【実施例】
【0014】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施例の開閉装置1は、住宅やビル、倉庫、工場、地下街、トンネル、車両の荷台等の躯体の開口部分(窓や出入口を含む)に配設され、該開口部分を開閉するシャッター装置に適用した一例について説明する。
【0015】
この開閉装置1は、全閉状態の閉鎖方向端部を上方へ直線的にスライドさせて開放動作する開閉体10と、該開閉体10の横幅方向(
図1によれば左右方向)の端部を囲み開閉方向へ案内するガイドレール20と、開閉体10をその上方側で巻き取ったり繰出したりする巻取装置30と、開閉体10の外側で水圧を受けて水圧感知信号を出力する水圧スイッチ50と、開閉体10の内側で開閉体10の開閉動作を手動操作するのに用いられる手動操作部60と、制御回路70とを備え、非常時に自動開放信号(後述する外部信号やセンサ信号等)を前記制御回路70へ入力するように構成される。
【0016】
開閉体10は、横長略矩形状の金属板を曲げ加工してなる所謂スラット11aを、上下に隣接する該スラット11a,11a間で回動するように複数連接することで開閉体本体11を構成し、該開閉体本体11の閉鎖方向端部側(図示例によれば下端側)には、下方側の障害物を可動座板12への当接により感知する座板スイッチ10aを構成している。
この開閉体10の他例としては、単数もしくは複数のパネルや、耐火性(難燃性を含む)のシート状物やネット状物を開閉方向へ配設してなる態様、あるいはスラット、パネル、パイプ、シート状物、ネット状物等を適宜に組み合わせてなる態様等とすることも可能である。
【0017】
なお、本明細書中、開閉体10の外側とは、閉鎖状態の開閉体10における厚み方向の一方側であって、消防隊等が遠方から開閉体10に近づいて来る側のことである。開閉体10の内側とは、閉鎖状態の開閉体10における厚み方向の他方側であって、開閉体10の外側とは反対側のことであり、言い換えれば、開閉体10における、火災等の災害の発生が想定される側のことである。開閉体10が開放されたときには、消防隊等が開閉体10の下方を通過して、開閉体10の外側から内側へ突入していくことを想定している。
【0018】
また、ガイドレール20は、開閉体10の幅方向の端部を囲む断面略コ字状の部材であり、開閉体10によって着座される当接対象部位F(例えば、床面や地面、枠部材等)と巻取装置30との間にわたって配設されている。
【0019】
巻取装置30は、略箱状の収納部31内に、開閉体10を巻き取ったり繰出したりする巻取軸32と、該巻取軸32をチェーン及びスプロケット等の動力伝達手段33を介して駆動回転させたり制動したりする開閉機40と、後述する制御回路70とを具備している。
【0020】
開閉機40は、例えば実開平01−118084号公報に示される周知構造の開閉機であり、巻取軸32を回転させるための電動モータ(図示せず)と、該電動モータの回転を制動するブレーキ機構(図示せず)等を具備してなる。
この開閉機40には、出力軸の回転量から開閉体10の全閉位置と全開位置とを検知し、その検知信号を出力するリミットスイッチ(例えば、図示しない周知のカウンター式リミットスイッチ等)が設けられている。
【0021】
水圧スイッチ50は、火災時などに消防隊の消火用ホースが接続される送水口や、該送水口への送水により作動して信号を出力する水圧スイッチ本体等により構成され、当該開閉装置1が設置される構造物における開閉体10よりも外側(屋外側)の壁面等に配設されている。
【0022】
また、手動操作部60は、開閉体10を開放動作・閉鎖動作・停止するために手動操作される開放スイッチ、閉鎖スイッチ、停止スイッチ等を具備しており、当該開閉装置1が設置される構造物における開閉体10よりも内側(屋内側)の壁面等に配設されている。
この手動操作部60は、開放スイッチ、閉鎖スイッチ又は停止スイッチが操作された場合に、この操作されたスイッチに対応する信号(開放信号、閉鎖信号又は停止信号)を出力する。
【0023】
制御回路70は、マイコン回路やシーケンサー等のプログラムドロジック回路、あるいは電子回路やリレー回路等によるワイヤードロジック回路等により構成された電気回路であり、水圧スイッチ50による水圧感知信号、手動操作部60による手動操作信号、後述する自動開放信号等の入力に基づき、開閉機40の動作を制御する。
この制御回路70は、図示例によれば、巻取装置30の収納部31内に設けられるが、他例としては、収納部31内外に設けた複数の電気回路からなる態様とすることが可能である。
この制御回路70は、バッテリー電源71を具備しており、通常時は商用電源により動作し、停電時にはバッテリー電源71によって動作するように、自動切換え装置72を具備している。
【0024】
次に、上記構成の開閉体10について、その制御上の特徴を、
図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
先ず、制御回路70は、開閉機40のリミットスイッチからの信号により開閉体10が全閉状態か否かを判断し(ステップ1)、全閉状態であれば次のステップ2へ処理を進め、そうでなければステップ1aへ処理を移行する。
【0025】
ステップ1aでは、例えば、手動操作部60や他のリモコン等による開放指令があった場合に開閉体10を開放動作させる等、当該開閉装置1としての通常動作の処理ルーチンが実行され、この後、ステップ1へ処理が戻される。
【0026】
また、ステップ2では、外部信号の有無が判断され、外部信号があった場合にはステップ3へ処理を進め、そうでなければステップ3aへ処理を移行する。
ここで、外部信号とは、当該開閉装置1の設置対象である構造物の外部から信号ケーブルによって制御回路70に入力される有電圧の信号である。この外部信号は、例えば、前記構造物の外部の防災管理団体(周知の防災センター等)から、自動又は手動により送信された信号とすればよい。
【0027】
ステップ3では、上記構造物の内部の状態を感知するセンサによる感知信号(本明細書中、センサ信号と称する)の有無が判断され、外部信号があった場合にはステップ4へ処理を進め、そうでなければステップ3aへ処理を移行する。
ここで、前記センサは、例えば、火災の発生を感知してその感知信号を発する火災感知器(煙感知器や熱感知器等を含む)とすればよい。このセンサ信号は、有線又は無線により制御回路70に入力される。
【0028】
また、ステップ3aでは、水圧スイッチ50による開放信号の有無が判断され、開放信号があった場合にはステップ4へ処理を進め、そうでなければステップ3bへ処理を移行する。
例えば、消防隊等が消防用ホースを水圧スイッチ50の送水口に接続し送水を開始すれば、水圧スイッチ50の水圧スイッチ本体(図示せず)による出力信号が制御回路70に入力され、制御回路70がステップ4へ処理を進める。
【0029】
また、ステップ3bでは、手動操作部60による開放信号の有無が判断され、開放信号があった場合にはステップ4へ処理を進め、そうでなければステップ1へ処理を戻す。
例えば、上記構造物の内部で人為的に手動操作部60に対する開放操作が行われた場合には、該手動操作部60による開放信号が制御回路70に入力され、制御回路70がステップ4へ処理を進める。
【0030】
ステップ4では、開閉機40を動作させることで、巻取軸32を巻取り方向へ回転し、開閉体10の開放動作を開始する。
この開放動作の電源は、停電等が発生していない場合には商用電源が用いられ、停電等が発生している場合には、自動切換え装置72による電源配線の切り替えが行われて、バッテリー電源71が用いられる。
そして、開閉体10の開放動作は、開閉機40のリミットスイッチにより開閉体10の全開状態を感知した場合や、手動操作部60による停止信号があった場合等には停止する。
【0031】
よって、上記構成の開閉装置1によれば、例えば、消防隊等の到着が遅れたり消火ホースを接続する作業に時間がかかったりして、水圧スイッチ50の作動がない場合でも、上述した外部信号及びセンサ信号等の自動開放信号により、閉鎖状態の開閉体10を自動的に開放動作させることができ、ひいては、消防活動や、構造物内の人を構造物外へ避難させる避難活動等を速やかに行うことができる。
また、上記実施例によれば、上記外部信号及び上記センサ信号等の複数の信号があることを条件に開閉体10を開放動作するようにしているため、センサの誤作動や故障、人為的なミス等に起因して開閉体10が開放動作してしまうようなことを防ぐことができる。
【0032】
なお、他例としては、開閉体10の自動開放の確実性を優先させるために、制御回路70の制御プログラム等を変更し、上記外部信号と上記センサ信号とのうちの何れか一方の信号があることを条件に開閉体10を開放動作させる構成とすることも可能である。
さらに、他例としては、より簡素な構造とするために、上記外部信号と上記センサ信号とのうち、何れか一方の信号のみを制御回路70に入力するようにし、この一方の信号に基づく判断により開閉体10を開放動作させることも可能である。
【0033】
また、上記実施例によれば、他の信号との混線を回避する好ましい態様として、上記外部信号を信号ケーブルを用いた有線接続により制御回路70に入力したが、他例としては、上記外部信号を無線により制御回路70へ入力する態様とすることも可能である。
【0034】
また、上記実施例によれば、全閉状態で静止した開閉体10を上記自動開放信号等により開放動作するようにしたが、他例としては、下端側に隙間を有する閉鎖状態で静止した開閉体10を、上記自動開放信号等により開放動作する構成とすることも可能である。