【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(空孔率の評価)
比重は電子比重計(アルファーミラージュ(株)製 MD-3005)を用いて測定した。また、空孔率は下記式を用いて算出した。
空孔率(%)=(1−ポリイミド多孔体の比重/ポリイミド無孔体の比重)×100
【0035】
(平均孔径及び孔径分布の評価)
平均孔径及び孔径分布は、走査電子顕微鏡(日本電子(株)製 JSM-6510LV)を用いて多孔形状を観察することにより行った。サンプルを剃刀にて切断して、断面は露出させた。さらに表面に白金蒸着後、観察を行った。平均孔径及び孔径分布(半値全幅)は、SEM画像解析より算出した。画像解析は、SEM像に2値化を施し、孔を識別後、孔径を算出し、ヒストグラム化した。解析ソフトはImageJを用いた。また、孔径評価における孔径は、より実際の構造を表している最大径を値として適用した。
【0036】
(電気特性の評価)
PNAネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー社製)、SPDR共振器を用いて、10GHzの比誘電率および誘電正接を測定した。また、ベクトルネットワークアナライザ、開放型共振器を用いて60GHzの比誘電率および誘電正接を測定した。
【0037】
(曲げ時の機械強度の評価)
曲げ時の機械強度は、多孔フィルムを90°の角度になるまで折り曲げ、その際の破壊の有無について観察し、評価した。
【0038】
(液浸性の評価)
ポリイミド多孔体断面を剃刀にて切断して、露出させた。赤色浸透液(太洋物産(株)製NRC-ALII)に5分間浸漬後、表面に付着した浸透液をふき取った。ポリイミド多孔体をさらに露出断面に対し垂直に切断し、液浸長を光学顕微鏡により評価した。
【0039】
(潰れ評価)
ポリイミド多孔体を50mm×50mmに切り出し、熱プレスを用いて、180℃、3MPaで60分間加圧した。プレス前後での厚みを測定し、その値から、プレス後の厚みの減少を変化率として算出した。
【0040】
(マイグレーション試験)
ポリイミド多孔体に、1.52mmピッチで孔径が0.3mmのスルーホールを作製し、スルーホールにプラス電極とマイナス電極とを形成し、85℃/85%RHにおいて電極間に60Vの電圧を印加して、絶縁抵抗値を測定した。
【0041】
参考例
(ポリイミド前駆体[BPDA/PDA, DPE]の合成)
撹拌機および温度計を備えた1000mlのフラスコに、p-フェニレンジアミン(PDA)43.2 gおよびジアミノジフェニルエーテル(DPE)20gをいれ、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)768.8gを加えて撹拌し、溶解させた。次いで、この溶液にビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147gを徐々に添加し、40℃にて2時間撹拌し、反応促進した。さらに75℃にて12時間撹拌し、エージング処理を行い、固形分濃度20wt%のポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体の組成は物質量比でPDA:DPE:BPDA=0.8mol:0.2mol:1molである。
【0042】
実施例1
参考例で得られたポリイミド前駆体溶液に重量平均分子量が400のポリプロピレングリコール(日油(株)製 グレード:D400)をポリイミド樹脂前駆体100重量部に対し200重量部添加し、さらにジメチルアセトアミドを400重量部加え、撹拌して透明な均一溶液を得た。得られた溶液にイミド化触媒として2-メチルイミダゾールを4.2重量部、化学イミド化剤として安息香酸無水物を5.4重量部添加し、配合液とした。この配合液をダイ方式でPETフィルムまたは銅箔に塗工し、85℃で15分間熱風乾燥させて、厚み100μmの相分離構造を有するポリイミド前駆体フィルムを作製した。
このフィルムを40℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、8時間流通することで、ポリプロピレングリコールの抽出除去および残存NMPの相分離、孔形成を促進した。その後、二酸化炭素を減圧し、ポリイミド前駆体の多孔フィルムを得た。
さらに得られたポリイミド前駆体の多孔フィルムを真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムを得た。
【0043】
実施例2
参考例で得られたポリイミド前駆体溶液に重量平均分子量が400のポリプロピレングリコール(日油(株)製 グレード:D400)をポリイミド樹脂前駆体100重量部に対し200重量部添加し、さらにジメチルアセトアミドを400重量部加え、撹拌して透明な均一溶液を得た。得られた溶液にイミド化触媒として2-メチルイミダゾールを4.2重量部、化学イミド化剤として安息香酸無水物を1.1重量部添加し、配合液とした。この配合液をダイ方式でPETフィルムまたは銅箔に塗工し、85℃で15分間熱風乾燥させて、厚み100μmの相分離構造を有するポリイミド前駆体フィルムを作製した。
このフィルムを40℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、8時間流通することで、ポリプロピレングリコールの抽出除去および残存NMPの相分離、孔形成を促進した。その後、二酸化炭素を減圧し、ポリイミド前駆体の多孔フィルムを得た。
さらに得られたポリイミド前駆体の多孔フィルムを真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムを得た。
【0044】
実施例3
参考例で得られたポリイミド前駆体溶液に重量平均分子量が400のポリプロピレングリコール(日油(株)製 グレード:D400)をポリイミド樹脂前駆体100重量部に対し200重量部添加し、さらにジメチルアセトアミドを400重量部加え、撹拌して透明な均一溶液を得た。この配合液をダイ方式でPETフィルムまたは銅箔に塗工し、80 ℃で15分間熱風乾燥させて、厚み100μmの相分離構造を有するポリイミド前駆体フィルムを作製した。
このフィルムを40℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、8時間流通することで、ポリプロピレングリコールを抽出除去した。その後、二酸化炭素を減圧し、ポリイミド前駆体の多孔フィルムを得た。
さらに得られたポリイミド前駆体の多孔フィルムを真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムを得た。
【0045】
実施例4
参考例で得られたポリイミド前駆体溶液に重量平均分子量が400のポリオキシエチレンジメチルエーテル(日油(株)製 グレード:MM400)をポリイミド樹脂前駆体100重量部に対し200重量部添加し、さらにNMPを150重量部加え、撹拌して透明な均一溶液を得た。得られた溶液にイミド化触媒として2-メチルイミダゾールを4.2重量部添加し、配合液とした。この配合液をダイ方式でPETフィルムまたは銅箔に塗工し、120℃で30分間熱風乾燥させて、厚み100μmの相分離構造を有するポリイミド前駆体フィルムを作製した。
このフィルムを40℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、8時間流通することで、ポリオキシエチレンジメチルエーテルの抽出除去および残存NMPの相分離、孔形成を促進した。その後、二酸化炭素を減圧し、ポリイミド前駆体の多孔フィルムを得た。
さらに得られたポリイミド前駆体の多孔フィルムを真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムを得た。
【0046】
実施例5
参考例で得られたポリイミド前駆体溶液に重量平均分子量が400のポリオキシエチレンジメチルエーテル(日油(株)製 グレード:MM400)をポリイミド樹脂前駆体100重量部に対し200重量部、および粒径2μm程度のPTFE粉末を10重量部添加し、さらにNMPを150重量部加え、撹拌して透明な均一溶液を得た。得られた溶液にイミド化触媒として2-メチルイミダゾールを4.2重量部添加し、配合液とした。この配合液をダイ方式でPETフィルムまたは銅箔に塗工し、120℃で30分間熱風乾燥させて、厚み100μmの相分離構造を有するポリイミド前駆体フィルムを作製した。
このフィルムを40℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、8時間流通することで、ポリオキシエチレンジメチルエーテルの抽出除去および残存NMPの相分離、孔形成を促進した。その後、二酸化炭素を減圧し、ポリイミド前駆体の多孔フィルムを得た。
さらに得られたポリイミド前駆体の多孔フィルムを真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムを得た。
【0047】
比較例
参考例で得られたポリイミド前駆体溶液に重量平均分子量が400のポリプロピレングリコール(日油(株)製 グレード:D400)をポリイミド樹脂前駆体100重量部に対し300重量部添加し、さらにジメチルアセトアミドを400重量部加え、撹拌して透明な均一溶液を得た。この配合液をダイ方式でPETフィルムまたは銅箔に塗工し、140℃で20分間熱風乾燥させて、厚み100μmの相分離構造を有するポリイミド前駆体フィルムを作製した。
このフィルムを40℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、8時間流通することで、ポリプロピレングリコールを抽出除去した。その後、二酸化炭素を減圧し、ポリイミド前駆体の多孔フィルムを得た。
さらに得られたポリイミド前駆体の多孔フィルムを真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムを得た。
【0048】
実施例1〜3及び比較例で得られたフィルムについて測定された結果を、表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
結果から明らかであるように、本発明によるフィルムは、高周波で低い誘電率及び誘電正接を示し、優れた電気的特性を有するものであるとともに、曲げ時の機械物性の点でも優れている。
【0051】
次に、実施例4及び5で得られたフィルムについて測定された結果を、表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
結果から明らかであるように、多孔構造が独泡構造である本発明によるフィルムは、優れた電気的特性を有するものであるとともに、液浸性や耐プレス性に優れ、加工後も高い絶縁抵抗値を示すことから、回路基板加工性の点でも優れている。