(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567761
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】緩衝ストッパー
(51)【国際特許分類】
F16F 7/00 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
F16F7/00 F
F16F7/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-504485(P2018-504485)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2017008865
(87)【国際公開番号】WO2017154856
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-46701(P2016-46701)
(32)【優先日】2016年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】花田 祐樹
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−280388(JP,A)
【文献】
国際公開第03/097427(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/188889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
B60G 1/00− 99/00
B62D 3/12, 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に固定側金具を連結するとともに他端部に可動側金具を連結した筒状の弾性体の外周面に環状のくぼみを設けることにより当該緩衝ストッパーを、前記くぼみによる小径部と、前記くぼみよりも固定側に位置する固定側大径部と、前記くぼみよりも可動側に位置する可動側大径部とに三区分し、
前記固定側大径部の外径寸法よりも前記可動側大径部の外径寸法を小さく設定するとともに、前記固定側大径部の軸方向幅よりも前記可動側大径部の軸方向幅を小さく設定したことを特徴とする緩衝ストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝機能およびストッパー機能を併有する緩衝ストッパーに関する。本発明の緩衝ストッパーは例えば、自動車用機器の分野においてステアリング装置などに組み込まれ、または産業用機器の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から
図3(A)に示す緩衝ストッパー51が知られている。この緩衝ストッパー51は、筒状の弾性体52を有し、弾性体52の一端部(図では上端部)に固定側金具53が連結されるとともに他端部(図では下端部)に可動側金具54が連結されている。固定側金具53を連結した一端部(以下、固定側端部55とも称する)は、相手部品であるハウジング61に固定される。可動側金具54を連結した他端部(以下、可動側端部56とも称する)は、作動部品である軸(図示せず)が衝突し、軸とともに変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4620291号公報
【0004】
図3(B)に示すように可動側端部56に軸が衝突して荷重Pが入力すると、可動側端部56が固定側端部55に近付く方向へ変位し、弾性体52が圧縮される。したがって弾性体52の圧縮変形による緩衝機能が発揮される。圧縮された弾性体52の外周面52aは径方向外方へ向け膨出変形し、ハウジング61の内周面61aに接触する。可動側端部56は弾性体52がハウジング61に接触してからも変位を続けるので、弾性体52はハウジング61に接触した部分において摺動する。したがって摺動による摩耗が発生し、ストッパー51の性能が低下する。
【0005】
上記弾性体52の摺動摩耗を抑制するには
図4の参考例に示すように、弾性体52の外周面に環状のくぼみ57を設けることにより圧縮時の膨出変形量を少なくし、ハウジング61に対する接触面圧を低下させることが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように弾性体52の外周面にくぼみ57を設ける場合には、以下の点に留意する必要がある。
【0007】
すなわち、上記したように弾性体52の外周面にくぼみ57を設ける場合には、当該ストッパー51が、くぼみ57による小径部51Aと、くぼみ57よりも固定側に位置する固定側大径部51Bと、くぼみ57よりも可動側に位置する可動側大径部51Cとに三区分される。
【0008】
そして、この場合、各寸法を均等化すべく、固定側大径部51Bの外径寸法φd
1と可動側大径部51Cの外径寸法φd
2を同等に設定するとともに(φd
1=φd
2)、固定側大径部51Bの軸方向幅w
1と可動側大径部51Cの軸方向幅w
2を同等に設定すると(w
1=w
2)、以下の不都合を生じるおそれがある。
【0009】
すなわち、上記設定(φd
1=φd
2およびw
1=w
2)によると、可動側大径部51Cの軸方向幅w
2から可動側金具54の軸方向幅(厚み)w
3を差し引いた弾性体52の軸方向幅w
4が随分と大きく設定される。
【0010】
したがって、可動側端部56に軸が衝突して荷重Pが入力し、可動側端部56が固定側端部55に近付く方向へ変位し、弾性体52が圧縮されたときに、弾性体52の外周面がこの可動側大径部51Cにおいて径方向外方へ向け膨出変形し、ハウジング61の内周面61aに接触する。そして、上記したように可動側端部56は弾性体52がハウジング61に接触してからも変位を続けるので、弾性体52がこの可動側大径部51Cにおいて摺動し、摺動による摩耗が発生する。この現象はとくに、固定側端部55に対する可動側端部56の軸方向変位量が過大の場合(想定よりも大の場合)に生じやすい。
【0011】
本発明は以上の点に鑑みて、弾性体の外周面にくぼみを設ける構造において、弾性体がハウジング等の相手部品に接触し摺動摩耗するのを極力抑制することができる緩衝ストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の緩衝ストッパーは、一端部に固定側金具を連結するとともに他端部に可動側金具を連結した筒状の弾性体の外周面に環状のくぼみを設けることにより当該緩衝ストッパーを、前記くぼみによる小径部と、前記くぼみよりも固定側に位置する固定側大径部と、前記くぼみよりも可動側に位置する可動側大径部とに三区分し、前記固定側大径部の外径寸法よりも前記可動側大径部の外径寸法を小さく設定するとともに、前記固定側大径部の軸方向幅よりも前記可動側大径部の軸方向幅を小さく設定したことを特徴とする。
【0013】
弾性体の外周面にくぼみを設ける構造において、摺動摩耗が発生しやすいのは、上記三区分のうちで、くぼみよりも可動側に位置する可動側大径部の外周面である。そこで本発明では、固定側大径部の外径寸法よりも可動側大径部の外径寸法を小さく設定し、これにより可動側大径部とハウジング等の相手部品との間に比較的大きな径方向間隙を設定することにした。また、固定側大径部の軸方向幅よりも可動側大径部の軸方向幅を小さく設定し、これにより可動側大径部が膨出変形しても膨出変形量を少なく抑えることにした。したがって前者により、径方向間隙が大きく設定され、後者により、膨出変形量が少なく抑えられるので、可動側大径部は膨出変形してもハウジングに接触せず、または接触してもその接触面圧や接触幅を低減させることが可能とされる。したがって可動側大径部に摺動摩耗が発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性体の外周面にくぼみを設ける構造において、弾性体がハウジング等の相手部品に接触し摺動摩耗するのを極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施例に係る緩衝ストッパーの要部断面図
【
図2】本発明の第2実施例に係る緩衝ストッパーの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
第1実施例・・・・
図1に示すように、当該実施例に係る緩衝ストッパー11は、所定のゴム状弾性体よりなる筒状の弾性体12を有し、この筒状の弾性体12の軸方向一端部(図では上端部)に環状の固定側金具13が連結されるとともに軸方向他端部(図では下端部)に環状の可動側金具14が連結されている。固定側金具13を連結した一端部(以下、固定側端部15とも称する)は、相手部品であるハウジング61に固定される。可動側金具14を連結した他端部(以下、可動側端部16とも称する)は、作動部品である軸(図示せず)が衝突し、軸とともに変位する。
【0018】
弾性体12の外周面に、環状のくぼみ17が設けられている。また、このように弾性体12の外周面に環状のくぼみ17が設けられることにより当該緩衝ストッパー11は、くぼみ17による比較的小径の外周面を備えた小径部11Aと、くぼみ17よりも固定側に位置する比較的大径の外周面を備えた固定側大径部11Bと、くぼみ17よりも可動側に位置する比較的大径の外周面を備えた可動側大径部11Cよりなる三つの区分に分けられている。
【0019】
さらに、当該実施例では上記三区分のうちで、固定側大径部11Bの外径寸法φd
1よりも可動側大径部11Cの外径寸法φd
2のほうが小さく設定されるとともに(φd
1>φd
2)、固定側大径部11Bの軸方向幅w
1よりも可動側大径部11Cの軸方向幅w
2のほうが小さく設定されている(w
1>w
2)。
【0020】
上記構成の緩衝ストッパー11において、可動側端部16に軸が衝突して荷重Pが入力し、可動側端部16が固定側端部15に近付く方向へ変位し、弾性体12が圧縮されると、弾性体12の外周面が可動側大径部11Cにおいて径方向外方へ向け膨出変形し、ハウジング61の内周面61aに接触しようとするが、上記したように固定側大径部11Bの外径寸法φd
1よりも可動側大径部11Cの外径寸法φd
2のほうがを小さく設定されているため(φd
1>φd
2)、可動側大径部11Cとハウジング61の内周面61aとの間に比較的大きな径方向間隙cが設定されている。
【0021】
また、上記したように固定側大径部11Bの軸方向幅w
1よりも可動側大径部11Cの軸方向幅w
2のほうが小さく設定されているために(w
1>w
2)、可動側大径部11Cが膨出変形しても膨出変形量を少なく抑えることができる。
【0022】
したがって、前者のφd
1>φd
2により径方向間隙cが大きく設定され、後者のw
1>w
2により膨出変形量が少なく抑えられるので、可動側大径部11Cは膨出変形してもハウジング61に接触せず、または接触してもその接触面圧や接触幅を低減させることができる。したがって可動側大径部11Cに摺動摩耗が発生しにくくなる。
【0023】
第2実施例・・・・
尚、上記第1実施例において、可動側大径部11Cの軸方向幅w
2は、可動側金具14の軸方向幅(厚み)w
3と、弾性体12におけるくぼみ17および可動側金具14間の軸方向幅w
4との和よりなり、可動側大径部11Cの軸方向幅w
2が小さくなるので、これに伴って弾性体12におけるくぼみ17および可動側金具14間の軸方向幅w
4も小さくなるように構成されているが、可動側大径部11Cの軸方向幅w
2は可動側金具14の軸方向幅(厚み)w
3のみによって設定されても良く、この場合、弾性体12におけるくぼみ17および可動側金具14間の軸方向幅w
4はゼロ設定とされる。
【0024】
第2実施例として
図2に示す緩衝ストッパー11では、このような観点から、可動側大径部11Cの軸方向幅w
2が可動側金具14の軸方向幅(厚み)w
3のみによって設定されて、弾性体12におけるくぼみ17および可動側金具14間の軸方向幅はゼロ設定とされている。
【0025】
そして、この構成によると、第1実施例と比較して、くぼみ17の位置が更に可動側へ移行するため、弾性体12は膨出変形してもハウジング61に接触せず、または接触してもその接触面圧や接触幅を更に低減させることができる。したがって弾性体12に摺動摩耗が一層発生しにくくなる。
【0026】
固定側金具13や可動側金具14の形状については、特に限定されず、
図1に示したように平板状のリングであるほか、
図2に示すように断面矩形状のリングや断面L字形のリングなどであっても良い。
【符号の説明】
【0027】
11 緩衝ストッパー
11A 小径部
11B 固定側大径部
11C 可動側大径部
12 弾性体
13 固定側金具
14 可動側金具
15 固定側端部
16 可動側端部
17 くぼみ
61 ハウジング(相手部品)
61a 内周面