(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に開示された照明器具は、照明器具を設置した一部の環境の照明に用途が限定されたもので、したがって採用しているLEDは自然光系あるいは白色系のLEDのみが使用されている。また、このようなLEDを発光源とした街路灯のような照明器具は主に防犯を目的にしているが、その機能を維持するため、商用電源が遮断された場合のために非常点灯が可能となるように蓄電池を内蔵したものも提案されている。
【0006】
ところで、街路灯のような照明器具は、夜間の路上の照明が主な機能となるが地震、津波、土砂崩れなどのような自然災害が発生した場合は、商用電源や電話回線、インターネットなどの通信手段が瞬時に遮断されその機能を果たすことができなくなる。街路灯への商用電源の遮断は同時に市街地や幹線道路などの照明のすべてが停止することになり、暗夜の状況で生活者の不安がつのるとともに、電話回線、インターネットなどの通信手段の遮断によって災害の状況を把握することが困難となる。
【0007】
そこで、僅かでも環境の照明に役立つのが蓄電池を内蔵した街路灯による非常点灯であるが、これによっても1本の街路灯が環境の一部を照明するのみで、災害の発生状況を把握することは困難である。このような状況において、災害の発生状況に関する情報の入手は通常、テレビ、ラジオ放送が拠り所となるが、これによっても災害発生からかなりの時間が経過した情報であり、商用電源や電話回線、インターネットなどの通信手段が遮断している状況ではこれも困難である。
【0008】
しかしながら、災害の発生への対応は災害が発生した初期段階が重要であり、特定の地域のいずれの地域が危険であり、いずれの地域が安全であるかの具体的な情報を実時間で把握できることが重要である。 本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、街路灯に災害状況識別機能を備えるようにし、災害が発生した場合、迅速に危険地域と安全地域の報知が可能となる照明器具および照明器具点灯システムを提供することを目的とするのである。また、同機能を使って、季節やイベントなどに応じて被照明場所の明るさや色彩などを変えることにより、被照明場所の快適性演出、美観向上、情報通知なども提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、
(1)基地局と前記基地局と接続された照明器具とからなり、前記基地局は、全国瞬時警報システムにより発せられる災害情報を受信する手段と、前記災害情報に基づく災害の危険度に応じた発光を前記照明器具に対して指示するための発光制御信号を作成する手段と、前記発光制御信号を前記照明器具に送信する手段と、を備え、前記照明器具は、光源と、前記発光制御信号を受信する手段と、前記発光制御信号に基づいて前記光源の発光を制御する発光制御処理を行う手段と
、を備え、前記照明器具は、複数備えられるものであって、前記発光制御信号は、対象となる照明器具を特定するID情報を含み、前記照明器具は、自身を特定するための認識記号を記憶する手段と、前記認識記号と前記ID情報とを照合する照合手段と、を備え、前記照合手段により照合された照明器具が前記発光制御信号に応じた発光制御処理を行うことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)において、前記光源とは、常用光源と警報用光源とからなることを特徴とする。
(3)上記(2)において、前記発光制御信号の受信を契機に前記常用光源を消灯又は調光することを特徴とする。
(4)上記(1)乃至(3)において、前記発光制御信号には、前記光源の発光色を制御する発光色情報を含み、前記発光制御処理とは、前記光源の発光色を前記発光色情報が示す発光色に発光させる処理であることを特徴とする。
(
5)上記(1)乃至(
4)において、前記災害危険度とは、少なくとも、災害危険度の高低を示す情報であり、前記災害危険度が高である前記災害危険度に基づく前記発光制御信号と、前記災害危険度が低である前記災害危険度に基づく前記発光制御信号とは、前記照明器具に対する発光を異なる発光とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、警報用光源は常用光源よりも前方で照明器具の前部に配置され警報用光源からの発光の視認性が向上した構成であって、通信機能により複数の街路灯の照明器具の常用光源または警報用光源に発光を指示することができるようにしたので、災害が発生した場合などに実時間で危険地域と安全地域の報知が可能となり、特定地域の防災管理に有効なシステムを構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1に示す本発明の照明器具1は、後述の自然光系あるいは白色系で発光するLEDチップ16aにレンズを被着した状態を示すもので、
図2に反射板16bを装着した状態を示す。同図に示すように本体11は中空であって下面に投光用の開口11aを有し、支柱などへの固定フランジ11bとともにアルミダイキャストなど耐蝕性に優れた素材により一体成型されている。
【0014】
前記中空本体11の先端には透光カバー13の先端に連結したヒンジ金具12aを回動可能に備え、透光カバー13を開口11aから解放したとき、中空本体11からの脱落を防止するようにしている。また、中空本体11の後端部には係止金具12bを備え、透光カバー13の開口11aへの止着が可能となるようにしている。なお、中空本体11の後端部には光センサー14が配設されており、この光センサー14により中空本体外部の環境照度を示す信号が後述する制御回路33へ送出される。
【0015】
前記開口11aの前半部の開口段部11c上には熱伝導性に優れた金属素材の放熱板15が固定され、この放熱板15には基板16に常用光源となる複数のLEDチップ16aを配列したLEDアレイを備え、この基板16の前方の基板17に非常用光源となる複数のLEDチップ17aを配列したLEDアレイを備える。なお、放熱板15の常用光源および非常用光源の配設位置に複数の通孔を形成し、この通孔に砲弾型LEDを装着して固定するようにしてもよい。
【0016】
さらに、前記放熱板15には発光によるインジケータ機能と回路開閉機能を一体に備えた点検スイッチ18および非常用光源の点灯時において点灯モードの切り換えが可能となるようにするモードスイッチ19を設けてある。以上のように構成された放熱板15の裏面には、
図3に示すように常用光源となる複数のLEDチップ16aを点灯するための制御回路モジュール21および非常用光源となる複数のLEDチップ17aを点灯するための制御回路モジュール22が配設されている。
【0017】
図4は上記構成の放熱板15を中空本体11の前半部に固定した状態を示すもので、かかる取付状態により放熱板15の後端部に有する仕切板15aが中空本体11内のほぼ中央で起立状態となり、前室FRと後室BRに仕切られた状態となる。この前室FRには発熱要素となる前記制御回路モジュール21、22が臨むことになるが、さらに蓄電池充電用のトランス23を前室FRに配置することにより全ての発熱要素を前室FRに集約したことになる。このように構成したことにより、前室FRは放熱板15で封止される一方、
図5に示すように放熱板15に連結されネジ止め24aされた遮蔽板24により後室BRは封止されることになる。
【0018】
つぎに、後室BRへの蓄電池26の取付構造について説明する。本発明の照明器具1は屋外に設置されることを前提とするもので、風雨、震災などによる振動にも耐久性のある構造でしかも交換メンテナンス作業が容易であるようにしなければならない。そこで
図6に示すように、蓄電池26の外周面を保持する保持金具27に蓄電池26を内包して取付ネジ28により中空本体11の支持ボス11dに固定するようにした。
【0019】
前記保持金具27の取付片27aには長孔27a−1が形成されており、この長孔27a−1に取付ネジ28を固定するようにしたので、この取付ネジ28を緩めた状態で蓄電池26を保持したまま保持金具27を後方へ移動して蓄電池26を取り出すことができ、蓄電池26の落下を防止しつつ点検交換が可能となる。
【0020】
蓄電池26の取り付けにあたり、
図4、
図6に示すように断熱緩衝材29a、29bを介装しておくことにより、断熱性および耐震性を向上することができる。なお、
図6に示すように中空本体11の内面の蓄電池26の取付位置にリブ11aを形成しておくことにより、断熱緩衝材29bと中空本体11の内面との間に間隙が形成され、これにより中空本体11の熱が蓄電池26に直接伝わらないようにすることができ、断熱効果を促進することができる。
【0021】
つぎに、警報用光源の取付構造について説明する。中空本体11に配設する常用光源および非常用光源は下方を照明範囲とすることから、LEDチップ16a、17aは下方に向けて取り付けるようにする。ところが、警報用光源からの発光は視認し易いようにするため、中空本体11の側部から照射されるようにすることが好ましい。
【0022】
そこで本発明の第1の例では、
図1、
図2に示すように中空本体11の先端側部の両側に警報用光源となる高輝度で砲弾型の警報用LED40a、40bを直接固定するようにした。この場合、警報用LED40aは、常用光源16a、非常用光源17aのLEDの自然光系あるいは白色系に対し、例えば赤色のような発光色、警報用LED40bは、例えば緑色のような発光色が得られるものとする。なお、この警報用光源に単体で赤色、緑色、青色の3原色を発光する3原色LEDを採用し、赤色、緑色の発光色の何れもが得られるようにしてもよい。
【0023】
一方、本発明の第2の例では、
図7に示すように中空本体11の先端部に仕切板15bを立設して空室ERを形成し、この空室ERを覆う部分のカバー11eを透光性の素材で構成する。そして、この空室ERに臨む放熱板15の先端部に第1の例と同様の警報用LED40a、40bを配設する。なお、この第2の例の場合も警報用光源に3原色LEDを採用して赤色、緑色の何れをも発光させるようにしてもよい。
【0024】
上記第1、第2の例において、採用する各LEDは1色の発光に1個とは限らず、輝度を向上するため複数個のLEDを同時発光させるようにしてもよい。また、発光色は2色とは限らず、上記例の赤色、緑色の他に、例えば注意を促すために黄色に発光するLEDを加えるようにしてもよい。さらに、危険状態を報知する目的に特化するのであれば、例えば赤色を発光するLEDのみを配設してこれを点滅するようにしてもよい。
【0025】
つぎに、本発明の照明器具1を駆動するための電気系制御部30を
図8に基づいて説明する。同図に示すように商用交流電源ACの一方は蓄電池26を常時充電する充電回路31に接続され、他方は常開リレー接点32を介して常用光源点灯回路35に接続されている。前記充電回路31ではLEDチップ17aが点灯するに要する直流電圧の電気を蓄電池26に供給するとともに、制御回路33を介して非常用光源点灯回路36に供給される。前記蓄電池26への充電状態のモニターは点検スイッチ18に内蔵したLED18aの発光状態で確認することができる。なお、前記蓄電池26への充電用の電気は、中空本体11に一体あるいは別体に設けたソーラーパネルSPから供給するようにしてもよい。
【0026】
前記制御回路33はUPUを主体にしたハイブリッド構成で、光センサー14、点検スイッチ18,モード設定回路34からの信号を入力する。この制御回路33の主な制御機能は、光センサー14により検出された環境照度の値が夜間を示すと判断したとき、常開リレー接点32を閉成して商用交流電源ACを常用光源点灯回路35に供給し、LEDチップ16aを点灯して常用の照明機能を果たすようにする。
【0027】
一方、停電により商用交流電源ACの供給が停止した場合は、光センサー14により検出された環境照度の値が夜間を示すと判断したとき、これを監視している制御回路33が蓄電池26の直流電源を非常用光源点灯回路36に供給し、LEDチップ17aを点灯して非常時の照明機能を果たすようにし、光センサー14により検出された環境照度の値が昼間を示すと判断したとき、LEDチップ17aを消灯して蓄電池の電気の浪費を抑制し、非常用の照明機能をより長期間果たせるようにする。
【0028】
前記制御回路33にはモード設定回路34が接続されており、モードスイッチ19により非常用光源の各種の点灯モードの設定が可能となるようにしている。モード設定回路34にタイマー機能を備えておくことにより、震災により停電が発生し長期化するような場合、夜間の非常点灯を、例えば4〜6時間に抑えて数日間の点灯が可能となるようにすることができる。また、タイマー機能とともにLEDチップ17aを減光する調光機能を備えておくことにより、
図9に示すような非常点灯の制御が可能となり、非常点灯の期間のプログラムが可能となるフェイルセーフ機能が得られる。なお、上述した制御回路33の処理の流れを
図10に示す。
【0029】
つぎに、上述した警報用光源の発光制御の流れを以下に説明する。
図11は本発明の照明器具1を仮想の特定地域に複数設置した状態の例を示す模式図であり、支柱Pの先端に本発明の照明器具1を設置して街路灯TL1〜3となるようにしてある。前記支柱PにはアンテナANTが備えられ、情報発信源となる基地局BCが送られてくる電波の受信が可能となるようにしてある。各街路灯TL1〜3は個々にID(認識記号)が付与されており、基地局BCからのアクセスは街路灯TL1〜3の個々に、あるいは特定した範囲の複数の街路灯に共通のIDを付与してグループ管理するようにしてもよい。
【0030】
前記基地局BCは地方自治体のような公的機関の運営管理が好ましく、この基地局BCには特定地域毎に設置された送受信機TRとの交信が可能となるようにし、例えば、全国瞬時警報システム(J−ALERT)から得られた災害情報の受信が可能となるようにする。前記基地局BCへの災害情報の提供は、警察本部、消防署、海上保安機関などからの情報も受け入れるようにしておくことにより、発生した災害の状況をより正確に実時間で把握することが可能となる。
【0031】
前記基地局BCから受信した災害情報信号(発光制御信号)は
図8に示す電気系制御部30の通信制御部37に入力する。通信制御部37は災害情報信号を受信すると、ID格納部38から自身に付されたIDを読み出し、受信した災害情報信号に付されたIDとの照合を行う。
【0032】
ID照合が完了し街路灯TL1の通信制御部37に同時通報機能(ZigBee方式など)が組み込まれている場合は、受信した災害情報信号を特定された他の街路灯TL2、3へアンテナANTから転送する。街路灯TL1〜3は照明器具1が通信機能を備えていることから、ネットワークを構成する要素(ノード)となり、これにマルチホップ機能を備えておくことにより、防災マップ・ハザードマップに基づくリレー方式による警報が可能となる。なお、前記マルチホップ機能に基づく発光制御信号の転送にあたり、転送先である直近の照明器具との間で通信が不能となったとき、他の照明器具が転送先となる選択機能を照明器具1または基地局BCに備えておくことにより、通信ネットワークの信頼性を向上することができる。
【0033】
このようにして災害情報信号を受信した通信制御部37は、災害情報信号を制御回路33へ転送する。災害情報信号を入力した制御回路33は、その情報の内容から災害の程度に対応する発光制御信号を警報用光源点灯回路39に出力する。警報用光源点灯回路39は入力した発光制御信号に基づき、当該街路灯TLの地域が高い危険度である場合は、例えば、警報用LED40aの赤色発光の点滅または点灯により危険状態が非常に高いことを報知する。
【0034】
一方、津波などの影響を受けない高台地区などの街路灯TLが避難安全地域であるとの情報内容の災害情報信号を受信した場合は、制御回路33からの発光制御信号に基づき、当該街路灯TLの地域が避難安全地域であるということを報知する場合は、例えば、警報用LED40bの緑色発光の点滅または点灯により報知する。なお、上述した災害発生時の処理の流れを
図12に示す。
【0035】
上記のようにして警報用LED40aまたは警報用LED40bの点灯に伴って常用光源のLEDチップ16aの発光を非常用光源のLEDチップ17aの発光へ切り換えることにより、蓄電池26の電気の消費量を抑制することができる。なお、非常用光源のLEDチップ17aを採用せず、常用光源のLEDチップ16aを減光して蓄電池26の電気の消費量を抑制するようにしてもよい。
【0036】
このようにして警報用LED40a、40bが駆動されると、災害が発生した特定の地域は、
図13に模式的に示すように最も危険性の高い海岸沿いの地域A1を赤色で発光させ、避難安全地域A2を緑色で発光させることにより、当該地域の住民などは夜間においても危険・安全の判断を一目で行うことができる。
【0037】
なお、以上の実施例においては、警報用LED40a、40bを採用する構成としたが、警報用LED40a、40bを採用せず、常用光源とするLEDチップ16aに3原色LEDを採用し、通常時は自然光系あるいは白色系の発光を行い、災害発生時に赤色発光または緑色発光を行って報知機能が得られるようにしてもよい。
【0038】
本発明の上記の実施例は、照明器具本体1の外観を舟形であるようにしてあるが、この外観に限定されるものではなく、例えば発光部分が
図14に示すような球体の照明器具50にも実施することが可能である。即ち、同図に示すようにローゼット51に固定した球形の透光グローブ52の内部に電源ユニット53およびRGBコントローラ54を配置し、その上部に発光ユニット55を配置する。
【0039】
発光ユニット55は
図15に示すように、常用光源として自然光系あるいは白色系を発光するLED56、および彩色発光する3原色LED57を備える。前記LED56は街路方向となるように下向きの3面の反射面に取り付け、3原色LED57は遠方からの視認しやすいように上向きの反射面に取り付けてある。このように構成した一対の照明器具50を
図16に示すよう支柱58のステム59の端部に固定して街路灯となるようにする。この場合、ステム59の中空内部に電気系制御部30、通信制御部37、蓄電池26などを内蔵して構成することにより、LED56、3原色LED57の発光制御により上述した実施例と同一の災害対応の機能を得ることができる。
【0040】
なお、前記照明器具50の内側に必要に応じて仮想線で示すような反射板(シェード)60を3原色LED57側に配設しておくことにより、3原色LED57の彩色された発光光が反射板60に照射され、常用光源のLED56からの自然光系あるいは白色系の背景色となる彩色光を同時に得ることができる。これにより3原色LED57からの彩色を任意に設定することができるので、例えば季節に応じて暖色あるいは寒色を選定することができ、自然光系あるいは白色系の背景色として街路の美観を向上することができる街路灯となる。また、通信制御機能を備えていることにより、複数の照明器具50の彩色光の変更を一括して同時に、または個々に実行することができる。また、3原色LED57からの発光を利用して上述した災害発生時の赤色発光または緑色発光を行って報知機能を得ることができる。