特許第6567567号(P6567567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567567
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/26 20060101AFI20190819BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20190819BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20190819BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20190819BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20190819BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190819BHJP
【FI】
   C09D123/26
   C09D133/00
   C09D167/00
   C09D5/02
   C09D7/40
   C09D7/63
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-571803(P2016-571803)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2015084682
(87)【国際公開番号】WO2016121242
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-15658(P2015-15658)
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】殿村 浩規
(72)【発明者】
【氏名】松島 直人
(72)【発明者】
【氏名】中原 周一
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−31453(JP,A)
【文献】 特表平10−500727(JP,A)
【文献】 特開2007−70370(JP,A)
【文献】 特開2003−183563(JP,A)
【文献】 特開2009−30020(JP,A)
【文献】 特開昭61−291662(JP,A)
【文献】 特開2006−131715(JP,A)
【文献】 特開2005−220290(JP,A)
【文献】 特表2011−525415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
B05D 1/00− 7/26
C08J 7/04− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂 、及び
(C)下記一般式(1)
【化1】
(式中、mは1又は2であり、nは0又は1〜20の整数であり、
1は、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、
mが2の場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、
2は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、
nが2以上の場合、n個のオキシアルキレン単位(R2O)は互いに同じであっても又は互いに異なっていても良く、また、
mが2の場合、(R2O)nは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるリン酸化合物を含有する自動車用水性塗料組成物。
【請求項2】
リン酸化合物(C)が、上記一般式(1)において、nが1〜20の整数であるリン酸化合物である請求項1に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項3】
リン酸化合物(C)が、上記一般式(1)におけるオキシアルキレン単位(R2O)がオキシエチレン基であるリン酸化合物である請求項1又は2に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項4】
リン酸化合物(C)が、上記一般式(1)において、R1が置換基を有していてもよい炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するリン酸化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項5】
リン酸化合物(C)が、上記一般式(1)において、R1が置換基を有していてもよい炭素数7以上20以下の炭化水素基を有するリン酸化合物である請求項4に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項6】
リン酸化合物(C)が、上記一般式(1)におけるnが1〜20の整数であり、かつHLB値が3〜17のリン酸化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項7】
リン酸化合物(C)の数平均分子量が100〜3000の範囲内である請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項8】
リン酸化合物(C)が、上記一般式(1)において、nが0であるリン酸化合物と、nが1〜20の整数であるリン酸化合物との混合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項9】
さらに、架橋剤(D)を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物。
【請求項10】
プラスチック基材上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物を塗装する塗膜形成方法。
【請求項11】
プラスチック基材上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物を塗装し、次いでその塗面に上塗塗料を塗装する塗膜形成方法。
【請求項12】
上塗塗料として着色ベース塗料及びクリヤ塗料を順次塗装する、請求項11に記載の塗膜形成方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車用水性塗料組成物が塗装された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年1月29日に出願された、日本国特許出願第2015−2015−015658号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。本発明は、貯蔵安定性、プラスチック基材に対する付着性に優れ、仕上がり外観及び耐水性等の塗膜性能に優れるリン酸化合物を含有する自動車用水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板部、家電製品等の部材として、ポリオレフィン等のプラスチック成型品が多く使用されている。そして、これらの成型品には、しばしば、上塗塗膜と成型品との付着性を向上させるために、塩素化ポリオレフィン等を含有するプライマーがあらかじめ塗装されている。このプライマーには、塩素化ポリオレフィンの溶解性の点から、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤が使用されてきたが、安全衛生、環境保全等の観点から、近年、プライマーの水性化が進められている。
【0003】
水性プライマーとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2に、ポリオレフィン等のプラスチック成型品への付着性等に優れた塗膜の形成を目的として、水性ポリオレフィン系樹脂、水性ポリウレタン樹脂及び水性アクリル樹脂より選ばれる少なくとも1種の水性樹脂、並びに架橋剤を特定割合で含んでなる組成物が提案されている。
【0004】
また塗装方法として、例えば、特許文献3及び特許文献4には、水性プライマーを塗装後に、着色ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装する上塗り塗装も含めた3コート1ベイク方式が提案されている。このようなウエットオンウエット方式に水性プライマーを用いる場合には、上塗塗装後の仕上り性の観点から、水性プライマー塗装後、次の塗装工程に入る前に、未硬化のプライマー塗膜中の溶媒(水)を主とする揮発成分を予備乾燥(プレヒート)して揮散させることが必要である。
【0005】
しかしながら、実際の塗装ラインでは、省スペース、省エネルギー化の点からプレヒート工程を排除すること、焼付温度の低温化等が求められており、そのためにプライマーの膜厚を薄くして乾燥を早めようとすると、ブース環境(特に、相対湿度65%以下の低湿度条件)によっては成膜不良に伴う仕上り外観不良が発生し、また、成膜不良で導電性も確保できないという問題が生じる。さらに、複層塗膜においては、上塗塗装後の仕上り性のみならず、耐水性等の塗膜性能の点からもプレヒート工程を省略することは困難であった。
【0006】
そこで本出願人は、特許文献5において、変性ポリオレフィンの水性分散体、水性ウレタン樹脂及び/又は水性アクリル樹脂、特定のジエステル化合物を特定量含有する水性プライマー組成物を用いることにより、塗装後にプレヒートすることなく次工程の上塗り塗装を行なっても混層せずに仕上り性又は耐水性に優れた複層塗膜を形成できることを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2007/066827号公報
【特許文献2】特開2007−302709号公報
【特許文献3】特開平10−296171号公報
【特許文献4】特開2004−331911号公報
【特許文献5】国際公開2010/016617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献5に記載された水性プライマー組成物によっても、プライマー塗膜が厚膜であったり、上塗りとして水性ベースコート塗料が用いられる場合に、それらの種類によっては複層塗膜の耐水性が低下する場合があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、貯蔵安定性、プラスチック基材に対する付着性に優れ、仕上り性及び耐水性等の塗膜性能にも優れた複層塗膜を形成し得る水性塗料組成物、及び該組成物を用いた塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂 、及び(C)特定の一般式で表されるリン酸化合物を含有することを特徴とする水性塗料組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂 、及び
(C)下記一般式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、mは1又は2であり、nは0又は1〜20の整数であり、
1は、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、
mが2の場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、
2は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、
nが2以上の場合、n個のオキシアルキレン単位(R2O)は互いに同じであっても又は互いに異なっていても良く、また、
mが2の場合、(R2O)nは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるリン酸化合物を含有する自動車用水性塗料組成物を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明は、該水性塗料組成物を塗装する塗膜形成方法を提供するものである。
【0015】
さらにまた、本発明は、該水性塗料組成物が塗装された物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動車用水性塗料組成物は、(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂、及び(C)特定の一般式で表されるリン酸化合物を含有するものであり、特に界面活性剤及び硬化触媒として作用する成分として、(C)特定の一般式で表されるリン酸化合物を含有することを主たる特徴とするものである。
【0017】
(C)成分であるこのようなリン酸エステル化合物は、リン酸基及び炭化水素基を有し、好ましくはさらに(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物である。このような分子構造を有する化合物であることから、リン酸基に起因する酸化合物としての作用と、親水基であるリン酸基(好ましくはさらに、ノニオン基である(ポリ)オキシアルキレン基)と疎水基である炭化水素基を併有することから界面活性剤としての作用もあわせもつ化合物である。
【0018】
リン酸化合物(C)のこのような特異的な特徴から、(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂、及び(C)リン酸化合物を構成成分とする本発明の水性塗料組成物は貯蔵安定性に優れ、濡れ性、粘性発現等の効果が発揮されることから、仕上り外観(平滑性、鮮映性)に優れている。さらには、リン酸基はプラスチック基材に対する付着性に寄与し、また触媒作用により硬化性が向上することから耐水性等の塗膜性能にも優れた塗膜を得ることができる、という効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の自動車用水性塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0020】
本発明の自動車用水性塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、
(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂、及び
(C)下記一般式(1)
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、mは1又は2であり、nは0又は1〜20の整数であり、
1は、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、
mが2の場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、
2は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、
nが2以上の場合、n個のオキシアルキレン単位(R2O)は互いに同じであっても又は互いに異なっていても良く、また、
mが2の場合、(R2O)nは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、
で表されるリン酸化合物を含有する自動車用水性塗料組成物である。
【0023】
変性ポリオレフィンの水性分散体(A)
本発明で用いられる変性ポリオレフィンの水性分散体(A)は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性したポリオレフィン(i)(以下、「不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)」と称する場合がある)を水性媒体中に分散することにより形成される。
【0024】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン等の炭素数が2〜10、特に2〜4のオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合せしめることにより得られるポリオレフィンを、さらに、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の炭素数が3〜10、特に4〜8の不飽和カルボン酸(好ましくは不飽和モノ−若しくはジ−カルボン酸)又はこれらの不飽和カルボン酸の無水物を用いて、公知の方法に従ってグラフト重合することにより得ることができる。
【0025】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)としては、マレイン酸又はその酸無水物によって変性されたものが好適である。該不飽和カルボン酸又はその酸無水物によるグラフト量は、厳密に制限されるものではなく、形成される塗膜に所望の物性等に応じて変えることができるが、ポリオレフィンの固形分質量に基づいて、一般に1〜20質量%、特に、1.5〜15質量%、さらに特に、2〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0026】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、所望により、さらにアクリル変性されていてもよい。該アクリル変性に使用し得る重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のアクリル系モノマー;スチレン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0027】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを、そして「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0028】
上記アクリル変性の方法としては、例えば、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンに、該変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル等をまず反応させて重合性不飽和基を導入し、次いで少なくとも1種の他のモノマーを、重合性不飽和基が導入された不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンと共重合させる等の方法が挙げられる。アクリル変性する場合の上記重合性不飽和モノマーの使用量は、他成分との相溶性、形成される塗膜の付着性等の観点から、得られる不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の固形分質量に基づいて、30質量%以下、特に0.1〜20質量%、さらに特に0.15〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、形成される塗膜の耐水性、仕上がり性、耐ガソホール性等の観点から、所望により、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性されていてもよい。ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物におけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖等を挙げることができる。
【0030】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物は、通常400〜3000であり、特に500〜2000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。該数平均分子量が400より小さいと、親水基としての効果を十分発揮することができず、また、塗膜性能(特に耐水性)に悪影響を及ぼす可能性があり、他方、3000より大きいと、室温において固形化し溶解性が悪くなる場合があり、取り扱いにくくなる場合がある。
【0031】
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、所望により、さらに塩素化されていてもよい。ポリオレフィンの塩素化は、例えば、ポリオレフィン又はその変性物の有機溶剤溶液又は分散液に塩素ガスを吹き込むことによって行うことができ、反応温度は50〜120℃の範囲内とすることができる。ポリオレフィンの塩素化物(固形分)中の塩素含有率は、ポリオレフィンの塩素化物に望まれる物性等に応じて変えることができるが、形成される塗膜の付着性等の観点から、ポリオレフィンの塩素化物の質量に基づいて、一般に35質量%以下、特に10〜30質量%、さらに特に12〜25質量%の範囲内であることが好ましい。
【0032】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)に使用されるポリオレフィンは、特に、プロピレンを重合単位として含有するものが好適であり、該不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)におけるプロピレンの質量分率は、他成分との相溶性、形成される塗膜の付着性等の観点から、通常0.5〜0.99、特に0.6〜0.97、さらに特に0.7〜0.95の範囲内であることが好適である。
【0033】
上記の如くして得られる不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、一般に30000〜180000であり、特に50000〜150000、さらに特に70000〜120000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。該変性ポリオレフィンの重量平均分子量がこれらの範囲から外れると、他成分との相溶性、形成される塗膜の基材又は上塗り塗膜層との層間付着性等が低下する場合がある。
【0034】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量及び数平均分子量を、それぞれ、ポリスチレンの重量平均分子量及び数平均分子量を基準にして換算した値であり、「HLC/GPC150C」(Water社製、商品名、60cm×1)により、カラム温度135℃、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o−ジクロロベンゼン3.4mlに対し変性ポリオレフィン5mgの溶液濃度となるように140℃で1〜3時間溶解して調製する。なお、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「GMHHR −H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を挙げることができる。
【0035】
本発明において使用される変性ポリオレフィンの水分散体(A)は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を水性媒体中、例えば、脱イオン水中に分散することによって得ることができ、その際、所望により、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)中のカルボキシル基の一部若しくは全部をアミン化合物で中和するか及び/又は乳化剤を用いて水分散することができる。不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)がポリオキシアルキレン鎖を有する場合には、該アミン化合物及び/又は乳化剤を使用せず又はそれらの少量の使用のみで、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を水性媒体中に分散することができる。
【0036】
上記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミン等の1級アミン等を挙げることができる。
【0037】
上記アミン化合物を使用する場合の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜1.0モル当量の範囲内であることが好ましい。
【0038】
上記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩、アンモニウム塩等のアニオン系乳化剤等を挙げることができ、さらに、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基を有する反応性アニオン性乳化剤等も使用することができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0039】
上記乳化剤の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の固形分質量100質量部に対して、通常30質量部以下であり、特に0.5〜25質量部の範囲内であることが好ましい。
【0040】
水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)
水性アクリル樹脂
(B)成分の水性アクリル樹脂としては、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を共重合させることにより得られる、重量平均分子量が通常5000〜100000、好ましくは5000〜50000の範囲内の水溶性アクリル樹脂、或いは重量平均分子量が50000以上、好ましくは100000以上のアクリル樹脂エマルションの分散質であるアクリル樹脂粒子を挙げることができる。
【0041】
水性アクリル樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量及び数平均分子量を、それぞれ、ポリスチレンの重量平均分子量及び数平均分子量を基準にして換算した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置としては、「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)を使用することができ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を使用することができる。
【0042】
なお、本明細書では、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)以外の数平均分子量、例えば、後述の水酸基含有ポリエステル樹脂等の数平均分子量は、上述の水性アクリル樹脂の数平均分子量と同一の方法により測定された値である。
【0043】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらのうちのジカルボン酸のハーフモノアルキルエステル化物等を挙げることができ、また、それら以外の親水性基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレン鎖含有重合性不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;4級アンモニウム塩化カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。
【0044】
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−若しくはイソプロピル(メタ)アクリレート、n−、イソ若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0045】
上記モノマー混合物の共重合は、特に制限されるものではなく、公知の方法で行うことができ、例えば、水溶性アクリル樹脂は溶液重合法等によって行なうことができ、また、アクリル樹脂粒子は乳化重合法等によって行なうことができる。
【0046】
水性アクリル樹脂(B)が、特に乳化重合によって得られるアクリル樹脂エマルションの分散質(アクリル樹脂粒子)である場合には、水及び乳化剤の存在下にモノマー混合物を用いて多段階で乳化重合させて得られるエマルションの多層構造粒子であってもよい。
【0047】
水性アクリル樹脂(B)中の親水性基含有重合性不飽和モノマーに由来するカルボキシル基等の酸性基は、所望により塩基性物質を用いて中和することができる。その際に用いることができる塩基性物質は、水溶性であることが好ましく、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0048】
水性アクリル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性又は他成分との相溶性、形成される塗膜の硬化性等の観点から、一般に20〜200mgKOH/g、特に20〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、水性アクリル樹脂は、一般に1〜100mgKOH/g、特に10〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0049】
水性ポリエステル樹脂
水性ポリエステル樹脂は、多価アルコール及び多塩基酸、さらに必要に応じて一塩基酸、油成分(この脂肪酸も含む)等を用いてエステル化反応させることによって調製されるオイルフリーもしくは油変性のポリエステル樹脂を中和することによって得られるものが包含される。
【0050】
また、ポリエステル樹脂としては、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物等をポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0051】
また、水性ポリエステル樹脂は、ウレタン変性されたものであってもよい。
【0052】
該ポリエステル樹脂は、約3000〜100000、好ましくは5000〜30000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。かかるポリエステル樹脂の重量平均分子量は、上記アクリル樹脂の重量平均分子量と同様の方法にて測定することができる。
【0053】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノール化合物のエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上使用することができる。多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上使用することができる。また、一塩基酸としては、例えば、安息香酸、t−ブチル安息香酸等を挙げることができ、油成分としては、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、大豆油、あまに油、トール油、ヤシ油及びこれらの脂肪酸等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上使用することができる。
【0054】
上記ポリエステル樹脂において、カルボキシル基を導入するには、例えば1分子中に3個以上のカルボキシル基を有するトリメリット酸、ピロメリット酸等の多塩基酸及び/又はこれらの無水物を併用したり、ジカルボン酸をハーフエステル付加すること等によって行なうことができる。
【0055】
また、水酸基を導入するには、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有するグリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールを併用することによって容易に行なうことができる。
【0056】
上記ポリエステル樹脂のカルボキシル基は、必要に応じて前述の塩基性物質を用いて中和することができる。
【0057】
水性ポリエステル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性又は他成分との相溶性、形成される塗膜の硬化性等の観点から、一般に20〜200mgKOH/g、特に20〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、水性ポリエステル樹脂は、一般に1〜100mgKOH/g、特に10〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0058】
本発明では、前記水性分散体(A)と上記樹脂(B)との使用比が、成分(A)/成分(B)の固形分質量比で、一般に5/95〜80/20、特に10/90〜75/25、さらに特に15/85〜75/25の範囲内にあることが好適である。この範囲を外れると、形成される塗膜の素材への付着性、耐水性等が低下する場合がある。
【0059】
本発明の水性塗料組成物には、上記変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)以外の水性樹脂も必要に応じて使用することができる。
具体的には、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0060】
これら(A)成分及び(B)成分以外の必要に応じて使用することができる樹脂も、自動車用塗料として一般的に広く用いられている塗料樹脂組成(例えば、アクリルメラミン系樹脂、アクリルイソシアネート系樹脂等)の観点から、架橋官能基として、水酸基を有していることが好ましい。
上記のうち、水性ウレタン樹脂を特に好適に使用することができる。
【0061】
水性ウレタン樹脂
水性ウレタン樹脂は、分子中にウレタン結合を有する水溶性もしくは水分散性の樹脂であり、水性媒体中における形態としては、水溶性タイプ、コロイダルディスパーションタイプ、エマルションタイプ及びスラリータイプのいずれであってもよいが、コロイダルディスパーションタイプもしくはエマルションタイプであることが望ましい。
【0062】
水性ウレタン樹脂としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られるポリウレタンを、さらに必要に応じて、ジオール、ジアミン等の1分子中に少なくとも2個の活性水素をもつ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長することにより得られるものが好適であり、それは水性媒体中に安定に分散もしくは溶解させて使用することができる。
【0063】
水性ウレタン樹脂の製造に使用される上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールとアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とを反応させることにより得られるポリエステルジオール;該脂肪族ジオールとテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸とを反応させることにより得られるポリエステルジオール等を挙げることができ、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のジオールとジメチルカーボネートな等のカーボネート化合物を反応させることにより得られるポリカーボネートジオール等を挙げることができ、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を開環重合させることにより得られるポリアルキレングリコール等を挙げることができる。
【0064】
また、上記ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのイソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0065】
さらに、鎖伸長剤としてのジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオル、シクロヘキサンジオール等を挙げることができ、ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン等を挙げることができる。
【0066】
水性ウレタン樹脂を水中に安定に分散もしくは溶解させる方法としては、例えば以下の方法を利用することができる。
【0067】
(1)ウレタンの製造原料としてジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジオールを使用することにより、ポリウレタンにカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基の一部又は全部を中和することによりポリウレタンに親水性を付与し、自己乳化により水中に分散又は溶解する方法。
【0068】
(2)ウレタンの製造原料であるポリオールとしてポリエチレングリコールのごとき親水性ポリオールを使用して水に可溶なポリウレタンを製造し、それを水中に分散又は溶解する方法。
【0069】
(3)反応の完結したポリウレタン又は末端イソシアネート基をオキシム、アルコール、フェノール、メルカプタン、アミン、重亜硫酸ソーダ等のブロック剤でブロックしたポリウレタンをノニオン性及び/又はカチオン性乳化剤と機械的せん断力を用いて強制的に水中に分散する方法。
【0070】
(4)末端イソシアネート基をもつウレタンプレポリマーを水/乳化剤/鎖伸長剤と混合し、機械的せん断力を用いて分散化と高分子量化を同時に行なう方法。
【0071】
水性ポリウレタン樹脂としては、単一の製造方法で得られたものに限定されるものではなく、各々の方法によって得られたポリウレタンの混合物も使用することができる。
【0072】
上記水性ウレタン樹脂を使用する場合、その使用量は水性塗料組成物中の変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)の総固形分質量に対して、通常1〜40%、特に5〜35質量%の範囲内であることが、仕上り性等の観点から好ましい。
【0073】
リン酸化合物(C)
リン酸化合物(C)は、下記一般式(1)
【0074】
【化3】
【0075】
(式中、mは1又は2であり、nは0又は1〜20の整数であり、
1は、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、
mが2の場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、
2は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、
nが2以上の場合、n個のオキシアルキレン単位(R2O)は互いに同じであっても又は互いに異なっていても良く、異なる場合、(R2O)nはランダム付加、ブロック付加また
は交互付加のいずれの付加形式でもよい。
また、mが2の場合、(R2O)nは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、
で表されるリン酸化合物である。
【0076】
上記一般式(1)の構造を有するリン酸化合物(C)は、リン酸基及び炭化水素基を有し、好ましくはさらに(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物である。リン酸基に起因する酸化合物としての作用と、親水基であるリン酸基(好ましくはさらに、ノニオン基である(ポリ)オキシアルキレン基)と疎水基である炭化水素基を併有することから界面活性剤としての作用もあわせもつ化合物である。
【0077】
この界面活性剤としての性質により、本発明の水性塗料組成物の変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)の乳化性に優れている。
【0078】
これにより、濡れ性、粘性発現等の効果が発揮されることから、本発明の水性塗料組成物は貯蔵安定性、仕上り外観(平滑性、鮮映性)に優れている。
【0079】
さらには、リン酸基はプラスチック基材に対する付着性に寄与し、また、変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)が架橋官能基として水酸基を有し、メラミン樹脂等の酸触媒により反応性が促進される架橋剤とする水性塗料組成物とした場合には、リン酸基の酸触媒効果により、硬化性も向上することから耐水性等の性能にも優れた塗膜を得ることができる。
【0080】
上記一般式(1)において、R1は、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、得られる塗膜の鮮映性、フリップフロップ等の塗膜外観及び耐水性の観点から、R1は、炭素数2〜20、特に炭素数4〜20、さらに特に炭素数7〜20、よりさらに特に炭素数7〜16の炭化水素基であることが好ましい。
【0081】
該炭化水素基は直鎖状又は分岐状のアルキル基、特に分岐状のアルキル基であることが好ましい。炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、3−メチルペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、4−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピルブチル基、3,4,4−トリメチルペンチル基、1,5−ジメチルヘキシル基、n−ノニル基、2−エチルヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、1,6−ジメチルヘプチル基、n−デシル基、2−エチルオクチル基、4−エチルオクチル基、3,6,6−トリメチルヘプチル基、1,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデシル基、2−エチルノニル基、3,7,7−トリメチルオクチル基、1,8−ジメチルノニル基、n−ドデシル基、2−エチルデシル基、3,8,8−トリメチルノニル基、1,9−ジメチルデシル基、n−トリデシル基、2−エチルウンデシル基、3,9,9−トリメチルデシル基、1,10−ジメチルウンデシル基、n−テトラデシル基、2−エチルドデシル基、3,10,10−トリメチルウンデシル基、1,11−ジメチルドデシル基、n−ペンタデシル基、2−エチルトリデシル基、3,11,11−トリメチルドデシル基、1,12−ジメチルトリデシル基、n−ヘキサデシル基、2−エチルテトラデシル基、3,12,12−トリメチルトリデシル基、1,13−ジメチルテトラデシル基、n−ヘプタデシル基、2−エチルペンタデシル基、3,13,13−トリメチルテトラデシル基、1,14−ジメチルペンタデシル基、n−オクタデシル基、2−エチルヘキサデシル基、3,14,14−トリメチルペンタデシル基、1,15−ジメチルヘキサデシル基、n−ノナデシル基、2−エチルヘプタデシル基、3,15,15−トリメチルヘキサデシル基、1,16−ジメチルヘプタデシル基、n−イコシル基、2−エチルオクタデシル基、3,16,16−トリメチルヘプタデシル基、1,17−ジメチルオクタデシル基等が挙げられる。なかでも、上記一般式(1)中のR1が、炭素数7〜20の分岐状のアルキル基であることが特に好ましい。
【0082】
上記R1が分岐状のアルキル基である場合、本塗料を比較的長期間貯蔵した後に塗装した場合においても、優れた鮮映性を有する塗膜を形成することができる。
【0083】
1が置換基を有する炭化水素基である場合、当該置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、1,3−ペンタジエニル基、2−ヘキセニル等の炭素数2〜6であり炭素−炭素2重結合を1〜2個有するアルケニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等の炭素数6〜16のアリール基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルブトキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基)等が挙げられる。
【0084】
リン酸化合物(C)は、例えば、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤と、アルコール又はアルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させたアルコールアルキレンオキサイド付加物を反応させることにより得ることができる。
【0085】
リン酸化剤と、アルコール又はアルコールアルキレンオキサイド付加物との反応は、それ自体既知の方法で行うことができ、その際、該アルコール及びアルコールアルキレンオキサイド付加物はそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0086】
一般に、一般式(1)で示されるリン酸化合物(C)は、モノエステルとジエステルの混合物として得られる。
【0087】
アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、3−メチルペンタノール、シクロヘキシルアルコール、ヘプタノール、2−エチルペンタノール、3−エチルペンタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、4−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、2−エチルヘプタノール、デカノール、2−エチルオクタノール、4−エチルオクタノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等を挙げることができる。
【0088】
なかでも、ヘプタノール、2−エチルペンタノール、3−エチルペンタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、4−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、2−エチルヘプタノール、デカノール、2−エチルオクタノール、4−エチルオクタノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等の炭素数7〜20のアルキル基を有するアルコール、
特に、2−エチルペンタノール、3−エチルペンタノール、2−エチルヘキサノール、4−エチルヘキサノール、2−エチルヘプタノール、2−エチルオクタノール、4−エチルオクタノール等の炭素数7〜20の分岐状のアルキル基を有するアルコールを好適に使用することができる。
【0089】
上記アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することが出来る。なかでも、エチレンオキサイドを好適に使用することができる。従って、一般式(1)中、オキシアルキレン単位(R2O)としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられ、複数のオキシアルキレン単位は同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、オキシアルキレン単位(R2O)としては、オキシエチレン基等が好ましい。
【0090】
上記一般式(1)においてnはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、nが1〜20、特に1〜10、さらに特に1〜5の範囲内であることが好ましい。また、好ましい実施形態において、リン酸化合物(C)は、一般式(1)においてnが0であるリン酸化合物と、nが1〜20の整数であるリン酸化合物との混合物であってもよい。
【0091】
また、リン酸化合物(C)の数平均分子量は100〜3000、特に100〜2500、さらに特に100〜2000の範囲内であることが好ましい。リン酸化合物(C)の分子量は、その使用原材料の分子量及び合成条件の情報を元に算出することができる。また、リン酸化合物(C)の平均分子量は、上記水溶性アクリル樹脂(B)について前述したのと同様の方法により測定することもできる。
【0092】
リン酸化合物(C)は、HLB値が、3〜17、特に3〜15、さらに特に4〜13の範囲内であることが好ましい。
【0093】
HLB値が3未満であると、親水性が低く乳化能が弱いため、塗料の安定性、平滑性、鮮映性等が不十分となる場合がある。
【0094】
また、HLB値が17を超えると、親水性が高すぎるため、得られる塗膜の耐水性が低下したり、塗装時の耐ワキ性が低下する場合がある。
【0095】
HLB値とは界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。Hydrophile−Lipophile Balanceの頭文字を取ったものである。
【0096】
本発明において、HLB値は、重量分率に基づく下記グリフィン式により算出される値である。
【0097】
HLB=20(MH/M)
(式中、MHは親水基部分の分子量、Mは化合物(界面活性剤)の分子量を意味する)
なお、本発明において、リン酸化合物(C)のHLB値とは、リン酸化合物(C)を製造するにあたっての原料非イオン化合物のHLB値であると定義する。
【0098】
具体的には、前記リン酸化合物(C)の製造に関して説示したように、リン酸化合物(C)は、リン酸化剤と、アルコール又はアルコールアルキレンオキサイド付加物を反応させることにより得られるものであるが、本発明のリン酸化合物(C)のHLB値とは、リン酸化合物(C)の製造原料のうちの、アルコールアルキレンオキサイド付加物のHLB値であるとするものとする。また、この場合、アルコールアルキレンオキサイド付加物の原料であるアルコールが水溶性である場合には算出することができない。
【0099】
リン酸化合物(C)は、単独でも又は2種以上組合せて用いてもよい。また、上記リン酸化合物(C)は、市販品、合成品のいずれを用いてもよい。
【0100】
リン酸化合物(C)は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対して0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%、さらに特に0.5〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0101】
架橋剤(D)
本発明の塗料組成物には、塗料組成物の硬化性及び得られる塗膜の耐水性等の塗膜性能の観点から、必要に応じて架橋剤(D)を含有させることができる。
【0102】
架橋剤は特に制限されるものではないが、変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)が有する架橋反応性基に応じて、該反応性基と反応性を有する架橋剤を使用することができる。
【0103】
架橋剤(D)としては、具体的には、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸等をあげることができる。硬化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0104】
自動車用塗料の樹脂組成としては、仕上り外観及び塗膜性能の観点から、アクリル樹脂等の水酸基含有樹脂と、該水酸基と反応性を有する架橋剤との組合せが広く一般的に用いられていることから、上記架橋剤のうち、特にアミノ樹脂及びポリイソシアネート化合物を好適に使用することができる。
【0105】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
【0106】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0107】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0108】
上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
【0109】
メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル212」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル253」、「サイメル254」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」(以上、モンサント社製);「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学社製);等を挙げることができる。
【0110】
メラミン樹脂を使用する場合、硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
【0111】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0112】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等をあげることができる。
【0113】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0114】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等をあげることができる。
【0115】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等をあげることができる。
【0116】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等をあげることができる。
【0117】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0118】
また、ポリイソシアネート化合物として、ブロック剤により、遊離のイソシアネート基を封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、反応性基と容易に反応することができる。
【0119】
かかるブロック剤としては、例えば、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系ブロック剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系ブロック剤;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル等のグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系ブロック剤;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系ブロック剤;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系ブロック剤等のブロック剤を挙げることができる。
【0120】
ポリイソシアネート化合物を使用する場合、硬化触媒として、有機錫化合物等を用いることができる。
【0121】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、水酸基或いはアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0122】
ポリヒドラジド化合物は、1分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物である。
【0123】
ポリヒドラジド化合物としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;炭酸ジヒドラジド等の炭酸のポリヒドラジド;;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸ジヒドラジド、ならびにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド等の芳香族ポリカルボン酸のポリヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド等の脂肪族トリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド等のテトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラ−ド)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52−22878号参照)等をあげることができる。
【0124】
上記ポリヒドラジド化合物は、疎水性が強すぎると水分散化が困難となり、均一な架橋塗膜が得られないことから、適度な親水性を有する比較的低分子量(300以下程度)の化合物を使用することが好ましい。このようなポリヒドラジド化合物としては、例えば、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド等の如くC4〜C12のジカルボン酸のジヒドラジド化合物が挙げられる。
【0125】
ポリヒドラジド化合物は、例えば、カルボニル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0126】
ポリセミカルバジド化合物は、1分子中に2個以上のセミカルバジド基を有する化合物である。
【0127】
ポリセミカルバジド化合物としては、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジン及び/又は上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド、該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルとポリオール化合物、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル化合物等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド(例えば、特開平8−151358号参照);該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物等のセミカルバジド基を有する化合物;ビスアセチルジヒドラゾン等のヒドラゾン基を有する化合物等をあげることができる。
【0128】
ポリセミカルバジド化合物は、例えば、カルボニル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0129】
カルボジイミド基含有化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得られる化合物である。
【0130】
該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等をあげることができる。
【0131】
カルボジイミド基化合物は、例えば、カルボキシル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0132】
オキサゾリン基含有化合物としては、オキサゾリン基を有する重合体、例えばオキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーを、必要に応じその他の重合性不飽和モノマーと従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって共重合させることにより得られる(共)重合体を挙げることができる。
【0133】
オキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。
【0134】
上記のその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上適宜選択される。
【0135】
オキサゾリン基含有化合物は、例えば、カルボキシル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0136】
エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。具体的には、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等のジエポキシ化合物、エポキシ基含有アクリル樹脂等をあげることができる。
【0137】
エポキシ化合物は、例えば、酸基又はアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0138】
ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多塩基酸:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族多塩基酸:ポリオールと1,2−酸無水物との付加反応により生成するハーフエステル;ポリエポキシドとポリエポキシドのエポキシ基に対して2当量以上の1,2−酸無水物との付加反応生成物;カルボキシル基含有アクリル系重合体;酸無水基をハーフエステル化してなる基を有するアクリル系重合体;カルボキシル基含有ポリエステル系重合体等が挙げることができる。
【0139】
ポリカルボン酸は、例えば、エポキシ基又はカルボジイミド基含有樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0140】
上記アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物等の架橋剤(D)を使用する場合、その使用量は、水性塗料組成物中の変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)の総固形分質量に対して、通常1〜50質量%、特に5〜30質量%の範囲内であることが好適である。
【0141】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物中の変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)、リン酸化合物(C)及び架橋剤(D)の量は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の樹脂固形分総質量(前記必要に応じて使用される(A)成分及び(B)成分以外の樹脂も含有する場合は、該樹脂も含む)を基準として、 変性ポリオレフィンの水性分散体(A)が1〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)が1〜80質量%、好ましくは3〜70質量%、さらに好ましくは5〜60質量%、架橋剤(D)が、0〜60質量%、好ましくは0〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、リン酸化合物(C)が、0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜7質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%の範囲内であるのが適している。
【0142】
本発明の水性塗料組成物は、例えば、変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)及びリン酸化合物(C)を常法に従い混合し、適宜、水性媒体、例えば、脱イオン水で希釈することにより調製することができる。
【0143】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜60秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度である。また、上記において、本塗料の塗装固形分濃度は、通常、5〜70質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度である。
【0144】
本発明の水性塗料組成物は、プラスチック基材に導電性を付与することを目的として、導電性顔料を含有することができる。上記導電性顔料としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状の形状の顔料を挙げることができる。具体的には、上記導電性顔料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイル等の導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウム等の金属粉を挙げることができ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボン又はグラファイトのウィスカー表面に酸化錫等を被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料等を挙げることができる。
【0145】
上記導電性顔料はそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。上記導電性顔料としては、導電性カーボンを好適に使用することができる。
【0146】
上記導電性顔料の含有量は、導電性及び形成される塗膜の付着性、耐水性等の観点から、水性塗料組成物中の変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)の総固形分質量に対して、通常1〜300質量%、特に2〜250質量%、さらに特に3〜180質量%の範囲内であることが好ましい。特に、導電性カーボンを使用する場合には、その使用量は組成物中の変性ポリオレフィンの水性分散体(A)、ならびに、水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂(B)の総固形分質量に対して、通常1〜30質量%、特に2〜25質量%、さらに特に3〜25質量%の範囲内であることが好ましい。
【0147】
本発明の水性塗料組成物は、上記導電性顔料以外の顔料、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アルミペースト、アゾ系顔料、フタロシアニン系等の着色顔料;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)等の体質顔料を所望により含有することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0148】
本発明の水性塗料組成物は、硬化触媒、増粘剤、消泡剤、有機溶剤、表面調整剤等の塗料用添加剤等を必要に応じて含有することができる。
【0149】
本発明の水性塗料組成物は、前述のとおり、プラスチック基材面に塗装することができる。上記プラスチック基材としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン等の炭素数2〜10のオレフィン化合物の1種又は2種以上を(共)重合することにより生成するポリオレフィンが特に好適であるが、それ以外に、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド等にも本発明の水性塗料組成物を適用することができる。上記材料による成型品としては、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダー等の自動車外板部;家庭電化製品の外板部等に使用されているプラスチック成型品等を挙げることができる。
【0150】
これらのプラスチック基材面には、本発明の水性塗料組成物の塗装に先立ち、公知の方法で、脱脂処理、水洗処理等を適宜行なうことができる。
【0151】
本発明の水性塗料組成物は、プラスチック基材面に、乾燥膜厚で通常1〜20μm、好ましくは3〜11μmの範囲内となるように、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬塗装、刷毛等を用いて塗装されることが好ましい。上記水性塗料組成物の塗装後、得られた塗膜を、所望により室温で30秒〜60分間程度セッティングすることができ、又は約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱(プレヒート)することができ、あるいは約60〜約140℃、好ましくは約70〜約120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることができる。
【0152】
上記水性塗料組成物から形成されるプライマー塗膜は、導電性を有し得るものであり、プライマー塗膜(硬化塗膜)の表面抵抗率は、一般に1×108Ω/□以下、特に1×107Ω/□以下であることが好ましい。これによって、導電プライマー塗膜として次の工程での良好な静電塗装が可能となる。
【0153】
なお、「表面抵抗率」は、例えば、乾燥膜厚が約15μmとなるように塗装した塗膜を、80℃で10分間の条件で乾燥させ、TREK社製表面抵抗計、商品名「TREK MODEL 150」を用いて測定することができる(単位:Ω/□)。
【0154】
本発明の水性塗料組成物から形成されるプライマー塗膜には、次いで上塗塗料を静電塗装することができる。上記上塗塗料としては、着色塗料を単独で用いて塗装してもよいし、該着色塗料をベース塗料として用いて、ベース塗料及びクリヤ塗料を順次塗装することもできる。また、上記プライマー塗膜上に、着色ベース塗膜層として、例えば、白色ベース塗料と干渉パール色ベース塗料とを順次塗装して複層膜を形成してもよい。
【0155】
上記着色塗料としては、公知のものを使用することができ、通常、有機溶剤及び/又は水を主たる溶媒とし、着色顔料、光輝性顔料、染料等の着色成分と、基体樹脂、架橋剤等の樹脂成分を含有するものを用いることができる。
【0156】
上記着色塗料に使用される基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような反応性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の樹脂を挙げることができる。また、上記架橋剤としては、上記官能基と反応し得る反応性官能基を有する、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸等を挙げることができる。
【0157】
上記着色塗料は、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス、防腐剤等の塗料用添加剤を必要に応じて含有することができる。
【0158】
上記着色塗料は、上述の未硬化の、又は硬化されたプライマー塗膜上に、乾燥膜厚で、通常5〜50μm、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmの範囲内となるように静電塗装し、得られる塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間程度セッティングし、又は約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱することができ、あるいは約60〜約140℃、好ましくは約80〜約120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることができる。
【0159】
本発明では、特に、着色ベース塗料を塗装後に硬化させることなく、次いでクリヤ塗装を行なうことが好適である。
【0160】
上記クリヤ塗料としては、例えば、基体樹脂、架橋剤等の樹脂成分、有機溶剤、水等を含有し、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス等の塗料用添加剤を必要に応じて含有する、有機溶剤系、水系又は粉体系の熱硬化性塗料であって、形成されるクリヤ塗膜を通して下層塗膜を視認することができる程度の透明性を有するものを用いることができる。
【0161】
また、上記クリヤ塗料には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、増粘剤、防錆剤等を適宜含有させることができる。
【0162】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基等の少なくとも1種の反応性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等の樹脂が挙げることができ、特に、水酸基含有アクリル樹脂が好適である。上記架橋剤としては、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する、メラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物等が挙げられ、特に、ポリイソシアネート化合物が好適である。
【0163】
クリヤ塗料としてなかでも、水酸基含有樹脂とブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含む熱硬化型塗料が好適である。
【0164】
また、上記クリヤ塗料としては、1液型塗料を用いても良いし、2液型ウレタン樹脂塗料等の2液型塗料を用いても良い。
【0165】
上記クリヤ塗料の塗装は、未硬化の、又は硬化された着色ベース塗膜上に、乾燥膜厚で、通常10〜50μm、好ましくは20〜40μmの範囲内となるように静電塗装し、得られた塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間程度セッティングし、又は約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱した後、約60〜約140℃、好ましくは約70〜約120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることにより行うことができる。
【0166】
以上のようにして、プライマー塗膜上に、着色ベース塗膜及びクリヤ塗膜が塗装されたプラスチック成形品を得ることができる。
【0167】
上記のように、本発明の塗料組成物は、被塗物に対し塗布し、硬化することによって、塗装される。従って、本発明は、本発明の塗料組成物を硬化した塗膜を有する物品(例えば、自動車、その部品等)も提供する。
【実施例】
【0168】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0169】
水性塗料組成物(水性プライマー)の製造
実施例1
変性ポリオレフィンの水性分散体(A1)(注1)を固形分質量で30部、水性アクリル樹脂(B1)(注4)を固形分質量で45部、メラミン樹脂(D1)(注10)を固形分質量で25部、導電性顔料(F1)(注12)20部、チタン白(注13)80部、及びリン酸化合物(C1)(注14)2部を、常法に従って配合し、固形分濃度40%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(X1)を得た。
【0170】
実施例2〜34及び比較例1〜5
組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、水性プライマー(X2)〜(X39)を得た。
【0171】
なお、表1にはないが、各水性プライマー(X1)〜(X39)は、すべて導電性顔料(F1)20部及びチタン白(注13)80部を含有するものである。
【0172】
表1の配合は固形分質量の表示であり、表1中の各成分は下記のとおりである。
【0173】
(注1)変性ポリオレフィンの水性分散体(A1):
メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8質量%で変性した、融点が80℃、Mwが約10万及びMw/Mnが約2.1である変性ポリオレフィンを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散化したもの。
【0174】
なお、Mw及びMnは、それぞれ、重量平均分子量及び数平均分子量を意味する。
【0175】
(注2)変性ポリオレフィンの水性分散体(A2):
「ハードレンNA−3002」、非塩素ポリオレフィンの水性分散体、東洋紡績社製、商品名、固形分濃度30%。
【0176】
(注3)変性ポリオレフィンの水性分散体(A3):
「EH−801」、塩素化ポリオレフィンの水性分散体、東洋紡績社製、商品名、塩素化度16%、固形分濃度30%。
【0177】
(注4)水性アクリル樹脂(B1):
「バイヒドロール XP2427」、水酸基含有アクリル樹脂エマルション、住化バイエルウレタン社製、商品名。
【0178】
(注5)水性アクリル樹脂(B2):
下記のとおり製造したアクリル樹脂溶液。
【0179】
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル35部及びプロピレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、内容物を加熱しながら撹拌して、110℃に保持した。反応容器に、「NFバイソマーS20W」(第一工業製薬社製、商品名、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)15部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート15部、スチレン5部、イソボルニルアクリレート20部、アクリル酸5部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。
【0180】
滴下終了後、内容物を110℃で30分間熟成し、次いで反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。次いで、内容物を110℃で1時間熟成した後に冷却し、固形分濃度50%のアクリル樹脂(B2)の溶液を得た。
【0181】
(注6)水性アクリル樹脂(B3):
下記のとおり製造したアクリル樹脂エマルション。
【0182】
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、アクアロンKH−10(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬社製、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物1のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物1を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物2を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/g、平均粒子径120nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)のアクリル樹脂エマルション(B3)を得た。
【0183】
モノマー乳化物1:脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」 0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物1を得た。
【0184】
モノマー乳化物2:脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」 0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物2を得た。
【0185】
(注7)水性ポリエステル樹脂:
下記のとおり製造したポリエステル樹脂溶液。
【0186】
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール105部、トリメチロールプロパン273部、ブチルエチルプロパンジオール320部、アジピン酸219部及びイソフタル酸385部を仕込み、反応容器を160℃から220℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら220℃で4時間、内容物を縮合反応させた。
【0187】
次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、反応容器に無水トリメリット酸76部をさらに加え、170℃で30分間反応させた後、ジメチルエタノールアミン5.5部及び脱イオン水120部を、攪拌しながら反応容器に添加して、固形分濃度70%の水性ポリエステル樹脂(B4)の溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が140mgKOH/g、数平均分子量が5,000であった。
【0188】
(注8)水性アクリル樹脂:
下記のとおり製造したアクリル樹脂溶液。
【0189】
フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート43部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、ヒドロキシエチルアクリレート2部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.1部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分濃度55%、酸価47mgKOH/g、水酸基価10mgKOH/gの水溶性アクリル樹脂(B5)を得た。
【0190】
(注9)水性ポリウレタン樹脂(その他の樹脂 E1):
「ユーコートUX−310」、三洋化成社製、商品名、水性ウレタンエマルション。
(注10)メラミン樹脂(架橋剤 D1):
「サイメル325」、日本サイテックインダストリーズ社製、商品名。
(注11)ブロック化ポリイソシアネート化合物(架橋剤 D2):
「バイヒジュールVPLS2310」、商品名、住化バイエルウレタン社製、固形分38%。
(注12)導電性顔料(F1):
「バルカンXC72」、キャボットスペシャリティーケミカルズ社製、商品名、導電性カーボンブラック顔料。
(注13)チタン白:「JR−806」、テイカ社製、商品名。
(注14)リン酸化合物(C1):前記一般式(1)で、R1が炭素数3の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。分子量227。HLB15以上(グリフィン法で算出できないので推定値)。なお、mは1又は2で、m=1のモノエステル体とm=2のジエステル体の比率は1:1である。
【0191】
また、下記表1におけるリン酸化合物(C2)〜(C21)はそれぞれ以下の通りである。なお、リン酸化合物(C2)〜(C21)はすべて、前記一般式(1)で、mは1又は2で、m=1のモノエステル体とm=2のジエステル体の比率は1:1である。
(注15)リン酸化合物(C2):前記一般式(1)で、R1が炭素数3の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量227。HLB15以上(グリフィン法で算出できないので推定値)。
(注16)リン酸化合物(C3):前記一般式(1)で、R1が炭素数6の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量290。HLB6.0。
(注17)リン酸化合物(C4):前記一般式(1)で、R1が炭素数6の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量290。HLB6.0。
(注18)リン酸化合物(C5):前記一般式(1)で、R1が炭素数7の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量311。HLB5.5。
(注19)リン酸化合物(C6):前記一般式(1)で、R1が炭素数7の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量311。HLB5.5。
(注20)リン酸化合物(C7):前記一般式(1)で、R1が炭素数8の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量332。HLB5.1。
(注21)リン酸化合物(C8):前記一般式(1)で、R1が炭素数8の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量332。HLB5.1。
(注22)リン酸化合物(C9):前記一般式(1)で、R1が炭素数9の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量353。HLB4.7。
(注23)リン酸化合物(C10):前記一般式(1)で、R1が炭素数9の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量353。HLB4.7。
(注24)リン酸化合物(C11):前記一般式(1)で、R1が炭素数12の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量482。HLB6.4。
(注25)リン酸化合物(C12):前記一般式(1)で、R1が炭素数18の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量674。HLB6.6。
【0192】
(注26)リン酸化合物(C13):前記一般式(1)で、R1が炭素数7の分岐アルキル基であり、nが0である。数平均分子量245。HLB5以下(グリフィン法で算出できないので推定値)。
(注27)リン酸化合物(C14):前記一般式(1)で、R1が炭素数7の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが3である。数平均分子量443。HLB10.6。
(注28)リン酸化合物(C15):前記一般式(1)で、R1が炭素数7の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが5である。数平均分子量575。HLB13.1。
(注29)リン酸化合物(C16):前記一般式(1)で、R1が炭素数7の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが10である。数平均分子量905。HLB15.8。
(注30)リン酸化合物(C17):前記一般式(1)で、R1が炭素数8の分岐アルキル基であり、nが0である。数平均分子量266。HLB5以下(グリフィン法で算出できないので推定値)。
(注31)リン酸化合物(C18):前記一般式(1)で、R1が炭素数8の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが3である。数平均分子量464。HLB10.1。
(注32)リン酸化合物(C19):前記一般式(1)で、R1が炭素数8の分岐アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが5である。数平均分子量596。HLB12.6。
(注33)リン酸化合物(C20):前記一般式(1)で、R1が炭素数1の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが1である。数平均分子量185。HLB15以上(グリフィン法で算出できないので推定値)。
(注34)リン酸化合物(C21):前記一般式(1)で、R1が炭素数21の直鎖アルキル基であり、R2がエチレン基であり、nが7である。数平均分子量1001。HLB9.9。
(注35)ポリオールA(ポリエチレングリコール、固形分100%、水酸基価187、数平均分子量約600)
(注36)ポリオールB(ポリエステルポリオール、固形分100%、水酸基価235、数平均分子量約480)
【0193】
【表1】
【0194】
実施例35〜68及び比較例6〜10
試験板の作製
黒色のポリプロピレン板(脱脂処理済,以下、「PP板」と省略する場合がある)に、水性プライマー(X1)〜(X39)のいずれか1つを乾燥膜厚で約10μmになるようにスプレー塗装し、3分間室温で放置し、その上に着色ベースコート塗料として「WBC710メタリックベース」(関西ペイント社製、商品名、水性メタリック色ベースコート塗料)を、乾燥膜厚で約15μmとなるように静電塗装し、PP板を80℃で5分間プレヒートし、その上にクリヤ塗料として「SFX7172クリヤ」(関西ペイント社製、商品名、アクリルウレタン系溶剤型クリヤ塗料)を、乾燥膜厚で約30μmとなるように静電塗装し、PP板を10分間セッティングし、そしてPP板を120℃で30分間加熱乾燥させることにより、39種の各試験板を作製した。
【0195】
評価試験
上記実施例35〜68及び比較例6〜10で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
【0196】
【表2】
【0197】
(試験方法)
仕上り外観については、以下の平滑性及び鮮映性を評価した。
【0198】
平滑性:「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値は、1〜3mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
【0199】
鮮映性:「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWb値を用いて評価した。Wb値は、0.3〜1mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0200】
また、貯蔵性について、貯蔵後の塗料を用いて同様に試験板を作成し、鮮映性を評価することにより評価した。
【0201】
表中の「初期」は、水性塗料組成物(水性プライマー)を製造直後に塗装した場合の鮮映性を示し、「貯蔵後」は、水性塗料組成物(水性プライマー)を製造後30℃で30日間貯蔵した後に塗装した場合の鮮映性を示す。
【0202】
「初期」と「貯蔵後」の鮮映性の差が小さい程、貯蔵性は良好である。
【0203】
耐水性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
B:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
C:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。