(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567772
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】カスケード接続されたインバータ内における共通線通信
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20190819BHJP
【FI】
H02M7/49
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-524422(P2018-524422)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公表番号】特表2018-538772(P2018-538772A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】SE2016051113
(87)【国際公開番号】WO2017086862
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】1551492-0
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】グスタフ、ベルグクエスト
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ、リンドグレーン
(72)【発明者】
【氏名】トマス、モデーア
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02852069(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0070494(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0077046(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0181527(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/031320(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/094721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−3/44
H02M 7/00−7/98
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーインバータシステム(100)における方法であって、
中央ユニット(130)から、スイッチング指令を含む指令信号を共通線(120)へ出力し、
カスケード接続構成で電気的に接続され、それぞれの入力DC電源電圧(VDC)を受電するように適合された複数のスイッチングユニット(110)で前記指令信号を受信し、
前記複数のスイッチングユニットのうちの少なくとも一部を、当該スイッチングユニットが前記指令信号に基づいて合成出力AC(VOUT)を生成するよう個々にスイッチングされるインバータモードで動作し、
前記合成出力ACを前記共通線(120)へ出力し、
前記指令信号の2つの連続したスイッチング指令の間に、前記複数のスイッチングユニットのうちの少なくとも1つを、当該スイッチングユニットが通信信号を生成するようにスイッチングされる通信モードで動作し、
前記通信信号を前記共通線へ出力し、
前記通信信号を、前記中央ユニットで受信する、方法。
【請求項2】
前記中央ユニットで受信された前記通信信号が、前記通信信号を生成するためのフィードバックとして用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通信信号が、当該通信信号を生成するスイッチングユニットの識別を示す識別子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スイッチングユニットが、前記インバータモードおよび/または前記通信モードにおいて複数の出力電圧レベルの間でスイッチングされる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記スイッチングユニットが、前記インバータモードおよび/または前記通信モードにおいて正電圧レベルと負電圧レベルとの間でスイッチングされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スイッチングユニットが、前記インバータモードおよび/または前記通信モードにおいて正電圧レベルと、0電圧レベルと、負電圧レベルとの間でスイッチングされる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記合成出力ACがマルチレベル電圧波形であり、前記マルチレベル電圧波形の各レベルが、前記複数のスイッチングユニットのうちの1つからの出力、または前記複数のスイッチングユニットのうちの数個からの出力の合計によって形成される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに、各スイッチングユニットに設けられたセンサが、電圧差または電流を測定することによって、受信された前記通信信号を決定する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
中央ユニットと、カスケード接続構成で電気的に接続された複数のスイッチングユニットと、を備え、
前記中央ユニットは、共通線を介して通信信号を受信し、スイッチング指令を含む指令信号を前記共通線へ出力するように適合され、
前記複数のスイッチングユニットの各々は、
それぞれの入力DC電源電圧を受電するように適合され、
前記スイッチングユニットが、前記指令信号に基づいて前記共通線内で伝送される合成出力ACを生成するよう個々にスイッチングされるインバータモードで動作可能であり、
前記指令信号の2つの連続したスイッチング指令の間に、前記スイッチングユニットが、前記共通線内で伝送される前記通信信号を生成するようスイッチングされる通信モードで動作可能である、パワーインバータシステム。
【請求項10】
前記スイッチングユニットがHブリッジコンバータである、請求項9に記載のパワーインバータシステム。
【請求項11】
各スイッチングユニットが、前記指令信号を受信するように適合されたセンサを含む、請求項9または10に記載のパワーインバータシステム。
【請求項12】
前記複数のスイッチングユニットの各々が、前記入力DC電源電圧を提供するように適合されたそれぞれの太陽光発電パネルに動作可能に接続されるように適合されている、請求項10または11に記載のパワーインバータシステム。
【請求項13】
前記中央ユニットは、
前記受信された通信信号に基づいて前記指令信号を算出するように適合されたプロセッサと、
当該指令信号を前記共通線へ出力するように適合された通信インターフェースと、
をさらに備える、請求項9から12のいずれかに記載のパワーインバータシステム。
【請求項14】
前記センサは、前記通信信号を決定するようにも適合されている、請求項11に記載のパワーインバータシステム。
【請求項15】
前記センサが、AC結合変圧器、変流器、シャント抵抗、ホール効果測定デバイス、および導通トランジスタのうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載のパワーインバータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている本発明はパワーインバータシステム内における通信に関する。より正確には、本発明は、入力電力を受電し、合成出力電圧波形および交流電流を例えば送電網へ送出するために配置された、制御カスケード接続スイッチングユニットと通信する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチングユニットは、パワーインバータシステムにおいて、直流電流(DC)を交流電流(AC)へ変換するために広く用いられている。このようなアプリケーションでは、複数のスイッチングユニットが、合成マルチレベル出力電圧波形を形成するために、直列に接続される。
【0003】
スイッチングユニットを動作させる数多くの構成および方法がこのコンセプト内で提案され、用いられている。一例では、スイッチングユニットは、所望の合成出力電圧波形およびACを提供するために、カスケード接続構成で電気的に接続され得る。スイッチングユニットの個々の動作は、例えば、スイッチ制御回路機構によって遂行され得、これはシステムのユニット間の情報の伝送を必要とする。例えば、国際公開第2014/131734号および国際出願PCT/EP2012/066782号では、制御信号が、無線通信チャネルによって、中央適応ユニットとスイッチングユニットとの間で転送される。
【0004】
このような通信チャネルが実装されるためのよく知られた方法が存在してはいるものの、このようなパワーインバータシステムに関する情報をコスト効率およびエネルギー効率のよい仕方で転送するための代替的な改善された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の諸実施形態のうちの少なくともいくつかの目的は、パワーインバータシステムにおける方法、スイッチングユニットおよび中央ユニットを提供すること、ならびに特に、上述の技法に対する改善された代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、独立請求項の特徴を有する方法、デバイス、およびシステムを提供する。従属請求項は有利な諸実施形態を規定する。
【0007】
第1の態様では、パワーインバータシステムにおける方法が提供される。パワーインバータシステムは、カスケード接続構成で互いに電気的に接続された複数のスイッチングユニットを備える。スイッチングユニットの各々は、それぞれの入力電力を受電するように適合されている。さらに、スイッチングユニットの各々は、スイッチングユニットが、合成出力電圧波形を生成するよう個々にスイッチングされるインバータモード、およびスイッチングユニットが、通信信号を生成するようスイッチングされる通信モードで動作可能である。スイッチングユニットからの合成出力電圧、および通信信号は同じ電線または線上で転送され得る。本態様によれば、スイッチングユニットの少なくとも一部は、インバータモードにおいて、指令信号のスイッチング指令、および/または例えばデータ信号によって提供される他の種類の情報に応じてスイッチングされる。さらに、スイッチングユニットのうちの少なくとも1つは、指令信号の2つの連続したスイッチング指令によって規定される時間期間中に、通信モードで動作させられる。
【0008】
第2の態様によれば、中央ユニットにおける方法が提供される。本方法は、電力および通信データの両方を伝送するように適合された共通線を介して、通信モードで動作するスイッチングユニットによって発生された通信信号を受信するステップと、受信された通信信号に基づいて指令信号を算出するステップと、共通線を介して指令信号を出力するステップと、を含む。スイッチングユニットは、カスケード接続構成で電気的に接続された複数のスイッチングユニットのうちの1つであり、複数のスイッチングユニットの各々は、それぞれの入力DC電力を受電するように適合され、インバータモードおよび通信モードで動作可能である。インバータモードでは、スイッチングユニットは、指令信号のスイッチング指令に応じて、共通線上で転送される合成出力電圧波形および電流を生成するよう個々にスイッチングされる。スイッチングユニットが、指令信号の2つの連続したスイッチング指令の間で動作可能である通信モードでは、スイッチングユニットは、通信信号を生成するようスイッチングされる。
【0009】
第3の態様によれば、カスケード接続構成で電気的に接続された複数のスイッチングユニットを備えるパワーインバータシステムが提供される。複数のスイッチングユニットの各々は、それぞれの入力DC電力を受電するように適合され、スイッチングユニットが、指令信号のスイッチング指令に応じて、共通線上で転送される合成出力電圧および電流波形を生成するよう個々にスイッチングされるインバータモードで動作可能である。さらに、スイッチングユニットは、指令信号の2つの連続したスイッチング指令の間で、スイッチングユニットが、通信信号を生成するようスイッチングされる通信モードで動作可能であり、通信信号は共通線内で伝送される。
【0010】
第4の態様によれば、共通線を介して、第3の態様に係るスイッチングユニットによって発生された通信信号を受信するように適合された中央ユニットが提供される。通信信号は、受信された通信信号に基づいて指令信号を算出するように適合されたプロセッサによって処理される。中央ユニットは、指令信号が共通線へ出力される通信インターフェースをさらに備える。
【0011】
第5の態様によれば、第3の態様に係るパワーインバータシステムと、第4の態様に係る中央ユニットとを備えるシステムが提供される。
【0012】
本態様は、マルチレベル出力電圧波形が、電圧が比較的一定であり、比較的低い高調波含有量を有する「サイレント」期間が存在するように構築され、設計され得るという理解を利用する。それらの「サイレント」期間は、スイッチングユニットの2つの連続したスイッチングイベントの間に位置し得る。これらの「サイレント」期間は、合成出力上の、さもなければレベル過渡によって生じ得る比較的低い高調波含有量(すなわち、ノイズ)を有する重畳通信信号を伝送するために利用され得る。通信信号は、スイッチングユニットのうちの1つまたは数個を、残りのスイッチングユニットがサイレントである間、すなわち、通信信号が発生された際にその現在の状態のままとどまらせている間に、スイッチングすることによって達成され得る。
【0013】
換言すれば、スイッチングユニットは、2つの異なるモード − 合成マルチレベル出力電圧および電流波形を発生し、同時に、通信信号を受信することができるインバータモード、および通信信号を発生する通信モード − で動作すると見なされ得る。インバータモードでは、スイッチングユニットの各々または少なくとも一部は、所望のマルチレベル出力電圧および電流波形を形成するよう、指令信号のスイッチング指令に基づいてスイッチングされ、同時に、中央ユニットからの通信データおよび指令を受信することが可能であり得る。2つの相互に隣接したスイッチング指令によって規定される期間は、この期間中には、出力が比較的安定しているか、または一定であり得るため、マルチレベル出力ACのサイレント期間と呼ばれ得る。換言すれば、出力電圧は、このサイレント期間中には、比較的低いノイズを有し得、比較的低いノイズレベルは通信信号のフィルタリングおよび増幅の必要性を低減し得るため、これは、信号送信に関して特に有利である。このサイレント期間内に、スイッチングユニットのうちの1つまたは数個が通信モードで動作させられ得、このモードにおいて、これらは、重畳通信信号を発生するために複数回スイッチングされ得る。好ましくは、スイッチングユニットは、インバータモードでは、フィルタ構成要素のサイズを低減するために高周波数が用いられ、所望される、一般に知られているトポロジと比べて、比較的低いスイッチング周波数で動作させられ得る。パワーインバータシステムを比較的低い周波数で動作させることによって、連続したスイッチングイベントの間の比較的長い期間が通信信号の発生および伝送のために利用可能になり得る。さらに、より低いスイッチング周波数は、低減されたスイッチング損失、およびそれゆえ、増大した効率を有するインバータを可能にし得る。
【0014】
指令信号は、例えば、スイッチングユニットに、電力を出力または受電させ、好ましくは、特定のレベル(正、0、負、またはそれらの間の電圧)の電圧を出力させる状態指令を含み得る。追加的に、または代替的に、状態指令は、スイッチングユニットに、電力および電圧の出力を停止させ得る。指令信号はまた、スイッチングユニットに、正電圧、負電圧、0電圧、およびこれらの間の電圧のうちの2つ以上の任意の組み合わせを出力させるさらなる指令、または代替的指令をも含み得る。これは、通信モードで動作させられる場合にも適用され、スイッチングユニットは上述の出力うちの任意のものを交互にとり得る。
【0015】
複数のスイッチングユニットの各々は、共通線を介して、別のスイッチングユニットまたは中央ユニットによって発生された通信信号を受信するように適合され得る。通信信号は、受信された通信信号に基づいて指令信号を算出するように適合されたプロセッサによって処理され得る。
【0016】
信号送信のための共通線を用いることによって、多数の利点が達成され得る。例えば、別個の通信チャネルの必要性が解消される。したがって、追加のケーブルまたは無線の通信手段が省かれ得る。さらに、スイッチングユニット内の既存の電力段を用いることによって、通信信号を発生するための追加の通信段または伝送器の必要性がなくなる。その代わりに、出力電圧波形を発生し、電力変換をもたらす同じ機器が追加の通信目的のために用いられ得、これが、部品目録、サイズ、および例えば、製造および保守に関連するコストの低減を可能にする。
【0017】
通信信号は、スイッチングユニットへのDC入力のレベル、または出力ACのレベルなどの、システム内の電圧または電流に関する情報、ならびに例えば、スイッチングユニットの温度、能力および性能に関する他のパラメータを含み得る。
【0018】
中央ユニットは、指令信号を決定または算出する際に、通信信号内の情報を用い得る。それゆえ、インバータシステムの現在の状態もしくは動作またはその入力に関する情報が、インバータシステムを制御するためのフィードバックとして用いられ得る。
【0019】
中央ユニットは、例えばグリッドACなどの、要求されるACの周波数、位相、振幅および高調波のうちの少なくとも1つを表す情報を受信し、通信信号を介して、スイッチングユニットの各々、または少なくとも一部への入力電流および入力電圧のうちの少なくとも一方を表す情報を受信するようにさらに適合され得る。受信された情報に基づいて、スイッチングユニットは、複数のスイッチングユニットからの合成出力が要求電圧および電流波形に一致する電圧および電流波形を生成するよう、個々に制御され得る。
【0020】
スイッチングユニットの個々の制御は、それぞれの入力DC電力が経時的に変化し、かつ/または予測が難しいアプリケーションおよびシステムにとって特に意味がある。例えば、出力電力がDC入力の電圧と電流との非線形関係によって決定され得る、太陽光発電(PV)素子または太陽光パネルにおける場合がこれに該当し得る。通過する影のような事象、または汚染、経年化の差、もしくは製造時の相違に起因するパネル性能の相違が、パネルのアレイが全体としてそのピーク効率点で動作することを妨げ得る。本態様は、各パネルが、カスケード接続され、パネルの各々からの入力DC電力に応じて個々に動作させられ得るそれぞれのスイッチングユニットに接続され得る解決策を提供する。入力DC電力に関する情報は通信信号によって中央ユニットへ転送され得、中央ユニットには、スイッチングユニットによって用いられるべきスイッチングパターンを示す好適な指令信号を発生するためのマイクロコントローラまたはプロセッサが設けられていてもよい。
【0021】
本態様は、例えば太陽光パネルなどの、個々の入力DC電源が監視されることをさらに可能にする。エネルギー生成(すなわち、生成された入力DC電力、電圧および/または電流)を監視することは、例えば、操作員または保守要員に、保守の必要性に関する早期の指示を与えることができ、機器の利用性改善をもたらす。監視は、中央ユニットへさらなる解析のために伝送され得る、通信信号を用いて達成され得る。
【0022】
一実施形態によれば、通信信号は、通信信号を生成するスイッチングユニットの識別を示す識別子をさらに含む。これにより、中央ユニットは個々のスイッチングユニットを区別し、それゆえ、それに応じて指令信号を適応させることが可能になり得る。
【0023】
一実施形態によれば、スイッチングユニットの各々は、指令信号および/または通信信号を受信するように適合されたセンサを含み得る。センサは、電流が主たる情報キャリアである場合には、例えば、電流の変化を感知するための手段、例えば、信号変圧器、変流器、シャント抵抗、またはホール効果測定デバイスを含み得る。さらに、電力段トランジスタのうちの1つまたは数個のオン抵抗または導通電圧降下が、通信信号を感知するために用いられ得る。通信信号は、主たる情報キャリアが電圧である場合には、電圧の変化を検出する感知デバイスを用いて決定され得る。このような感知デバイスは、例えば、例としてキャパシタの形態のAC結合と組み合わせた抵抗分圧器を利用し得る。
【0024】
代替的に、または追加的に、センサは、第1の巻線および第2の巻線を有するコアを有するコモンモードインダクタであって、第1の巻線および第2の巻線は、差動通信信号を伝達するように配置された導体の差動対を形成する、コモンモードインダクタを含み得る。このようなコモンモードインダクタは、第1の巻線の少なくとも一部分に沿って延びるように配置された第3の巻線、および第2の巻線の少なくとも一部分に沿って延びるように配置された第4の巻線を含み得る。第3の巻線および第4の巻線は第1の巻線および第2の巻線にそれぞれ誘導結合されており、差動通信信号によって第1の巻線および第2の巻線内に誘導されるセンサ信号を提供するよう互いに直列に接続され得る。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、中央ユニットは、指令信号を出力し、および/または通信信号を受電するように適合された通信インターフェースを備え得る。通信インターフェースは、例えば、上述されたものと同様に構成され得るスイッチングユニットを有する伝送器を含み得る。このようなスイッチングユニットは、2つのスイッチング指令の間のサイレント期間内に、指令信号などの、信号を発生するように適合され得る。代替的に、または追加的に、通信インターフェースは、いくつかの実施形態によれば、通信信号を受信し、決定するための、例えば、上述された通りの、変圧器、抵抗器、ホール効果測定デバイス、またはトランジスタなどの、センサを含み得る。さらに、上述された通りの追加のセンサ巻線を有するコモンモードインダクタが用いられ得る。
【0026】
スイッチングユニットは、本出願の文脈では、入力DC電力を受電し、少なくとも2つの異なる電圧レベルまたはそれより多くのマルチレベル出力を生成する能力を有する電気構成要素を指し得る。スイッチングユニットはまた、DC/ACコンバータと呼ばれてもよく、例えば、Hブリッジまたはハーフブリッジのコンバータで形成され得る。Hブリッジコンバータは、例えば、4つの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、または任意の他の種類の半導体スイッチもしくはトランジスタを含み得る。ハーフブリッジコンバータは、例えば、2つのトランジスタを含み得る。
【0027】
また、本態様は高電力伝送システム内で実施されるか、または高電力伝送システムとして実現され得ることも理解されるであろう。
【0028】
本態様は、プログラム可能なコンピュータを、コンピュータが、以上において概説された方法を遂行するよう制御するためのコンピュータ読取可能命令として具体化され得る。このような命令は、命令を記憶するコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品の形態で配布され得る。特に、命令は、例えば、中央ユニットのFPGA、ASIC、CPU、MCUなどのマイクロコントローラまたは制御デバイス内にロードされ得る。
【0029】
以下の詳細な開示、図面、および添付の請求項を吟味することで、本諸態様のさらなる目的、特徴、および利点が明らかになるであろう。当業者は、本態様の異なる特徴は、たとえ、異なる請求項に記載されている場合でも、以下に説明されているもの以外の諸実施形態において組み合わせられ得ることを認識する。
【0030】
本発明の、上述ならびに追加の目的、特徴および利点は、本発明の諸実施形態の以下の例示の非限定的な詳細説明を通じて、より深く理解されるであろう。添付の図面が参照されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】いくつかの実施形態に係る、カスケード接続された複数のスイッチングユニットと、中央ユニットとを備えるパワーインバータシステムを図式的に示す図である
【
図2】本発明の一実施形態に係るスイッチングユニットを示す図である。
【
図3】一実施形態に係るシステムのレイアウトおよびその関連信号経路を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態に係る合成マルチレベル出力電圧波形を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るパワーインバータシステムおよび中央ユニットにおける方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
全ての図は概略的なものであり、本発明を説明するために必要である部分を大まかに示すのみであり、それに対して、他の部分は省かれるか、または単に示唆されるのみであり得る。
【0033】
図1は、一実施形態に係るパワーインバータシステム100および中央ユニット130を示す。パワーインバータシステム100は、例えば、太陽光発電素子(
図1には示されていない)などの、それぞれの供給源から入力DC電源電圧V
DCを供給されるように各々配置された、例えば、Hブリッジコンバータ110などの、複数のスイッチングユニットを含む。Hブリッジコンバータ110は、共通線120を介して中央ユニット130へ給電され得る、マルチレベル出力電圧V
OUTを生成するようにカスケード接続され得る。中央ユニット130は、例えばグリッド交流電圧に一致する電圧V
ACを出力し、出力電流I
ACを例えばグリッドへ給電するように適合され得る。入力電圧源が太陽電池パネルである場合には、各Hブリッジコンバータ110は、例えば、それぞれのパネルの配線接続箱内で統合され得る。さらに、合成マルチレベル出力電圧波形を、グリッド電圧V
ACと同様の電圧がシステムから出力されるように適応させるための中央適応ユニットが設けられ得る(図示されていない)。中央適応ユニットは、例えば、システムとグリッド電圧V
ACとの間のあり得る電圧不一致を拾い上げ、出力電流を制御し、安定化させるために用いられ得るインピーダンスを提供するためのインダクタを用いて実現され得る。
【0034】
スイッチングユニット110の各々は、合成出力電圧波形V
OUTのサイレント期間、すなわち、スイッチングが生じない期間が、通信信号を発生するために利用される通信モードで動作するように適合され得る。通信信号は、合成出力電圧波形V
OUT上に重畳され、共通線120を介して中央ユニット130へ伝送され得る。
【0035】
さらに、中央ユニット130は、Hブリッジ110の動作を制御するための指令信号を発生するように適合され得る。指令信号は、通信信号と同様の仕方で、すなわち、合成出力電圧波形V
OUTのサイレント期間中にスイッチングするスイッチングユニット(図示されていない)を用いて発生され得る。
【0036】
通信信号は、例えば、それぞれのスイッチングユニット110における入力V
DCの電流レベルまたは電圧レベルを示す情報を含み得る。さらに、通信信号は、通信信号を発生するスイッチングユニット110の識別を示す識別子を含み得る。この情報および/またはその他の情報が、中央ユニット130において、パワーインバータシステム100の動作を制御するために用いられ得る。
【0037】
図2は、
図1を参照して説明された実施形態に係るスイッチングユニット110の例示的実施形態を示す。より具体的には、4つの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)Q1、Q2、Q3、Q4の形態の4つのスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4を含む、Hブリッジコンバータ21の回路図が示されている。しかし、ゲート絶縁型バイポーラトランジスタ(IGBT)、または接合型バイポーラトランジスタ(BJT)などの、任意の他の適切なスイッチング素子が用いられ得る。
【0038】
第1のトランジスタQ1のドレインD1および第2のトランジスタQ2のドレインD2は、例えば、太陽電池パネル(図示されていない)などの、入力DC電源の正極15に電気的に接続され、その一方で、それぞれの第1および第2のトランジスタQ1およびQ2のソースS1およびS2は第4および第3のトランジスタQ4、Q3のドレインD4およびD3にそれぞれ電気的に接続され得る。第3および第4のトランジスタQ4、Q3のソースS3およびS4は入力DC電源の負極43に電気的に接続され得る。第1のトランジスタQ1のソースS1は第1の出力端子52において第4のトランジスタQ4のドレインD4に電気的に接続され得、それに対して、第2のトランジスタQ2のソースS2は第2の出力端子54において第3のトランジスタQ3のドレインD3に電気的に接続される。
【0039】
4つのトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のゲート端子G1、G2、G3、G4は、MOSFET Q1、Q2、Q3、Q4を、ゲート電圧をそれらのそれぞれのゲートG1、G2、G3、G4へ供給することによって制御するように適合されたスイッチ制御回路機構60に電気的に接続され得る。スイッチ制御回路機構は、例えば、スイッチングユニット110とともにプリント回路板(図示されていない)上に実装された、マイクロコントローラまたは計算ユニット60を含み得る。マイクロコントローラまたは計算ユニット60はまた、例えば、マイクロコントローラに、入力電圧および電流、パワーインバータシステム100からの合成出力、ならびに/または要求されるAC電圧波形もしくは電流に関する情報を提供する電流計および/または電圧計(図示されていない)にも接続され得る。
【0040】
マイクロコントローラ60は、パワーインバータシステム100の複数のスイッチングユニット110からの合成出力が、要求される電圧波形に一致する合成マルチレベル電圧波形を生成するよう、スイッチングユニット110をインバータモードで動作させるように適合され得る。さらに、マイクロコントローラ60は、スイッチングユニット110を通信モードで動作させることができ、スイッチングユニット110は、複数のスイッチングユニット110のうちの任意のものの2つの連続したスイッチングイベントの間のサイレント期間内に、通信信号を生成し得る。これは、スイッチングユニットQ1、Q2、Q3、Q4を、所望の通信信号を形成する出力を発生するよう動作させ得る、マイクロコントローラ60によって達成され得る。マイクロコントローラ60は、指令信号を中央ユニット(
図2には示されていない)から受信し、それに応じてスイッチングユニットをインバータモードで動作させるように構成され得る。指令信号は、例えば、例として、AC結合変圧器、変流器、シャント抵抗、ホール効果測定デバイス、またはトランジスタ(図示されていない)にわたる導通電圧降下を含む受信回路機構またはセンサを用いて受信され得る。
【0041】
図3は、
図1および
図2を参照して説明されたパワーインバータシステムおよび中央ユニットと同様に構成され得るパワーインバータシステムおよび中央ユニットを示す。パワーインバータシステム100は、パワーインバータシステム100によって発生された通信信号を受信し、パワーインバータシステム100の動作を制御する指令信号を伝送するように適合され得る中央ユニット130に接続された複数のカスケード接続されたスイッチングユニット110を備え得る。
図3に示されるように、例えば、共通線120内の通信信号の反射を低減するためのターミネータ122などの、さらなる構成要素も設けられ得るであろう。さらなる構成要素は、例えば、出力を、この出力が例えばグリッドへ出力される前にフィルタリングするためのフィルタ126、および指令信号をフィルタリングするために中央ユニット130内に配置されたフィルタ124であり得る。フィルタ124、126は、例えば、中央ユニット130に構造的に統合され得る。
【0042】
図3において、通信信号および指令信号は点線によって表されており、矢印が、パワーインバータシステム100および中央ユニット130の動作の間における信号の経路を概略的に示すために提供されている。指示されているように、通信信号および指令信号は、パワーインバータシステム100のスイッチングユニット110から、共通線120を介して中央ユニット130へ循環し、中央ユニット130から、指令信号(通信信号に基づき得る)はスイッチングユニット110へ出力され得る/戻され得る。合成出力電圧波形V
OUTは同じ共通線120内で通信信号および/または指令信号として伝送され得るが、出力AC V
ACとして例えばグリッドへさらに伝送され得る。
【0043】
図4は、
図1〜
図3のうちの任意のものを参照して説明されたパワーインバータシステムとして同様に構成され得るパワーインバータシステムからの合成マルチレベル出力電圧波形V
OUTを示す図である。図において、合成出力電圧波形V
OUTは電圧U(縦軸)として時間t(横軸)の関数として示されている。本実施例では、12個のカスケード接続されたスイッチングユニットが、フィルタリング後に所望の正弦波電圧波形V
ACに一致する合成マルチレベル出力電圧波形V
OUTを発生するために用いられる。スイッチングユニットのスイッチングイベントは横軸上のt
0、t
1、・・・、t
nによって示されており、スイッチングユニットに異なる出力レベルの間でスイッチングさせる、指令信号のスイッチング指令に対応し得る。信号送信のために用いられ得るサイレント期間は、2つの連続したスイッチング指令またはスイッチングイベントt
n、t
n+1の間の平坦な段によって概略的に表される。本図では、通信信号はスイッチングイベントt
0およびt
1の間のサイレント期間Tの間に発生される。信号は、例えば、その期間中にスイッチングユニットのうちの1つを通信モードで動作させることによって、すなわち、スイッチングユニットをt
0とt
1との間に複数回スイッチングすることによって、発生され得る。それゆえ、通信信号は合成マルチレベル出力上に重畳され得る。
【0044】
図5を参照すると、カスケード接続構成の複数のスイッチングユニットを備えるパワーインバータシステムが、通信信号ならびに合成マルチレベル出力電圧波形およびACを同じ線上に発生するよう制御される、本発明の一実施形態に係る方法の模式的概要が示されている。本方法は、本例では、
図1〜
図4に関して説明された諸実施形態と同様に構成されたパワーインバータシステムおよび中央ユニットを参照して説明される。
【0045】
本方法は、スイッチングユニットのうちの少なくとも一部を、スイッチングユニットが、指令信号のスイッチング指令に応じて、共通線上で転送される合成出力電圧波形を生成するよう個々にスイッチングされるインバータモードで動作させること(510)を含む。さらに、本方法は、指令信号の2つの連続したスイッチング指令の間で、少なくとも1つのスイッチングユニットを、スイッチングユニットが、通信信号を生成するようスイッチングされる通信モードで動作させること(520)であって、通信信号は共通線内で伝送される、動作させること(520)を含む。中央ユニットにおいて、共通線内の通信信号が、例えば、マイクロコントローラによって受信され(530)、処理され得(540)、その結果、受信された情報に基づき得る指令信号の算出(550)が行われる。指令信号は共通線を介してインバータシステムへ出力され得る(560)。
【0046】
以上概説したように、
図5によって示される本方法は、このような命令を記憶するコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品の形態で配布され、用いられるコンピュータ実行可能命令として具体化され得る。例として、コンピュータ読取可能媒体は、コンピュータ記憶媒体および通信媒体を含み得る。当業者によく知られているように、コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータなどの情報の記憶のための任意の方法または技術で実装される、揮発性および不揮発性の両方の、着脱式および非着脱式媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、限定するものではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリまたはその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)またはその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置またはその他の磁気記憶デバイスを含む。さらに、通信媒体は通例、搬送波またはその他の輸送機構などの変調データ信号でコンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータを具現し、任意の情報送達媒体を含むことが当業者に知られている。