【0015】
こうした基材1によって形成される果実袋2の袋面3は、その炭酸ガスの透過度が1.0×10
2〜1.0×10
7ml/m
2・24hr・atm程度、好ましくは1.5×10
2〜1.0×10
6ml/m
2・24hr・atm程度、更に好ましくは2.0×10
2〜5.0×10
5ml/m
2・24hr・atm程度を示すものであり、また、その水蒸気透過度は30〜5000g/m
2・24hr程度、好ましくは150〜4500g/m
2・24hr程度、更に好ましくは300〜3500g/m
2・24hr程度を示すものに形成されている。
上記炭酸ガス透過度が1.0×10
7ml/m
2・24hr・atmよりも大きい場合には、袋内に炭酸ガスを適当に貯留することができないし、水蒸気透過度が30g/m
2・24hrよりも低いときには、袋内で蒸れが生じ易い。
【実施例】
【0020】
実施例及び比較例を作製するために下記の基材を用意した。
基材1: 純白原紙に、低分子量ポリエチレンワックス10%を含有するパラフィンワックスを8.5g/m
2の割合で表面に塗布加工処理したもの。その炭酸ガス透過度は2.294×10
2ml/m
2・24hr・atmであり、水蒸気透過度は469g/m
2・24hrである。上記炭酸ガス透過度は測定環境が40℃、相対湿度90%の条件下で測定したものであり、水蒸気透過度は測定環境が25℃、相対湿度10%の条件下で測定したものである(以下、同じ)。
【0021】
基材2: 純白原紙に、低分子量ポリエチレンワックス10%を含有するパラフィンワックスを6.5g/m
2の割合で表面に塗布加工処理したもの。その炭酸ガス透過度は2.346×10
5ml/m
2・24hr・atmであり、水蒸気透過度は994g/m
2・24hrである。
基材3: 耐湿グラシン紙の上に、純白原紙の表面を水性ワックスエマルジョンにより処理したものを重ね合せたもの。この重ね合せ体の炭酸ガス透過度は3.398×10
5ml/m
2・24hr・atmであり、水蒸気透過度は3316g/m
2・24hrである。
【0022】
基材4: 厚さ40μmの低密度ポリエチレンフイルムであって、炭酸ガス透過度は2.30×10
4ml/m
2・24hr・atmであり、水蒸気透過度は16g/m
2・24hrのもの。
基材5: 純白原紙に、パラフィンワックスを11g/m
2の割合で表面に塗布加工処理した慣行の基材。その炭酸ガス透過度は2.584×10
7ml/m
2・24hr・atmであり、水蒸気透過度は165g/m
2・24hrである。
【0023】
(実施例1)
上記基材1を使用し、横165mm×縦196mmの上部開口を有する平袋を形成し、底部にはその両隅部に長さ10mmの非接着部を残して糊付けし、上記非接着部を開口部としたもので、平袋の一側に沿い上部開口6側に針金の係止具を設けたもの。開口部の底部長さに対する割合は12%である。
【0024】
(実施例2)
上記基材2を使用し、他は上記実施例1と同様に形成したもの。
(実施例3)
上記基材3を使用し、他は上記実施例1と同様に形成したもの。
(実施例4)
上記底部にはその両隅部に非接着部を設けず開口部を有しないもので、他は実施例2と同様にしたもの。
【0025】
(比較例1)
上記基材4を使用し、他は上記実施例1と同様に形成したもの。
(比較例2)
上記基材5を使用し、他は上記実施例1と同様に形成したもの。
(比較例3)
上記底部にはその両隅部に長さ20mmの非接着部を設けて開口部としたもので、他は実施例2と同様にしたもの。開口部の底部長さに対する割合は24%である。
(比較例4)
上記底部にはその両隅部に長さ20mmの非接着部を設けて開口部としたもので、他は比較例2と同様にしたもの。開口部の底部長さに対する割合は24%である。
【0026】
上記実施例及び比較例の性能を見るために、以下の試験を行った。
(排水性試験)
実施例2、実施例4、比較例4を使用し、桃(川中島白桃)及び梨(幸水)の果実に上記したような常法により袋掛けし、露地栽培において雨が降った翌日に袋内から排出されない貯留水の量を測定した。
貯留水の量は、袋内に半分溜まった時の量を100として、指数化して表示した。
【0027】
(結果)
【表1】
【0028】
(炭酸ガス濃度試験)
実施例2、実施例4、比較例3、比較例4を使用し、桃(川中島白桃)、梨(幸水)、梨(ゴールド二十世紀)の果実に定法により袋掛けし、露地にて栽培し、実施例4については雨避けシートを架けた。そして、収穫の2〜7日前の3日間、袋内の炭酸ガス濃度を測定しその含有平均値(%)を出した。炭酸ガス濃度の測定には、ダンセンサー(Dansensor)社製のチェックポイントII(CheckPointII)を使用した。
【0029】
(結果)
【表2】
【0030】
(糖度測定試験)
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3を使用し、桃(川中島白桃)、梨(幸水)、梨(ゴールド二十世紀)の果実に常法により袋掛けし、露地にて栽培し、実施例4については雨避けシートを架けた。そして、収穫時の糖度(Brix%)を測定した。糖度の測定には株式会社アタゴ製のデジタル糖度計PR101αを使用した。
【0031】
(結果)
【表3】
【0032】
(考察)
表1に示すように、実施例2、比較例4のように袋体の底部に開口部を設けているものでは、袋内に雨水が溜まることが無いので露地栽培でも使用することができるが、実施例4のように開口部の無いものでは雨水の溜まりが見られるから、露地栽培で雨避けシートを使用したり、ハウス内などにおいては有効に使用することができる。
果実袋内の炭酸ガス濃度については、表2に示すように、実施例2のように袋の底部に10mmの開口部を有するものは、実施例4の開口部を有しないものとほぼ同等の程度の濃度を示している。比較例3の袋の底部に20mmの開口部を有するものでは実施例2に比べて濃度が大幅に低くなっており、比較例4の20mmの開口部を有する慣行袋では更に低い濃度を示している。
【0033】
果実の糖度については、表3に示すように、実施例3の果実袋を使用したものが最も高い糖度を示しており、実施例1,2,4がこれに次ぐ糖度を示している。そして、実施例1〜実施例4のものは、いずれも比較例1,2のものに比較して高い糖度を示しており、それらの糖度が桃(川中島白桃)では比較例1に対して24〜28%高く、比較例2に対しては18〜22%高くなっている。また、梨(幸水)では比較例1に対して24〜40%高く、比較例2に対しては12〜27%高くなっており、梨(ゴールド二十世紀)では比較例1に対して16〜23%高く、比較例2に対しては6〜12%高くなっている。
また、比較例3は実施例2のものに対して底部の開口部を大きくしたものであるが、実施例2のものより糖度の上昇が相当に低くなっている。このように、実施例1〜実施例4のものは、糖度の向上に効果的であることが判る。