量、およびコストに適するように容易に構成することが可能である。
【0029】
加えて、管状格納パーツを形成するらせん巻き付けターンの配向も、フライホイールの回転方向に対して容易に構成することができ、それによって、最適な性能、重量、および製造コストであっても、爆発イベントの考え得る最長の継続時間にわたって最良のエネルギー吸収特性が得られる。
【0030】
本発明はまた、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを製造するための方法も提供し、ここで、この方法は:
構造材料の第一層のための鋼鉄ストリップを選択する工程であって、ここで、鋼鉄は、低合金高強度鋼、ベイナイト鋼、TWIP鋼グレード、および中から高炭素鋼から成る群より選択される工程、
1つ以上の連続した層の各々のための材料のストリップまたはウェブを、アルミニウム、アルミニウム合金、繊維材料、および合金鋼から成る材料の群より選択する工程、ならびに
第一層および1つ以上の連続した層のストリップをらせん状に巻いて、そのようにして形成された管状格納パーツの内側壁が、第一層の構造材料によって形成されるようにする工程、
を含む。
【0031】
異なる層が、少なくとも2つ以上の巻き付けターンにわたって連続ストリップまたはウェブとして巻かれる。ほとんどの場合、最終管状格納パーツは、異なる連続層の複数の巻き付けターンから成る。「連続」の記載は、特定の層の材料が連続であることを意味し、それが格納パーツのすべての巻き付けターンにわたって連続していることを必ずしも意味しない。第一層または連続した層のうちのいずれの層も、1つ以上の巻き付けターン後に別の材料のストリップまたはウェブと続けられていてよい。第一層または連続した層はまた、管状格納パーツに均一な外面を提供するために、1つの巻き付けターンの一部、または追加の巻き付けターンにおいて続けられていてもよい。
【0032】
管状格納パーツの内側壁を形成するサンドイッチの第一層のために選択される鋼鉄は、典型的には、良好な表面硬度および靭性の目的に適する伸びおよび強度特性を有する低コスト構造材料を提供する鋼鉄である。
【0033】
順に続くサンドイッチ層に用いられる金属は、好ましくは、複数の薄シートとして提供することができる高伸び材料であり、直線もしくは織「布地」繊維材料または波形シート金属材料から成る。
【0034】
繊維材料層は、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、タイヤコードなどの鋼鉄繊維、またはその他の金属繊維から成り、単または多重横糸布(single or multiple weft fabric)に織られ、横および縦糸の方向は、それらの破片捕捉およびエネルギー吸収の効果が最大となるようにフライホイール回転軸線に対して適切に配向される。
【0035】
本発明のさらなる態様によると、連続した層の1つ以上は、硬化性樹脂で含浸された繊維材料を含み、ここで、含浸層を含む1つ以上の適用された連続した層を持つ第一層の構造材料のストリップは、続いて行われる室温または高温での製造後硬化操作を受ける。
【0036】
硬化操作は、層が管状格納パーツへと巻かれた後に行われてよく、または適切な装置を用いて、硬化は、管状格納パーツが形成される際のマンドレルへ層を巻く時点で開始されてよい。
【0037】
第一層および1つ以上の連続した層は、好ましくは、別々の供給から連続または半連続生産ラインへとフィードされて、多層らせん巻管状格納パーツが形成される。異なる材料を別々のコイルとすることで、格納パーツにおける層の所望される順序に従ってこれらのコイルを容易に配置することができる。
【0038】
材料の異なる層を巻いて管状格納パーツとすることに代わる方法として、中間品として多層「サンドイッチ」ストリップを巻いたコイルが提供され、ここで、ストリップは、大量の管状格納パーツ用に充分な長さを有する。生産現場において、適切な長さのこの多層材料が中間コイルから切断され、仕様に従う管状格納パーツへとらせん状に巻かれてよい。ストリップはまた、所望される長さにストリップを切断する前に、マンドレルなどにまず巻かれてもよい。
【0039】
管状格納パーツの適切な内部円筒形状および寸法を得る目的で、ケースは、絶対ではないが典型的には名目上円形の断面を持つマンドレルなどの周囲にこのサンドイッチ材料の順に続く巻き付けターンを巻くことによって形成される。マンドレルへの第一の巻き付けの最初の端部を固定する手段は、マンドレルの設計に組み込まれる。
【0040】
管状格納パーツへと作製された後、マンドレルから取り出され、プリプレグ繊維材料が用いられている場合はオートクレーブまたは類似の加熱硬化装置へ移される際に、巻かれた管の形状を維持するために、本技術分野で利用可能であるいくつかの機械的拘束のうちの1つが用いられる。さらに、同じ最終内径を有する複数のケースを、各連続サンドイッチ層を構成するコンポジットサンドイッチストリップ材料を、それらがバルク単層材料コイルから巻き出されるに従ってスリットすることによって作製することも可能であり、これによって、格納「管」アセンブリを並行して製造することが可能となる。
【0041】
本発明に従う方法は、格納ケースを、連続プロセスとして、従って安価に作製することができ、ならびに、鋼鉄のゲージ、グレード、ならびにコンポジットおよび金属中間層の数の構成を通して、さらには織り繊維および織布、ポリマーマトリックス、ならびに硬化系要素の構成によって、異なるフライホイールエネルギー蓄積装置設計の破片エネルギー封じ込めの必要条件に耐えるよう構成することができるという点で、先行技術からの改善を提供する。さらに、この方法は、ライン製造プロセスにおいて、材料の複数の層(金属、非金属、繊維系など)を管状格納パーツへと1つの操作で迅速および簡便に構成し、続いて管状格納パーツ全体を共硬化または後硬化する工業的に実行可能である手段を提供する。