特許第6567870号(P6567870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6567870-引戸用の開閉抵抗付与装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567870
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】引戸用の開閉抵抗付与装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 7/04 20060101AFI20190819BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20190819BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   E05F7/04
   E05F5/00 A
   E06B3/46
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-101707(P2015-101707)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-216978(P2016-216978A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000184621
【氏名又は名称】小松ウオール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】寺田 吏志
(72)【発明者】
【氏名】黒田 将人
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05349783(US,A)
【文献】 実開昭50−100347(JP,U)
【文献】 特開2002−349131(JP,A)
【文献】 特開2007−120106(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0134583(US,A1)
【文献】 特開2007−9470(JP,A)
【文献】 実開昭59−40469(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 7/04
E05F 5/00−5/04
E06B 3/46
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸に搭載するローラと、引戸の開閉方向に配設し、前記ローラの軟質の周縁部が当接する固定部材とを備えてなり、前記ローラは、引戸の上端面に設置する水平回転形とし、共通のベース材を介して、引戸の前面側、後面側にそれぞれ偏心する一対を設けるとともに、それぞれ円柱状のコア部の両端に大径、小径の円板状のフランジを一体成形するハブ部材と、前記フランジの間に嵌め込むようにして前記ハブ部材と一体に組み立てる弾性材のリング体とを有し、前記大径のフランジの外周から突出する前記リング体の外側部分が前記周縁部を形成し、前記小径のフランジの中央部に円形の膨出部を形成するとともに前記小径のフランジを下側にして前記ベース材の上面に装着し、引戸を開閉すると、前記周縁部が連続的に弾性変形しながら回転し、引戸に開閉抵抗を付与することを特徴とする引戸用の開閉抵抗付与装置。
【請求項2】
前記各フランジの外周は、内向きの滑らかな円弧状に形成することを特徴とする請求項1記載の引戸用の開閉抵抗付与装置。
【請求項3】
前記ベース材は、引戸の上端部のフレーム材の上面に固定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の引戸用の開閉抵抗付与装置。
【請求項4】
前記固定部材は、上枠材に形成する引戸用のガイド溝の側壁面とすることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか記載の引戸用の開閉抵抗付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引戸(引違戸を含む。以下同じ)に対し、開閉操作時に適度の開閉抵抗を与えるための引戸用の開閉抵抗付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の開口部等を開閉する引戸は、動きが滑らか過ぎると、全閉時または全開時に戸当りに当って跳ね返ったり、僅かな傾きにより開放側または閉鎖側に移動したりして、使用者の安全性や操作性を損うことがある。そこで、引戸の開閉時に適当な開閉抵抗を実現するために、引戸用の戸車に制動用のローラを組み込むことが提案されている(特許文献1)。
【0003】
従来の戸車の制動用のローラは、戸車の走行用のローラの外周に接しながら回転し、走行用のローラの回転速度が過大になると、走行用のローラの回転方向に移動して固定のストッパピンに併せて摺接し、走行用のローラに制動力を加えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−152461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、戸車内の制動用のローラは、走行用のローラの外周に接しながら回転し、走行用のローラの回転速度の上昇によって走行用のローラの周方向に移動するから、各ローラの表面状態の変化により動作特性が変動し易く、長期に亘って安定な動作を実現することが容易でないという問題があった。また、走行用のローラは、その回転速度が大きくならない限り制動力を受けることがなく、引戸を安定に停止させておくことができないという問題もあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、引戸に搭載するローラと、固定部材とを組み合わせることによって、引戸に対して常時制動力を与えるとともに、必要十分な動作安定性を容易に実現することができる引戸用の開閉抵抗付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、引戸に搭載するローラと、引戸の開閉方向に配設し、ローラの軟質の周縁部が当接する固定部材とを備えてなり、ローラは、引戸の上端面に設置する水平回転形とし、共通のベース材を介して、引戸の前面側、後面側にそれぞれ偏心する一対を設けるとともに、それぞれ円柱状のコア部の両端に大径、小径の円板状のフランジを一体成形するハブ部材と、フランジの間に嵌め込むようにしてハブ部材と一体に組み立てる弾性材のリング体とを有し、大径のフランジの外周から突出するリング体の外側部分が周縁部を形成し、小径のフランジの中央部に円形の膨出部を形成するとともに小径のフランジを下側にしてベース材の上面に装着し、引戸を開閉すると、周縁部が連続的に弾性変形しながら回転し、引戸に開閉抵抗を付与することをその要旨とする。
【0008】
なお、各フランジの外周は、内向きの滑らかな円弧状に形成することができる。
【0009】
また、ベース材は、引戸の上端部のフレーム材の上面に固定してもよい。
【0010】
さらに、固定部材は、上枠材に形成する引戸用のガイド溝の側壁面としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、引戸に搭載するローラは、軟質の周縁部が固定部材に当接し、引戸を開閉すると、周縁部が連続的に弾性変形する際の抵抗に起因する開閉抵抗を引戸に付与することができる。そこで、引戸に加えられる開閉抵抗は、基本的にローラの周縁部の硬度に依存し、ローラの表面状態に依存することがなく、長期に亘り実質的に一定に維持されるため、高い動作安定性を実現することができる。ただし、固定部材は、引戸の開閉方向に、引戸と平行に配設するものとする。なお、ローラは、引戸の停止時にも周縁部が部分的に弾性変形しているため、引戸に対して常時制動力を与えることができる。また、引戸の開閉抵抗は、ローラの周縁部の硬度や寸法の他、固定部材との干渉による周縁部の弾性変形量などのパラメータにより適切に設定するものとする。なお、ローラの周縁部の材質は、弾性変形によって生じるハブ部材との間の滑り摩擦に対し、良好な耐摩耗性を有することが望ましい。
【0012】
引戸の上端面に設置する水平回転形のローラは、たとえば上枠材を利用して形成する固定部材と容易に組み合わせることができる上、組立作業も容易である。
【0013】
ローラは、引戸の前面側、後面側にそれぞれ偏心する一対を設けることにより、引戸が前後方向に過大に傾いたりする不都合がない。ただし、一対のローラは、それぞれ引戸の前面側、後面側の固定部材に対応させるものとする。
【0014】
引戸の前面側、後面側に偏心する一対のローラを共通のベース材に組み付ければ、共通のベース材を引戸の厚さ方向の中心線上に固定するだけで、一挙に引戸に搭載することができる。
【0015】
固定部材は、上枠材に形成する引戸用のガイド溝の側壁面を利用することにより、何ら格別な余分の部材を必要とせず、最も簡単な全体構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】引戸の模式構成説明図
図2】使用状態を示す要部拡大縦断面図
図3】ローラの構成説明図
図4図1(B)のX−X線矢視相当拡大断面図
図5図4のY矢視相当要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】
引戸用の開閉抵抗付与装置は、引戸20の上端面の戸尻側に搭載する一対の水平回転形のローラ10、10を主要部材としてなる(図1)。ただし、図1(A)、(B)は、それぞれ引戸20の正面図、上面図である。なお、以下の説明において、図1(A)の左側、右側をそれぞれ戸先側、戸尻側といい、図1(B)の下側、上側をそれぞれ前面側、後面側という。
【0019】
引戸20は、下端の戸先側、戸尻側の戸車21、21を介して開閉方向(図1(A)の矢印方向)に移動走行可能である。なお、引戸20の戸先側には、引手22が両面に取り付けられ、中央部上方には、ガラス窓23が開口されている。また、引戸20の上端面の戸先側には、倒れ止め用のガイドローラ24が装着されている。
【0020】
引戸20は、レール材31、戸先側、戸尻側の縦枠材32、32、上枠材33を組み合わせる戸枠30に組み込まれている(図2)。なお、図2の引戸20は、他の引戸20と組み合わせることにより、引違戸として構成されている。また、各引戸20の上端部は、ローラ10、10とともに、上枠材33の下向きのガイド溝33aに収納されており、レール材31は、床面FLとほぼ同レベルに埋設されている。ただし、図2において、縦枠材32、32、各引戸20のローラ10、10は、それぞれの一方のみが図示されている。
【0021】
引戸20上の各ローラ10は、ハブ部材11、弾性材のリング体12を一体に組み立てて構成されている(図3)。ただし、図3(A)、(B)は、それぞれローラ10の分解正面図、中央縦断面図である。
【0022】
ハブ部材11は、円柱状のコア部11aの両端に大小の円板状のフランジ11b、11cが形成されている。コア部11aの軸心上には、段付きの軸孔11dが貫通しており、小径のフランジ11cの中央部には、薄い円形の膨出部11eが形成されている。なお、軸孔11dの小径部分は、フランジ11c、膨出部11eの双方を貫通しており、フランジ11b、11cの外周は、それぞれ内向きに滑らかに丸められている。ハブ部材11は、たとえば硬質のナイロン(商品名)樹脂により一体成形されている。
【0023】
リング体12は、中央に丸孔12aを開口する円板状に形成されている。リング体12の厚さは、ハブ部材11のフランジ11b、11cの間隔に適合し、丸孔12aの内径は、ハブ部材11のコア部11aに弾発的に嵌合可能に設定されている。リング体12は、たとえばJIS K 6253のA型デュロメータによる硬度50の軟質ウレタン樹脂により一体成形されている。
【0024】
リング体12は、ハブ部材11に対し、小径のフランジ11c側からフランジ11b、11cの間に嵌め込むようにして、ローラ10として一体に組み立てることができる(図3(B))。なお、このとき、リング体12の略外側半部が大径のフランジ11bの外周から突出し、ローラ10の軟質の周縁部を形成している。
【0025】
ローラ10、10は、それぞれハブ部材11の軸孔11dに適合する段付きねじ13、共通のベース材14を介し、引戸20の上端部のフレーム材25の上面に装着されている(図2図4)。各ローラ10は、段付きねじ13を介し、ベース材14に対して回転自在であり、ベース材14は、両端の止めねじ14a、14aを介してフレーム材25上にねじ止めされている。なお、図2には、引戸20のペーパハニカムの芯材26、前面側、後面側の表面材27、27の各一部が模式的に図示されている。
【0026】
ローラ10、10用のベース材14は、中心線C1 を引戸20の厚さ方向の中心線C2 に一致させて固定されている(図2図5)。一方、ローラ10、10は、ベース材14の中心線C1 の左右にそれぞれ偏位量dだけ偏心させることにより、引戸20の前面側、後面側に偏心して装着されている。そこで、各ローラ10の半径R、上枠材33のガイド溝33aの側壁面33b、33bの間隔、すなわちガイド溝33aの幅Dとして、R+d>D/2に設定すると、各ローラ10は、ガイド溝33aの側壁面33bに当接して、差分Δ=R+d−D/2相当だけリング体12の外周部、すなわち軟質の周縁部を弾性変形させることができる(図5の点線)。ただし、図4において、ローラ10、10は、止めねじ14a、14aとともに、便宜的にベース材14の中心線C1 上にあるように図示されている。
【0027】
よって、引戸20を開閉すると、ローラ10、10は、ガイド溝33aの双方の側壁面33b、33bに当接して周縁部が連続的に弾性変形しながら回転し、引戸20に対して適切な実質的に一定の開閉抵抗を付与することができる。なお、引戸20に付与される開閉抵抗は、リング体12の硬度や、厚さ、半径方向の幅を含む寸法の他、半径R、偏位量d、ガイド溝33aの幅Dによって決まる差分Δなどのパラメータを適宜調節して設定する。
【0028】
以上の説明において、ローラ10、10は、引戸20の上端面の戸先側に配置してもよく、戸尻側、戸先側の双方に配置してもよい。また、ローラ10、10は、引戸20の上端面の中央部に配置し、戸尻側、戸先側の双方にそれぞれガイドローラ24を設けてもよい。さらに、ローラ10、10は、引戸20の傾きが過大にならないような適切な方策を併用することにより、1個だけを採用してもよい。なお、ローラ10は、水平回転形に代えて、垂直回転形としてガイド溝33aの天面に当接させてもよく、引戸20の下端面に装着してレール材31に当接させてもよい。ただし、ローラ10を当接させるガイド溝33aの側壁面33bや天面、レール材31は、ローラ10に対応する固定部材を形成する。そこで、この場合の固定部材は、引戸20の開閉方向に引戸20と平行に配設する長尺材であって、ローラ10の周縁部を連続的に弾性変形させることができる限り、上枠材33やレール材31と別の部材としてもよい。すなわち、引戸20に対するローラ10の装着形態と、それに対応する固定部材は、任意に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、一般住宅用の他、たとえば学校や老人施設などのように苛酷な使用状態になりがちな引戸の用途に対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…ローラ
14…ベース材
20…引戸
33…上枠材
33a…ガイド溝
33b…側壁面

特許出願人 小松ウオール工業株式会社
図1
図2
図3
図4
図5