特許第6567530号(P6567530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567530フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツおよびそれを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567530
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツおよびそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/30 20060101AFI20190819BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20190819BHJP
   F16F 15/305 20060101ALI20190819BHJP
   F16H 33/02 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   F16F15/30 Z
   B32B1/08 Z
   B32B15/04 Z
   F16F15/305 A
   F16H33/02 A
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-541836(P2016-541836)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2016-537589(P2016-537589A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014002303
(87)【国際公開番号】WO2015036088
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月21日
(31)【優先権主張番号】13004428.2
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598019897
【氏名又は名称】タタ、スティール、ユーケー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】クライブ、サットン
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06203924(US,B1)
【文献】 米国特許第05466503(US,A)
【文献】 特開平10−193467(JP,A)
【文献】 特表2000−510779(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0188777(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0141258(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
F16F15/00−15/36
F16H19/00−37/16
49/00
H02J15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツであって、
前記管状格納パーツは、異なる材料の層から構成されており、
前記管状格納パーツの前記異なる材料の層は、互いの上にらせん状に巻かれた連続層であり、
前記連続層は、構造材料の第一層および1つまたは2つ以上の異なる材料から構成される1以上の連続した層を含み、
前記管状格納パーツの内側壁は、前記第一層の前記構造材料によって形成されており、
前記構造材料の前記第一層が、鋼鉄ストリップであり、
前記鋼鉄は、低合金高強度鋼、ベイナイト鋼 TWIPグレード、および中から高炭素鋼から成る群より選択され
前記1以上の連続した層が、アルミニウム、アルミニウム合金、繊維材料、および合金鋼から成る材料の群より選択される1つ以上の材料のストリップまたはウェブから作製され、
前記第一層、および前記連続した層の各々が、前記管状格納パーツの2つ以上の巻き付けターンに及んでいることを特徴とする、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツ。
【請求項2】
前記繊維材料が、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、鋼鉄繊維を含む、請求項1に記載の格納パーツ。
【請求項3】
前記繊維材料が、硬化された樹脂中に埋め込まれている、請求項1または2に記載の格納パーツ。
【請求項4】
繊維材料の層内において、前記繊維を、互いに対して異なる縦糸および横糸配向であるグループとして備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の格納パーツ。
【請求項5】
前記1以上の連続した層が、波形金属を含む金属層を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の格納パーツ。
【請求項6】
前記波形によって形成される空隙が、相変化材料によって充填されて、破片エネルギー吸収が高められる、請求項5に記載の格納パーツ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の管状格納パーツおよび末端部材を備える、フライホイール格納アセンブリであって、
前記管状格納パーツは、前記末端部材の両側に刻まれた溝部に取り付けられる、フライホイール格納アセンブリ。
【請求項8】
フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを製造するための方法であって、前記方法は:
構造材料の第一層のための鋼鉄ストリップを選択する工程であって、前記鋼鉄は、低合金高強度鋼、ベイナイト鋼、TWIP鋼グレード、および中から高炭素鋼から成る群より選択される工程、
1以上の連続した層の各々のための材料のストリップまたはウェブを、アルミニウム、アルミニウム合金、繊維材料、および合金鋼から成る材料の群より選択する工程、ならびに
前記第一層および前記1以上の連続した層の前記ストリップをらせん状に巻いて、こうして形成された管状格納パーツの内側壁が、前記第一層の前記構造材料によって形成されるようにする工程、
を含み、
前記第一層、および前記連続した層の各々が、前記管状格納パーツの2つ以上の巻き付けターンに及んでいる、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを製造するための方法。
【請求項9】
前記1以上の連続した層の1つ以上が、硬化性樹脂で含浸された繊維材料を含み、および前記らせん状に巻かれた層が、硬化操作を受ける、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化操作が、前記第一層および順に続く層を巻いて管状格納パーツとした後に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維材料が、連続湿式積層プロセス(continual wet layup processes)を用いて含浸され、硬化される、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイール格納アセンブリのための、より詳細には、エネルギーの一時的な蓄積のために用いられる機械式、電気機械式フライホイールなどの高速フライホイール、および電動発電機のための管状格納パーツに関する。本発明はまた、様々な仕様に対して格納容器を作製するための大量生産可能な方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
高速機械式、電気機械式フライホイールおよび電動発電機は、その設計の長寿命性(design longevity)およびエネルギーの非常に高い蓄積および放出速度を扱う能力のために、固定および移動状態の両方において、電池によるエネルギー蓄積の代替として次第に用いられるようになっている。しかし、典型的には20000から120000RPMの範囲である作動速度において、このようなフライホイールは、非常に大量の運動エネルギーを蓄積する。フライホイールが故障した場合、このエネルギーの瞬間的な放出は、回転するフライホイールの一次破片、および格納ケースがそれに応じて破壊される場合の破片の二次的広がりという衝撃破片の飛び散りによって、人、および周囲装置の完全性に致命的なリスクをもたらす。
【0003】
エネルギー蓄積フライホイールの機械的故障リスク解決するため、いくつかのエネルギー蓄積フライホイール格納容器が提案されている。例えば、米国特許出願第2005/0188777号には、複数の単独の、または同軸の円筒状スチールシールド、およびシールド間に制振材を有する格納アセンブリが開示されている。米国特許第6203924号に開示される格納構造は、内部構造層、エネルギー吸収層、および外部支持層を有する複数の同軸円筒状層から成り、ここで、連続した層には異なる材料が用いられている。
【0004】
爆発防止のための最も一般的な形態は、ガスタービンに用いられるものであり、この場合、高価な航空宇宙グレード材料が用いられて、特定の狭いタービンブレードディスクの周囲に、エネルギー吸収材料の強固な別々の「フープ(hoops)」が形成される。これらは、典型的なガスタービンエンジンの長さ方向に沿って、狭い環状層の形態で複数存在し得る。
【0005】
移動体/自動車用途のために開発された現行の格納ソリューションは、典型的には、機械仕上げ鋳造アルミニウムを用いて作られたシリンダーであるか、または中実スチールビレットからのチップ除去(chip removal)を用いて最終形状に機械加工される。これらの2つの解決策は、負担が大きくなる可能性があり、公知のすべての場合において、あつらえ製造品であり、従って、それらは高価となり、大量生産を可能とするには作製に時間が掛かり過ぎる。さらに、乗用車の小型ブレーキエネルギー回生システムの場合で200kJのオーダーであるフライホイールに蓄積される運動エネルギーが放出されると、そのような格納容器は破壊され、崩壊するものと考えられ、その結果、二次的な、そして恐らくはより危険な破片の広がりが、この装置から、不特定の方向へ、高速で飛び散ることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ケース管内のフライホイールが故障した場合に放出される運動エネルギーを完全に吸収することができるフライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツの製造に対して、費用対効果が高く、容易に適用可能である解決案を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、作動中に故障した場合に回転するフライホイールから発生する破片を完全に封じ込めることのできるフライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、異なる材料の連続的で複数でもある層を用いて、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、特定のフライホイール質量および作動速度設計における格納タスクに対する強度および重量の理由から最適化されたフライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、格納容器の特定のサイズおよび強度の必要条件を満たすように困難なく構成することができるフライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、工業スケールの大量生産において、容易に、および高い費用対効果で製造することができるフライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によると、本発明の目的のうちの1つ以上は、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを提供することによって実現され、ここで、管状格納ケースパーツは、異なる材料の層から構成されており、管状格納ケースパーツの異なる材料の層は、互いの上にらせん状に巻かれた連続層であることを特徴とし、連続層は、構造材料の第一層および1つまたは2以上の異なる材料から構成される1つ以上の連続した層を含み、ここで、管状ケースパーツの内側壁は、第一層の構造材料によって形成される。
【0013】
管状格納パーツは、異なる材料の連続層から構成され、ここで、「連続」とは、ある材料のストリップまたはウェブが、連続するらせん状に巻かれていることを意味する。しかし、それは、ある材料の各らせんが、別の材料と同じ巻き回数にわたって巻かれていることを必ずしも意味しない。各巻き付けターンに対して異なる材料の「サンドイッチ」を繰り返す代わりに、格納パーツの外側または外側近傍において、1もしくは複数の巻き付けターンに対して「サンドイッチ」の組成を変化させることも可能である。これによって、特定のサイズおよび強度の必要条件を満たす様々なフライホイール格納アセンブリのための格納パーツを製造することが可能となる。
【0014】
本発明において、らせん巻ケースは、特定のフライホイール設計において、破片の飛散エネルギーの処理に必要とされる複数の異なる層の緊密な巻き付けを提供する。層の「サンドイッチ」の緊密な巻き付けのために、管状格納パーツの壁厚を、現行のモノリシックな「中実体から機械加工された」格納ケースよりも薄くすることが可能であり、従ってより軽量となる。同時に、緊密に巻き付けられた層のために、フライホイールの機械的故障時に放出される運動エネルギーを吸収すること、および故障したフライホイールの破砕した破片がそのように形成された管状格納パーツを完全に貫通することを防止するという点におけるその有効性が改善される。
【0015】
本発明の別の態様によると、構造材料の第一層は、鋼鉄ストリップであり、ここで、この鋼鉄は、低合金高強度鋼、ベイナイト鋼 TWIPグレード、および中から高炭素鋼から成る群より選択される。この層の場合、ゲージおよび表面硬度の特性も、フライホイール格納アセンブリに対する必要条件に応じて決定される。この第一層の、またはその他のいずれの鋼鉄層の性能も、例えば靭性または硬度を向上させるための化学処理または加熱処理に基づく表面処理を用いることによって、さらに改善することができる。
【0016】
格納パーツ「サンドイッチ」の1つ以上の連続した層の一部に用いられる鋼鉄は、典型的には、良好な伸びおよび強度特性を有する鋼鉄であり、これによって、前記材料から作製されたケースアセンブリが、破片が内部鋼鉄層を通り抜ける際の変形の結果としての鋼鉄の延びおよび表面エネルギーに起因するエネルギー吸収によって、破壊されたフライホイールの破片の運動エネルギーの一部を吸収する結果となる。
【0017】
最初の耐衝撃表面を提供するのに加えて、鋼鉄材料のらせん状に巻いた第一層または最内層はまた、管状格納パーツを成す繊維およびその他の金属材料によるそれに続くサンドイッチされた順に続く層のための支持層としても用いられる。
【0018】
1つ以上の連続した層は、アルミニウム、アルミニウム合金、繊維材料、および合金鋼から成る材料の群より選択される1つ以上の材料のストリップまたはウェブから作製される。繊維材料は、金属もしくはプラスチック繊維材料、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0019】
繊維材料は、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、鋼鉄繊維を含む。これらの繊維材料を用いて、フライホイール破片の残りの運動エネルギーを、格納パーツ全体によって破片に対して向けられている全360度の層状バリアを破片が通り抜けることができた場合に吸収する「ネット」バリアを提供する。
【0020】
1つ以上の連続した層の金属層は、典型的には、中間層のための複数の薄シートとして提供されてよい高伸び低強度の金属である。別の選択肢として、これらの金属は、順に続く金属層の1つ以上に、格納空間を増加させるための波形金属層として提供されてもよく、その空隙は、これらの層を破片が通過する過程で局所的に発生される熱の結果としてその自然の固体状態から液体状態に変化する際に運動エネルギーを消費することになる適切に選択された有機、無機、または共晶相変化材料によって充填、または部分的に充填されていてよい。
【0021】
本発明の異なる態様によると、繊維材料は、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、および鋼鉄繊維の混合物から成る。なおさらなる態様によると、これらの繊維材料は、管状格納パーツの成形後に加熱硬化を後で行うために、乾式積層されているか(dry layered)、湿式積層されているか(wet-laid up)、またはプリプレグ樹脂中へ埋め込まれている。
【0022】
層は、薄シート金属と繊維材料を交互に含んでいてもよく、ここで、繊維材料は、封じ込めの必要条件に適するように、プリプレグ樹脂中に埋め込まれているか、乾式積層されているか、または連続的に湿式積層されていてよい。
【0023】
本発明の別の態様によると、繊維材料の層内、または繊維材料の異なる層内において、繊維を、異なる配向および互いに対する縦糸横糸の組み合わせであるグループとして備える。この方法により、格納ケースをこれらの繊維層まで貫通したフライホイールの破片を受け止めることができる「ネット様」構造を作り出すことができる。
【0024】
このように形成された第一層および複数の順に続くサンドイッチ層は、2つ以上の完全な巻き付けターンに及んで、らせん巻き管状格納パーツを形成する。
【0025】
本発明はまた、上記の記載に従う管状格納パーツを含むフライホイールのための格納アセンブリも提供し、ここで、格納パーツは、その両側で末端部材に取り付けられる。さらなる態様によると、格納パーツは、軸方向に固定された、またはそれ以外で格納パーツに対して適切な位置に保持された末端部材に刻まれた溝部に保持され、その結果として、爆発イベント時のエネルギーのさらなる消散がもたらされるが、それは、格納パーツをこれらの末端部材に形成された溝部内で「スピン」可能とすることも、またはそうでないようにすることもできるからである。末端部材は、ベアリングも保持することが想定され、それはさらに、フライホイール上のスピンドルと結合され、それによって、フライホイールをその回転軸線上に保持し、さらに、管状ケースを、アセンブリ全体の例えば車両シャシーへの搭載に用いることが可能となる。
【0026】
フライホイールの爆発イベントが発生すると、フライホイールは、単一の、または場合によっては複数の場所で破壊され、続いて大小の両方の破片に破砕し、各々は、回転軸線から高い半径方向および接線方向の速度で飛散する。最悪の場合、フライホイールは、フライホイールの回転軸線に対して接線方向の典型的に高い速度(およそ1000m/s)で移動する2または3つだけの大破片に破壊される。
【0027】
このような破片は、続いて、接線および半径方向の速度成分を有して管状格納パーツの内部層に衝突する。各破片のエネルギーに応じて、このような破片は、方向が変えられるか、またはより可能性高く、格納パーツを構成している第一層および連続した層の1つ以上に次第に貫通する。破片は、典型的には、第一の巻き付けの硬質の内部第一層に、続いて、破片を減速することができ、同時に、より大きい破片は破壊されてより小さい破片となることから、より小さいサイズの破片にも対処する次第に軟質となる層に遭遇する。このようなより小さい破片は、続いて、硬質の巻き付け層に再度遭遇し、破片がエネルギーを次第に減少させながら段階的に各サンドイッチ層を貫通するに従って、このプロセスが繰り返される。破片の封じ込めにこの積層/サンドイッチバリアの手法を用いることにより、破片が、モノリシック/中実材料から形成されたケース管の場合のように単一のクラックをさらに広げるのではなく、各層において新たなクラックを再形成する必要があるように確実にされる。従って、提案されるらせん巻管状格納パーツを用いることにより、吸収されたエネルギーは、モノリシックな鋳造された、または中実体から機械加工された格納ケース内でのフライホイール破壊の場合と比較して、第一層および1つ以上の連続した層において、熱、変形表面エネルギーとして消散される。
【0028】
本発明に従う管状格納パーツを用いることにより、格納壁の仕様も、鋼鉄、アラミド、炭素繊維、およびその他の材料のグレードならびにゲージの仕様を例とする管状格納パーツへと形成されるサンドイッチ層の材料および厚さの選択を通して、ならびにそのようにして形成されるケース上の完全な巻き付けの数(従って、格納パーツの壁厚)の選択を通して、特定の型のフライホイールに対して破砕を封じ込めるために必要とされる直径、性能、質量、およびコストに適するように容易に構成することが可能である。
【0029】
加えて、管状格納パーツを形成するらせん巻き付けターンの配向も、フライホイールの回転方向に対して容易に構成することができ、それによって、最適な性能、重量、および製造コストであっても、爆発イベントの考え得る最長の継続時間にわたって最良のエネルギー吸収特性が得られる。
【0030】
本発明はまた、フライホイール格納アセンブリのための管状格納パーツを製造するための方法も提供し、ここで、この方法は:
構造材料の第一層のための鋼鉄ストリップを選択する工程であって、ここで、鋼鉄は、低合金高強度鋼、ベイナイト鋼、TWIP鋼グレード、および中から高炭素鋼から成る群より選択される工程、
1つ以上の連続した層の各々のための材料のストリップまたはウェブを、アルミニウム、アルミニウム合金、繊維材料、および合金鋼から成る材料の群より選択する工程、ならびに
第一層および1つ以上の連続した層のストリップをらせん状に巻いて、そのようにして形成された管状格納パーツの内側壁が、第一層の構造材料によって形成されるようにする工程、
を含む。
【0031】
異なる層が、少なくとも2つ以上の巻き付けターンにわたって連続ストリップまたはウェブとして巻かれる。ほとんどの場合、最終管状格納パーツは、異なる連続層の複数の巻き付けターンから成る。「連続」の記載は、特定の層の材料が連続であることを意味し、それが格納パーツのすべての巻き付けターンにわたって連続していることを必ずしも意味しない。第一層または連続した層のうちのいずれの層も、1つ以上の巻き付けターン後に別の材料のストリップまたはウェブと続けられていてよい。第一層または連続した層はまた、管状格納パーツに均一な外面を提供するために、1つの巻き付けターンの一部、または追加の巻き付けターンにおいて続けられていてもよい。
【0032】
管状格納パーツの内側壁を形成するサンドイッチの第一層のために選択される鋼鉄は、典型的には、良好な表面硬度および靭性の目的に適する伸びおよび強度特性を有する低コスト構造材料を提供する鋼鉄である。
【0033】
順に続くサンドイッチ層に用いられる金属は、好ましくは、複数の薄シートとして提供することができる高伸び材料であり、直線もしくは織「布地」繊維材料または波形シート金属材料から成る。
【0034】
繊維材料層は、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、タイヤコードなどの鋼鉄繊維、またはその他の金属繊維から成り、単または多重横糸布(single or multiple weft fabric)に織られ、横および縦糸の方向は、それらの破片捕捉およびエネルギー吸収の効果が最大となるようにフライホイール回転軸線に対して適切に配向される。
【0035】
本発明のさらなる態様によると、連続した層の1つ以上は、硬化性樹脂で含浸された繊維材料を含み、ここで、含浸層を含む1つ以上の適用された連続した層を持つ第一層の構造材料のストリップは、続いて行われる室温または高温での製造後硬化操作を受ける。
【0036】
硬化操作は、層が管状格納パーツへと巻かれた後に行われてよく、または適切な装置を用いて、硬化は、管状格納パーツが形成される際のマンドレルへ層を巻く時点で開始されてよい。
【0037】
第一層および1つ以上の連続した層は、好ましくは、別々の供給から連続または半連続生産ラインへとフィードされて、多層らせん巻管状格納パーツが形成される。異なる材料を別々のコイルとすることで、格納パーツにおける層の所望される順序に従ってこれらのコイルを容易に配置することができる。
【0038】
材料の異なる層を巻いて管状格納パーツとすることに代わる方法として、中間品として多層「サンドイッチ」ストリップを巻いたコイルが提供され、ここで、ストリップは、大量の管状格納パーツ用に充分な長さを有する。生産現場において、適切な長さのこの多層材料が中間コイルから切断され、仕様に従う管状格納パーツへとらせん状に巻かれてよい。ストリップはまた、所望される長さにストリップを切断する前に、マンドレルなどにまず巻かれてもよい。
【0039】
管状格納パーツの適切な内部円筒形状および寸法を得る目的で、ケースは、絶対ではないが典型的には名目上円形の断面を持つマンドレルなどの周囲にこのサンドイッチ材料の順に続く巻き付けターンを巻くことによって形成される。マンドレルへの第一の巻き付けの最初の端部を固定する手段は、マンドレルの設計に組み込まれる。
【0040】
管状格納パーツへと作製された後、マンドレルから取り出され、プリプレグ繊維材料が用いられている場合はオートクレーブまたは類似の加熱硬化装置へ移される際に、巻かれた管の形状を維持するために、本技術分野で利用可能であるいくつかの機械的拘束のうちの1つが用いられる。さらに、同じ最終内径を有する複数のケースを、各連続サンドイッチ層を構成するコンポジットサンドイッチストリップ材料を、それらがバルク単層材料コイルから巻き出されるに従ってスリットすることによって作製することも可能であり、これによって、格納「管」アセンブリを並行して製造することが可能となる。
【0041】
本発明に従う方法は、格納ケースを、連続プロセスとして、従って安価に作製することができ、ならびに、鋼鉄のゲージ、グレード、ならびにコンポジットおよび金属中間層の数の構成を通して、さらには織り繊維および織布、ポリマーマトリックス、ならびに硬化系要素の構成によって、異なるフライホイールエネルギー蓄積装置設計の破片エネルギー封じ込めの必要条件に耐えるよう構成することができるという点で、先行技術からの改善を提供する。さらに、この方法は、ライン製造プロセスにおいて、材料の複数の層(金属、非金属、繊維系など)を管状格納パーツへと1つの操作で迅速および簡便に構成し、続いて管状格納パーツ全体を共硬化または後硬化する工業的に実行可能である手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、構造材料の最内第一層2を有する格納ケースの例のマンドレル1上への製造を示す。
【0043】
本発明を、らせん巻管状格納パーツの断面の図面中に概略的に示される製造操作の例によってさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面の詳細な説明
図面では、構造材料の最内第一層2を有する格納ケースの例のマンドレル1上への製造が示され、ここで、第一構造層は、適切な伸び、強度、および靭性の性能を示すS900、S960、高強度ベイナイト鋼、またはその他の高炭素鋼などの高強度高靭性鋼ストリップの層である。
【0045】
次の層3は、予め含浸された織りアラミド繊維から成り、それは、様々な織り方、繊維角度の組み合わせ、および厚さであってよい。
【0046】
順に続く層4および5は、例えば約45/45度炭素繊維のプリプレグ層が挿入された薄く(0.1mm)、高い伸びの鋼鉄シートを用いて形成される。
【0047】
最外層6(第一鋼鉄層2から最も遠い層)は、最大引張強度2000〜4000MPaの織ったタイヤコードおよびプリプレグガラス繊維が挿入されたさらに薄い鋼鉄および/またはアルミニウムシートから成り、スピードは遅いが温度の高い破片をさらに封じ込めるためのものである。
【0048】
鋼鉄層および繊維中間層のための材料の選択は、異なる産業における典型的なフライホイール設計での必要性に応じて行われ、すなわち、鉄道および発電用フライホイールシステムの場合は、より厚い層および/またはより多くの巻き付けであり、例えば自動車およびその他の移動体用フライホイールシステム用途の場合は、より薄いおよび/またはより少ない層となる。図面に示されるよりも多いまたは少ない層が存在してよく、および層の順序は、フライホイールのその型に対するエネルギー封じ込めの必要性に適するように構成されてよい。さらに、ライン湿式積層および予備硬化ステージ7、さらにはスリットステージが、バルク材料コイルおよびマンドレルの間に挿入されてもよい。
【0049】
鋼鉄層および繊維層の材料の選択を行うために、所望されるフライホイールの設計直径およびセーフティケーススピード(safety case speed)における最悪の場合の破片封じ込めに対する必要条件に関連する破片運動エネルギーレベルが確立される。
【0050】
その情報に基づいて、破片封じ込めに適するゲージ番号、幅、および鋼鉄グレード(およびその他の金属中間層グレード)が設定される。さらに、破片エネルギー封じ込めの必要条件を満たす織り繊維中間層およびマトリックス接着剤の組み合わせも定められる。
【0051】
必要とされる鋼鉄のゲージおよびグレードおよびその他の金属グレードは、靭性、ひずみ速度感受性、表面硬度、伸び、溶接性、降伏強度、最大引張強度、密度、およびコストに基づいて選択される。
【0052】
コンポジットグレードおよび繊維材料(積層異方性(layup directionality)を含む)の選択は、引張強度、樹脂マトリックス接着剤、エネルギー吸収性能、重量、およびコストに基づいて行われる。
【0053】
S960、TWIPパッケージ、および二相グレードなどのグレードを含む0.15から2.5mmの鋼鉄が、靭性、延性、およびエネルギー吸収必要条件に合わせて選択されてよい。プリプレグ炭素繊維およびアラミドグレードが、コストおよび強度、さらにはオートクレーブ硬化温度への適合性および性能プロファイルを理由に選択されてよい。
【0054】
管状格納パーツのための材料および構造が定められると、指定された材料が連続生産ラインへとフィードされて、多層管状格納パーツが形成される。
【0055】
得られた直径および壁厚の「らせん状に包まれた(spiral-wrapped)」管状格納パーツは、次に、選択された樹脂系および鋼鉄グレードに適する方法で硬化され、これには、適切な温度での焼成を用いた最終構成成分のオーブン硬化の使用、および/または例えばタイヤコードなどの鋼鉄繊維がサンドイッチ層に用いられた場合の(1もしくは複数の)金属接合法の使用が含まれてよい。ライン上での硬化の手段が考慮されてもよい。樹脂またはその他の接着剤マトリックスの硬化時に管状ケースの形状を保持するために、形成された管上に熱収縮される適切なチューブ、または機械的クランプ機構が用いられてもよい。
図1