特許第6567862号(P6567862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567862不陸調整機能を有する建材の取付構造およびその建材を用いた収納ユニットの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567862
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】不陸調整機能を有する建材の取付構造およびその建材を用いた収納ユニットの取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/08 20060101AFI20190819BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   E04F19/08 Z
   E04F13/08 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-90778(P2015-90778)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-205063(P2016-205063A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2016年3月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】操野 文孝
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−221913(JP,A)
【文献】 特開2000−226557(JP,A)
【文献】 特開平08−053922(JP,A)
【文献】 特開2001−327348(JP,A)
【文献】 実開昭55−049652(JP,U)
【文献】 実開昭55−007973(JP,U)
【文献】 特開平11−117411(JP,A)
【文献】 実開昭56−146044(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/08
E04F 13/00−13/30
A47B 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に当接した状態で取り付けられて使用される不陸調整機能を有する建材の取付構造であって、
前記建材は、平面からなる当接面が長手方向に延びるように設けられた木質材からなる建材本体を備え、
上記建材本体の当接面には、当該建材本体の当接面の幅方向の隅角部のうち、壁面に取り付けられて使用される際に外側から見える場所に位置する隅角部に、長手方向全体にわたって長手方向に沿うように切り欠かれた格納部が設けられており、
上記格納部に、上記当接面よりも突出する弾性変形可能な不陸調整材が、外側の端面が前記建材の幅方向の端面と面一になるように取り付けられ、
上記建築物の壁面に当接して使用される際に、上記不陸調整材は、その突出方向の先端面が上記建築物の壁面により該突出方向と反対方向に向かって押し込まれた圧縮状態となって上記格納部内に収容されている一方、上記建材本体の当接面が、上記長手方向に離間する少なくとも2箇所で上記建築物の壁面に当接されていることを特徴とする不陸調整機能を有する建材の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記不陸調整材は、上記建材が上記建築物の壁面に当接して使用される際に、少なくとも一部が上記当接面と面一になるまで押し込まれていることを特徴とする不陸調整機能を有する建材の取付構造
【請求項3】
請求項1において、
上記建築物の壁面には、剛性部材からなる少なくとも1つのスペーサー部材が取り付けられており、
上記建材本体は、上記当接面のうちの少なくとも1箇所が上記スペーサー部材に当接されている一方、上記当接面のうち上記スペーサー部材の取り付け位置に対し上記長手方向に離間する他の少なくとも1箇所が上記建築物の壁面に当接されていることを特徴とする不陸調整機能を有する建材の取付構造
【請求項4】
請求項1において、
上記建築物の壁面には、剛性部材からなる少なくとも2つのスペーサー部材が上記長手方向に互いに離間して取り付けられており、
上記当接面は、上記長手方向に離間する少なくとも2箇所で上記スペーサー部材に当接されていることを特徴とする不陸調整機能を有する建材の取付構造
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つにおいて、
上記建材本体は、長尺状の板状材であり、
上記当接面は、上記板状材の表面又は裏面に設けられていることを特徴とする不陸調整機能を有する建材の取付構造
【請求項6】
請求項1において、
前記不陸調整材の幅と前記格納部の幅とが同じであることを特徴とする不陸調整機能を有する建材の取付構造
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の建材を左右側板として用いており、上記左右側板の上端間を連結する天板と、上記左右側板の下端間を連結する底板とを備えた矩形枠状の木質材からなる収納ユニットの取付構造であって、
前記左右側板は、上記建築物の壁面に固定されて施工される板状材であり、
上記左右側板の当接面は、上記板状材の木端面に設けられて、該木端面が上記建築物の壁面に当接されて施工されることを特徴とする、不陸調整機能を有する建材を用いた収納ユニットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建材の取付構造に関し、特に被固定部上に当接して使用される不陸調整機能を有する建材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
壁や床等の被固定部に建材の当接面を当接させて施工する場合に、被固定部に不陸があると、不陸の凹凸によって被固定部と建材の当接面との間に隙間が発生し、見映えがよくないという問題がある。
【0003】
上記問題を改善する方法として、被固定部と建材材の当接面との間に不陸調整材を挟み込むことが一般によく知られている。
【0004】
例えば特許文献1に示されるものでは、下地材と表装板との間に、表装板の裏側全面に柔軟性を有する発泡体を介在させ、スクリュー式のねじの挿入長さの調節により不陸調整を行うようにしている。このものでは、発泡体の柔軟性により下地材の不陸を吸収することができる。
【0005】
また、特許文献2には、外壁面又は外装材の裏面の少なくとも一方に弾性変形可能な不陸調整材を設け、外装材を該壁面にねじにより固定することにより、外装材と該壁面との間で不陸調整材を圧縮して弾性変形させ、外壁面の凹凸を吸収するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−13739号公報
【特許文献2】特開2007−2433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の特許文献1,2のものでは、被固定部と建材の当接面との間に弾性変形する不陸調整材が介在されるため、建材を被固定部に強固に且つ安定的に取り付けすることができないという問題があった。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被固定部に施工する建材の当接構造を改良することで、不陸がある被固定部に対して、不陸調整をしつつ、強固に且つ安定的に取り付け可能な建材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、平面からなる当接面と、当接面より凹陥した格納部とを建材本体に設け、該格納部に弾性変形可能な不陸調整材を当接面よりも突出するように取り付けることで、その不陸調整材の弾性変形によって不陸調整をしつつ、建材本体を当接面で建築物の壁面に強固に且つ安定的に取り付け可能にした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、建築物の壁面に当接した状態で取り付けられて使用される不陸調整機能を有する建材の取付構造において、前記建材は、平面からなる当接面が長手方向に延びるように設けられた木質材からなる建材本体を備え、上記建材本体の当接面には、当該建材本体の当接面の幅方向の隅角部のうち、壁面に取り付けられて使用される際に外側から見える場所に位置する隅角部に、長手方向全体にわたって長手方向に沿うように切り欠かれた格納部が設けられており、上記格納部に、上記当接面よりも突出する弾性変形可能な不陸調整材が、外側の端面が前記建材の幅方向の端面と面一になるように取り付けられ、上記建築物の壁面に当接して使用される際に、上記不陸調整材は、その突出方向の先端面が上記建築物の壁面により該突出方向と反対方向に向かって押し込まれた圧縮状態となって上記格納部内に収容されている一方、上記建材本体の当接面が、上記長手方向に離間する少なくとも2箇所で上記建築物の壁面に当接されていることを特徴とする。
【0011】
この第1の発明では、当接面より凹陥した格納部を当接面の長手方向全体にわたって設けるとともに、該格納部に不陸調整材を取り付けるようにしたため、建材の当接面と、建築物の壁面の少なくとも2箇所の固定部が当接した状態で施工することができる。これにより、従来の建材のように当接面と建築物の壁面との間に不陸調整材の全体を介在させる場合と比較して、建材を強固に且つ安定的に建築物の壁面に固定させることができる。
【0012】
さらに、建材が建築物の壁面に当接して使用される際に、格納部側(切り欠き部分側)の側面から見たときに、格納部の深さに相当する所定幅の不陸調整材が、長手方向全体にわたって見えるようになっている。これにより、例えば、建築物の壁面に不陸があった場合においても、建築物の壁面の凹凸や湾曲を見えにくく(目立たなく)することができ、意匠性を向上させることができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記不陸調整材は、上記建材が上記建築物の壁面に当接して使用される際に、少なくとも一部が上記当接面と面一になるまで押し込まれていることを特徴とする。
【0014】
この第2の発明では、第1の発明と同様に、建材を強固に且つ安定的に建築物の壁面に固定させることができる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、上記建築物の壁面には、剛性部材からなる少なくとも1つのスペーサー部材が取り付けられており、上記建材本体は、上記当接面のうちの少なくとも1箇所が上記スペーサー部材に当接されている一方、上記当接面のうち上記スペーサー部材の取り付け位置に対し上記長手方向に離間する他の少なくとも1箇所が上記建築物の壁面に当接されていることを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、上記建築物の壁面には、剛性部材からなる少なくとも2つのスペーサー部材が上記長手方向に互いに離間して取り付けられており、上記当接面は、上記長手方向に離間する少なくとも2箇所で上記スペーサー部材に当接されていることを特徴とする。
【0017】
これら第3、第4の発明では、建築物の壁面に剛性部材からなるスペーサー部材が設けられていて、建材本体の当接面がこのスペーサー部材に当接される。このスペーサー部材は剛性材料からなるため、スペーサー部材は、建築物の壁面と同様に作用する。すなわち、建材を強固に且つ安定的に建築物の壁面に固定させることができる。
【0018】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、上記建材本体は、長尺状の板状材であり、上記当接面は、上記板状材の表面又は裏面に設けられていることを特徴とする。
【0019】
の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の建材を左右側板として用いており、上記左右側板の上端間を連結する天板と、上記左右側板の下端間を連結する底板とを備えた矩形枠状の木質材からなる収納ユニットの取付構造において、前記左右側板は、上記建築物の壁面に固定されて施工される板状材であり、上記左右側板の当接面は、上記板状材の木端面に設けられて、該木端面が上記建築物の壁面に当接されて施工されることを特徴とする。
【0020】
これら第5、第の発明では、建材本体は板状材であり、これらの建材本体を建築物の壁面に対して強固に且つ安定的に固定させることができる。
【0021】
の発明は、第1発明おいて、前記不陸調整材の幅と前記格納部の幅とが同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る建材の取付構造によると、平面からなる当接面と該当接面よりも凹陥した格納部とを建材の建材本体に設け、該格納部に弾性変形可能な不陸調整材を当接面よりも突出するように取り付けることで、不陸調整材によって不陸調整をする一方で、建材本体の当接面と被固定部とを直接当接させて施工することが可能になり、建材を被固定部に強固に且つ安定的に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る収納ユニットの斜視図である。
図2図2は、側板の拡大斜視図である。
図3図3(a)は、壁に収納ユニットの側板を固定した状態を示す左側面図であり、図3(b)は同右側面図である。
図4図4は、図3(a)の領域Bの部分拡大図である。
図5図5は、図3(a)のV−V線断面図である。
図6図6は、壁に変形例に係る側板を固定した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
図1は本発明の実施形態に係る収納ユニットAの全体構成を示している。この収納ユニットAは、例えば玄関やリビングルーム等の壁Wに対して当接するように設置(施工)され、例えば、衣類や鞄、靴等を収納するために用いられる。
【0026】
収納ユニットAは、左右側板1,1と、左右側板1,1の中間に立設された間仕切り板3と、左右側板1,1と間仕切り板3との上端間をそれぞれ連結する天板4,4と、左右側板1,1と間仕切り板3との下端間をそれぞれ連結する底板5,5とを備えた矩形枠状のものであり、左右両側板1,1の後端間は矩形状薄板材からなる背板6で連結されている。図1に示すように、収納ユニットAは、床Fと底板5,5との間に所定高さの空間ができるように壁Wに固定されている。間仕切り板3は、背板6の前側に立設されており、左右側板1,1間の空間が間仕切り板3によって2室に区画されている。また、収納ユニットAの前側は開放され、その開口を開閉する扉は設けられていない。なお、図示しないが、収納ユニットAの前側開口の全部または一部を開閉可能とするような扉を設けてもよい。
【0027】
背板6は、上背板6a、中背板6b、下背板6cからなる。具体的には、下背板6cは、左側板1と右側板1との後端下側で掛け渡された下支持体7bの下端奥側の隅角部から下側に延びるように一体的に固定され、中背板6bは、下支持体7bの上端奥側の隅角部に設けられた凹部(図示しない)に上側から嵌挿されている。加えて、中背板6bの上側には、左側板1と右側板1との後端上側で掛け渡された上支持体7aが連続一体的に固定されていて、その上支持体7aの上側に上背板6aが連続一体的に上側に延びるように固定されている。
【0028】
間仕切り板3の上下支持体7a,7bと対応する位置には、該支持体7a,7bの外形より若干大きくて左右方向に貫通する矩形状の切欠部31,31が形成されている。また、左右側板1,1の後端内側の隅角部で上下支持体7a,7bと対応する位置には、上下支持体7a,7bと嵌合するように該支持体7a,7bの外形より若干大きい有底矩形状の切欠部17,17,…が形成されている。なお、図示しないが、例えば、上下支持体7a,7bには、手前側に向かって突設する連結固定用のダボが設けられており、各側板1の各切欠部17,17,…における上下支持体7a,7bと対向する内壁には、それぞれ、上記支持体7a,7bから突設されたダボを嵌挿固定するための有底のダボ穴が設けられていて、側板1が上下支持体7a,7bによって固定支持できるように構成されている。
【0029】
左側板1と間仕切り板3との間には、高さ位置を変更できるように構成された可動棚板8が掛け渡されている。同様に、右側板1と間仕切り板3との間には、高さ位置を変更できるように構成された可動棚板8,8が掛け渡されている。これらの可動棚板8,8,…を可働可能にする構成は、従来から知られた技術を用いることが可能である。例えば、図示しないが、左右側板1,1の内表面15,15(間仕切り板3との対向面)及び間仕切り板3の左右両側面32,32に、それぞれ有底状のダボ穴(前後2つ)を高さ方向に複数段並べて形成し、ダボを挿入するダボ穴の段の高さ位置を変えることで、該ダボ穴の上部に載置する可動棚板8,8,…の高さ位置を変えればよい。
【0030】
図2に示すように、上記側板1は、木質材料からなる板状の側板本体10と、側板本体10に一体的に取り付けられた弾性変形可能な不陸調整材19とを備えている。側板本体10は、所定寸法(例えば厚さ35mm、長さ1800mm、幅230mm)に製材され、その表面に塗装処理又はシート巻き込み処理が施されている。
【0031】
側板本体10の後端面11(木端面)には、その厚さ方向に対向する隅角部のうち、収納ユニットAの外側に位置する隅角部に、側板本体10の長手方向全体にわたって所定深さD1で断面矩形状に切り欠かれた段差部13が形成されている。
【0032】
不陸調整材19は、その長手方向の寸法が側板本体10の長さと略同じで、長手方向と直交する幅方向の寸法が段差部13の底面13aの幅と略同じであり、かつ、その高さ(側板本体10の幅方向の長さ)が段差部13の底面13aから後端面11までの高さD1より高くなっている。この不陸調整材19は、段差部13の内面(底面13a及び側面の少なくとも一方)に接着剤等を用いて固定されており、その取付固定された状態において、不陸調整材19の後端面(突出方向外側の端面)19aは、後端面11よりも側板1の幅方向外側に向かって突出した状態(後端面11より所定高さD2だけ突出した状態)になっている。なお、不陸調整材19は、弾性変形可能に構成されていればよく、その材質は特に限定されないが、例えば、各種クッション材、発泡材、ゴム等を適用することができる。
【0033】
図1及び図2において、14,14,…は側板1の側板本体10の上下端面(収納ユニットAの施工後は天井又は床Fとの対向面)であり、15は側板本体10の裏面(収納ユニットAの施工後は該収納ユニット内側の表面)であり、16は側板本体10の前端面(収納ユニットAの施工後の該収納ユニット手前側の端面)である。
[収納ユニットの施工方法]
収納ユニットAの壁Wへの施工に際し、まず、作業者は、上下支持体7a,7b及び背板6を壁Wに固定する。具体的には、例えば、下背板6cが一体的に固定された下支持体7bをねじ等で壁Wに固定し、その後、中背板6b及び上背板6aが一体的に固定された上支持体7aを壁Wに固定する(図1は施工後の状態を示している)。
【0034】
次に、左右側板1,1を壁Wに施工する。具体的には、まず、作業者は、左右側板1,1の後端面11,11と壁Wとを対向させ、かつ、段差部13が収納ユニットAの左右方向外側に向くように配置する。次に、壁Wに固定された上下支持体7a,7bのダボ(図示しない)と左右側板1,1の切欠部17,17に設けられたダボ穴(図示しない)との位置合わせをした状態で、左右側板1,1を後端面11が壁Wに当接するまで奥側に押し込むことにより、後端面11と壁Wとを直接に当接させる。その後、ノックダウン金具(図示しない)等で左右側板1,1と上下支持体7a,7bとを固定する。
【0035】
以下において、このときの側板と壁Wとの当接状態について図3図5を用いて詳細に説明する。図3図5は、壁Wに右側板1を当接させて固定(施工)した状態を示した図である。図3(a)は上記固定状態を示す左側面図であり、図3(b)は同右側面図である。また、図4は、図3(a)の領域Bのうちの上下端部近傍を拡大した部分拡大図であり、図5は、図3(a)のV−V線断面図の一例を示した図である。図3〜5に示すように、壁Wは、不陸がある壁であるものとする(図3図5では不陸の大きさを誇張して示している)。
【0036】
図3(a)に示すように、右側板1を後端面11が壁Wに当接するまで奥側に押し込むことにより、右側板1の後端面11は、不陸がある壁W上において上下に離間した少なくとも2箇所で壁Wに当接する。この壁W上の当接部分を固定部Tとする。
【0037】
ここで、上記壁W上には、不陸の解消のために剛性材料からなるスペーサー部材9が取付固定されている場合がある。そこで、図4を用いて、右側板1の後端面11と固定部Tとの当接状態について、スペーサー部材9がない場合(図4(a))と、スペーサー部材9がある場合(図4(b)、(c))とを場合分けしてより詳細に説明する。このようなスペーサー部材9は、壁Wが例えば上下方向の少なくとも一方に向かうにしたがって垂直方向に対して後端面11と離れる方向に若干傾いているような場合等に用いられ、その傾き度合に応じて厚さ(例えば、1mm)を決めてねじ等で固定される。なお、スペーサー部材9は、剛性材料であればよく、その材質は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン等の高剛性の合成樹脂、金属等を適用することができる。また、スペーサー部材9の取付位置は、例えば、上下支持体7a,7bと壁Wとの間であり、上下支持体7a,7b及び背板6を壁Wに施工する際に、上記スペーサー9を上下支持体7a,7bの裏側に必要に応じて挿入し、垂直方向の傾斜を調整する。
【0038】
図4(a)の例では、後端面11は、右側板1の上端近傍及び下端近傍を含む少なくとも2箇所において、壁W上の固定部T,T,…と当接している。すなわち、図4(a)の例では、固定部Tは壁W上の2箇所以上の固定部T、T,…を含む。このように、右側板1の後端面11は、少なくとも2箇所で壁W上の固定部T,T,…と当接した状態で右側板1を壁Wに取り付けることにより、右側板1が壁Wに強固に取り付けられている。このことにより、壁W上に不陸があっても、後端面11の壁Wに対する直接の当接によって右側板1を壁Wに強固に取り付けることが可能になり、かつ、その固定の安定性も向上させることができる。
【0039】
図4(b)の例では、後端面11は、右側板1の上端近傍を含む少なくとも1箇所において、壁W上の固定部Tと当接する一方で、右側板1の下端近傍において、壁W上の1つのスペーサー部材9の外表面(施工時に後端面11と対向する表面)を固定部Tとしてそれに当接している。すなわち、図4(b)の例では、固定部Tは、壁W上の1箇所以上の固定部Tと、1個以上のスペーサー部材9上に設けられた1箇所以上の固定部Tとからなる。換言すると、後端面11は、壁W上の固定部Tと1箇所以上で直接に当接し、かつ、スペーサー部材9の固定部Tと1箇所以上で直接に当接している。ここで、スペーサー部材9が剛性材料からなるため、後端面11とスペーサー部材9の固定部Tとが当接した状態で施工することで、後端面11が壁W上の固定部Tに直接に当接されて取り付けされる場合と同等の強固な固定をすることができ、その固定の安定性も高い。
【0040】
図4(c)の例では、後端面11は、右側板1の上端近傍及び下端近傍において、いずれもスペーサー部材9の固定部Tと当接している。すなわち、図4(c)の例では、固定部Tは、2個以上のスペーサー部材9,9,…に対して、各スペーサー部材9上の固定部Tからなる。換言すると、後端面11の上下方向において、スペーサー部材9の固定部Tと2箇所以上で直接に当接している。ここで、図4(b)の場合と同様に、スペーサー部材9が剛性材料からなるため、後端面11をスペーサー部材9の固定部Tとが当接した状態で施工することで、後端面11が壁W上の固定部Tに直接に当接されて取り付けされる場合と同等の強固な固定をすることができ、その固定の安定性も高い。
【0041】
そして、上述のように、側板1を奥側(壁W側)に押し込んで後端面11が固定部Tに当接した状態において、不陸調整材19は、後端面11と側板厚さ方向に隣接する位置において、壁Wと段差部13との間で圧縮変形している。具体的には、図3(b)及び図5に示すように、側板本体10の後端面11と固定部Tとが当接された状態で、不陸調整材19は、側板本体10の後端面11と側板厚さ方向に隣接する位置において、その後端面11と略面一になるまで段差部13内において圧縮され、かつ、不陸調整材19の後端面19aが接触する壁Wの不陸による凹凸に沿って、壁Wとの隙間を塞ぐように弾性変形している。このような状態において、収納ユニットAの外側(右側板1の右側又は左側板1の左側)から見ると、側板1の後端と壁Wとの間において、上下方向の全体にわたって段差部13の深さD1に相当する幅の不陸調整材19が見えるようになっている。
【0042】
以上のようにして側板1を壁Wに施工した後、天板4,4、底板5,5、可動棚板8,8,8を取り付けて施工は終了する。この取り付けは、従来から知られた技術を用いることが可能であり、例えば、ダボ、ノックダウン金具等を用いて取り付けることができる。
【0043】
したがって、本実施形態によると、側板1の後端面11を少なくとも2箇所で固定部T,T,…に当接させることができるため、例えば、側板の後端面の全体と壁との間に不陸調整材が介在する場合と比較して、側板1を壁Wに強固に且つ安定的に固定させることができる。従来技術のように、建材の当接面の全体と壁との間に不陸調整材が介在する場合には、建材と壁とが当接する部分がなくなるため、強固な固定が妨げられ、かつ、安定性に欠ける場合が生じるが、本実施形態ではそのようなことが生じることはない。
【0044】
さらに、本実施形態によると、側板1の後端面11と壁W上の固定部Tとが当接された場合に、不陸調整材19が壁Wの形状に沿って変形しており、側板1の外側から収納ユニットAを見ると、側板1の後端面11と壁Wとの隙間が塞がれ、かつ、側板1の後端面11と壁Wとの間において、上下方向の全体にわたって段差部13の深さD1に相当する幅の不陸調整材19が見えるようになっている。これにより、例えば、壁Wに不陸がある場合においても、一見すると所定幅D1の不陸調整材19が設けられた側板1があたかも平らな壁上に施工されているようにすることができる。すなわち、所定幅D1の不陸調整材19を積極的に見せるようにすることで、一見すると側板1の後端面11と壁Wとの隙間が上下方向全体にわたってあたかも一定であるかのように見える。
【0045】
ここで、例えば、側板本体10に対して、段差部13を設けずに不陸調整材19を取り付けた場合、上下方向における側板1の後端面11と壁Wとの隙間部分で、側板1の後端面11と壁Wとの隙間がほとんどなく側板1と壁Wとが互いに接近している場所と、側板1の後端面11と壁Wとの間に隙間があり、この隙間に不陸調整材19が充当されている場所とが発生する場合がある。すると、側板1の後端面11と壁Wとが互いに接近している場所と、側板1の後端面11と壁Wとの間に隙間がある場所とで、見た目が著しく異なるため、壁の凹凸や湾曲が目立ち、意匠性が悪くなる問題がある。
【0046】
また、従来の建材のように当接面と被固定部との間に不陸調整材の全体を介在させた場合において、上記壁の凹凸や湾曲が目立たないようにするために、弾性や柔軟性を有する層厚を厚くすることも考えられるが、建材を被固定部に強固に且つ安定的に取り付けることができないという問題がある。さらに、不陸調整材が弾性変形した後で所定厚さが必要になるため、部材のコストが高くなるという問題がある。
【0047】
これに対し、本実施形態によると、上述のように、側板1の上下方向の全体にわたって側板1と壁W(接触面Wc)との境界部分に段差部13の深さD1に相当する不陸調整材19が見えるため、上下方向で収納ユニットと壁W(側板1)との隙間がない場所と隙間がある場所とがある場合においても、建材と壁との隙間の差が見分け難くなり、すなわち、隙間が一定に見えやすくなり、意匠性を向上させることができる。
【0048】
さらに、段差部13の深さD1を変えることで、建材(側板1)と壁Wとの固定強度や安定性を維持しつつ、建材(側板1)と壁Wとの隙間を容易に調整することができる。これにより、例えば、壁等の被固定部の不陸の状態(例えば、壁Wの凹凸状態や湾曲状態)や建材を設置したり取り付けたりする場所に応じて、建材と壁との間に見える不陸調整材の幅を調整することができるメリットがある。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。
【0050】
(その他の実施形態)
前述の実施形態では、不陸調整材19は、側板本体10の隅角部に設けられた断面L字状の段差部13に取り付けられているものとしたが、これに限定されない。
【0051】
例えば、図6に示すように、側板本体10の後端面11側の板厚方向中央に、長手方向全体にわたって延びる溝18を設け、この溝18内に不陸調整材19を取り付けるようにしてもよい。より具体的には、不陸調整材19は、前述の実施形態と同様に、後端面11より所定高さ突出した状態になるように溝18に取り付け固定されている。そして、図6に示すように、側板1の後端面11が壁Wの固定部Tに当接された状態では、後端面19aが接触する接触面Wcの形状に沿うように圧縮変形するように構成されている。それ以外の構成及び施工方法は、上述の実施形態及び変形例と同様である。なお、図6では、仮想線で不陸調整材19の後端面19aが圧縮変形される前の状態を示している。
【0052】
以上のように、側板本体10に設けた溝18に不陸調整材19を取り付けた場合においても、後端面11と、少なくとも2箇所の固定部とを当接させることができるため、側板1を壁Wに強固に且つ安定的に固定させることができる。また、このような溝を設ける構成にすることにより、溝の板厚方向両側において壁と当接させることができるため、より安定的に当接させることができるメリットがある。なお、溝18の位置は、板厚方向の中央に限定されず、板厚方向のいずれか一方側に寄せられていてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、図4において、固定部Tが右側板1の上下端に1箇所ずつ設けられている例を示したが、前述の少なくとも2箇所の固定部Tの位置は、右側板1の上下端部の位置に限定されない。例えば、建材の中間部分において、建材本体の当接面が被固定部上に設けられた少なくとも2箇所の離間する固定部に当接してもよく、建材の上下寄りのいずれか一方の位置において、少なくとも2箇所の離間する固定部に当接してもよい。また、上記の実施形態において、1つの固定部Tが複数の固定部T,T,…からなり、該複数の固定部T,T,…からなる固定部Tが2箇所以上で離間してあり、該2箇所以上で側板本体10の後端面11が壁Wに直接に当接するようにしてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態において、建材は収納ユニットAの右側板1であり、不陸調整材19が壁Wと対向する位置に設けられるものとしたが、これに限定されない。例えば、本実施形態に係る右側板1が収納ユニットの左側板1に適用できるのは勿論のこと、側板1に限定されず、他の建材にも適用可能である。具体的には、収納ユニット製品全般、簡易の空間の間仕切り材等に用いる板状の建材として幅広く適用することができる。この場合、その木端面又は木口面に段差部を設けるようにすればよい。例えば、図1の例では、収納ユニットAが床Fから所定高さの空間を設けて設置されるものとしたが、収納ユニットAが床Fに載置状態で設置されるようにし、側板1の下端面14と床板Fとの当接面に対して本発明を適用してもよい。この場合、側板1の下端面14と表面12とを接続する隅角部に段差部13を設け、その段差部13に不陸調整材19を取り付ければよい。
【0055】
また、例えば、収納ユニットAが天井まで延びている場合に、側板1の上端面14と表面12とを接続する隅角部に段差部13を設け、その段差部13に不陸調整材19を取り付けてもよい。
【0056】
さらに、例えば、室内の床Fから天井まで延びるような簡易の空間間仕切り材を取り付ける際に、上記の収納ユニットの場合と同様に、間仕切り材と床板との間や間仕切り材と天井とにおける隅角部に段差部を設け、その段差部に不陸調整材を取り付ければよい。なお、上記の適用例において、段差部に代えて、図6に示すような溝部を設けてもよい。
【0057】
さらに、本発明に係る建材は、例えば、壁の左右方向に延びる桟材等の板状材に適用することができる。この場合、例えば、桟材の壁との当接面(板状材の表面又は裏面)と上下端面とを接続する隅角部に段差部を設けたり、当接面に溝部を設けたりして、そこに弾性材料からなる不陸調整材を取り付ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、建材を被固定部に強固にかつ安定的に固定することができ、かつ、意匠性もよくすることができるので、壁や床に固定する収納製品全般や桟材等に適用することが可能であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0059】
1 側板(建材)
9 スペーサー部材
10 側板本体(建材本体)
11 後端面(当接面)
13 段差部
18 溝
19 不陸調整材
W 壁(被固定部)
T 固定部(第1固定部、第2固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6