特許第6567594号(P6567594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567594
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】スクリューバー製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 1/00 20060101AFI20190819BHJP
   B21C 19/00 20060101ALI20190819BHJP
   B21C 37/04 20060101ALI20190819BHJP
   B21F 1/02 20060101ALI20190819BHJP
   B21F 7/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B21C1/00 F
   B21C19/00
   B21C37/04 B
   B21F1/02 B
   B21F7/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-92935(P2017-92935)
(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-130758(P2018-130758A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-25475(P2017-25475)
(32)【優先日】2017年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513218123
【氏名又は名称】株式会社ノブハラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】延原 巌
(72)【発明者】
【氏名】延原 吉紀
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−055349(JP,A)
【文献】 特開昭52−014563(JP,A)
【文献】 特開平06−039466(JP,A)
【文献】 特開2001−212717(JP,A)
【文献】 特開昭53−002374(JP,A)
【文献】 特開2003−039103(JP,A)
【文献】 特開平05−141409(JP,A)
【文献】 特開平06−285546(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0123876(US,A1)
【文献】 中国実用新案第204685677(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00−19/00
B21C 37/00−43/04
B21F 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスを通して材料線材を多角形断面の完成線材に塑性変形させながら前記完成線材を巻き取る引抜加工ステップと、
前記完成線材の曲がり癖を直線機の回転体を用いて除去する直線加工ステップと、を含むスクリューバーの製造方法であって、
前記回転体が前記完成線材に捩じりを付与することを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のスクリューバーの製造方法において、
前記ダイスは周方向に回動しないよう固定されることを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のスクリューバーの製造方法において、
前記ダイスの開口部が多角形断面を有することを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項4】
請求項2記載のスクリューバーの製造方法において、
前記ダイスの開口部が略多角形断面を有することを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項5】
直線機の回転体を用いて多角形断面の棒材に捩じりを加えることを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項6】
直線機の回転体を用いて略多角形断面の棒材に捩じりを加えることを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項7】
請求項5または6記載のスクリューバー製造方法において、
前記棒材は引抜加工によって製造されることを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項8】
請求項5または6記載のスクリューバー製造方法において、
前記棒材は押出加工によって製造されることを特徴とするスクリューバー製造方法。
【請求項9】
請求項5または6記載のスクリューバー製造方法において、
前記棒材は圧延加工によって製造されることを特徴とするスクリューバー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリューバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリューバーとは高張力異形鉄筋の一種であり、多角形断面の線材の両端を把持し捩じったような形状のものを言う。ここで「捩じる」とは、「細長いもの」の両端に力を加え、互いに逆の方向に回すこと(小学館「大辞泉」)と定義されており、本書でもこの定義で用いる。
【0003】
図1は、一般的なスクリューバーを製造する引抜加工機を表す概念図である。なお、あくまでも本図は概念図であり、実際の製造機械はもっと複雑なものであることは言うまでもない。
【0004】
この引抜加工機は、ダイス901、ダイスホルダー902、材料線材供給用ボビン911、引抜用ボビン912、発動機920、動力伝達機構922、テーブル990を含んで構成される。
【0005】
線材Aは、加工中の線材を表す。本図は加工中の図であるため、材料のままの断面を有する材料線材A−1と加工後の多角形断面を持つ完成線材A−2の双方が線材Aに含まれる。
【0006】
線材Aは、当初材料線材供給用ボビン911に材料線材A−1として巻き取られた形で用意される。材料線材供給用ボビン911に巻き取られた状態では線材Aは全て材料線材A−1である。
【0007】
ダイス901は材料線材A−1を完成線材A−2に塑性変形させるための略円筒形の形状を持つ塑性変形加工用のダイスである。線材Aは、ダイス901の貫通孔901aを通過することで材料線材A−1から完成線材A−2に塑性変形する。
【0008】
図2は、ダイス901の外観を表す正面図である。また、図3はダイス901の外観を表す斜視図である。このダイス901には貫通孔901a及び勘合穴901dが存在する。
【0009】
貫通孔901aは、略円筒形の中心軸に引抜加工の対象となる線材Aを通すためにダイス901に設けられた孔である。この貫通孔901aの形状で完成線材A−2の断面形状が決定される。なお本図では貫通孔901aは四角形であるが、三角形または五角形以上の断面であっても良い。
【0010】
図10は、一般的なダイス901の貫通孔901aの断面形状を表す断面図である。
【0011】
ダイス901はアプローチ部p1、ベアリング部p2、バックリリーフ部p3を含んで構成される。
【0012】
アプローチ部p1は、材料線材A−1を引抜加工用ダイス901内に引き入れ、外径を絞るための入り口となる引抜加工用ダイス901の一部分である。アプローチ部901aはドローイングマシン903によってくわえられる引抜力を圧縮力に変換する。なお、現実に使用されているダイスにはアプローチ部よりも開度が大きいエントランス部が設けられている場合もある。しかし本明細書では、エントランス部は設計事項であるとして、この説明及び図上における番号の付与は省略している。
【0013】
ベアリング部p2は、完成線材A−2の寸法を決める引抜加工用ダイス901の部分である。当然、ベアリング部p2の断面は貫通孔901aのもっとも狭い開口部となる。以下「貫通孔の開口部」と用いるときは貫通孔のベアリング部を、「貫通孔の開口部の形状」とは「ベアリング部の引抜方向から直交する開口断面の形状」を指すものとする。
【0014】
バックリリーフ部p3は、完成線材A−2の表面を傷つけないために完成線材A−2から離れるようにテーパーをつけたダイス901中の一部分である。
【0015】
勘合孔901dは、ダイスホルダー902中にダイス901を固定するための勘合部である。また、ダイスホルダー902がダイス901を回転させスクリューバーを製造する際には勘合穴901dを介して駆動力がダイス901に伝達される。
【0016】
ダイスホルダー902は、引抜用ボビン912から軸方向(図3に図示)に加えられる線材Aを引き抜く力に負けることなくダイス901を保持するための保持具である。また、スクリューバーを作るためダイス901をその周方向(図2に図示)に回動する必要があり、ダイスホルダー902はダイス901に対してその駆動力も提供する。そして、その駆動力は、発動機920から動力伝達機構923を介してダイス901の嵌合孔901dに伝達される。
【0017】
ダイスホルダー902は、ダイス901を任意の周方向に回動させる。なお、捩じり量が同一のスクリューバーを造る際には、一定の方向に等速度で回動させる必要がある。またその際には、引抜用ボビン912の巻取速度も一定であることが望ましい(現実には巻き取りの前後で駆動軸912aからの距離が変動するので厳密には難しい)。
【0018】
材料線材供給用ボビン911は、テーブル990に回動可能に設置された筒体である。この材料線材供給用ボビン911は線材Aを引っ張る力によって軸911aを中心に回動する。
【0019】
引抜用ボビン912も、テーブル990に回動可能に設置された筒体である。この引抜用ボビン912も駆動軸912aを中心に回動可能に設置される。材料線材供給用ボビン911と引抜用ボビン912の大きな違いは、後述する発動機920から直接駆動力が伝達されるか否かである。
【0020】
加工を行う際、動力伝達機構922を経由して伝達された発動機920の駆動力(回転力)が駆動軸912aに伝達され、この伝達された力で引抜用ボビン912は駆動軸912aを中心に回動する。この動力伝達機構922を通して伝えられた回転力が、引抜加工を行う際の線材Aをダイス901から引き抜く力(引抜駆動力)となる。
【0021】
なお、引抜用ボビン912は駆動軸912aから着脱可能なように設計されることが望ましい。完成線材A−2を直線機に掛ける際に引抜用ボビン912を共用できれば工数が削減できるからである。
【0022】
引抜駆動力は単位時間当たりの引抜量を決定する。従って、引抜駆動力が大きいほど生産効率が上がり、製品原価が低下する。よって、引抜駆動力が大きいほど生産計画の面では好ましい。
【0023】
加工に際しては、材料線材供給用ボビン911に巻き取られた線材Aの端部を細くするなどしてダイス901に設けられた貫通孔901aを通した後、引抜用ボビン912に固定する。このようにすることで、材料線材供給用ボビン911に巻かれた材料線材A−1から所望断面のスクリューバー(完成線材A−2)を製造し、別の引抜用ボビン912に完成線材A−2を巻きとることが可能になる。
【0024】
なお本明細書における「周方向」とは、線材Aの軸心Xを中心とした回転方向をいう。図2には周方向が記載されているが、必ずしも図の矢印方向でなければならないというものではなく、逆回転方向であっても良い。
【0025】
一方本明細書における「軸方向」とは、線材Aの軸心Xの前後方向、すなわち線材Aの引抜方向をいう。
【0026】
発動機920は、引抜加工機が必要とする動力を提供する為のモータなどである。
【0027】
動力伝達機構922は、主動力伝達軸920aから伝えられる駆動力を適当なトルクに変換して駆動軸912aに伝達する為の歯車機構等である。また、動力伝達機構923は、主動力伝達軸920aから伝えられる駆動力を適当なトルクに変換してダイスホルダー902に伝達する為の歯車機構等である。この図では歯車を用いた機械工学的な動力伝達で表しているが、コンピュータ制御よる電気的な駆動力の伝達で実現しても良い。いずれにしても、引抜用ボビン912の回転速度とダイスホルダー902によるダイス901の回転は同期する必要がある。
【0028】
このようにダイス901を回転させることで、多角形断面を捩じった完成線材A−2を製造することが可能となる。完成した線材A−2は引抜用ボビン912に巻き取られる。引抜用ボビン912がテーブル990から取り外されて、後工程にあたる直線機での作業に完成線材A−2が持ち込まれる。
【0029】
引抜用ボビン912に巻き取られるということは、完成線材A−2に曲がり癖がついているということになる。従って、最終的にはこの引抜用ボビン912ごと完成線材A−2を直線機に移動して、完成線材A−2の曲がり癖を除去する。そして、その後必要な長さに切断し、実際に用いる長さのスクリューバーを製造する。
【0030】
このようなスクリューバーの製造方法に対する改善は、従来より出願人が積極的に提案してきた。
【0031】
出願人がかって行った特願2015−215347(特許文献1)では、スクリューバーの単位長さを短くし、スクリューバーの捩じり量を増やす手段、並びにその捩じり量を増やしたスクリューバーの製造方法を提供する手段を開示した。すなわち、線材の引抜方向を基準としたダイスの周方向への回転方向と直線機の送り方向を基準とした回転体の回転方向をそろえることで完成線材の捩じり量を増やすことを開示した。
【0032】
また出願人は特開2015−055349(特許文献2)で、角の丸いダイスを用いることで丸断面の線材とおなじように(出願時にはかかる名称は付していなかったが)スクリューバーを伸線できる旨を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特願2015−215347
【特許文献2】特開2015−055349公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかし、直線機の回転体によって「ねじりを付与されているスクリューバー」の単位長さあたりの捩じり量が増やせるのであれば、直線機によって「ただの多角形断面を持つ線材」に直線機で捩じりを付与することでスクリューバーにすることも可能であることに気付いた。
【0035】
これは、従来の1)伸線機、2)直線機の工程のうち、1)伸線機の工程の選択肢を増やすことになる。すなわち、捩じりを付与しなければダイスを使わなくても角断面の線材を作る手段はあり、これらのうち安価なものを用いてスクリューバーを作ることが可能になる。
【0036】
また、特許文献2で示したように、ツイストバーを従来の丸断面の線材と同じように伸線しようとすると多角形断面の角を丸めスクリューバーとする必要があった。グレーチングの様に、「より角の立ったようなもの」が求められるような場合には特許文献2で示した方法では好ましくない。
【0037】
本発明の目的は、伸線機のダイスを周方向に回動することなく、スクリューバーを製造する方法を提供することにある。
【0038】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【0039】
なお、本書における「スクリューバー」とは、断面形状には特にこだわるものでなく製造過程で「捩じり」を線材に加えているものを言う。従って断面形状は特に定めるものではなく、引用文献1のように丸断面であっても良い。当然に、断面の「角」を丸くしたもの、すなわち出願人が特願2015−175256で開示した製造方法で作った線材だけでなく、一般的なツイストバーも本願のスクリューバーの概念に当然に含まれるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明に関わる代表的なスクリューバー製造方法は、ダイスを通して材料線材を多角形断面の完成線材に塑性変形させながら完成線材を巻き取る引抜加工ステップと、この完成線材の曲がり癖を直線機の回転体を用いて除去する直線加工ステップと、を含み、この回転体が完成線材に捩じりを付与することを特徴とする。
【0041】
このスクリューバーの製造方法において、ダイスは周方向に回動しないよう固定されることを特徴としても良い。
【0042】
このスクリューバーの製造方法において、ダイスの開口部が多角形断面を有することを特徴としても良い。
【0043】
このスクリューバーの製造方法において、ダイスの開口部が略多角形断面を有することを特徴としても良い。
【0044】
本発明に関わる別の代表的なスクリューバー製造方法は、回転体を用いて多角形断面の棒材に捩じりを加えることを特徴とする。
【0045】
本発明に関わる別の代表的なスクリューバー製造方法は、回転体を用いて略多角形断面の棒材に捩じりを加えることを特徴とする。
【0046】
このスクリューバー製造方法において、棒材は引抜加工によって製造されることを特徴としても良い。
【0047】
このスクリューバー製造方法において、棒材は押出加工によって製造されることを特徴としても良い。
【0048】
このスクリューバー製造方法において、棒材は圧延加工によって製造されることを特徴としても良い。
【0049】
これらのスクリューバー製造方法を用いて製造したスクリューバーも本発明の射程に含まれる。
【0050】
また、このスクリューバーを用いた金属金網も本発明の射程に含まれる。
【発明の効果】
【0051】
本発明を適用することで、捩じりを付与しない多角形断面の線材をスクリューバーとすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】一般的なスクリューバーを製造する引抜加工機を表す概念図である。
図2】ダイスの外観を表す正面図である。
図3】ダイスの外観を表す斜視図である。
図4】一般的な直線機の外観を表す図である。
図5】一般的な直線機の回転部の内部構造を表す断面図である。
図6】本発明に関わるスクリューバーを直線機に掛ける際のダイス及び回転体の動きを表す概念図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に関わるダイスの貫通孔を表す斜視図である。
図8】本発明に関わる完成線材の引抜加工直後の斜視図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に関わる完成線材の直線機による加工後の斜視図である。
図10】一般的なダイスの貫通孔の断面形状を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下本発明の各実施の形態を図に基づいて説明する。
(従来の後工程の説明)
【0054】
まず、引抜用ボビン912に巻かれた完成線材A−2がどのような形で利用されるスクリューバーに加工されるか説明する。
引抜用ボビン912に完成線材A−2がまかれるということは、完成線材に曲がり癖がついているということであり、そのままの状態では金網などの用途に使うことができない。これは通常の丸断面形状を持つ鉄線を用いて金網を作る場合でも、スクリューバーを用いて金網を作る場合でも同じである。従って、直線機を用いてこの曲がり癖をとり、その後適当な長さに切断機で切断する必要がある。
【0055】
図4は一般的な直線機の外観を表す図である。また、図5は一般的な直線機の回転体800の内部構造を表す断面図である。
【0056】
従来の一般的な直線機は、回転体800と送りロール812、813から構成される。
【0057】
回転体800は、その内部に独立偏心ガイド801a、801b、801c、801d、801e、801f、801g、801h、801j、801k及びアジャスタボルト802a、802b、802c、802d、802e、802f、802g、802h、802j、802kが含まれる。
【0058】
回転体800は回転軸Pを中心として、その周方向に回動する。また回転体800の回転軸P上に完成線材A−2が送りロール812、813によって送られる。
【0059】
回転体800内の独立偏心ガイドは2個1対で構成される。この1対を偏心ユニットと称呼する。本図では、独立偏心ガイド801a、801bで1対、独立偏心ガイド801c,801dで1対、独立偏心ガイド801e、801fで1対、独立偏心ガイド801g、801hで1対、独立偏心ガイド801j、801kで1対となる。従って、本図の直線機では5対の偏心ユニットを持つ。
【0060】
この独立偏心ガイド1対が回転軸P上で送られる完成線材A−2を押圧することで、完成線材A−2の曲がり癖をとる。これを本図の直線機では5回繰り返すことで、完成線材A−2の曲がり癖をとる。そして、送りロール813の地点まで完成線材が到達した時には、完成線材A―2の曲がり癖は除去された状態になる。
【0061】
アジャスタボルト802a、802b、802c、802d、802e、802f、802g、802h、802j、802kは、対応する各偏心ガイドの位置を調整する為のボルトである。これを開け閉めすることで、回転体800内での対応する偏心ガイドの位置を調整することが可能になる。すなわち回転体800の回転軸Pからの偏心ガイドまでの距離を設定することが可能になる。
【0062】
なお、アジャスタボルトと独立偏心ガイドの対応は以下の通りである。
独立偏心ガイド : アジャスタボルト
801a : 802a
801b : 802b
801c : 802c
801d : 802d
801e : 802e
801f : 802f
801g : 802g
801h : 802h
801j : 802j
801k : 802k
【0063】
回転駆動機811は、軸方向に回転体800を移動させることなく、周方向に回転体800を回転させるためのモータなどの駆動機である。図ではで回転駆動機811が回転体800の前後でそれを保持し、回転体800を周方向に回動させる。
【0064】
送りロール812は完成線材A−2を回転体に引き込むための駆動力を伴う回転体である。引抜用ボビン912に巻き取られた完成線材A−2を送りロール812が回転体800の回転軸P上に引き込む。逆に送りロール813は曲がり癖が除去された完成線材A−2を送り出す。送り出された完成線材A−2は図示しない切断機によって適当な長さに切断される。
【0065】
送りロール812、813が完成線材A−2を引き込む速度が早ければ早い方が良いのは自明であろう。すなわち、完成品である切断されたスクリューバーの時間あたり製造本数は送りロール812、813の引き込み速度によって決定されるためである。
【0066】
しかし、送りロール812、813の送り速度が速くなればなるほど、回転体800の回動速度も速くしなければ十分に曲がり癖が除去できなくなる。よって、送りロール812、813の送り速度を上げた状態と上げる前の状態で同じ捩じり量のスクリューバーを製造するのであれば、送り速度を上げる前の回転体800のそれよりも回動速度を上げる、または返信ユニットの数を増やす必要がある。
【0067】
この回転体800が送りロール812、813によって送り込まれた完成線材A−2の周方向に回転することで回転体800中の独立偏心ガイド801a、801b、801c、801d、801e、801f、801g、801h、801j、801kが完成線材A−2の周りを回転し、完成線材A−2の曲がり癖を矯正する。
【0068】
(本発明の説明)
(第1の実施の形態)
図6は、本発明に関わるスクリューバーを直線機に掛ける際のダイス及び回転体の動きを表す概念図である。
【0069】
スクリューバーはその内部に残った残留応力によって強度を増している。しかし、この残留応力の付与は製造工程のどのタイミングで行っても完成品には問題とはならない。
【0070】
本発明においては、引抜加工機のダイス901を周方向に固定し回動させない。すなわちダイス901の回動量Sd=0である。よって、引抜加工機から出てきたばかりの完成線材A−2にはねじりが付与されない。従って、図6上では一本線、すなわち回動量なしとして表している。
【0071】
そして本発明では直線機の回転体800を任意の方向に回動量Srで回動させ、その中を捩じりが付与されていない完成線材A−2が通るのである。これにより、直線性を確保する直線機内の回転体800で完成線材A−2を捩じり、スクリューバーに残留応力を付与するのである。
【0072】
図7は本発明の第1の実施の形態に関わるダイス101の貫通孔101aを表す斜視図である。また、図8は、本発明に関わる完成線材A−2の引抜加工直後の斜視図である。
【0073】
本実施の形態ではダイス101の貫通孔101aのベアリング部の形状は略四角形の断面を有する。なお、本明細書では「四角形」の角を少なくとも1つ丸めた形状、すなわち1の「角」乃至すべての「角」を丸めたものも「略四角形」と呼ぶ。同様に、四角形を含む多角形の1の「角」乃至すべての「角」を丸めた形状を「略多角形」と称呼する。
【0074】
本実施の形態では引き抜き作業中ダイス101は回転しない。従ってこの段階では四角形断面の棒材である完成線材A−2ができる。この引き抜き直後の完成線材A−2を表すのが図8である。
【0075】
図9は、本発明の第1の実施の形態に関わる完成線材A−2の直線機による加工直後の斜視図である。
【0076】
本実施の形態では本図のように直線機で完成線材A−2に対して応力を付与する。この際、直線機の回転体800の各アジャスタボルトを一般的な使用時よりも締め気味にする。こうすることにより、回転体800が各独立偏心ガイドを介して完成線材A−2に与える力が大きくなり、単に「曲がり癖」を解消するのではなく積極的に捩じりを付与することになる。結果として棒材である完成線材A−2はスクリューバーに加工されることとなる。この加工後のスクリューバーを表すのが図9である。
【0077】
すなわち、ダイス901に頼ることなく、直線機の回転体800だけでスクリューバーに捩じりを付与している。これにより最大捩り強度、捩り弾性限度、弾性捩れ角を付与し、スクリューバーの強度及びそれを用いた金網の強度を与えることが可能になる。
【0078】
(本発明の効果)
丸断面の線材とほぼ同じ歩留まり条件でスクリューバー製造時にダイス901を回転させると、断面の「角」にある程度意図的に丸みをつけざるを得なかった。
【0079】
これに対し、図6のように回転体800のみを回動させると、断面の「角」がよりエッジを立てた状態でスクリューバーの製造が可能になる。アジャスタボルトの設定条件によっては「角」が鋭角を維持したままのツイストバーを製造することも視野に入っている。
【0080】
また、伸線工程において完成線材A−2に捩じりを付与すべくダイスを回動させる必要がないため、伸線時にダイスを用いる以外の手段の適用が可能になる。これにより製造者は工法選択の余地が生まれ、完成品の原価を低減させることが可能になる。
【0081】
例えば、ダイスを用いた伸線加工、引抜加工、押出加工、ローラーを用いた圧延加工など線材を作る工法が選択できるわけである。
【0082】
また、ダイスを回転させる必要がないため、ダイス101の寿命を延ばすことが可能になる。
【0083】
また、直線機の送り出し速度に応じて回転体の周方向の回転速度を一定に保つのが容易なため、ボビンを使うよりも単位送り長さあたりの捩じり量を精密に加工することが可能になる。
【0084】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【0085】
例えば、回転体800の長さを長くしかつ偏心ユニットの数を増やせば捩じり量が増加することも本発明の射程に含まれる。また偏心ユニットの数を調整することでスクリューバーの捩じり量を調整することも本発明の射程に含まれる。さらには直線機を複数台用意するまたは複数回通すことでスクリューバーの捩じり量を調整することも本発明の射程に含まれる。
【0086】
また、直線機の回転体に投入する完成線材A−2は必ずしも引抜加工で製造する必要はない。可能であれば押出加工で完成線材A−2を製造して、それを捩じっても何らの問題もない。本発明で重要なことは「直線機の回転体に投入する完成線材A−2をもっとも安価に入手できるものを用いてスクリューバーを製造できる」と言う点である。
【0087】
これは製造方法だけでなく、人件費の安い国で略多角形断面を製造し、それを輸入して国内で捩じりを付与する加工が可能であるということも意味する。本発明を実行するには回転体関連の細かなパラメータが必要であるが、これらの加工を国内で実施することで機密の漏えいを防ぐことも可能になる。
【0088】
また貫通孔101aのベアリング部形状は上記実施例では略四角形としているが、略三角形、略五角形、略五角形以上の略多角形であっても良い。
【0089】
また、図10ではベアリング部p2は全長にわたり同一の形状を有するものとしていた。しかし、ベアリング部の開口断面の面積が漸減する場合には、図10に関連する「貫通孔の開口部の形状」は最も引抜用ボビン912に近い個所の最狭部の開口断面の形状とすることは言うまでもない。もっとも狭い個所が完成線材A−2の断面形状を支配することとなるためである。
【0090】
さらにこれらのスクリューバーを用いて金網やグレーチングを作ることも本発明では当然に想定している。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に関わるスクリューバーの製造方法を用いることで、「エッジのたった」スクリューバーの製造に利用可能である。またこれまでの様に金網の製造に用いるだけでなく、この「エッジの立った」スクリューバーを用いて、グレーチングを製造することが可能になる。
【0092】
さらに、ダイスによる引抜加工以外の手段を用いて多角形断面を持つ線材を製造し、事後的に「捩じり」を付与することで、より製造工程に自由度を持たせることが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
A:線材、
A−1:材料線材、
A−2:完成線材、
P:回転軸、
X:軸心、
101、901:ダイス、
800:回転体、
801a、801b、801c、801d、801e、801f、801g、801h、801j、801k:独立偏心ガイド、
802a、802b、802c、802d、802e、802f、802g、802h、802j、802k:アジャスタボルト、
811:回転駆動機、
812、813:送りロール、
901d:嵌合穴、
902:ダイスホルダー、
911:材料線材供給用ボビン、
912:引抜用ボビン、
912a:軸
920:発動機、
922、923:動力伝達機構、
990:テーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10