(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
塗布具は、筆記具、マーカー等が代表的なもので、一般には、軸筒(把持筒)内にインク(塗液)を充填インクタンク又はインクを含浸させた塗液吸蔵体を備え、そのインクタンク又は塗液吸蔵体に、穂先体の後端を直接又は中継芯(誘導芯)を介して接続し、穂先体の先端部を塗布具の軸筒(チップホルダーを備えたものもある)の外部に露出させた構成となっている。
【0003】
穂先体は、文字、図形、記号等を書くためのものであり、用途に応じて穂先体の先端を、尖鋭に、砲弾状に、半円球状に、扁平で、直線状の端縁または傾斜した端縁(チゼル状)等に形成したものがある。従来、穂先体の製造方法は、プラスチック繊維等を棒状に束ねたもの、プラスチック短繊維に熱硬化樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させて加熱硬化させて繊維集合体としたもの、プラスチック押出し成形したもの、プラスチック焼結による多孔体としたもの等が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、微細な粒子からなるペン芯先端部と粗大な粒子からなるペン芯根本部との二層構造で構成されたペン芯が記載されている。このペン芯の製造方法は、まず、見掛比重0.35のポリフッ化ビニリデン樹脂粉末を、予め240から250℃の流動空気中で加熱処理を行って、焼成ポリマーを得る。そして、この焼成ポリマーを、平均粒子径約200μと平均粒子径100μに分け、ペン芯金型に先ず、平均粒子径100μの焼成ポリマーを充填し、その上に、平均粒子径約200μの焼成ポリマーを充填する。そして、250℃の流動空気中で焼結させた後、冷却し、ペン芯金型から離型することで、ペン芯が成形される。
【0005】
また、特許文献2には、合成樹脂製の多孔体の穂先本体と、この穂先本体に内蔵された中綿とからなる穂先体が記載されている。この穂先体の穂先本体は、合成樹脂焼結体からなり、全体が同じ空隙率で成形されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたペン芯の製造方法では、ペン芯先端部は、平均粒子径100μの焼成ポリマーを焼結して成形しているため、空隙率が低い。このため、所望箇所に充分に筆記又は塗布することができない虞がある。また、文字、図形、記号等を書けたとしても、会議室、講堂、広い教室等において、部屋の後方にいる人が読み取ることができない虞がある。
【0008】
また、特許文献1に記載されたペン芯のペン芯根本部は、平均粒子径200μの焼成ポリマーを焼結して成形しているため、空隙率が高い。このため、ペン芯を塗布具のホルダに装着したとき、ホルダへの保持力が弱く、筆圧によるペン芯の折り曲げ、又は、運送時
の振動、衝撃等の外力が塗布具に加わることによって、塗布具がホルダから抜ける、浮く等の問題が発生する虞がある。
【0009】
更に、特許文献2に記載された穂先体では、全体が同じ空隙率で成形した穂先本体内に中綿を内蔵することにより、塗液を十分に供給でき、かつ、幅広く塗布することができるが、特許文献2には、穂先本体が二層構造で成形することについての開示はない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、塗液を充分に供給できかつ幅広く塗布することができ、更に、塗布具のホルダへの保持力を高めた穂先体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、塗布具のホルダに装着され、前記塗布具の軸筒内の塗布液吸蔵体から供給されるインクを導出させる棒状の穂先体であって、前記穂先体は、後端に開口した収納穴を備え、先端部を筆記端とした合成樹脂焼結体からなる穂先本体と、前記収納穴内に挿入された中綿とからなり、前記穂先本体は、その筆記端を空隙率の高い層とし、前記穂先体を前記ホルダに保持させる部位を空隙率の低い層とし、前記穂先体に設けた収納穴は、前記筆記端の内部まで延びており、前記中綿は、前記収納穴を埋め、その後部は、前記収納穴の開口に至るか突出し、
前記穂先本体は、空隙率が前記高い層と空隙率が前記低い層との間に、該低い層と同じ空隙率を備えたフランジ部が形成され、前記フランジ部には、所定の間隔を置いて配置された複数の空気交換溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本項に係る穂先体では、空隙率が高い層(先端部、すなわち、筆記端)と、空隙率が高い層より空隙率が低い層(胴体部及びフランジ部)とからる二層構造に構成され、かつ、穂先本体の筆記端の内部までに棒状の中綿が内蔵されているので、胴体部及びフランジ部に空隙率がない状態にあったとしても、インクを充分に筆記端に供給することができる。更に、筆記端では、インクの供給がよく、柔軟性(ソフトタッチ感)を有し、胴体部では、堅硬性を有し、筆圧に起因する穂先体の折り曲げが極めて少ないため、筆記により穂先体が漸次外方に出る現象を防止することができる。
【0013】
また、本項に係る穂先体は、空隙率が高い層と空隙率が低い層との間に、径方向外側に延びる環状のフランジ部を設けることにより、穂先体がホルダ内に沈むことを防ぐことができ、また、フランジ部に複数の空気交換溝を設けることで、インクタンク又は塗液吸蔵体に、空気の交換をスムーズに行うことができる。
【0014】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、空隙率が前記低い層には、前記フランジ部の下面から中央部付近まで延び、所定の間隔を置いて配置された複数の突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本項に係る穂先体において、空隙率が低い層には、フランジ部の下面から中央部付近まで延びる複数の突起部を設け、この周辺を空隙率の低い、樹脂層(空隙率が低い層)としたので、穂先体とホルダとの嵌合が強固となり、筆圧による穂先体の折り曲げ、又は、運送時の振動、衝撃等の外力が塗布具に加わっても、塗布具のホルダから穂先体の抜け、浮きを防止することができる。
【0016】
また、穂先体をホルダに装着した際、空気交換溝と連通している突起部と突起部との間の空間(空気交換通路)が空気の通り道となり、空気交換溝とインクタンク又は塗液吸蔵体とを適切に連通することができる。
【0017】
請求項4に記載した発明は、金型のキャビティ内にコアピンを、その周囲に空隙を残して設置するコアピン設置工程と、超高分子量ポリエチレン粉体を、前記コアピンの先端部を少なくとも覆わないで前記キャビティ内に充填する第1充填工程と、前記キャビティ内に充填した前記超高分子量ポリエチレン粉体上に、超高分子量ポリエチレン粉体と、50〜80質量パーセントの水溶性無機物とを混合した混合粉体を充填する第2充填工程と、前記金型に設けた押しピンにより、前記超高分子量ポリエチレン粉体及び前記混合粉体を加圧する加圧工程と、前記金型を加熱し、前記超高分子量ポリエチレン粉体及び前記混合粉体を焼結し、焼結品を成形する焼結工程と、形成された前記焼結品を洗浄し、水溶性無機物を前記焼結品から除去する水溶性無機物洗浄除去工程と、前記水溶性無機物を除去した成形品に棒状中綿を挿入する中綿挿入工程と、からなることを特徴とする方法である。
【0018】
本項に係る穂先体の製造方法では、まず、金型のキャビティ内にコアピンを、その周囲に空隙を残して設置する(コアピン設置工程)。次に、コアピンの先端部を少なくとも覆わないで、キャビティ内に超高分子量ポリエチレン粉体を充填し(第1充填工程)、その後、充填した超高分子量ポリエチレン粉体上に、超高分子量ポリエチレン粉体と、50〜80質量パーセントの水溶性無機物とを混合した混合粉体を充填する(第2充填工程)。次に、押しピンによって、超高分子量ポリエチレン粉体及び混合粉末体を加圧する(加圧工程)。次に、金型を加熱し、超高分子量ポリエチレン粉体及び混合粉末体を焼結し(焼結工程)、その後、得られた焼結品を洗浄し、水溶性無機物を焼結品から除去し(水溶性無機物洗浄除去工程)、成形品(穂先本体)を得る。そして、得られた穂先本体に中綿を挿入する(中綿挿入工程)。
この方法により、コアピン設置工程において、コアピンを金型のキャビティ内に設置することで、容易に中心位置を定めることができる。第1及び第2充填工程〜焼結工程において、キャビティ内に超高分子量ポリエチレン粉体の充填後、その上に超高分子量ポリエチレン粉体と50〜80質量パーセントの水溶性無機物とを混合した混合粉体を充填し、押圧ピンによって加圧し、この加圧状態を維持して焼結することで、焼結品を得ることができる。その後、除去工程において、焼結品の洗浄によって、水溶性無機物が除去され、異なった空隙率で成形された二層構造の成形品(穂先本体)を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のキャップによれば、塗液を充分に供給できかつ幅広く塗布することができ、更に、塗布具のホルダへの保持力を高めた穂先体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る穂先体1の構成を
図1〜
図5に基づいて詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る穂先体1は、穂先本体11と、この穂先本体11に内蔵され
た中綿13とからなり、インク吸蔵体又は塗布液吸蔵体9を内蔵する塗布具3のホルダ5の先端に取付けられ(
図1参照)、インク又は塗布液を紙、ホワイトボード等に筆記又は塗布するものである。
【0022】
穂先本体11の材料は、合成樹脂製の略有底筒状の多孔体であり、特に、超高分子量ポリエチレンが用いられる。この超高分子量ポリエチレンは、平均分子量390万〜500万、好ましくは平均分子量約450、平均粒径が85μm〜150μm、好ましくは平均粒径115μm程度の粉末である。本実施形態では、ティコナ社(Ticona)の商品名GUR(登録商標)の超高分子量ポリエチレン(GUR2122、GUR4120)を用いる。具体的には、ティコナ社のGUR2122は、平均粒径115μm、平均嵩比重0.23g/cm
3、平均孔隙率70%、平均強度1MPaの粉末であり、ティコナ社のGUR4120は、平均粒径120μm、平均嵩比重0.40g/cm
3、平均孔隙率40%、平均強度2.5MPaの粉末である。また、超高分子量ポリエチレン粉末の形状として、ティコナ社のGUR2122は、葡萄房状、ティコナ社のGUR4120は、じゃがいも状の形状である。本実施形態では、穂先本体11を成形する際、空隙率を調整するために、超高分子量ポリエチレン粉末に重曹等の水溶性無機物を添加して常温撹拌混合した粉末を用いる。この水溶性無機物は、平均粒径25μmの粉末を用い、配合割合は、重量比で50〜80質量パーセントである。
【0023】
図2〜5に示すように、穂先本体11は、その先端部位(筆記部位)において、空隙率が高い層12a(第1層)と、これに続く空隙率が低い層12b(第2層)とからなる二層構造12で構成される(
図2及び3参照)。二層構造12と言っても、二層が接する中間部位にあっては、両層が入り混じった層(中間層)を形成している。この穂先本体11は、先端部15(筆記端)と、胴体部17と、筆記端15と胴体部17との間に設けられた、外方周方向に延びる環状フランジ部19とからなる。筆記端15は、空隙率が高い層12aに属し、胴体部17及びフランジ部19は、空隙率が低い層12bに属する。また、穂先本体11は、胴体部17の端部から、筆記端15の略中央付近、すなわち、空隙率が高い層12aまで延びる柱状の収納穴21が形成されている(
図3及び4参照)。なお、フランジ部19は、空隙率が低い層12bに成形されているが、空隙率が高い層12a又は中間層に成形してもよい。この場合、穂先体1がホルダ5の内側に装着された箇所を空隙率が低い、すなわち、硬質の部位とすることが求められる。
【0024】
筆記端15は、略ドーム状又は砲弾状を呈し、フランジ部19の上面から垂直方向に延びるストレート部23と、半円形部25(砲弾部)とからなる。なお、筆記端15は、ストレート部23を設けているが、半円形部25のみでもよい。胴体部17は、後端(筆記端15の反対側の端部)が縮径し、フランジ部19の下面から軸方向下方に延び、円周方向に沿って間隔を置いて設けられた複数の略矩形状の突起部27が形成されている(
図3参照)。この複数の突起部27は、空隙率が低い、硬質の部位であるので、穂先体1を塗布具3に装着時、塗布具3のホルダ5の内周面にしっかりと嵌合する(
図1参照)。また、対向する二ケ所の突起部27と突起部27との間には、空気の交換通路となる通路29が形成され、この空気交換通路29は、後述する2つの空気交換溝31と連通し、吐出インクとの交換のための空気の通り道としての役割を有する。本実施形態において、突起部27は、6箇所形成される(
図3参照)。なお、突起部27は、適宜個数を変更することができる。また、突起部27は、底面視矩形状であるが、底面視半円形状、底面視四角形状、周方向に幅を有する底面視円弧状等の形状にしてもよい。
【0025】
環状フランジ部19は、筆記端15のストレート部23の下部から径方向外側に延びる。このフランジ部15には、塗液吸蔵体9に空気の交換を行うための、円周方向に沿って間隔を置いて設けられた空気交換溝31が形成されている。この空気交換溝31は、6つの突起部27と同軸上に配置されておらず、90°間隔を置いて2箇所形成される(
図3
参照)。なお、空気交換溝31は、適宜個数を変更することができる。
【0026】
中綿13は、従来の筆記具等で使用される塗液吸蔵体9と同様の材料であって、空隙率が約80〜90%を有するポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等の繊維、捲縮した繊維等の集合体を用いる。これらの繊維集合体(中綿13)は、塗液を豊富に保有する機能を有する。また、中綿13は、製造上において取扱い易いように、棒状体に形成され、その外周のみにバインダーを塗布するか、合成樹脂繊維の場合は弱い熱をかけて外周の繊維の一部を溶着させることにより、棒状体を保持させる。中綿13を棒状に形成する場合、バインダーとか、溶着で、その周壁に形成されている隙間を埋めることを極力少なくする。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る穂先体1の製造方法を
図6に基づいて詳細に説明する。
まず、
図6(a)に示すように、金型41の下型43に、コアピン45が一体になった治具47を取付ける(コアピン取付工程)。このとき、コアピン45は、穂先本体11に内蔵する棒状の中綿13の形状(
図4参照)、すなわち、中綿13の直径、長さ等の寸法が略同じものを用意する。
【0028】
次に、
図6(b)に示すように、金型41の中型49に形成されたキャビティ51内にコアピン45を設置する(コアピン設置工程)。このとき、中型49は、キャビティ51とコアピン45との位置を合わせるために、中型49の位置決め孔53に、下型43に設けられた位置決めピン55を挿通する。なお、キャビティ51は、コアピン45の外径より大きく形成され、かつ、コアピン45の上端を越えるように形成されている。これにより、コアピン45とキャビティ51との間には、空隙57が形成される。
【0029】
次に、
図6(c)に示すように、コアピン45とキャビティ51との間の空隙57(
図6(b)参照)に、超高分子量ポリエチレン粉末59を充填する(第1充填工程)。このとき、超高分子量ポリエチレン粉末59の充填は、コアピン45の上端面(先端部)を越えないように充填する。この超高分子量ポリエチレン粉末59は、ティコナ社のGUR2122又はティコナ社のGUR4120を用いており、40メッシュパスに篩い分けされた粉末を充填している。なお、第1充填工程では、穂先本体11の胴体部17及びフランジ部19に相当する。
【0030】
次に、
図6(d)に示すように、キャビティ51内に充填した超高分子量ポリエチレン粉末59上に、超高分子量ポリエチレン粉体と、50〜80質量パーセントの水溶性無機物とを混合した混合粉体61を充填する(第2充填工程)。このとき、混合粉体61の充填は、中型49の上端面49aと面一になるまで充填する。なお、混合粉末61は、ティコナ社のGUR2122に50〜80質量パーセントの重曹を添加して常温撹拌混合し、40メッシュパスに篩い分けされた粉末を充填している。なお、第2充填工程では、穂先本体11の筆記端15に相当する。
【0031】
次に、
図6(e)に示すように、プレス機(図示せず)のプレスによって、上型63に設けられた、断面視略ドーム状の凹部65aを有した押しピン65でキャビティ51内に充填された超高分子量ポリエチレン粉体59及び混合粉体61を加圧し、圧粉体70を得る(加圧工程)。このとき、上型63の押しピン65を中型49のキャビティ51に位置合わせするために、上型63に設けた位置決め孔67に、下型43の位置決めピン55を挿入する。また、押しピン65の押込みによって混合粉体61が盛り上がり、押しピン65の凹部65a内に充満する。なお、プレスによる加圧力、すなわち、押しピン65の押込み力を調整することにより、超高分子量ポリエチレン粉体59の密度及び混合粉体61の密度が変わり、穂先本体11の空隙率を適宜変更することができる。また、筆記端15の高さは、押しピン65の凹部65aの深さを変更することで、高さを適宜変えることが
できる。
【0032】
次に、
図6(f)に示すように、超高分子量ポリエチレン粉体59及び混合粉体61を加圧した状態で、加熱手段69(例えば、電気炉)によって、加熱温度180℃で20分間加熱して焼結し、焼結品71を得る(焼結工程)。このとき、加熱手段69で加熱する前に、金型41に付着したちり、ほこり等を除塵する。
【0033】
次に、
図6(g)に示すように、プレス機による加圧を解き、上型63を上昇させた後、キャビティ51内から焼結品41を離型する(離型工程)。このとき、コアピン45は、治具47が下型43に固定されているため、焼結品71と共に離型されない。次に、金型41から離型した焼結品71は、内蔵されている水溶性無機物を溶出するために、洗浄し、成形品73(穂先本体11)を得る(水溶性無機物洗浄除去工程、図示せず)。その後、
図6(h)に示すように、成形品73(穂先本体11)の後端面に開口している収納穴21に棒状の中綿13を挿入し、穂先体1を得る(中綿挿入工程)。
【0034】
以上のようにして、製作された穂先体1は、塗布具を製造する場合、
図1に示すように、軸筒7の中に、インキ等の塗液を含浸させた塗液吸蔵体9を収納し、穂先体1をホルダ5に装着し、ホルダ5のねじ部5aと軸筒7のねじ部7aとを螺合する。装着に際して、穂先体1の後端部が塗液吸蔵体9の前端部に埋入するように接続することが望ましい。
【0035】
また、穂先体1の製造工程において、コアピン45の周囲に超高分子量ポリエチレン粉体59及び混合粉末61を充填し、焼結しているが、予め棒状の中綿13を治具に固定し、棒状の中綿13の周囲に超高分子量ポリエチレン粉体59、混合粉末61を順次充填して、焼結してもよい。
【0036】
本発明の一実施形態に係る穂先体1によると、穂先本体11は、空隙率が高い層12a(筆記端15)と、空隙率が高い層12aより空隙率が低いか又はない状態の層12b(胴体部17及びフランジ部19)とからる二層構造12に構成され、かつ、穂先本体11の筆記端15の内部までに棒状の中綿13が内蔵されているので、胴体部17及びフランジ部17に空隙率がない状態にあったとしても、インクを充分に筆記端15に供給することができる。更に、筆記端15では、インクの供給がよく、柔軟性(ソフトタッチ感)を有し、胴体部17では、堅硬性を有し、筆圧に起因する穂先体1の折り曲げが極めて少ないため、筆記により穂先体1が漸次外方に出る現象を防止することができる。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係る穂先体1によると、筆記端15の下部から径方向外側に延びる環状のフランジ部19を設けることにより、穂先体1がホルダ5内に沈むことを防ぐことができ、また、フランジ部19に2つの空気交換溝31を設けることで、塗液吸蔵体9に対して空気の交換をスムーズに行うことができる。
【0038】
更に、本発明の一実施形態に係る穂先体1によると、胴体部17に、フランジ部19の下面から胴体部17の中央部付近まで延びる複数の突起部27を設け、この周辺を空隙率の低い、樹脂層(空隙率が低い層12b)としたので、穂先体1と塗布具3のホルダ5との嵌合が強固となり、運送時の振動、衝撃等の外力が塗布具3に加わっても、塗布具3のホルダ5から穂先体1の抜け、浮きを防止することができる。また、穂先体1をホルダ5に装着した際、空気交換溝31と連通している、対向する二ケ所の突起部27と突起部27との間の空気交換通路29が空気の通り道となり、空気交換溝31と塗液吸蔵体9とを適切に連通することができる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る穂先体1の製造方法によると、コアピン設置工程(
図6(b)参照)において、コアピン45を用いることで、中心位置を容易に定めることができる
。第1及び第2充填工程〜焼結工程(
図6(c)〜(f)参照)において、キャビティ51内に超高分子量ポリエチレン粉体59の充填後、その上に超高分子量ポリエチレン粉体と50〜80質量パーセントの水溶性無機物とを混合した混合粉体61を充填し、押圧ピン65によって加圧し、この状態を維持して焼結することで、二層構造12の焼結品71を得ることができる。その後、水溶性無機物洗浄除去工程において、焼結品71の洗浄によって、水溶性無機物が除去され、空隙率が高い層12aと低い層12bとで構成された成形品71(穂先本体11)を得ることができる。空隙率は、水溶性無機物の添加量及び加圧工程における押しピン65の押込み力によって、容易に変更することができる。
【0040】
次に、上述の製造方法によって成形された実施例1,2及び対象例の穂先体1の評価試験について
図7を参照して説明する。
図7に示すように、穂先体1の評価試験は、穂先体1の保持力、インク追従性の評価(後述の表1参照)を行った。
保持力の評価試験は、穂先体1を塗布具3のホルダ5に装着した状態で、穂先体1を押圧したときの芯抜け(芯抜け力)に基づいて評価した。
インク追従性の評価試験では、インクの消費量(インクの流れの良さ)に基づいて評価した。
【0041】
次に、実施例1,2及び対象例の穂先体1に用いた材料について説明する。
実施例1では、空隙率が高い層12a(先端部15)の材料、すなわち、第2充填工程(
図6(d)参照)で充填する粉末として、ティコナ社のGUR2122(平均粒径115μm、平均嵩比重0.23g/cm
3、平均孔隙率70%、平均強度1MPa)の粉体に、水溶性無機物として重曹(70質量パーセント)を添加して常温撹拌混合した混合粉末を用い、空隙率が低い層12b(胴体部17及びフランジ部19)の材料、すなわち、第1充填工程(
図6(c)参照)で充填する粉末として、ティコナ社のGUR2122の粉体を他の物質に加えることなく用いた。これらの粉末を用いて、上記製造方法によって穂先本体11を成形した。穂先本体11を洗浄、乾燥した後、その後端の収納穴21より棒状の中綿13を挿入した。
【0042】
実施例2では、第2充填工程で充填する粉末として、ティコナ社のGUR2122の粉体に重曹(70質量パーセント)を添加して常温撹拌混合した混合粉末を用い、第1充填工程で充填する粉末として、ティコナ社のGUR4120(平均粒径120μm、平均嵩比重0.40g/cm
3、平均孔隙率40%、平均強度2.5MPa)の粉体を用いた。これらの粉末を用いて、上記製造方法によって穂先本体11を成形した。穂先本体11を洗浄、乾燥した後、その後端の収納穴21より棒状の中綿13を挿入した。
【0043】
対象例では、空隙率が高い層12a及び低い層12bの材料、すなわち、第2充填工程を省略し、第1充填工程で中型49の上端面49aと面一になるまで充填する粉末として、ティコナ社のGUR2122の粉体に、水溶無機物として重曹(70質量パーセント)を添加して常温撹拌混合した混合粉末を用いた。この粉末を用いて、上記製造方法によって穂先本体11を成形した。穂先本体11を洗浄、乾燥した後、その後端の収納穴21より棒状の中綿13を挿入した。
【0044】
次に、評価試験及び製造方法の条件について表1を参照して説明する。
【表1】
【0045】
穂先体1を塗布具3のホルダ5に挿入する圧力(組込力)において、
図7に示すように、実施例1では、1200g、実施例2では、1800g、対象例では、200gであった。保持力の評価試験において、
図7に示すように、実施例1では、1500gで、実施例2では、2000gで、対象例では、700gで、穂先体1が塗布具3のホルダ5から浮き出た。インク追従性の評価試験において、実施例1及び2では、インク消費量が2.8(g/100m)であって(表1参照)、同等のインク追従性が得られ、対象例では、インク消費量が2.9(g/100m)であって(表1参照)、実施例1及び2よりインク追従性がよいことがわかった。なお、実施例1の焼結体71(穂先本体11)全体の空隙率は、
図7に示すように、約75%、実施例2の焼結体71全体の空隙率は、約70%、対象例の焼結体(穂先本体)全体の空隙率は、約80%であった。
【0046】
以上の結果、二層構造の穂先本体11である実施例1及び2では、穂先体1は、塗布具3のホルダ5内に堅硬に保持され、運送時の振動、衝撃等の外力が塗布具1に加わっても、ホルダ5から穂先体1の抜け、浮きを防ぐことが判った。また、実施例1及び2では、対象例のインクの流れと比較して僅かに劣るものの、インクの追従性の評価結果に示すように、インクの流れは良好であった。対象例では、実施例1及び2よりもインクの流れが良好であることが判った。