(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直列に接続された複数のバッテリセル(C1〜C3)を有するバッテリパック(7a)であって、各バッテリセル(C1〜C3)が前記バッテリセル(C1〜C3)に並列に接続された抵抗器(R1〜R3)に関連付けられており、前記抵抗器(R1〜R3)のそれぞれが制御部(8)に接続された制御可能スイッチ(S1〜S3)に直列に接続されている、前記バッテリパック(7a)を平衡化する方法であって、
対応するバッテリセル(C1〜C3)の放電を開始するように前記スイッチ(S1〜S3)を選択的に開閉すること、
これにより、前記バッテリセル(C1〜C3)を前記バッテリパック(7a)の他のバッテリセルとの関連で平衡化すること、を含み、
a)各スイッチ(S1〜S3)の開閉状態を示す制御変数(u)を規定するステップ(15)と、
b)少なくとも、前記スイッチ(S1〜S3)が前記制御変数に応じて制御されることで生じる前記バッテリパック(7a)の電流損失に基づいて損失を決定するステップと、
c)前記ステップa)と前記ステップb)とを所定回数繰り返すステップと、
d)前記損失を最小にする制御変数を選択するステップ(16)と、
e)選択した前記制御変数に基づいて前記平衡化を開始するステップ(17)と、
を含むことを特徴とする、方法。
所定の制御変数によって生じる前記電流損失と、前記バッテリパック(7a)の平衡状態(SoB)との間の関係を規定する損失関数を実行して最小化することにより前記損失を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記電流損失と、前記バッテリパック(7a)全体についての前記平衡状態(SoB)の関数である値との和を、前記バッテリパック(7a)の各バッテリセル(C1〜C3)について計算するステップと、
前記バッテリパック(7a)の全てのバッテリセルのうち前記和が最小であるバッテリセルに基づいて前記制御変数を選択するステップと、を更に含む、請求項2に記載の方法。
各ビットが前記バッテリパック(7a)の対応するスイッチ(S1〜S3)の状態を示すバイナリベクトルの形態をとる前記制御変数(u)を規定するステップ(15)を更に含む、請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の方法。
前記ステップa)において、相対的に高い充電状態(SoC)を示すバッテリセルのみを用いることにより、前記制御変数(u)を規定するステップ(15a)を更に含む、請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の方法。
直列に接続された複数のバッテリセル(C1〜C3)を有するバッテリパック(7a)を平衡化するシステムであって、各バッテリセル(C1〜C3)が、前記バッテリセル(C1〜C3)に並列に接続された抵抗器(R1〜R3)に関連付けられており、当該抵抗器(R1〜R3)のそれぞれが、制御部(8)に接続された制御可能スイッチ(S1〜S3)に直列に接続されており、前記制御部(8)が、対応する前記バッテリセル(C1〜C3)の放電を開始するように前記スイッチ(S1〜S3)を選択的に開閉することで前記バッテリセル(C1〜C3)を前記バッテリパック(7a)の他のバッテリセルとの関連で平衡化するように構成されており、
前記制御部(8)は、a)各スイッチ(S1〜S3)の開閉状態を示す制御変数(u)を規定し(15)、b)少なくとも、前記スイッチ(S1〜S3)が前記制御変数に応じて制御されることで生じる前記バッテリパック(7a)の電流損失に基づいて損失を決定し、c)前記a)と前記b)とを所定回数繰り返し、d)前記損失を最小にする制御変数を選択(16)し、e)選択した前記制御変数に基づいて前記平衡化を開始する(17)ように構成されていることを特徴とする、システム。
コンピュータで実行されるとき、請求項1〜請求項6のいずれか一つに記載のステップを実行するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体。
【背景技術】
【0004】
車両分野において、代替的動力源、すなわち、従来の内燃機関に代えて使用される動力源による車両の推進力に関する研究開発が着実に増加している。特に、電動車両が、将来性のある代替的動力源として台頭している。
【0005】
今日の技術によると、車両は、電気機械のみによって又は電気機械及び内燃機関の両方を含む装置によって駆動可能である。後者の代替的動力源は、ハイブリッド車両(HEV)と呼ばれることが多く、例えば、都市部以外で運転する間において車両の駆動には内燃機関が使用される一方、都市部又は一酸化炭素や窒素の酸化物などの有害汚染物質の排出を抑制することが必要な環境などにおいて電気機械を使用可能なように利用することができる。
【0006】
電動車両に関する技術は、車両用のバッテリ関連技術などの電気エネルギー貯蔵システムの開発に密接に関わっている。今日の車両用の電気エネルギー貯蔵システムは、車両の電気機械に電力を供給するように構成されたシステムを構成する複数の充電式バッテリセルを有するバッテリパックを制御回路と共に含んでもよい。
【0007】
内燃機関と、充電式電気エネルギー貯蔵システムから動力を供給される電気機械とによって作動される車両は、プラグインハイブリッド電気車両(PHEV)と呼ばれることもある。プラグインハイブリッド電気車両は、通常、外部電源に接続することで充電可能な充電式バッテリセルを有するエネルギー貯蔵システムを使用している。充電中においては、車両の運転範囲を最適化するために、エネルギー貯蔵システム内には、大量のエネルギーが比較的短時間で供給される。このため、エネルギー貯蔵システムの実際の充電は、車両の制御部が外部電源による充電プロセスの実行を要求するプロセスを通じて適切に実施される。これは、エネルギー貯蔵システム及び外部電源が適切なコネクタエレメントを用いることによって電気的に接続された後に実行される。
【0008】
自動車の技術分野において、エネルギー貯蔵システムは、通常、多数のバッテリセルを有するバッテリパックを含む。一例として、プラグインハイブリッド車両を使用する場合、バッテリパックは、例えば、リチウム−イオンタイプであってもよい。600Vのリチウム−イオンバッテリパックが使用される場合、車両を運転するための所望の電圧を達成するには、直列に接続された約200個のバッテリセルが必要となる。車両の運転可能範囲は、バッテリパックの充電状態(SoC)(state of charge)など、特定のパラメータに応じて決まる。充電状態は、バッテリが充電不足又は過充電の状況で作動されることを防ぐために使用されると共に電気車両のエネルギーを管理するのに重要なパラメータである。このパラメータを直接測定することはできないので充電状態は推定される必要がある。
【0009】
さらに、バッテリは経時的に劣化することが知られており、例えば、セルの端子電圧、セルの容量及び各セルの抵抗などのバッテリパラメータによって推定される性能の低下を診断する必要がある。このような推定は、結果としてバッテリパックの作動の状態(status)を示すものとして使用可能な1つ以上のパラメータを測定するように構成されたセンサ装置によって実行され得る。
【0010】
一般に、バッテリパックの最適な特性を得ることが望ましい。従来、最適なバッテリ特性の要望は、バッテリセル均等化(equalization)と呼ばれるプロセスで達成可能であることが知られている。これは、時間の経過と共に、バッテリパックにおける各バッテリセルの電圧がセル間で異なってしまうためである。このようにセル間での平衡が損なわれると、バッテリ特性の劣化を生じる可能性があり、是正が必要となる。
【0011】
現在、セル均等化に関するいくつかの異なる方法が存在する。このような方法の1つとして、バッテリセルに並列に接続された抵抗器を通じて、他のバッテリセルとの差が顕著なセル電圧又は充電状態(SoC)を有するものと認められる選択されたバッテリセルを放電することが知られている。
【0012】
米国特許出願公開第2013/278218号明細書は、バッテリセルと並列に配置された複数の抵抗器と、抵抗器に直列に構成された複数のスイッチとを含む多数のバッテリセルを平衡化する回路を開示している。制御回路は、バッテリセルの検出電圧に応じてスイッチを駆動するように構成されている。バッテリの動作寿命もまた考慮されている。
【0013】
この方法の欠点は、均等化が実行されるバッテリセルスイッチの駆動により、バッテリセルから大量の漏洩電流が生じてしまうことにある。これにより、バッテリパック全体の効率が低下してしまう。
【0014】
結果として、バッテリパックのセルを均等化する公知のシステムが存在するものの、バッテリパックからの漏洩電流を最小限に抑える必要性という形態での課題がある。このようにすることで、バッテリパックの一般性能を最適化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の様々な態様について添付の図面を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本明細書に開示の方法及びシステムは、多数の異なる形態で実現可能であり、本明細書に記載の態様に限定されるものと理解されてはならない。
【0025】
まず、
図1を参照すると、クラッチ4を介して相互に接続された内燃機関2及び電気機械3を有する、いわゆる、プラグインハイブリッドタイプの、本実施形態によるバス1の形態をとる車両の簡略的な斜視図が示されている。内燃機関2及び電気機械3の両方を使用して、バス1を駆動することができる。
【0026】
電気機械3は、ギアボックス5に接続され、さらにこのギアボックス5がバス1の後車軸6に接続される。公知であるため詳細には説明を行わないが、内燃機関2及び電気機械3は、後車軸6を駆動するために使用可能である。本実施形態によると、電気機械3は、電動モータと発電機とを組み合わせたものとして使用され、内燃機関2のスタータモータとしても適切に使用され得る。
【0027】
バス1は、バッテリパック7aを含む電気エネルギー貯蔵システム7を搭載しており、さらにこのバッテリパック7aが、複数のバッテリセルを有する(詳細については
図1には示さない)。さらなる詳細については後述するように、バッテリセルは、直列に接続され、所望の電圧レベルを有する出力DC電圧を提供する。好ましくは、バッテリセルは、リチウム−イオンタイプのものであるが、他のタイプのものが使用されてもよい。
【0028】
エネルギー貯蔵システム7は、また、バッテリパック7aの動作状態を示す1つ以上の所定のパラメータを測定するように構成されたセンサ部7bを含む。例えば、センサ部7bは、バッテリパック7aの電圧と各バッテリセルのセル電圧とを測定するように構成可能である。さらに、センサ部7bは、バッテリ電流、すなわち、バッテリパック7aの出力電流、又は、各バッテリセル若しくはバッテリパック7a全体の温度などの代替的パラメータを測定するように構成可能である。さらなる詳細については後述するように、センサ部7bによって測定されるパラメータは、バッテリパック7aの状態を管理するために使用可能である。
【0029】
一実施形態によると、エネルギー貯蔵システム7は、
図1に示すように、バス1のルーフに配置される。エネルギー貯蔵システム7など、バス1の推進システムにおける上述したコンポーネントは、電気エネルギー貯蔵システム7及び他の関連する車両コンポーネントを制御するように構成された制御部8に接続される。
【0030】
本開示は、バスの形態をとる車両1において使用されるバッテリパック7aについて言及しているが、一般に、バッテリパックの状態を制御すること、特に、バッテリパックのセルの平衡化に関連し、事実上、少なくとも電気機械を用いることによって運転されると共に、多数のバッテリセルを有するバッテリパックを含むエネルギー貯蔵システムを有するあらゆる種類の車両に関連する。
【0031】
バス1が特定のモードで運転されている間、バス1を運転するために電気機械3を使用することが好適である。これは、エネルギー貯蔵システム7が動力を電気機械3に伝達し、更にこの電気機械3が後車軸6を駆動することを意味する。バス1が他のモードで運転されている間、例えば、エネルギー貯蔵システム7の充電状態が電気機械3でバス1を運転するのに十分でないと判定される場合には、内燃機関2がクラッチ4及びギアボックス5を介して後車軸6に接続される。電気機械及び内燃機関を組み合わせ且つ車両を運転するのに使用可能とする方法は、一般に、従来から公知であるため、本明細書において詳細に説明しない。
【0032】
バス1は、バス1のルーフに搭載された第1の電気コネクタエレメント9であって、好ましくは、パンタグラフ(pantograph)の形態をとる第1の電気コネクタエレメント9を含む。第1の電気コネクタエレメント9は、外部電源11の一部を構成すると共に特定の電圧を有する充電電流を伝導するように構成されたオーバーヘッド導電体ワイヤの形態をとる第2の電気コネクタエレメント10に接続されるように配置されている。このように、バッテリパック7aを充電するために、オーバーヘッドワイヤ10とパンタグラフ9との間の接続によって電流をエネルギー貯蔵システム7に供給することができる。
【0033】
一実施形態によると、パンタグラフ9及びオーバーヘッドワイヤ10は、バス1が停止している間、すなわち、バスターミナルの充電ステーション、バス停留所又はこれらと同様の場所のいずれかに位置している間、エネルギー貯蔵システム7を充電するように配置されている。電気貯蔵システム7を充電するためには、例えば、外部電源から電流を供給すると共に車両に配置された対応ソケットに接続された電気プラグを使用するなど、
図1とは異なる種類のプロセスを実施可能であることに留意しなければならない。
【0034】
以下、本発明の一実施形態の更なる詳細について、
図2を参照して説明する。
図2は、車両1のバッテリパック7a及びこれに関連するコンポーネントの簡略図である。
図1に示される全てのコンポーネントが
図2に示されているわけではない。
【0035】
上述したように、一実施形態によると、バッテリパック7aは、好ましくは、200個規模のセルである多数のバッテリセルC1、C2、C3、…など(参照符号「C」でも示す)を有するが、この特定の数は変更可能である。一実施形態によると、バッテリセルは、リチウムイオンタイプであるが、本発明の原則は、他のタイプのバッテリセルにも同様に適用可能である。
【0036】
バッテリパック7aは、電気機械3に接続され、電気機械3を駆動する(さらにこの電気機械3が車両1を運転する)ように構成されている。さらに、バッテリパック7aは、センサ部7bに接続され、このセンサ部7bが制御部8に接続されている。
図2に示す実施形態において、センサ部7bは、バッテリパック7aの状態を監視するように、すなわち、各バッテリセルCの状態を監視するように構成されている。より詳細には、センサ部7bは、バッテリパック7aに関する1つ以上の作動パラメータを測定するように構成されている。一実施形態によると、このような作動パラメータは、各バッテリセルCの電圧Uである。結果として、センサ部7bは、各バッテリセルCの端子電圧Uを測定し、測定した電圧値に関連する情報を制御部8に送信するように構成されている。これらの電圧値を使用して、制御部8の一部を構成する充電状態(SoC)推定モジュール8aを、バッテリパック7aの充電状態(SoC)、すなわち、バッテリセルCそれぞれの充電状態を決定するために使用することができる。また、センサ部7bは、バッテリパック7aの電流を測定するように構成されている。
【0037】
以下、さらなる詳細について説明するように、制御部8は、また、バッテリパック7aのセルCを平衡化するように構成されたセル平衡化モジュール8bを含む。これを達成するために、SoC推定モジュール8aによって各セルCのSoCの推定値が生成され、セル平衡化プロセス中に使用される。本実施形態によると、実際のセル平衡化プロセス中には、各セルCの電圧、バッテリ電流I及び各セルCの抵抗Rの測定値も使用される。
【0038】
図2は、また、車両の一部を構成する第1のコネクタ9と、外部電源11の一部を構成する第2のコネクタ10とを概略的に示している。結果として、バッテリパック7a、センサ部7b及び制御部8が協働することで、バッテリセルCの状態を監視してセル平衡化手順を実行するように構成されたバッテリ管理システム12を構築している。
【0039】
上述のように、バッテリパック7a及びそのバッテリセルCの状態を、その充電状態(SoC)及び劣化状態(SoH)(state of health)などのパラメータで説明することができる。充電状態(SoC)は、バッテリパック7aの充電残量に対応するものであり、この理由から継続的に推定される。劣化状態(SoH)については、各バッテリセルCのセル容量(Ah)を測定し、且つ、各バッテリセルCの抵抗(Ω(ohms))を測定することによって、監視及び推定することができる。
【0040】
以下、さらなる詳細について説明するように、本発明は、バッテリパック7aのセル平衡化プロセスを制御する方法に関連する。このため、
図3は、バッテリパック7aの一部を構成すると共にセル平衡化プロセスを実行するように構成された多数のバッテリセルC1、C2、C3を示している。
【0041】
図3は、3つのバッテリセルC1、C2、C3のみを開示している。ただし、例えば、車両に使用されるバッテリパック7aが多数のセルを有し、一般には、200個規模のセルを有すること、及び、全てのセルが
図3に示すものと同様に設計されていることは明らかである。しかしながら、簡略化のため、
図3では、このようなバッテリセルCを3つのみ示している。
【0042】
図3に示す第1のバッテリセルC1は、バッテリセルC1と並列に接続された抵抗器(resistor)R1と共に配置されている。抵抗器R1の目的は、セル平衡化プロセス中、電流を抵抗器R1に通過させることである。これを達成するために、抵抗器R1は、制御可能スイッチS1に直列に接続されている。
図3に示すように、スイッチS1は、制御部8(
図2にも示されている)の一部を構成するセル平衡化モジュール8bに接続されている。このようにして、スイッチS1を、電流が抵抗器R1を通過可能な閉鎖状態と、電流が抵抗器R1を通過することのない開放状態とのいずれかに設定することができる。スイッチS1がその閉鎖状態に設定された場合、結果的に、漏洩電流i
leakが生成される。この理由から、抵抗器R1を「漏洩抵抗器(leak resistor)」と称することができる。最初に説明したように、セル平衡化中、バッテリパックの全てのセル平衡化を改善するために、1つ以上の適切なスイッチが閉じられる。
【0043】
図3における残りのバッテリセル、すなわち、セルC2、C3と、
図3に示されていないバッテリパック7aの他の全てのセルは、説明したセルC1と同様に、すなわち、抵抗器と、関連付けられたバッテリセルと並列に接続された制御可能スイッチとを有する回路で構成されている。結果として、各バッテリセルCは、対応するスイッチSが閉じられた場合に漏洩電流i
leakを生成することができる。
【0044】
全ての制御可能スイッチS1、S2、S3は、セル平衡化モジュール8bに接続されている。また、各スイッチS1、S2、S3の開放状態又は閉鎖状態は、詳細を後述するように、セル平衡化手順に関連する特定の作動条件(operating condition)に応じて設定される。
【0045】
上述したように、バッテリパック7aの作動状態(state of operating)を反映する少なくとも1つのパラメータの測定値が提供されるように、センサ部7b(
図1及び
図2も参照)を配置することが望ましい。一実施形態によると、センサ部7bによって各バッテリセルCの電圧Uの測定値が提供される。この理由から、
図3に示すように、各バッテリセルCがセンサ部7bに接続されて、各セルCの電圧Uが測定される。
【0046】
一実施形態によると、本発明によるバッテリ管理システム12は、バッテリパック7aの作動状態のインジケータとして、バッテリ電圧以外のパラメータを測定するように構成されてもよい。単なる例示として、このようなパラメータは、バッテリ電流I、バッテリ温度T又は各セルCの抵抗Rであってよい。これら全てのパラメータは、バッテリパック7aの状態とセル平衡化プロセスとを制御するために使用可能である。
【0047】
本開示によると、バッテリパック7aのセル平衡化方法が提案されている。セル平衡化プロセスを実行するための主な理由は、バッテリパック7aの性能及び特性の一般的水準を改善することである。まず、セル平衡化の原則について
図3を参照して説明する。
【0048】
上述したように、バッテリパック7aの各セルC1〜C3は、対応するバッテリセルC1〜C3と並列に接続された抵抗器R1〜R3(
図3に示される)に関連付けられている。また、各抵抗器R1〜R3は、制御部8に接続された制御可能スイッチS1〜S3と直列に接続されている。一実施形態によると、セル平衡化プロセスは、対応するバッテリセルC1〜C3を放電させるように、すなわち、スイッチを閉じることで漏洩電流i
leakが関連する抵抗器R1、R2、R3を通って流れるように、各スイッチS1〜S3を開閉可能であるという原則に基づいている。このようにして特定のバッテリセルを放電することにより、当該バッテリセルは、その充電状態(SoC)を変化させられる。例えば、他のセルよりも大幅に高いSoCを有するセルを平衡化することにより、又は、他のセルよりも大幅に高いセル電圧を有するセルを平衡化することにより、バッテリパック7a全体が、より高いレベルのセル平衡化を引き起こす状態となり得る。上述したように、このようにしてバッテリパック7aの性能が改善される。
【0049】
セル平衡化モジュール8bを含む上述のハードウェアは、セル平衡化プロセスを引き起こす全てのバッテリセルCの漏洩電流を管理するように構成されている。漏洩電流i
leakは、対応するスイッチSがその閉鎖位置にあるときにのみ生じる。
【0050】
一実施形態によると、特定のセル平衡化アルゴリズムが用いられる。このアルゴリズムは、漏洩電流を生成すべき1つ以上の特定のバッテリセルを選択することを目的とするものである。このように漏洩電流を制御することにより、すなわち、スイッチS1〜S3の開閉を制御することにより、漏洩電流により生じる電流損失とバッテリセルの不均衡(imbalance)との間での最適な平衡を得ることができる。換言すると、一実施形態によるアプローチは、電流損失とバッテリセルの不均衡との間で最適な平衡を見出すように漏洩電流を制御することである。本明細書中で使用する「最適な平衡(optimal balance)」という用語は、1つ以上のスイッチSを閉じることで生じる電流損失が最小限に抑えられる状態をいう。さらなる実施形態によると、1つ以上のスイッチSを閉じることで生じる総電力損失とバッテリパック7aの平衡状態(SoB)(state of balance)との和が最小となる。
【0051】
以下、上述のアルゴリズムについて、セル平衡化プロセスを示すフローチャートである
図4を参照して説明する。まず、
図4で参照符号13によって示されるように、各バッテリセルCの電圧Uとバッテリ電流Iがセンサ部7bによって測定される。このようにして、各バッテリセルCの充電状態SoCを決定することができる(
図4のステップ14)。
【0052】
セル平衡化プロセスの次のステップは、特定の「損失関数(cost function)」を規定すること(ステップ15)であり、これは、漏洩電流が流れ始めたことによる全損失の形態をとる、セル平衡化プロセスに関連して想定される「損失(cost)」に対応する。損失関数は、セル平衡化プロセスの効率を最大化するために、最小化されるべきものである。これが式(1)min cost(u)に対応する。
ここで、uという項は、ベクトルの形態をとる制御変数に対応し、より詳細には、N
cellsビット、すなわち、バッテリセルの総量と同数のビット数を有するバイナリ列(binary string)に対応している。制御変数uにおいて、数字「1」は、第1のセルにおいてスイッチを閉じたこと(これにより漏洩電流が生成される)に対応し、数字「0」は、さらなるセルにおいてスイッチを開いたこと(いかなる漏洩電流も生成されない)に対応している。
【0053】
図3に開示され簡略化した例において、全てのスイッチS1〜S3が(
図3に実際に示されているように)開かれていると仮定すると、これはu=000の制御変数に対応している。
【0054】
一方、第2スイッチS2が閉じられているセル平衡化プロセスが開始されると仮定した場合には、制御変数はu=010となる。
【0055】
上述の実施形態は非常に簡略化した例であり、そして、実際にはバッテリセルの数は200個程度であり、このことは、制御変数が多数の組み合わせに対応し得ることを意味している。
【0056】
結果として、制御変数uは、バッテリパック全体に対する平衡を高いレベルで実現するために、1つ以上のバッテリセルが平衡されるべきである(ステップ15)という想定に基づいて規定される。制御変数u中の各ビットは、特定のバッテリセルのスイッチがオンされるべきか、又は、オフされるべきかを決定するものである。このことは、電流が漏洩しているセルを規定するために、セル平衡化モジュール8b(
図2及び
図3を参照のこと)が制御変数を使用可能であることを意味する。換言すると、バイナリ列は、スイッチSのうちセル平衡化中に閉じるべきスイッチ(1つ以上)を制御する「平衡指示」ベクトルである。
【0057】
所定の制御変数uについて、上述の損失関数は最小化されるべきである。この損失関数は、式(2)によって定義される。
【数1】
ここで、電力損失(power losses)P
lossesは、式(3)を用いて記述され得る。
【数2】
【0058】
電力損失P
lossesは、特定の電流I
Rbが対応する抵抗器R
bを流れることで生じる各セルからの損失の和に対応している。また、損失関数は、SoB、すなわち、平衡状態という、バッテリセルがいかに良好に平衡されているかを規定する項を含む。SoBの値が低いほど、平衡状態は良好である。このことは、式(4)SoB=max(SoC)−min(SoC)に規定される。
【0059】
これは、SoBがバッテリセルのそれぞれについての最も高いSoC値と最も低いSoC値との間の差であることを意味する。
【0060】
損失関数は、また、式(5)によって定義可能な項εをさらに含む。
【数3】
【0061】
式(5)は、閾値であるSoB
tarの項を含む。より詳細には、SoBの値がこの閾値SoB
tar以下の場合、εの項は0である。このような場合、バッテリパックを平衡化するのにいずれの漏洩電流も生成されない。SoB
tarの実際の値は、好ましくは、数パーセントであり、特定の僅かな測定誤差及びこれと同様なバラツキを許容するために選択される。また、P
lossmax及びαの項は、SoBと共にεの項がどのように変化するかを規定するために使用される。
【0062】
一実施形態によると、損失関数は、結果として、(漏洩電流の結果として生じる)総電力損失と、平衡状態(SoB)に応じて決まるεの項との和を記述している。また、セル平衡化プロセスが、損失関数を最小化するステップ、すなわち、所定の制御変数について電流損失とバッテリパック(7a)の平衡状態との和を最初に決定し、その後、損失関数を最小化する制御変数を選択するステップ(
図4のステップ16を参照)を含むことは、本実施形態の重要な原則である。そして、セル平衡化プロセス中、この特定の制御変数が使用され(ステップ17)、すなわち、バッテリセルのスイッチのうち開閉すべきスイッチ(1つ以上)を制御するためのセル平衡化プロセス中にセル平衡化モジュール8bによって制御変数uの一部を構成するビット列(bit string)が使用される。
【0063】
バッテリパックを平衡化するプロセスは、選択された制御変数に基づくものであり、所定の漏洩電流が予め定められた期間生成されることを意味する。この時間の経過後、十分なSoBに達してセル平衡化を完了可能か否かが確認される(ステップ18)。完了可能でない場合、上述の損失関数を最小化する要件を満たす新たな制御変数が選択されるようにプロセスが繰り返される。SoBが目標値に達した場合、セル平衡化プロセスを終了する(ステップ19)。
【0064】
制御変数の組み合わせの数は、2
Ncellsであることに留意しなければならない。例えば、200個のセルなど、多数のバッテリセルを有するバッテリでは、2
Ncellsという数は非常に大きい。このような場合、結果として、スイッチ設定の適切な組み合わせ(すなわち、適切な制御変数uに対応する)の選択が可能となるまでは、セル平衡化モジュール8bによって評価されるスイッチ設定の組み合わせの数は非常に多い。このことにより、ハードウェア及びソフトウェアを使用することが強く求められる。この理由から、さらなる実施形態によれば、損失関数を最小化する制御変数uを見つけるステップ(
図4のステップ16)をいくつかのやや簡略化された方法で実行することができる。以下、好適な解決策について説明する。
【0065】
相対的に高いSoCを有するセルのみを選択可能なビット列を有する多数の制御変数を選択することは、好適な解決策である(ステップ15a)。
【0066】
好適な解決策は、各セルのSoCに応じてバッテリセルを分類する第1のステップを含む。これは、どのセルが最も高いSoCを有しているか、どのセルが2番目に高いSoCを有しているか、どのセルが3番目に高いSoCを有しているかなどを規定するリストを提供することを意味している。このステップは、
図5において15a1で示される。
【0067】
次に、カウンタnが0に設定される(ステップ15a2)。その後、制御変数uが規定され、バッテリセルのいずれもが漏洩のために作動しない場合についての、前述の損失関数が決定される。これは、n=0が選択されたことに対応する(ステップ15a3を参照)。この段階で、損失関数が「最良の損失(bestcost)」と称する所定値未満であるか否かを判定する(ステップ15a4を参照)。
【0068】
その後、カウンタを1ずつ増やし(ステップ15a5を参照)、セルの組み合わせと、最も高いSoCを有する2つのセル(すなわち、n=2)が漏洩のために作動可能であることを示す制御変数とについて、損失関数の値が求められる。
【0069】
漏洩の対象となるセルの数が所定の最大値N
maxleakingcells未満である場合には、ステップ15a3に戻って、最も高いSoCを有するセルの数に対応する新たな制御変数を選択することによりプロセスが繰り返され、ここで、このセルの数は、上述の変数nに対応している。
【0070】
漏洩の対象となるセルの数が最大値N
maxleakingcellsに達し、且つ、n=0からn=N
maxleakingcellsまでの制御変数について損失関数の値が求められたときに損失関数が評価される。漏洩の対象となるセルの数がN
maxleakingcellsに達したとき、システムは、セル平衡化手順を開始するために使用される制御変数として、損失関数を最小化する(漏洩の対象となる特定の数nのバッテリセルを有する)制御変数を選択する段階(ステップ15a7)に達する。
【0071】
このプロセスにより、対応するスイッチを閉鎖位置に設定可能なバッテリセルの数が制限される。このことは、また、制御変数uのビット列について可能な組み合わせの数が大きく低減されること、すなわち、漏洩に適したバッテリセルが相対的に高いSoCレベルを有するもののみであることを意味する。これにより制御変数uの規定ステップが簡略化される。
【0072】
式(2)におけるεの項、ε(SoB(t+dt))は、柔らかい拘束(soft constraint)であるとみなすことができる。SoB<SoB
tarの場合、ここで、SoB
tarの項が閾値、すなわち、バッテリパックにおける平衡の所望のレベルに対応する場合、スイッチを全て開くことが最適な制御であり、すなわち、漏洩電流が生成されないことを意味する。
【0073】
SoB>SoB
tarの場合、SoBを低減するために漏洩電流が生成される。そして、上述し、
図4に示した原則が適用される。漏洩電流による損失の総量を最小限に抑えるためには、バッテリパックにおいて最小数のスイッチのみを閉じることが重要である。ここで、「平衡損失(balance cost)」(すなわち、特定の平衡状態を得るための損失)ということができる。
【0074】
SoB>>SoB
tarの場合、εの項は、式(2)の因数P
lossesよりもかなり大きくなるであろう。結果的に、セルを高度に平衡化する全ての努力がなされるであろう。
【0075】
本発明は、上述し、図面に示される実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、多くの変更及び改変が可能であることが理解されるであろう。